揮発性有機化合物測定方法
【課題】構成が比較的簡単な装置を使用してVOC(揮発性有機化合物)放散速度を比較的短時間で測定でき、かつ特定の部品からのVOC放散速度の測定にも適用できる揮発性有機化合物測定方法を提供する。
【解決手段】試料22と清浄な気体とをサンプリングバッグ21内に封入する。そして、封入直後及び1時間経過後にサンプリングバッグ21から気体をサンプリングし、測定器23によりVOC濃度を測定する。その後、VOC濃度の測定結果からVOC放散速度を算出し、稼働時における使用温度及び稼働時における換気の影響に基づいて、VOC放散速度を補正する。
【解決手段】試料22と清浄な気体とをサンプリングバッグ21内に封入する。そして、封入直後及び1時間経過後にサンプリングバッグ21から気体をサンプリングし、測定器23によりVOC濃度を測定する。その後、VOC濃度の測定結果からVOC放散速度を算出し、稼働時における使用温度及び稼働時における換気の影響に基づいて、VOC放散速度を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:以下、「VOC」ともいう)の放散速度を容易に測定できる揮発性有機化合物測定方法に関し、特に部品から放散される揮発性有機化合物の放散速度の測定に好適な揮発性有機化合物測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シックハウス症候群が問題になり、厚生労働省の室内濃度指針値、及び学校保健法に基づく環境衛生の基準等が制定・改訂された。それを受けて電子情報技術産業協会(JEITA)により「パソコンに関するVOCガイドライン(第1版)」が制定され、規制物質(トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン及びスチレン)に関する放散速度の指針値及び放散速度の測定方法が規定されている。
【0003】
上述のJEITA発行のパソコンに関するVOCガイドライン(以下、単に「VOCガイドライン」という)では、いわゆるチャンバー法によりVOC放散速度を測定することを規定している。図1にVOC放散速度の測定に用いるVOC測定システムの構成例を示す。また、図2にVOC放散速度の測定条件を示し、図3に各規制物質の放散速度の指針値を示す。なお、図2中のVpは被測定機(測定対象製品)の容積、Vkはチャンバーの容積である。
【0004】
図1に示すように、VOC測定システムは、エアー制御ユニット11、混合槽12、恒温槽13、チャンバー14、ガスクロマトグラフ分析装置15、TENAX(登録商標)管(粒状の吸着剤を充填した管)16及びサンプリングポンプ17により構成されている。測定対象製品(パソコン又はディスプレイ)10はチャンバー14内に配置される。チャンバー14は、測定対象製品10の4倍〜100倍の容積を有することが要求される。また、チャンバー14は恒温槽13内に配置されており、一定の温度(23℃±2℃)に保持される。
【0005】
チャンバー14内の空気はエアー制御ユニット11により循環し、換気回数は0.5回/h又は1回/hに設定される。エアー制御ユニット11とチャンバー14との間には混合槽12が配置されており、この混合槽12によりチャンバー14内に供給される空気の湿度が50%±5%RHに維持される。
【0006】
測定対象製品10は、チャンバー14内で5時間稼働させる。その後、サンプリングポンプ17を稼働してチャンバー14内の空気をTENAX管16内に通流させ、そのTENAX管16をガスクロマトグラフ分析装置15に装着して各規制物質の濃度を測定する。そして、下記(1)式により放散速度を算出する。
【0007】
【数1】
ここで、SERUBは各規制物質の放散速度(μg/h)、Ynは各規制物質の濃度(μg/m3)、nBは換気回数(回/h)、VKはチャンバー14の容積(m3)である。
【0008】
なお、本発明に関係すると思われる従来技術として、特許文献1〜6に記載されたものがある。特許文献1には、物体(人体等)から放出されるガスをバッグ内に収集し、その後ガスクロマトグラフ分析装置等により分析することが記載されている。また、特許文献2には、ポリプロピレン又はガラスなどからなる小型容器内に試料を収容し、試料から放出される揮発成分を分析することが記載されている。
【0009】
特許文献3には、基板の平坦面にガス成分を吸着させた後、飛行時間型二次イオン質量分析装置又はフーリエ変換赤外分光器のいずれかによりガス成分を分析することが記載されている。特許文献4,5には、VOC測定装置の例が記載されている。これらの特許文献4,5に記載されたVOC測定装置は、いずれもチャンバー法によりVOCの量を測定するものである。特許文献6にはガスクロマトグラフ分析装置の一例が記載されている。
【特許文献1】特開2007−155385号公報
【特許文献2】特開2007−101337号公報
【特許文献3】特開2003−42951号公報
【特許文献4】特開2007−178288号公報
【特許文献5】特開2005−257588号公報
【特許文献6】特開2005−77144号公報
【特許文献7】特開2005−156299号公報
【特許文献8】特許3502622号明細書
【非特許文献1】竹内文代、尾崎光男、“電気部品(トランス)からのVOC放散速度の評価方法”、2008年、第26回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集、212−214頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のVOCガイドラインに規定されたVOC放散速度の測定方法は、大掛かりな設備が必要である上、測定に時間がかかるという問題点がある。また、VOCを低減するためには製品に使われる部品毎のVOC放散速度を知ることが重要であるが、VOCガイドラインでは測定対象製品(パソコン又はディスプレイ)を実際に稼働させてVOCを測定することを要求しているため、特定の部品からのVOC放散速度を測定することができない。特定の部品だけをチャンバー内に配置してVOC放散速度を測定することも考えられるが、その場合は測定に時間がかかるという問題点がある。また、単にチャンバー内に特定の部品を配置するだけでは、実際の使用時の状態を再現することができない。
【0011】
なお、製品に使用される部品から放散されるVOCを測定する場合、部品と清浄な気体(空気等)とを密閉式のバッグ内に封入し、一定時間経過後(又は、一定時間加熱後)にバッグ内の気体を分析してVOCの種類と濃度とを測定することが考えられる。このような方法はバッグ法と呼ばれている。
【0012】
しかし、バッグ法では、通常1回限りの測定であり、結果として得られるのは部品から発生するVOCの種類とそれらの発生量の大小関係であって、チャンバー法のように製品を実際に稼働したときの温度上昇の影響や換気の影響を再現して放散速度を測定することはできない。なお、バッグ法はVOC等の定性分析等に使用されている。
【0013】
そこで、揮発性有機化合物測定方法に関し構成が比較的簡単な装置を使用してVOC放散速度を比較的短時間で測定でき、かつ特定の部品からのVOC放散速度の測定にも適用できる測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一観点によれば、試料と気体とをバッグに封入する工程と、時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程とを有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法が提供される。
【0015】
上記観点においては、試料と気体とをバッグに封入した後、時間をおいて少なくとも2回、気体中に含まれるVOC(揮発性有機化合物)の濃度を測定する。そして、それらの濃度の変化からVOC放散速度を算出する。
【0016】
VOCガイドラインでは、製品を稼働した状態で換気を行ってVOC放散速度を測定することを規定している。そこで、本発明においては、部品の温度上昇によるVOC放出量の変化が問題になる場合、稼働時における試料の温度に応じてVOC放散速度を補正する。また、換気により放散速度が変わるため、換気回数に応じてVOC放散速度を補正する。
【0017】
VOC放散量が多い試料の場合、バッグに封入した直後からバッグ内のVOC濃度が急激に上昇し、その後VOC濃度の上昇率は時間の経過とともに減少する。従って、バッグに封入した直後とそれから短時間経過した後のVOC濃度を測定し、その測定結果からVOC放散速度を計算すると、VOCガイドラインに沿ってVOC放散速度を測定した場合に比べて多めの値となる。
【0018】
すなわち、上記観点に基づいてVOC放散速度を測定し、その放散速度がVOCガイドラインの指針値よりも小さい場合は、VOCガイドラインに沿って放散速度を測定しても、指針値よりも小さくなるということができる。一方、上記観点に基づいてVOC放散速度を測定し、その放散速度がVOCガイドラインの指針値よりも大きい場合は、VOCガイドラインに沿って放散速度を測定したときに、指針値よりも小さくなる場合と大きくなる場合とがある。このような場合は、必要に応じてVOCガイドラインに沿って放散速度を測定してもよい。または、その部品に対して加熱等のVOC削減処理を施し、VOCガイドラインの指針値以下になるのを確認してから、製品に搭載してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。第1実施形態では、密閉式のサンプリングバッグ21内に試料(製品、又は製品に使用される部品等)22と清浄な気体とを封入する。そして、時間をおいて少なくとも2回サンプリングバッグ21から気体をサンプリングし、測定器23により気体中のVOC濃度を測定して、VOCの濃度変化から放散速度を算出する。そして、この放散速度に対し、チャンバー法により測定した場合の放散速度に対応するように補正計算を行う。
【0021】
サンプリングバッグ21に封入する気体は、製品使用時の雰囲気と同じであることが好ましく、空気を使用することができる。但し、その場合はフィルタを通す等の方法により、空気中に含まれる異物を十分に除去することが必要である。気体中に含まれる異物の影響を取り除くという観点から、予め精製された窒素又はその他の気体を使用してもよい。窒素は空気中の約8割を占める元素であり、製品使用時の雰囲気を再現するという観点からも適している。
【0022】
サンプリングバッグ21に封入する気体の量は、測定のためにサンプリングする気体の量に比べて十分多くすることが好ましい。これにより、サンプリングによる気体の減少が次の測定に影響を与えないようにすることができる。
【0023】
測定器23はVOCを5%程度の精度で定量測定できるものであればよい。この種の測定器として、サンプリング量が5〜100mL(ミリリットル)のものが種々市販されている(例えば、JMS社製VOCモニターJHV−1000)。1回の測定に必要なサンプリング量を100mL、サンプリングバッグ21への気体封入量を20L(リットル)とすれば、1回の測定におけるサンプリングバッグ21内の気体の減少量は 0.5%となる。前述したように、本実施形態で用いる測定装置23のVOC定量測定の精度が5%程度であるので、10回程度の測定ではサンプリングによる気体の減少量の影響を無視できると考えてよい。
【0024】
図5(a)は、横軸に経過時間をとり、縦軸にVOC(キシレン)濃度をとって、2つの試料(試料A及び試料B)をそれぞれ封入したバッグ内のVOC(キシレン)濃度の変化を測定した結果を示す図である。また、図5(b)は、図5(a)の縦軸のキシレン濃度をキシレン放散量に換算したものである。但し、VOC(キシレン)放散量が少ない試料Aではサンプリングバッグ21内に20Lの気体を封入しており、VOC(キシレン)放散量が多い試料Bではサンプリングバッグ21内に30Lの気体を封入している。
【0025】
図5(a),(b)からわかるように、VOC(キシレン)放散量の多い試料Bでは、バッグに封入した直後からバッグ内のVOC濃度が急激に上昇し、時間の経過とともに濃度の上昇率は小さくなる。これに対し、VOC放散量の少ない試料Aでは、バッグ内のVOC濃度が緩やかにかつ経過時間に対しほぼ直線的に上昇する。
【0026】
上述の方法でVCO濃度の時間変化を測定した後、下記(2)式により放散速度Sbを
算出する。
【0027】
【数2】
ここで、Z0はVOC濃度の初期値、Z1はΔt時間経過後のVOC濃度、VNはサンプリングバッグ21に封入した気体の量である。なお、本実施形態では、VOC濃度の初期値Z0として、サンプリングバッグ21内に規定量の気体を封入した直後にバッグ21内の気体をサンプリングして測定したVOC濃度を採用する。後述するように、本実施形態では、バッグ21内への規定量の気体の注入に要する時間を10分としている。この時間は10分に限定するものではないが、VOC濃度の初期値に関係するので、全ての試料に対し同じ時間とすることが重要である。
【0028】
