揚重機及びその設置方法
【課題】狭隘地でもクレーンの一部が敷地外にはみ出すことがなく、組み立て撤去が容易な揚重機及びその設置方法を提供する。
【解決手段】一方の二隅側に位置する主マスト1と、他方の二隅側に位置する副マスト2と、主マスト1と副マスト2とを夫々連結するガーター3と、ガーター3に沿って移動可能に設けられた移動ガーター4と、移動ガーター4にスライド自在に設けたホイスト5とを備える。主マスト1にクライミング装置6を取り付け、クライミング装置6の頂部から継ぎ足し可能なガーター3を水平に延設する。ガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を垂下し、対向するガーター3間に移動ガーター4を設ける。主マスト1と副マスト2とにマストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長し、副マスト2を四隅の内の他方の四隅にまで移動させる。
【解決手段】一方の二隅側に位置する主マスト1と、他方の二隅側に位置する副マスト2と、主マスト1と副マスト2とを夫々連結するガーター3と、ガーター3に沿って移動可能に設けられた移動ガーター4と、移動ガーター4にスライド自在に設けたホイスト5とを備える。主マスト1にクライミング装置6を取り付け、クライミング装置6の頂部から継ぎ足し可能なガーター3を水平に延設する。ガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を垂下し、対向するガーター3間に移動ガーター4を設ける。主マスト1と副マスト2とにマストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長し、副マスト2を四隅の内の他方の四隅にまで移動させる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は揚重機及びその設置方法に関し、更に詳細には狭隘地でのクレーン構築に適するものに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、マンションやビルなど中規模以上の建造物を建設する場合、クレーンによって鉄骨やプレキャスト部材等の必要資材を所定位置まで揚げる工法が採られる。
【0003】クレーンの設置に際しては図12に示すように、建設予定地41の道路47側にマスト40を立て、これにブームを支持してホイスト42を設置するジブクレーン等を用いるのが一般的である。ここでは敷地の端部にマスト40が立設されているが、このようにクレーンを道路側に設置するのは、上記資材の供給を円滑に実施するためである。
【0004】ところで、近年は建造物の建設では例えばバルコニーや外壁等について、工場等で予め製造されたコンクリート部材、すなわちプレキャスト部材を多用する傾向にある。これは現場での工期の短縮や作業の縮小のために採用するものであるが、当然ながらプレキャスト部材はコンクリート製の高重量物であるため、通常、最大揚重量が5トン程度の規模の大型クレーンが不可欠となる。このような大型クレーンはブーム先端43の吊り上げ点で5トンの荷重(実際には安全率があるためそれ以上の荷重)に耐えるため、ブーム後端44(ブーム先端の1/4程度の長さ)には5トンを越える重量のカウンターバランサ45が取り付けられている。
【0005】このように、クレーンの大型化に伴い、同時に後方に突出するブーム後端長も長くなることは避けられない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが狭隘地において、このような大型クレーンを設置することは困難な場合がある。図13のように、ブーム後端44は敷地Lから矢印Aの示す範囲において大きくはみ出している。この場合、ブーム先端は建物47の上方に位置するため問題ないが、ブーム後端44は道路上に位置したり、旋回時に隣の建造物に接触する虞れがある。
【0007】しかも、中型以上のクレーンは撤去の際に、各部を分解しながら小型クレーンで分解した部品を地上に降ろす必要があり、手間と費用がかかる上に、分解した部品の置き場所や小形クレーンの設置場所の確保が必要である。
【0008】これらの理由により、上述のように様々なメリットのあるプレキャスト工法の採用を困難にする事態が生じ、これが建設作業上のネックとなっていた。
【0009】本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたもので、狭隘地においてもクレーンの一部が敷地外に大きくはみ出すことがなく、また組み立てや撤去が容易な建設用揚重機、及びその設置方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は揚重機及びその設置方法であり、前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。
