説明

揮発性材料を持続放出するためのポリマー組成物

エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーと、粘着付与剤と、10%未満の相溶性の可塑剤又は可塑剤のブレンド及び揮発性材料を含む、ポリマー組成物。該組成物は、組み込まれた揮発性材料を長時間有効に供給することができ、同様に大抵の基材に対して良好な接着特性も有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーをベースとした揮発性材料(例えば、香料)を組み込み、持続的に放出することができる、粘着付与ポリマー組成物に関する。本発明の組成物は、空気清浄装置、防臭剤、良い香りのする物体、殺虫剤など、又は包装内に長持ちする芳香を放つヘッドスペースを作製する必要がある場合のように、環境内での揮発性材料の長期的な供給が望まれる様々な用途を見い出すことができる。
【背景技術】
【0002】
揮発性成分を吸収して、放出することができるポリマー組成物は、当該分野では、特に香料の供給に関して周知である。
【0003】
GB1558960(ナガエ(Nagae))には、傘に用いられる、香料放射PVCフィルムが記載されている。
【0004】
US4618629(T・バーネット社(T.Burnett &Co, Inc))には、粒子状芳香剤(運搬樹脂が中に組み込まれた)芳香剤放射ポリウレタンフォームが記載されている。該樹脂は、ポリマーのリスト(ポリオレフィン、ポリエステル、PVC及び類似物、ポリアミド、セルロースポリマー)から選択され得る。
【0005】
香料供給のためのポリマー組成物の通常利用には、例えば、空気清浄装置が含まれる。これらは、典型的には、GB2286531(ケルコ(Kelco))やUS3969280(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson))に記載されているもののように架橋多糖ポリマー(デンプン、アルギネート又はCMC)から通常得られる水性ゲルの形態である。
【0006】
これら及びその他の文献は揮発性材料の長期に渡る供給を提供することを主張しているが、多くの理由から、依然として決して十分に満足いくものではない。
【0007】
第一に、これらのポリマー組成物は、殆どの場合、組成物の総重量の最高10%という非常に限定された量の揮発性材料しか通常は組み込んで放出することができない。
【0008】
第二に、これらのポリマー組成物は、揮発性材料の、異なる揮発性を有する様々な構成成分を均一に放出することはできない。例えば、10個を超える様々な構成成分を有し得る香料を考えるならば、より揮発性の高い構成成分が最初に放出され、少ししてから揮発性のより低い特徴のみが知覚されるため、使用者が香料の全特徴を感知することはない。実際に、上述のポリマー組成物は、現代の香料産業に次第に望まれつつある、より高度な香料を一貫して供給するということが単に可能ではないため、一般的には、シトロネロールのような単一の揮発性物質から成る単純な香料を供給するのに使用される。
【0009】
第三には、純粋なポリマー材料は、変形し難く、しかも一般には成形するのに高温を要する。そのため、揮発性材料が溶融物として導入されるときは必ず、その揮発性材料が高温のために大量に失われる。
【0010】
第一及び第二の問題は、フィルメニッヒ(Firmenich)によりUS4734278で一部検討されており、揮発性活性物質(香料、防臭剤、殺虫剤など)の持続放出を提供する、ブロックポリエーテル−アミド系樹脂(例えば、ペバックス(Pebax)(商標))の成形された本体が記載されている。アトケム(Atochem)によって改良が成されており、PCT国際公開特許WO9726020A1には、ペバックス(Pebax)(商標)+複合香料(すなわち、5構成成分を超えるもの)で製造された改良された芳香性樹脂が記載されている。このような樹脂は、長期にわたって、揮発性成分の分離が低減された複合香料を供給することができる。
【0011】
第三の問題は、当業者に周知のように、ポリマー混合物の加工温度を低下させる可塑剤の使用によって一部のみが解決されている。この解決策は、例えば、US4552693(エイボン(Avon))適用されており、熱可塑性ポリアミド樹脂、スルホンアミド可塑剤を含む可塑剤/溶媒系、及び芳香剤を含む組成物から得られた芳香剤放射性の透明な物品が記載されている。これらの組成物中で可塑剤を使用する利点は、いわゆるホットメルト組成物に関して知られているように、比較的低温で前記組成物を加工(成形、押出、成膜)できる可能性である。
【0012】
更に改良された組成物が、プロクターアンドギャンブル(Procter & Gamble)社に譲渡された欧州特許出願EP1,153,169に記載されており、長期間及び放出されている間に該成分が分離することのない、異なる揮発性の幾つかの成分からなる揮発性材料を組み込み、持続的に放出できる、ポリマー材料が記載されており、さらにまた、好ましくはホットメルト技術によって簡単に処理され、物品に形成されるポリマー材料が記載されている。
