説明

搬送装置及び画像記録装置

【課題】壁面からの搬送媒体の突出長が短くても、当該壁面から突出した搬送媒体を容易に取り出すことができる装置を提供する。
【解決手段】メディアトレイ71が挿入される前側開口13が設けられた前壁17、及び前壁17と対向して配置された後壁16を有する筐体14と、前側開口13から後壁16に向かって延びており、前側開口13から挿入されたメディアトレイ71を案内する直線路65と、直線路65に配置されており、メディアトレイ71を前後方向8に搬送する第1ローラ対58と、後壁16に形成されており、直線路65を案内されるメディアトレイ71を複合機10外に突出させる第2後側開口87と、を備え、後壁16には、第2後側開口87の少なくとも一部を含む領域から前側に空間121が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送媒体を外部から挿入させて、当該搬送媒体を内部において搬送させることができる搬送装置、及び当該搬送装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
剛性の高い搬送媒体、例えば薄板形状でシートに比べて折り曲げ困難な搬送媒体を外部から挿入させて、当該搬送媒体を内部において搬送させることができる搬送装置がある。また、このような搬送装置を備えた装置の一例として、CDやDVDなどの被記録媒体或いは当該被記録媒体を載置可能なトレイを搬送させて、当該被記録媒体に画像を記録可能な画像記録装置がある。搬送装置及び画像記録装置の多くにおいて、剛性の高い搬送媒体は、装置の前面から挿入される。
【0003】
近年、搬送装置及び画像記録装置などの装置は、小型化されている。このような装置は、装置の筐体を構成する前壁から後壁までが短いため、搬送媒体が前壁から後壁に向かって所定量搬送された際に、搬送媒体の先端が後壁と接触してしまう。当該接触を防止するために、装置の後壁に、搬送媒体が通過可能な開口が設けられている。これにより、搬送媒体が所定量搬送された際に、搬送媒体の先端は装置の後壁から突出した状態となり、搬送媒体と後壁との接触が防止可能である。なお、特許文献1には、厚紙の印字動作の際に、当該厚紙が本体の背面から突出した状態となる記録装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような装置は、室の壁際に設置されることが多く、装置の後壁と室の壁との間隔が十分に確保されないことが多い。このような設置状態において、搬送媒体が装置の後壁から突出した場合、当該搬送媒体は壁に衝突して停止してしまう。壁に衝突した搬送媒体が装置の前方や上方などから取り出し不可能な状態である場合、搬送媒体は装置の後方、つまり後壁側から取り出し可能にしておく必要がある。
【0006】
しかし、上述の設置状態においては装置の後壁と室の壁との間隔が十分に確保されていないため、搬送媒体が壁に衝突したとき、搬送媒体の開口からの突出長は短い状態である。このような場合、ユーザが装置の後壁の開口から突出している搬送媒体を把持して取り出すことは困難である。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁面からの搬送媒体の突出長が短くても、当該壁面から突出した搬送媒体を容易に取り出すことができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の搬送装置は、第1搬送媒体が挿入される第1開口が設けられた前壁部、及び上記前壁部と対向して配置された後壁部を有する筐体と、上記第1開口から上記後壁部に向かって延びており、上記第1開口から挿入された上記第1搬送媒体を案内する第1搬送路と、上記第1搬送路に配置されており、上記第1搬送媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、上記後壁部に形成されており、上記第1搬送路を案内される上記第1搬送媒体を当該装置外に突出させる第2開口と、を備えている。上記後壁部には、上記第2開口の少なくとも一部を含む領域から上記前壁部側に第1空間が形成されている。
【0009】
室に設置された搬送装置の後壁部と室の壁との間隔が十分に確保されていない状態で、第1搬送媒体が壁に衝突して停止した場合、第1搬送媒体の第2開口からの突出長は短い。しかし、第1搬送媒体は、第2開口のうち第1空間が設けられている位置において、第1空間が設けられていない位置に比べて、当該第1空間の分だけ余分に搬送装置の外部に突出可能であるので、搬送装置から取り出し易い。
【0010】
(2) 上記搬送部は、上記第1搬送媒体を、上記搬送方向と直交し且つ上記第1搬送路における上記第1搬送媒体の搬送面に沿った幅方向の少なくとも一部または少なくとも一箇所で挟持して搬送するローラ対で構成されている。上記第1空間の上記幅方向における位置は、上記第1搬送媒体が上記ローラ対によって挟持されている位置に対して上記第1搬送媒体の挿入向きに対応する位置である。
【0011】
上述の構成によれば、第1搬送媒体が後壁部から取り出されるときに、ユーザによって把持されている第1搬送媒体の幅方向の位置がローラ対によって挟持されている第1搬送媒体の幅方向の位置と一致するため、第1搬送媒体が斜めになりにくい。つまり、第1搬送媒体を搬送方向に沿って真っ直ぐに搬送装置から引き出すことができる。
【0012】
(3) 本発明の搬送装置は、シート状の第2搬送媒体を上記第1搬送路に案内可能な湾曲状の第2搬送路、を更に備えている。上記後壁部は、上記第2搬送路の外側を区画するガイド面、上記第1搬送路の少なくとも一部、上記第2開口及び上記第1空間が設けられたガイド部材を有している。上記ガイド部材は、上記第2搬送路を当該装置外に露出させる第1姿勢、及び上記第2搬送路を当該装置外から遮蔽させ、上記ガイド面によって上記第1搬送媒体をガイド可能な姿勢であるとともに、上記第1搬送路によって上記第2搬送媒体を案内可能な第2姿勢の間で回動可能である。
【0013】
上述の構成では、第2搬送媒体が第2搬送路において詰まった場合、ガイド部材が第2姿勢から第1姿勢に回動されることによって、当該第2搬送媒体を第2搬送路から容易に取り出すことが可能である。
