説明

搬送チェーン

【課題】搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片を所定のチェーン幅寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく合成樹脂製リンクモジュール内に確実かつ簡便に組み込み、物品搬送時に充分な磁力で吸着保持して搬送振動による磁石片の飛び出しや脱落を防止し、搬送物品を安定して搬送する搬送チェーンを提供すること。
【解決手段】所定チェーン幅Wのリンク列がチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結され、リンク列を構成してチェーン幅方向に左右対称に配置される合成樹脂製リンクモジュール110がリンク側面114からチェーン幅方向に開口する磁石格納用盲穴115をそれぞれ備え、この磁石格納用盲穴115に挿入自在に格納される磁石片130がチェーン幅方向に隣接配置する合成樹脂製リンクモジュール110Aのリンク側面114で封止されている搬送チェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物品を搭載して搬送する搬送チェーンに関するものであって、特に、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送物品を搭載して磁力で吸着保持して搬送する搬送チェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送チェーンとして、図11に示すように、搬送物品Mを搭載する搭載部511とこの搭載部511の前後にそれぞれ突設したヒンジ部512とを備えたリンクモジュール510をチェーン幅方向に配置して構成される所定チェーン幅Wのリンク列がヒンジ部512に形成されたピン挿入孔513に挿通する連結ピン520を介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結するとともに、駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2との間で掛け回して飲料用ボトル、ドリンク用缶などの搬送物品Mを搬送するコンベヤベルト500が知られている (例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の搬送チェーンとして、搬送物品を吸着保持しながら搬送するために、薄肉の強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面をエポキシ樹脂などで被覆してなる多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周側に一定間隔で配置して磁気吸着可能な荷物などを脱落させることなく搬送する磁石付きチェーンが知られている (例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、従来の搬送チェーンとして、両側のヨークに装着された磁石をチェーン長手方向に沿って取り付けて鉄製のドリンク缶等磁性材料より成る筺体を搬送する磁石式チェーンコンベヤが知られている (例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−262600号公報(第6欄、図1)
【特許文献2】特開平9−275011号公報(第8頁、図8)
【特許文献3】特開平8−310384号公報(第3欄、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のようなコンベヤベルト500は、搭載部511に搬送物品Mを搭載するリンクモジュール510が自己潤滑性を発揮する合成樹脂製で成形されているため、図12に示すように、傾斜搬送状態で搬送物品Mに作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール510に付着してリンクモジュール510の搬送物品Mを搭載する搭載部511の搭載面が過剰に滑り易くなっている場合、搬送物品Mが搬送面上で搬送衝撃などにより不意に転倒したり滑落したりして確実に搬送できないという問題があった。
【0007】
また、従来のような磁石付きチェーンは、多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の左右両側に突出した状態でチェーン基体部の外周面上に配置しているため、吸着用磁石ユニットがチェーン基体部の左右に突出している分だけチェーン幅寸法が増加し、チェーンガイド、駆動スプロケットなどレイアウト上の寸法取り合いに支障を来たし、水平曲がりの搬送時にチェーン旋回半径が過度に増加するという装置設計上の問題があり、これを解決するために吸着用磁石ユニットの突出分だけチェーン基体部を幅狭に設計するとチェーン強度が著しく低下するという問題があった。
また、吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周面上に配置しているため、所謂、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径が大きくなり、その結果として、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するためのアイドローラなどの中間ローラを用いてもタルミを十分に確保することができず、チェーン伸びを解消するための保守メンテナンスの負担頻度が増大し、そのまま放置すると、駆動スプロケットに磁石付きチェーンが噛み込んでチェーン切断に至るという問題があった。
しかも、従来のような磁石付きチェーンは、エポキシ樹脂などを高温で溶解して強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面を被覆しているため、永久磁石が高温の樹脂温度に晒されて永久磁石の磁力が低下して十分な吸着保持力を発揮することができず、また、吸着用磁石ユニットが永久磁石を薄肉の強磁性ヨークに接着剤により固着しているため、長期使用時に永久磁石と強磁性ヨークとの接着が剥離して永久磁石が脱落したり欠損したりして、搬送物品を安定して吸着保持することができないという問題があった。
