説明

換気機構付構造体

【課題】窓枠サッシを利用でき取り付けが簡単で操作が容易でありかつ結露防止をすることができる換気機構付構造体を提供する。
【解決手段】一方の端部(A−1)は封鎖され他の端部(A−2)は空気を導管内に送るファンを内設した送風口を有する導管である。導管内部は吸湿または除湿機能を有する無機多孔質板が水平に設置され、導管内は上方通路部と下方通路部に区分される。導管の下部には導管内の空気が下方に向かって排出するように、導管の長さ方向に沿って直線状に配置された多数の排出口を有している。送風口のファンにより端部(A−2)から導管内に導入された空気は、上方通路部を通過して一方の端部(A−1)の開口より下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出されるか、或いは上方通路部から無機多孔質板に設けられた多数の流通口を通して下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、換気機構付構造体に関する。さらに詳しくは外気からの新鮮な空気を室内に取り入れる換気機構を有し、しかも冬期には窓の結露の発生を抑制することが可能な構造体に関する。さらに既に設置されている窓枠サッシに簡単に取り付けることができ、操作も容易であり、かつ運転時の振動や騒音の発生も少ない換気機構付構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
近時、家屋は一戸建および集合住宅のいずれも建築様式の規格化並びに資材の物性の改良に伴い室内の気密性は高い水準に至っている。また窓には窓サッシが常用され、室内の気密性の維持に寄与している。
この反面、室内の気密の向上は、室内の空気の汚染や酸素欠乏を招く原因ともなっている。酸素欠乏は時には生命の危険を及ぼすこともある。最近室内の換気について建築基準法の改定も施工された。
一方生活水準の向上と共に冷暖房器具も普及し、特に冬期には窓枠サッシのガラスからの結露の発生は大きな問題となっている。窓のサイズの大型化に伴って結露による水量も多くなり床や畳が水浸しの状態を呈することさえある。
結露の発生を防ぐには室内の温度および湿度を一定レベルに保つ特別の装置を必要とするが、一般には頻繁に発生した水を拭き取る方法以外に簡単な手段はなかった。
【発明の開示】
【0004】
そこで本発明者は、現状ある室内を大幅に改修したり特別な装置を設置することなく窓枠サッシをそのまま利用できる換気機能を有する装置について研究を進めた。また結露の発生を抑制することができる簡単でかつ操作も容易な装置について研究を進めた。
その結果、下記の換気機構付構造体は、その構造が簡単でありかつ操作も容易であって、消費電力も少なく結露の発生を防ぐことができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、下記(1)〜(4)の要件を満足する換気機構付構造体が提供される。
【0005】
(1)一方の端部(A−1)は封鎖され、他の端部(A−2)は空気を導管内に送付するためのファンを内設した送風口を有する導管である。
(2)該導管内部は、吸湿または除湿機能を有する無機多孔質板がほぼ水平に設置され、その設置により導管内は上方通路部と下方通路部に区分されている。
(3)該導管の下部には、導管内の空気が下方に向かって排出しうるように、導管の長さ方向に沿って直線状に配置された多数の排出口を有している。
(4)該送風口からファンにより端部(A−2)から導管内に導入された空気は、(i)上方通路部を通過して一方の端部(A−1)の開口より下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出されるか或いは(ii)上方通路部から無機多孔質板に設けられた多数の流通口を通して下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出されるように導管内に開口および/または流通口が設けられている。
【0006】
次に本発明の換気機構付構造体についてさらに詳しく説明する。
【0007】
本発明の換気機構付構造体は、概略的には、細長く直線状の導管であって、一方の端部は封鎖され、他方の端部の送風口より空気が導管内に送り込まれ、導管の下部に設けられた多数の排出口より下方に向かって空気が排出される構造になっている。この多数の排出口はほぼ直線状に設けられていることにより、長い導管から下方に向って大略帯状に空気が送り出される。
【0008】
