説明

揮発性成分の含有率測定方法

【課題】被測定物を溶媒に溶解させることなく、被測定物中の揮発性成分を測定する。
【解決手段】被測定物を秤量した後に密閉容器に入れ、所定温度まで加熱して揮発性成分を揮発させ、ガスクロマトグラフィを用いて気相部を測定し揮発性成分のピーク面積(Ax)を求める。ピーク面積(Ai)と飽和蒸気圧(Pi)との関係を示す第1の相関関係を用いてピーク面積(Ax)から蒸気圧(Px)を求め、次いで(Px/Ps)を算出し、揮発性成分の含有率(Wj)と(Pj/Ps)との関係を示す第2の相関関係量線を用いて、(Px/Ps)から揮発性成分の含有率(Wx)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被測定物中の揮発性成分の含有率を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂の製造工程おいて、樹脂中の未反応成分や溶媒の含有率を精度よく迅速に測定することは、品質の安定化及び生産性の向上に大きく寄与する。これまで、樹脂などの被測定物中の揮発性成分の含有率を測定する方法としては、揮発性成分を含む被測定物を溶媒で溶解した後、得られた溶液をガスクロマトグラフィで測定する方法、あるいは被測定物を溶媒で溶解した後、揮発性成分は溶解し被測定物は溶解しない溶媒をさらに混合し、その上澄み成分をガスクロマトグラフィで測定する方法など知られている(例えば、特許文献1や非特許文献1)。
【特許文献1】特開平10-288573号公報
【非特許文献1】社団法人日本分析化学会編、改訂三版分析化学便覧、p927 10.12 スチレン系樹脂 丸善株式会社(1981)発行9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の測定方法では、揮発性成分が揮発しないように、揮発性成分を含む被測定物を低温で溶媒に溶解させていたので、溶解させるのに時間がかかっていた。逆に、測定時間を短くするために被測定物を高温で溶解させると、揮発性成分が溶解中に揮発してしまい、正しい含有率を測定できないという問題があった。
【0004】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被測定物を溶媒に溶解させることなく、被測定物中の揮発性成分を測定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、被測定物に含有される揮発性成分の含有率を測定する方法であり、下記の3つの工程を含むことを特徴とする測定方法が提供される。
<第1工程>
(1A) 温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知である揮発性成分を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Ti)まで加熱する第1A工程と、
(1B)任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第1B工程と、
(1C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)を得る第1C工程と、
(1D) 任意の温度(Ti)を異なる任意の温度に繰り返し代えること以外は第1A工程乃至第1C工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との相関関係(以下、「第1の相関関係」という)を求める第1D工程と
を含む第1工程、
<第2工程>
(2A) 揮発性成分を所定の割合、即ち含有率(Wj)で含有する標準測定物と、当該標準測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tj)まで加熱する第2A工程と、
(2B) 任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第2B工程と、
(2C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)を得る第2C工程と、
(2D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Pj)を求める第2D工程と、
(2E) 任意の温度(Tj)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Pj)の割合(以下、「蒸気圧率(Pj/Ps)」という)を算出する第2E工程と、
(2F) 揮発性成分の含有率(Wj)を異なる揮発性成分の含有率に繰り返し代えること以外は第2A工程乃至第2E工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との相関関係(以下、「第2の相関関係」という)を求める第2F工程と
を含む第2工程、
<第3工程>
(3A) 揮発性成分を未知の割合、即ち含有率(Wx)で含有する被測定物を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tx)まで加熱する第3A工程と、
(3B) 任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第3B工程と、
(3C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)を得る第3C工程と、
(3D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求める第3D工程と、
(3E) 任意の温度(Tx)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(以下、「蒸気圧率(Px/Ps)」という)を算出する第3E工程と、
(3F) 算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2F工程で求められた第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める第3F工程と