放散速度Sbは、図5(b)に示す曲線の左端側の部分の傾きを示す。Δtを1時間とすると、図5(a),(b)に示す例では、試料Aの放散速度Sbが約2.5μg/h、試料Bの放散速度Sbが約40.3μg/hとなる。
【0029】
ところで、VOCガイドラインでは、VOC放散速度を測定する際に、製品を実際に稼働させることを規定している。製品を稼働することにより部品の温度が上がり、VOCの放出量は増加する。従って、上記(2)式で求めた放散速度SbをVOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度に対応させるためには、製品を稼働した場合に対する増加係数(以下、「稼働による増加係数」という)Konを考慮した補正を行うことが必要となる。本実施形態においては、稼働による増加係数Konを以下のようにして決定する。
【0030】
すなわち、サンプリングバッグの中に試料と清浄な気体(空気又は窒素)を封入し、予め測定しておいた装置稼働時の部品温度まで昇温する。その後、サンプリングバッグ中のVOC濃度を測定してVOCの放散速度Sb1を算出する。一方、部品温度を常温(23℃±2℃)とする以外は上記と同様にして常温におけるVOCの放散速度Sb2を測定する。そして、これらの放散速度の比(Sb1/Sb2)を増加係数Konとする。なお、装置稼働時の部品温度として、稼働時の部品の実測温度を用いる替わりに、設計時の部品温度を用いてもよい。
【0031】
また、VOCガイドラインでは、チャンバー内を換気することが規定されている。そこで、前述の(2)式により求めた放散速度SbをVOCガイドラインに沿って測定した放散速度に対応させるためには、換気による変化係数を考慮した補正を行ってもよい。本実施形態では、換気による変化係数Kventを下記(3)式により求める。
【0032】
【数3】
但し、(3)式において、nは換気回数を示し、1時間で1回換気する場合にはn=1となる。また、n・Δt/(1+n・Δt)は時間Δtにおける容積変化率を示し、Z1/(Z1−Z0)は時間Δtにおける濃度変化率を示している。
【0033】
本実施形態では、(2)式により求めた放散速度Sbに、上述の稼働による増加係数Kon、又は増加係数Konと換気による変化係数Kventとを乗算して(すなわち、放散速度Sbを補正して)チャンバー法でVOC放散速度を測定した場合の放散速度のピークの予測値とし、この予測値(以下、「評価値」という)に基づいて、部品の、製品に使用する場合の適否を評価する。
【0034】
チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度は、通常、図6のような変化を示す。すなわち、VOC放散量の多い試料は、放散速度のピークが高く、かつ比較的短時間(通常約2時間以内)でピークに到達する。そして、ピークを過ぎると放散速度は徐々に減少する。一方、VOC放散量の少ない試料は、放散速度のピークが低く、かつなだらかである。また、ピークを過ぎた後の放散速度の減少割合も小さい。これらのことから、放散速度の初期の挙動が把握できれば、その後の放散速度の変化をある程度予測することができることがわかる。
【0035】
前述したように、VOCガイドラインでは、製品を稼働状態にしてから5時間経過後に放散速度の測定を行うことを規定している。図6からわかるように、5時間経過後のチャンバー法で測定した場合の放散速度は通常ピークを過ぎたあたりである。本実施形態では、バッグ内のVOC濃度からチャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値を予測するが、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値は、ガイドラインに沿って測定したVOC放散速度(稼働状態にしてから5時間経過後のVOC放散速度)の値よりも大きくなる。従って、本実施形態により得られたVOC放散速度(評価値)は、通常、VOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度よりも大きな値となる。すなわち、本実施形態により求めたVOC放散速度(評価値)がVOCガイドラインの指針値よりも低い場合は、VOCガイドラインに沿ってVOC放散速度を測定しても指針値より低くなるということができる。
【0036】
本実施形態によれば、部品の段階で、大掛かりな装置を用いることなく、簡便にVOC放散速度を測定することができる。また、部品の段階で求めたVOC放散速度から、VOCガイドラインに沿って測定した場合の製品稼働状態におけるVCO放散速度を推定することができる。その結果、部品単体でのスクリーニング試験が可能となり、部品の、製品に使用する場合の適否を効率的に評価することができる。
【0037】
以下、液晶ディスプレイから放散されるVOCの放散速度の測定例について説明する。
本願発明者らは、チャンバー法でキシレンの発生が多かった液晶ディスプレイについて分解調査を行った。その結果、この液晶ディスプレイでは、VOC発生源は主に電源トランスであることが判明した。ここでは、2つの電源トランス(試料A及び試料B)の放散速度を測定した。
【0038】
(測定例1)
まず、サンプリングバッグとしてテドラー(登録商標)バッグを用意した。そして、テドラーバッグの一部を切って試料A(トランス)を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。これと同様にして、試料B(トランス)もテドラーバッグ内に封入した。
【0039】
次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。その後、試料Aを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器(JMS社製VOCモニターJHV−1000)によりVOC濃度を測定した。その後も、1時間毎にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。
【0040】
また、これと同様に試料Bを挿入したテドラーバッグ内に30Lの清浄な窒素ガスを3L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。その後も、1時間毎にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。前述の図5(a)は、このようにして測定した2つの試料(試料A及び試料B)のVOC濃度の測定結果を示している。
【0041】
試料Aについて、VOC(キシレン)濃度の初期値が26μg/m3、1時間経過後のVOC濃度が149μg/m3であるので、前記(2)式により放散速度Sbを求めると、下記(4)式に示すように約2.5μg/hとなる。
【0042】
【数4】
試料Bについて、VOC(キシレン)濃度の初期値が174μg/m3、1時間経過後のVOC濃度が1517μg/m3であるので、前記(2)式により放散速度Sbを求めると、下記(5)式に示すように約40.3μg/hとなる。
【0043】
【数5】
なお、図5(a)の例では、1時間毎にVOC(キシレン)濃度を測定している。これは、VOC濃度の測定間隔を長くすると、特にVOC放散量が多い試料ではVOC放散速度を過少評価してしまうおそれがあるためである。従って、VOC濃度は、短い間隔で測定することが好ましい。また、ここでは放散速度Sbを算出する時間間隔Δtを1時間としているが、ΔtはVOCガイドラインで定める1換気に要する時間、すなわち1時間〜2時間の範囲内で定めるのがよい。この時間間隔Δtを長くすると、やはりVOC放散速度を過少評価してしまうおそれがある。
【0044】
更に、上記の例では、試料に応じて気体の注入量(テドラーバッグの容量)を変えている。これは、サンプリングした気体中のVOC濃度が極端に高くなり(又は、極端に低くなり)、VOC測定器による測定精度が低下することを回避するためである。
【0045】
(測定例2)
まず、稼働時の電源トランスの温度を測定するために、ディスプレイの背面カバーを外し、電源トランスが外から見えるようにした。また、ディスプレイにパソコンを接続し、パソコン及びディスプレイに通電して稼動状態とした。この状態で電源トランスの温度を熱電対で測定した。その結果、電源トランスの温度は60℃であった。なお、ディスプレイに使用されている電源トランスは、前述の試料A及び試料Bとは異なるものである。
【0046】
次に、電源トランスからの常温におけるVOC放散速度を測定するために、ディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを容量が30Lのテドラーバッグに入れ、真空引きした。その後、テドラーバッグ内に30Lの清浄な窒素を3L/minの流量で10分かけて封入した。そして、封入直後及び1時間経過後にテドラーバッグから気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)濃度を測定した。その結果、封入直後のVOC濃度は174μg/m3であり、1時間経過後のVOC(キシレン)濃度は884μg/m3であった。これらの値から、常温におけるVOC(キシレン)放散速度Sbを計算すると、下記(6)式に示すように約21.3μg/hとなる。
【0047】
【数6】
次に、稼働状態における電源トランスからのVOC放散速度を測定するために、ディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを容量が50Lのテドラーバッグに入れ、真空引きした。その後、テドラーバッグ内に40Lの清浄な窒素を4L/minの流量で10分かけて封入した。そして、封入直後にテドラーバッグから気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)濃度を測定した。その結果、VOC(キシレン)濃度は162μg/m3であった。なお、ここでは、テドラーバッグの容量及び窒素の注入量を、電源トランスからのVOC放散量と加熱による熱膨張とを考慮して決めている。
【0048】
上述の電源トランス及び窒素を封入したテドラーバッグを温度が60℃の恒温槽に入れ、1時間経過した後、恒温槽から出して200mLの気体をサンプリングし、別のバッグに移して常温まで冷却した。その後、バッグから常温の気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)の濃度を測定した。その結果、VOC(キシレン)濃度は1510μg/m3であった。これらの封入直後及び1時間経過後のVOC濃度の値から、稼動状態におけるVOC(キシレン)放散速度Sbを計算すると、下記(7)式に示すように約52.9μg/hとなる。
【0049】
【数7】
稼働による増加係数Konは、前述したように常温におけるVOC放散速度と稼動状態におけるVOC放散速度との比をとることにより得られる。ここで、稼働による増加係数Konを計算すると、下記(8)式に示すように約2.5となる。
【0050】
【数8】
図7に、測定条件、VOC濃度の測定タイミング、VOC(キシレン)濃度の測定値、
放散速度の計算値及び稼働による増加係数Konをまとめて示す。
【0051】
なお、サンプリングバッグから温度の高い気体を直接サンプリングすると、VOCが吸着剤(TENAX−TAなど)に吸着されずに通過してしまう。このため、上記の例ではテドラーバッグからサンプリングした気体を別のバッグに移して常温まで冷却し、その後バッグから常温の気体をサンプリングしてVOC濃度を測定している。このような方法に替えて、例えば図8に示すように、試料22が封入されたサンプリングバッグ21とサンプリングバッグ21内の気体を恒温槽31の外部に取り出すポンプ32との間を接続する配管33a中に冷却機34を取り付けて気体を常温まで冷却し、ポンプ32からサンプリングバッグ21への戻り配管33b中にサンプリング口35を設けて、このサンプリング口35から常温の気体をサンプリングできるようにしてもよい。
【0052】
(放散速度の推定)
測定例2の測定結果を基に、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値を推定した。そして、その推定したVOC放散速度のピーク値(評価値)と実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度のピーク値とを比較した。すなわち、容量が20Lのチャンバー内に、前述のディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを収納し、常温環境下で換気回数が1回/hの条件(流量換算で333mL/min)で清浄な窒素を流し続け、排出される気体を1時間毎にサンプリングして、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。測定例2で説明したように、封入直後のVOC濃度Z0は174μg/m3であり、1時間経過後のVOC濃度Z1は884μg/m3であるので、換気による変化係数Kventは、下記(9)式に示すように0.62となる。
【0053】
【数9】
