説明

揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置および揮発性有機化合物の測定方法

【課題】分離カラムや検出器の劣化を防止できる揮発性有機化合物測定技術を提供する。
【解決手段】揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置において、総量測定系を出た試料の全量を成分濃度測定系に導通する状態と、総量測定系を出た試料の全量または一部を成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを成分濃度測定系に導通する状態とを切り換えるための切り換え用器具を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚生労働省の室内濃度指針値、学校保健法に基づく環境衛生の基準等の対象となる規制物質(トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン)を、短時間で容易に測定できる揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置に関する。なお、以下、揮発性有機化合物をVOCと略称し、揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置をVOC−GCと略称することがある。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているVOC−GCには、各成分の濃度およびVOC総量が測定できるタイプの一例として、図1に示すものがある(非特許文献1参照)。
【0003】
図1において、サンプル導入口1から一定量の試料ガスが導入され、矢印aのように流れてトラップ管2を通過して、外部に排出される。このとき、たとえば固相吸着材を使用して試料をトラップ管2に吸着捕集する。トラップ管2に捕集された試料は、たとえば加熱により固相吸着材より脱離され、キャリアガス3が矢印aのように流れることによって、総量測定系4に導かれる。試料が総量測定系4に導入された後はキャリアガス3は矢印bのように流れる。総量測定系4において、VOCを大まかに分離することにより全成分の総量が測定され、次いでその排出ガスを成分濃度測定系5に導き、成分濃度測定系5で測定対象成分を分離することにより各成分の濃度が測定される。全成分の総量や各測定対象成分の濃度は、たとえば検出した信号の積分値や検出信号のピーク高さ等を利用する公知のガスクロマトグラフィ技術によって測定され得る。
【0004】
図1の装置を用いて得た結果の一例を図2に示す。図2では、測定対象成分の総量測定に要した時間(t1)は、各測定対象成分の濃度測定に要した時間の約1/4である。なお、各測定対象成分の濃度測定においてカラム内保持時間(リテンションタイム)の最も長い成分X’は、総量測定ではXの所に検出されている。
【0005】
このようなVOC−GCは、一般住宅、オフィスビル、教育施設(学校、幼稚園、保育園)、病院、老人保健施設等での有害化学物質測定の他、各種部品および製品の品質管理や作業環境管理、VOC分解・除去性能の評価等の工業用途にも用いられている。
【非特許文献1】http://www.jmsystem.co.jp/products/voc.html(2007年7月25日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VOCの測定環境、特に工業用途では、測定対象から発生するVOCが突発的に高濃度になったり、対象VOC以外の分子量の大きい物質や沸点の比較的高い物質が含まれていたりする場合が多々ある。このような分子量の大きい物質や沸点の高い物質は、一般にカラム内保持時間が長く、分離カラム内に残って次の測定に影響を与えたり、カラムの劣化を招いたりするという問題がある。
【0007】
例えば、図2では、総量測定系4のクロマトグラムでt1以降でも、テール部分(Y)が残り、またピークが検出されている。したがって、測定が終了 するタイミングteでは、これらの成分が成分濃度測定系5の分離カラム中に残留することになる。分離カラム中にキャリアガスを流し続けることでこの成分は排出されるが、完全に排出されないうちに次の測定を開始すると、これらの成分の影響を受けて正しい結果が得られなくなる。
【0008】
また、高濃度のガスが、測定系、特に感度が高く繊細かつ重要な成分濃度測定系、に流入すると、カラムや検出器の劣化を招きやすく、装置としての寿命が短くなるという問題がある。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決することを目的としている。本発明の更に他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、VOC−GCであって、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系を有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを前記成分濃度測定系に導通する状態とを切り換えるための切り換え用器具を有する、VOC−GCが提供される。前記切り換え用器具が、総量測定系と成分濃度測定系との間に設けられた切り換え用バルブを備えることが好ましい。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態において、前記総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合には、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の一部が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときには、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の全量が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法が提供される。