【0011】すなわち、建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に位置する主マスト1と、他方の二隅側に位置する副マスト2と、これらの主マスト1と副マスト2とを夫々連結するガーター3と、このガーター3間を橋絡するように設けられ、ガーター3に沿って移動可能に設けられた移動ガーター4と、この移動ガーター4にスライド自在に設けられたホイスト5とを備えている。
【0012】前記建設すべき建造物の周囲四隅とは、実際に完成する建造物に接触しない程度に建造物に接近している四隅であり、一方の二隅側とは道路や空き地に隣接している側の二隅である。また、他方の二隅側とは道路や空き地等から見て奥に位置する二隅である。なお、建造物の両側に道路や空き地がある場合には、これらは適宜設定すればよい。
【0013】ここで主マスト1と副マスト2は、例えば夫々2本、計4本立設され、最終的に夫々四隅に配置される。
【0014】このような構成になる建設用揚重機を設置するに際しては、まず建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に継ぎ足し可能な主マスト1を夫々立設する。この主マスト1は、例えばボルトナットにより容易に連結可能な構造になっている。
【0015】次に、これら主マスト1に夫々クライミング装置6を取り付ける。このクライミング装置6は、油圧ジャッキやモータ等の駆動装置により主マスト1を昇る装置である。これは、主マスト1に係合しながら安全に上昇できるようインターロック機能を設けるのが望ましい。すなわちクライミング装置6を主マスト1に固定するピン等の全てが、同時に外れることを防止して、作業の安全性を確保するものである。
【0016】前記主マスト1はクライミング装置6を貫通するものであり、その上端に次の主マスト1を継ぎ足し、クライミング装置6を上昇させる。このようにしてクライミング装置6は順次上昇する。
【0017】続いて、クライミング装置6の頂部から継ぎ足し可能なガーター3を水平に延設する。このガーター3はクライミング装置6の頂部において仮固定とスライドを繰り返しながら継ぎ足されてゆくもので、最終的に、一方と他方の二隅間の距離と等しい全長になる。
【0018】そして、夫々のガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を夫々垂下する。この副マスト2は、ガーター3から垂下されており、その下端に次の副マスト2を順次継ぎ足すことで延長される。
【0019】続いて、対向するガーター3間に移動ガーター4を設け、この移動ガーター4にホイスト5をスライド可能に設ける。移動ガーター4には、例えば電動のローラーが設けられガーター3上を走行するように構成されている。
【0020】次に、主マスト1と副マスト2とに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、所期の高さ、すなわち建築に必要十分な高さにまでマストを延長する。
【0021】このようにして、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した時点で副マスト2を四隅の内の他方の二隅にまで移動させる。これにより、例えば足4本により支持された方形の構造体が完成し、ホイスト5は構造体の範囲内において自由に移動して鉄鋼材やプレキャスト部材を揚重する。
【0022】このように、ホイスト5をどのように移動させても構造体の範囲外に機材が突出することはなく、極めて狭隘な土地でも施工が可能となる。また、この構造体の組み立てや撤去のために別個のクレーンを用意する必要もない。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の荷揚機及びその設置方法について図1から図11に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0024】なお、本発明の構造は組み立て手順とともに説明する。まず地面に鋼板製のタワーベース1aを固定する。固定する位置は、図8に示すように建造物10の周囲四隅の内、一方の二隅側の2カ所である。
【0025】そして図1に示すように、タワーベース1a上に主マスト1を夫々固定する。この主マスト1は、図11に示すようにトラス状の構造になっており、任意の数主マスト1を連結し、所定の長さとなるようにその内側をボルトナット1b、1cで接続することができる。このようにして形成された主マスト1には、夫々クライミング装置6を取り付ける。
【0026】このクライミング装置6は油圧によって主マスト1を昇降する装置であって、図8に示すように上部シャーシ6aと下部シャーシ6bをシリンダ及びピストン6cで連結した構造になっている。シリンダ及びピストン6cは図示しない油圧装置に接続され、油圧装置から高圧を与えることで伸縮し、上部シャーシ6aと下部シャーシ6bとが接近したり、離れたりする。