前述したように、この電源トランスの常温における1時間後のVOC(キシレン)放散速度は約21.3μg/hである。これらのことから、この電源トランスをチャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値は、下記(10)式に示すように13.2μg/hと推定される。従って、ここでは、電源トランスのVOC放散速度の評価値を13.2μg/hとした。
【0054】
【数10】
この電源トランスについて、実際に上記の条件でチャンバー法により1時間毎の放散速度を測定した。その結果を図9に示す。この図9からわかるように、放散速度のピーク値は13.8μg/hであり、本実施形態の方法により求めた評価値(13.2μg/h)に近いことがわかる。
【0055】
(電源トランスの適否の評価)
測定例1で常温における放散速度を測定した試料A及び試料Bについて、製品に使用する場合の適否について検討した。ここでは、VOCガイドラインに沿って換気回数nを1回/hとする。
【0056】
試料Aについて換気による変化係数Kventを計算すると、VOC濃度の初期値Z0が2
6μg/m3、1時間経過後のVOC濃度Z1が149μg/m3であるので、下記(11)
式に示すように0.61となる。
【0057】
【数11】
また、温度による増加係数Konは前述の測定例2に示すように2.5であり、放散速度Sbは測定例1に示すように2.5μg/hであるので、VOCガイドラインに沿って測定した場合のVOC放散速度のピーク値の推定値(評価値)SERは、下記(12)式に示すように3.8μg/hとなる。
【0058】
【数12】
これと同様に、試料Bについて換気による変化係数Kventを計算すると、VOC濃度の
初期値Z0が174μg/m3、1時間経過後のVOC濃度Z1が1517μg/m3であるので、下記(13)式に示すように0.56となる。
【0059】
【数13】
また、温度による増加係数Konは前述の測定例2に示すように2.5であり、放散速度Sbは測定例1に示すように40.3μg/hであるので、VOCガイドラインに沿って測定した場合のVOC放散速度のピーク値の推定値(評価値)SERは、下記(14)式に示すように56.4μg/hとなる。
【0060】
【数14】
VOCガイドラインに規定するディスプレイのキシレン放散速度の指針値は、435μg/h・unitである(図3参照)。従って、本実施形態により求めた試料A及び試料Bのトランスのキシレン放散速度(評価値)はいずれもVOCガイドラインに規定するキシレン放散速度の指針値よりも小さく、ディスプレイへの使用に適していると判定することができる。
【0061】
これらの試料A及び試料Bのトランスを実際に製品となるディスプレイに搭載し、VOCガイドラインに沿ってチャンバー法で測定した結果、試料Aのキシレン放散速度(5時間後の放散速度)は5μg/h、試料Bのキシレン放散速度(5時間後の放散速度)は41μg/hであり、本実施形態により求めたVOC放散速度(評価値)とよい相関を示した。このことから、本実施形態に係るVOC測定方法によりVOCの放散速度を測定し、その結果に基づいて製品に使用する場合の適否を判定しても問題ないことが確認された。
【0062】
なお、上述のように、放散速度が小さい試料(試料A)の場合、本実施形態で求めたVOC放散速度(評価値)が実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度よりも小さくなることがある。これは、放散速度が小さい試料の場合、放散速度が大きい試料に比べてピーク値となる時間が遅くなることに起因している。しかしながら、VOC放散速度が小さい試料ではVOC放散速度が指針値を超えるおそれがないため、放散速度が小さい試料の場合に本実施形態の方法で求めたVOC放散速度(評価値)が実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度より小さくなっても、問題となることはない。一方、放散速度が大きい試料については、本実施形態の方法により求めたVOC放散速度(評価値)は、VOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度よりも大きめな値となる。つまり、放散速度が大きい部品については、十分なマージンをもって製品に使用する場合の適否を判定することができる。
【0063】
上記の測定例で用いたディスプレイには電源トランスが1個だけ使用されていたが、例えばデスクトップ型パソコンなどではVOC発生源となるトランスが複数個搭載されていたり、発生源がトランスと接着剤というように複数種であったりすることがある。これらの場合、それぞれの部品(又は部材)についてVOC放散速度を測定し、それらの値を加算して製品全体のVOC放散速度を推定すればよい。また、本実施形態は、パソコン等に使用される筐体のVOC放散速度の測定に適用することもできる。
【0064】
(第2実施形態)
上述のように、第1実施形態ではサンプリングバッグ21から一定量の気体をサンプリングし、その中に含まれるVOCを測定機23(VOCモニター等)により成分毎に分離して定量分析を行う。しかし、上述のVOCモニターではVOCを各成分に分離するのにクロマトグラフ法を用いるため、測定に時間がかかってしまう。また、気体のサンプリング回数を多くするとバッグ21内の気体の量が減少し、濃度の測定精度が低下してしまう。従って、サンプリング回数が制限される。
【0065】
そこで、第2実施形態では、VOC濃度の測定のためのサンプリングが不要であり、より一層迅速な測定が可能となるVOC測定方法について説明する。ここに、図10は、第2実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。なお、図10において、サンプリングバッグ21及び測定器23は第1実施形態と同様であり、その詳細な説明は省略する。また、以下の説明では、説明の便宜上、測定器23をVOC測定器23と記載する。
【0066】
図10に示すように、サンプリングバッグ21には、試料22と清浄な気体とTVOC(Total Volatile Organic Compounds:総揮発性有機化合物)測定器24(又はTVOC測定器24のセンサ部)とが封入される。ここで、TVOC測定器とは少なくともトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン及びパラジクロロベンゼンが検出可能な測定器である。本実施形態ではTVOC測定器24として、フィガロ技研社製TVOCモニターFTVR−01を使用する。
【0067】
このTVOC測定器24は半導体式ガスセンサーを備えたパッシブ式の測定機であり、サンプリングバッグ21内の気体をサンプリングすることなくTVOC濃度を測定できる。また、このTVOC測定器24はVOC全成分の濃度をトルエン換算濃度として出力する。
【0068】
TVOC測定器24では複数種類のVOCを成分毎の濃度に分離して測定することができない。そこで、第2実施形態ではVOC測定器23で測定したVOCの成分毎の濃度と、TVOC測定器24で測定したTVOC濃度との相関に基づいて換算係数(VOC成分の濃度/TVOC濃度)を算出する。この換算係数をTVOC濃度に乗じることで、着目するVOC成分の濃度を求める。
【0069】
換算データベース26には、上述の換算係数が格納されている。また、情報処理装置27は、試料のVOC放散速度の評価を行う際に、その試料の種類に応じた換算係数を換算データベース26から読み出して、TVOC濃度を所定のVOC成分の濃度に換算する。
【0070】
換算係数は以下の手順で求められる。まず、サンプリングバッグ21内に試料22、TVOC測定器24(又はそのセンサー部)及び気体を封入する。次に、封入から一定時間経過後にサンプリングバッグ21内の気体をサンプリングして、VOC測定器23でVOC濃度を測定する。また、サンプリングと同時にTVOC測定器24によりTVOC濃度を測定する。
【0071】
次に、TVOC測定器24により測定したTVOC濃度とVOC測定器23により測定した各VOCの濃度との相関に基づいて、VOC成分毎の換算係数を求める。この換算係数はVOC濃度とTVOC濃度との比(VOC濃度/TVOC濃度)として各VOC成分について算出する。以上のようにして換算係数が求まる。
【0072】
なお、形式番号が同一の部品であれば、放散するVOCの成分も同じであるので、個体や製造ロットが変わっても同じ換算係数を用いてVOC濃度を求めることができる。一方、同一種類の部品間であっても形式番号が異なる場合は、放散するVOCの成分又はその割合が異なるので、一般に同じ換算係数を用いても正確なVOC濃度を求めることができない。従って、試料の種類(部品の形式番号)毎にTVOCとVOC各成分の濃度との相関を測定して換算係数を求めておくことが好ましい。
【0073】
ところで、VOC濃度の評価を行う必要があるのは規制物質の中でも特に放散量(放散速度)が大きい成分である。そこで、放散量の多い成分又は放散速度が高く指針値との比(試料からの放散速度/指針値の放散速度)が大きな成分に着目し、その成分についてのみ換算係数及びVOC濃度を算出してもよい。これにより、製品に使用する場合の部品の適否の判定を効率的に行うことができる。
【0074】
本実施形態では、以下の手順によりTVOC測定器24を用いた試料のVOC放散速度の評価を行う。まず、サンプリングバッグ21内に試料22、TVOC測定器24、及び気体(空気又は窒素)を封入し、TVOC測定器24により気体中のTVOC濃度の時間変化を測定する。
【0075】
次に、TVOC濃度の測定結果に着目するVOC成分に応じた換算係数を乗ずることで、着目するVOC成分の濃度の時間変化を求める。そして、着目するVOC成分の濃度の時間変化から、第1実施形態の(2)式により着目するVOC成分の放散速度を求める。
【0076】
次いで、第1実施形態と同様の手順で、稼働による増加係数KON及び換気による変化係数KVENTの少なくとも何れかを乗算して、チャンバー法により測定した場合の放散速度の評価値を求め、この評価値に基づいて部品の製品に使用する場合の適否を評価する。
【0077】
以上のように本実施形態では、換算係数を求めることで、気体のサンプリングをせずに、TVOC測定器24を用いて試料22のVOC放散速度を評価する。また、半導体式ガスセンサーを用いたTVOC測定器24ではクロマトグラフを用いるVOCモニターよりも短時間で測定が完了するため、VOC測定に要する時間を短縮することができる。
【0078】
以下、第2実施形態に係るVOC測定方法について測定例を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0079】
(測定例3)
測定例3ではディスプレイ用の電源トランス(試料X)について換算係数を求めた。まず、サンプリングバッグとして容量が20Lのテドラーバッグを用意した。そして、テドラーバッグの一部を切って試料XとTVOC測定器(フィガロ技研製パーソナルTVOCモニターFTVR-01)のセンサー部を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。その後、試料Xを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。
【0080】
そして、コックを閉じてから1時間経過後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器(JMS社製VOCモニターJHV-1000)により各VOC成分の濃度を測定した。また、サンプリングと同時にTVOC測定器でバッグ内のTVOC濃度を測定した。
【0081】
(換算係数の算出)
図11は、測定例3の各VOC成分濃度及びTVOC濃度の測定結果と換算係数とを示す図である。図11に示す測定結果に基づいて、試料Xの換算係数として、各VOC成分濃度をTVOCの測定値で割った値を算出した。例えばキシレンの換算係数は、1895÷6586=0.288となる。
【0082】
図11の結果から、試料Xについてはキシレンとエチルベンゼンの濃度及び換算係数が高いことが分かる。JEITAの定める指針値によれば、エチルベンゼンで許容される放散速度は、キシレンで許容される放散速度よりも大きい。このため、各成分の放散速度の指針値に対する比(試料からの放散速度/放散速度の指針値)は、キシレンの方がエチルベンゼンよりも大きい。従って、試料Xと同一種類の試料(トランス)についてのスクリーニングでは、キシレンの放散速度に着目する必要があることがわかる。
【0083】
なお、測定例3では、1個の試料XのTVOC濃度を1回だけ測定して換算係数を求めたが、より精度を上げるために1個の試料XのTVOC濃度を時間経過毎に複数回測定して換算係数を求めてもよい。また、試料Xと同一種類の複数の試料のTVOC濃度を複数回測定して統計的に換算係数を求めてもよい。
【0084】
(測定例4)