【0014】
ここで、室の壁に衝突した第1搬送媒体が、ガイド部材に設けられた第1搬送路上で搬送を停止された場合、上述したガイド部材の回動は、第1搬送媒体によって阻害されてしまう。しかし、上述したように、第1搬送媒体が搬送装置から取り出されることによって、ガイド部材を回動させることができるようになる。つまり、上述の構成は、本発明の好適な適用例である。
【0015】
(4) 本発明の搬送装置は、上記ガイド部材の上記第2姿勢を保持する保持部と、上記保持部による上記ガイド部材の上記第2姿勢の保持を解除するために操作される操作部と、を更に備えている。上記操作部を操作するための第2空間が、上記第1空間の少なくとも一部と共有されている。
【0016】
上述の構成によれば、操作部を操作するための専用の空間を別途設ける必要がない。
【0017】
(5) 上記搬送方向と直交し且つ上記第1搬送路における上記第1搬送媒体の搬送面に沿った幅方向において、少なくとも上記第2開口の両端に、上記第1空間が形成されており、上記第2開口の上記幅方向の両端に形成された上記第1空間における上記幅方向の外側を区画する外壁面が上記搬送方向に沿って設けられている。
【0018】
上述の構成によれば、外壁面は、第2開口の幅方向の両端において、搬送方向に沿った壁として形成される。これにより、第1搬送媒体が後壁部から取り出されるとき、第1搬送媒体が斜めになろうとしても、第1搬送媒体の幅方向の端部が外壁面に当接する。つまり、第1搬送媒体が後壁部から取り出されるときに、第1搬送媒体が搬送方向に対して幅方向に過度に傾くことが防止可能である。
【0019】
(6) 本発明の画像記録装置は、上記搬送装置と、上記第1開口から挿入され、上記第1搬送路を案内され、且つ被記録媒体を載置可能な上記第1搬送媒体としての媒体トレイと、上記第1搬送路を案内される上記媒体トレイに載置された被記録媒体に画像を記録する記録部と、を備えている。上記媒体トレイは、上記第1搬送媒体の挿入向きの先端における上記第1空間に対応する位置に、上記挿入向きへ突出する凸部が形成されている。
【0020】
上述の構成によれば、媒体トレイが後壁部に近接する室の壁に衝突する場合、初めに凸部の先端が壁に衝突する。これにより、ユーザは凸部を摘むことによって、第1搬送媒体を容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、第1搬送媒体は、第2開口のうち第1空間が設けられている位置において、第1空間が設けられていない位置に比べて、当該第1空間の分だけ余分に搬送装置の外部に突出可能である。よって、第1空間が設けられていない位置において、後壁部からの第1搬送媒体の突出長が短くても、ユーザは、第1空間が設けられている位置で第1搬送媒体を把持することによって、第1搬送媒体を搬送装置から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、メディアトレイ71の外観斜視図である。
【図4】図4は、複合機10を背面側から見た外観斜視図であり、(A)にはカバー部材80が閉塞姿勢である場合が示されており、(B)にはカバー部材80が露出姿勢である場合が示されている。
【図5】図5は、複合機10の外観斜視図であり、(A)にはメディアトレイ71が前側開口13から挿入されている状態が示されており、(B)にはメディアトレイ71が第2後側開口87から突出している状態が示されている。
【図6】図6は、カバー部材80及び第1経路65を案内されるメディアトレイ71の斜視図である。
【図7】図7は、カバー部材80及びメディアトレイ71の斜視図であり、(A)にはメディアトレイ71が第2後側開口87から突出されていない状態が示されており、(B)にはメディアトレイ71が第2後側開口87から突出された状態が示されている。
【図8】図8は、カバー部材80の縦断面図であり、(A)にはロック部材90がロック姿勢である状態が示されており、(B)にはロック部材90がロック解除姿勢である状態が示されている。
【図9】図9は、第1ローラ対58を後側から見た状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、前側開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0024】
[複合機10]
図1に示されるように、本発明の画像記録装置の一例である複合機10は、概ね薄型の直方体に形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、本実施形態では、プリント機能として片面画像記録機能のみ有している複合機10が説明されるが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0025】
プリンタ部11は、筐体14(本発明の筐体の一例)を有する。筐体14の前側には、上下方向7及び左右方向9に拡がる前壁17(本発明の前壁部の一例)が形成されている。筐体14の後側には、前壁17に対向して配置された後壁16(本発明の後壁部の一例、図4参照)が形成されている。前壁17の概ね中央部には、前側開口13(本発明の第1開口の一例)が形成されており、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が、前側開口13から前後方向に挿抜可能である。給紙トレイ20には、所望のサイズの記録用紙(本発明の第2搬送媒体の一例)が載置される。
【0026】
図2に示されるように、プリンタ部11は、記録用紙を給送する給紙部15と、記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)などを備えている。プリンタ部11は、外部機器から受信した印刷データなどに基づいて、記録用紙に画像を記録する。
【0027】
また、複合機10は、記録用紙よりも厚みがあるCD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディアの盤面上に記録部24によって画像を記録する機能を有する。この際、記録メディアは後述するメディアトレイ71(本発明の第1搬送媒体及び媒体トレイの一例)に載置され、メディアトレイ71はトレイガイド76に載置されつつ、前側開口13における排紙トレイ21の上側から後述する直線路65へ、後向き(矢印77の向き)に挿入される。なお、当該機能については後述する。