【0008】
さらに、従来のような磁石式チェーンコンベヤは、両側のヨークに装着された磁石が露出しているため、磁石が搬送衝撃などにより不意に脱落したり損傷したりして搬送物品を安定して吸着保持することができなくなったり、磁石の破片が搬送領域に飛散して搬送作業上の多くの不具合を生じるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片を所定のチェーン幅寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく合成樹脂製リンクモジュール内に確実かつ簡便に組み込み、物品搬送時に搬送物品を充分な磁力で吸着保持して搬送振動による磁石片の飛び出しや脱落を防止するとともに、搬送物品を安定して搬送する搬送チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は、搬送物品を搭載する搭載部とこの搭載部の前後にそれぞれ突設したヒンジ部とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュールをチェーン幅方向に配置して構成される所定チェーン幅のリンク列がヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結してなる搬送チェーンにおいて、リンク列を構成してチェーン幅方向に配置される少なくとも1対の合成樹脂製リンクモジュールが、この合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴をそれぞれ備えているとともに、合成樹脂製リンクモジュールの磁石格納用盲穴に挿入自在に格納されて搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、チェーン幅方向に隣接配置された合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面で封止されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、リンク列を構成する複数の合成樹脂製リンクモジュールが、磁石片を格納する磁気発生リンクモジュールと磁石片を格納せずにスプロケットと噛み合う駆動リンクモジュールとで少なくとも構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項2記載の構成に加えて、磁気発生リンクモジュールの搭載部が、この搭載部の搬送物品を搭載する搭載面と磁石収納用盲穴との間の肉厚を搭載面の裏面と磁石収納用盲穴との間の肉厚より薄く形成していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成に加えて、磁石片が、矩形断面を有する棒状角材から構成されているとともに、磁石片の角部を係止固定する磁石係止部が、磁石格納用盲穴内に突設されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の搬送チェーンによれば、搬送物品を搭載する搭載部とこの搭載部の前後にそれぞれ突設したヒンジ部とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュールをチェーン幅方向に配置して構成される所定チェーン幅のリンク列がヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結していることにより、搬送物品を搬送面に搭載した状態で水平搬送することができるばかりでなく、本発明に特有の装置構成によって以下のような効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、請求項1に係る搬送チェーンによれば、リンク列を構成してチェーン幅方向に配置される少なくとも1対の合成樹脂製リンクモジュールがこの合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴をそれぞれ備えていることにより、所定チェーン幅のリンク列を構成する合成樹脂製リンクモジュール内に磁石片がチェーン幅方向から挿入可能になるため、搬送物品を吸着保持する磁石片を所定チェーン幅寸法及び他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく合成樹脂製リンクモジュール内に確実にかつ簡便に格納することができ、また、磁石片が磁石格納用盲穴に加熱することなく格納されるため、従来の磁石付きチェーンにおいて生じたような磁石片の熱消磁を防止するとともに搬送物品を充分な磁力で吸着保持することができる。
【0016】
そして、合成樹脂製リンクモジュールの磁石格納用盲穴に挿入自在に格納されて搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片がチェーン幅方向に隣接配置された合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面で封止されていることにより、この隣接配置された合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面が磁石格納用盲穴の開口部を覆って磁石片の飛び出しを制止しているため、物品搬送時に上下左右方向に搬送振動が生じた場合であっても、磁石片の飛び出しや脱落を確実に防止して搬送物品、周辺機器などとの接触による磁石片の不用意な破損を防止するとともに、従来の磁石付きチェーンのような磁石片を固定するための固定手段を別途用いることなく確実に磁石片を固定することができる。
【0017】
さらに、磁石片が合成樹脂製リンクモジュールに格納されていることにより、磁石片が搬送物品を確実に磁力で吸着保持するため、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体が合成樹脂製リンクモジュールに付着して合成樹脂製リンクモジュールの搭載部の搬送物品を搭載する搭載面が過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品をスリップさせず安定して搬送可能となり、また、従来のように合成樹脂製リンクモジュールの外周面上に磁石片を取り付けた場合に生じた「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径の増大を回避するため、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するアイドラローラなどの中間ローラを用いてタルミを十分に確保した円滑な駆動搬送を実現することができる。
