説明

搬送ベルトのクリーニング機構及びそれを備えたインクジェット記録装置

【課題】無端状の搬送ベルトの搬送面を洗浄した後に搬送面に付着した洗浄液を確実に除去することができる搬送ベルトのクリーニング機構及びそれを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】クリーニング機構105は、記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルト102の搬送面を洗浄する洗浄部106と、洗浄された搬送面に付着した洗浄液を吸引ノズル20より吸引する吸引部及び吸引ノズル20に対して搬送ベルト102の移動方向下流側に近接配置された一対のエアナイフノズル21より加圧空気を噴射して搬送面に残留する洗浄液を吸引ノズル20側に移動させる噴射部を有する回収部107とを備え、吸引ノズル20及びエアナイフノズル21を搭載するキャリッジ22を搬送面に対して走査させて搬送面に付着した洗浄液を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトの搬送面をクリーニングするクリーニング機構及びそれを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無端状の搬送ベルトに記録媒体を搬送しながら記録媒体に記録動作を行う場合、記録動作に用いるインク等が搬送ベルトの搬送面に付着して汚れるようになる。例えば、インクジェット記録装置のようにインクを吐出して記録動作を行う場合、吐出されたインクが記録媒体からはみ出す、記録媒体の裏から滲み出す、等で搬送面がインクで汚れるようになる。搬送面が汚れた状態で記録媒体を搬送すると、記録媒体が汚れてしまうため、搬送面をクリーニングする必要がある。また、記録媒体を搬送面に保持するために粘着層を有する場合には、粘着層にゴミ、インク等の異物が付着するようになり、異物が堆積していくと粘着力が弱まってくるため、こうした異物を除去するためにも搬送面のクリーニングしなければならない。
【0003】
搬送ベルトの搬送面をクリーニングする方法としては、例えば、特許文献1では、搬送ベルトの搬送面を洗浄ブラシにより洗浄して付着したゴミ等を洗い落とし、洗浄後の搬送面に付着した水滴をマングルローラを圧接して除去し、さらに搬送面に残留した水滴を拭き取りローラを圧接して除去してクリーニングするインクジェット記録装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、輪転印刷機の版胴を洗浄するために、洗浄液を版胴に対して噴射する噴射機構及び版胴を洗浄した後の洗浄液を回収する吸引機構を備えた輪転印刷機の清掃装置が記載されている。また、特許文献3では、薄板搬送面と平行な面内で斜めに設置したエアナイフを備えた基板乾燥装置が記載されている。また、特許文献4では、洗浄ヘッドを印刷シリンダと平行に全長幅に亘って往復動可能に配置し、洗浄ヘッドには、洗浄ケース及び風箱を設け、風箱に回収した洗浄液を吸引するようにした印刷シリンダ洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−192694号公報
【特許文献2】特開平8−332718号公報
【特許文献3】特開2001−227868号公報
【特許文献4】特開平6−262758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、マングルローラ及び拭き取りローラにより搬送ベルトに付着した水滴を除去しているが、これらのローラが搬送ベルトの搬送面に圧接された状態で搬送ベルトが移動するので、搬送ベルト表面の樹脂層が剥離したり、搬送ベルトが搬送時に振動するといった不具合が生じるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載されているように、洗浄液を吸引してクリーニングする場合には、吸引後の表面に細かな水滴が残留しやすい。水滴が残留しないように吸引力を高めると、搬送ベルトに適用した場合、搬送ベルトが吸引されてダメージを受けたり、搬送動作に支障をきたすおそれがある。
【0008】
また、特許文献3に記載されているように、エアナイフにより水切りを行う場合に水切りされた水を回収しないと、エッジや角隅部を有する基板とは異なり、端部を想定できない無端ベルトでは、無端ベルト上に水分が滞留するようになって乾燥が不十分となる。特許文献4に記載されている洗浄装置においても洗浄液の吸引回収が不十分で、洗浄液が残留しやすくなる。
【0009】