次に、試料Xと同一種類の試料Y(トランス)について、VOC放散速度の評価を行った。まず、テドラーバッグの一部を切り、試料YとTVOC測定器のセンサー部を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。次に導入口のコックを開け、真空引きをして内部の気体を排出した後、20Lの清浄な窒素を2L/minで10分かけて導入し、コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後から2分毎にTVOC測定器によるTVOCの測定を行った。また、試料Zについても同様の条件でTVOCの測定を行った。
【0085】
測定の結果、図12に示す結果が得られた。ここに、図12は、測定例4のTVOC測定結果を示す図である。また、図13は、図12に示す測定結果に測定例3で求めたキシレンの換算係数0.288を乗算してキシレン濃度(換算値)とした図である。
【0086】
次に、図13の結果に基づいて、試料Yのキシレン放散速度を計算する。
【0087】
図13より、試料Yを封入したサンプリングバッグ内のキシレン濃度は、封入後15分経過後は225μg/m3であり、封入後45分後は930μg/m3であった。これにより、封入後15分から45分までの放散速度は、下記の式(15)に示すように28.2μg/hとなる。
【0088】
【数15】
図14は、図13に示す曲線を微分し、清浄気体の封入量を乗じた結果を示す図である。図14に示すように図13のキシレン濃度の変化からキシレンの放散速度を求めることができる。
【0089】
なお、試料Xのより簡易的なスクリーニング試験としては、気体封入後、一定時間が経過した後のキシレン濃度(換算値)が所定の基準値以下であるか否かを調べてもよい。ここでは、例えばディスプレイ用トランスについて、指針値に対するマージンを考慮して測定開始から30分後のキシレン放散量の基準値を100μg以下(放散速度のピーク値200μg/hに相当)とする。この放散量の基準値は、測定例4のように20Lの気体を用いる場合にはキシレン濃度5000μg/m3(=100μg÷(20L/1000L/m3))以下に対応する。そこで、気体封入後、30分後にTVOC濃度を測定してキシレン濃度に換算する。この換算したキシレン濃度が(5000μg/m3)以下であれば、その試料Xは使用可能な部品と判定できる。測定例4の結果(図13)によれば試料X及び試料Yともに、30分後のキシレン濃度(換算値)が5000μg/m3以下であるためこの基準を満たすことがわかる。
【0090】
(測定例5)
測定例5では、測定例1(第1実施形態)の試料A(トランス)について、第2実施形態に示す方法でVOC放散速度を求めた結果について説明する。
【0091】
まず、テドラーバッグ内に試料A(トランス)及びTVOC測定器のセンサー部分を挿入した後、テドラーバッグの開口部を熱圧着によりシールした。次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。
【0092】
次に、試料Aを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じて、TVOC測定器によりバッグ内のTVOC濃度の測定を開始した。
【0093】
ガスの導入開始から15分後のTVOC濃度は90μg/m3であった。また、ガスの導入開始から1時間15分後のTVOC濃度は520μg/m3であった。これらの値に予め測定したキシレン濃度への換算係数0.288を乗じることで、15分後のキシレン濃度(換算値)25.9μg/m3及び1時間15分後のキシレン濃度(換算値)149.8μg/m3が求まる。この濃度及び式(2)により、放散速度は約2.5μg/hとなった。
【0094】
その後、式(3)に基づいて補正係数を求め、放散速度に乗じることによりチャンバー法により測定した場合の放散速度を推定し、製品に組み込んだ場合であってもVOCガイドラインの指針値を超えないことが確認できた。
【0095】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0096】
(付記1)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0097】
(付記2)更に、前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正することを特徴とする付記1に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0098】
(付記3)前記換気回数に応じた放散速度の補正は、単位時間当たりの換気回数をn、前記バッグに前記気体を注入した直後における揮発性有機化合物の濃度をZ0、Δt時間後の揮発性有機化合物の濃度をZ1としたときに、(n・Δt/(1+n・Δt))×(Z1/(Z1−Z0))を乗算することにより行うことを特徴とする付記2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0099】
(付記4)前記揮発性有機化合物の放散速度は、前記バッグに前記気体を注入した直後における揮発性有機化合物の濃度をZ0、Δt時間後の揮発性有機化合物の濃度をZ1、前記バッグへの前記気体の封入量をVNとしたときに、(Z1−Z0)×VN/Δtにより計算することを特徴とする付記1又は2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0100】
(付記5)前記試料の温度に応じた前記放散速度の補正は、常温のときの放散速度と、稼働時の前記試料の温度における放散速度との比を乗算することにより行うことを特徴とする付記1又は2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0101】
(付記6)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0102】
(付記7)前記Δt時間は2時間以下であることを特徴とする付記3又は4に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0103】
(付記8)前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体をサンプリングし、該サンプリングした前記揮発性有機化合物を成分毎に定量分析することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0104】
(付記9)前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、該総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算することを特徴とする付記1乃至7の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0105】
(付記10)前記換算係数は、
前記試料と同一種類の試料と気体とをバッグに封入し、
前記バッグから前記気体をサンプリングして、該サンプリングした気体中から揮発性有機化合物を成分毎に定量分析し、
前記サンプリングと同時に前記気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、
前記揮発性有機化合物の各成分の濃度を前記総揮発性有機化合物濃度で除算して求めることを特徴とする付記9に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0106】
(付記11)前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について、前記換算係数を算出することを特徴とする付記9に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0107】
(付記12)前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について濃度を求めることを特徴とする付記1又は7の何れかに記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0108】
(付記13)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
前記バッグ中の気体をサンプリングする工程と、
前記サンプリングと同時に前記気体に含まれる総揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記サンプリングした気体中に含まれる揮発性有機化合物を成分毎に定量分析する工程と、
総揮発性有機化合物の濃度の測定結果と揮発性有機化合物の成分毎の濃度の測定結果とに基づいて総揮発性有機化合物の濃度を前記揮発性有機化合物の成分毎の濃度に換算する換算係数を求める工程と、
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0109】
(付記14)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
前記試料をバッグに封入した後、一定時間経過後の前記気体中の総揮発性有機化合物濃度を測定する工程と、
前記総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算する工程と、
前記乗算によって得られた揮発性有機化合物濃度から前記揮発性有機化合物の放散速度を求める工程と、
前記放散速度を予め設定した値と比較して前記試料の良否を評価する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、VOC放散速度の測定に用いるチャンバー法によるVOC測定システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、VOCガイドラインにより規定されるVOC放散速度の測定条件を示す図である。
【図3】図3は、VOCガイドラインにより規定される各規制物質の放散速度の指針値を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。
【図5】図5(a)は2つの試料(試料A及び試料B)をそれぞれ封入したバッグ内のVOC(キシレン)濃度の変化を測定した結果を示す図、図5(b)は図5(a)の縦軸のキシレン濃度をキシレン放散量に換算して示す図である。
【図6】図6は、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度の経時変化を示す図である。
【図7】図7は、測定例2における測定条件、VOC濃度の測定タイミング、VOC(キシレン)濃度の測定値、放散速度の計算値及び稼働による増加係数Konをまとめて示す図である。
【図8】図8は、サンプリングする気体の温度を常温にするための方法の一例を示す図である。
【図9】図9は、電源トランスから放散されるVOCをチャンバー法で測定した結果を示す図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。
【図11】図11は、測定例3の各VOC成分濃度及びTVOC濃度の測定結果と換算係数とを示す図である。
【図12】図12は、測定例4のTVOC測定結果を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す測定結果に測定例3で求めたキシレンの換算係数0.288を乗算してキシレン濃度(換算値)とした図である。
【図14】図14は、図13に示す曲線を微分し、清浄気体の封入量を乗じた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
11…エアー制御ユニット、
12…混合槽、
13,31…恒温槽、
14…チャンバー
15…ガスクロマトグラフ分析装置、
16…TENAX管、
17…サンプリングポンプ、
21…サンプリングバッグ、
22…試料、
23…測定器、
24…TVOC測定器、
26…換算データベース、
27…情報処理装置、
32…ポンプ、
33a,33b…配管、
34…冷却機、
35…サンプリング口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:以下、「VOC」ともいう)の放散速度を容易に測定できる揮発性有機化合物測定方法に関し、特に部品から放散される揮発性有機化合物の放散速度の測定に好適な揮発性有機化合物測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シックハウス症候群が問題になり、厚生労働省の室内濃度指針値、及び学校保健法に基づく環境衛生の基準等が制定・改訂された。それを受けて電子情報技術産業協会(JEITA)により「パソコンに関するVOCガイドライン(第1版)」が制定され、規制物質(トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン及びスチレン)に関する放散速度の指針値及び放散速度の測定方法が規定されている。
【0003】
