説明

搬送装置、印刷装置、及び搬送方法

【課題】ロールとして保持されるシート状物の搬送装置であって、逆搬送時におけるロール回転部の駆動モードを素早く適切に選択することのできる搬送装置等を提供する。
【解決手段】シート状物をロールとして保持し、当該ロールからシート状物を搬送路に送り出す駆動ローラーと、前記ロールを回転させて前記送り出したシート状物を巻き戻すロール回転部と、前記駆動ローラー及び前記ロール回転部の駆動を制御する制御部とを有する搬送装置において、前記ロール回転部には、回転速度の異なる複数の駆動モードが備えられ、前記制御部が、前記シート状物を巻き戻す搬送動作を開始する際に、当該搬送動作で搬送すべき前記シート状物の搬送量と前記ロールの径の値に基づいて、前記複数の駆動モードの中から当該搬送動作において使用する駆動モードを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールとして保持されるシート状物の搬送装置等に関し、特に、逆搬送時におけるロール回転部の駆動モードを素早く適切に選択することのできる搬送装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レシートのプリンターなど、ロール状に保持されたシート状の媒体(用紙など)に対して処理を行う装置には、当該媒体を処理位置まで搬送するための装置が備えられる。当該搬送装置には、通常、ロール状に保持された媒体を搬送路に送り出す駆動ローラーと、送り出された媒体を巻き戻すロール回転装置が設けられ、これらの駆動により媒体が正方向及び逆方向に搬送される。
【0003】
かかる搬送装置では、媒体の搬送、消費により、ロール状に保持された媒体の量が、すなわち、そのロールの径が変化するが、これにより、搬送動作に与える負荷等が変わるので、正確な搬送制御を行うためには、このロール径の値を把握して搬送動作に反映させることが必要である。特に、上記ロール回転装置の駆動により逆方向に搬送する場合には、ロール径によって搬送速度が決まるので、その値を正確に把握する必要がある。
【0004】
下記特許文献1では、張力を常に最適に保ち巻き緩みや巻きずれを防ぐ小型の帯状体巻き取り装置において、搬送制御にロール径が用いられることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−147463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上述した搬送装置では、一般に、各駆動部に速度(回転数)の異なる幾つかの駆動モードが用意されており、搬送要求に従って、適宜、相応しいモードが選択されて使用される。
【0007】
かかる駆動モードの選択・決定において、上述した駆動ローラーなどはローラーの径が固定であり、比較的容易に適切な駆動モードを決定できるが、上述したロール回転装置では、常に変化するロール径によって搬送速度が変わり、他の駆動部との相互関係も考慮する必要があることから、その駆動モードの決定は複雑な処理となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ロールとして保持されるシート状物の搬送装置であって、逆搬送時におけるロール回転部の駆動モードを素早く適切に選択することのできる搬送装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、シート状物をロールとして保持し、当該ロールからシート状物を搬送路に送り出す駆動ローラーと、前記ロールを回転させて前記送り出したシート状物を巻き戻すロール回転部と、前記駆動ローラー及び前記ロール回転部の駆動を制御する制御部とを有する搬送装置において、前記ロール回転部には、回転速度の異なる複数の駆動モードが備えられ、前記制御部が、前記シート状物を巻き戻す搬送動作を開始する際に、当該搬送動作で搬送すべき前記シート状物の搬送量と前記
ロールの径の値に基づいて、前記複数の駆動モードの中から当該搬送動作において使用する駆動モードを決定する、ことである。
【0010】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記駆動モードの決定は、選択する前記駆動モードにおいて、前記搬送量が、前記ロール回転部の加速中及び減速中に搬送される前記シート状物の搬送量よりも大きい、という第一条件が満たされるように行われる、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記駆動モードの決定は、更に、選択する前記駆動モードにおいて、前記ロール回転部による搬送速度が前記駆動ローラーによる搬送速度よりも小さい、という第二条件が満たされるように行われる、ことを特徴とする。
