説明

搬送ベルト

【課題】溶着による接合部におけるエンコーダの読み取り不良を防止できる、搬送ベルトを提供する。
【解決手段】帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部65を有するベルト本体50と、ベルト本体50の外面に周方向に沿って設けられるエンコーダ部70とを備え、被搬送体を搬送するための搬送ベルト23である。エンコーダ部70は、ベルト本体50の全周に亘って設けられる第一の記録層60aと、第一の記録層60aにおける接合部65との交差部分に対してベルト本体50の幅方向において異なる領域であり、かつ接合部65とは交差しない領域に少なくとも一部が設けられる第二の記録層61aと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット型プリンタにおいては、紙などの媒体を搬送しながらインクジェットヘッドから当該媒体へインクを噴射することで、媒体に記録を行うようになっている。媒体を搬送する手段としてローラに掛け渡された搬送ベルトが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、搬送ベルトは、フィルム等から構成されるベルト部材(基材)を溶着することで形成されている。また、搬送ベルトの側部には、例えば磁性体材料を塗布した後、乾燥させることで形成されたエンコーダが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにエンコーダを形成する場合、磁性体材料の乾燥時の熱によって溶着部材が変形してしまい、エンコーダと該エンコーダを読み取るセンサとの距離が変化し、エンコーダの読み取り精度が低下するといった問題が生じてしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、溶着による接合部におけるエンコーダの読み取り不良を防止できる、搬送ベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の搬送ベルトは、帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部を有するベルト本体と、ベルト本体の外面に該ベルト本体の周方向に沿って設けられるエンコーダ部とを備え、被搬送体を搬送するための搬送ベルトにおいて、前記エンコーダ部は、前記ベルト本体の全周に亘って設けられる第一の記録層と、前記第一の記録層における前記接合部との交差部分に対して前記ベルト本体の幅方向において異なる領域であり、かつ前記接合部とは交差しない領域に少なくとも一部が設けられる第二の記録層と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の搬送ベルトによれば、例えば製造過程中の熱により接合部が変形して前記接合部上を通過する第一の記録層に読み取り不良が生じる場合であっても、第二の記録層を代わりに読み取ることでエンコーダ部の読み取りを良好に行うことができる。したがって、溶着による接合部に起因するエンコーダの読み取り不良の発生を防止できる。
【0009】
また、上記搬送ベルトにおいては、前記エンコーダ部は、前記第一の記録層が設けられた第一のエンコーダと、前記第二の記録層が設けられた第二のエンコーダと、を有するのが好ましい。
この構成によれば、第一の記録層及び第二の記録層をそれぞれ所望の位置に形成できるので、搬送ベルトの設計自由度を向上することができる。
また、前記第一のエンコーダが前記ベルト本体の一方の側部に沿って設けられ、第二のエンコーダが前記ベルト本体の他方の側部に沿って設けられているのがより望ましい。
このようにすれば、ベルト本体の幅方向において第一の記録層及び第二の記録層を最も離間した状態に配置することができる。
【0010】
また、上記搬送ベルトにおいては、前記エンコーダ部は、前記第一の記録層及び前記第二の記録層が一体に形成された単一のエンコーダから構成されているのが好ましい。
この構成によれば、エンコーダ部が単一のエンコーダから構成されるため、搬送ベルトの構造を簡略化できる。
【0011】
また、上記搬送ベルトにおいては、前記接合部は、前記ベルト本体の幅方向に交差する方向に延在するのが好ましい。
