説明

搬送装置、及び、画像形成装置

【課題】比較的簡易な構成で、搬送ローラ対による記録媒体の搬送力が低下することなく、記録媒体が搬送ローラ対から送出されたときに生じる衝突音が低減される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送ローラ対18の上流側において搬送経路に向けて突出するように設置されるとともに、記録媒体Pに押動されて搬送経路に突出する位置から退避する位置に移動するレバー部材31が設置されている。また、レバー部材31の動作に連動するとともに、可動ローラ19に接触する受部40を備えたリンク機構35が設置されている。そして、リンク機構35の受部35は、搬送ローラ対18から記録媒体Pが送出されたときに、可動ローラ19が固定ローラ10に当接する前に可動ローラ19に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体を搬送する搬送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関し、特に、固定ローラと可動ローラとからなる搬送ローラ対が設置された搬送装置、及び、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、記録媒体を搬送するための搬送装置において、回転軸部が固定された固定ローラと、固定ローラに対して離間する方向に移動可能に当接する可動ローラと、からなる搬送ローラ対を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1等において、固定ローラ(駆動ロール)は、その回転軸部が軸受を介して装置の固定位置に保持されている。また、可動ローラ(圧接従動ロール)は、当接位置と離間位置との間を移動できるように、軸受を介して装置に保持されている。そして、このような固定ローラと可動ローラとで構成された搬送ローラ対を用いることで、厚みのある記録媒体が通紙される場合であっても、搬送ローラ対が記録媒体を挟持した状態で記録媒体の搬送方向に沿って回転して、記録媒体が搬送方向にスムーズに搬送されることになる。
【0004】
一方、特許文献1には、搬送ローラ対によって記録媒体の後端が押し出される力を軽減することを目的として、可動ローラ(圧接従動ロール)にダンパ作用を生じさせる技術が開示されている。
また、特許文献2には、記録媒体が搬送ローラ対(レジストローラ対)に衝突する際の衝突音を低減することを目的として、搬送ローラ対の上流側の位置に、ソレノイドの動作によって移動する加圧アームに連動して記録媒体に対して接離する押動ローラを設置する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の搬送装置は、記録媒体が搬送ローラ対から送出された瞬間(抜け出した瞬間)に、固定ローラに対して離間状態にあった可動ローラが勢い良く当接してしまい、衝突音が生じてしまっていた。
これに対して、特許文献1のものは、可動ローラにダンパ作用が生じるように構成しているために、記録媒体が搬送ローラ対から送出された瞬間に可動ローラが固定ローラに比較的弱い力で当接して、衝撃音が低減される効果がある程度期待できる。しかし、記録媒体が搬送ローラ対に送入される瞬間(喰い込み始めるとき)にも可動ローラにダンパ作用が生じてしまい、搬送ローラ対による記録媒体の搬送力がかえって低下してしまう可能性があった。
また、上述した衝突音を低減するために、特許文献2の技術を応用して、ソレノイドの動作によって移動する加圧アームに連動して可動ローラの接離動作をおこなうことで、可動ローラが当接ローラに当接する際のスピードを調整する方策が考えられる。しかし、その場合、装置の制御が複雑化してしまったり、装置自体が高コスト化・大型化してしまったりする可能性があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、比較的簡易な構成で、搬送ローラ対による記録媒体の搬送力が低下することなく、記録媒体が搬送ローラ対から送出されたときに生じる衝突音が低減される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1記載の発明にかかる搬送装置は、記録媒体を搬送する搬送装置であって、記録媒体を挟持した状態で記録媒体の搬送方向に沿うように回転して当該記録媒体を搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対に対して記録媒体の搬送方向上流側において搬送経路に向けて突出するように設置されるとともに、記録媒体の搬送にともない当該記録媒体に押動されて搬送経路に突出する位置から退避する位置に移動するレバー部材と、前記レバー部材を前記突出する位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記搬送ローラ対は、回転軸部の位置が固定された固定ローラと、前記固定ローラとの間に記録媒体が送入されたときに当該記録媒体に押動されて前記固定ローラから離間するように、前記固定ローラに対して当接する位置と離間する位置との間を移動可能に保持された可動ローラと、を具備し、前記レバー部材の動作に連動するように前記レバー部材が連結されるとともに、前記可動ローラに直接的又は間接的に接触する受部を具備したリンク機構をさらに備え、前記リンク機構の前記受部は、前記搬送ローラ対から記録媒体が送出されたときに、前記可動ローラが前記固定ローラに当接する前に前記可動ローラに接触するものである。