【0012】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、前記第一条件及び前記第二条件を満たす前記駆動モードの中で前記回転速度が最大の駆動モードが前記使用する駆動モードとして決定される、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記使用する駆動モードとして決定すべき駆動モードを、前記搬送量及び前記ロールの径の各値に対応付けた駆動モード決定情報を予め保持し、当該駆動モード決定情報を参照して、前記駆動モードの決定がなされる、ことを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、上記いずれかの搬送装置を備え、前記送り出された前記シート状物に印刷を実行する印刷装置、とすることである。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、シート状物をロールとして保持し、当該ロールからシート状物を搬送路に送り出す駆動ローラーと、前記ロールを回転させて前記送り出したシート状物を巻き戻すロール回転部と、前記駆動ローラー及び前記ロール回転部の駆動を制御する制御部とを有する搬送装置における搬送方法において、前記ロール回転部には、回転速度の異なる複数の駆動モードが備えられ、前記制御部が、前記シート状物を巻き戻す搬送動作を開始する際に、当該搬送動作で搬送すべき前記シート状物の搬送量と前記ロールの径の値に基づいて、前記複数の駆動モードの中から当該搬送動作において使用する駆動モードを決定する、ことである。
【0016】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した搬送装置を備える印刷装置の実施の形態例に係る概略構成図である。
【図2】ロール回転部36の駆動モードについて例示した図である。
【図3】駆動モード決定テーブルを例示した図である。
【図4】駆動モード決定処理の手順を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用した搬送装置を備える印刷装置の実施の形態例に係る概略構成図である。図1に示すプリンター2が本実施の形態例に係る印刷装置であり、当該印刷装置
では、ロール25として保持された用紙26を給紙ローラー29(駆動ローラー)及び搬送ローラー30で正方向に搬送して印刷位置で印刷処理を実行する。また、当該印刷装置では、ジョブ間などに逆方向への搬送を実行し、給紙ローラー29とロール回転部36の駆動により用紙26を所定位置まで巻き取る動作を行う。本印刷装置の搬送系は、前記巻き取る動作の際に使用するロール回転部36の駆動モードを、要求される搬送量及びその時点のロール径に基づいて素早く適切に決定しようとするものである。
【0020】
本プリンター2は、図1に示すように、コンピューターなどのホスト装置1からの指示を受けて印刷処理を実行する装置であり、ここでは、一例として、ロール25として保持される用紙26を使用し、用紙26を搬送しながら連続的に印刷を実行する印刷装置である。
【0021】
図1ではプリンター2の概略構成を模式的に示しているが、プリンター2は、印刷内容を制御し用紙26に印刷処理を実行する印刷系と用紙26の搬送を担う搬送系が備えられる。
【0022】
印刷系には、印刷制御部21が設けられ、当該印刷制御部21は、ホスト装置1からの印刷指示を受信し、当該指示に従ってヘッド部23に印刷命令を出すと共に搬送系の搬送制御部22に対して用紙26の搬送要求を出す。ヘッド部23では、当該印刷命令に従ってヘッド部23とプラテン24との間を所定速度で移動する用紙26に対して印刷処理を実行する。
【0023】
搬送系では、図1に示されるように、印刷媒体の格納(保持)場所にロール25として保持される用紙26を、搬送路33に沿って正方向(下流方向)に連続搬送し、印刷済みの部分をカッター34で切断して排紙ローラー32を介してプリンター2から排出する動作を実行する。また、当該搬送動作の後などに、用紙26の先端がヘッド部23よりも上流側の所定位置(頭出し位置)に来るように逆方向(上流方向)への逆搬送動作も実行する。
【0024】