【0013】
揮発性材料を供給できるポリマー組成物を製品に組み込むときのもう1つの関連する問題は、例えば、溶融状態で適用されるときの、基材に対するポリマー組成物の接着性である。実際には、多くの場合、前記ポリマー組成物は、高速加工ラインで基材(例えば、包装の内側表面、又は空気清浄装置の支持表面)に適用される必要がある。この状況では、ポリマー組成物がホットメルトとして適用できるだけでなく、該ポリマー組成物が、ポリマー組成物を基材上に固着するために該ポリマー組成物より先に基材に適用される接着剤ストリップのような追加的な接着剤供給源、又は追加的なホットメルト接着剤を必要とせずに、所望の適用位置に留まるのに十分な粘着力を有することも明らかに望ましい。従来技術での材料は、様々な揮発性材料を供給する能力と、溶融状態での有効な粘着特性との間で妥協点を見い出さなければならない。
【0014】
従来技術のポリマー組成物は、多くの場合、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、純粋なポリアミドポリマー又は純粋なEVAポリマーのような特定の純粋なポリマーをベースとする。結果として、揮発性材料の選択はこうした特定のポリマーと溶解又は相溶性の成分に限られていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
US5,861,128には、EVAポリマーと可塑剤を含む組成物が記載されている。しかしながら、EVAと共に使用するよう推奨される可塑剤は、炭化水素(例えば、ポリブテン)だけであることから、得られる組成物は、炭化水素の極性が低いために、限られた数の香料材料しか組み込むことができない。
【0016】
US4,515,909には、可塑剤ともみなされ得る香料拡散剤をポリマー重量の10%まで含有するEVA系の芳香剤物質を放出するための樹脂組成物が記載されているが、香料拡散剤は、低濃度で使用されると粘着特性を有する前記組成物を与えず、事実、特許に記載の組成物は成型品の中で使用されており、接着性がない。
【0017】
異なる揮発性材料を組み込み、持続的に放出でき、典型的に、ホットメルトによって簡単に処方でき、さらに殆どの高分子及びセルロース系の基材の上に良い接着性を有する、ポリマー組成物が我々の同時係属欧州特許出願04013513に記載されている。
【0018】
本発明は、欧州特許出願04013513に記載されているものと同じ利益を提供する別の組成物について記載し、それらは、さらに向上した接着特性を持つ。
【0019】
本発明の組成物は、実際に、異なる多容量の揮発性材料の良好な取り扱い性を有し(高い重量%の保存、長い持続性供給時間)、該揮発性材料は、更に向上した接着特性とともに、工業的製造工程において製品への組み込むが必要な場合、更に容易な相溶性を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明はポリマー組成物であって、
a) エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーと、
b) 粘着付与剤と、
c) 組成物の総重量の10重量%まで相溶性の可塑剤又は可塑剤のブレンドと、
d) 揮発性材料、とを含むポリマー組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
驚くべきことに、a)エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーと、b)粘着付与剤と、c)組成物の総重量の10重量%までの相溶性の可塑剤又は可塑剤のブレンドと、d)揮発性材料、とを含むポリマー組成物は、該揮発性材料を長期間持続的に(すなわち、一定の放出速度で長い時間の間)放出する能力を持つことが見い出された。このような組成物は、ホットメルト接着剤として適用でき、そして驚くべきことに、大抵の基材(プラスチックフィルム、発泡体、厚紙など)に対し良好な驚くべき接着性も有する。
【0022】
本発明のポリマー組成物によってもたらされる非常に重要なもう1つの利点は、広範な揮発性材料導入の可能性である。
【0023】
驚くべきことに、本発明によるポリマー組成物は、広い極性範囲の多数の揮発性材料を組み込んで有効に放出できると同時に、溶融状態で大抵の基材に対して良好な接着性も有することが分かった。
【0024】
従来の技術とは異なり、本発明の組成物は、組み込まれ、そして放出されることのできる揮発性材料の組成に関して、配合者がエチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとの全てのコポリマーからコポリマーを選ぶことができ、さらに、粘着付与剤を異なる極性及び性質の適した材料の広い範囲から選ぶことができるため、よりさらに適応性がある。以下で詳細に説明するように、多数の添加物も任意に前述配合に導入することができる。このような粘着付与ポリマーマトリックス(コポリマー、粘着付与剤、組成物の総重量の10重量%までの可塑剤、任意の他のポリマー又は添加物)に対する配合柔軟性は、その極性の特徴を非常に精密に合わせることを可能にする。このことは、粘着付与ポリマーマトリックスに組み込むことのできるいずれの揮発性材料との相容性を最大にすることができ、それ故に、本発明に従ったポリマー組成物を得ることができる。理論に束縛されることなく、粘着付与ポリマーマトリックスと揮発性材料との間の特定の極性の相溶性が、良好な、揮発性材料の組み込みと持続的放出を提供するために必要であると考えられている。