を含む第3工程
【0006】
ここで、揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi、Vj)として、ガスクロマトグラフィ法において検出器により検出される揮発性成分のピーク面積(Ai、Aj)を用いるのが好ましい。
【0007】
前記ガスクロマトグラフィ法としては、ヘッドスペースガスクロマトグラフィで測定する方法が好適である。なお、ヘッドスペースガスクロマトグラフィとは、測定サンプルを耐圧性のあるバイアル瓶に封入し、恒温槽で一定時間保温することで平衡状態に到達させ、気相成分を分析するものである。
【0008】
また、本発明の測定方法では、被測定物として樹脂固体物が好適であり、測定精度を向上させる観点からは、第3A工程の被測定物の形状は、厚さ5mm以下の板状であるのが好ましい。
【0009】
さらに第3A工程における密閉容器に対する被測定物の体積比率が20%以下とするのが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、揮発性成分の含有率を分析するプログラムであり、コンピュータを、下記の3つの手段を含む手段として機能させるためのプログラムが提供される。
<第1手段>
(1A) 温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知である揮発性成分を密閉容器に
れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Ti)まで加熱する第1A工程と、
(1B) 任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第1B工程と、
(1C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)を得る第1C工程と、
(1D) 任意の温度(Ti)を異なる任意の温度に繰り返し代えること以外は第1A工程乃至第1C工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との第1の相関関係を求める第1D工程と
を含む第1工程により求められた相関関係に係る情報を管理・蓄積する第1手段、
<第2手段>
(2A) 揮発性成分を所定の割合、即ち含有率(Wj)で含有する標準測定物と、当該標準測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tj)まで加熱する第2A工程と、
(2B) 任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第2B工程と、
(2C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)を得る第2C工程と、
(2D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Pj)を求める第2D工程と、
(2E) 任意の温度(Tj)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Pj)の割合(以下、「蒸気圧率(Pj/Ps)」という)を算出する第2E工程と、
(2F) 揮発性成分の含有率(Wj)を異なる揮発性成分の含有率に繰り返し代えること以外は第2A工程乃至第2E工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との第2の相関関係を求める第2F工程と
を含む第2工程により求められた相関関係に係る情報を管理・蓄積する第2手段、
<第3手段>
(3A) 揮発性成分を未知の割合、即ち含有率(Wx)で含有する被測定物と、当該被測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tx)まで加熱する第3A工程と、
(3B) 任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第3B工程と、
(3C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)を得る第3C工程を含む工程により得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)に係る情報を管理・蓄積する第3C手段と、
(3D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求める第3D工程と、
(3E) 任意の温度(Tx)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(以下、「蒸気圧率(Px/Ps)」という)を算出する第3E工程と、
(3F) 算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2F工程で求められた第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める第3F工程と
を含む第3工程により求められた値及び/又は算出された値に係る情報を管理・蓄積する第3手段
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定方法では、被測定物を密閉容器に入れ、溶媒に溶解させることなく、ガスクロマトグラフィを用いて気相部における揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値を測定し、予め求めておいた2つの相関関係に基づいて、前記測定した指標値から被測定物中の揮発性成分の含有率を算出するので、被測定物を溶媒に溶解させていた従来の測定方法に比べ、測定時間を格段に短くできる。また、従来と同等の測定精度を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の測定方法について各工程ごとに順に説明する。まず、本発明の測定方法では第1工程において、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との第1の相関関係を求める。