当該搬送系には、それぞれ対応するモーター(27A及び27B)で駆動される給紙ローラー29(上流側ローラー)及び搬送ローラー30(下流側ローラー)が備えられる。当該両ローラーには、それぞれ、用紙26を挟んで対向する位置に従動ローラー(28A及び28B)が配置される。各従動ローラーは、用紙26の面に垂直方向に移動可能であり、上下二つの位置を取ることができる。用紙26と接する下の位置では、用紙26の面に垂直下向きの力が付勢され、各ローラー(29、30)と共に用紙26を挟んで、用紙26の面と垂直な方向の力で用紙26を押さえている。また、用紙26から離間した上の位置では、この用紙26を押さえる力は作用しない。
【0025】
給紙ローラー29は、ロール25として保持される用紙26を搬送路33に供給する機能を有し、減速機を介して伝えられるモーター27Aのトルクによって回転し、従動ローラー28Aと共に押圧する用紙26との間の摩擦力によって用紙26を移動させる。また、当該ローラーは用紙26を逆搬送する際にも用いられる。
【0026】
搬送ローラー30は、給紙ローラー29によって供給された用紙26を印刷位置へ、すなわち、ヘッド部23の位置へ搬送する機能を有し、減速機を介して伝えられるモーター27Bのトルクによって回転し、従動ローラー28Bと共に押圧する用紙26との間の摩擦力によって用紙26を移動させる。
【0027】
また、給紙ローラー29及び搬送ローラー30には、それぞれ、エンコーダー31A及び31Bが設けられ、それらによって検知される値が搬送制御部22へ通知される。各エ
ンコーダーは、一般的に用いられる構造のものであり、上記ローラー29、30自体に、あるいは、その駆動系(駆動輪列)に設けられて、パルス信号を搬送制御部22へ送信し、搬送制御部22は、単位時間当たりに受信するパルス信号数から各ローラーの回転数、そして、各ローラーによる搬送速度を求める。
【0028】
次に、搬送系には、ロール回転部36が備えられる。ロール回転部36は、ロール25として保持される用紙26を回転させ、送り出した用紙26を巻き取る動作を実行する。当該ロール回転部36は、モーター27Cによって駆動され、モーター27Cのトルクを伝達する減速機(駆動輪列)、減速機を介して伝えられる前記トルクによって回転する、ロール紙25の芯内を貫通する軸棒などで構成される。
【0029】
また、ロール回転部36には、モーター27Cの回転数が異なる複数の駆動モードが用意され、搬送動作の際には適切な駆動モードが選択される。なお、駆動モード及びその決定方法の詳細については後述する。
【0030】
また、ロール回転部36にもエンコーダー31Cが設けられ、それらによって検知される値が搬送制御部22へ通知される。具体的な構成、機能は、上述したエンコーダー31A及び31Bと同様である。
【0031】
次に、図1に示す搬送制御部22は、搬送系を制御する部分であり、印刷制御部21からの指示に基づいて用紙26の上記搬送動作を制御する。特に、給紙ローラー29、搬送ローラー30及びロール回転部36の駆動・停止を制御して正方向及び逆方向への用紙26の良好な搬送を実行させる。
【0032】
また、搬送制御部22は、逆方向への搬送時にロール回転部36の駆動モードを決定する処理を行うが、当該処理に本プリンター2の特徴があり、その具体的な内容については、後述する。また、搬送制御部22は、適宜、ロール25の径の値を求める処理を実行し、最新のロール径をロール径情報として保持する。ロール径を求める処理には、正方向への搬送処理時における給紙ローラー29及びロール25の回転数から算出する方法などを用いることができる。
【0033】
搬送制御部22は、図示していないが、CPU、ROM、RAM、NVRAM(不揮発性メモリ)等で構成されており、搬送制御部22が実行する上記処理は、主にROMに格納されるプログラムに従ってCPUが動作することによって実行される。
【0034】
上記RAMには、処理に必要な各データが一時的に保持され、給紙ローラー29、搬送ローラー30及びロール回転部36等の駆動・停止制御に必要な上記各エンコーダー31の検出値等が記憶される。また、ロール25の上記ロール径情報が、上記RAM又は上記NVRAMに記憶される。さらに、後述する駆動モード決定テーブル(駆動モード決定情報)が、上記ROMに記憶される。
【0035】
なお、給紙ローラー29、搬送ローラー30、ロール回転部36及び搬送制御部22を含む当該搬送系が本発明の搬送装置に相当する。
【0036】
以上説明したような構成を有する本プリンター2では、前述の通り、用紙26を、印刷時には正方向へ搬送し、また、巻き戻し時には逆方向に搬送するが、各搬送動作で使用する駆動部の駆動モードの決定方法、特に、逆方向への搬送時におけるロール回転部36の駆動モードの決定方法に特徴があり、以下、その具体的な内容を説明する。
【0037】
まず、ロール回転部36に備えられる複数の駆動モードについて説明する。図2は、ロ