【0027】上部シャーシ6aと下部シャーシ6bは内側に空間があり、その空洞部分に主マスト1がスライド可能に挿通される。
【0028】上部シャーシ6aにはアッパーロックピン6dが設けられる。このアッパーロックピン6dは、常時、バネによって内側(主マスト1側)に付勢されており、主マスト1のトラスに係合する。そしてアッパーロックピン6dは、図示しないソレノイドプランジャによって、外側(ロックが外れる側、矢示F方向)にスライドさせることが可能である。
【0029】したがってソレノイドプランジャが作動(通電)していないときには上部シャーシ6aは主マスト1にロックされて移動できず、ソレノイドプランジャが作動(通電)しているときは上部シャーシ6aと主マスト1とのロックが外れて上部シャーシ6aが移動可能となる。
【0030】同様にして、下部シャーシ6bにはロアーロックピン6eが設けられている。このロアーロックピン6eは常時は内側(主マスト1側)に付勢されており、主マスト1のトラスに係合するようになっている。そしてロアーロックピン6eは図示しないソレノイドプランジャによって、外側にスライドさせることができる。
【0031】したがってソレノイドプランジャが作動(通電)していないときには下部シャーシ6bは主マスト1にロックされて移動できず、ソレノイドプランジャが作動(通電)しているときには下部シャーシ6bと主マスト1とのロックが外れて下部シャーシ6bは移動可能となる。
【0032】そして、ロアーロックピン6eとアッパーロックピン6dとの関係はインターロックとなっている。すなわち、ロアーロックピン6eとアッパーロックピン6dとは同時に主マスト1との係合が解除されることはなく、必ず一方がロックされた状態にある。また何らかの原因で電気系が故障しソレノイドプランジャが制御不能となってもバネによって両方のロックピンが主マスト1と係合するため落下などの危険が生じることがないよう安全に構成されている。
【0033】このような構造においてクライミング装置6を上昇させるには、まず、ロアーロックピン6eをロックさせた状態でシリンダ及びピストン6cを伸ばす(加圧する)。するとアッパーロックピン6dは解除されているため上部シャーシ6aが上昇する。
【0034】そして、シリンダ及びピストン6cが伸び切った段階でアッパーロックピン6dをロックし、ロアーロックピン6eを解除する。続いて、シリンダ及びピストン6cを収縮させる。これにより下部シャーシ6bのみが上昇する。
【0035】このように、クライミング装置6は尺取り虫のように伸縮しながら主マスト1を昇るように動作する。なお、降下させるときはロックピンとシリンダ及びピストン6cとの動作関係を逆にすればよい。
【0036】このクライミング装置6の上部には継ぎ足し可能なガーター3を水平に保持するベッド6fが設けられている(図3)。なお、図8に示すように、ガーター3の取り付け位置と主マスト1の取り付け位置とは互いにずらしてあり、両者が接触しないように構成されている。
【0037】このガーター3はクライミング装置6の頂部においてボルトによる仮固定とスライドを繰り返しながら水平方向に継ぎ足されてゆく。
【0038】そして、夫々のガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を夫々垂下する。この副マスト2は、ガーター3から垂下されておりその下端に次の副マスト2を順次継ぎ足すことで延長することが可能である。
【0039】続いて、対向するガーター3、3間に移動ガーター4を設け、この移動ガーター4にホイスト5がスライド可能に設けられる。移動ガーター4には電動ローラー4aが設けられガーター3上を走行するように構成されている。この電動ローラー4aはクレーンオペレーターにより制御される。
【0040】次に、主マスト1と副マスト2とに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、所期の高さ、すなわち建築に必要な高さにまでマストを延長する。
【0041】ここで主マスト1は図6に示すように上部から順次継ぎ足され、副マスト2は下端に順次継ぎ足される。
【0042】このようにして、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した(図7)後、図9に示すように副マスト2を四隅の内の他方の二隅にまで移動させ、副マスト2を地面に固定する。このときガーター3、3の先端同士を、つなぎ梁11で連結する。
【0043】これにより、図8ないし図10に示すような、足4本により支持された方形の構造体が完成し、ホイスト5は構造体の範囲内において矢示G,H方向に自由に移動可能となる。またホイスト5はどのように移動させても構造体の範囲外に突出することがないため、近隣の道路や隣接する建物に影響を与えることなく揚重作業を行うことができる。したがって、極めて狭隘な土地でもクレーンを利用した施工が可能となる。
