説明

搬送装置及び記録装置

【課題】カール矯正処理を施すためにシート状媒体を搬送する際に、該シート状媒体のカールに起因する搬送不良の発生を抑制することができる搬送装置及び該搬送装置を備える記録装置を提供する。
【解決手段】プリンターに備えられた搬送装置は、搬送経路に沿ってカットシートCSを搬送方向Xの上流側から下流側に搬送する搬送ローラー24と、搬送方向Xに延びる案内部51bを有して搬送ローラー24の搬送方向Xにおける上流側に配置されるガイド部材51と、搬送ローラー24との間にカットシートCSを挟持してカットシートCSのカールを矯正する矯正位置と、矯正位置よりも搬送経路から離間した待機位置との間を移動可能な従動ローラー34と、を備え、ガイド部材51は、従動ローラー34が矯正位置に移動する場合、従動ローラー34における矯正位置から待機位置への移動経路から離間した退避位置に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロール紙などのシート状媒体のカールを矯正する機能を有する搬送装置及び該搬送装置を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録装置の一種であるプリンターには、ロール紙(シート状媒体)に対して記録処理を施すプリントヘッド(記録手段)と、ロール紙のカール(巻きぐせ)を矯正するためのデカール機構(カール矯正機構)とを備えたものがあった(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のデカール機構は、ロール紙を搬送する搬送ローラーと、この搬送ローラーとの間でロール紙を挟持するデカールローラーと、ロール紙の搬送方向において搬送ローラーの上流側に配置され、搬送されるロール紙の動きに連動して回転するフリーローラー(従動ローラー)とを備えていた。そして、ロール紙は、搬送ローラーとデカールローラーとの間に挟持された状態で、その被挟持箇所とフリーローラーに係合した箇所との間が屈曲されることで、カールが矯正されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1においては、搬送方向においてフリーローラーの上流側には搬送ローラー対が設けられていた。そして、この搬送ローラー対によってロール紙がフリーローラーの周面上に搬送されると、フリーローラーはロール紙に従動して回転することで、該ロール紙を搬送ローラーに向けて案内するようになっていた。しかし、搬送ローラー対から下流側へ離れるように搬送されたときに、ロール紙の先端側が搬送経路から離間するようにカールしていると、そのカールした先端側部分がフリーローラーに引っかかってしまうことがあった。そして、このようにロール紙の先端側部分がフリーローラーに引っかかってしまうと、ロール紙の搬送不良が生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、カール矯正処理を施すためにシート状媒体を搬送する際に、該シート状媒体のカールに起因する搬送不良の発生を抑制することができる搬送装置及び該搬送装置を備える記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の搬送装置は、搬送経路に沿ってシート状媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する第1ローラーと、前記搬送方向に延びる案内部を有して前記第1ローラーの前記搬送方向における上流側に配置されるガイド部材と、前記第1ローラーとの間に前記シート状媒体を挟持して該シート状媒体のカールを矯正する矯正位置と、該矯正位置よりも前記搬送経路から離間した待機位置との間を移動可能な第2ローラーと、を備え、前記ガイド部材は、前記第2ローラーが前記矯正位置に移動する場合、前記第2ローラーにおける前記矯正位置から前記待機位置への移動経路から離間した退避位置に移動可能である。
【0008】
この構成によれば、シート状媒体は、先端側がカールしていても、搬送方向に延びる案内部を有するガイド部材により搬送経路に沿うように案内されるので、カールした先端側部分が搬送経路から離間することなく、第1ローラーまで搬送される。そして、そのガイド部材は、第2ローラーが矯正位置に移動する場合、第2ローラーにおける矯正位置から待機位置への移動経路から離間した退避位置に移動可能であるので、第2ローラーが移動する場合にも、該第2ローラーとの干渉を回避することができる。したがって、カールが矯正される前のシート状媒体を搬送する際の搬送不良の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明の搬送装置において、前記ガイド部材は、前記第2ローラーの前記矯正位置から前記待機位置への移動に伴って、前記退避位置から前記シート状媒体を前記搬送経路に沿って前記第1ローラーまで案内する案内位置へ移動する。
【0010】
この構成によれば、第2ローラーが矯正位置から待機位置に移動したときには、ガイド部材は退避位置から案内位置に移動し、その案内位置においてシート状媒体を第1ローラーまで確実に案内することができる。
【0011】
本発明の搬送装置は、前記搬送方向の上流側から前記第1ローラーに向けて前記シート状媒体を搬送する搬送ローラーをさらに備え、前記ガイド部材は、前記搬送方向において、前記搬送ローラーの直径よりも長く、前記搬送方向における下流端が前記第1ローラーの周面の上流端よりも下流側に配置されている。
【0012】
この構成によれば、搬送ローラーによってシート状媒体を第1ローラーに向けて確実に搬送することができる。また、ガイド部材は搬送方向における長さが搬送ローラーの直径よりも長いので、シート状媒体のカールした先端側部分が搬送ローラーに引っかかったり巻き付いたりするのを抑制することができる。そして、ガイド部材の搬送方向における下流端は第1ローラーの周面の上流端よりも下流側に配置されているので、シート状媒体の先端側部分がカールしている場合にも、シート状媒体を第1ローラーの周面上まで確実に案内することができる。