そこで、本発明は、無端状の搬送ベルトの搬送面を洗浄した後に搬送面に付着した洗浄液を確実に除去することができる搬送ベルトのクリーニング機構及びそれを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送ベルトのクリーニング機構は、記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトの搬送面を洗浄する洗浄部と、洗浄された前記搬送面に付着した洗浄液を吸引ノズルより吸引する吸引部と、前記吸引ノズルに対して前記搬送ベルトの移動方向下流側に近接配置された少なくとも1つのエアナイフノズルより加圧空気を噴射して前記搬送面に残留する洗浄液を前記吸引ノズル側に移動させる噴射部と、前記吸引ノズル及び前記エアナイフノズルを前記搬送面に対して走査させる走査部とを備えていることを特徴とする。さらに、前記吸引ノズルの前記搬送面に対する吸引領域は、前記移動方向の長さが前記搬送ベルトの単位移動距離よりも長く設定されていることを特徴とする。さらに、前記エアナイフノズルは、前記移動方向に対して傾斜するように配置されるとともに前記移動方向の長さが前記搬送ベルトの単位移動距離よりも長く設定されていることを特徴とする。さらに、前記エアナイフノズルは、前記移動方向上流側の端部が前記吸引ノズルの前記移動方向下流側端部に近接配置されていることを特徴とする。さらに、前記エアナイフノズルは、前記移動方向に対する傾斜角度が調整可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るインクジェット記録装置は、上記のクリーニング機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の構成を有することで、吸引ノズルに対して搬送ベルトの移動方向下流側にエアナイフノズルを近接配置しているので、吸引ノズルにより搬送面に付着した洗浄液を吸引した後に残留した洗浄液をエアナイフノズルにより吸引ノズル側に移動させて吸引させることができ、搬送面に付着した洗浄液を確実に除去することが可能となる。ここで、エアナイフノズルを「近接配置」するとは、エアナイフノズルにより吹き飛ばされ収集された水滴が吸引ノズルで吸引可能となる位置に配置することである。
【0013】
すなわち、吸引ノズル単独では洗浄液の吸い残しが生じやすく、エアナイフノズル単独では洗浄液が飛散しクリーニング後の搬送面に付着して残留してしまう。両方のノズルを上述のように近接配置することで、吸引ノズルが吸い残した洗浄液はわずかな量となるので、エアナイフノズルにより飛散させることなく吸引ノズル側に移動させて除去することができる。
【0014】
また、吸引ノズル及びエアナイフノズルを搬送面に接触させずに動作させることができるので、搬送面がクリーニング動作によりダメージを受けることがない。
【0015】
そして、吸引ノズル及びエアナイフノズルを搬送面に対して走査させて搬送面に付着した洗浄液を除去するので、吸引ノズル及びエアナイフノズルの開口を小さく設定することができ、その分空気の吸引及び噴射のためのポンプ等の機構をコンパクトにすることが可能となる。また、記録動作を行ないながら搬送ベルトを搬送する場合でも、その搬送動作に合せて吸引ノズル及びエアナイフノズルを走査させれば、記録動作を中断することなくクリーニング動作を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態を備えたインクジェット記録装置の要部を示す概略図である。
【図2】クリーニング機構に関する斜視図である。
【図3】キャリッジに関する拡大斜視図である。
【図4】キャリッジを上面から見た平面図である。
【図5】回収部に関する動作説明図である。
【図6】回収部の変形例に関する動作説明図である。
【図7】回収部の別の変形例に関する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態を備えたインクジェット記録装置の要部を示す概略図である。
【0019】
インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを用いて主走査方向Xに記録動作を行う記録部100と、記録媒体Pを副走査方向Yに搬送する搬送コンベヤ101とを備えている。記録媒体Pに画像等を記録する場合には、記録媒体Pの幅方向である主走査方向Xの走査ラインに沿って記録信号に基づいてインクジェット記録ヘッドからインクを吐出して記録動作を行い、所定の走査ラインの記録動作が完了すると搬送コンベヤ101により記録媒体を所定の走査ライン分副走査方向Yに搬送する。そして、次の走査ラインにインクジェット記録ヘッドにより記録動作を行う。こうした記録動作及び搬送動作を繰り返すことで、記録媒体Pに画像等を記録する。
【0020】
搬送コンベヤ101は、無端状の搬送ベルト102が一対の搬送ローラ103及び104に張架されており、搬送ローラ103を駆動モータ等により回転駆動させることで搬送動作が行われる。搬送ベルト102の搬送面には記録媒体Pを記録動作中に動かないように保持するために粘着層が設けられている。
【0021】