【0013】
上記諸発明態様により、測定対象試料中に、カラム内保持時間が長い成分が存在していても、次の測定に影響を与えたり、カラムの劣化を招いたりすることがない測定が可能になる。また、測定対象試料中に高濃度の測定対象成分が存在する場合にも、容易に適切な測定条件にでき、また、測定系の劣化を防止し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、測定対象試料中に、カラム内保持時間が長い成分が存在していても、次の測定に影響を与えたり、カラムの劣化を招いたりすることがない測定が可能になる。また、測定対象試料中に高濃度の測定対象成分が存在する場合にも、容易に適切な測定条件にでき、また、測定系の劣化を防止し得る。このようにして、本発明により、分離カラムや検出器の劣化を防止でき、寿命の長い測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0016】
本発明の一態様に係るVOC−GCは、揮発性有機化合物の総量と各測定対象成分濃度とを測定するための装置であり、その総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系を有する。なお、ここで、測定対象成分は、VOCであれば、任意に定めることができる。このような成分としては、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。
【0017】
総量測定系では、VOCを大まかに分離することにより全測定対象成分の総量を測定する。検出の終点は、全測定対象成分の内最もカラム内保持時間の長い成分がカラムから排出されるまでの時間を予め測定しておくことで定めることができる。また、どの成分がカラムから排出されたかに関わらず、人為的にある時間を定め、その時間までに得られた信号をVOCの総量と定めるやり方もあり得る。すなわち、総量測定における終点は任意に定めてもよい。
【0018】
その後、総量測定系を出た排出ガスは成分濃度測定系に導かれ、そこで各成分濃度を測定する。
【0019】
上記において、本発明に係るVOC−GCでは、総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態(状態1)と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを前記成分濃度測定系に導通する状態(状態2)とを切り換えるための切り換え用器具を有する。切り換え用器具が、総量測定系と成分濃度測定系との間に設けられた切り換え用バルブを備えることが好ましい。
【0020】
状態1が通常の測定状態であり、総量測定系で測定対象となった試料が、成分濃度測定系でも全て測定対象となる。
【0021】
これに対して状態2では、総量測定系で測定対象となった試料の全てまたは一部が本測定系外に排出される。
【0022】
本発明に係る装置では、状態1において、あるいは後述するような他の状態において、総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときに、切り換え用器具により、状態2(ただし、総量測定系を出た試料の全量が成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが成分濃度測定系に導通される状態)にすることができる。この切り換えは自動操作であっても、バルブ等の遠隔操作であっても、手動操作であってもよい。
【0023】
上記の「予め定められた値」は総量測定における終点である。この終点は、上述のごとく、全測定対象成分の内最もカラム内保持時間の長い成分がカラムから排出されるまでの時間を予め測定しておくことで定めることができる。また、どの成分がカラムから排出されたかに関わらず、人為的にある時間を定め、その時間までに得られた信号をVOCの総量と定めるやり方もあり得る。
【0024】
通常、VOCのサンプルには測定対象以外の成分も含まれるので、全測定対象成分がカラムから排出された後も図2に示すようにテール部(図2の符号Y)を示す。図2に示すようにピークを示す場合もある。そこで、切り換え用器具により総量測定系を出た排出ガスを排出系に導き、これらのテール部やピークが成分濃度測定系に入らないようにするのである。
【0025】
このようにすると、成分濃度測定系にはカラム内保持時間の長い物質が入らないため、次の試料の測定への影響を防止できると共に、成分濃度測定系のカラムの劣化も防ぐことができる。カラム内保持時間のより長い物質は、分子量のより大きい物質であったり、沸点のより高い物質であったりするが、カラムにおける吸着性能の差等により、必ずしもそうではない場合もある。
【0026】
なお、上記における切り換えの際には成分濃度測定系にキャリアガスを流す必要が生じる。切り換え用器具はそのための機能も果たすこともできる。
【0027】
このキャリアガス量(単位時間あたりの量)は、総量測定系から排出された試料に同伴したキャリアガス量とほぼ等しければよい。この量は、総量測定系において試料に同伴したキャリアガス量とほぼ等しい量(たとえば、同一の気圧および温度条件でほぼ等しい流速)を選択することで達成し得る。なお、本明細書において、「キャリアガス量がほぼ等しい」とは、切り換え後の測定値が、キャリアガス量が同一の場合に得られる測定値と比較して許容できる相違の範囲内であることを意味し、その程度は、所望の測定精度によって変わり得るので一概には言えない。一般的には±20%以内の誤差は許容される。±10%以内の誤差が好ましい。
【0028】
このようなVOC−GCの例を図3に示す。図3は、切り換え用バルブ6と試料排出系7と希釈用キャリアガス配管8とが付設されている以外は図1と同様である。この例では、切り換え用バルブ6と試料排出系7と希釈用キャリアガス配管8とが上記切り換え器具を構成する。