すなわち、温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知である揮発性成分を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Ti)まで加熱する(第1A工程)。そして、任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す(第1B工程)。取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Ti)に維持されて、揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)を得る(第1C工程)。任意の温度(Ti)を異なる任意の温度に繰り返し代えること以外は第1A工程〜第1C工程を複数回繰り返し実施し、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と指標値(Vi)との第1の相関関係を求める(第1D工程)。
【0013】
ここで使用するガスクロマトグラフィ法としては、ヘッドスペースガスクロマトグラフィ(以下、「HSGC」と記すことがる)で測定する方法が好適である。HSGCは、従来公知のものが使用でき、市販品としては島津製作所社製「GC−2010」や「GC−17A]など挙げられる。作業効率を上げる観点からはヘッドスペースサンプラーを付設するのが望ましく、市販品としてはパーキンエルマー社製「TurboMatrix」などが使用できる。
【0014】
ここで、揮発性成分としてトルエンを用い、指標値(Vi)として、ガスクロマトグラフィ法において検出器により検出される揮発性成分のピーク面積(Ai)を用いた場合の、ピーク面積(Ai)と飽和蒸気圧(Pi)との第1の相関関係を表1に示す。また、その第1の相関関係を図1に示す。下記表1から求めた近似式は、
Pi = 4.88×10−7 × Ai (1)
となる。
【0015】
【表1】

【0016】
次に、揮発性成分の含有率(Wj)と、揮発性成分の蒸気圧の飽和蒸気圧に対する割合(Pj/Ps)との関係を表す第2の相関関係を作成する。具体的には、揮発性成分を所定の含有率(Wj)で含有する標準測定物と、この標準測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒とを密閉容器に入れた後、密閉容器を任意の温度(Tj)まで加熱する(第2A工程)。そして、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す(第2B工程)。取り出した気相部をガスクロマトグラフィ法で測定し、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の指標値(Vj)を得る(第2C工程)。次に、得られた指標値(Vj)から、前記第1工程で求めた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Pj)を求める(第2D工程)。そして、任意の温度(Tj)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Pj)の割合(以下、「蒸気圧率(Pj/Ps)」という)を算出する(第2E工程)。揮発性成分の含有率(Wj)を異なる揮発性成分の含有率に繰り返し代えること以外は第2A工程〜第2E工程を複数回繰り返し実施し、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との第2の相関関係を求める(第2F工程)。
【0017】
なお、文献によって、揮発性成分の含有率(Wj)と、揮発性成分の蒸気圧の飽和蒸気圧に対する割合(Pj/Ps)との関係が既にわかっている場合がある。この場合には、前記測定を行うことなく、当該文献上既知の関係を用いればよい。例えば、ポリスチレン樹脂(被測定物)にトルエン(揮発性成分)を含有させた場合は、文献(「POLYMER SOLUTION DATA COLLECTION」 P.J.T and A.M. Abushihada polymer,18,810(1977))から、トルエン含有率(Wj)と、トルエンの飽和蒸気圧に対する蒸気圧(Pj/Ps)との関係は表2に示すように既知である。図2に、(Wj)と(Pj/Ps)との関係を表す第2の相関関係を示す。
【0018】
【表2】

【0019】
以上説明した2つの相関関係を求めることによって、被測定物の揮発性成分の含有率を、溶媒に溶解させることなく測定できるようになる。具体的手順は次の通りである。揮発性成分の含有率(Wx)が未知の被測定物を秤量した後に密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tx)まで加熱する(第3A工程)。そして、任意の温度(Tx)に維持して揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す(第3B工程)。取り出した気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の指標値(Vx)を求める(第3C工程)。得られた揮発性成分の指標値(Vx)から、第1工程で求めた第1の相関関係に基づいて、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求める(第3D工程)。次に、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知であることに基づき、温度(Tx)に対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(Px/Ps)を算出する(第3E工程)。そして、算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2工程で求めた第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める(第3F工程)。