搬送コンベヤ101の下方には、搬送ベルト102の搬送面をクリーニングするクリーニング機構105が設けられている。図2は、クリーニング機構105に関する斜視図である。図2では、搬送ベルト102を点線で表示しており、搬送ベルト102の移動方向B(副走査方向Yとは逆方向)を示している。
【0022】
クリーニング機構105は、搬送ベルト105の移動方向B上流側に搬送面を洗浄液により洗浄する洗浄部106及び搬送面に付着した洗浄液を吸引して回収する回収部107を備えている。
【0023】
洗浄部106は、搬送面の全幅にわたって設けられたロール状の洗浄ブラシ10と、洗浄ブラシ10の上流側及び下流側に搬送面の全幅にわたって設けられた一対のシャワー管11及び12とを備えている。
【0024】
洗浄ブラシ10は、回転軸10aの全周にわたって多数のブラシ毛が植設されており、駆動モータ13の回転駆動により回転軸10aが回転するようになっている。洗浄ブラシ10は、図示せぬ昇降台に回転可能に軸支されており、駆動モータ13の回転駆動により回転しながら搬送面に接触し、ブラシ毛が搬送面を摺接することで搬送面に付着したゴミ等の異物を掻き落とすように作用する。
【0025】
シャワー管11及び12は、上部に長手方向に沿って多数の噴射口が形成されており、一方の端部に接続された供給管より洗浄液が供給される。そして、各噴射口より上方の搬送面に向かって洗浄液がシャワー状に噴射される。噴射された洗浄液は搬送面に衝突して搬送面に付着したゴミ、インク等の異物を洗浄するように作用する。
【0026】
洗浄部106では、まずシャワー管11から噴射される洗浄液により搬送面を一次洗浄し、一次洗浄で洗浄できなかったゴミ等の異物を洗浄ブラシ10により掻き落とし、洗浄ブラシ10により摺接された搬送面をシャワー管12から噴射される洗浄液により二次洗浄するようになっている。
【0027】
回収部107は、搬送面に付着した洗浄液を吸引ノズル20より吸引する吸引部、吸引ノズル20に対して搬送ベルトの移動方向B下流側に近接配置された一対のエアナイフノズル21より加圧空気を噴射して搬送面に残留する洗浄液を吸引ノズル20側に移動させる噴射部、及び、吸引ノズル20及びエアナイフノズル21をキャリッジ22に搭載して搬送面に対して走査方向Aに沿って走査させる走査部を備えている。
【0028】
吸引部は、キャリッジ22に搭載された吸引ノズル20に接続する可撓性の吸引管23を介して図示せぬ吸気ポンプを備えており、吸気ポンプを作動させることで、吸引ノズル20より搬送面の洗浄液とともに空気を吸い込むようになっている。吸引ノズル20の開口形状は、移動方向Bに沿って細長い溝状に形成されている。
【0029】
噴射部は、キャリッジ22に搭載された一対のエアナイフノズル21に接続する可撓性の送給管24を介して図示せぬ加圧ポンプを備えており、加圧ポンプを作動させることで、一対のエアナイフノズル21より加圧空気を噴射して搬送面に残留した洗浄液を吸引ノズル20側に移動させるようになっている。一対のエアナイフノズル21は、吸引ノズル20を挟むように両側に配置されており、その間の間隔が移動方向Bの下流側に向かって末広がりになるように吸引ノズル20に対して傾斜配置されている。そして、エアナイフノズル21の開口形状は、細長い溝状に形成されている。
【0030】
走査部は、キャリッジ22を走査方向Aに移動するように案内する一対のガイド体25、従動プーリ27及び駆動プーリ28に張架されるとともにキャリッジ22に固定された支持部材26が取り付けられたタイミングベルト30、及び、駆動プーリ28を回転駆動する駆動モータ29を備えている。駆動モータ29を回転駆動すると、タイミングベルト30が走査方向Aに沿って移動するようになり、タイミングベルト30の移動に伴ってキャリッジ22が走査方向Aに移動するようになる。キャリッジ22の移動範囲は、搬送ベルト102の全幅にわたって移動するように設定されている。
【0031】
図3は、キャリッジ22に関する拡大斜視図である。吸引ノズル20は、キャリッジ22の上面に向けて設置され、その開口形状を保ったまま所定の深さまで内部空間が形成されている。そして、内部空間の底面に吸引管23が接続されている。吸引ノズル20の開口部での吸引力が開口部の長手方向においてばらつかないように吸引管23を複数に分岐して吸引ノズル20の長手方向に沿って接続するようにしてもよい。エアナイフノズル21は、キャリッジ22の上面に向けて設置され、その開口形状を保ったまま所定の深さまで内部空間が形成されている。そして、送給管24は2つに分岐して各エアナイフノズル21の内部空間の底面に接続している。なお、エアナイフノズル21は、複数の噴射ノズルを直線状に配列したもので構成することもできる。
【0032】
図4は、キャリッジ22を上面から見た平面図である。吸引ノズル20は、搬送ベルト102の移動方向Bに沿って配置され、長手方向の長さがL1に設定されている。長さL1は、搬送ベルト102の記録動作時における副走査方向Yへの単位移動距離よりも長くなるように設定されている。
【0033】