【0018】
請求項2に係る搬送チェーンによれば、請求項1記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンク列を構成する複数の合成樹脂製リンクモジュールが磁石片を格納する磁気発生リンクモジュールと磁石片を格納せずにスプロケットと噛み合う駆動リンクモジュールとで少なくとも構成されていることにより、磁気発生リンクモジュールがスプロケットとの噛み合いに拘束されることがないため、所望の大きさの磁力片を磁気発生リンクモジュールの磁石格納用盲穴に組み込んで格納することができるとともに、駆動リンクモジュールがそれぞれのリンク列に必ず存在するため、物品搬送時にリンク列毎に確実に順次噛み合って搬送物品をより安定して搬送することができる。
【0019】
請求項3に係る搬送チェーンによれば、請求項2記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁気発生リンクモジュールの搭載部が、この搭載部の搬送物品を搭載する搭載面と磁石格納用盲穴との間の肉厚を搭載面の裏面と磁石格納用盲穴との間の肉厚より薄く形成していることにより、磁石格納用盲穴に格納される磁石片を搭載面上の搬送物品に接近させることが可能になるため、磁石片の吸着力が搬送物品に強く作用して搬送物品を強固に吸着保持した状態で搬送することができる。
【0020】
請求項4に係る搬送チェーンによれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石片が矩形断面を有する棒状角材から構成されているとともに磁石片の角部を係止固定する磁石係止部が磁石格納用盲穴内に突設されていることにより、磁気発生リンクモジュールの射出成型後に磁石格納用盲穴と搬送面との間に形成される薄肉部分が磁石格納用盲穴内に向けて陥没変形しているような場合であっても、磁石片が磁石格納用盲穴の磁石係止部に固定された状態で磁石片と磁石格納用盲穴との大部分に間隙が確保されるため、磁石片を磁石格納用盲穴に挿入格納する際に磁石片と磁石格納用盲穴とが全周にわたって接触せずに部分的に摺接した状態で容易に格納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図。
【図2】図1に示す本発明の第1実施例である搬送チェーンのA部分の拡大図。
【図3】本発明の第1実施例である搬送チェーンの組み立て分解図。
【図4】図2に示すチェーン裏面側視点Xから見た搬送チェーンの斜視図。
【図5】図2に示す磁気発生リンクモジュールの磁石片挿入側からみた側面図。
【図6】図2に示す搬送チェーンの正面図。
【図7】図1に示す搬送チェーンの傾斜搬送時における動作図。
【図8】本発明の第2実施例である搬送チェーンの組み立て分解図。
【図9】本発明の第3実施例である搬送チェーンの組み立て分解図。
【図10】本発明の第4実施例である搬送チェーンの組み立て分解図。
【図11】従来のコンベヤベルトの使用態様図及びその一部拡大図。
【図12】図11に示す搬送チェーンの傾斜搬送時における動作図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、搬送物品を搭載する搭載部とこの搭載部の前後にそれぞれ突設したヒンジ部とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュールをチェーン幅方向に配置して構成される所定チェーン幅のリンク列がヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結してなる搬送チェーンにおいて、リンク列を構成してチェーン幅方向に配置される少なくとも1対の合成樹脂製リンクモジュールが、この合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴をそれぞれ備えているとともに、合成樹脂製リンクモジュールの磁石格納用盲穴に挿入自在に格納されて搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、チェーン幅方向に隣接配置された合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面で封止されて、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片を所定のチェーン幅寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく合成樹脂製リンクモジュール内に確実かつ簡便に組み込み、物品搬送時に搬送物品を充分な磁力で吸着保持して搬送振動による磁石片の飛び出しや脱落を防止するとともに搬送物品を安定して搬送するものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0023】
まず、本発明の搬送チェーンに用いる合成樹脂製リンクモジュールの具体的材質としては、機械的性質や成形精度の良い合成樹脂であれば如何なるものであっても良く、たとえば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などのいずれであっても用いることができる。
【0024】
また、合成樹脂製リンクモジュールの具体的な形状については、搬送物品を搭載する搬送部とこの搬送部の前後にそれぞれ突設するヒンジ部とを備えてこのヒンジ部に形成したピン挿入孔に連結ピンを挿通させてチェーン長手方向に多数連結する形状であれば如何なるものであっても良い。
【0025】