【0029】
図3の装置には、切り換え用バルブ入口31、希釈用キャリアガス入口32、成分濃度測定系5への切り換え用バルブ出口33および排出配管への切り換え用バルブ出口34があり、総量測定の開始時には、切り換え用バルブ6の設定により、入口31と出口33とが導通し、入口32と出口34とが導通している。この間は、希釈用キャリアガス配管8を通る希釈用キャリアガスの流れは閉止しておいてもよい。
【0030】
このような切り換え用バルブ6を使用して、総量測定系4において総量を測定している間は、総量測定系4の排出ガスは全量成分濃度測定系5に導かれ、総量測定が終わった時点で、総量測定系4の排出ガスは試料排出系7へ流れ、希釈用キャリアガス配管8からの希釈用キャリアガスが成分濃度測定系5に導かれる。このときには、入口31と出口34とが導通し、入口32と出口33とが導通している。
【0031】
この切り換え用バルブは手動バルブでも遠隔操作バルブでもよいが、総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときに、切り換え用バルブが自動的に排出側に切り換わる自動バルブであってもよい。後者は、同様の試料について多数回測定を行う場合等に便利である。
【0032】
本発明に係る装置では、また、総量測定系を出た試料の全量を成分濃度測定系に導通する状態において、総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合に、切り換え用器具により、状態2(ただし、総量測定系を出た試料の一部が成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが成分濃度測定系に導通される状態)にすることができる。この場合の切り換え器具は試料を希釈する機能を有することから、希釈用器具と呼ぶこともできる。
【0033】
このようにすると、測定対象試料中に高濃度の測定対象成分が存在する場合にも、希釈された状態での成分測定が可能になり、容易に適切な測定条件により、成分濃度測定系のカラムの劣化を防止し得る。なお、高濃度として「予め定められた値」は任意に決定し得る。
【0034】
この例を図3を用いて説明する。総量測定の開始時には、切り換え用バルブ6の設定により、入口31と出口33とが導通し、入口32と出口34とが導通している。この間は、希釈用キャリアガスの流れは閉止しておいてもよい。
【0035】
次いで、高濃度が観測された場合には、希釈用キャリアガスの流れが閉止されていれば開始し、切り換え用バルブ6の切り換えにより、入口31と入口32とが、それぞれ、出口33および出口34と導通することにより、希釈用キャリアガスの混ざったガスの一部ずつが、出口33と出口34とに流れるようにする。
【0036】
高濃度が観測された成分の測定が終了した後は、元の条件に戻すことも可能である。また、総量測定が終了したら、切り換え用バルブ6の切り換えにより、入口31と出口34とが導通し、入口32と出口33とが導通することにより、試料の全量を前記成分濃度測定系に導通しないで排出する状態にすることができる。
【0037】
本発明に係る切り換え用器具、切り換え用バルブ、希釈用キャリアガス注入機構、分離カラム、その他の付属設備、キャリアガス等については特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。
【0038】
本発明に係る切り換え用バルブの例としては、図4〜8に示すものを挙げることができる。図4はいわゆる四方切り換え用バルブである。この場合には、成分濃度測定系に導通する状態と成分濃度測定系に導通しないで排出される状態との切り換えは可能であるが、高濃度が検出された場合に希釈された状態で成分測定することはできない。
【0039】
図5は、内部空間を二つに仕切られたドラムが図6のように回転するタイプのバルブである。入口31,32および出口33,34における配管は可撓性のある材料から作製されており、ドラムと共に回転し得る。図6において、XA断面は図5のXAにおける切断面を、XB断面は図5のXBにおける切断面を表す。図6の状態aでは、入口31が出口33に繋がり、入口32が出口34に繋がっている。これは、状態1に対応する状態である。なお、図5では、入口31と出口33とは、バルブの裏側になっているため描かれていない。
【0040】
ついで、図6の状態bでは、入口31と入口32とが、出口33および出口34に繋がっている。この構成により、入口31から来た試料とキャリアガスとの混合物が入口32から来た希釈用キャリアガスと混合され、その一部(この例では半量)が出口33を経て、成分濃度測定系に導入されることになる。切り換え角度を選べば、成分濃度測定系に導入される量と排出される量との比を任意に変更することが可能である。なお、この場合には、総量測定系に使用されているキャリアガスとほぼ等しい量のキャリアガスを希釈用に使用すればよい。
【0041】
更に図6の状態cでは、入口31が出口34に繋がり、入口32が出口33に繋がっている。この構成により、入口31から来た試料とキャリアガスとの混合物は全て測定系外に排出され、希釈用キャリアガスのみが出口33を経て、成分濃度測定系に導入されることになる。この場合においても、総量測定系に使用されているキャリアガスとほぼ等しい量のキャリアガスを希釈用に使用すればよい。
【0042】
図7は図6の断面とは異なり、入口31,32のある側に複数の円筒状の穴が設けられている。この構造の場合にも、図6で説明したような切り換えが可能である。図7の状態a,b,cは、図6の状態a,b,cに対応する。ただし、図7の状態bでは、図6の状態bとは切り換え角度が異なり、出口33から出てくる試料の希釈率がより低くなる。図7の上段中、白抜きの円が入り口31,格子のある円が入口32を表す。
【0043】