この構成によれば、接合部がベルト本体の幅方向に対して斜めに形成されるので、接合部の両端の位置がベルト本体の周方向においてずれた状態となる。よって、第二の記録層を接合部と交差しない領域に確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェットプリンタの構成を模式的に示す図である。
【図2】記録ユニットの搬送ユニットの構成を示す図である。
【図3】搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図4】図3に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図5】図4に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図6】図5に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図7】図6に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図8】図7に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図9】磁性層に対する磁気書き込み工程を説明するための図である。
【図10】変形例に係る接合部の形状を示す図である。
【図11】第二実施形態に係る搬送ベルトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、搬送装置をインクジェットプリンタに搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、インクジェットプリンタ1の構成を模式的に示す図である。
図1(a)はインクジェットプリンタ1の側面図であり、図1(b)はインクジェットプリンタ1の平面図である。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、インクジェットプリンタ1は、記録ユニット2と、給紙ユニット3と、排紙ユニット4とを有しており、記録用紙(被搬送体)Pなどの媒体に記録を行う流体噴射装置である。インクジェットプリンタ1は、記録ユニット2が給紙ユニット3と排紙ユニット4との間に挟まれるように配置されている。
【0016】
記録ユニット2は、記録用紙Pに記録を行うユニットである。記録ユニット2には、搬送ユニット20及び記録ヘッド21が設けられている。搬送ユニット20は、記録用紙Pを支持しつつ搬送する。記録用紙Pを搬送するため、本実施形態における特徴的構成要素である搬送ローラ22(図2参照)が搭載されている。記録ヘッド21は、記録用紙Pにインクを噴射可能に設けられており、不図示のインク供給源に接続されている。
【0017】
給紙ユニット3は、記録用紙Pを支持する支持部材30と、当該記録用紙Pを記録ユニット2へ給紙する給紙ローラ31とを有している。支持部材30は複数枚の記録用紙Pを支持可能になっている。給紙ローラ31は、主動ローラ31a及び従動ローラ31bを有しており、当該主動ローラ31a及び従動ローラ31bの間に記録用紙Pを挟んで給紙するようになっている。主動ローラ31aは不図示の駆動機構に接続されている。
【0018】
排紙ユニット4は、記録用紙Pを支持する支持部材40と、当該記録用紙Pを記録ユニット2から排紙する排紙ローラ41とを有している。支持部材40は、複数舞の記録用紙Pを支持可能になっており、例えばトレイ状に形成されている。排紙ローラ41は、給紙ローラ31と同様、主動ローラ41a及び従動ローラ41bを有しており、2つのローラの間に記録用紙Pを挟んで排紙するようになっている。主動ローラ41aは不図示の駆動機構に接続されている。
【0019】
図2は、記録ユニット2の搬送ユニット20の構成を示す図である。図2(a)は、搬送ユニット20の側面図であり、図2(b)は、搬送ユニット20の平面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、搬送ユニット20は、搬送ローラ(第1駆動機構)22と、搬送ベルト23と、プラテン24と、側板25と、駆動機構26とを有している。
【0020】