【0008】
また、請求項2記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記リンク機構の前記受部は、記録媒体が前記レバー部材に接触した状態であって前記搬送ローラ対に送入される前の状態のときに、前記固定ローラに当接した状態の前記可動ローラに対して離間又は軽接触する位置に移動するものである。
【0009】
また、請求項3記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記付勢部材は、前記レバー部材を前記突出する位置に向けて付勢する付勢力が、記録媒体が前記レバー部材を押動する押動力よりも小さくなるように形成されたものである。
【0010】
また、請求項4記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記可動ローラが前記固定ローラに当接する加圧力が、前記リンク機構の前記受部が前記可動ローラに接触する接触力よりも大きくなるように形成されたものである。
【0011】
また、請求項5記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記レバー部材又は前記リンク機構の移動を検知する検知手段をさらに備えたものである。
【0012】
また、請求項6記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記リンク機構の前記受部は、板バネ、圧縮バネ、ゴム、ダンパのいずれかで形成されたものである。
【0013】
また、請求項7記載の発明にかかる搬送装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記リンク機構は、その一部に板バネが設置されたものである。
【0014】
また、この発明の請求項8記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の搬送装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、搬送ローラ対から記録媒体が送出されたときに、搬送ローラ対の上流側に設置されたレバー部材の動作に連動するリンク機構の受部が、可動ローラが固定ローラに当接する前に可動ローラに接触するように構成している。これにより、比較的簡易な構成で、搬送ローラ対による記録媒体の搬送力が低下することなく、記録媒体が搬送ローラ対から送出されたときに生じる衝突音が低減される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】搬送装置の近傍を示す図である。
【図3】(A)記録媒体が送入される前の搬送ローラ対の状態と、(B)記録媒体を挟持した搬送ローラ対の状態と、を示す図である。
【図4】搬送装置を示す構成図である。
【図5】可動ローラの回転軸部の近傍を示す斜視図である。
【図6】搬送装置の動作を示す図である。
【図7】図6に続く搬送装置の動作を示す図である。
【図8】別形態の搬送装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0018】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機の装置本体、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写部(画像形成部)、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、11〜13は転写紙等の記録媒体Pが収納された給紙部、18は転写部7に向けて記録媒体Pを搬送する搬送ローラ対(レジストローラ対)、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、を示す。
【0019】
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0020】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、画像形成部としての転写部7で、レジストローラ対18により搬送された記録媒体P上に転写される。