【0025】
故に、本発明のポリマー組成物のコポリマーと粘着付与剤は、粘着付与ポリマーマトリックスの極性が実質的に揮発性材料の極性と適合するように好ましくは選択され、極性は当該技術分野において既知の方法の1つによって求めることができる。
【0026】
従来的に、ホットメルトとして使用できるポリマー組成物は、大量の可塑剤を含む。驚くことに本発明の組成物は、たとえそれらが少ない量の可塑剤を含むとしても、典型的に100℃未満のとても低い適用温度でホットメルトとして処方でき、所望により、幾つかの場合では、70℃以下の適用温度を有するように処方できる。これは、粘着付与剤の特定の選択、及び本発明の組成物の成分の特定の組み合わせによるものと考えられる。これは、加工温度が高くなるほど、組成物の製造時に組み込まれる揮発性材料のうちかなりの量が蒸発によって失われるリスクが大きくなるため、揮発性物質を組み込むために用いられる材料にとって特に望ましい特性である。
【0027】
本発明のポリマー組成物の第1の必須成分は、エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーである。
【0028】
エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのあらゆるコポリマーが本発明に適している。
【0029】
用語「少なくとも1種のヘテロ原子を含むモノマー」は、分子中に少なくとも1つのC−X結合を含み、XはC又はHではない、すべてのそれらのモノマーを含む。前記C−X結合は好ましくは極性結合である。好ましくは炭素原子はN、S、F、Cl又はO原子に結合されている。より好ましくは前記極性結合はカルボニル基の、より好ましくはエステル基の一部である。本発明のための好ましい、少なくとも1種のヘテロ原子を含むモノマーは、ビニルアセテート、ビニルアルコール、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸及びそれから形成される塩類、メタクリル酸及びそれから形成される塩類、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート及び一酸化炭素である。
【0030】
本発明に適したコポリマーは、ブロックコポリマーと非ブロックコポリマーの両方、グラフト化コポリマー、側鎖、又は架橋を有するコポリマー及びエチレンモノマーが、ヘテロ原子を少なくとも1種含むモノマーとランダムに共重合されたコポリマーであり得る。
【0031】
本発明に適した、好ましいエチレンのコポリマーには、例えば、エチレン−ビニルエステルコポリマー、エチレン−アクリル酸エステルコポリマー、エチレン−メタクリル酸エステルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー及びそれらの塩、エチレン−メタクリル酸コポリマー及びそれらの塩、エチレン−ビニルエステル−アクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルエステル−メタクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルエステル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ビニルエステル−グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられる。
【0032】
本発明に適したコポリマー中の少なくとも1種のヘテロ原子を含むモノマーは、好ましくは、コポリマーの総重量の10%〜90%、より好ましくは少なくとも14%、最も好ましくは少なくとも18%に相当する。
【0033】
本発明に特に好ましいコポリマーは、デュポン(Dupont)から商標名エルバックス(Elvax)(商標)として、アトフィナ(Atofina)からエバサン(Evathane)(商標)として、エクソン(Exxon)からエスコレーン(Escorene)(商標)として、並びにバイエル(Bayer)からリバプレン(Levapren)(商標)及びリバメルト(Levamelt)(商標)として販売されているもののようなエチレン−酢酸ビニルコポリマー、並びにアトフィナ(Atofina)から商標名ロトリル(Lotryl)(商標)として販売されているもののようなエチレンアクリル酸エステルコポリマーである。
【0034】