ール回転部36の駆動モードについて例示した図である。図2に示すように、ここでは、モーター27Cの回転数が異なる8つの駆動モード(RS1−RS8)が用意され、RS1のモードが最も回転速度が速く、順次、番号が大きくなるにつれてその速度が遅くなる。
【0038】
また、各駆動モードには、図2に示されるように、「加減速距離」が定められる。この「加減速距離」は、各モードに定められた上記回転速度に達するまでに必要な回転距離(回転数)、すなわち、加速中の回転距離(回転数)と、上記回転速度から停止するまでに必要な回転距離(回転数)、すなわち、減速中の回転距離(回転数)を足したものであり、ここでは、エンコーダー31Cで検知されるエンコーダーパルス数(EP)で表わしている。
【0039】
従って、各駆動モードを用いる場合には、そのモードに定められた回転速度で使用するために、少なくとも、上記「加減速距離」以上の回転(搬送)を必要とする。その駆動(使用)条件が、図2に示す「駆動可能距離」であり、同様に、ここでは、エンコーダー31Cのエンコーダーパルス数(EP)で表わされている。
【0040】
よって、ロール回転部36の駆動モード決定では、まず、その搬送動作における搬送量がこの「駆動可能距離」を満たすか否かをチェックする必要がある。逆方向への搬送動作を開始する際には、印刷制御部21から搬送すべき距離(搬送量、例えば、mm)の情報を得るので、その値を、上記ロール径情報から得られるその時点のロール径の値を用いて、上記エンコーダーパルス数(EP)に変換することにより、その値が上記「駆動可能距離」以上であるか判断することが可能である。この点が、すなわち、搬送量が「駆動可能距離」以上であることが、駆動モード決定の一つ目の条件である。
【0041】
駆動モード決定における二つ目の条件は、ロール回転部36による搬送速度が給紙ローラー29による搬送速度よりも小さくなるようにする、ということである。本プリンター2においては、逆方向への搬送時に給紙ローラー29も駆動するため、ロール回転部36による搬送速度の方が大きくなった場合には、給紙ローラー29において用紙26とローラー間ですべりが発生するなど好ましくなく、また、本プリンター2では、給紙ローラー29とロール25間で用紙26に弛みを付けて搬送するので、上記条件が必要となる。
【0042】
上述の通り、その時点のロール径の値が得られるので、ロール回転部36の各駆動モードによる搬送速度は算出され得、また、印刷制御部21からの各駆動命令(指示)に対して先に給紙ローラー29の搬送速度が決定されるので、当該条件を判断することができる。
【0043】
本プリンター2では、上記二つの条件を満たす駆動モードのうち、回転速度が最大のものを使用する駆動モードとして決定(選択)する。
【0044】
以上がロール回転部36の駆動モードを決定するための原理であるが、具体的には、以下のような方法で決定処理を行う。
【0045】
一つ目の方法は、予め上記駆動モード決定テーブルなるものを用意して記憶しておき、ロール回転部36の駆動モードを決定する際に当該テーブルを参照する方法である。図2に例示した駆動モードに係る仕様は予め定められているものであり、また、搬送量が与えられれば給紙ローラー29による搬送速度は装置仕様により決定し得るので、搬送量とロール25の径の値が得られれば、上述した二つの条件が判断でき、上記原理に基づいて使用すべき駆動モードを決定することができる。従って、予め、搬送量及びロール径の各値に対して駆動モードを決定しておくことができ、その予め決定しておいた、搬送量及びロ
ール径と選択すべき駆動モードとの関係を収めたテーブルが駆動モード決定テーブルである。
【0046】
図3は、駆動モード決定テーブルを例示した図である。図3に示す例では、例えば、搬送要求の搬送量Lが200(mm)であり、その時点のロール径Dが3.0(inch)である場合には、搬送制御部22は、当該テーブルを参照して、駆動モードRS1を使用するモードとして決定する。また、例えば、搬送量Lが100(mm)であり、その時点のロール径Dが6.2(inch)である場合には、駆動モードRS7が選択される。なお、搬送量L及びロール径Dが、駆動モード決定テーブルに規定される値の中間値である場合には、その前後の規定値に対して定められている駆動モードから回転速度の遅いモードを選択することで駆動モードを決定することができる。
【0047】