さらに、合成樹脂製リンクモジュールで構成されるリンク列におけるヒンジ部の配置数については、リンク列のそれぞれのヒンジ部が指組状を呈するオフセット状態で対向してチェーン長手方向に相互に連結されてチェーン幅方向の安定性を発揮するものであれば良く、たとえば、リンク列の前方4カ所とリンク列の後方3カ所にヒンジ部を備えたもの、リンク列の前方5カ所とリンク列の後方4カ所にヒンジ部を備えたものであっても、あるいは、これ以上であっても良い。
【0026】
本発明の搬送チェーンに用いる磁石格納用盲穴を備えた合成樹脂製リンクモジュールの具体的なチェーン長手方向の配列パターンについては、磁石格納用盲穴を備える合成樹脂製リンクモジュールがチェーン長手方向に連続して順次配置された配列状態となる配列パターンであっても良く、または、リンク列の1列もしくは数列置きに間欠的に配置された配列状態となる配列パターンであっても良い。
【0027】
本発明の搬送チェーンに用いる合成樹脂製リンクモジュールの磁石格納用盲穴の具体的な形状については、磁気発生リンクモジュールのリンク側面からチェーン幅方向に磁石片を挿入自在に格納ものであれば良く、磁石格納用盲穴の断面形状は、矩形であっても円形であっても何ら構わない。
【0028】
本発明の搬送チェーンにおける磁石格納用盲穴内に突設する磁石係止部の具体的な形状については、磁石片が磁石格納用盲穴の磁石係止部に固定された状態で、磁石片と磁石格納用盲穴との大部分に間隙が確保されるものであれば良く、矩形断面形状の磁石格納用盲穴の4隅にステップを突設するものであっても、断面円形状の磁石格納用盲穴の内面に突起を設けるものであっても構わない。
【0029】
そして、本発明の搬送チェーンに用いる磁石片の具体的な材質については、搬送物品の吸着保持に必要な磁力を確保できる永久磁石であれば、希土類磁石、フェライト磁石などのいずれであっても良く、残留磁束密度および保持力が高く温度変化に弱いネオジム磁石であっても採用可能である。
また、磁石片の具体的な形状については、磁石格納用盲穴に格納することができれば、直方体状のもの、棒状のもの、数枚のプレート状のものなど、如何なるものであっても構わない。
さらに、磁石片の具体的な大きさについては、搬送物品の大小、搬送形態、必要とされる磁気吸着力などによって適宜選択されれば良い。
【0030】
また、本発明の搬送チェーンに用いる連結ピンの具体的な材質については、鋼材、アルミ材、合成樹脂材のいずれであっても構わない。
【0031】
さらに、本発明の搬送チェーンの具体的な使用形態については、搬送物品を水平搬送する搬送ラインばかりでなく、水平搬送する搬送ラインを含んで傾斜搬送する搬送ラインでも用いることが可能である。
【0032】
なお、本発明の搬送チェーンに適用し得る搬送物品については、如何なる物品であっても差し支えないが、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送させるためには、磁力で吸着可能な搬送物品か、あるいは、磁力で吸着可能な搬送容器に収容した搬送物品であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0033】
以下に、本発明の一実施例である搬送チェーンを図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図であり、図2は、図1に示す本発明の第1実施例である搬送チェーンのA部分の拡大図であり、図3は、本発明の第1実施例である搬送チェーンの組み立て分解図であり、図4は、図2に示すチェーン裏面側視点Xから見た搬送チェーンの斜視図であり、図5は、図2に示す磁気発生リンクモジュールの磁石片挿入側からみた側面図であり、図6は、図2に示す搬送チェーンの正面図であり、図7は、図1に示す搬送チェーンの傾斜搬送時における動作図であり、図8は、本発明の第2実施例である搬送チェーンの組み立て分解図であり、図9は、本発明の第3実施例である搬送チェーンの組み立て分解図であり、図10は、本発明の第4実施例である搬送チェーンの組み立て分解図である。
【0034】
まず、本発明の第1実施例である搬送チェーン100は、図1に示すように、搬送ラインのライン幅方向に3本それぞれ並列配設されて、搬送物品M、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Mを上向きに傾斜搬送するための搬送装置に用いられるものである。
【0035】
そこで、本発明の第1実施例である搬送チェーン100は、図2及び図3に示すように、搬送物品Mを搭載する搭載部111とこの搭載部111の前後にそれぞれ突設したヒンジ部112とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュール110がこれらの合成樹脂製リンクモジュール110に形成されたヒンジ部112のピン挿入孔113に挿通する連結ピン120を介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結されている。
すなわち、前述した本実施例の搬送チェーン100は、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1と磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2とが交互の配列状態となる配列パターンで配列されている。
【0036】
そして、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1は、磁石片130を格納してチェーン幅方向で左右対称に配置された2個の磁気発生リンクモジュール110Aと磁石片130を格納せずにスプロケットS1、S2(図6を参照)と噛み合ってチェーン幅方向の中央領域に配置された1個の駆動リンクモジュール110Bからなる総計3個の合成樹脂製リンクモジュール110によって所定チェーン幅Wに構成されている。
他方、磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2は、磁石片130を格納せずにチェーン幅方向の中央領域でスプロケットS1、S2と噛み合う単一の合成樹脂製リンクモジュール140によって所定チェーン幅Wに構成されている。
【0037】