本発明の第2の必須成分は、粘着付与剤である。粘着付与剤は、或いは「粘着付与剤樹脂」又は「粘着付与樹脂」とも呼ばれ、一般にそのように販売され、物質の粘着特性を向上するためにホットメルト接着剤に用いられる。良い粘着付与剤は、コポリマーと相溶性があり、コポリマーに関連して低い分子量であり、コポリマーより高いTgであり、そのため、それらがポリマー組成物に組み込まれた時、該組成物のTgは高くなる。本明細書で用いるのに好ましい粘着付与剤は、熱可塑性材料であり、少なくとも200℃で安定し、室温で非晶質のガラス状であり、50℃より高いTgで、好ましくは80℃から125℃である。好ましくは、本明細書で用いる粘着付与剤は、分子量が0.83yg(500ダルトン)〜3.3yg(2000ダルトン)である。
【0035】
粘着付与剤は一般に、多環式構造の有機薬品であり、好ましくはそれらは、脂肪族炭化水素ではない。さらに好ましくは、芳香族粘着付与剤及び酸素原子を分子中に含む粘着付与剤である。もっとも好ましい粘着付与剤は、ロジン及びその誘導体であり、室温で固体である。
【0036】
本発明の第3の必須成分は、本発明の組成物に組み込まれた後、本発明の組成物によって持続的に供給される揮発性材料である。
【0037】
材料は、一般にそれが使用条件で蒸気を発生するならば、揮発性と定義され、好ましくはその蒸気圧は室温で、少なくとも13Pa(0.1mmHg)である。
【0038】
本発明で使用できる揮発性材料は、例えば、フレーバー、防臭剤、殺虫剤、フェロモン、芳香、防虫剤、及び最も有利には、香料である。
【0039】
本発明によってもたらされる利益は、揮発性材料が香料である場合に特に関連がある。香料は、典型的に、揮発性の異なる多数の構成成分から構成される。本発明は、構成成分がそれらの異なる揮発性に基づいて分離することを避けて、香料の香り全てを長時間持続供給することが可能である。本発明の好ましい実施形態では、揮発性材料は、好ましくは複数の構成成分、より好ましくは5つを超える構成成分で構成される香料である。
【0040】
本明細書で使用するとき、香料という用語は、いかなる発香性物質をも意味する。一般に、このような材料は、室温で大気圧よりも低い蒸気圧によって特徴付けられる。本明細書で使用される香料は、ほとんどの場合、室温で液体であるが、当技術分野で既知の様々な樟脳系香料のように固体であることもできる。アルデヒド、ケトン、エステル、アルコール、テルペンなどの材料を含む多種多様な化学物質が、香料製造業での使用において知られている。様々な化学構成成分の複雑な混合物を含む天然起源の植物油及び動物油並び滲出物は香料としての使用で知られており、このような材料を本明細書で使用することができる。本明細書において、香料は、それらの組成が比較的単純であり得るか、又は天然及び合成の化学構成成分の極めて高度で複雑な混合物を含むことができ、全てがいずれかの所望の香りをもたらすように選択される。
【0041】
本発明で使用できる典型的な香料は、例えば、ビャクダン油、シベット、パチョリ油などのようなエキゾチックな材料を含有する木質/土壌質の基剤を含む。他の適した香料は、例えば、淡い、花の芳香剤、例として、バラ抽出物、スミレ抽出物などである。香料は、例えば、ライム、レモン、オレンジなどのような望ましい果実の香りを提供するように配合することもできる。
【0042】
要するに、心地よい香り又は他の望ましい香りを発する任意の化学的に相溶性の材料を、本発明において香料として使用することができる。
【0043】
香料材料は、S.アークタンダー(Archtander)香料風味及び薬物、I巻及びII巻、アウロソア(Aurthor)、モンテクレア(Montclair)、ニュージャージー州、及びメルクインデックス(Merck Index)、第8版、メルク社(Merck & Co., Inc)、ラーウエイ(Rahway)、ニュージャージー州により詳しく記載されている。
【0044】
好ましくは、本発明の揮発性材料は、粘着付与ポリマーマトリックスに該揮発性材料が化学的に溶ける化学物質の構成の形でポリマー組成物に組み込まれる。特に、非揮発性の種(例えば、香料前駆体)に共有結合された揮発性の種を含む、カプセル封入された揮発性材料及び化学物質は不適切であり、好ましくは、本発明による揮発性材料としての本明細書での使用から除外される。理論に束縛されることなく、本発明のポリマー組成物の有利な特性は、揮発性材料が粘着付与ポリマーマトリックスに可溶化された時、揮発性材料の放出が揮発性材料と粘着付与ポリマーマトリックスとの間の分子レベルの相互作用に関連していることであると考えられる。従って、揮発性材料がポリマーマトリックスと分子レベルで混合するのを妨げるカプセル封入のような方式は、本発明における揮発性材料としての使用には好ましくなく、なるべく除外される。
【0045】
相溶性の可塑剤又は可塑剤のブレンドは、任意に本発明に関する組成中において、組成物の総重量の10重量%の濃度まで存在することができる。当業者には既知のことであるが、用語「相溶性の」は、物質がマトリックス中で分離した相を形成することなく、安定して配合され得ることを指す。用語「可塑剤」は、熱可塑性ポリマー材料の技術分野における当業者には既知であるが、ポリマー材料に組み込むことによってポリマー材料をやわらかくより柔軟にする材料の部類と定義される。より明確には、可塑剤は、柔軟性と作業性を高め、ポリマーのガラス転移温度、Tgの低下をもたらす。