上述のJEITA発行のパソコンに関するVOCガイドライン(以下、単に「VOCガイドライン」という)では、いわゆるチャンバー法によりVOC放散速度を測定することを規定している。図1にVOC放散速度の測定に用いるVOC測定システムの構成例を示す。また、図2にVOC放散速度の測定条件を示し、図3に各規制物質の放散速度の指針値を示す。なお、図2中のVpは被測定機(測定対象製品)の容積、Vkはチャンバーの容積である。
【0004】
図1に示すように、VOC測定システムは、エアー制御ユニット11、混合槽12、恒温槽13、チャンバー14、ガスクロマトグラフ分析装置15、TENAX(登録商標)管(粒状の吸着剤を充填した管)16及びサンプリングポンプ17により構成されている。測定対象製品(パソコン又はディスプレイ)10はチャンバー14内に配置される。チャンバー14は、測定対象製品10の4倍〜100倍の容積を有することが要求される。また、チャンバー14は恒温槽13内に配置されており、一定の温度(23℃±2℃)に保持される。
【0005】
チャンバー14内の空気はエアー制御ユニット11により循環し、換気回数は0.5回/h又は1回/hに設定される。エアー制御ユニット11とチャンバー14との間には混合槽12が配置されており、この混合槽12によりチャンバー14内に供給される空気の湿度が50%±5%RHに維持される。
【0006】
測定対象製品10は、チャンバー14内で5時間稼働させる。その後、サンプリングポンプ17を稼働してチャンバー14内の空気をTENAX管16内に通流させ、そのTENAX管16をガスクロマトグラフ分析装置15に装着して各規制物質の濃度を測定する。そして、下記(1)式により放散速度を算出する。
【0007】
【数1】
ここで、SERUBは各規制物質の放散速度(μg/h)、Ynは各規制物質の濃度(μg/m3)、nBは換気回数(回/h)、VKはチャンバー14の容積(m3)である。
【0008】
なお、本発明に関係すると思われる従来技術として、特許文献1〜6に記載されたものがある。特許文献1には、物体(人体等)から放出されるガスをバッグ内に収集し、その後ガスクロマトグラフ分析装置等により分析することが記載されている。また、特許文献2には、ポリプロピレン又はガラスなどからなる小型容器内に試料を収容し、試料から放出される揮発成分を分析することが記載されている。
【0009】
特許文献3には、基板の平坦面にガス成分を吸着させた後、飛行時間型二次イオン質量分析装置又はフーリエ変換赤外分光器のいずれかによりガス成分を分析することが記載されている。特許文献4,5には、VOC測定装置の例が記載されている。これらの特許文献4,5に記載されたVOC測定装置は、いずれもチャンバー法によりVOCの量を測定するものである。特許文献6にはガスクロマトグラフ分析装置の一例が記載されている。
【特許文献1】特開2007−155385号公報
【特許文献2】特開2007−101337号公報
【特許文献3】特開2003−42951号公報
【特許文献4】特開2007−178288号公報
【特許文献5】特開2005−257588号公報
【特許文献6】特開2005−77144号公報
【特許文献7】特開2005−156299号公報
【特許文献8】特許3502622号明細書
【非特許文献1】竹内文代、尾崎光男、“電気部品(トランス)からのVOC放散速度の評価方法”、2008年、第26回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集、212−214頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のVOCガイドラインに規定されたVOC放散速度の測定方法は、大掛かりな設備が必要である上、測定に時間がかかるという問題点がある。また、VOCを低減するためには製品に使われる部品毎のVOC放散速度を知ることが重要であるが、VOCガイドラインでは測定対象製品(パソコン又はディスプレイ)を実際に稼働させてVOCを測定することを要求しているため、特定の部品からのVOC放散速度を測定することができない。特定の部品だけをチャンバー内に配置してVOC放散速度を測定することも考えられるが、その場合は測定に時間がかかるという問題点がある。また、単にチャンバー内に特定の部品を配置するだけでは、実際の使用時の状態を再現することができない。
【0011】
なお、製品に使用される部品から放散されるVOCを測定する場合、部品と清浄な気体(空気等)とを密閉式のバッグ内に封入し、一定時間経過後(又は、一定時間加熱後)にバッグ内の気体を分析してVOCの種類と濃度とを測定することが考えられる。このような方法はバッグ法と呼ばれている。
【0012】
しかし、バッグ法では、通常1回限りの測定であり、結果として得られるのは部品から発生するVOCの種類とそれらの発生量の大小関係であって、チャンバー法のように製品を実際に稼働したときの温度上昇の影響や換気の影響を再現して放散速度を測定することはできない。なお、バッグ法はVOC等の定性分析等に使用されている。
【0013】
そこで、揮発性有機化合物測定方法に関し構成が比較的簡単な装置を使用してVOC放散速度を比較的短時間で測定でき、かつ特定の部品からのVOC放散速度の測定にも適用できる測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一観点によれば、試料と気体とをバッグに封入する工程と、時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程とを有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法が提供される。
【0015】
上記観点においては、試料と気体とをバッグに封入した後、時間をおいて少なくとも2回、気体中に含まれるVOC(揮発性有機化合物)の濃度を測定する。そして、それらの濃度の変化からVOC放散速度を算出する。
【0016】
VOCガイドラインでは、製品を稼働した状態で換気を行ってVOC放散速度を測定することを規定している。そこで、本発明においては、部品の温度上昇によるVOC放出量の変化が問題になる場合、稼働時における試料の温度に応じてVOC放散速度を補正する。また、換気により放散速度が変わるため、換気回数に応じてVOC放散速度を補正する。
【0017】
VOC放散量が多い試料の場合、バッグに封入した直後からバッグ内のVOC濃度が急激に上昇し、その後VOC濃度の上昇率は時間の経過とともに減少する。従って、バッグに封入した直後とそれから短時間経過した後のVOC濃度を測定し、その測定結果からVOC放散速度を計算すると、VOCガイドラインに沿ってVOC放散速度を測定した場合に比べて多めの値となる。
【0018】
すなわち、上記観点に基づいてVOC放散速度を測定し、その放散速度がVOCガイドラインの指針値よりも小さい場合は、VOCガイドラインに沿って放散速度を測定しても、指針値よりも小さくなるということができる。一方、上記観点に基づいてVOC放散速度を測定し、その放散速度がVOCガイドラインの指針値よりも大きい場合は、VOCガイドラインに沿って放散速度を測定したときに、指針値よりも小さくなる場合と大きくなる場合とがある。このような場合は、必要に応じてVOCガイドラインに沿って放散速度を測定してもよい。または、その部品に対して加熱等のVOC削減処理を施し、VOCガイドラインの指針値以下になるのを確認してから、製品に搭載してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。第1実施形態では、密閉式のサンプリングバッグ21内に試料(製品、又は製品に使用される部品等)22と清浄な気体とを封入する。そして、時間をおいて少なくとも2回サンプリングバッグ21から気体をサンプリングし、測定器23により気体中のVOC濃度を測定して、VOCの濃度変化から放散速度を算出する。そして、この放散速度に対し、チャンバー法により測定した場合の放散速度に対応するように補正計算を行う。
【0021】
サンプリングバッグ21に封入する気体は、製品使用時の雰囲気と同じであることが好ましく、空気を使用することができる。但し、その場合はフィルタを通す等の方法により、空気中に含まれる異物を十分に除去することが必要である。気体中に含まれる異物の影響を取り除くという観点から、予め精製された窒素又はその他の気体を使用してもよい。窒素は空気中の約8割を占める元素であり、製品使用時の雰囲気を再現するという観点からも適している。
【0022】
サンプリングバッグ21に封入する気体の量は、測定のためにサンプリングする気体の量に比べて十分多くすることが好ましい。これにより、サンプリングによる気体の減少が次の測定に影響を与えないようにすることができる。
【0023】
測定器23はVOCを5%程度の精度で定量測定できるものであればよい。この種の測定器として、サンプリング量が5〜100mL(ミリリットル)のものが種々市販されている(例えば、JMS社製VOCモニターJHV−1000)。1回の測定に必要なサンプリング量を100mL、サンプリングバッグ21への気体封入量を20L(リットル)とすれば、1回の測定におけるサンプリングバッグ21内の気体の減少量は 0.5%となる。前述したように、本実施形態で用いる測定装置23のVOC定量測定の精度が5%程度であるので、10回程度の測定ではサンプリングによる気体の減少量の影響を無視できると考えてよい。
【0024】
図5(a)は、横軸に経過時間をとり、縦軸にVOC(キシレン)濃度をとって、2つの試料(試料A及び試料B)をそれぞれ封入したバッグ内のVOC(キシレン)濃度の変化を測定した結果を示す図である。また、図5(b)は、図5(a)の縦軸のキシレン濃度をキシレン放散量に換算したものである。但し、VOC(キシレン)放散量が少ない試料Aではサンプリングバッグ21内に20Lの気体を封入しており、VOC(キシレン)放散量が多い試料Bではサンプリングバッグ21内に30Lの気体を封入している。
【0025】
図5(a),(b)からわかるように、VOC(キシレン)放散量の多い試料Bでは、バッグに封入した直後からバッグ内のVOC濃度が急激に上昇し、時間の経過とともに濃度の上昇率は小さくなる。これに対し、VOC放散量の少ない試料Aでは、バッグ内のVOC濃度が緩やかにかつ経過時間に対しほぼ直線的に上昇する。
【0026】
上述の方法でVCO濃度の時間変化を測定した後、下記(2)式により放散速度Sbを
算出する。
【0027】
【数2】
ここで、Z0はVOC濃度の初期値、Z1はΔt時間経過後のVOC濃度、VNはサンプリングバッグ21に封入した気体の量である。なお、本実施形態では、VOC濃度の初期値Z0として、サンプリングバッグ21内に規定量の気体を封入した直後にバッグ21内の気体をサンプリングして測定したVOC濃度を採用する。後述するように、本実施形態では、バッグ21内への規定量の気体の注入に要する時間を10分としている。この時間は10分に限定するものではないが、VOC濃度の初期値に関係するので、全ての試料に対し同じ時間とすることが重要である。
【0028】
放散速度Sbは、図5(b)に示す曲線の左端側の部分の傾きを示す。Δtを1時間とすると、図5(a),(b)に示す例では、試料Aの放散速度Sbが約2.5μg/h、試料Bの放散速度Sbが約40.3μg/hとなる。
【0029】
ところで、VOCガイドラインでは、VOC放散速度を測定する際に、製品を実際に稼働させることを規定している。製品を稼働することにより部品の温度が上がり、VOCの放出量は増加する。従って、上記(2)式で求めた放散速度SbをVOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度に対応させるためには、製品を稼働した場合に対する増加係数(以下、「稼働による増加係数」という)Konを考慮した補正を行うことが必要となる。本実施形態においては、稼働による増加係数Konを以下のようにして決定する。
【0030】
すなわち、サンプリングバッグの中に試料と清浄な気体(空気又は窒素)を封入し、予め測定しておいた装置稼働時の部品温度まで昇温する。その後、サンプリングバッグ中のVOC濃度を測定してVOCの放散速度Sb1を算出する。一方、部品温度を常温(23℃±2℃)とする以外は上記と同様にして常温におけるVOCの放散速度Sb2を測定する。そして、これらの放散速度の比(Sb1/Sb2)を増加係数Konとする。なお、装置稼働時の部品温度として、稼働時の部品の実測温度を用いる替わりに、設計時の部品温度を用いてもよい。
【0031】
また、VOCガイドラインでは、チャンバー内を換気することが規定されている。そこで、前述の(2)式により求めた放散速度SbをVOCガイドラインに沿って測定した放散速度に対応させるためには、換気による変化係数を考慮した補正を行ってもよい。本実施形態では、換気による変化係数Kventを下記(3)式により求める。
【0032】
【数3】
但し、(3)式において、nは換気回数を示し、1時間で1回換気する場合にはn=1となる。また、n・Δt/(1+n・Δt)は時間Δtにおける容積変化率を示し、Z1/(Z1−Z0)は時間Δtにおける濃度変化率を示している。
【0033】