【0021】
一方、転写部7(画像形成部)に搬送される記録媒体Pは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部11〜13のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、最上段の給紙部11が選択されたものとする。)。
そして、給紙部11に収納された記録媒体Pの最上方の1枚が、搬送経路Kの位置に向けて搬送される。
【0022】
その後、記録媒体Pは、複数の搬送ローラが配設された搬送経路Kを通過して、レジストローラ対18の位置に達する。そして、レジストローラ対18(搬送ローラ対)の位置に達した記録媒体Pは、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。
【0023】
そして、転写工程後の記録媒体Pは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達した記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着された記録媒体Pは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0024】
次に、図2〜図7にて、本実施の形態において特徴的な搬送装置14について詳述する。
図2を参照して、搬送装置14は、記録媒体Pを搬送経路に沿って搬送する装置であって、複数の搬送ローラ対(図2では、2つの搬送ローラ対15、18を図示している。)が設置されている。これらの搬送ローラ対15、18は、いずれも、記録媒体Pを挟持した状態で記録媒体Pの搬送方向に沿うように回転して記録媒体Pを搬送する。具体的に、搬送ローラ対15、18のニップに記録媒体Pを挟持した状態で、上方のローラ16、19が図2の時計方向に回転して、下方のローラ17、20が図2の反時計方向に回転することになる。
【0025】
また、搬送ローラ対15、18は、固定ローラ17、20と、図2の両矢印方向に可動する可動ローラ16、19と、で構成されている。
これらの搬送ローラ対15、18は、搬送タイミングを計って駆動が開始されるか否かを除き、ほぼ同様に構成され動作するため、以下、レジストローラ対として機能する一方の搬送ローラ対18についてのみ説明をおこなう。
【0026】
搬送ローラ対18は、回転軸部20aの位置が固定された固定ローラ20と、固定ローラ20に対して当接する位置と離間する位置との間を移動可能に保持された可動ローラ19と、からなる。
図示は省略するが、固定ローラ20は、その回転軸方向(幅方向)の両端の回転軸部20aが、軸受を介して搬送装置14の側板に回転可能に保持されている。また、固定ローラ20の片側の回転軸部20aには、駆動モータが接続されている。そして、駆動モータによって固定ローラ20が回転駆動されることにより、固定ローラ20との摩擦抵抗によって可動ローラ19が従動回転することになる。
また、図3及び図5を参照して、可動ローラ19は、その回転軸方向(幅方向)の両端の回転軸部19aが、長円状の保持部材50を介して搬送装置14の側板に上下方向に移動可能に保持されている。そして、図3(A)及び図3(B)を参照して、可動ローラ19は、固定ローラ20との間に記録媒体Pが送入されたときに、その記録媒体Pに押動されて固定ローラ20から離間することになる。すなわち、可動ローラ20は、固定ローラに対して当接する位置(図3(A)の位置である。)と離間する位置(図3(B)の位置である。)との間を移動することになる。
ここで、図5等を参照して、保持部材50は、可動ローラ19の回転軸部19aが挿設される長穴部が形成されていて、搬送装置14(装置本体1)の側板に固定・保持されている。これにより、可動ローラ19は、保持部材50の長穴の長手方向に沿って移動することになる。そして、可動ローラ19の回転軸部19aが保持部材50の長穴の下端に当接するとき、可動ローラ19が固定ローラ20に当接(圧接)することになる。
なお、本実施の形態では、可動ローラ19が自重によって固定ローラ20に当接するように構成したが、可動ローラ19の両端の回転軸部19aに圧縮スプリングを設置して、可動ローラ19がスプリング力によって固定ローラ20に当接するように構成することもできる。
【0027】
ここで、図4を参照して、本実施の形態における搬送装置14には、レバー部材31、付勢部材としての引張スプリング32、リンク機構35等が設置されている。
レバー部材31は、搬送ローラ対18に対して上流側(記録媒体Pの搬送方向上流側である。)において搬送経路に向けて突出するように設置されている。そして、レバー部材31は、記録媒体Pの搬送にともない記録媒体Pに押動されて搬送経路に突出する位置から退避する位置に移動する(図6(A)、(B)等を参照できる。)。なお、レバー部材31は、後述するリンク機構35に接続されている。