【0046】
既に上述したように、相溶性の異なる可塑剤の異なる極性(当業者に既知のいずれかの方法、例えば、水/オクタノール分配係数を用いて測定可能な)は、揮発性物質の極性とのより良好な調和を与えるために、ポリマーマトリックスの極性を調整するために用いることができる。
【0047】
好ましくは、本発明のポリマー組成物は、ポリマー組成物の5重量%〜75重量%、より好ましくは10重量%〜50重量%のエチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1つの別のモノマーとのコポリマー;コポリマーの10重量%〜60重量%、好ましくは15重量%〜40重量%の相溶性の粘着付与剤、組成物の総重量の10重量%までの可塑剤、及びポリマー組成物の10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上の揮発性材料を含み、揮発性材料は好ましくはポリマー組成物の最大90重量%の割合まで含む。
【0048】
本発明のポリマー組成物は、組成物の加工性や機械的特徴、並びにこのようなポリマー組成物から形成される物体の粘着性、光、酸素及び熱によるエージングに対する耐性、目に見える外観などのような他の特徴も更に改善するために、追加の任意成分を更に含んでもよい。
【0049】
こうした任意の構成成分は、それらの特性を改善する、例えば、基材との接着性又は相溶性を向上させるために配合に含まれ得る、他のコポリマーを含むことが可能である。この目的のために好ましい任意のコポリマーは、スチレンと少なくとも1つの他のビニル又はアクリルモノマーとのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)のコポリマー、ポリアミド、ポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステルアミドコポリマー、ポリエステル、ポリエーテルエステルコポリマー、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(ビニルピロリドン)のコポリマー、ポリアクリレート、ポリビニルエーテルのコポリマー)等である。
【0050】
本発明のポリマー組成物は、好ましくは熱可塑性ポリマー組成物である。これらは、熱可塑性ポリマー組成物を製造するいずれの既知の方法を用いても製造でき、典型的に、ポリマーを溶融し、さらに粘着付与剤と、もし存在するならば可塑剤、並びに均一な塊にするために揮発性材料を、均一にブレンドする工程を含み、さらに、本発明に従うポリマー組成物を得るために冷やされる。熱可塑性組成物の中でも好ましいのは、溶解温度と粘度が低く、そのためにホットメルトとして加工することができるものである。これらの系内では、ブレンド時のみならず、その後の溶融状態での適用時にも揮発性材料の損失が最小限度に抑えられる。
【0051】
他のポリマー又はコポリマー、充填剤、架橋剤、顔料、染料、酸化防止剤及び他の安定化剤などのような更なる任意成分を添加して組成物に所望の特性を与えることもできる。
【0052】
本発明のポリマー組成物は、中間工程又は最終工程のどちらかとして、ポリマー溶液を用いて調製されてもよい。このタイプの調製は当該技術分野の当業者には既知であり、典型的には選択されたポリマー、粘着付与剤、任意に可塑剤及び揮発性材料を有効な溶媒に溶かす行程が含まれ、さらに溶液又はジェルを調製するのに必要であれば加熱される。溶媒は、その後、蒸発によって除去することができる。
【0053】
或いは、本発明のポリマー組成物は、水性エマルション又は分散液の形態で調製することができる。
【0054】
ポリマー類の水性エマルション又は分散液を得る技術は当業者には周知である。例えば、選択されたポリマー、粘着付与剤、任意に可塑剤及び揮発性材料を熱可塑性材料としてブレンドすることができる。得られた溶融物はその後、好ましくはその融点を超える温度において、混合することによって水に分散させることができる。当業者に既知の界面活性剤及び/又は安定化系を使用して、得られたエマルション又は分散液を安定化することができる。
【0055】
別の方法としては、調製された水性ポリマー分散液又はエマルションは、選択された粘着付与剤、任意に可塑剤及び揮発性材料とブレンドすることができる。これは、成分を直接ポリマー分散液又はエマルションに加えることで行うことができ、例えば、香料粘着付与剤と任意の可塑剤の水性分散液を形成し、これをポリマー分散液又はエマルションとブレンドすることによっても行うことができる。どちらの手順も、本発明によるポリマー組成物の水性分散液の形成をもたらす。水は、その後、蒸発によって除去することができる。
【0056】
別の方法としては、コポリマーは直接、粘着付与剤、任意に可塑剤及び/又は揮発性材料の存在下で、水分散液に形成できる。この方法は、分散した揮発性材料及び/又は粘着付与剤、並びに任意に可塑剤を含む水の中で、モノマー又はポリマーの溶液又は分散液を伴うことができる。次いで重合を開始してポリマー分散液を形成することができる。必要であれば、揮発性材料、粘着付与剤又は任意の可塑剤は、別に加えることができ、続いて本発明に従う分散したポリマー組成物を作成することができる。
【0057】
本発明のポリマー組成物は、それらのレオロジーや接着特性のために、選択された基材に溶融状態で適用して、基材に直接接着するのに特に有用である。例えば、ポリマー組成物は、揮発材料(例えば、芳香を放つヘッドスペースを作製するための香料)を放出することによって密閉容器内のヘッドスペースを適切に変更するために、容器の内側表面の適した位置に適用することができる。こうした適用は容器の製造中に容易に達成することができる。この実施態様では、本発明のポリマー組成物を、従来式のホットメルトデリバリーシステムに適用する。これらのシステムは、典型的には溶融ユニットを包含し、該溶融ユニットは、加工可能な粘度を有するのに必要な温度でホットメルトを保持する。溶融ユニットは、典型的には、ホットメルトがグルーガン、又はノズルに達するまでホットメルトをホースを通じて送り込むことができるポンピングシステムを備えている。ノズルはグルーの所望の適用形態(コーティング、ストライプ、ビーズ等)によって異なる幾何学形状を有することができる。典型的な実施形態では、グルーガンとしてスロットノズルを用いることができる。
【0058】
本発明によるポリマー組成物は、揮発性材料の放出が望まれる場合いつでも、様々な用途を有してよい。例えば、ポリマー組成物は、空気清浄装置(室内清浄剤、車内清浄剤、トイレ用のリムブロックなど)、瓶、箱、袋などのような包装内の芳香を放つヘッドスペース供給、洗浄/乾燥システム(タンブラー乾燥機、食器洗浄機、ドライクリーニングシステムなど)、洗濯洗剤、衣類仕上げ剤、在宅ケア製品、パーソナルケア製品(防臭剤、制汗剤、シャンプー、コンディショナー、化粧品、皮膚保湿剤、メークアップなど)、香りの良い芳香剤、香りの良いコーティング、フィルム、ラミネート、衛生物品(女性用ケアパッド、パンティライナー、おむつ、靴の中敷きなど)、香りの良いインク、香りの良い3次元物体、消毒剤供給、殺虫剤供給、防虫剤供給、フレーバー供給などに使用することができる。
【0059】
本発明の組成物を以下の実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
19.75部のエルバックス(Elvax)(商標)250、デュポン(Dupont)から入手可能な28重量%のビニルアセテート含量とメルトフローインデックスが25g/10分(ASTM D1238)のポリ(エチレン‐コ‐ビニルアセテート)、19.75部のエルバックス(Elvax)(商標)40W、デュポン(Dupont)から入手可能な40重量%のビニルアセテート含量と、メルトフローインデックスが52g/10分(ASTM D1238)のポリ(エチレン‐コ‐ビニルアセテート)、20部のフォーラル(Foral)TM85−E、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical)から入手可能なロジンエステル粘着付与剤、及び0.5部のイルガノックス(Irganox)TMB225、チバガイギー(Ciba Geigy)(スイス)から入手可能な酸化防止剤をシグマブレード混合機に加え、約120℃の温度に加熱した。均質な塊が得られるまで成分を混合した。その後、温度を混合物がまだ融解している温度(約80℃)まで下げた。40部のオイゲノール、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手可能な香料材料を粘着付与ポリマー混合物に加えた。該成分を均質な混合物が得られるまで混合し、その後、得られた材料をミキサーから取り出し、香りを放つブロックとして形成して、室温まで冷却した。
【0061】
(実施例2)
19.75部のエルバックス(Elvax)(商標)250、デュポン(Dupont)から入手可能な28重量%のビニルアセテート含量とメルトフローインデックスが25g/10分(ASTM D1238)のポリ(エチレン‐コ‐ビニルアセテート)、14.75部のエルバックス(Elvax)(商標)40W、デュポン(Dupont)から入手可能な40重量%のビニルアセテート含量とメルトフローインデックスが52g/10分(ASTM D1238)のポリ(エチレン‐コ‐ビニルアセテート)、15部のフォーラル(Foral)TM85−E、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical)から入手可能なロジンエステル粘着付与剤、及び0.5部のイルガノックス(Irganox)TMB225、チバガイギー(Ciba Geigy)(スイス)から入手可能な酸化防止剤をシグマブレード混合機に加え、約120℃の温度に加熱した。均質な塊が得られるまで成分を混合した。その後、温度を混合物がまだ融解している温度(約80℃)まで下げた。50部のオイゲノール、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手可能な香料材料を粘着付与ポリマー混合物に加えた。該成分を均質な混合物が得られるまで混合し、その後、得られた材料をミキサーから取り出し、香りを放つブロックとして形成して、室温まで冷却した。