本実施形態では、(2)式により求めた放散速度Sbに、上述の稼働による増加係数Kon、又は増加係数Konと換気による変化係数Kventとを乗算して(すなわち、放散速度Sbを補正して)チャンバー法でVOC放散速度を測定した場合の放散速度のピークの予測値とし、この予測値(以下、「評価値」という)に基づいて、部品の、製品に使用する場合の適否を評価する。
【0034】
チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度は、通常、図6のような変化を示す。すなわち、VOC放散量の多い試料は、放散速度のピークが高く、かつ比較的短時間(通常約2時間以内)でピークに到達する。そして、ピークを過ぎると放散速度は徐々に減少する。一方、VOC放散量の少ない試料は、放散速度のピークが低く、かつなだらかである。また、ピークを過ぎた後の放散速度の減少割合も小さい。これらのことから、放散速度の初期の挙動が把握できれば、その後の放散速度の変化をある程度予測することができることがわかる。
【0035】
前述したように、VOCガイドラインでは、製品を稼働状態にしてから5時間経過後に放散速度の測定を行うことを規定している。図6からわかるように、5時間経過後のチャンバー法で測定した場合の放散速度は通常ピークを過ぎたあたりである。本実施形態では、バッグ内のVOC濃度からチャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値を予測するが、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値は、ガイドラインに沿って測定したVOC放散速度(稼働状態にしてから5時間経過後のVOC放散速度)の値よりも大きくなる。従って、本実施形態により得られたVOC放散速度(評価値)は、通常、VOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度よりも大きな値となる。すなわち、本実施形態により求めたVOC放散速度(評価値)がVOCガイドラインの指針値よりも低い場合は、VOCガイドラインに沿ってVOC放散速度を測定しても指針値より低くなるということができる。
【0036】
本実施形態によれば、部品の段階で、大掛かりな装置を用いることなく、簡便にVOC放散速度を測定することができる。また、部品の段階で求めたVOC放散速度から、VOCガイドラインに沿って測定した場合の製品稼働状態におけるVCO放散速度を推定することができる。その結果、部品単体でのスクリーニング試験が可能となり、部品の、製品に使用する場合の適否を効率的に評価することができる。
【0037】
以下、液晶ディスプレイから放散されるVOCの放散速度の測定例について説明する。
本願発明者らは、チャンバー法でキシレンの発生が多かった液晶ディスプレイについて分解調査を行った。その結果、この液晶ディスプレイでは、VOC発生源は主に電源トランスであることが判明した。ここでは、2つの電源トランス(試料A及び試料B)の放散速度を測定した。
【0038】
(測定例1)
まず、サンプリングバッグとしてテドラー(登録商標)バッグを用意した。そして、テドラーバッグの一部を切って試料A(トランス)を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。これと同様にして、試料B(トランス)もテドラーバッグ内に封入した。
【0039】
次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。その後、試料Aを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器(JMS社製VOCモニターJHV−1000)によりVOC濃度を測定した。その後も、1時間毎にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。
【0040】
また、これと同様に試料Bを挿入したテドラーバッグ内に30Lの清浄な窒素ガスを3L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。その後も、1時間毎にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。前述の図5(a)は、このようにして測定した2つの試料(試料A及び試料B)のVOC濃度の測定結果を示している。
【0041】
試料Aについて、VOC(キシレン)濃度の初期値が26μg/m3、1時間経過後のVOC濃度が149μg/m3であるので、前記(2)式により放散速度Sbを求めると、下記(4)式に示すように約2.5μg/hとなる。
【0042】
【数4】
試料Bについて、VOC(キシレン)濃度の初期値が174μg/m3、1時間経過後のVOC濃度が1517μg/m3であるので、前記(2)式により放散速度Sbを求めると、下記(5)式に示すように約40.3μg/hとなる。
【0043】
【数5】
なお、図5(a)の例では、1時間毎にVOC(キシレン)濃度を測定している。これは、VOC濃度の測定間隔を長くすると、特にVOC放散量が多い試料ではVOC放散速度を過少評価してしまうおそれがあるためである。従って、VOC濃度は、短い間隔で測定することが好ましい。また、ここでは放散速度Sbを算出する時間間隔Δtを1時間としているが、ΔtはVOCガイドラインで定める1換気に要する時間、すなわち1時間〜2時間の範囲内で定めるのがよい。この時間間隔Δtを長くすると、やはりVOC放散速度を過少評価してしまうおそれがある。
【0044】
更に、上記の例では、試料に応じて気体の注入量(テドラーバッグの容量)を変えている。これは、サンプリングした気体中のVOC濃度が極端に高くなり(又は、極端に低くなり)、VOC測定器による測定精度が低下することを回避するためである。
【0045】
(測定例2)
まず、稼働時の電源トランスの温度を測定するために、ディスプレイの背面カバーを外し、電源トランスが外から見えるようにした。また、ディスプレイにパソコンを接続し、パソコン及びディスプレイに通電して稼動状態とした。この状態で電源トランスの温度を熱電対で測定した。その結果、電源トランスの温度は60℃であった。なお、ディスプレイに使用されている電源トランスは、前述の試料A及び試料Bとは異なるものである。
【0046】
次に、電源トランスからの常温におけるVOC放散速度を測定するために、ディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを容量が30Lのテドラーバッグに入れ、真空引きした。その後、テドラーバッグ内に30Lの清浄な窒素を3L/minの流量で10分かけて封入した。そして、封入直後及び1時間経過後にテドラーバッグから気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)濃度を測定した。その結果、封入直後のVOC濃度は174μg/m3であり、1時間経過後のVOC(キシレン)濃度は884μg/m3であった。これらの値から、常温におけるVOC(キシレン)放散速度Sbを計算すると、下記(6)式に示すように約21.3μg/hとなる。
【0047】
【数6】
次に、稼働状態における電源トランスからのVOC放散速度を測定するために、ディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを容量が50Lのテドラーバッグに入れ、真空引きした。その後、テドラーバッグ内に40Lの清浄な窒素を4L/minの流量で10分かけて封入した。そして、封入直後にテドラーバッグから気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)濃度を測定した。その結果、VOC(キシレン)濃度は162μg/m3であった。なお、ここでは、テドラーバッグの容量及び窒素の注入量を、電源トランスからのVOC放散量と加熱による熱膨張とを考慮して決めている。
【0048】
上述の電源トランス及び窒素を封入したテドラーバッグを温度が60℃の恒温槽に入れ、1時間経過した後、恒温槽から出して200mLの気体をサンプリングし、別のバッグに移して常温まで冷却した。その後、バッグから常温の気体をサンプリングし、VOC測定器でVOC(キシレン)の濃度を測定した。その結果、VOC(キシレン)濃度は1510μg/m3であった。これらの封入直後及び1時間経過後のVOC濃度の値から、稼動状態におけるVOC(キシレン)放散速度Sbを計算すると、下記(7)式に示すように約52.9μg/hとなる。
【0049】
【数7】
稼働による増加係数Konは、前述したように常温におけるVOC放散速度と稼動状態におけるVOC放散速度との比をとることにより得られる。ここで、稼働による増加係数Konを計算すると、下記(8)式に示すように約2.5となる。
【0050】
【数8】
図7に、測定条件、VOC濃度の測定タイミング、VOC(キシレン)濃度の測定値、
放散速度の計算値及び稼働による増加係数Konをまとめて示す。
【0051】
なお、サンプリングバッグから温度の高い気体を直接サンプリングすると、VOCが吸着剤(TENAX−TAなど)に吸着されずに通過してしまう。このため、上記の例ではテドラーバッグからサンプリングした気体を別のバッグに移して常温まで冷却し、その後バッグから常温の気体をサンプリングしてVOC濃度を測定している。このような方法に替えて、例えば図8に示すように、試料22が封入されたサンプリングバッグ21とサンプリングバッグ21内の気体を恒温槽31の外部に取り出すポンプ32との間を接続する配管33a中に冷却機34を取り付けて気体を常温まで冷却し、ポンプ32からサンプリングバッグ21への戻り配管33b中にサンプリング口35を設けて、このサンプリング口35から常温の気体をサンプリングできるようにしてもよい。
【0052】
(放散速度の推定)
測定例2の測定結果を基に、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値を推定した。そして、その推定したVOC放散速度のピーク値(評価値)と実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度のピーク値とを比較した。すなわち、容量が20Lのチャンバー内に、前述のディスプレイに使用されているのと同種の電源トランスを収納し、常温環境下で換気回数が1回/hの条件(流量換算で333mL/min)で清浄な窒素を流し続け、排出される気体を1時間毎にサンプリングして、VOC測定器によりVOC濃度を測定した。測定例2で説明したように、封入直後のVOC濃度Z0は174μg/m3であり、1時間経過後のVOC濃度Z1は884μg/m3であるので、換気による変化係数Kventは、下記(9)式に示すように0.62となる。
【0053】
【数9】
前述したように、この電源トランスの常温における1時間後のVOC(キシレン)放散速度は約21.3μg/hである。これらのことから、この電源トランスをチャンバー法で測定した場合のVOC放散速度のピーク値は、下記(10)式に示すように13.2μg/hと推定される。従って、ここでは、電源トランスのVOC放散速度の評価値を13.2μg/hとした。
【0054】
【数10】
この電源トランスについて、実際に上記の条件でチャンバー法により1時間毎の放散速度を測定した。その結果を図9に示す。この図9からわかるように、放散速度のピーク値は13.8μg/hであり、本実施形態の方法により求めた評価値(13.2μg/h)に近いことがわかる。
【0055】
(電源トランスの適否の評価)
測定例1で常温における放散速度を測定した試料A及び試料Bについて、製品に使用する場合の適否について検討した。ここでは、VOCガイドラインに沿って換気回数nを1回/hとする。
【0056】
試料Aについて換気による変化係数Kventを計算すると、VOC濃度の初期値Z0が2
6μg/m3、1時間経過後のVOC濃度Z1が149μg/m3であるので、下記(11)
式に示すように0.61となる。
【0057】
【数11】
また、温度による増加係数Konは前述の測定例2に示すように2.5であり、放散速度Sbは測定例1に示すように2.5μg/hであるので、VOCガイドラインに沿って測定した場合のVOC放散速度のピーク値の推定値(評価値)SERは、下記(12)式に示すように3.8μg/hとなる。
【0058】
【数12】
これと同様に、試料Bについて換気による変化係数Kventを計算すると、VOC濃度の
初期値Z0が174μg/m3、1時間経過後のVOC濃度Z1が1517μg/m3であるので、下記(13)式に示すように0.56となる。
【0059】
【数13】
また、温度による増加係数Konは前述の測定例2に示すように2.5であり、放散速度Sbは測定例1に示すように40.3μg/hであるので、VOCガイドラインに沿って測定した場合のVOC放散速度のピーク値の推定値(評価値)SERは、下記(14)式に示すように56.4μg/hとなる。
【0060】
【数14】