【0028】
また、複合機10は、搬送装置(本発明の搬送装置に相当)を備えている。搬送装置は、筐体14と、後述する直線路65、湾曲路66、第1ローラ対58、ロック部材90、操作部100及び外壁面130とを備えている。
【0029】
[給紙部15]
給紙部15は、給紙トレイ20の上側に設けられている。給紙部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26及び駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の前端部で軸支されている。給紙アーム26は、軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25は給紙トレイ20に接離可能である。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して以下で説明する湾曲路66へ供給する。
【0030】
[直線路65及び湾曲路66]
プリンタ部11の内部には、給紙トレイ20の先端(後方側の端部)から第1ローラ対58(本発明の搬送部及びローラ対の一例)に亘って延設されており、記録用紙を案内可能な湾曲路66(図2に一点鎖線で示されている。本発明の第2搬送路の一例)と、前壁17の前側開口13における排紙トレイ21の上側から記録部24を経て後壁16に亘って延設されており、記録用紙及び記録メディアを載置可能なメディアトレイ71を案内可能な直線路65(図2に二点鎖線及び破線で示されている。本発明の第1搬送路の一例)と、が形成されている。
【0031】
湾曲路66は、給紙トレイ20の先端付近から後方斜め上に延びながら、前方へUターンして第1ローラ対58に至る湾曲状の通路である。記録用紙は、湾曲路66を搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き)に湾曲されて案内される。湾曲路66は、第1ローラ対58において直線路65と連続している。これにより、記録用紙は、湾曲路66を介して直線路65(詳細には直線路65を構成する第1経路65A)に案内される。湾曲路66は、所定間隔を隔てて互いに対向する内側ガイド部材19及び後述するカバー部材80(本発明のガイド部材の一例)の下側部材83によって区画されている。換言すると、湾曲路66は、内側ガイド部材19の後面を構成する内側ガイド面19Aと、下側部材83の前面を構成する外側ガイド面83A(本発明のガイド面の一例)とによって区画されている。
【0032】
直線路65は、前後方向8に延設された直線状の通路であり、第1経路65Aと第2経路65Bとに区分されている。
【0033】
第1経路65Aは、湾曲路66における搬送向きの下流端、つまり第1ローラ対58から第1開口13における排紙トレイ21の上側に亘って前後方向8に延設された直線状の通路である。記録用紙は、第1経路65Aを搬送向き(図2において2点鎖線に付された矢印の向き、つまり前向き)に案内される。記録用紙は、記録部24によって画像を記録された後に排紙トレイ21に排出される。また、前側開口13から挿入されたメディアトレイ71は、直線路65を搬送向き(前向き)及び搬送向きと反対向き(後向き)の双方向、つまり搬送方向(本発明の搬送方向に相当)に案内される。第1経路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材52及び後述するプラテン42を支持するプラテン支持部材53によって区画されている。
【0034】
第2経路65Bは、カバー部材80に形成された直線状の通路である。第2経路65Bは、カバー部材80が後述する閉塞姿勢(図2に実線で示される姿勢)である場合に、第1ローラ対58から前方に向かって延設された第1経路65Aと反対向き、つまり後方に向かって後壁16の後板85(図4(A)参照)まで延設されている。換言すると、カバー部材80が閉塞姿勢である場合に、第1経路65Aと第2経路65Bとは、第1ローラ対58を境界として、連続する一つの直線状の経路を構成している。メディアトレイ71は、カバー部材80が閉塞姿勢である場合に、第2経路65Bを搬送向き(前向き)及び搬送向きと反対向き(図2において破線に付された矢印の向き、つまり後向き)に案内される。第2経路65Bは、所定間隔を隔てて互いに対向するカバー部材80の上側部材82及び下側部材83によって区画されている。換言すると、第2経路65Bは、上側部材82の下面を構成する上側ガイド面82Aと、下側部材83の上面を構成する下側ガイド面83Bとによって区画されている。
【0035】
[記録部24]
記録部24は、第1経路65Aの上側に設けられている。記録部24は、記録ヘッド38を搭載して主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)へ往復移動するキャリッジ40を備えている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。記録ヘッド38は、ノズル39からインクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ40が主走査方向へ往復動することで、記録ヘッド38が記録用紙に対して走査され、直線路65の下方に記録部24と対向して設けられているプラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。プラテン42は、記録用紙を支持し、プラテン支持部材53に支持されている。なお、後述するように、記録部24は、記録メディアの盤面上にも画像を記録可能である。
【0036】
[第1ローラ対58及び第2ローラ対59]
記録部24より搬送向きの上流側には、直線路65の上側に配置された第1搬送ローラ60と、直線路65の下側に第1搬送ローラ60に対向して配置されたピンチローラ61とよりなる第1ローラ対58が設けられている。
【0037】