付勢部材としての引張スプリング32は、レバー部材31を突出する位置(搬送経路に向けて突出する位置である。)に向けて付勢するように設置されている。具体的に、引張スプリング32は、その一端がレバー部材31の中央部に接続されていて、その他端が搬送装置14の筐体に接続されていて、レバー部材31を図4の右方に付勢している。
【0028】
リンク機構35は、レバー部材31の動作に連動するように、レバー部材31が一端側に連結されている。さらに、リンク機構35は、その他端側に、可動ローラ19の回転軸部19aに接触する受部40が設けられている(図5をも参照できる)。
詳しくは、リンク機構35は、レバー部材31が第1連結部H1に連結された第1アーム36、第1アーム36が第2連結部H2に連結された第2アーム37、第2アーム37が第3連結部H3に連結された第3アーム38、第3アーム38に連結された受部40、等で構成されている。それぞれの連結部H1〜H3は、それぞれのアーム36〜38の長手方向に沿うように形成された長穴に沿って移動可能に構成されている。また、第2アーム37は、筐体に固定保持された支軸37aを中心にして回動可能に構成されている。さらに、第3アーム38も、筐体に固定保持された支軸38aを中心にして回動可能に構成されている。
【0029】
そして、このように構成されたリンク機構35によって、搬送方向に移動する記録媒体Pによってレバー部材31が退避位置(記録媒体Pの搬送を妨げない位置である。)に移動したときに、各アーム36〜38が図4の矢印方向に回動して、受部40が下方に移動することになる。また、その記録媒体Pがレバー部材31の位置を通過してレバー部材31が退避位置から突出位置(記録媒体Pの搬送経路に突出する位置である。)に移動したときに、各アーム36〜38が図4の矢印方向に対して逆方向に回動して、受部40が上方に移動することになる。
【0030】
ここで、本実施の形態における搬送装置14は、搬送ローラ対18から記録媒体Pが送出されたときに(搬送ローラ対18から記録媒体Pの後端が抜け出したときに)、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する前(直前のタイミングである。)に、リンク機構35の受部40が可動ローラ19に接触するように構成されている。具体的には、搬送ローラ対18から記録媒体Pが送出されたときに、固定ローラ20に対して離間位置(図3(B)の位置である。)にあった可動ローラ19が当接位置(図3(A)の位置である。)に移動する過程において、当接位置に達する直前のタイミングで、受部40が可動ローラ19に接触するように、レバー部材31やリンク機構35や受部40の位置や形状が設定されている。
【0031】
このような構成によって、記録媒体Pが搬送ローラ対18から送出された瞬間(抜け出した瞬間)に、固定ローラ20に対して離間状態にあった可動ローラ19が勢い良く衝突してしまう前に、可動ローラ19が受部40に当接してその勢いが和らげられるため、記録媒体Pが搬送ローラ対18から送出されたときに生じる衝突音が低減されることになる。
特に、本実施の形態では、可動ローラ19にダンパ作用が生じるように構成していないため、搬送ローラ対18による記録媒体Pの搬送力が低下することはない。また、本実施の形態では、ソレノイド等のエレキ部品を用いずに、メカ的な構成のみで可動ローラ19の動作を制御しているため、装置の制御が複雑化してしまったり、装置自体が高コスト化・大型化してしまったりする不具合が軽減される。
【0032】
また、本実施の形態において、リンク機構35の受部40は、記録媒体Pがレバー部材31に接触した状態であって搬送ローラ対18に送入される前の状態のときに、固定ローラ20に当接した状態の可動ローラ19に対して離間する位置(又は軽接触する位置)に移動する(図6(B)を参照できる)。
このような構成・動作によって、衝突音を低減するためにリンク機構35(受部40)を設置することによって記録媒体Pの搬送性が低下してしまう不具合を抑止することができる。すなわち、リンク機構35の受部40が常に可動ローラ19に接触するように移動するように構成してしまうと、記録媒体Pが搬送ローラ対18に送入されるときにも、受部40によって可動ローラ19を上方に移動する力が作用するために、固定ローラ20と可動ローラ19とによって記録媒体Pを挟み込む力が低下してしまい、記録媒体Pに対する搬送ローラ対18の搬送力が低下してしまう。これに対して、本実施の形態では、記録媒体Pが搬送ローラ対18に送入される直前に、受部40が可動ローラ19から離間するため、受部40によって可動ローラ19を上方に移動する力が作用せずに、固定ローラ20と可動ローラ19とによって記録媒体Pを挟み込む力が確保されて、記録媒体Pに対する搬送ローラ対18の搬送力が良好に維持されることになる。