【0044】なお、撤去に当たっては前記した手順と逆の手順により分解が可能となる。このため、従来のような大型または中型クレーンの部品を分解し、これらを小型クレーンで降ろすといった作業は不要であり、極めて能率的に撤去作業を行うことができる。
【0045】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、狭隘地においても周囲に影響を与えずにクレーンの設置が可能となる。このため建造物が密集した都市部においても容易に大型クレーンが設置でき、プレキャスト工法等における重量物を揚重することが容易となる。
【0046】また組み立てや撤去も容易で、特殊な機材も必要ないため工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の揚重機の組み立て工程の第1段階を示す側面図である。
【図2】本発明の揚重機の組み立て工程の第2段階を示す側面図である。
【図3】本発明の揚重機の組み立て工程の第3段階を示す側面図である。
【図4】本発明の揚重機の組み立て工程の第4段階を示す側面図である。
【図5】本発明の揚重機の組み立て工程の第5段階を示す側面図である。
【図6】本発明の揚重機の組み立て工程の第6段階を示す側面図である。
【図7】本発明の揚重機の組み立て工程の第7段階を示す側面図である。
【図8】本発明の揚重機の完成状態を示す平面図である。
【図9】本発明の揚重機の完成状態を示す側面図である。
【図10】本発明の揚重機の完成状態を示す背面図である。
【図11】本発明の揚重機のクライミング装置を示す側面図である。
【図12】従来の揚重機を示す側面図である。
【図13】従来の揚重機の作動範囲を示す平面図である。
【符号の説明】
1 主マスト
2 副マスト
3 ガーター
4 移動ガーター
5 ホイスト
6 クライミング装置
10 建造物
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は揚重機及びその設置方法に関し、更に詳細には狭隘地でのクレーン構築に適するものに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、マンションやビルなど中規模以上の建造物を建設する場合、クレーンによって鉄骨やプレキャスト部材等の必要資材を所定位置まで揚げる工法が採られる。
【0003】クレーンの設置に際しては図12に示すように、建設予定地41の道路47側にマスト40を立て、これにブームを支持してホイスト42を設置するジブクレーン等を用いるのが一般的である。ここでは敷地の端部にマスト40が立設されているが、このようにクレーンを道路側に設置するのは、上記資材の供給を円滑に実施するためである。
【0004】ところで、近年は建造物の建設では例えばバルコニーや外壁等について、工場等で予め製造されたコンクリート部材、すなわちプレキャスト部材を多用する傾向にある。これは現場での工期の短縮や作業の縮小のために採用するものであるが、当然ながらプレキャスト部材はコンクリート製の高重量物であるため、通常、最大揚重量が5トン程度の規模の大型クレーンが不可欠となる。このような大型クレーンはブーム先端43の吊り上げ点で5トンの荷重(実際には安全率があるためそれ以上の荷重)に耐えるため、ブーム後端44(ブーム先端の1/4程度の長さ)には5トンを越える重量のカウンターバランサ45が取り付けられている。
【0005】このように、クレーンの大型化に伴い、同時に後方に突出するブーム後端長も長くなることは避けられない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが狭隘地において、このような大型クレーンを設置することは困難な場合がある。図13のように、ブーム後端44は敷地Lから矢印Aの示す範囲において大きくはみ出している。この場合、ブーム先端は建物47の上方に位置するため問題ないが、ブーム後端44は道路上に位置したり、旋回時に隣の建造物に接触する虞れがある。
【0007】しかも、中型以上のクレーンは撤去の際に、各部を分解しながら小型クレーンで分解した部品を地上に降ろす必要があり、手間と費用がかかる上に、分解した部品の置き場所や小形クレーンの設置場所の確保が必要である。
【0008】これらの理由により、上述のように様々なメリットのあるプレキャスト工法の採用を困難にする事態が生じ、これが建設作業上のネックとなっていた。
【0009】本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたもので、狭隘地においてもクレーンの一部が敷地外に大きくはみ出すことがなく、また組み立てや撤去が容易な建設用揚重機、及びその設置方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は揚重機及びその設置方法であり、前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。