なお、以上においては、切り換え用バルブを一つ使用したが、本発明においては切り換え用バルブの数に制限はなく、いくつ使用してもよい。また、一つのバルブに複数の出口のあるいわゆる切り換え用バルブではなく、導通/閉止用のバルブを複数組み合わせて切り換え可能としたものも本発明の範疇に属する。この場合これら複数のバルブが物理的に一体化している必要はなく、物理的に独立な複数のバルブから構成されていてもよい。また、上記ではバルブ断面の面積比でキャリアガスによる希釈を実現したが、流量をコントロールできるバルブを介して試料を測定系外に排出したり、キャリアガスを成分濃度測定系に供給できるようになっていてもよい。
【0044】
本装置は、予め定められた測定対象の揮発性有機化合物について、試料中の総量と各測定対象成分濃度とを測定するためのポータブルガスクロマトグラフ装置において、特に有用である。このようなVOC−GCでは、装置がVOCの測定に特化しており、一般のガスクロマトグラフに比し、測定対象や測定濃度等の自由度は小さく、通常、試料中の総量と各測定対象成分濃度との測定のみが可能であるため、測定対象試料中に、カラム内保持時間が長い成分が存在していると、次の測定に影響を与えたり、カラムの劣化を招いたりすることが起こる。また、測定対象試料中に高濃度の測定対象成分が存在する場合には、測定能力を超えてしまい、分離カラムや検出器に過度の負担を掛けることになる。また、測定自体も、希釈試料を用いてやり直す必要が生じる。このような場合に、本発明に係る装置を使用すれば、測定対象試料中に、カラム内保持時間が長い成分が存在しても、次の測定に影響を与えたり、カラムの劣化を招いたりすることがない。したがって、VOCの総量測定や各測定対象成分濃度測定に影響を与えることの少ないVOC−GCが提供される。また、測定対象試料中に高濃度の測定対象成分が存在する場合にも、容易に適切な測定条件にでき、測定系の劣化を防止し得る。このようにして、本発明により、分離カラムや検出器の劣化を防止でき、寿命の長い測定装置を提供できる。
【0045】
なお、上記において、「予め定められた測定対象の揮発性有機化合物」とは、どのようなVOCを測定するのかが、その装置に対して予め定められていることを意味する。この「予め定められた測定対象の揮発性有機化合物」は、装置を改変し、あるいはカラムを変更することによっても変更し得るが、通常は特定のVOCの測定に特化しており、一般のガスクロマトグラフに比し、測定対象や測定濃度等の自由度は小さい。通常、試料中の総量と各測定対象成分濃度との測定のみが可能である。
【実施例】
【0046】
次に本発明の実施例を詳述する。
【0047】
[実施例1]
図2,3,4にしたがって説明する。図3は本実施例における構成の概略を説明する図であり、図4は切り換え用バルブ部分の詳細図である。切り換え用バルブとして、4個のポートを備えた公知の四方切り換えバルブを用いてある。
【0048】
ジェイエムエス社から入手した、予め定められた測定対象の揮発性有機化合物について、試料中の総量と各測定対象成分濃度とを測定するためのポータブルガスクロマトグラフ装置(VOCモニター JHV-1000)を用い、図3に示すように図4の切り換え用バルブを設け、必要な改造を行った。バルブは手動で操作した。
【0049】
測定対象成分はトルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレンであった。
【0050】
図4の切り換え用バルブ6が状態aで、予め採取しておいた試料をトラップ管2からキャリアガスに同伴させて取り出し、総量測定系4に導入した。取り出し用のキャリアガスは図3の経路aを経由して供給し、試料の供給が終わったら、経路aを止め、経路bを経由してキャリアガスのみを総量測定系4に供給した。なお、切り換え用バルブ6の状態aは、上記状態1(総量測定系を出た試料の全量を成分濃度測定系に導通する状態)に対応する。
【0051】
総量測定系4から流入したガスは成分濃度測定系5へ流れ、配管8(図3)を経由するキャリアガスは外部へ排出された。この時点では、このキャリアガスの流れは、たとえば配管8に設けたバルブを締めることで止めておいてもよい。
【0052】
次に、総量測定系で測定対象成分のうち最も遅く検出される成分(この場合は、スチレン)の検出が終了する時点で、切り換えバルブ6を状態bに切り換えた。その結果、測定対象外の成分を含有したガスは試料排出系を経て測定系外に排出された。同時に、配管8を経由するキャリアガスを成分濃度測定系5用に導入し、成分濃度測定系5用のキャリアガスとした。なお、状態bは、上記状態2のうち、「総量測定系を出た試料の全量を成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを成分濃度測定系に導通する状態」に対応する。
【0053】
総量測定系4への図3の経路bによるキャリアガス導入は、成分濃度測定系5の測定が終了する時間(T=te)までそのまま続けた。上記において、スチレン)の検出が終了する時点は6分、teは20分であった。
【0054】
この操作により、図2のテール部分を成分濃度測定系5に流入させることがなく、次の測定をすぐその後に開始してもその測定に影響を与えることはなかった。また、成分濃度測定系5に測定対象外のいわゆる重い成分が蓄積することもなかった。
【0055】
[実施例2]
図5,6の切り換え用バルブを用いた以外は、実施例1と同様の測定系を使用して測定を行った。ただし、試料にはスチレンを加え、そのまま測定されると成分濃度測定系5での測定時にスチレンのピークがチャートの範囲を超えるようにした。
【0056】
図6の切り換え用バルブ6が状態aで、予め採取しておいた試料をトラップ管2からキャリアガスに同伴させて取り出し、総量測定系4に導入した。取り出し用のキャリアガスは図3の経路aを経由して供給し、試料の供給が終わったら、経路aを止め、経路bを経由してキャリアガスのみを総量測定系4に供給した。図6の切り換え用バルブ6の状態aは、上記状態1に対応する。
【0057】