【0033】
さらに、受部40は、記録媒体Pがレバー部材31との接触が解除された状態であって搬送ローラ対18に挟持された状態であるときに、固定ローラ20から離間した状態の可動ローラ19に対して近接する位置(又は、軽接触する位置)に移動する(図7(A)を参照できる)。
これにより、記録媒体Pが搬送ローラ対18から送出されたときに生じる衝突音を低減する効果が確実に発揮されることになる。
【0034】
以下、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)を用いて、搬送装置14における、レバー部材31、受部40(リンク機構35)、可動ローラ19の動作について詳述する。なお、図6、図7において、リンク機構35の内部(アーム36〜38)の図示は省略している。
まず、図6(A)に示すように、搬送経路に沿って移動する記録媒体Pが、レバー部材31に対して上流側に位置しているときには、レバー部材31や受部40や可動ローラ19はホームポジションに位置している。すなわち、レバー部材31は引張スプリング32に付勢されて搬送経路に突出する位置(突出位置)にあり、可動ローラ19(回転軸部19a)は保持部材50に当接していて、受部40も可動ローラ19(回転軸部19a)に当接している。
その後、図6(B)に示すように、記録媒体Pがレバー部材31の位置に達して、レバー部材31が記録媒体Pによって押動されると、レバー部材31は搬送経路から退避する退避位置に移動する。このとき、受部40は、可動ローラ19(回転軸部19a)から離間する位置に移動する(矢印で示す下方への移動である。)。これに対して、可動ローラ19(回転軸部19a)は、保持部材50に当接した状態のままである。そして、この状態で、先に説明したように、搬送ローラ対18のニップに記録媒体Pが送入(挟持)されて、記録媒体Pの良好な搬送性が維持されることになる。
その後、図6(C)に示すように、記録媒体Pが搬送ローラ対18に挟持されると(ニップに入り込むと)、記録媒体Pの厚さに応じて可動ローラ19が上方に移動することになる。このとき、可動ローラ19(回転軸部19a)は、保持部材50から離間した状態になる。これに対して、受部40は、可動ローラ19(回転軸部19a)から離間した位置に移動したままである。
【0035】
その後、図7(A)に示すように、記録媒体Pの後端がレバー部材31の位置を通過すると、レバー部材31は、記録媒体Pによる押動が解除された状態になって、引張スプリング32によって付勢されて搬送経路に突出する位置に向けて移動する。このとき、受部40は、レバー部材31(リンク機構35)の動作にともない上方に移動するが、そのとき可動ローラ19(回転軸部19a)も上方に移動したままの状態であるため、ホームポジション(図6(A)の位置である。)に対してやや上方に位置することになる。したがって、レバー部材31も、引張スプリング32によって付勢されて、ホームポジション(図6(A)の位置である。)に対してやや右方に位置することになる。
その後、図7(B)に示すように、記録媒体Pの後端が搬送ローラ対18のニップ位置を通過すると(送出されると)、記録媒体Pによって可動ローラ19を上方に押し出す力が除去されて、可動ローラ19が下方に移動(自重落下)することになる。このとき、上述したように、受部40がホームポジションよりも上方に位置しているため、可動ローラ19は、保持部材50(固定ローラ20)に当接する前に、受部40に接触することになる。そのため、可動ローラ19が固定ローラ20に向けて衝突する力が緩衝されて、それによって生じる衝突音も低減される。
最後に、図7(C)に示すように、受部40が可動ローラ19の重量によって下方に押し下げられてホームポジションの位置に戻される。このとき、レバー部材31も、引張スプリング32の付勢力に抗するように、ホームポジションの位置に戻される。また、可動ローラ19も、ホームポジション(回転軸部19aが保持部材50に当接して、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する位置である。)に戻される。
なお、本実施の形態では、記録媒体Pが図7(A)の位置にあるとき、受部40が可動ローラ19に近接する位置に移動するように設定したが、受部40が可動ローラ19に軽接触する位置に移動するように設定することもできる。その場合には、受部40によって衝突音を低減する効果(可動ローラ19の落下エネルギーを低減する効果)がさらに発揮されることになる。
【0036】