さらに、図3に示すように、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1と磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2とは、リンク列L1を構成する磁気発生リンクモジュール110Aと駆動リンクモジュール110Bの搭載部111の前後にそれぞれ突設したヒンジ部112がリンク列L2を構成する単一の合成樹脂製リンクモジュール140の搭載部141の前後にそれぞれ突設したヒンジ部142に対して指組状を呈するオフセット状態で対向して連結ピン120を介して相互に連結されている。
これにより、相互にチェーン長手方向に隣接する合成樹脂製リンクモジュール110と隣接リンクモジュール140との指組状に連結されたヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径の大径化を回避している。
【0038】
つぎに、本実施例に係る搬送チェーン100が最も特徴とする磁気発生リンクモジュール110Aの具体的な形態について、図2乃至図4に基づいて詳しく説明する。
【0039】
まず、前述した磁気発生リンクモジュール110Aは、この磁気発生リンクモジュール110Aのリンク側面114からチェーン幅方向に向けて開口する矩形断面状の磁石格納用盲穴115を備え、この磁石格納用盲穴115に搬送物品Mを吸着保持する磁石片130を挿入自在に格納している。
これにより、磁石片130が所定チェーン幅のリンク列L1を構成する磁気発生リンクモジュール110A内にチェーン幅方向から挿入可能になるとともに磁石片130が磁石格納用盲穴115に加熱することなく格納され、この格納された磁石片130が搬送物品Mを確実に磁力で吸着保持している。
しかも、磁石片130が磁石格納用盲穴115に格納、すなわち、内蔵されているため、磁気発生リンクモジュール110Aのモジュール外形を大型化する必要もない。
【0040】
なお、この磁石格納用盲穴115に格納されている磁石片130は、搬送物品Mを磁力で吸着保持するフェライト組織を呈した矩形断面の棒状角材からなっている。
【0041】
そして、この磁気発生リンクモジュール110Aに挿入自在に格納された磁石片130は、図3に示すように、チェーン幅方向に隣接配置された駆動リンクモジュール110Bのリンク側面114で封止されている。
これにより、この隣接配置された磁気発生リンクモジュール110Bのリンク側面114が、磁石格納用盲穴115の開口部を覆って磁石片130の飛び出しを制止している。
【0042】
さらに、図5に示すように、磁気発生リンクモジュール112の搬送物品Mを搭載する搭載部111の搭載面111aと磁石格納用盲穴115との間の肉厚は、搭載面111aの裏面と磁石格納用盲穴115との間の肉厚よりも薄く形成されている。
これにより、磁石格納用盲穴115に格納される磁石片130が、搭載面111a上の搬送物品Mに一段と接近して磁力を効果的に発揮している。
【0043】
また、上述したように磁石格納用盲穴115と搭載面111aとの間を薄肉に形成することで、この薄肉部分が、射出成型後の冷却遅延により磁石格納用盲穴115の内面側に変形し得る場合があるため、図5に示すように、磁石格納用盲穴115の4隅には、磁石片130の角部と係止固定する磁石係止部117がそれぞれ突設されている。
【0044】
すなわち、上述した磁石係止部117は断面W字状の内壁面で構成され、この磁石係止部117の断面W字状の内壁面が磁石片130の角部と係止して、磁石片130が磁石格納用盲穴115に固定されている。
これにより、磁気発生リンクモジュール112の射出成型後に磁石格納用盲穴115と搬送面111aとの間に形成される薄肉部分が磁石格納用盲穴115内に向けて陥没しているような場合であっても、磁石片130が磁石格納用盲穴115の磁石係止部117に固定された状態で磁石片130と磁石格納用盲穴115との大部分の部位に間隙を確保している。
【0045】
次に、本実施例の搬送チェーン100を用いた使用態様について、図1、図6及び図7に基づいてさらに詳しく説明する。
すなわち、搬送ラインの両側にそれぞれ設けられた本実施例の搬送チェーン100は、図1に示すような搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配置されて、図6及び図7に示すような駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2との間に掛け回されて駆動することにより、搬送物品Mを上向きに傾斜搬送している。
【0046】
なお、本実施例の使用態様では、図1に示すように、本実施例の搬送チェーン100を搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列に3本配置させているが、たとえば、2本の搬送チェーン100の間に磁石を持たない多数のリンクモジュールを連結ピンにより連結した従来のコンベヤベルト500を介在させたものであっても構わない。
【0047】
また、図6に示す符号118は、本実施例の搬送チェーン100が駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2に噛み合う際にチェーン幅方向の位置ズレを規制するために駆動リンクモジュール114の裏面に突出して設けたガイド用リブである。
また、図7に示す符号Gは、本実施例の搬送チェーン100を走行案内するために搬送ラインに沿って設けられたガイドレールであり、符号Rは、本実施例の搬送チェーン100のチェーン伸びを吸収するタワミを確保するために搬送チェーン100の戻り側に設置されるアイドラローラからなる中間ローラである。
【0048】
このようにして得られた本実施例の搬送チェーン100は、リンク列L1を構成してチェーン幅方向に左右対称に配置された1対の磁気発生リンクモジュール110A、110Aが、この磁気発生リンクモジュール110Aのリンク側面114からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴115を備えていることにより、磁石片130を所定チェーン幅W寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく磁気発生リンクモジュール110A内に確実かつ簡便に格納することができる。