VOCガイドラインに規定するディスプレイのキシレン放散速度の指針値は、435μg/h・unitである(図3参照)。従って、本実施形態により求めた試料A及び試料Bのトランスのキシレン放散速度(評価値)はいずれもVOCガイドラインに規定するキシレン放散速度の指針値よりも小さく、ディスプレイへの使用に適していると判定することができる。
【0061】
これらの試料A及び試料Bのトランスを実際に製品となるディスプレイに搭載し、VOCガイドラインに沿ってチャンバー法で測定した結果、試料Aのキシレン放散速度(5時間後の放散速度)は5μg/h、試料Bのキシレン放散速度(5時間後の放散速度)は41μg/hであり、本実施形態により求めたVOC放散速度(評価値)とよい相関を示した。このことから、本実施形態に係るVOC測定方法によりVOCの放散速度を測定し、その結果に基づいて製品に使用する場合の適否を判定しても問題ないことが確認された。
【0062】
なお、上述のように、放散速度が小さい試料(試料A)の場合、本実施形態で求めたVOC放散速度(評価値)が実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度よりも小さくなることがある。これは、放散速度が小さい試料の場合、放散速度が大きい試料に比べてピーク値となる時間が遅くなることに起因している。しかしながら、VOC放散速度が小さい試料ではVOC放散速度が指針値を超えるおそれがないため、放散速度が小さい試料の場合に本実施形態の方法で求めたVOC放散速度(評価値)が実際にチャンバー法で測定したVOC放散速度より小さくなっても、問題となることはない。一方、放散速度が大きい試料については、本実施形態の方法により求めたVOC放散速度(評価値)は、VOCガイドラインに沿って測定したVOC放散速度よりも大きめな値となる。つまり、放散速度が大きい部品については、十分なマージンをもって製品に使用する場合の適否を判定することができる。
【0063】
上記の測定例で用いたディスプレイには電源トランスが1個だけ使用されていたが、例えばデスクトップ型パソコンなどではVOC発生源となるトランスが複数個搭載されていたり、発生源がトランスと接着剤というように複数種であったりすることがある。これらの場合、それぞれの部品(又は部材)についてVOC放散速度を測定し、それらの値を加算して製品全体のVOC放散速度を推定すればよい。また、本実施形態は、パソコン等に使用される筐体のVOC放散速度の測定に適用することもできる。
【0064】
(第2実施形態)
上述のように、第1実施形態ではサンプリングバッグ21から一定量の気体をサンプリングし、その中に含まれるVOCを測定機23(VOCモニター等)により成分毎に分離して定量分析を行う。しかし、上述のVOCモニターではVOCを各成分に分離するのにクロマトグラフ法を用いるため、測定に時間がかかってしまう。また、気体のサンプリング回数を多くするとバッグ21内の気体の量が減少し、濃度の測定精度が低下してしまう。従って、サンプリング回数が制限される。
【0065】
そこで、第2実施形態では、VOC濃度の測定のためのサンプリングが不要であり、より一層迅速な測定が可能となるVOC測定方法について説明する。ここに、図10は、第2実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。なお、図10において、サンプリングバッグ21及び測定器23は第1実施形態と同様であり、その詳細な説明は省略する。また、以下の説明では、説明の便宜上、測定器23をVOC測定器23と記載する。
【0066】
図10に示すように、サンプリングバッグ21には、試料22と清浄な気体とTVOC(Total Volatile Organic Compounds:総揮発性有機化合物)測定器24(又はTVOC測定器24のセンサ部)とが封入される。ここで、TVOC測定器とは少なくともトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン及びパラジクロロベンゼンが検出可能な測定器である。本実施形態ではTVOC測定器24として、フィガロ技研社製TVOCモニターFTVR−01を使用する。
【0067】
このTVOC測定器24は半導体式ガスセンサーを備えたパッシブ式の測定機であり、サンプリングバッグ21内の気体をサンプリングすることなくTVOC濃度を測定できる。また、このTVOC測定器24はVOC全成分の濃度をトルエン換算濃度として出力する。
【0068】
TVOC測定器24では複数種類のVOCを成分毎の濃度に分離して測定することができない。そこで、第2実施形態ではVOC測定器23で測定したVOCの成分毎の濃度と、TVOC測定器24で測定したTVOC濃度との相関に基づいて換算係数(VOC成分の濃度/TVOC濃度)を算出する。この換算係数をTVOC濃度に乗じることで、着目するVOC成分の濃度を求める。
【0069】
換算データベース26には、上述の換算係数が格納されている。また、情報処理装置27は、試料のVOC放散速度の評価を行う際に、その試料の種類に応じた換算係数を換算データベース26から読み出して、TVOC濃度を所定のVOC成分の濃度に換算する。
【0070】
換算係数は以下の手順で求められる。まず、サンプリングバッグ21内に試料22、TVOC測定器24(又はそのセンサー部)及び気体を封入する。次に、封入から一定時間経過後にサンプリングバッグ21内の気体をサンプリングして、VOC測定器23でVOC濃度を測定する。また、サンプリングと同時にTVOC測定器24によりTVOC濃度を測定する。
【0071】
次に、TVOC測定器24により測定したTVOC濃度とVOC測定器23により測定した各VOCの濃度との相関に基づいて、VOC成分毎の換算係数を求める。この換算係数はVOC濃度とTVOC濃度との比(VOC濃度/TVOC濃度)として各VOC成分について算出する。以上のようにして換算係数が求まる。
【0072】
なお、形式番号が同一の部品であれば、放散するVOCの成分も同じであるので、個体や製造ロットが変わっても同じ換算係数を用いてVOC濃度を求めることができる。一方、同一種類の部品間であっても形式番号が異なる場合は、放散するVOCの成分又はその割合が異なるので、一般に同じ換算係数を用いても正確なVOC濃度を求めることができない。従って、試料の種類(部品の形式番号)毎にTVOCとVOC各成分の濃度との相関を測定して換算係数を求めておくことが好ましい。
【0073】
ところで、VOC濃度の評価を行う必要があるのは規制物質の中でも特に放散量(放散速度)が大きい成分である。そこで、放散量の多い成分又は放散速度が高く指針値との比(試料からの放散速度/指針値の放散速度)が大きな成分に着目し、その成分についてのみ換算係数及びVOC濃度を算出してもよい。これにより、製品に使用する場合の部品の適否の判定を効率的に行うことができる。
【0074】
本実施形態では、以下の手順によりTVOC測定器24を用いた試料のVOC放散速度の評価を行う。まず、サンプリングバッグ21内に試料22、TVOC測定器24、及び気体(空気又は窒素)を封入し、TVOC測定器24により気体中のTVOC濃度の時間変化を測定する。
【0075】
次に、TVOC濃度の測定結果に着目するVOC成分に応じた換算係数を乗ずることで、着目するVOC成分の濃度の時間変化を求める。そして、着目するVOC成分の濃度の時間変化から、第1実施形態の(2)式により着目するVOC成分の放散速度を求める。
【0076】
次いで、第1実施形態と同様の手順で、稼働による増加係数KON及び換気による変化係数KVENTの少なくとも何れかを乗算して、チャンバー法により測定した場合の放散速度の評価値を求め、この評価値に基づいて部品の製品に使用する場合の適否を評価する。
【0077】
以上のように本実施形態では、換算係数を求めることで、気体のサンプリングをせずに、TVOC測定器24を用いて試料22のVOC放散速度を評価する。また、半導体式ガスセンサーを用いたTVOC測定器24ではクロマトグラフを用いるVOCモニターよりも短時間で測定が完了するため、VOC測定に要する時間を短縮することができる。
【0078】
以下、第2実施形態に係るVOC測定方法について測定例を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0079】
(測定例3)
測定例3ではディスプレイ用の電源トランス(試料X)について換算係数を求めた。まず、サンプリングバッグとして容量が20Lのテドラーバッグを用意した。そして、テドラーバッグの一部を切って試料XとTVOC測定器(フィガロ技研製パーソナルTVOCモニターFTVR-01)のセンサー部を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。その後、試料Xを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じた。
【0080】
そして、コックを閉じてから1時間経過後にバッグ内の気体をサンプリングし、VOC測定器(JMS社製VOCモニターJHV-1000)により各VOC成分の濃度を測定した。また、サンプリングと同時にTVOC測定器でバッグ内のTVOC濃度を測定した。
【0081】
(換算係数の算出)
図11は、測定例3の各VOC成分濃度及びTVOC濃度の測定結果と換算係数とを示す図である。図11に示す測定結果に基づいて、試料Xの換算係数として、各VOC成分濃度をTVOCの測定値で割った値を算出した。例えばキシレンの換算係数は、1895÷6586=0.288となる。
【0082】
図11の結果から、試料Xについてはキシレンとエチルベンゼンの濃度及び換算係数が高いことが分かる。JEITAの定める指針値によれば、エチルベンゼンで許容される放散速度は、キシレンで許容される放散速度よりも大きい。このため、各成分の放散速度の指針値に対する比(試料からの放散速度/放散速度の指針値)は、キシレンの方がエチルベンゼンよりも大きい。従って、試料Xと同一種類の試料(トランス)についてのスクリーニングでは、キシレンの放散速度に着目する必要があることがわかる。
【0083】
なお、測定例3では、1個の試料XのTVOC濃度を1回だけ測定して換算係数を求めたが、より精度を上げるために1個の試料XのTVOC濃度を時間経過毎に複数回測定して換算係数を求めてもよい。また、試料Xと同一種類の複数の試料のTVOC濃度を複数回測定して統計的に換算係数を求めてもよい。
【0084】
(測定例4)
次に、試料Xと同一種類の試料Y(トランス)について、VOC放散速度の評価を行った。まず、テドラーバッグの一部を切り、試料YとTVOC測定器のセンサー部を挿入した後、切断部を熱圧着によりシールした。次に導入口のコックを開け、真空引きをして内部の気体を排出した後、20Lの清浄な窒素を2L/minで10分かけて導入し、コックを閉じた。そして、コックを閉じた直後から2分毎にTVOC測定器によるTVOCの測定を行った。また、試料Zについても同様の条件でTVOCの測定を行った。
【0085】
測定の結果、図12に示す結果が得られた。ここに、図12は、測定例4のTVOC測定結果を示す図である。また、図13は、図12に示す測定結果に測定例3で求めたキシレンの換算係数0.288を乗算してキシレン濃度(換算値)とした図である。
【0086】
次に、図13の結果に基づいて、試料Yのキシレン放散速度を計算する。
【0087】
図13より、試料Yを封入したサンプリングバッグ内のキシレン濃度は、封入後15分経過後は225μg/m3であり、封入後45分後は930μg/m3であった。これにより、封入後15分から45分までの放散速度は、下記の式(15)に示すように28.2μg/hとなる。
【0088】
【数15】
図14は、図13に示す曲線を微分し、清浄気体の封入量を乗じた結果を示す図である。図14に示すように図13のキシレン濃度の変化からキシレンの放散速度を求めることができる。
【0089】
なお、試料Xのより簡易的なスクリーニング試験としては、気体封入後、一定時間が経過した後のキシレン濃度(換算値)が所定の基準値以下であるか否かを調べてもよい。ここでは、例えばディスプレイ用トランスについて、指針値に対するマージンを考慮して測定開始から30分後のキシレン放散量の基準値を100μg以下(放散速度のピーク値200μg/hに相当)とする。この放散量の基準値は、測定例4のように20Lの気体を用いる場合にはキシレン濃度5000μg/m3(=100μg÷(20L/1000L/m3))以下に対応する。そこで、気体封入後、30分後にTVOC濃度を測定してキシレン濃度に換算する。この換算したキシレン濃度が(5000μg/m3)以下であれば、その試料Xは使用可能な部品と判定できる。測定例4の結果(図13)によれば試料X及び試料Yともに、30分後のキシレン濃度(換算値)が5000μg/m3以下であるためこの基準を満たすことがわかる。
【0090】
(測定例5)
測定例5では、測定例1(第1実施形態)の試料A(トランス)について、第2実施形態に示す方法でVOC放散速度を求めた結果について説明する。
【0091】
まず、テドラーバッグ内に試料A(トランス)及びTVOC測定器のセンサー部分を挿入した後、テドラーバッグの開口部を熱圧着によりシールした。次に、テドラーバッグに設けられている導入口のコックを開き、真空引きしてバッグ内の気体を排出した。