図9に示されるように、第1搬送ローラ60は、左右方向9において一本で構成された円筒状のローラである。一方、ピンチローラ61は、左右方向9において互いに離間して複数(本実施形態では7個)設けられている。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61は、直線路65の左右両端部に設けられたプリンタ部11のフレーム(不図示)に回転可能に支持されている。各ピンチローラ61は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。
【0038】
第1ローラ対58は、記録用紙及びメディアトレイ71を狭持してプラテン42上へ送る。詳細には、第1ローラ対58は、ピンチローラ61が設けられている位置において、記録用紙を挟持して前方に搬送し、メディアトレイ71を挟持して後方または前方、つまり搬送方向に搬送する。つまり、本実施形態において、第1搬送ローラ60は、メディアトレイ71を、左右方向9(本発明の幅方向に相当)の7箇所で挟持して搬送する。
【0039】
なお、図9では、ピンチローラ61は7個設けられているが、ピンチローラ61の個数は7個に限らず、7個より少なくてもよいし(例えば1個)、7個より多くてもよい(例えば10個)。また、ピンチローラ61の左右方向の長さは、図9に示される長さに限らない。例えば、ピンチローラ61が、第1搬送ローラ60と同様に一本で構成され、第1搬送ローラ60と同等の長さである円筒状のローラであってもよい。以上より、第1ローラ58は、メディアトレイ71を、左右方向9の少なくとも一部または少なくとも一箇所で挟持して搬送する。
【0040】
記録部24より搬送向きの下流側には、第1経路65の下側に配置された第2搬送ローラ62と、第1経路65の上側に第2搬送ローラ62に対向して配置された拍車63よりなる第2ローラ対59が設けられている。拍車63は、バネなどの弾性部材(不図示)によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2ローラ対59は、記録部24を通過した記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。また、第2ローラ対59は、メディアトレイ71を挟持して後方または前方へ搬送する。
【0041】
第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、搬送用モータ(不図示)から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転される。駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータが正転または逆転の一方(本実施形態では正転とする。)に回転された場合に、記録用紙またはメディアトレイ71を搬送向きに搬送させ、搬送用モータが正転または逆転の他方(本実施形態では逆転とする。)に回転された場合に、メディアトレイ71を搬送向きと逆向きに搬送させるように、各ローラ60、62を回転させる。
【0042】
[第1ローラ対58、第2ローラ対59及びプラテン42の姿勢変化]
第1ローラ対58及び第2ローラ対59は、一対のローラが互いに当接する当接姿勢と、一対のローラが互いに離間する離間姿勢とに姿勢変化可能である。第1ローラ対58及び第2ローラ対59が当接姿勢をとっている場合、記録用紙の挟持が可能であり、記録用紙を直線路65の第1経路65Aに沿って搬送させる。一方、第1ローラ対58及び第2ローラ対59が離間姿勢をとっている場合、各ローラ対の一対のローラ間の間隔は、メディアトレイ71を挟持するのに適した間隔となり、第1ローラ対58及び第2ローラ対59は、メディアトレイ71を直線路65に沿って搬送させる。本実施形態においては、ピンチローラ61及び第2搬送ローラ62が下方へ移動することによって、第1ローラ対58及び第2ローラ対59は、当接姿勢から離間姿勢へ姿勢変化される。
【0043】
また、プラテン42も下方に移動可能である。プラテン42が下方に移動していない場合、プラテン42と記録部24の間の間隔は、記録用紙が記録部24の下方を通過可能な間隔である。一方、プラテン42が下方に移動している場合、当該間隔は、メディアトレイ71が記録部24の下方を通過可能な間隔である。
【0044】
ピンチローラ61、第2搬送ローラ62、及びプラテン42の下方への移動は、例えば、ピンチローラ61、第2搬送ローラ62、及びプラテン42の下方に設けられた偏心カム140及びプラテン支持部材53によって実行される。偏心カム140は、左右方向9を軸方向として複合機10の筐体14を構成するフレーム(不図示)に回転自在に支持されている。偏心カム140は、軸142からの径が周期的に変化する円盤である。
【0045】
プラテン支持部材53は、偏心カム140に載置されるようにして支持されている。ピンチローラ61及び第2搬送ローラ62は、プラテン支持部材53に回転可能に支持されている。プラテン42は、上述したようにプラテン支持部材53に支持されている。
【0046】
本実施形態では、偏心カム140は、図示されていないモータから駆動伝達されて回転される。偏心カム140が回転されると、その周面がプラテン支持部材53に対して摺動される。偏心カム140の周面は、軸142からの径が周期的に変化するので、この変化によってプラテン支持部材53が上下方向7へ移動する。プラテン支持部材53の上下方向7への移動によって、ピンチローラ61、第2搬送ローラ62、及びプラテン42が上下方向7へ移動される。図2には、プラテン支持部材53が上側へ移動された状態が実線で示されており、下側へ移動された状態が破線で示されている。
【0047】
[メディアトレイ71]
上述したように、複合機10は、記録メディアの盤面上に画像を記録する機能を有する。記録メディアの盤面上に画像が記録される場合、記録メディアはメディアトレイ71に載置される。
【0048】