搬送ローラ22は、主動ローラ22a、従動ローラ22b及びテンションローラ22cの3種類のローラを有している。主動ローラ22aは、記録用紙Pの搬送方向の先端側に配置されており、駆動機構26の駆動制御によって回転するようになっている。従動ローラ22bは、記録用紙Pの搬送方向の後端側に設けられており、図2(a)に示すように主動ローラ22aと同一の高さ位置に配置されている。テンションローラ22cは、図2(a)に示すように主動ローラ22a及び従動ローラ22bよりも高さ位置の低い位置に配置されており、図2(b)に示すように平面視で主動ローラ22aと従動ローラ22bとの中間の位置に配置されている。
【0021】
搬送ベルト23は、環状に設けられており、外面に記録用紙Pを載置可能になっている。搬送ベルト23は、例えば全周が2m、幅が700mm〜800mmとなっている。また、厚みは、例えば0.125mmとなっている。
【0022】
搬送ベルト23は、内面が主動ローラ22a、従動ローラ22b及びテンションローラ22cにそれぞれ接していると共にテンションローラ22cによって張力が加えられた状態で掛け渡されている。主動ローラ22aの回転により、当該回転が搬送ベルト23に伝達されて搬送ベルト23が回転し、搬送ベルト23の回転により従動ローラ22b及びテンションローラ22cが回転するようになっている。
【0023】
搬送ベルト23は、後述するように帯状の基材における両端部を溶着することで接合した接合部65を有するベルト本体50と、ベルト本体50の外面に該ベルト本体50の周方向(回転方向)に沿って設けられるエンコーダ部70とを備えている。本実施形態においては、接合部65はベルト本体50の幅(搬送ベルト23の回転方向と直交する方向における長さ)方向に交差するように延在している。すなわち、ベルト本体50には、搬送ベルト23の周方向に対して、斜めに接合部65が形成されたものとなっている。なお、接合部65は、後述するように第一の溶着部材71及び第二の溶着部材73を溶融させることでベルト本体50と一体化した状態に形成されるものである。
【0024】
エンコーダ部70は、ベルト本体50の全周に亘って設けられる第一の磁気記録層(第一の記録層)60aと、第一の磁気記録層60aにおける接合部65との交差部分に対してベルト本体50の幅方向において異なる領域であり、かつ接合部65とは交差しない領域に少なくとも一部が設けられる第二の磁気記録層(第ニの記録層)61aとを含んでいる。
【0025】
具体的に本実施形態では、エンコーダ部70は、第一のエンコーダ60と、第二のエンコーダ61とを有している。第一のエンコーダ60は、上記第一の磁気記録層60aを含むものであり、第二のエンコーダ61は、第ニの磁気記録層61aを含むものである。また、第一のエンコーダ60は、ベルト本体50の一方の側部に形成されており、第二のエンコーダ61は、ベルト本体50の他方の側部に形成されている。
【0026】
また、本実施形態では、搬送ベルト23の周方向に対して接合部65が斜めに形成されるため、接合部65の両端の位置がベルト本体50の周方向においてずれた状態となる。これに対し、本実施形態では、第一のエンコーダ60と第二のエンコーダ61とをベルト本体50の両側部に配置し、第一の磁気記録層60a及び第二の磁気記録層61aを最も離間させた状態で配置している。したがって、第二のエンコーダ61は、接合部65と交差しない領域に形成されたものとなっている。
【0027】
なお、第一のエンコーダ60及び第二のエンコーダ61の上方には、第一の磁気記録層60aを読み取るための第一のセンサ66aと、第二の磁気記録層61aを読み取るための第二のセンサ66bとが設けられている。また、第一のエンコーダ60及び第二のエンコーダ61は、記録用紙Pを搬送する際に、記録用紙Pと重ならない位置に形成されている。
【0028】
また、搬送ベルト23の表面には摩擦係数の高い高μ層23aが形成されており、記録用紙Pを摩擦力によって搬送するようになっている。また、搬送ベルト23には表面側を吸引する吸引孔23bが設けられており、当該吸引孔23bは不図示の吸引機構に接続されている。当該吸引孔23bによって記録用紙Pを吸着して搬送できるようになっている。また、搬送ベルト23には磁気エンコーダのパターン23cも形成されている。なお、上記接合部65は上記吸気孔23bの間を縫うように形成されている。
【0029】
プラテン24は、搬送ベルト23の内面側に設けられており、図2(b)に示すように平面視で主動ローラ22aと従動ローラ22bとの間に配置されている。プラテン24は、搬送ベルト23のうち記録用紙Pを搬送する位置を支持することで、記録ヘッド21と記録用紙Pとの間の距離を一定に保っている。