一対のエアナイフノズル21は、前記移動方向Bに対して角度θだけ傾斜しており、吸引ノズル20を挟んで末広がりになるように配置されている。角度θは、上流側端部を中心にエアナイフノズル21を回動させて角度調整を行うことができるようになっている。角度θは、後述するように、エアナイフノズル21から噴射される加圧空気が搬送面に吹き付けられて移動する洗浄液が吸引ノズル20に向かって流れるように調整され、具体的には、キャリッジの移動速度に基づいて設定される。
【0034】
各エアナイフノズル21の移動方向Bの上流側の端部は、吸引ノズル20の下流側端部に近接配置されそれよりも上流側に位置するように設定されており、両者は長さdだけ移動方向に重複している。また、各エアナイフノズル21の移動方向Bの長さL2は、搬送ベルト102の記録動作時における副走査方向Yへの単位移動距離よりも長くなるように設定されている。好ましくは、長さL2と長さdとの差が副走査方向Yへの単位移動距離よりも長くなるように設定するとよい。なお、長さL2は、エアナイフノズル21の長手方向の長さ及び角度θにより決まってくるので、角度θを調整する場合に長さL2についても考慮する必要がある。
【0035】
図5は、回収部107に関する動作説明図である。まず、搬送ベルト102の一方の側に設定された初期位置にキャリッジ22を設定する(図5(a))。搬送ベルト102は、洗浄液の付着した部分W及びクリーニング部分Cとなっており、両部分の境界線に対して吸引ノズル20の位置は、搬送ベルト102の移動方向B下流側のノズル端部が、上流側に位置するように設定されている。
【0036】
次に、キャリッジ22を走査方向Aに移動させながら、吸引ノズル20から搬送面に付着した洗浄液を吸引していく(図5(b))。吸引領域C1は、吸引ノズル20の長さL1に相当する幅で洗浄液が吸引されていく。吸引ノズル20と搬送面との間の間隙は数mm程度に設定し、搬送面が吸引ノズル20に吸着してしまわないように吸引力を調整する。そのため、洗浄液がわずかに残留するようになる。
【0037】
キャリッジ22を搬送ベルト102の全幅にわたって移動させた後搬送ベルト102の他方の側に設定された待機位置に移動する(図5(c))。そして、搬送ベルト102が記録動作により所定の単位移動距離Dだけ移動方向Bに搬送される。そのため、吸引領域C1がエアナイフノズル21に対向配置され、吸引領域C1の移動方向B上流側の洗浄液付着部分Wに吸引ノズル20が対向配置される(図5(d))。この場合、上述した吸引ノズルの長さL1及びエアナイフノズル21の長さL2が単位移動距離Dに対して長く設定されているので、吸引ノズルの吸引漏れの領域及びエアナイフノズルの除去漏れの領域が生じることなく動作させることができる。
【0038】
次に、キャリッジ22を初期位置に向かって移動させながら、吸引ノズル20から搬送面に付着した洗浄液を吸引し、エアナイフノズル21から加圧空気を噴射して吸引領域C1に残留した洗浄液を走査方向Aに向かって吹き寄せるが、エアナイフノズル21が傾斜配置されているため吹き寄せられた洗浄液がキャリッジ22の移動により吸引ノズル20側に流れていくようになる。エアナイフノズル21及び吸引ノズル20の端部が重複するように配置されているため、吸引ノズル20側に流れる洗浄液は確実に吸引される(図5(e))。こうして、吸引領域C1に残留した洗浄液はすべて吸引ノズル20に吸引されて回収されクリーニングされるようになる。
【0039】
そして、キャリッジ22を搬送ベルトの全幅にわたって移動して初期位置に戻る(図5(f))。次に、搬送ベルト102が記録動作により単位移動距離だけ搬送されると、再び待機位置に向かってキャリッジ22を移動させて吸引ノズル20により洗浄液を吸引し、エアナイフノズル21により前回の吸引領域C1に残留する洗浄液を吸引ノズル20に移動させる。この場合、エアナイフノズル21が一対設けられているので、キャリッジ22が走査方向を往復する場合でもどちらか一方のエアナイフノズル21が残留する洗浄液を吸引ノズル20側に移動させるようになる。そして、一対のエアナイフノズル21は、走査方向に移動する際に上流側のエアナイフノズルのみ動作させて加圧空気を噴射するように制御するとよい。
【0040】
このように、キャリッジを走査方向Aに往復移動させながら搬送ベルト102に付着した洗浄液を確実に除去することができる。
【0041】
図6は、回収部107の変形例の動作に関する説明図である。この例では、キャリッジ22に吸引ノズル20及び1つのエアナイフノズル21を搭載している。まず、搬送ベルト102の一方の側に設定された初期位置にキャリッジ22を設定する(図6(a))。
【0042】