【0011】すなわち、建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に位置する主マスト1と、他方の二隅側に位置する副マスト2と、これらの主マスト1と副マスト2とを夫々連結するガーター3と、このガーター3間を橋絡するように設けられ、ガーター3に沿って移動可能に設けられた移動ガーター4と、この移動ガーター4にスライド自在に設けられたホイスト5とを備えている。
【0012】前記建設すべき建造物の周囲四隅とは、実際に完成する建造物に接触しない程度に建造物に接近している四隅であり、一方の二隅側とは道路や空き地に隣接している側の二隅である。また、他方の二隅側とは道路や空き地等から見て奥に位置する二隅である。なお、建造物の両側に道路や空き地がある場合には、これらは適宜設定すればよい。
【0013】ここで主マスト1と副マスト2は、例えば夫々2本、計4本立設され、最終的に夫々四隅に配置される。
【0014】このような構成になる建設用揚重機を設置するに際しては、まず建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に継ぎ足し可能な主マスト1を夫々立設する。この主マスト1は、例えばボルトナットにより容易に連結可能な構造になっている。
【0015】次に、これら主マスト1に夫々クライミング装置6を取り付ける。このクライミング装置6は、油圧ジャッキやモータ等の駆動装置により主マスト1を昇る装置である。これは、主マスト1に係合しながら安全に上昇できるようインターロック機能を設けるのが望ましい。すなわちクライミング装置6を主マスト1に固定するピン等の全てが、同時に外れることを防止して、作業の安全性を確保するものである。
【0016】前記主マスト1はクライミング装置6を貫通するものであり、その上端に次の主マスト1を継ぎ足し、クライミング装置6を上昇させる。このようにしてクライミング装置6は順次上昇する。
【0017】続いて、クライミング装置6の頂部から継ぎ足し可能なガーター3を水平に延設する。このガーター3はクライミング装置6の頂部において仮固定とスライドを繰り返しながら継ぎ足されてゆくもので、最終的に、一方と他方の二隅間の距離と等しい全長になる。
【0018】そして、夫々のガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を夫々垂下する。この副マスト2は、ガーター3から垂下されており、その下端に次の副マスト2を順次継ぎ足すことで延長される。
【0019】続いて、対向するガーター3間に移動ガーター4を設け、この移動ガーター4にホイスト5をスライド可能に設ける。移動ガーター4には、例えば電動のローラーが設けられガーター3上を走行するように構成されている。
【0020】次に、主マスト1と副マスト2とに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、所期の高さ、すなわち建築に必要十分な高さにまでマストを延長する。
【0021】このようにして、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した時点で副マスト2を四隅の内の他方の二隅にまで移動させる。これにより、例えば足4本により支持された方形の構造体が完成し、ホイスト5は構造体の範囲内において自由に移動して鉄鋼材やプレキャスト部材を揚重する。
【0022】このように、ホイスト5をどのように移動させても構造体の範囲外に機材が突出することはなく、極めて狭隘な土地でも施工が可能となる。また、この構造体の組み立てや撤去のために別個のクレーンを用意する必要もない。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の荷揚機及びその設置方法について図1から図11に示される実施形態について更に詳細に説明する。
【0024】なお、本発明の構造は組み立て手順とともに説明する。まず地面に鋼板製のタワーベース1aを固定する。固定する位置は、図8に示すように建造物10の周囲四隅の内、一方の二隅側の2カ所である。
【0025】そして図1に示すように、タワーベース1a上に主マスト1を夫々固定する。この主マスト1は、図11に示すようにトラス状の構造になっており、任意の数主マスト1を連結し、所定の長さとなるようにその内側をボルトナット1b、1cで接続することができる。このようにして形成された主マスト1には、夫々クライミング装置6を取り付ける。
【0026】このクライミング装置6は油圧によって主マスト1を昇降する装置であって、図8に示すように上部シャーシ6aと下部シャーシ6bをシリンダ及びピストン6cで連結した構造になっている。シリンダ及びピストン6cは図示しない油圧装置に接続され、油圧装置から高圧を与えることで伸縮し、上部シャーシ6aと下部シャーシ6bとが接近したり、離れたりする。
【0027】上部シャーシ6aと下部シャーシ6bは内側に空間があり、その空洞部分に主マスト1がスライド可能に挿通される。