【0030】
側板25は、図2(a)に示すように上記3つの搬送ローラ22を支持する板状部材であり、側面視で搬送ベルト23の搬送面に対して突出するように設けられている。当該側板25は図2(b)に示すように平面視でプラテン24のうち搬送方向の側部に沿って設けられている。このため、記録用紙Pは搬送ベルト23の回転により、側板25の上記突出部分をガイドとして側板25の間を搬送されて通過するようになっている。
【0031】
ここで、上記搬送ベルト23の製造方法について説明する。図3、4は、図2(b)のA−A´線矢視による搬送ベルト23の断面に対応する図である。
まず、図3(a)に示すように、ベルト本体50を構成する基材51の両端部51a,51bを対向させ、両端部51a,51bの先端に隙間を設けた状態で配置する。なお、両端部51a,51bは、平面視した状態で基材51の幅方向に対して斜めになっている(図1参照)。なお、基材51はポリエチレンテレフタレート(PET)から構成される帯状の部材である。
【0032】
続いて、上記基材51の外面50a側を第一の溶着部材71を用いて溶着する。第一の溶着部材71は、基材51と同様、PETから構成されている。第一の溶着部材71としては、厚みが0.075mのものを用いた。具体的に本実施形態では、第一の溶着部材71を基材51の両端部51a,51bに跨るようにして配置する。そして、第一の溶着部材71の上から不図示の超音波加振装置に接続された超音波ホーン72を適当な圧力で基材51に押し付け、基材51と第一の溶着部材71とを振動させることで摩擦熱を生じさせる。これにより図3(b)に示されるように、第一の溶着部材71と基材51の両端部51a,51bとが融解、融合することで第一の溶着部材71を介して基材51の両端部51a,51bが接合される。すなわち、第一の溶着部材71と基材51との境界部分は、それぞれが一体化した状態となる。
【0033】
続いて、図3(c)に示されるように、第一の溶着部材71の上面を約10μm程度研磨することで第一の溶着部材71と基材51とを面一にする。これにより基材51の外面50a側における溶着工程が終了となる。
【0034】
続いて、図4(a)に示されるように、基材51の内面50bを上方に向けて配置する。そして、第二の溶着部材73を基材51の両端部51a,51bに跨るようにして配置し、第二の溶着部材73の上から不図示の超音波加振装置に接続された超音波ホーン72を適当な圧力で基材51に押し付け、基材51と第二の溶着部材73とを振動させることで摩擦熱を生じさせる。これにより図4(b)に示されるように、第ニの溶着部材73と基材51の両端部51a,51bとが融解、融合することで第ニの溶着部材73を介して基材51の両端部が接続される。すなわち、第ニの溶着部材73と基材51との境界部分は、それぞれが一体化した状態となっている。また、第二の溶着部材73は第一の溶着部材71と一体化する。
【0035】
続いて、図4(c)に示されるように、第ニの溶着部材73の上面を約10μm程度研磨することで第ニの溶着部材73と基材51とを面一にする。これにより両端部51a,51bが接合部65を介して接合されてなるベルト本体50を形成することができる。
【0036】
続いて、搬送ベルト23を形成するための所定の加工をベルト本体50に施す。本実施形態では、所定の加工として複数の加工処理、例えば3つの加工処理を行っている。第1の加工処理は、ベルト本体50の外面50aに摩擦力を付与する処理である。また、第2の加工処理は、ベルト本体50に吸引孔23bを形成する穴あけ処理である。また、第3の加工処理は、ベルト本体50の側部に磁気エンコーダのパターン23cを形成する処理である。このような加工処理を行う際、ベルト本体50は一対のローラ対間に掛け渡される。
【0037】
まず、不図示の駆動機構によってローラ対62,63を回転させベルト本体50を回転移動させた状態とし、図5(a)及び図5(b)に示すように、インクジェットヘッドなどの塗布装置5によって摩擦係数の高い材料を含んだ液状体(例えば、ポリウレタン塗料)をベルト本体50の表面(外面50a)に噴射する(第1の加工処理)。これにより、ベルト本体50には摩擦係数の高い高μ層23aが形成される。なお、高μ層23aの形成方法としては、インクジェット法に限定されず、スプレー塗装やシームレス塗装を用いることができる。