【0020】
実際に、ポリスチレン樹脂中のトルエン(揮発性成分)含有率を測定した。詳細には、トルエン含有率を50%と70%としたポリスチレン樹脂を、内容積20mLのバイアル瓶にそれぞれ1g入れた後、密封した。そして、温度49℃で300min保持した後、HSGCを用いてピーク面積Ajを求めた。そして、図1に示す第1の相関関係から蒸気圧(Px)を求め、それを飽和蒸気圧Ps=11.7kPaで割って(Px/Ps)を算出する。次に、図2に示す第2の相関関係を用いて、(Px/Ps)から含有率(Wx)を求めた。結果を表3に示す。
【0021】
なお、HSGCの測定条件は次の通りである。
HSGC:「GC−2010」島津製作所社製
ヘッドスペースサンプラー:「TurboMatrix」パーキンエルマー社製
トランスファー:200℃
保持時間:30min
注入時間:0.02〜0.2min
全圧:300kPa
【0022】
【表3】

【0023】
表3から明らかなように、本件発明の測定方法では、誤差10%未満の範囲でトルエンの含有率を測定できた。なお、図2に示す第2の相関関係の曲線形状から理解されるように、(Pj/Ps)がおおよそ0.8を超えると、第2の相関関係が徐々に水平に近くなるため、(Pj/Ps)の変化に対してトルエン含有率(Wj)が大きくなり、誤差が大きくなる傾向にある。したがって、(Pj/Ps)が0.8以下の、第2の相関関係が傾きを有する範囲を測定範囲とするならば誤差は大幅に小さくできる。トルエンの含有率50%のサンプル1の場合の測定誤差は3.6%である。
【0024】
また、本発明の測定方法と、被測定物を溶媒に溶かす従来の測定方法との比較実験を行った。具体的には、トルエン含有率の異なる5つのサンプルを用意し、これらのサンプルのトルエン含有率を本発明の方法と従来の方法とで測定し比較した。
【0025】
まず、本発明の方法による測定は、内容積20mLのバイアル瓶に、トルエン含有率の異なる5つのサンプルそれぞれ1g入れた後、密封した。そして、温度49℃で300min保持した後、HSGCを用いて、トルエン含有率の指標値としてのピーク面積Axを求めた。そして、図1に示す第1の相関関係を用いてピーク面積(Ax)から蒸気圧(Px)を求め、それを飽和蒸気圧Pi=11.7kPaで割って(Px/Ps)を算出する。次に、図2に示す第2検量線を用いて、(Px/Ps)から含有率(Wx)を求めた。結果を表4に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
次に、従来の方法による測定は、前記5つのサンプルをそれぞれ溶媒としてのキシレンに溶解した。キシレンの量はサンプルに対して重量比で5倍とした。温度49℃で300min保持した後、HSGCを用いて気相部のトルエン及びキシレンの各ピーク面積を求め、気相部におけるトルエン濃度を求めた。そして、予め作成しておいた、気相部のトルエン濃度とポリスチレン樹脂中のトルエン含有率との関係を示す検量式
y=2.536x
(式中、y:ポリスチレン樹脂中のトルエン含有率,x:気相部のトルエン濃度)
を用いて、ポリスチレン樹脂中のトルエン含有率を求めた。結果を表5に示す。
【0028】
【表5】

【0029】
表4及び表5から明らかなように、本発明の方法で測定したトルエン含有率(Wx)は、従来の方法で測定したトルエン含有率(Wx')と近い値を示しており、本発明の測定方法が従来の測定方法と同程度の測定精度を有していることがわかる。
【0030】
本発明の測定方法における被測定物は固体であれば特に限定はなく、樹脂固体物中の未反応モノマーや残留溶媒などの含有率測定に好適に使用できる。
【0031】
また、密閉容器に入れる被測定物の、密閉容器に対する体積比率は20%以下とするのが好ましい。より好ましい体積比率は10%以下である。密閉容器の気相部を大きくし、ガスクロマトグラフィのサンプリングを容易に行えるようにするため等からである。
【0032】
密閉容器内に被測定物を入れた後、被測定物に含まれる揮発性成分が揮発し平衡状態に達するまで保温する必要がある。この保温時間が長ければ測定精度は向上するものの、測定効率が低下する。そこで、保温時間と揮発性成分の平衡状態との関係を調べた。
【0033】
樹脂固体物としてのポリスチレン樹脂0.4962gと揮発性成分としてのトルエン0.5175gとを混合して、トルエン含有率51%の被測定物を作成した。この被測定物1gをバイアル瓶(内容積20mL)の内底に厚さ約4mm塗布したものと、バイアル瓶の内周壁に厚さ1〜2mm塗布したものとを用意した。次に、これらを温度49℃で、10,60,300,999minそれぞれ保温した後、気相部のガスをガスクロマトグラフィで分析しピーク面積を測定した。そして、第1の相関関係を用いてピーク面積から蒸気圧を求めた。結果を表6に示す。
【0034】
【表6】

【0035】
表6から理解されるように、保温時間が10minではバイアル瓶内のトルエンは未だ平衡状態に達しておらず、保温時間60min以上で平衡状態に達していることがわかる。よって、被測定物を入れたバイアル瓶の保温時間は、通常、60min以上が望ましい。また、被測定物の厚みが4mmの場合と1〜2mmの場合とでは、平衡状態に達するまでの時間に差は見られなかったが、一般に、被測定物の厚みが厚くなるほど平衡に達する時間は長くなる傾向にあるので、被測定物の厚みは通常5mm以下が好ましい。より好ましくは2mm以下である。また被測定物の形状としては板状が望ましい。
【0036】
本発明の測定方法における測定対象に特に限定はないが、揮発性成分を含有した樹脂固体物が好適である。例えば、生産工程における樹脂固形物中の未反応成分や溶媒の含有率を測定するのに好適である。
【0037】
次に、以上説明した被測定物中に含まれる揮発性成分の含有率を測定する装置を実行させるためのプログラムについて説明する。図3に示すように、測定装置を実行させるプログラム11は、測定装置が備える記録媒体10に形成されたプログラム格納領域10a内に格納されている。
【0038】