ここで、上述した搬送装置14の動作をスムーズにおこなうために、引張スプリング32(付勢部材)は、レバー部材31を突出位置に向けて付勢する付勢力が、記録媒体Pがレバー部材31を押動する押動力よりも小さくなるように形成されている。さらに、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する加圧力(本実施の形態では可動ローラ19の自重による加圧力である。)が、リンク機構35の受部40が可動ローラ19に接触する接触力よりも大きくなるように形成されている。
詳しくは、第1に、記録媒体Pの推力(搬送力)が、レバー部材31を押動する力よりも大きくなるように設定している。第2に、レバー部材31を押動する力が、レバー部材31をホームポジションに向けて付勢する引張スプリング32の付勢力よりも大きくなるように設定している。第3に、レバー部材31をホームポジションに向けて付勢する引張スプリング32の付勢力がリンク機構35を介して受部40を上昇させる力が、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する加圧力よりも小さくなるように設定している。したがって、記録媒体Pが搬送ローラ対18から送出されたときに、保持部材50が可動ローラ19から受ける力(可動ローラ19が固定ローラ20に衝突する力である。)は、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する加圧力から、受部40を上昇させる力を差し引いたものになり、衝撃音を低減することができる。
【0037】
また、本実施の形態では、上述したリンク機構35の動作をスムーズにおこなうために、第2アーム37において、第1アーム36との連結部H2から支軸37aまでの長さ(支点から作用点までの長さ)を、第3アーム38との連結部H3から支軸37aまでの長さ(支点から力点までの長さ)よりも長く設定している。具体的には、前者と後者との比率を5:1に設定している。
同様に、第3アーム38において、第2アーム37との連結部H3から支軸38aまでの長さ(支点から作用点までの長さ)を、受部40との連結部から支軸38aまでの長さ(支点から力点までの長さ)よりも長く設定している。具体的には、前者と後者との比率を5:1に設定している。
【0038】
なお、本実施の形態における搬送装置14において、上述した衝突音を低減する効果をより確実にするために、図7(B)の状態において可動ローラ19が受部40に接触する際の衝撃力を吸収又は減衰させる材料で、受部40を形成することが好ましい。具体的には、受部40は、板バネ、圧縮バネ、ゴム、ダンパのいずれかで形成することが好ましい。
また、同じ目的から、リンク機構35自体に、可動ローラ19が受部40に接触する際の衝撃力を吸収又は減衰させる機能を持たせることもできる。具体的には、リンク機構35の一部(例えば、アーム36〜38である。)に板バネを設置することができる。
【0039】
また、本実施の形態における搬送装置14において、レバー部材31又はリンク機構35の移動を検知する検知手段をさらに設置することができる。
具体的に、図8に示すように、レバー部材31の回動範囲内に、検知手段としてフォトセンサ60を設置する。そして、図8(A)に示すように記録媒体Pがレバー部材31の位置に達していない状態(レバー部材31がフォトセンサ60の位置に達していない状態)と、図8(B)に示すように記録媒体Pがレバー部材31の位置に達した状態(レバー部材31がフォトセンサ60の位置に達している状態)と、をフォトセンサ60によって光学的に検知する。
このような構成により、フォトセンサ60(検知手段)が記録媒体Pの通過タイミングを検知する紙位置センサとして機能して、レバー部材31がそのための部材(検知フィラー)としても機能することになる。なお、図8では、フォトセンサ60(検知手段)をレバー部材31の回動範囲に設置したが、フォトセンサ60(検知手段)をアーム36〜38の回動範囲に設置してリンク機構35の動作を検知するように構成することもできる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態においては、搬送ローラ対18から記録媒体Pが送出されたときに、搬送ローラ対18の上流側に設置されたレバー部材31の動作に連動するリンク機構35の受部40が、可動ローラ19が固定ローラ20に当接する前に可動ローラ19に接触するように構成している。これにより、比較的簡易な構成で、搬送ローラ対18による記録媒体Pの搬送力が低下することなく、記録媒体Pが搬送ローラ対18から送出されたときに生じる衝突音を低減することができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される搬送装置14に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される搬送装置14に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置である。)