図3に示されるように、メディアトレイ71は、薄型の直方体の樹脂板である。メディアトレイ71の上面72には、記録メディアが載置されるメディア載置部70が設けられている。メディア載置部70は、円形状の凹みである。当該凹みの直径は、載置される記録メディア(円形のCD−ROMやDVD−ROMなど)の直径と同一または少しだけ大きい。また、当該凹みの中央部には、円形の凸部73が設けられている。円形のCD−ROMやDVD−ROMなどには、通常、中央部分に円形の孔が設けられている。凸部73は、当該孔と略同一の大きさであり、当該孔と嵌合する。これにより、メディア載置部70に記録メディアが載置された場合に、記録メディアが前後方向8及び左右方向9ずれることがない。
【0049】
また、メディア載置部70の深さは、記録メディアの厚みよりも深い。これにより、メディア載置部70に載置された記録メディアの上面が、メディアトレイ71の上面72より上側に突出することはない。
【0050】
図2及び図5に示されるように、メディアトレイ71はトレイガイド76に載置されつつ、上面72を上側にして、前側開口13から直線路65に沿って、搬送向きと逆向きである矢印77の向きに挿入される。
【0051】
また、メディアトレイ71が前側開口13に挿入されるときにおけるメディアトレイ71の挿入側先端に相当する箇所には、突起78(本発明の凸部の一例)が設けられている。つまり、突起78は、メディアトレイ71の挿入向きへ突出している。また、本実施形態では、突起78は、幅方向74(複合機10に挿入された状態における左右方向9)の両端部に設けられている。詳細には、突起78の幅方向74の位置は、ピンチローラ61のうち最も右端に設けられたピンチローラ61A(図9参照)及びピンチローラ61のうち最も左端に設けられたピンチローラ61B(図9参照)に対応する位置である。
【0052】
[カバー部材80]
図4に示されるように、複合機10の後壁16は、カバー部材80を有している。換言すると、後壁16には、カバー部材80が取り付けられている。詳細には、図4(B)に示されるように、後壁16における前側開口13に概ね対応する位置に、第1後側開口81が形成されており、カバー部材80は、図4(A)に示されるように、第1後側開口81を塞ぐように取り付けられている。
【0053】
図6、図7及び図8に示されるように、カバー部材80は、上側部材82と、上側部材82の下方に設けられた下側部材83と、2枚の側板84と、後板85とを備えている。2枚の側板84は、左右両端に設けられており、上側部材82及び下側部材83は、2枚の側板84に挟まれるようにして2枚の側板84に取り付けられている。後板85は、上側部材82及び下側部材83の後側に取り付けられている。後板85の後側の面は、概ね長方形である。後板85の後側の面の前後方向8の位置は、後壁16の後側の面の前後方向8の位置と同位置である。
【0054】
図2に示されるように、第2経路65Bは、上側部材82の下面を構成する上側ガイド面82Aと、下側部材83の上面を構成する下側ガイド面83Bとによって区画されている。つまり、第2経路65Bは、カバー部材80に設けられており、上側部材82と下側部材83は、第2経路65Bを挟んで対向している。すなわち、直線路65の少なくとも一部は、カバー部材80に設けられている。また、上述したように、湾曲路66は、内側ガイド部材19の後面を構成する内側ガイド面19Aと、下側部材83の前面を構成する外側ガイド面83Aとによって区画されている。つまり、外側ガイド面83Aは、カバー部材80に設けられており、湾曲路66の外側を区画している
【0055】
図2、図6及び図7に示されるように、カバー部材80は、下側部材83の下端近傍に、左右方向9(図2の紙面垂直方向)へ延出されている軸86を中心として、矢印79の方向に回動可能に構成されている。図2及び図4に示されるように、カバー部材80は、当該回動により、閉塞姿勢(図2に実線で示される状態及び図4(A)に示される状態、本発明の第2姿勢に相当)と、露出姿勢(図2に破線で示される状態及び図4(B)に示される姿勢、本発明の第1姿勢に相当)に姿勢変化する。
【0056】
湾曲路66は、カバー部材80が閉塞姿勢である場合、下側部材83によって後側を覆われているため、複合機10の外部から遮蔽されている。一方、湾曲路66は、カバー部材80が露出姿勢である場合、複合機10の後側に露出された状態となる。また、外側ガイド面83Aは、カバー部材80が閉塞姿勢である場合、湾曲路66を区画して、記録用紙をガイドする。一方、外側ガイド面83Aは、カバー部材80が露出姿勢である場合には後方へ傾倒するため、湾曲路66を区画せず、記録用紙をガイドしない。
【0057】
また、上述したように、カバー部材80が閉塞姿勢である場合、第1経路65Aと第2経路65B、つまり直線路65は、連続する一つの直線状の経路を構成している。これにより、カバー部材80が閉塞姿勢である場合、メディアトレイ71は直線路65によって案内可能となる。
【0058】
[第2後側開口87]
図2、図4(A)、図7及び図8に示されるように、後壁16に取り付けられたカバー部材80の後板85には、第2後側開口87(本発明の第2開口の一例)が形成されている。詳細には、第2後側開口87は、カバー部材80の後板85において第2経路65Bの後側の端部に対応する位置に形成されており、第2経路65Bを搬送されるメディアトレイ71が通過可能な大きさに形成されている。
【0059】
本実施形態においては、第2後側開口87の左右方向9の長さは、メディアトレイ71が複合機10に挿入されたときの左右方向9の長さよりも若干長い。また、第2後側開口87の上下方向7の長さは、メディアトレイ71が複合機10に挿入されたときの上下方向7の長さよりも若干長い。これにより、前側開口13から矢印77の向きに挿入され、直線路65を搬送されてきたメディアトレイ71は、第2経路65Bの後側の端部に達しても、第2後側開口87を介して、複合機10の後壁16よりも更に後方へ搬送可能である。このとき、メディアトレイ71は、図5(B)に示されるように、第2後側開口87から複合機10の外部に突出した状態となる。つまり、第2後側開口87は、直線路65を案内されるメディアトレイ71を複合機10外に突出させる。
【0060】
[空間121]