次に、二つ目の方法は、逆方向への駆動要求があった際に、搬送制御部22が上記原理に従って使用するモードを決定する処理を実行する方法である。図4は、当該駆動モード決定処理の手順を例示したフローチャートである。まず、印刷制御部21から逆方向への搬送指示を受けると、搬送制御部22は、当該駆動モード決定処理を開始し、当該指示を受けた搬送動作で搬送すべき搬送量の値と、その時点におけるロール25のロール径の値を取得する(ステップS1)。当該搬送量の値は、上記搬送指示に含まれる内容から取得し、また、当該ロール径の値は、その時点で保持される上述したロール径情報から取得する。
【0048】
次に、搬送制御部22は、ロール回転部36の駆動モードの初期値としてRS1を選択する(ステップS2)。すなわち、回転速度が最も速いモードを選択する。
【0049】
次に、搬送制御部22は、上記取得した搬送量を、上述したエンコーダー31Cのエンコーダーパルス数(EP)に変換する(ステップS3)。当該変換は、上記取得したその時点のロール径を用いて搬送量(長さ)をロール25の回転数に変換し、その回転数を装置仕様により予め定められた定数で上記EP値に変換する、ことで行う。
【0050】
その後、搬送制御部22は、上記一つ目の条件についてチェックする。すなわち、求めたEP値の搬送量が、現在選択されている駆動モードにおける上記EP値の駆動可能距離以上であるか否かをチェックする(ステップS4)。
【0051】
チェックの結果、搬送量が駆動可能距離以上でなければ(ステップS4のNo)、搬送制御部22は、一つ下の(回転速度が遅い)駆動モードを選択して(ステップS5)、再度上記チェック(S4)を実行する。すなわち、駆動モードRS1が選択されている状態で上記条件が満たされなければ駆動モードRS2が選択されて、処理がステップS4に戻る。
【0052】
そして、上記チェックにおいて、搬送量が駆動可能距離以上である(ステップS4のYes)、という結果を得られるまで、すなわち、上記一つ目の条件を満たすまで、駆動モードが下げられる。
【0053】
搬送量が駆動可能距離以上であれば(ステップS4のYes)、搬送制御部22は、上記二つ目の条件を判断すべく、当該搬送指示に対して決定された、給紙ローラー29による搬送速度(Vk)を取得する(ステップS6)。
【0054】
次に、搬送制御部22は、ロール回転部36による搬送速度(Vr)を算出する(ステップS7)。具体的には、この時点で選択されている駆動モードのモーター回転数(回転速度)に、装置仕様により予め定められた定数をかけて、ロール25の回転速度を求め、
その値と上記取得したロール径によって搬送速度(Vr)を算出する。
【0055】
その後、搬送制御部22は、上記取得した搬送速度(Vk)と上記算出した搬送速度(Vr)を比較し、搬送速度(Vk)が搬送速度(Vr)よりも大きいか否かをチェックする(ステップS8)。すなわち、上記二つ目の条件を判断する。
【0056】
上記チェックの結果、搬送速度(Vk)が搬送速度(Vr)よりも大きくなければ(ステップS8のNo)、搬送制御部22は、一つ下の(回転速度が遅い)駆動モードを選択し(ステップS9)、処理がステップS7に戻る。そして、搬送速度(Vk)が搬送速度(Vr)よりも大きくなる(ステップS8のYes)まで、ステップS9及びS7の処理が繰り返される。すなわち、上記二つ目の条件を満たすまで、駆動モードが下げられる。
【0057】
上記チェックの結果、搬送速度(Vk)が搬送速度(Vr)よりも大きければ(ステップS8のYes)、搬送制御部22は、その時点で選択されている駆動モードを、当該搬送動作で使用する駆動モードとして決定する(ステップS10)。
【0058】
このようにして駆動モード決定処理が終了すると、決定された駆動モードでのロール回転部36の駆動が開始される。
【0059】
なお、上述の説明では、駆動モードを決定するために、ロール回転部36による搬送速度(Vr)の速度制限として、上記二つ目の条件、すなわち、給紙ローラー29による搬送速度(Vk)よりも小さいという条件を用いたが、予め許容される速度範囲を決定しておき、搬送速度(Vr)がその速度範囲内に入るという条件を、上記二つ目の条件の代わりに、あるいは、上記二つ目の条件に加えて用いるようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態例に係るプリンター2では、用紙26の逆搬送時に駆動するロール回転部36の駆動モードを、その時点におけるロール径を反映させた正しい情報に基づき、各種必要条件を満たすように決定するので、不具合を起こすことなく逆搬送時における制御を適切に実行することができる。
【0061】
特に、上述した駆動モード決定テーブルを予め保持しておく方法を採用すれば、この駆動モードの決定を素早く行うことができ、プリンター2のスループットを向上させることができ、かつ、制御における処理負荷を低減させることができる。