また後述するように窓枠サッシの室内側における上部に取り付けられかつそのサッシの上部の間隔から窓外部の空気を室内に取り入れるための案内通路を設け、その案内通路を通して室外の空気を送風口に接続することが出来る。そうすることにより室外の空気を導管内へ導入し、排出口から室内に外気を取り入れることができる。
【0009】
さらに、本発明の換気機構付構造体を窓枠サッシの室内側の窓枠サッシの上部にほぼ平行して設置し、好適には室内側にあるカーテンレールに平行して(例えばカーテンレールの上部に)設置することにより、窓枠サッシの上部の間隔から窓外部の空気を、前記案内通路を通して送風口に接続し、導管内へ外気を取り入れることができる。そうすることにより外気が室内の窓ガラスに沿って平行に上から下へ流動するような流れが形成され、結露の形成が抑制されることになる。
【0010】
特に本発明の換気機構付構造体がカーテンレールの上部に設置された場合、カーテンと窓の間に該構造体からの空気が上から下へ効果的に流動することになる。この場合、外気からの空気が窓の内側に沿って上から下へに帯状に流下し、換気効果と共に結露の発生が抑制されることになる。つまり、結露の小さい水滴が発生したとしても流下する空気に同伴されて蒸発し、大きな水滴の形成が抑制される。
【0011】
さらに本発明の換気機構付構造体は、導管内に設置される無機多孔質板の機能により、排出される空気の吸湿もしくは除湿の如き調湿が可能となるばかりでなく空気の消臭、減菌も可能となる。
【0012】
次に図面により本発明の換気機構付構造体(以下“構造体”と云うことがある)を説明する。第1図はその構造体の一例の模式図であり、第1図−aは正面図を示し、第1図−bは底面図を示し、第1図−cは正面図を左側から見た側面図を示す。構造体は導管1とその一方の端部には送風口2を有している。そして導管1の内部には無機多孔質板3がほぼ水平に設置されその設置により導管1の内側を上方通路部と下方通路部に区分している。
【0013】
導管1は、長さが500mm〜2000mm、好ましくは600mm〜1800mm、より好ましくは700mm〜1600mmであるのが望ましい。また内径は30mm〜50mm、好ましくは32mm〜45mm、より好ましくは35〜40mmが適当である。導管1は、プラスチックまたは金属のいずれであってもよく、プラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートが好ましく、金属としては鉄、アルミニウムが好ましい。とりわけ透明のプラスチックであることが望ましく、ポリカーボネートは強度および耐熱性の点で優れている。導管1の断面形状は円形、隋円形または矩形のいずれでもよいが円形であるのが望ましい。第1図の導管1は第1図−cに示すように断面形状が円形であり、丸いパイプ状の形状をしている。導管1の下部には第1図−bの底面図に示されているように多数の排出口4を有している。構造体からの空気はこの排出口4を吹き出して下方に流れる。この多数の排出口4は第1図−bのように導管1の長さ方向に沿ってほぼ直線状に設けられている。
【0014】
この排出口4は、丸い形状であることが好ましく、その場合径が2mm〜10mm、好ましくは2.5mm〜7mmであることが適当である。また排出口の間隔は30mm〜120mm、好ましくは40mmから110mmが望ましい。排出口4の径の大きさおよび間隔は、互いに関係しており、排出口から送り出される空気の流速が50cm/秒〜5m/秒、好ましくは70cm/秒〜4m/秒となるようにするのが望ましい。排出口4から送り出される空気の速度は送風口2からの空気量および排出口の数にも依存する。排出口4の径は全てが同じである必要はなくまた排出口4の間隔も一定である必要もない。望ましいことは、導管1から多数の排出口4を通じて空気が帯状を形成して下方に流れることである。
【0015】
送風口2には導管1に空気を送るためのファン7を内設している。このファン7の径はほぼ導管1の径と同じであることが有利である。ファン7は6v〜24v、好ましくは6v〜12vで作動する小形の電動モーター8を有している。このような電動モーター8は市販されており、通常40mA〜280mAで作動する。このような小形モーターは家庭用電源を使用でき安全であり、音量も少なくかつ振動も少ない。前記小形モーター8を有するファン7によって160L/分〜600L/分。好ましくは300L/分〜550L/分、特に好ましくは400L/分〜500L/分の風量で導管1内に空気を送り込むことができる。
【0016】