図4(A)及び図7に示されるように、後壁16に設けられたカバー部材80の後板85には、第2後側開口87の左右方向9における両端部を含む領域に、凹部120(120A〜120C)が形成されている。凹部120の底面122は、複合機10の背面(図4(A)において番号16、85が付されている面)よりも前側に位置する。よって、当該背面と底面122との間には、空間121(本発明の第1空間の一例)が形成されている。空間121は、底面122と、底面122の上端、下端、右端及び左端から後側に立設された外壁面130とで区画されている。
【0061】
本実施形態においては、空間121は、第2後側開口87の左右方向9における両端部を含む領域、及び中央部を含む領域の3箇所に形成されている。図4(A)及び図7においては、凹部120A〜120Cにそれぞれ対応する3箇所の空間121は、それぞれ121A、121B及び121Cと表記されている。ここで、上述したように、第2経路65Bは、後壁16(後板85)まで延設されている。よって、空間121は、後壁16より前側であって底面122よりも後側において、少なくとも第2経路65Bの左右方向9の両端に形成されている。
【0062】
凹部120A及び空間121Aは、ピンチローラ61のうち最も右端に設けられたピンチローラ61A(図9参照)の後方に設けられている。また、凹部120B及び空間121Bは、ピンチローラ61のうち最も左端に設けられたピンチローラ61B(図9参照)の後方に設けられている。また、凹部120C及び空間121Cは、ピンチローラ61のうち左右方向9の中央部に設けられたピンチローラ61C(図9参照)の後方に設けられている。つまり、空間121の左右方向9における位置は、メディアトレイ71が第1ローラ対58によって挟持されている位置に対して、メディアトレイ71の挿入向き、つまり後向きに対応する位置である。
【0063】
なお、凹部120及び空間121の左右方向9の位置は、第1ローラ対58によるメディアトレイ71の挟持位置に対して、メディアトレイ71の挿入向きに対応する位置のうち上述した位置以外の位置、例えば図9に示されるピンチローラ61Dの位置であってもよい。また、凹部120の左右方向9の位置は、第1ローラ対58によるメディアトレイ71の挟持位置に対して、メディアトレイ71の挿入向きに対応する位置であることが好ましいが、当該対応する位置以外の位置であってもよい。
【0064】
空間121を区画する外壁面130のうち、空間121Aの右端を区画する外壁面130A、及び空間121Bの左端を区画する外壁面130B、つまり第2経路65Bの左右方向9の両端(外側)の面は、本発明の外壁面の一例である。ここで、上述したように、第2経路65Bは、後壁16(後板85)まで延設されている。よって、外壁面130A、130Bは、後壁16の後板85より前側であって底面122よりも後側において、第2経路65Bの左右方向9の両端、つまり外側を区画している。
【0065】
本実施形態においては、後板85に、3つの空間121(121A、121B、121C)が形成されている構成が説明されているが、空間121は3つに限らず、2つ以下或いは4つ以上形成されていてもよい。例えば、空間121Cが後板85に形成されておらず、空間121A、121Bの2つのみが後板85に形成されていてもよい。
【0066】
[ロック部材90]
図6及び図8に示されるように、カバー部材80の上側部材82に、ロック部材90(本発明の保持部の一例)が取り付けられている。ロック部材90は、軸91と、軸91の両端近傍から同じ向きに延出されている2本のアーム92とを備えている。
【0067】
ロック部材90は、上側部材82の上面に形成された凹部に、軸91が左右方向9となり、2本のアーム92が軸91から前方、詳細には前方斜め下に延出されるように、嵌め込まれている。また、軸91の両端が凹部の側面に回転可能に軸支されている。これにより、軸91が回転すると、2本のアーム92は、図8(A)の矢印93に示される方向に回動する。
【0068】
2本のアーム92の基端及び先端の中間付近に、突起94が形成されている。突起94は、ロック部材90が上側部材82に嵌め込まれた状態において、2本のアーム92から上向きに突出するように形成されている。突起94は、複合機10の筐体14を構成するフレームのうち、上側部材82の上面と対向する位置に設けられたフレームから下向きに突出した凸部95と係合可能である。図8(A)に示されるように、カバー部材80が閉塞姿勢の場合に、突起94と凸部95は、突起94が前側、凸部95が後側となる状態で係合する。これにより、複合機10のユーザが、カバー部材80を閉塞姿勢から露出姿勢へ姿勢変化させようとしても、突起94の後方への移動が凸部95によって妨げられるため、後述する操作部100を操作しない限りは、カバー部材80は姿勢変化不可能となる。つまり、ロック部材90は、カバー部材80の閉塞姿勢を保持する。
【0069】
[操作部100]
図7に示される操作部100(本発明の操作部の一例)は、ロック部材90の軸91に設けられている。操作部100は、軸91と一体であってもよいし、軸91に取り付けられていてもよい。操作部100は、軸91の中央から2本のアーム92と反対向きに突出するように設けられている。つまり、操作部100は、ロック部材90が上側部材82に嵌め込まれた状態において、軸91から後方に突出するように設けられている。
【0070】
ここで、上述したように、本実施形態において、第2後側開口87における左右方向9の中央部には、空間121Cが形成されている。そして、軸91から後方に突出した操作部100は、空間121Cの一部(本実施形態では空間121Cのうち第2後側開口87よりも上側)を占めている。なお、空間121Cの一部は、第2後側開口87の上側に限らず、下側であってもよいし、上下両側であってもよい。これにより、操作部100は、複合機10の外部から見える状態となっている。よって、ユーザは、操作部100を、複合機10の外部から空間121Cを介して、把持することなどによって操作可能である。つまり、空間121Cの少なくとも一部は、本発明の第2空間に相当している。すなわち、操作部100を操作するための空間が、空間121Cの少なくとも一部と共有されている。
【0071】
[ロック部材90の動作]