【0013】
本発明の搬送装置において、前記搬送ローラーは、前記搬送方向と交差する前記シート状媒体の幅方向に間隔をおいて複数設けられ、前記ガイド部材の前記案内部は、前記幅方向において隣接する前記搬送ローラー同士の間に配置されている。
【0014】
この構成によれば、ガイド部材の案内部は、幅方向に隣接する搬送ローラー同士の間に配置されているので、幅方向においてシート状媒体の端部と対応する位置に案内部を配置することで、シート状媒体の端部を確実に案内することが可能になる。
【0015】
本発明の搬送装置は、前記ガイド部材の前記案内部よりも前記搬送方向の上流側に配置された搬送経路形成部材をさらに備え、前記ガイド部材は、前記搬送方向の上流側に設けられた基端部と、該基端部から搬送方向の下流側に向けて延設される櫛歯状の前記案内部とを有して、前記基端部側を中心に揺動することで、前記案内部が前記搬送経路を形成する前記案内位置と、前記案内部が前記搬送経路から離間する前記退避位置との間で変位し、前記搬送経路形成部材の前記搬送方向における下流端には、前記搬送方向と交差する前記シート状媒体の幅方向において前記案内部と対応する位置に、前記案内部の変位を許容する切欠部が形成されている。
【0016】
この構成によれば、ガイド部材は搬送方向の上流側に設けられた基端部側を中心に揺動するので、シート状媒体の搬送を妨げることなく、案内部を変位させることができる。そして、案内部は、案内位置において櫛歯状の搬送経路を形成するので、シート状媒体との摺接負荷を抑制しつつ、シート状媒体を案内することができる。また、搬送経路形成部材には切欠部が設けられているので、搬送経路形成部材と案内部との隙間を小さくし、シート状媒体が該隙間に引っかかるのを抑制することができる。
【0017】
本発明の搬送装置において、前記ガイド部材の前記案内部には、前記搬送方向における上流側に向かうほど前記搬送経路形成部材から離間するように屈曲する屈曲部が形成されている。
【0018】
この構成によれば、ガイド部材の案内部には屈曲部が形成されているので、上流側から搬送されてきたシート状媒体の先端側部分がカールしていた場合にも、その先端側部分を屈曲部で案内部の先端側に案内することができる。
【0019】
本発明の搬送装置は、カム軸と、該カム軸の回転に伴って回転する第1カム部材及び第2カム部材とを有するカム機構をさらに備え、前記ガイド部材は前記第1カム部材の回転に伴って移動するとともに、前記第2ローラーは前記第2カム部材の回転に伴って移動する。
【0020】
この構成によれば、第1カム部材の動きを第2カム部材の動きに連動させて、第2ローラーが待機位置から矯正位置に移動するタイミングで、ガイド部材を退避位置に移動させることができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、シート状媒体をロール状に巻き重ねたロール体の状態で保持する保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記シート状媒体に対して記録を施す記録手段と、上記搬送装置と、を備える。
【0022】
この構成によれば、上記搬送装置と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態における搬送装置を備えたプリンターの概略構成を示す断面図。
【図2】カール矯正動作を行っていないときのカール矯正機構を示す側面図。
【図3】カール矯正動作を行っているときのカール矯正機構を示す側面図。
【図4】カール矯正動作を行っていないときのカール矯正機構を示す上面図。
【図5】カール矯正動作を行っているときのカール矯正機構を示す上面図。
【図6】カム機構及びガイド部材を説明するための斜視図。
【図7】実施形態のプリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図8】カール矯正処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】排紙部の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある。)に具体化した実施形態について説明する。
図1に示すように、プリンター11は、排紙部12aを有する本体ケース12と、シート状媒体としてのシートSTをロール状に巻き重ねたロール体RSの状態で保持する保持部13と、制御装置100(図7参照)とを備えている。
【0025】
また、プリンター11は、本体ケース12内に、保持部13から排紙部12aに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送装置14を備えている。また、本体ケース12内には、ロール体RSから巻き解かれたシートSTに対して記録を施す記録部15と、カッター16とが設けられている。また、搬送方向Xにおいてカッター16の下流側には、搬送装置14の一部を構成するカール矯正機構17が設けられている。
【0026】
搬送装置14によって搬送されるシートSTは、記録部15において表面に印刷(記録)処理が施されるとともに、表面に印刷が施された部分がカッター16で切断される。そして、切断されたシートSTの先端側の部分はカットシートCS(単票の記録媒体)とされた後、カール矯正機構17においてカールが矯正されるようになっている。なお、以下の説明において、「シートST」と表記する場合には、ロール体RSから巻き解かれた長尺状のシートと、長尺状のシートから切断されてカットシートCSとされたシートとを含むことがある。
【0027】
次に、保持部13について説明する。