導管1内に水平に設置される無機多孔質板3は導管1のほぼ中心部に位置することが好ましい。この無機多孔質板3の厚さは5〜20mm、好ましくは7〜18mmであるのが望ましい。無機多孔質板3の長さと巾は導管の長さと長径(内径)とほぼ同じである。無機多孔質板3は吸湿および除湿機能を有するものであり、その材質は例えば珪藻土、珪酸カルシウム、ゼオライト、竹炭、木炭などが挙げられるが、珪藻頁岩は吸湿性および除湿機能が優れている。この珪藻頁岩の板は、北海道稚内に産出する珪藻頁岩を加工したものであり、加工し易く、入手も容易である。(鈴木産業(株)より“豊ヘルス”(登録商標)として市販されている)。
【0017】
無機多孔質板3は芳香剤、防黴剤、防虫剤などが含まれていてもよい。
【0018】
第1図の構造体において送風口2より導管1内の上方通路部(無機多孔質板の上部空間)に空気が送り込まれ、導管1の封鎖された端部(A−1)にある開口5を通り、空気は下方通路部へ流れる。下方通路部へ流れた空気は、導管1の下部(底部)に設けられた排出口4より導管外へ排出される。導管1内に空気が流通することにより無機多孔質板3の機能により除湿されるか或いは加湿されて導管外へ排出される。
【0019】
第2図には本発明の構造体の別の態様が示されている。第2図−a、bおよびcはそれぞれ正面図、底面図および左側面図である。第2図−dは側面図のX−X’断面図を示す。第2図の態様は無機多孔質板3に多数の流通口6が設けられている点が第1図の態様と主として異なっている。送風口2から送られた空気は上方通路部へ流れ、無機多孔質板3に設けられた流通口6を通過して下方通路部へ流れ、導管1の下部(底部)に設けられた排出口4より排出される。第2図−aでは無機多孔質板3の左先端部が導管の封鎖された端部と接合した状態が示されているが、必ずしも接合する必要はなく、第1図−aの開口5と同様に、間隔を有していてもよい。
【0020】
第2図の態様において、無機多孔質板3に設ける流通口6は、送風口2からの空気が多数の排出口4より排出されるように数と大きさ(径)が決められる。流通口6の径の形状は円、隋円、矩形のいずれでもよく、その径の大きさは3mm〜10mm、好ましくは4mm〜8mmが適当であり、流通口の間隔は20mm〜120mm、好ましくは30mm〜100mmが望ましい。流通口6は直線状に配列する必要はなく任意にその位置や数が決定される。第2図の態様において無機多孔質板3に流通口6が設けられていること以外の要件について、第1図の態様と特に変るものではない。
【0021】
前述した本発明の換気機構付構造体は、それ自体を窓の内側の上部、特にカーテンレールに取り付けて利用することもできるし、また換気が必要な他の場所例えば床下、押入れ、或いはタンスと壁との間に取り付けて利用することができる。
しかし、以下説明するように窓枠サッシの上部に取り付けかつその上部の間隔から窓外部の空気を取り入れて、その空気を本発明の構造体へ送風口を通して利用することが一層好ましい。そうすることにより室外部の新鮮な空気を室内に取り入れることができる。すなわち外の空気を窓枠サッシの上部の間隔から取り入れることができるから換気のために壁に穴を開けたりまた特別の装置や配管などを必要としない。
【0022】
第3図は窓枠サッシの上部に、外部空気を取り入れるための案内通路を設けた断面図を示すものである。第3図において9は通常の窓枠サッシの上部の断面図である。9−1は外側にある網戸用のガイドであり9−2および9−3が窓サッシ用のガイドである。案内通路10はU字形の導入部10−1および箱型部10−2より形成されている。U字形の導入部は10−1の先端部は窓枠サッシのサッシ用ガイド9−3と9−2の間に設置される。その先端部より空気が取り入れられる。U字形の導入部はサッシのガイドの巾は(9−2と9−3の巾)に制約され、その導入部の巾は7mm〜12mm、好ましくは8mm〜11mm程度であり、その巾の図面上の上下方向の長さは通常30mm〜60mm、好ましくは35mmから55mmが望ましい。また箱型部10−2の大きさは一辺が35mm〜60mm、好ましくは40mm〜55mmの箱型であるのが好ましい。そしてその箱型の一面には送風口2を接続するための穴11が設けられている。
【0023】
窓枠サッシの上部へ案内通路10を取付けるには外側の窓サッシの端部(室内側からは左端部)であることが望ましい。案内通路10の導入部10−1の窓から見た巾は約30mm〜60mmであり、それ以外のサッシの上部の部分(特にガイド9−2と9−3の間またはガイド9−3と9−4の間の部分)はシールしておいた方が外部の空気の取り入れのために有利である。このシールのためのサッシ窓用パッキン構造体は例えば特開2000−240366号公報に記載されている。
【0024】