【0049】
また、磁気発生リンクモジュール110Aの磁石格納用盲穴115に挿入自在に格納されて搬送物品Mを吸着保持する磁石片130が、チェーン幅方向に隣接配置された駆動リンクモジュール110Bのリンク側面114で封止されていることにより、物品搬送時に上下左右方向に搬送振動が生じた場合であっても、磁石片130の飛び出しや脱落を確実に防止して搬送物品M、周辺機器などとの接触による磁石片130の不用意な破損を防止し、従来の磁石付きチェーンのような磁石片130を固定するための固定手段を別途用いることなく確実に磁石片130を固定することができる。
【0050】
また、搬送物品Mを吸着保持する磁石片130が、磁石格納用盲穴115に格納されていることにより、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品Mに作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体が磁気発生リンクモジュール110Aに付着して搭載部111が過剰に滑り易くなっている場合であっても、図7に示すように、搬送物品Mをスリップさせず安定して上向き搬送することができる。
【0051】
また、図5に示すように、磁気発生リンクモジュール110Aの搬送物品Mを搭載する搭載部111の搭載面111aと磁石格納用盲穴115との間の肉厚が搭載面111aの裏面と磁石格納用盲穴115との間の肉厚よりも薄く形成していることにより、磁石片130の吸着力が搬送物品Mに強く作用して、搬送物品Mを強固に吸着保持した状態で搬送することができる。
【0052】
さらに、磁石片130が矩形断面を有する棒状角材から構成されているとともに、磁石片130の角部を係止固定する磁石係止部117が磁石格納用盲穴115内に突設されていることにより、磁石片130を磁石格納用盲穴115に挿入格納する際に磁石片130と磁石格納用盲穴115とが全周にわたって接触せず、容易に格納することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の第2実施例である搬送チェーン200について、図8に基づいて説明する。
まず、図8に示す搬送チェーン200も、図1に示すような搬送チェーン100と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品M、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Mを上向きに傾斜搬送するものである。
【0054】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第2実施例である搬送チェーン200は、図8に示すように、搬送物品Mを搭載する搭載部211とこの搭載部211の前後にそれぞれ突設したヒンジ部212とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュール210がこれらの合成樹脂製リンクモジュール210に形成されたヒンジ部212のピン挿入孔213に挿通する連結ピン220を介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結されている。
【0055】
すなわち、前述した本第2実施例の搬送チェーン200では、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1は、磁石片230を格納するとともにスプロケット(図示しない)と噛み合うチェーン幅方向で左右対称に配置された2個の磁気発生リンクモジュール210Aからなる合成樹脂製リンクモジュール210によって所定チェーン幅Wに構成されている。
他方、磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2は、磁石片230を格納せずにチェーン幅方向の中央領域でスプロケット(図示しない)と噛み合う単一の合成樹脂製リンクモジュール240によって所定チェーン幅Wに構成されている。
【0056】
また、図8に示す本発明の第2実施例である搬送チェーン200は、上述した第1実施例の搬送チェーン100と比較すると、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1の部品構成のみが異なっており、その余の部品構造については基本的に何ら変わるところがないため、上述した第1実施例の搬送チェーン100と同一の部材について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0057】
したがって、本第2実施例の搬送チェーン200は、磁気発生リンクモジュール210Aのリンク側面224同士がチェーン幅方向に対向配置されていることにより、磁気発生リンクモジュール210Aの磁石格納用盲穴215に格納した磁石片230が確実に封止されている。
【0058】
このようにして得られた本第2実施例の搬送チェーン200は、リンク列L1を構成してチェーン幅方向に左右対称に配置された1対の磁気発生リンクモジュール210A、210Aがこの磁気発生リンクモジュール210Aのリンク側面214からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴215を備えていることにより、磁石片230を所定チェーン幅W寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく磁気発生リンクモジュール210A内に確実かつ簡便に格納することができるなど、前述した第1実施例の搬送チェーン100と同様な効果を奏することができるばかりでなく、磁石片230がチェーン幅方向の中央付近に配置されて吸着保持力を発揮するため、搬送物品Mに対する吸着保持力の偏りを回避することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0059】
次に、本発明の第3実施例である搬送チェーン300について、図9に基づいて説明する。