図8に示されるように、ロック部材90の2本のアーム92は、軸91が回転することによって、矢印93の方向に回動する。これにより、ロック部材90は、突起94が凸部95と係合しているロック姿勢(図8(A)に示される姿勢)、及び突起94が凸部95よりも下方に位置することで凸部95と係合していないロック解除姿勢(図8(B)に示される姿勢)に姿勢変化可能である。
【0072】
また、図6に示されるように、コイルバネ96が、ロック部材90をロック姿勢側へ付勢するように取り付けられている。詳細には、コイルバネ96の一端は、ロック姿勢の軸91の前側に取り付けられており、コイルバネ96の他端は、上記一端に対して前方に対向した位置にある上側部材82に取り付けられている。これにより、ロック部材90が、ロック姿勢からロック解除姿勢へ姿勢変化する際に、軸91の回転によって、コイルバネ96が伸張する。このとき、コイルバネ96は、収縮する向きに弾性力を発生させて、ロック部材90をロック姿勢側へ付勢する。
【0073】
図8(A)に示されるように、ロック部材90は、カバー部材80が閉塞姿勢をとっているとき、ロック姿勢をとっている。このとき、突起94は、凸部95と係合しているため、操作部100を操作しない限りは、カバー部材80は姿勢変化不可能である。
【0074】
図8(A)に示されるように、複合機10のユーザが、操作部100を操作して、操作部100を上向き、つまり矢印97の向きに移動させると、2本のアーム92は、下向き、つまり矢印93Aの向きに回動する。これにより、図8(B)に示されるように、ロック部材90は、ロック解除姿勢をとる。
【0075】
図8(B)に示されるように、ロック部材90がロック解除姿勢をとっているとき、突起94は、凸部95よりも下方に位置しており、凸部95と係合していない。これにより、突起94は、凸部95によって後方への移動を妨げられることはない。よって、カバー部材80は回動可能、つまり姿勢変化可能である。つまり、操作部100は、ロック部材90によるカバー部材80の閉塞姿勢の保持を解除するために操作される。
【0076】
なお、操作部100は、ロック部材90をロック解除姿勢からロック姿勢に姿勢変化させる際にも操作される。この場合、例えば、ユーザは、操作部100を矢印97の向きに移動させつつ、カバー部材80を回動させて閉塞姿勢に姿勢変化させる。そして、ユーザは、カバー部材80が閉塞姿勢をとった状態において、操作部100から手を離す。これにより、ロック部材90は、コイルバネ96の付勢力によって、ロック解除姿勢からロック姿勢に姿勢変化される。
【0077】
[記録メディアへの画像記録]
以下、複合機10にメディアトレイ71が挿入され、メディアトレイ71に載置された記録メディアに画像が記録される手順が説明される。複合機10の正面上部に設けられた操作パネル18(図1参照)の操作により、記録メディアへ画像を記録する機能が選択されると、図2に示されるように、偏心カム140が回転してピンチローラ61、第2搬送ローラ62、及びプラテン42が下方へ移動する。
【0078】
その後、図2及び図5(A)に示されるように、メディアトレイ71は、複合機10のユーザによって、複合機10の前側開口13から直線路65に沿って、搬送向きと逆向きである矢印77の向きに挿入される。この際、メディアトレイ71はトレイガイド76に載置されつつ挿入される。操作パネル18の操作により、メディアトレイ71に載置された記録メディアへの画像記録が指示されると、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62が逆転駆動される。
【0079】
ユーザによって挿入されているメディアトレイ71が第2ローラ対59に挟持されると、メディアトレイ71は、ユーザの手を離れ、第2ローラ対59に挟持されて搬送向きと逆向き、つまり矢印77の向きに搬送される。第2ローラ対59によって搬送されるメディアトレイ71は、記録部24の下側を通過して、記録用紙の搬送向きの下流側から第1ローラ対58に挟持される。
【0080】
その後、図2、図6及び図7に示されるように、第1ローラ対58及び第2ローラ対59に挟持されたメディアトレイ71は、更に矢印77の向きに案内される。これにより、メディアトレイ71に載置された記録メディアは、記録部24より記録用紙の搬送向きの上流側に位置される。このとき、図5(B)及び図7(B)に示されるように、メディアトレイ71は、第2後側開口87を介して、複合機10の外部に突出した状態となる。
【0081】
この状態において、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62の回転方向が逆転から正転に切り換えられる。これにより、メディアトレイ71が矢印77と逆向き、つまり記録用紙の搬送向きに搬送され、メディアトレイ71に載置された記録メディアがプラテン42上を通る。プラテン42上を搬送される記録メディアに対して、記録ヘッド38からインク滴が吐出される。これにより、記録メディアの盤面上に画像が記録される。その後、メディアトレイ71は前側開口13から複合機10の外部に排出される。
【0082】
[実施形態の効果]
室に設置された複合機10の後壁16と室の壁との間隔が十分に確保されていない状態で、メディアトレイ71が壁に衝突して停止した場合、メディアトレイ71の第2後側開口87からの突出長は短い。しかし、メディアトレイ71は、第2後側開口87のうち空間121が設けられている位置において、空間121が設けられていない位置に比べて、当該空間121の分だけ余分に複合機10の外部に突出可能である。よって、空間121が設けられていない位置において、後壁16からのメディアトレイ71の突出長が短くても、ユーザは、空間121が設けられている位置でメディアトレイ71を把持することによって、メディアトレイ71を複合機10から容易に取り出すことができる。
【0083】
本発明は以下のような場合に特に有効である。つまり、第2後側開口87が後壁16の最も後側の位置に形成されるように複合機10が構成されており、複合機10が後壁16を室の壁に当接させた状態で設置されている場合である。このような場合、室の壁に衝突して停止したメディアトレイ71を第2後側開口87から取り出すことは極めて困難であるが、本発明によれば、メディアトレイ71を容易に取り出すことができる。
【0084】