プログラム11は、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と、揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との相関関係(第1の相関関係)を求める第1モジュール11aと、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との相関関係(第2の相関関係)を求める第2モジュール11bと、揮発性成分を未知の割合で含有する被測定物の前記指標値(Vx)を測定し、得られた指標値から、第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(Px/Ps)を算出し、算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める第3モジュール11cとを備えて構成される。
【0039】
なお、揮発性成分の含有率の測定プログラム11は、その一部若しくは全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、他の機器により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の測定方法では、溶媒に溶解させることなく被測定物中の揮発性成分の含有率を測定できるので、従来に比べ測定時間を格段に短くでき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ピーク面積Aiと飽和蒸気圧Piとの関係を示す第1検量線の一例を示すグラフである。
【図2】(Pj/Ps)とトルエン含有率(Wj)との関係を示す第2検量線の一例を示すグラフである。
【図3】本発明に係るプログラムの構成例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に含有される揮発性成分の含有率を測定する方法であり、下記の3つの工程を含むことを特徴とする測定方法。
<第1工程>
(1A) 温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知である揮発性成分を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Ti)まで加熱する第1A工程と、
(1B)任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第1B工程と、
(1C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)を得る第1C工程と、
(1D) 任意の温度(Ti)を異なる任意の温度に繰り返し代えること以外は第1A工程乃至第1C工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との相関関係(以下、「第1の相関関係」という)を求める第1D工程と
を含む第1工程、
<第2工程>
(2A) 揮発性成分を所定の割合、即ち含有率(Wj)で含有する標準測定物と、当該標準測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tj)まで加熱する第2A工程と、
(2B) 任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第2B工程と、
(2C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)を得る第2C工程と、
(2D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Pj)を求める第2D工程と、
(2E) 任意の温度(Tj)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Pj)の割合(以下、「蒸気圧率(Pj/Ps)」という)を算出する第2E工程と、
(2F) 揮発性成分の含有率(Wj)を異なる揮発性成分の含有率に繰り返し代えること以外は第2A工程乃至第2E工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との相関関係(以下、「第2の相関関係」という)を求める第2F工程と
を含む第2工程、
<第3工程>
(3A) 揮発性成分を未知の割合、即ち含有率(Wx)で含有する被測定物を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tx)まで加熱する第3A工程と、
(3B) 任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第3B工程と、
(3C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)を得る第3C工程と、
(3D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求める第3D工程と、
(3E) 任意の温度(Tx)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(以下、「蒸気圧率(Px/Ps)」という)を算出する第3E工程と、
(3F) 算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2F工程で求められた第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める第3F工程と
を含む第3工程
【請求項2】
揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi、Vj)が、ガスクロマトグラフィ法において検出器により検出される揮発性成分のピーク面積(Ai、Aj)であることを特徴とする請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
前記ガスクロマトグラフィ法が、ヘッドスペースガスクロマトグラフィで測定する方法であることを特徴とする請求項1又は2記載の測定方法。
【請求項4】