まず、図9に示す搬送チェーン300も、図1に示すような搬送チェーン100と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品M、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Mを上向きに傾斜搬送するものである。
【0060】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第3実施例である搬送チェーン300は、図9に示すように、搬送物品Mを搭載する搭載部311とこの搭載部311の前後にそれぞれ突設したヒンジ部312とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュール310がこれらの合成樹脂製リンクモジュール310に形成されたヒンジ部312のピン挿入孔313に挿通する連結ピン320を介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結されている。
【0061】
すなわち、前述した本第3実施例の搬送チェーン300では、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1のみの配列状態となる配列パターンでチェーン長手方向に配列され、ここで、このリンク列L1は、磁石片330を格納してチェーン幅方向で左右対称に配置された2個の磁気発生リンクモジュール310Aと磁石片330を格納せずにスプロケット(図示しない)と噛み合ってチェーン幅方向の中央領域に配置された1個の駆動リンクモジュール310Bからなる総計3個の合成樹脂製リンクモジュール310によって所定チェーン幅Wに構成されている。
【0062】
また、図9に示す本発明の第3実施例である搬送チェーン300は、上述した第1実施例の搬送チェーン100と比較すると、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2の部品構成を削減したものであり、その余の部品構造については基本的に何ら変わるところがないため、上述した第1実施例の搬送チェーン100と同一の部材について対応する300番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0063】
このようにして得られた本第3実施例の搬送チェーン300は、リンク列L1を構成してチェーン幅方向に左右対称に配置された1対の磁気発生リンクモジュール310A、310Aがこの磁気発生リンクモジュール310Aのリンク側面314からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴315を備えていることにより、磁石片330を所定チェーン幅W寸法、および、他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく磁気発生リンクモジュール310A内に確実かつ簡便に格納することができるなど、前述した第1実施例の搬送チェーン100と同様な効果を奏することができるばかりでなく、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1のみがチェーン長手方向に連続して配列されているため、搬送物品Mに対する吸着タイミングにズレを生じることなく円滑に吸着保持力を発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例4】
【0064】
次に、本発明の第4実施例である搬送チェーン400について、図10に基づいて説明する。
まず、図10に示す搬送チェーン400も、図1に示すような搬送チェーン100と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品M、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Mを上向きに傾斜搬送するものである。
【0065】
すなわち、本発明の第4実施例である搬送チェーン400は、図10に示すように、搬送物品Mを搭載する搭載部411とこの搭載部411の前後にそれぞれ突設したヒンジ部412とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュール410がこれらの合成樹脂製リンクモジュール410に形成されたヒンジ部412のピン挿入孔413に挿通する連結ピン420を介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結されている。
すなわち、前述した本実施例の搬送チェーン400は、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1と磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2とが交互の配列状態となる配列パターンで配列されている。
【0066】
そして、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1は、磁石片430を格納してチェーン幅方向で左右対称に配置された2個の磁気発生リンクモジュール410Aと磁石片430を格納せずにスプロケット(図示せず)と噛み合ってチェーン幅方向の中央領域に配置された1個の幅広な駆動リンクモジュール410Bと磁石片430を格納せずにチェーン幅方向の最外側領域に配置された2個の幅狭な拡張リンクモジュール410Cとからなる総計5個の合成樹脂製リンクモジュール410によって所定チェーン幅Wに構成されている。
他方、磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2は、磁石片430を格納せずにチェーン幅方向の中央領域でスプロケットS1、S2と噛み合う単一の合成樹脂製リンクモジュール440によって所定チェーン幅Wに構成されている。
【0067】
さらに、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1と磁力で吸着保持力を発揮しないリンク列L2とは、リンク列L1を構成する磁気発生リンクモジュール410A、駆動リンクモジュール410B、拡張リンクモジュール410Cの搭載部411の前後にそれぞれ突設したヒンジ部412がリンク列L2を構成する単一の合成樹脂製リンクモジュール440の搭載部441の前後にそれぞれ突設したヒンジ部442に対して指組状を呈するオフセット状態で対向して連結ピン420を介して相互に連結されている。