また、上述の実施形態によれば、メディアトレイ71が後壁16から取り出されるときに、ユーザによって把持されているメディアトレイ71の左右方向9の位置が第1ローラ対58によって挟持されているメディアトレイ71の左右方向9の位置と一致するため、メディアトレイ71が斜めになりにくい。つまり、メディアトレイ71を搬送方向(前後方向8)に沿って真っ直ぐに複合機10から引き出すことができる。
【0085】
また、上述の実施形態では、記録用紙が湾曲路66において詰まった場合、カバー部材80が閉塞姿勢から露出姿勢に回動されることによって、当該記録用紙を湾曲路66から容易に取り出すことが可能である。ここで、室の壁に衝突したメディアトレイ71が、カバー部材80に設けられた第2経路65B上で搬送を停止された場合、上述したカバー部材80の回動は、メディアトレイ71によって阻害されてしまう。しかし、上述したように、空間121によってメディアトレイ71が複合機10から容易に取り出せ、カバー部材80を回動させることができるようになる。つまり、上述の実施形態は、本発明の好適な適用例である。
【0086】
また、上述の実施形態によれば、操作部100を操作するための空間が、空間121Cの少なくとも一部と共有されているため、操作部100を操作するための専用の空間を別途設ける必要がない。
【0087】
また、上述の実施形態によれば、外壁面130A、130Bは、直線路65の左右方向9の両側において、第2後側開口87から前壁17側(前側)に沿った長い壁として形成される。これにより、メディアトレイ71が後壁16から取り出されるとき、メディアトレイ71が斜めになろうとしても、メディアトレイ71の左右方向9の端部が外壁面130Aまたは外壁面130Bに当接する。つまり、メディアトレイ71が後壁16から取り出されるときに、メディアトレイ71が搬送方向(前後方向8)に対して左右方向9に過度に傾くことが防止可能である。
【0088】
また、上述の実施形態によれば、メディアトレイ71が後壁16に近接する室の壁に衝突する場合、初めに突起78の先端が壁に衝突する。これにより、ユーザは突起78を摘むことによって、メディアトレイ71を複合機10から容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0089】
10・・・複合機
13・・・前側開口
14・・・筐体
16・・・後壁
17・・・前壁
24・・・記録部
58・・・第1ローラ対
65・・・直線路
66・・・湾曲路
71・・・メディアトレイ
78・・・突起
80・・・カバー部材
83A・・・外側ガイド面
87・・・第2後側開口
90・・・ロック部材
100・・・操作部
121・・・空間
130・・・外壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搬送媒体が挿入される第1開口が設けられた前壁部、及び上記前壁部と対向して配置された後壁部を有する筐体と、
上記第1開口から上記後壁部に向かって延びており、上記第1開口から挿入された上記第1搬送媒体を案内する第1搬送路と、
上記第1搬送路に配置されており、上記第1搬送媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
上記後壁部に形成されており、上記第1搬送路を案内される上記第1搬送媒体を当該装置外に突出させる第2開口と、を備え、
上記後壁部には、上記第2開口の少なくとも一部を含む領域から上記前壁部側に第1空間が形成されている搬送装置。
【請求項2】
上記搬送部は、上記第1搬送媒体を、上記搬送方向と直交し且つ上記第1搬送路における上記第1搬送媒体の搬送面に沿った幅方向の少なくとも一部または少なくとも一箇所で挟持して搬送するローラ対で構成されており、
上記第1空間の上記幅方向における位置は、上記第1搬送媒体が上記ローラ対によって挟持されている位置に対して上記第1搬送媒体の挿入向きに対応する位置である請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
シート状の第2搬送媒体を上記第1搬送路に案内可能な湾曲状の第2搬送路、を更に備え、
上記後壁部は、上記第2搬送路の外側を区画するガイド面、上記第1搬送路の少なくとも一部、上記第2開口及び上記第1空間が設けられたガイド部材を有し、
上記ガイド部材は、上記第2搬送路を当該装置外に露出させる第1姿勢、及び上記第2搬送路を当該装置外から遮蔽させ、上記ガイド面によって上記第1搬送媒体をガイド可能な姿勢であるとともに、上記第1搬送路によって上記第2搬送媒体を案内可能な第2姿勢の間で回動可能である請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記ガイド部材の上記第2姿勢を保持する保持部と、
上記保持部による上記ガイド部材の上記第2姿勢の保持を解除するために操作される操作部と、を更に備え、
上記操作部を操作するための第2空間が、上記第1空間の少なくとも一部と共有されている請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
上記搬送方向と直交し且つ上記第1搬送路における上記第1搬送媒体の搬送面に沿った幅方向において、少なくとも上記第2開口の両端に、上記第1空間が形成されており、
上記第2開口の上記幅方向の両端に形成された上記第1空間における上記幅方向の外側を区画する外壁面が上記搬送方向に沿って設けられている請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の搬送装置と、
上記第1開口から挿入され、上記第1搬送路を案内され、且つ被記録媒体を載置可能な上記第1搬送媒体としての媒体トレイと、
上記第1搬送路を案内される上記媒体トレイに載置された被記録媒体に画像を記録する記録部と、を備え、
上記媒体トレイは、上記第1搬送媒体の挿入向きの先端における上記第1空間に対応する位置に、上記挿入向きへ突出する凸部が形成されている画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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