次に、スチレンの値があらかじめ定めておいた値を超えた時点(具体的にはチャートの高さの3/4を選んだ)で、図6の切り換え用バルブ6を状態bに切り換えた。この状態は、状態2(ただし、総量測定系を出た試料の一部が成分濃度測定系に導通させないで排出され、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態)に対応する。
【0058】
これにより、総量測定系4から排出されたガスの半量が、希釈用キャリアガス配管8から来た希釈用キャリアガスの半量とともに成分濃度測定系5に導かれ、残りが希釈用キャリアガス配管8から来た希釈用キャリアガスの残りとともに試料排出系7に排出される状態になった。成分濃度測定系5におけるスチレンのピークには異常は認められず、スチレンのピークもチャートの範囲内に収まった。
【0059】
測定終了後に、成分濃度測定系5から得られた信号から得られるスチレン濃度に対し、希釈倍率(本例では2)を乗じて、スチレン濃度の測定値とした。
【0060】
状態bへの切り換え時点は任意に定めることができるが、すでに成分濃度測定系5に試料が入った後は測定値を狂わせることになるので、そのような事態は避けるべきである。切り換え時点の選択は、測定対象に応じて経験的に決めることができる。あらかじめ、測定対象ごとに切り換え時点を決め、自動的に切り換えを行うようにしてあってもよい。また、万一切り換えが遅れた場合には、適切な切り換え時点を選んで同様の測定を繰り返してもよい。
【0061】
なお、本例は、チャートの最後に現れる測定対象成分についての例であるが、チャートの途中に現れる測定対象成分についても同様の操作を行うことができる。その場合、成分濃度測定系5における測定が完了するまで、状態bを維持してもよく、また、適宜状態aに戻してもよい。
【0062】
次に、総量測定系で測定対象成分のうち最も遅く検出される成分(この場合は、スチレン)の検出が終了した時点で、切り換えバルブ6を状態cに切り換えた。その結果、測定対象外の成分を含有したガスは試料排出系を経て測定系外に排出された。同時に、配管8を経由するキャリアガスを成分濃度測定系5用に導入し、成分濃度測定系5用のキャリアガスとした。なお、状態cは、上記状態2のうち、「総量測定系を出た試料の全量を成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを成分濃度測定系に導通する状態」に対応する。
【0063】
[実施例3]
実施例2と同様の条件で測定を行った。ただし、図6の切り換え用バルブ6の状態bにおいて、図6の状態bの下側の隔壁を、実施例2における「水平状態」から「水平状態から45°時計回りに傾けた状態(図8)に変えた。
【0064】
測定終了後に、成分濃度測定系5から得られた信号から得られるスチレン濃度に対し、希釈倍率(本例では4)を乗じて、スチレン濃度の測定値とした結果、実施例2と同様の値を得た。
【0065】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0066】
(1) 揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置であって、
前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系を有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを前記成分濃度測定系に導通する状態とを切り換えるための切り換え用器具を有する、揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【0067】
(2) 前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、予め定められた測定対象の揮発性有機化合物について、試料中の総量と各測定対象成分濃度とを測定するためのポータブルガスクロマトグラフ装置である、付記1に記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【0068】
(3) 前記切り換え用器具が、総量測定系と成分濃度測定系との間に設けられた切り換え用バルブを備える、付記1または2に記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【0069】
(4) 前記総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときに、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の全量が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換えられ得る、付記1〜3のいずれかに記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【0070】
(5) 前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態において、前記総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合に、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の一部が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換えられ得る、付記1〜4のいずれかに記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【0071】
(6) 揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態において、前記総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合には、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の一部が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法。