【0028】上部シャーシ6aにはアッパーロックピン6dが設けられる。このアッパーロックピン6dは、常時、バネによって内側(主マスト1側)に付勢されており、主マスト1のトラスに係合する。そしてアッパーロックピン6dは、図示しないソレノイドプランジャによって、外側(ロックが外れる側、矢示F方向)にスライドさせることが可能である。
【0029】したがってソレノイドプランジャが作動(通電)していないときには上部シャーシ6aは主マスト1にロックされて移動できず、ソレノイドプランジャが作動(通電)しているときは上部シャーシ6aと主マスト1とのロックが外れて上部シャーシ6aが移動可能となる。
【0030】同様にして、下部シャーシ6bにはロアーロックピン6eが設けられている。このロアーロックピン6eは常時は内側(主マスト1側)に付勢されており、主マスト1のトラスに係合するようになっている。そしてロアーロックピン6eは図示しないソレノイドプランジャによって、外側にスライドさせることができる。
【0031】したがってソレノイドプランジャが作動(通電)していないときには下部シャーシ6bは主マスト1にロックされて移動できず、ソレノイドプランジャが作動(通電)しているときには下部シャーシ6bと主マスト1とのロックが外れて下部シャーシ6bは移動可能となる。
【0032】そして、ロアーロックピン6eとアッパーロックピン6dとの関係はインターロックとなっている。すなわち、ロアーロックピン6eとアッパーロックピン6dとは同時に主マスト1との係合が解除されることはなく、必ず一方がロックされた状態にある。また何らかの原因で電気系が故障しソレノイドプランジャが制御不能となってもバネによって両方のロックピンが主マスト1と係合するため落下などの危険が生じることがないよう安全に構成されている。
【0033】このような構造においてクライミング装置6を上昇させるには、まず、ロアーロックピン6eをロックさせた状態でシリンダ及びピストン6cを伸ばす(加圧する)。するとアッパーロックピン6dは解除されているため上部シャーシ6aが上昇する。
【0034】そして、シリンダ及びピストン6cが伸び切った段階でアッパーロックピン6dをロックし、ロアーロックピン6eを解除する。続いて、シリンダ及びピストン6cを収縮させる。これにより下部シャーシ6bのみが上昇する。
【0035】このように、クライミング装置6は尺取り虫のように伸縮しながら主マスト1を昇るように動作する。なお、降下させるときはロックピンとシリンダ及びピストン6cとの動作関係を逆にすればよい。
【0036】このクライミング装置6の上部には継ぎ足し可能なガーター3を水平に保持するベッド6fが設けられている(図3)。なお、図8に示すように、ガーター3の取り付け位置と主マスト1の取り付け位置とは互いにずらしてあり、両者が接触しないように構成されている。
【0037】このガーター3はクライミング装置6の頂部においてボルトによる仮固定とスライドを繰り返しながら水平方向に継ぎ足されてゆく。
【0038】そして、夫々のガーター3から継ぎ足し可能な副マスト2を夫々垂下する。この副マスト2は、ガーター3から垂下されておりその下端に次の副マスト2を順次継ぎ足すことで延長することが可能である。
【0039】続いて、対向するガーター3、3間に移動ガーター4を設け、この移動ガーター4にホイスト5がスライド可能に設けられる。移動ガーター4には電動ローラー4aが設けられガーター3上を走行するように構成されている。この電動ローラー4aはクレーンオペレーターにより制御される。
【0040】次に、主マスト1と副マスト2とに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置6を上昇させ、所期の高さ、すなわち建築に必要な高さにまでマストを延長する。
【0041】ここで主マスト1は図6に示すように上部から順次継ぎ足され、副マスト2は下端に順次継ぎ足される。
【0042】このようにして、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した(図7)後、図9に示すように副マスト2を四隅の内の他方の二隅にまで移動させ、副マスト2を地面に固定する。このときガーター3、3の先端同士を、つなぎ梁11で連結する。
【0043】これにより、図8ないし図10に示すような、足4本により支持された方形の構造体が完成し、ホイスト5は構造体の範囲内において矢示G,H方向に自由に移動可能となる。またホイスト5はどのように移動させても構造体の範囲外に突出することがないため、近隣の道路や隣接する建物に影響を与えることなく揚重作業を行うことができる。したがって、極めて狭隘な土地でもクレーンを利用した施工が可能となる。
【0044】なお、撤去に当たっては前記した手順と逆の手順により分解が可能となる。このため、従来のような大型または中型クレーンの部品を分解し、これらを小型クレーンで降ろすといった作業は不要であり、極めて能率的に撤去作業を行うことができる。