【0068】
そして、この磁気発生リンクモジュール410Aに挿入自在に格納された磁石片430は、前述した第1実施例と同様に、チェーン幅方向に隣接配置された幅広な駆動リンクモジュール410Bのリンク側面414で封止されている。
これにより、この隣接配置された磁気発生リンクモジュール410Bのリンク側面414が、磁石格納用盲穴415の開口部を覆って磁石片430の飛び出しを制止している。
【0069】
加えて、図10に示す本発明の第4実施例である搬送チェーン400は、上述した第1実施例の搬送チェーン100と比較すると、搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列L1の部品構成のみが異なっており、その余の部品構造については基本的に何ら変わるところがないため、上述した第1実施例の搬送チェーン100と同一の部材について対応する400番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0070】
このようにして得られた本実施例の搬送チェーン400は、前述した第1実施例の搬送チェーン100が奏する効果と同様に、磁石片430が所定チェーン幅Wのリンク列を構成する複数の合成樹脂製リンクモジュール、すなわち、磁気発生リンクモジュール412、412に格納されているため、搬送物品Mを磁力で吸着保持する磁石片430を所定のチェーン幅W寸法及び他の装置構成部材との取り合い寸法を変更することなく磁気発生リンクモジュール412内に確実かつ簡便に格納することができ、磁気発生リンクモジュール412が磁石格納用盲穴415に格納される横長直方体の磁石片430を露出せず封止するため、物品搬送時に上下左右方向に搬送振動が生じた場合であっても、磁石片430の飛び出しや脱落を確実に防止して搬送物品M、周辺機器などとの接触による磁石片430の不用意な破損することを防止することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0071】
100 、200 、300 、400 ・・・ 搬送チェーン
110 、210 、310 、410 ・・・ 合成樹脂製リンクモジュール
110A、210A、310A、410A・・・ 磁気発生リンクモジュール
110B、 310B、410B・・・ 駆動リンクモジュール
410C・・・ 拡張リンクモジュール
111 、211 、311 、411 ・・・ 搭載部
111a、211a、311a、411a・・・ 搭載面
112 、212 、312 、412 ・・・ ヒンジ部
113 、213 、313 、413 ・・・ ピン挿入孔
114 、214 、314 、414 ・・・ リンク側面
115 、215 、315 、415 ・・・ 磁石格納用盲穴
117 ・・・ 磁石係止部
118 、218 、318 、418 ・・・ ガイド用リブ
120 、220 、320 、420 ・・・ 連結ピン
130 、230 、330 、430 ・・・ 磁石片
140 、240 、 440 ・・・ 合成樹脂製リンクモジュール
141 、241 、 441 ・・・ 搭載部
142 、242 、 442 ・・・ ヒンジ部
510 ・・・ リンクモジュール
511 ・・・ 搭載部
512 ・・・ ヒンジ部
513 ・・・ ピン挿入孔
520 ・・・ 連結ピン
G ・・・ ガイドレール
R ・・・ 中間ローラ
S1 ・・・ 駆動側スプロケット
S2 ・・・ 従動側スプロケット
M ・・・ 搬送物品
W ・・・ チェーン幅
L1 ・・・ 搬送物品Mに磁力で吸着保持力を発揮するリンク列
L2 ・・・ 搬送物品Mに吸着保持力を発揮しないリンク列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物品を搭載する搭載部と該搭載部の前後にそれぞれ突設したヒンジ部とを備えた複数の合成樹脂製リンクモジュールをチェーン幅方向に配置して構成される所定チェーン幅のリンク列が前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを介してチェーン長手方向に所定配列パターンで多数連結してなる搬送チェーンにおいて、
前記リンク列を構成してチェーン幅方向に配置される少なくとも1対の合成樹脂製リンクモジュールが、該合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面からチェーン幅方向に向けて開口する磁石格納用盲穴をそれぞれ備えているとともに、
前記合成樹脂製リンクモジュールの磁石格納用盲穴に挿入自在に格納されて前記搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、チェーン幅方向に隣接配置された合成樹脂製リンクモジュールのリンク側面で封止されていることを特徴とする搬送チェーン。
【請求項2】
前記リンク列を構成する複数の合成樹脂製リンクモジュールが、少なくとも前記磁石片を格納する磁気発生リンクモジュールと前記磁石片を格納せずにスプロケットと噛み合う駆動リンクモジュールとで構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送チェーン。
【請求項3】
前記磁気発生リンクモジュールの搭載部が、該搭載部の搬送物品を搭載する搭載面と前記磁石格納用盲穴との間の肉厚を前記搭載面の裏面と前記磁石格納用盲穴との間の肉厚より薄く形成していることを特徴とする請求項2記載の搬送チェーン。
【請求項4】
前記磁石片が、矩形断面を有する棒状角材から構成されているとともに、
前記磁石片の角部を係止固定する磁石係止部が、前記磁石格納用盲穴内に突設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送チェーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate