説明

搗精装置

【課題】多様な特性の穀粒について送穀部における異物の付着を回避することができる簡易な構成の搗精装置を提供する。
【解決手段】搗精装置は、所定の流動圧力によって穀粒を搗精する搗精部(4)と、この搗精部(4)と連通して穀粒を供給する送穀部(7)とから構成され、上記送穀部(7)は、回転動作によって穀粒を移送する螺旋軸(5)と、その外周を囲んで穀粒を案内する案内筒(6)とから構成するとともに、これら螺旋軸(5)および案内筒(6)の両者間の隙間寸法(A)を穀粒の平均粒径以下に形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米機等において穀粒を搗精する搗精装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精米機等において穀粒を搗精するための搗精装置は、特許文献1の例のように、除糠網の中に回転動力を受ける搗精ロールを配置した搗精部と、その搗精ロールの基部に形成した螺旋を案内筒内に配置して搗精部と連通する送穀部とから構成される。
【0003】
搗精部は、その先端の排出口に作用する圧力板によって所定の流動圧力を確保しつつ、回転する搗精ロールに備えた精白突条によって穀粒を搗精し、この時分離された糠粉は除糠網から吸引排出する。送穀部は、螺旋の移送作用により、ホッパから受けた穀粒を搗精部の流動圧力に抗して送り込む。
【0004】
また、搗精対象の玄米の中には、低温多湿等の環境条件により、穀粒表面に蝋分が多く滲出する場合があり、その蝋分が送穀部に付着し、これに糠粉等が吸着されて送穀機能の低下を招くことがあるので、搗精部から戻し通路を設けて搗精途中の穀粒を送穀部に戻し、その穀粒表面に露出された小糠中の油脂による潤滑作用を利用することにより、蝋分の付着を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−19523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、稲の栽培条件や生育環境に応じた玄米特性の変化に伴い、上記戻し通路の有無に係わらず、送穀部に異物が付着して穀粒移送量が低下し、搗精不能に至ることがあり、その都度、搗精装置を分解清掃する煩わしい作業を強いられることから、その解決策が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、多様な特性の穀粒について異物の付着を回避することができる搗精装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、所定の流動圧力によって穀粒を搗精する搗精部と、この搗精部と連通して穀粒を供給する送穀部とからなる搗精装置において、上記送穀部は、回転動作によってその軸線方向に穀粒を移送する螺旋軸と、その外周を囲んで穀粒を案内する案内筒とから構成するとともに、これら螺旋軸および案内筒の両者間の隙間寸法を穀粒の平均粒径以下に形成してなることを特徴とする。
【0009】
上記搗精装置は、送穀部に受けた穀粒を螺旋軸の移送作用によって搗精部に送出することにより、搗精部において所定の流動圧力下で穀粒が搗精され、この時、送穀部の螺旋軸と案内筒との間の隙間寸法を穀粒の平均粒径以下とすることにより、螺旋軸と案内筒との間の隙間に対する穀粒の進入が抑えられることから、穀粒が螺旋溝に沿って送出され、この時、穀粒は、搗精部の流動圧力に抗して螺旋溝の全断面に充填されつつ流動することにより、螺旋軸および案内筒に異物が付着しても、穀粒とともに異物が移送される。
【0010】
請求項2の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の構成において、前記隙間寸法は、移送対象穀粒の平均粒径相当に設定してなることを特徴とする。
上記送穀部の隙間寸法を平均粒径相当に設定することにより、搗精部の流動異常等による圧力上昇に応じて一部の穀粒が隙間内を移動することによって過大な圧力上昇が抑えられる。
【0011】
請求項3の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の構成において、前記螺旋軸は、所定の段階区分による穀粒移送量と対応してそのピッチ寸法を定めてなることを特徴とする。
上記螺旋軸は、ピッチ寸法別に穀粒移送量に応じた区分の搗精動力と対応する。
【0012】
請求項4の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の構成において、前記案内筒は、搗精部と連通する終端部について、その内径寸法が搗精部の内径寸法に近づくように次第に径寸法が変化するテーパ部を形成してなることを特徴とする。
上記送穀部と搗精部の双方の内径に差がある場合でも、内径変化と対応する圧力変化がテーパ部により緩和される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明の搗精装置は、送穀部の螺旋軸と案内筒との間の隙間寸法を穀粒の平均粒径以下とすることにより、螺旋軸と案内筒との間の隙間に対する穀粒の進入が抑えられることから、穀粒が螺旋溝に沿って送出され、この時、穀粒は、搗精部の流動圧力に抗して螺旋溝の全断面に充填されつつ流動することにより、螺旋軸および案内筒に異物が付着しても、穀粒とともに異物が移送されてその付着堆積が防止される。したがって、螺旋軸の外周と案内筒との間の隙間寸法の設定による簡易な構成により、幅広い特性の穀粒について搗精機能を確保することができる。
【0014】
請求項2の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の効果に加え、送穀部の隙間寸法を平均粒径相当に設定することにより、搗精部の流動異常等による圧力上昇に応じて一部の穀粒が隙間内に押し出されることから、過大な圧力上昇を防止することができる。
【0015】
請求項3の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の効果に加え、所定の段階区分による穀粒移送量に対応して螺旋軸のピッチ寸法を定めることにより、螺旋軸が穀粒移送量に応じた段階区分による搗精動力と対応するので、螺旋軸の交換による簡易な作業により、所望区分の動力仕様の改良精米機に改造することができる。
【0016】
請求項4の発明の搗精装置の送穀部は、請求項1の効果に加え、案内筒と除糠網の双方の内径に差がある場合でも、内径変化と対応する圧力変化がテーパ部により緩和されることから、砕米の発生が抑えられて投入玄米を効率よく搗精することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】搗精装置の要部縦断面図
【図2】送穀部の拡大縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、精米機の搗精装置の要部縦断面図である。
搗精装置1は、除糠網2の中に回転動力を受ける搗精ロール3を配置した搗精部4と、その搗精ロール3の基部に一体に形成した螺旋軸5を案内筒6内に配置して搗精部4と連通する送穀部7とから構成される。案内筒6の内周面には、移送軸線方向の淺溝を形成する。
【0019】
搗精部4は、その先端の排出口4aに弾発作用する圧力板4bによって所定の流動圧力を確保しつつ、精白突条3aを備えた搗精ロール3の回転によって穀粒を搗精し、この時分離された糠粉は除糠網2から吸引排出する。送穀部7は、軸受8によって基部を軸支した螺旋軸5の回転による移送作用を受ける穀粒を案内する案内筒6により、ホッパ7aから受けた穀粒を搗精部4にその流動圧力に抗して送り込む。
【0020】
また、送穀部7のは、図2の拡大縦断面図に示すように、螺旋軸5の外周部おける案内筒6との間の隙間寸法Aを穀粒の平均粒径相当寸法に形成し、または、それ以下に形成する。このように隙間寸法Aを設定することにより、螺旋軸5の回転によってもその外周部の案内筒6との間の隙間から螺旋山5bを乗り越えて隣接の螺旋溝5cへの移動が抑えられて穀粒が螺旋溝5cに沿って送出され、その結果、搗精部4の流動圧力に抗して穀粒が押し出されることに伴い、螺旋溝5cの全断面に充填された穀粒の流動により、付着異物の滞留が防止される。
【0021】
この場合において、送穀部7の隙間寸法Aを平均粒径相当に設定することにより、搗精部4の流動異常等による圧力上昇に応じて一部の穀粒が隙間内を移動することによって過大な圧力上昇を防止することができる。なお、ここでいう平均粒径とは、平均的な大きさの穀粒の縦断面について、その略長円形状の短径寸法をいい、具体的には、政府引受基準である「1.9以上」の流通米については、その平均値としての2mmを隙間寸法Aとして定め、その許容範囲は、一部の穀粒が隙間に進入しうるように、少なくとも搗精対象穀粒中の最小粒径寸法を超えることを条件とし、精米品質の確保に必要な範囲内で流動異常時の圧力上昇を抑えうる範囲と対応して定めることができる。
【0022】
螺旋軸5のピッチ寸法は、予め定めた搗精装置の動力仕様区分による搗精処理能力と対応させることにより、所望の動力仕様区分の精米機を構成することができ、動力仕様区分を維持して既設の精米機を改良する場合は、螺旋軸5の交換のみで施工することができる。
【0023】
また、案内筒6は、終端部Tについてテーパ状に、すなわち、案内筒6の内径が搗精部4の内径寸法まで次第に拡径して形成することにより、送穀部7の案内筒6と搗精部4の除糠網2の双方の内径に差がある場合でも、内径変化と対応する圧力変化が終端部Tのテーパにより緩和されて砕米の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 搗精装置
2 除糠網
3 搗精ロール
3a 精白突条
4b 圧力板
4a 排出口
4 搗精部
5 螺旋軸
5b 螺旋山
5c 螺旋溝
6 案内筒
7 送穀部
A 隙間寸法
T テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流動圧力によって穀粒を搗精する搗精部(4)と、この搗精部(4)と連通して穀粒を供給する送穀部(7)とからなる搗精装置において、
上記送穀部(7)は、回転動作によってその軸線方向に穀粒を移送する螺旋軸(5)と、その外周を囲んで穀粒を案内する案内筒とから構成するとともに、これら螺旋軸(5)および案内筒の(6)両者間の隙間寸法(A)を穀粒の平均粒径以下に形成してなることを特徴とする搗精装置。
【請求項2】
前記隙間寸法(A)は、穀粒の平均粒径相当に設定してなることを特徴とする請求項1記載の搗精装置。
【請求項3】
前記螺旋軸(5)は、所定の段階区分による穀粒移送量と対応してそのピッチ寸法を定めてなることを特徴とする請求項1記載の搗精装置。
【請求項4】
前記案内筒(6)は、搗精部(4)と連通する終端部について、その内径寸法が搗精部(4)の内径寸法に近づくように次第に径寸法が変化するテーパ部(T)を形成してなることを特徴とする請求項1記載の搗精装置。

【図1】
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【図2】
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