【0045】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、狭隘地においても周囲に影響を与えずにクレーンの設置が可能となる。このため建造物が密集した都市部においても容易に大型クレーンが設置でき、プレキャスト工法等における重量物を揚重することが容易となる。
【0046】また組み立てや撤去も容易で、特殊な機材も必要ないため工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の揚重機の組み立て工程の第1段階を示す側面図である。
【図2】本発明の揚重機の組み立て工程の第2段階を示す側面図である。
【図3】本発明の揚重機の組み立て工程の第3段階を示す側面図である。
【図4】本発明の揚重機の組み立て工程の第4段階を示す側面図である。
【図5】本発明の揚重機の組み立て工程の第5段階を示す側面図である。
【図6】本発明の揚重機の組み立て工程の第6段階を示す側面図である。
【図7】本発明の揚重機の組み立て工程の第7段階を示す側面図である。
【図8】本発明の揚重機の完成状態を示す平面図である。
【図9】本発明の揚重機の完成状態を示す側面図である。
【図10】本発明の揚重機の完成状態を示す背面図である。
【図11】本発明の揚重機のクライミング装置を示す側面図である。
【図12】従来の揚重機を示す側面図である。
【図13】従来の揚重機の作動範囲を示す平面図である。
【符号の説明】
1 主マスト
2 副マスト
3 ガーター
4 移動ガーター
5 ホイスト
6 クライミング装置
10 建造物
【特許請求の範囲】
【請求項1】建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に位置する主マストと、他方の二隅側に位置する副マストと、これらの主マストと副マストとを夫々連結するガーターと、このガーター間を橋絡するように設けられ、ガーターに沿って移動可能に設けられた移動ガーターと、この移動ガーターにスライド自在に設けられたホイストと、を備えていることを特徴とする揚重機。
【請求項2】建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に継ぎ足し可能な主マストを夫々立設するとともに、これら主マストに夫々クライミング装置を取り付ける工程、クライミング装置の頂部から継ぎ足し可能なガーターを水平に延設する工程、夫々のガーターから継ぎ足し可能な副マストを夫々垂下する工程、対向するガーター間に移動ガーターを設け、この移動ガーターにホイストをスライド可能に設ける工程、主マストと副マストとに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置を上昇させる工程、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した時点で副マストを四隅の内の他方の四隅にまで移動させる工程、とを含むことを特徴とする揚重機の設置方法。
【請求項1】建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に位置する主マストと、他方の二隅側に位置する副マストと、これらの主マストと副マストとを夫々連結するガーターと、このガーター間を橋絡するように設けられ、ガーターに沿って移動可能に設けられた移動ガーターと、この移動ガーターにスライド自在に設けられたホイストと、を備えていることを特徴とする揚重機。
【請求項2】建設すべき建造物の周囲四隅の内、一方の二隅側に継ぎ足し可能な主マストを夫々立設するとともに、これら主マストに夫々クライミング装置を取り付ける工程、クライミング装置の頂部から継ぎ足し可能なガーターを水平に延設する工程、夫々のガーターから継ぎ足し可能な副マストを夫々垂下する工程、対向するガーター間に移動ガーターを設け、この移動ガーターにホイストをスライド可能に設ける工程、主マストと副マストとに夫々マストを継ぎ足しながらクライミング装置を上昇させる工程、主マスト長、副マスト長及びガーター長を所定の長さまで延長した時点で副マストを四隅の内の他方の四隅にまで移動させる工程、とを含むことを特徴とする揚重機の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2003−54874(P2003−54874A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−245634(P2001−245634)
【出願日】平成13年8月13日(2001.8.13)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年8月13日(2001.8.13)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
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