【0038】
ベルト本体50の表面50aに高μ層を形成した後、図6(a)及び図6(b)に示すように、ベルト本体50を回転移動させた状態で、金型9によってベルト本体50に貫通孔を形成し、吸引孔23bとする(第2の加工処理)。
【0039】
この吸引孔23bは、例えばベルト本体50の表面50a側を吸引するものである。また、ローラ63の上方にエアブロー装置7を配置し、ベルト本体50に対してエアーを吹き付けることにより、吸引孔23b及びベルト本体50に付着した異物を除去するようにする。
【0040】
ベルト本体50に吸引孔23bを形成した後、図7(a)及び図7(b)に示すように、ベルト本体50を回転移動させた状態で、インクジェットヘッドなどの塗布装置8によってベルト本体50の一方の側部に磁性体材料を噴射することで、第一の磁気記録層60aを構成するための磁性層91aをベルト本体50の全周に亘って形成する。したがって、磁性層91aは、接合部65を跨いだ状態に形成される。
【0041】
続いて、図8に示すように、ベルト本体50の他方の側部の上方に塗布装置8を配置し、第二の磁気記録層61aを構成するための磁性層91bをベルト本体50の一部に形成する。このとき、塗布装置8は、第一の記録層60aにおける接合部65との交差部に対してベルト本体50の幅方向において異なる領域に上記磁性層91bを形成するように駆動される。したがって、磁性層91bは、少なくとも磁性層91aにおける接合部65との交差部分に対向する位置であって、且つ接合部65を跨ぐことが無いように形成される。なお、磁性層91a,91bとしては、厚みdが0.01mmのものを形成している。また、上記磁性層91a,91bを形成したベルト本体50の表面には保護層67が形成される(図9参照)。
【0042】
続いて、上述のようにして形成した磁性層91a,91bに対し、図9に示すように磁気書き込みヘッド69を用いて磁気(N極、S極)を書き込む。磁気が書き込まれた磁性層91a,91bによって第一の磁気記録層60a及び第二の磁気記録層61aが形成される。このようにして、第一の磁気記録層60aを含む第一のエンコーダ60と、第二の磁気記録層61aを含む第二のエンコーダ61と、を有するエンコーダ部70を形成することができる。
以上の工程により、接合部65を有するベルト本体50と、エンコーダ部70とを備えた搬送ベルト23を製造することができる。
【0043】
続いて、インクジェットプリンタ1の動作について説明する。
インクジェットプリンタ1は、搬送ユニット20により記録用紙Pを記録ヘッド21の下方へと搬送する。このとき、インクジェットプリンタ1は、ベルト本体50の外面50aに形成されたエンコーダ部70を第一、第二のセンサ66a,66bで読み取ることで記録ヘッド21と記録用紙Pとの距離を検出できる。よって、インクジェットプリンタ1は、記録用紙Pの所定の位置に対して記録ヘッド21の複数のノズルからインクを吐出することができる。
【0044】
インクジェットプリンタ1は、通常、第一のエンコーダ60を第一のセンサ66aが読み取るようにしている。
ところで、上述のように、第一のエンコーダ60及び第二のエンコーダ61を構成する第一の磁気記録層60a及び第ニの磁気記録層61aは、磁性層91a,91bを乾燥させることで構成されている。そのため、磁性層91a,91bの乾燥時の熱によって接合部65を構成している第一の溶着部材71及び第二の溶着部材73が凸状に変形してしまう。これにより、第一のエンコーダ60は、接合部65との交差部分において凸状に盛り上がった状態となる。そのため、第一のセンサ66aと第一のエンコーダ60との間の距離が、接合部65との交差部分において変化してしまう(小さくなってしまう)。これにより、センサ66によるエンコーダの読み取り精度が低下する。
【0045】
そこで、本実施形態においては、インクジェットプリンタ1は、第一のセンサ66aの下方に接合部65が接近した場合、第二のセンサ66bにより第二のエンコーダ61の読み取りを開始する。ここで、第二のエンコーダ61は、図2(b)に示したように第一のエンコーダ60における接合部65との交差部分に対向する位置であって、且つ接合部65とは交差しない位置に形成されている。よって、インクジェットプリンタ1は、第一のセンサ66aによる読み取り不良が生じる領域(接合部65との交差部分)において、第二のセンサ66bによって第二のエンコーダ61を代わりに読み取ることでエンコーダ部70の読み取りを良好に行うことができる。