本発明の換気機構付構造体は送風口2に前記案内通路10を接続し、その案内通路10の先端部を窓枠サッシ上部に設置することによって容易かつ簡単に外部の空気を室内に取り入れることが可能となる。外部の空気は窓枠サッシの上部の空隙から取り入れるので壁に穴を開けたり、特別の換気装置を必要としない。
また本発明の構造体を窓枠サッシの上部、殊にカーテンレールに平行して設置して使用すると、冬期には結露を防止できるという優れた利点を有する。
なお、図面には構造体および案内通路を窓枠サッシの上部にまたはカーテンレールに平行して設置するための取り付け用の付属部品は省略されている。これら付属部品は取り付け用の通常の治具が使用されれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
第1図は、本発明の換気機構付構造体の一例を示す模式図である。
第1図−aは正面図(一部断面図)、第1図−bは底面図、第1図−cは左側面図である。
第2図は、本発明の換気機構付構造体の他の一例を示す模式図である。
第2図−aは正面図(一部断面図)、第2図−bは底面図、第2図−Cは左側面図、第2図−dは第2図−cのX−X’断面図である。
第3図は案内通路の断面図を模式的に示すものであり、窓枠サッシの上部断面も示されている。
付号の説明
A−1:導管の封鎖された端部
A−2:導管の他の端部
1:導管
2:送風口
3:無機多孔質板
4:排出口
5:開口
6:流通口
7:ファン
8:モーター
9:窓サッシ上部断面図
10:案内通路
10−1:導入部
10−2:箱型部
11:穴


【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)の要件を満足する換気機構付構造体。
(1)一方の端部(A−1)は封鎖され、他の端部(A−2)は空気を導管内に送付するためのファンを内設した送風口を有する導管である。
(2)該導管内部は、吸湿または除湿機能を有する無機多孔質板がほぼ水平に設置され、その設置により導管内は上方通路部と下方通路部に区分されている。
(3)該導管の下部には、導管内の空気が下方に向かって排出しうるように、導管の長さ方向に沿って直線状に配置された多数の排出口を有している。
(4)該送風口からファンにより端部(A−2)から導管内に導入された空気は、(i)上方通路部を通過して一方の端部(A−1)の開口より下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出されるか或いは(ii)上方通路部から無機多孔質板に設けられた多数の流通口を通して下方通路部へ流れて多数の排出口より導管外へ排出されるように導管内に開口および/または流通口が設けられている。
【請求項2】
窓サッシの上部に取り付けられかつその上部の間隙から窓外部の空気を取り入れて前記送風口へ空気を導入するための案内通路が該送風口に接続されている請求項1記載の換気機構付構造体。
【請求項3】
窓サッシの室内側に窓枠サッシの上部にほぼ平行して窓内に設置するための付属部品または窓枠サッシの室内側にあるカーテンレールにほぼ平行して設置するための付属部品を有する請求項1記載の換気機構付構造体。
【請求項4】
該送風口に内設されたファンは、6〜24Vの電圧にて可動する請求項1記載の換気機構付構造体。
【請求項5】
該無機多孔質板は、珪藻土板または珪藻頁岩より形成されている請求項1記載の換気機構付構造体。
【請求項6】
該送風口に内設されたファンは、160〜600L/minの風量を有する請求項1記載の換気機構付構造体。



【図1】発明の換気機構付構造体の一例を示す模式図である。−aは正面図(一部断面図)、−bは底面図、−cは左側面図である。
【図2】発明の換気機構付構造体の他の一例を示す模式図である。II−aは正面図(一部断面図)、II−bは底面図、II−cは左側面図、II−dはII−cのX−X’断面図である。
【図3】内通路の断面図を模式的に示すものであり、窓枠サッシの上部断面も示されている。
【符号の説明】
【0020】
A−1:導管の封鎖された端部
A−2:導管の他の端部
1:導管
2:送風口
3:無機多孔質板
4:排出口
5:開口
6:流通口
7:ファン
8:モーター
9:窓サッシ上部断面図
10:案内通路
10−1:導入部
10−2:箱型部
11:穴

【公開番号】特開2006−38372(P2006−38372A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221199(P2004−221199)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(594203944)有限会社アイ・ディ (9)
【Fターム(参考)】