被測定物が樹脂固体物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の測定方法。
【請求項5】
第3A工程の被測定物の形状が、厚さ5mm以下の板状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の測定方法。
【請求項6】
第3A工程における密閉容器に対する被測定物の体積比率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の測定方法。
【請求項7】
揮発性成分の含有率を分析するプログラムであり、コンピュータを、下記の3つの手段を含む手段として機能させるためのプログラム。
<第1手段>
(1A) 温度(T)と飽和蒸気圧(P)との関係が既知である揮発性成分を密閉容器に
れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Ti)まで加熱する第1A工程と、
(1B) 任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第1B工程と、
(1C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Ti)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pi)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)を得る第1C工程と、
(1D) 任意の温度(Ti)を異なる任意の温度に繰り返し代えること以外は第1A工程乃至第1C工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の蒸気圧(Pi)と揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vi)との第1の相関関係を求める第1D工程と
を含む第1工程により求められた相関関係に係る情報を管理・蓄積する第1手段、
<第2手段>
(2A) 揮発性成分を所定の割合、即ち含有率(Wj)で含有する標準測定物と、当該標準測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tj)まで加熱する第2A工程と、
(2B) 任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第2B工程と、
(2C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tj)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Pj)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)を得る第2C工程と、
(2D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vj)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Pj)を求める第2D工程と、
(2E) 任意の温度(Tj)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Pj)の割合(以下、「蒸気圧率(Pj/Ps)」という)を算出する第2E工程と、
(2F) 揮発性成分の含有率(Wj)を異なる揮発性成分の含有率に繰り返し代えること以外は第2A工程乃至第2E工程と同様な工程を複数回実施し、揮発性成分の含有率(Wj)と揮発性成分の蒸気圧率(Pj/Ps)との第2の相関関係を求める第2F工程と
を含む第2工程により求められた相関関係に係る情報を管理・蓄積する第2手段、
<第3手段>
(3A) 揮発性成分を未知の割合、即ち含有率(Wx)で含有する被測定物と、当該被測定物及び揮発性成分を溶解する溶媒との両者を密閉容器に入れ、密閉後の密閉容器を任意の温度(Tx)まで加熱する第3A工程と、
(3B) 任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部の一部を取り出す第3B工程と、
(3C) 取り出された気相部をガスクロマトグラフィ法で測定することにより、任意の温度(Tx)に維持されて揮発性成分の蒸気圧(Px)が平衡状態にある密閉容器の中の気相部に含まれる揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)を得る第3C工程を含む工程により得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)に係る情報を管理・蓄積する第3C手段と、
(3D) 得られた揮発性成分の量又は当該量と相関関係を有する指標値(Vx)から、第1D工程で求められた第1の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の蒸気圧(Px)を求める第3D工程と、
(3E) 任意の温度(Tx)から、揮発性成分の温度(T)と飽和蒸気圧(P)との既知である関係に基づき、対応する飽和蒸気圧(Ps)を求め、次いで揮発性成分の飽和蒸気圧(Ps)に対する揮発性成分の蒸気圧(Px)の割合(以下、「蒸気圧率(Px/Ps)」という)を算出する第3E工程と、
(3F) 算出された蒸気圧率(Px/Ps)から、第2F工程で求められた第2の相関関係に基づき、対応する揮発性成分の含有率(Wx)を求める第3F工程と
を含む第3工程により求められた値及び/又は算出された値に係る情報を管理・蓄積する第3手段

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−151579(P2010−151579A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329276(P2008−329276)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)