したがって、本実施形態に係る搬送ベルト23によれば、溶着により接合された接合部65に起因するエンコーダ70の読み取り不良の発生を防止できるので、搬送ベルト23の全周に亘ってエンコーダ70を良好に読み取り可能な信頼性の高いインクジェットプリンタ1を提供できる。
【0046】
なお、上記実施形態では、接合部65が搬送ベルト23の回転方向に対して、斜めになるようにベルト本体50に形成された場合について説明したが、図10に示すように略蛇行形状としてもよい。具体的に接合部65は、第一のエンコーダ60側に設けられ、ベルト本体50の幅方向に延びる第一の直線部65aと、該直線部65aと平行に延び、且つ搬送ベルト23の回転方向にずれた位置であって第二のエンコーダ61側に設けられる第二の直線部65bと、これら第一、第二の直線部65a,65bの一方端(搬送ベルト23の中央部側)を接続する接続部65cと、を備えている。このようにすれば、図10に示されるように、第一のエンコーダ60における接合部65との交差部分に対してベルト本体50の幅方向において異なる領域であり、かつ接合部65とは交差しない領域に第ニのエンコーダ60を確実に形成することができる。
【0047】
(第二実施形態)
続いて、搬送ユニット20の第二実施形態について図面を参照しつつ説明する。図11(a)は、本実施形態に係る搬送ユニットの平面図を示すものであり、図11(b)は搬送ベルトの要部を拡大する図である。
【0048】
本実施形態に係る搬送ベルト23は、図11(a)に示されるように、エンコーダ部がベルト本体50の一方の側部のみに設けられた単一のエンコーダ95によって構成されている。エンコーダ95は、図11(b)に示されるように、第一の磁気記録層(第一の記録層)95aと第二の磁気記録層(第二の記録層)95bとが一体に形成されている。エンコーダ95は、搬送ベルト23の全周に亘って形成されている。このように本実施形態においては、第一の磁気記録層95a及び第二の磁気記録層95bを単一のエンコーダ95から構成することで搬送ベルト23の構造が簡略化されている。
【0049】
ベルト本体50は、第一実施形態と同様、接合部65を介して基材51の両端部51a,51bが溶着接合されたものとなっており、搬送ベルト23の回転方向に対して、斜めに接合部65が形成されたものとなっている。また、エンコーダ95の上方には、上記第一の磁気記録層95a及び第二の磁気記録層95bを読み取るためのセンサ90が設けられている。
【0050】
センサ90は、第一の磁気記録層95aを読み取るための第一の読み取り部91と、第二の磁気記録層95bを読み取るための第二の読み取り部92とを含んでいる。
【0051】
エンコーダ95は、第一実施形態と同様、ベルト本体50上に形成された磁性層に磁気書き込みヘッドを用いて磁気を書き込むことで上記第一の磁気記録層95a及び第二の磁気記録層95bが形成されたものとなっている。第一の磁気記録層95aは、エンコーダ95を構成する磁性層の一端側(搬送ベルト23の中央側)に形成されており、第二の磁気記録層95bは、エンコーダ95を構成する磁性層の他端側(搬送ベルト23の端部側)に形成されている。
【0052】
また、第二の磁気記録層95bは、エンコーダ95を構成する磁性層のうち、第一の磁気記録層95aにおける接合部65との交差部分に対してベルト本体50の幅方向において異なる領域であり、かつ接合部65とは交差しない領域に設けられている。なお、本実施形態においては、第一の磁気記録層95a及び第二の磁気記録層95bは、搬送ベルト23の全周に亘って形成されている。
【0053】
ところで、本実施形態においても、図11(b)に示されるように、エンコーダ95が接合部65を跨いだ状態に形成されているため、エンコーダ95における接合部65との交差部分は、センサ90により読み取り不良が生じてしまう。
【0054】