【0092】
次に、試料Aを挿入したテドラーバッグ内に20Lの清浄な窒素ガスを2L/minの流量で10分間かけて導入し、その後コックを閉じて、TVOC測定器によりバッグ内のTVOC濃度の測定を開始した。
【0093】
ガスの導入開始から15分後のTVOC濃度は90μg/m3であった。また、ガスの導入開始から1時間15分後のTVOC濃度は520μg/m3であった。これらの値に予め測定したキシレン濃度への換算係数0.288を乗じることで、15分後のキシレン濃度(換算値)25.9μg/m3及び1時間15分後のキシレン濃度(換算値)149.8μg/m3が求まる。この濃度及び式(2)により、放散速度は約2.5μg/hとなった。
【0094】
その後、式(3)に基づいて補正係数を求め、放散速度に乗じることによりチャンバー法により測定した場合の放散速度を推定し、製品に組み込んだ場合であってもVOCガイドラインの指針値を超えないことが確認できた。
【0095】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0096】
(付記1)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0097】
(付記2)更に、前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正することを特徴とする付記1に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0098】
(付記3)前記換気回数に応じた放散速度の補正は、単位時間当たりの換気回数をn、前記バッグに前記気体を注入した直後における揮発性有機化合物の濃度をZ0、Δt時間後の揮発性有機化合物の濃度をZ1としたときに、(n・Δt/(1+n・Δt))×(Z1/(Z1−Z0))を乗算することにより行うことを特徴とする付記2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0099】
(付記4)前記揮発性有機化合物の放散速度は、前記バッグに前記気体を注入した直後における揮発性有機化合物の濃度をZ0、Δt時間後の揮発性有機化合物の濃度をZ1、前記バッグへの前記気体の封入量をVNとしたときに、(Z1−Z0)×VN/Δtにより計算することを特徴とする付記1又は2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0100】
(付記5)前記試料の温度に応じた前記放散速度の補正は、常温のときの放散速度と、稼働時の前記試料の温度における放散速度との比を乗算することにより行うことを特徴とする付記1又は2に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0101】
(付記6)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0102】
(付記7)前記Δt時間は2時間以下であることを特徴とする付記3又は4に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0103】
(付記8)前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体をサンプリングし、該サンプリングした前記揮発性有機化合物を成分毎に定量分析することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0104】
(付記9)前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、該総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算することを特徴とする付記1乃至7の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0105】
(付記10)前記換算係数は、
前記試料と同一種類の試料と気体とをバッグに封入し、
前記バッグから前記気体をサンプリングして、該サンプリングした気体中から揮発性有機化合物を成分毎に定量分析し、
前記サンプリングと同時に前記気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、
前記揮発性有機化合物の各成分の濃度を前記総揮発性有機化合物濃度で除算して求めることを特徴とする付記9に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0106】
(付記11)前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について、前記換算係数を算出することを特徴とする付記9に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0107】
(付記12)前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について濃度を求めることを特徴とする付記1又は7の何れかに記載の揮発性有機化合物測定方法。
【0108】
(付記13)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
前記バッグ中の気体をサンプリングする工程と、
前記サンプリングと同時に前記気体に含まれる総揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記サンプリングした気体中に含まれる揮発性有機化合物を成分毎に定量分析する工程と、
総揮発性有機化合物の濃度の測定結果と揮発性有機化合物の成分毎の濃度の測定結果とに基づいて総揮発性有機化合物の濃度を前記揮発性有機化合物の成分毎の濃度に換算する換算係数を求める工程と、
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【0109】
(付記14)試料と気体とをバッグに封入する工程と、
前記試料をバッグに封入した後、一定時間経過後の前記気体中の総揮発性有機化合物濃度を測定する工程と、
前記総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算する工程と、
前記乗算によって得られた揮発性有機化合物濃度から前記揮発性有機化合物の放散速度を求める工程と、
前記放散速度を予め設定した値と比較して前記試料の良否を評価する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、VOC放散速度の測定に用いるチャンバー法によるVOC測定システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、VOCガイドラインにより規定されるVOC放散速度の測定条件を示す図である。
【図3】図3は、VOCガイドラインにより規定される各規制物質の放散速度の指針値を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。
【図5】図5(a)は2つの試料(試料A及び試料B)をそれぞれ封入したバッグ内のVOC(キシレン)濃度の変化を測定した結果を示す図、図5(b)は図5(a)の縦軸のキシレン濃度をキシレン放散量に換算して示す図である。
【図6】図6は、チャンバー法で測定した場合のVOC放散速度の経時変化を示す図である。
【図7】図7は、測定例2における測定条件、VOC濃度の測定タイミング、VOC(キシレン)濃度の測定値、放散速度の計算値及び稼働による増加係数Konをまとめて示す図である。
【図8】図8は、サンプリングする気体の温度を常温にするための方法の一例を示す図である。
【図9】図9は、電源トランスから放散されるVOCをチャンバー法で測定した結果を示す図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係るVOC測定方法を示す模式図である。
【図11】図11は、測定例3の各VOC成分濃度及びTVOC濃度の測定結果と換算係数とを示す図である。
【図12】図12は、測定例4のTVOC測定結果を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す測定結果に測定例3で求めたキシレンの換算係数0.288を乗算してキシレン濃度(換算値)とした図である。
【図14】図14は、図13に示す曲線を微分し、清浄気体の封入量を乗じた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
11…エアー制御ユニット、
12…混合槽、
13,31…恒温槽、
14…チャンバー
15…ガスクロマトグラフ分析装置、
16…TENAX管、
17…サンプリングポンプ、
21…サンプリングバッグ、
22…試料、
23…測定器、
24…TVOC測定器、
26…換算データベース、
27…情報処理装置、
32…ポンプ、
33a,33b…配管、
34…冷却機、
35…サンプリング口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【請求項2】
更に、前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正することを特徴とする請求項1に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項3】
試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【請求項4】
前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体をサンプリングし、該サンプリングした前記揮発性有機化合物を成分毎に定量分析することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項5】
前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、該総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項6】
前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について、前記換算係数を算出することを特徴とする請求項5に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項1】
試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料の温度に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【請求項2】
更に、前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正することを特徴とする請求項1に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項3】
試料と気体とをバッグに封入する工程と、
時間をおいて複数回前記気体中に含まれる揮発性有機化合物の濃度を測定する工程と、
前記濃度の測定結果から前記揮発性有機化合物の放散速度を算出する工程と、
前記試料を換気可能な環境で使用した場合における換気回数に応じて前記放散速度の値を補正する工程と
を有することを特徴とする揮発性有機化合物測定方法。
【請求項4】
前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体をサンプリングし、該サンプリングした前記揮発性有機化合物を成分毎に定量分析することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項5】
前記揮発性有機化合物の濃度を測定する工程では、前記バッグ中の気体の総揮発性有機化合物濃度を測定し、該総揮発性有機化合物濃度に揮発性有機化合物濃度に換算する換算係数を乗算することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【請求項6】
前記揮発性有機化合物の各成分のうち濃度が高い成分、又は前記揮発性有機化合物の各成分のうち放散速度の所定の指針値に対する割合が大きい成分について、前記換算係数を算出することを特徴とする請求項5に記載の揮発性有機化合物測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−198486(P2009−198486A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243905(P2008−243905)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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