に設置される搬送装置であって、固定ローラと可動ローラとからなる搬送ローラ対が設置された搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、レジストローラ対としての搬送ローラ対18が設置された搬送装置14に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の位置に設置された搬送装置であっても、固定ローラと可動ローラとからなる搬送ローラ対が設置された搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、受部40が直接的に可動ローラ19に接触するように構成したが、受部40が軸受等を介して間接的に可動ローラ19に接触するように構成することもできる。
また、本実施の形態において、保持部材50を複数の部材で構成することもできる。具体的に、例えば、保持部材50を、長穴を有する主部材と、長穴に沿って移動するとともに可動ローラ19の軸部19aが回転可能に保持される中継部材と、で構成することもできる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
14 搬送装置、
15 搬送ローラ対、
18 搬送ローラ対(レジストローラ対)、
19 可動ローラ、 19a 回転軸部、
20 固定ローラ、 20a 回転軸部、
31 レバー部材、
32 引張スプリング(付勢部材)、
35 リンク機構、
36 第1アーム、 37 第2アーム、 38 第3アーム、
40 受部、
50 保持部材、
60 フォトセンサ(検知手段)、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開平8−26519号公報
【特許文献2】特開2009−137677号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送装置であって、
記録媒体を挟持した状態で記録媒体の搬送方向に沿うように回転して当該記録媒体を搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対に対して記録媒体の搬送方向上流側において搬送経路に向けて突出するように設置されるとともに、記録媒体の搬送にともない当該記録媒体に押動されて搬送経路に突出する位置から退避する位置に移動するレバー部材と、
前記レバー部材を前記突出する位置に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記搬送ローラ対は、
回転軸部の位置が固定された固定ローラと、
前記固定ローラとの間に記録媒体が送入されたときに当該記録媒体に押動されて前記固定ローラから離間するように、前記固定ローラに対して当接する位置と離間する位置との間を移動可能に保持された可動ローラと、
を具備し、
前記レバー部材の動作に連動するように前記レバー部材が連結されるとともに、前記可動ローラに直接的又は間接的に接触する受部を具備したリンク機構をさらに備え、
前記リンク機構の前記受部は、前記搬送ローラ対から記録媒体が送出されたときに、前記可動ローラが前記固定ローラに当接する前に前記可動ローラに接触することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記リンク機構の前記受部は、記録媒体が前記レバー部材に接触した状態であって前記搬送ローラ対に送入される前の状態のときに、前記固定ローラに当接した状態の前記可動ローラに対して離間又は軽接触する位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記レバー部材を前記突出する位置に向けて付勢する付勢力が、記録媒体が前記レバー部材を押動する押動力よりも小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記可動ローラが前記固定ローラに当接する加圧力が、前記リンク機構の前記受部が前記可動ローラに接触する接触力よりも大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記レバー部材又は前記リンク機構の移動を検知する検知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記リンク機構の前記受部は、板バネ、圧縮バネ、ゴム、ダンパのいずれかで形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記リンク機構は、その一部に板バネが設置されたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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