そこで、本実施形態においては、インクジェットプリンタ1は、第一の磁気記録層95aにおける接合部65との交差部分を除く領域(図11(b)中、符号Aで示される領域)では、第一の読み取り部91を用いて第一の磁気記録層95aを読み取る。そして、第一の読み取り部91の下方に接合部65が接近した場合、センサ90は第ニの読み取り部92によって第ニの磁気記録層95bの読み取りを開始する。すなわち、センサ90は、エンコーダ95の読み取りを第一の読み取り部91から第ニの読み取り部92へと切り替える。
【0055】
ここで、第ニの磁気記録層95bは、第一の磁気記録層95aにおける接合部65との交差部分に対向する位置であって、且つ接合部65とは交差しない位置に形成されている。よって、インクジェットプリンタ1は、第一の読み取り部91による第一の磁気記録層95aの読み取り不良が生じる領域(図11(b)中、符号Bで示される領域)において、第二の読み取り部92によって第二の磁気記録層95bを代わりに読み取ることでエンコーダ95の読み取りを良好に行うことができる。
したがって、本実施形態によれば、溶着により接合された接合部65に起因するエンコーダ95の読み取り不良の発生を防止することができる。よって、搬送ベルト23の全周に亘ってエンコーダ95の読み取り可能な信頼性の高いインクジェットプリンタ1を提供できる。
【0056】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記第一実施形態では、第一のエンコーダ60と第二のエンコーダ61とをベルト本体50の両側部に配置した場合について説明したが、第一のエンコーダ60及び第二のエンコーダ61をベルト本体50における一方の側部に沿って配置するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、搬送ベルト23を製造する工程において、搬送ベルト23に磁気エンコーダのパターン23cを形成する例を説明したが、これに限られることは無く、磁気エンコーダの代わりに例えば光反射型のエンコーダのパターンを形成する場合においても、本発明の適用は可能である。このような場合においても、接合部65によらずエンコーダのパターンを良好に読み取ることができる信頼性の高いインクジェットプリンタを提供できる。
【符号の説明】
【0058】
23…搬送ベルト、50…ベルト本体、50a…外面、51…基材、51a,51b…両端部、60…第一のエンコーダ、61…第二のエンコーダ、60a…第一の磁気記録層(第一の記録層)、61a…第二の磁気記録層(第ニの記録層)、65…接合部、70…エンコーダ部、95…エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部を有するベルト本体と、ベルト本体の外面に該ベルト本体の周方向に沿って設けられるエンコーダ部とを備え、被搬送体を搬送するための搬送ベルトにおいて、
前記エンコーダ部は、前記ベルト本体の全周に亘って設けられる第一の記録層と、前記第一の記録層における前記接合部との交差部分に対して前記ベルト本体の幅方向において異なる領域であり、かつ前記接合部とは交差しない領域に少なくとも一部が設けられる第二の記録層と、を含むことを特徴とする搬送ベルト。
【請求項2】
前記エンコーダ部は、前記第一の記録層が設けられた第一のエンコーダと、前記第二の記録層が設けられた第二のエンコーダと、を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項3】
前記第一のエンコーダが前記ベルト本体の一方の側部に沿って設けられ、第二のエンコーダが前記ベルト本体の他方の側部に沿って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の搬送ベルト。
【請求項4】
前記エンコーダ部は、前記第一の記録層及び前記第二の記録層が一体に形成された単一のエンコーダから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項5】
前記接合部は、前記ベルト本体の幅方向に交差する方向に延在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−162757(P2010−162757A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6638(P2009−6638)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】