【0062】
(実施例3)
24.5部のエルバックス(Elvax)(商標)40W、デュポン(Dupont)から入手可能な40重量%のビニルアセテート含量とメルトフローインデックスが52g/10分のポリ(エチレン‐コ‐ビニルアセテート)、25部のフォーラル(Foral)TM85−E、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical)から入手可能なロジンエステル粘着付与剤、及び0.5部のイルガノックス(Irganox)TMB225、チバガイギー(Ciba Geigy)(スイス)から入手可能な酸化防止剤をシグマブレード混合機に加え、約120℃の温度に加熱した。均質な塊が得られるまで成分を混合した。その後、温度を混合物がまだ融解している温度(約80℃)まで下げた。50部のオイゲノール、シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)から入手可能な香料材料、及びこのブレンドを粘着付与ポリマー混合物に加えた。該成分を均質な混合物が得られるまで混合し、その後、得られた材料をミキサーから取り出し、香りを放つブロックとして形成して、室温まで冷却した。
【0063】
実施例のポリマー組成物は、それぞれの低い融点(約60〜約80℃)からもはっきり分かるように、ホットメルトとして容易に加工及び適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
a)エチレンと、少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーと、
b)粘着付与剤と、
c)組成物の総重量の10重量%までの相溶性の可塑剤又は可塑剤のブレンドと、
d)揮発性材料、とを含むポリマー組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のヘテロ原子を含む前記モノマーが、カルボニル基を含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のヘテロ原子を含む前記モノマーが、エステル基を含有する、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記粘着付与剤が、エステル基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記コポリマーが、エチレン−ビニルアセテートコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記コポリマーが、前記ポリマー組成物の5重量%〜75重量%、好ましくは10重量%〜50重量%であり、前記粘着付与剤が、前記コポリマーの10重量%〜60重量%、好ましくは15重量%〜40重量%であり、前記揮発性材料が、前記組成物の総重量の10%超、好ましくは20%超、より好ましくは30%超である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
相溶性の可塑剤を含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記揮発性材料が、組成物の総重量の90%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記揮発性材料が香料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記香料が、アルデヒド、ケトン、アルコール、テルペン又はエステルを含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記粘着付与剤が、50℃より高いTgを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記粘着付与剤が、室温で固体であるロジンまたはその誘導体から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
密閉容器の作製方法であって、
前記容器の内面の一部に、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー組成物を適用する工程を含む、密閉容器の製作方法。

【公表番号】特表2009−518492(P2009−518492A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543968(P2008−543968)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054588
【国際公開番号】WO2007/066280
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】