次に、キャリッジ22を走査方向Aに移動させながら、吸引ノズル20から搬送面に付着した洗浄液を吸引していく(図6(b))。吸引領域C1は、吸引ノズル20の長さL1に相当する幅で洗浄液が吸引されていく。キャリッジ22を搬送ベルト102の全幅にわたって移動させた後搬送ベルト102の他方の側に設定された反転位置に移動する(図6(c))。そして、搬送ベルト102が記録動作により所定の単位移動距離Dだけ移動方向Bに搬送されるとともにキャリッジ22を反転させて初期位置に戻す(図6(d))。
【0043】
次に、再度初期位置からキャリッジ22を反転位置に向かって移動させながら、吸引ノズル20から搬送面に付着した洗浄液を吸引し、エアナイフノズル21から加圧空気を噴射して吸引領域C1に残留した洗浄液を吸引ノズル20側に移動させて、吸引領域C1に残留した洗浄液をすべて吸引ノズル20で吸引してクリーニングしていく(図6(e))。
【0044】
そして、キャリッジ22を搬送ベルトの全幅にわたって移動して反転位置に到達すると、搬送ベルト102が記録動作により所定の単位移動距離Dだけ移動方向Bに搬送されるとともにキャリッジ22を反転させて初期位置に戻す(図6(f))。
【0045】
このように、キャリッジを初期位置から走査方向Aに移動させながら搬送ベルト102に付着した洗浄液を除去し、搬送ベルト102の搬送動作に合せて高速で初期位置に戻して順次クリーニングすることができる。
【0046】
図7は、回収部107の別の変形例に関する動作説明図である。この例では、吸引ノズル及びエアナイフノズルを搭載したキャリッジ22を2台用いる。2台のキャリッジを移動方向Bにずらして設置し、移動方向B上流側のキャリッジによる動作領域と下流側のキャリッジによる動作領域を一部重複するように設定しておく。そして、2台のキャリッジを走査方向Aに移動させて洗浄液を除去すれば、広い幅の領域の洗浄液を一度に除去することができ、記録動作時の搬送ベルトの単位移動距離の搬送動作と無関係に洗浄液の除去動作を行うことが可能となる。
【0047】
また、吸引ノズル及びエアナイフノズルの長手方向の長さを長くして、洗浄液の除去領域の幅を広く設定することもできる。
【0048】
以上説明した例では、記録動作を中断せずに搬送面をクリーニングすることができ、搬送面の幅のサイズが大きい場合でも容易に対応することが可能で、簡単な構成で安定したクリーニング動作を行える。
【符号の説明】
【0049】
10 洗浄ブラシ
11 シャワー管
12 シャワー管
13 駆動モータ
20 吸引ノズル
21 エアナイフノズル
22 キャリッジ
23 吸引管
24 送給管
25 ガイド部材
26 支持部材
27 従動プーリ
28 駆動プーリ
29 駆動モータ
30 タイミングベルト
100 記録部
101 搬送コンベヤ
102 搬送ベルト
103 搬送ローラ
104 搬送ローラ
105 クリーニング機構
106 洗浄部
107 回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトの搬送面を洗浄する洗浄部と、洗浄された前記搬送面に付着した洗浄液を吸引ノズルより吸引する吸引部と、前記吸引ノズルに対して前記搬送ベルトの移動方向下流側に近接配置された少なくとも1つのエアナイフノズルより加圧空気を噴射して前記搬送面に残留する洗浄液を前記吸引ノズル側に移動させる噴射部と、前記吸引ノズル及び前記エアナイフノズルを前記搬送面に対して走査させる走査部とを備えていることを特徴とする搬送ベルトのクリーニング機構。
【請求項2】
前記吸引ノズルの前記搬送面に対する吸引領域は、前記移動方向の長さが前記搬送ベルトの単位移動距離よりも長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング機構。
【請求項3】
前記エアナイフノズルは、前記移動方向に対して傾斜するように配置されるとともに前記移動方向の長さが前記搬送ベルトの単位移動距離よりも長く設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーニング機構。
【請求項4】
前記エアナイフノズルは、前記移動方向上流側の端部が前記吸引ノズルの前記移動方向下流側端部に近接配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクリーニング機構。
【請求項5】
前記エアナイフノズルは、前記移動方向に対する傾斜角度が調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクリーニング機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のクリーニング機構を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−234579(P2010−234579A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83477(P2009−83477)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】