【0072】
(7) 揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときには、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の全量が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】現在市販されているVOC−GCの一例を示す模式図である。
【図2】図1の装置を用いて得た結果の一例を示すチャートである。
【図3】本発明に係るVOC−GCの一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る切り換え用バルブの一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る他の切り換え用バルブの一例を示す模式図である。
【図6】図5の切り換え用バルブの動作の一例を示す模式図である。
【図7】図5の切り換え用バルブの他の一例の動作を示す模式図である。
【図8】図5の切り換え用バルブの他の動作の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0074】
1 サンプル導入口
2 トラップ管
3 キャリアガス
4 総量測定系
5 成分濃度測定系
6 切り換え用バルブ
7 試料排出系
8 希釈用キャリアガス配管
31 切り換え用バルブ入口
32 希釈用キャリアガス入口
33 成分濃度測定系への切り換え用バルブ出口
34 排出配管への切り換え用バルブ出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置であって、
前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系を有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出し、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスを前記成分濃度測定系に導通する状態とを切り換えるための切り換え用器具を有する、揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、予め定められた測定対象の揮発性有機化合物について、試料中の総量と各測定対象成分濃度とを測定するためのポータブルガスクロマトグラフ装置である、請求項1に記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記切り換え用器具が、総量測定系と成分濃度測定系との間に設けられた切り換え用バルブを備える、請求項1または2に記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときに、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の全量が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換えられ得る、請求項1〜3のいずれかに記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態において、前記総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合に、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の一部が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換えられ得る、請求項1〜4のいずれかに記載の揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置。
【請求項6】
揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態において、前記総量測定系で予め定められた値以上の高濃度が検出された場合には、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の一部が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法。
【請求項7】
揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置を用いる揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法において、
前記揮発性有機化合物測定用ガスクロマトグラフ装置が、前記総量測定用および各測定対象成分濃度測定用に、それぞれ分離カラムおよび検出器を直列に備えた、総量測定系と成分濃度測定系との2系統の測定系と、
前記総量測定系を出た試料の全量を前記成分濃度測定系に導通する状態と、前記総量測定系を出た試料の全量または一部を前記成分濃度測定系に導通させないで排出するための切り換え用器具とを有し、
前記総量測定におけるカラム内保持時間が予め定められた値に達したときには、前記切り換え用器具により、前記総量測定系を出た試料の全量が前記成分濃度測定系に導通されないで排出され、同時に当該排出試料に同伴するキャリアガス量にほぼ等しい量のキャリアガスが前記成分濃度測定系に導通される状態に切り換える、揮発性有機化合物の総量および各成分濃度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−47622(P2009−47622A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215484(P2007−215484)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)