【0062】
また、使用する駆動モードによる搬送速度が所定の速度以下になるように制限することによって、紙ジャムなど速度が速くなり過ぎることによる不具合を抑えることができる。
【0063】
また、上記必要条件を満たす駆動モードの中で回転速度の大きいモードが選択されるので、この点によっても、プリンター2のスループットを向上させることができる。
【0064】
なお、本実施の形態例では、印刷媒体が紙であったがシート状の媒体であればこれに限定されることはない。
【0065】
また、本実施の形態例では、搬送装置がプリンターに設けられたが、本発明を適用した搬送装置は、シート状物に機械加工、レーザー加工、液体噴射加工などの各種処理を施す装置に設けて利用することができる。
【0066】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0067】
1 ホスト装置、 2 プリンター、 21 印刷制御部、 22 搬送制御部、 23 ヘッド部、 24 プラテン、 25 ロール、 26 用紙、 27A、B、C モーター、 28A、B 従動ローラー、 29 給紙ローラー、 30 搬送ローラー、 31A、B、C エンコーダー、 32 排紙ローラー、 33 搬送路、 34 カッター、 36 ロール回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物をロールとして保持し、当該ロールからシート状物を搬送路に送り出す駆動ローラーと、前記ロールを回転させて前記送り出したシート状物を巻き戻すロール回転部と、前記駆動ローラー及び前記ロール回転部の駆動を制御する制御部とを有する搬送装置であって、
前記ロール回転部には、回転速度の異なる複数の駆動モードが備えられ、
前記制御部は、前記シート状物を巻き戻す搬送動作を開始する際に、当該搬送動作で搬送すべき前記シート状物の搬送量と前記ロールの径の値に基づいて、前記複数の駆動モードの中から当該搬送動作において使用する駆動モードを決定する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動モードの決定は、選択する前記駆動モードにおいて、前記搬送量が、前記ロール回転部の加速中及び減速中に搬送される前記シート状物の搬送量よりも大きい、という第一条件が満たされるように行われる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記駆動モードの決定は、更に、選択する前記駆動モードにおいて、前記ロール回転部による搬送速度が前記駆動ローラーによる搬送速度よりも小さい、という第二条件が満たされるように行われる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第一条件及び前記第二条件を満たす前記駆動モードの中で前記回転速度が最大の駆動モードが前記使用する駆動モードとして決定される
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記使用する駆動モードとして決定すべき駆動モードを、前記搬送量及び前記ロールの径の各値に対応付けた駆動モード決定情報を予め保持し、当該駆動モード決定情報を参照して、前記駆動モードの決定がなされる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の搬送装置を備え、前記送り出された前記シート状物に印刷を実行する印刷装置。
【請求項7】
シート状物をロールとして保持し、当該ロールからシート状物を搬送路に送り出す駆動ローラーと、前記ロールを回転させて前記送り出したシート状物を巻き戻すロール回転部と、前記駆動ローラー及び前記ロール回転部の駆動を制御する制御部とを有する搬送装置における搬送方法であって、
前記ロール回転部には、回転速度の異なる複数の駆動モードが備えられ、
前記制御部が、前記シート状物を巻き戻す搬送動作を開始する際に、当該搬送動作で搬送すべき前記シート状物の搬送量と前記ロールの径の値に基づいて、前記複数の駆動モードの中から当該搬送動作において使用する駆動モードを決定する
ことを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40017(P2013−40017A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178262(P2011−178262)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】