保持部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸18と、回転軸18を回転させるための回転モーター19(図7参照)とを備えている。そして、回転モーター19の駆動に伴って回転軸18が図1における反時計回り方向に回転すると、ロール体RSからシートSTが巻き解かれるようになっている。
【0028】
次に、搬送装置14について説明する。
搬送装置14は、シートSTを搬送方向Xの上流側から下流側に搬送する複数の搬送ローラー20〜26と、各搬送ローラー20,21,22,24,25,26との間にシートSTを挟持する従動ローラー30,31,32,34,35,36とを備えている。各搬送ローラー20,21,22,24,25,26と各従動ローラー30,31,32,34,35,36とは、搬送経路を挟んで互いに対向する位置に配置されている。なお、以下の説明において、互いに対をなす搬送ローラー22と従動ローラー32を搬送ローラー対R2ということがある。
【0029】
また、搬送装置14は、搬送ローラー20〜26を回転させるための搬送モーター37(図7参照)と、搬送ローラー対R2と対応する位置に配置された搬送経路形成部材38と、搬送ローラー25と搬送ローラー26との間で反転経路を形成する反転経路形成部材39とを備えている。図7に示すように、搬送モーター37の出力軸には、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー40と、動力伝達切換装置41とが設けられている。動力伝達切換装置41は、シートSTの搬送工程に応じて、搬送モーター37と搬送ローラー20〜26との間で動力の伝達先を切り換えるようになっている。なお、対をなす搬送ローラー25と従動ローラー35とは、カール矯正機構17を通過したシートSTを反転経路に送り込むようになっていることから、これらをフィードローラーFRということがある。
【0030】
次に、記録部15について説明する。
記録部15は、搬送経路の上側に配置されたガイド軸42と、ガイド軸42に支持されたキャリッジ43と、キャリッジ43に支持された記録手段としての記録ヘッド44とを備えている。また、記録部15は、搬送経路を挟んで記録ヘッド44と対向する位置に配置された支持部材45を備えている。
【0031】
ガイド軸42は、搬送方向Xと交差(直交)するシートSTの幅方向Yに沿って延びるように本体ケース12に架設されている。また、キャリッジ43は、ガイド軸42に案内されつつ幅方向Yに沿って往復移動するようになっている。
【0032】
支持部材45の上面側には複数の吸引孔(図示略)が形成されているとともに、支持部材45には吸引孔を通じてシートSTを吸着するための吸引機構46が内蔵されている。また、記録ヘッド44には、液体としてのインクを噴射する複数のノズル47が設けられている。そして、支持部材45に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に記録ヘッド44のノズル47からインクが噴射されることで、シートSTに記録(印刷)が施されるようになっている。
【0033】
なお、プリンター11では、1つの印刷ジョブに含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理をキャリッジ43の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、シートSTの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、記録部15では、幅方向Yが長手方向となる帯状の画像の形成と紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷ジョブに基づく画像が形成されるようになっている。
【0034】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送装置14によるシートSTの搬送を停止させ、上流側を支持部材45の吸引機構46で保持する一方、下流側を搬送ローラー対R2で挟持した状態で行われる。なお、本実施形態においては、印刷を行うためにシートSTの搬送を停止したときに、シートSTの切断を行うようになっている。そして、切断されたカットシートCSは、搬送ローラー22〜26によって停止されることなく連続的に搬送され、反転経路で反転された後に、排紙部12aに排紙される。
【0035】
次に、搬送装置14の一部を構成するカール矯正機構17について説明する。
カール矯正機構17は、搬送ローラー23と、第1ローラーとしての搬送ローラー24と、第2ローラーとしての従動ローラー34とを構成要素の一部としている。また、カール矯正機構17は、センサー50と、ガイド部材51,52(図2参照)と、カムモーター53(図7参照)と、カム機構60(図2参照)とを備えている。
【0036】
センサー50は、制御装置100と電気的に接続された反射型の光学式センサーで、図示しない光源部と受光部とを有して、搬送経路形成部材38の下方となる位置に配置されている。センサー50は、光源部が上方に向けて出射した光の反射光を受光部が受光して、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力するようになっている。例えば、センサー50は、シートSTが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートSTが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー50の出力値がOFF値からON値に変化することで、搬送方向XにおけるシートSTの先端が検出される。
【0037】
図2及び図3に示すように、搬送ローラー22,23,24はそれぞれ幅方向Yに延びる軸部22a,23a,24aに支持されている。また、従動ローラー32,34は、それぞれ幅方向Yに延びる軸部32a,34aに支持されている。
【0038】
図4及び図5に示すように、従動ローラー32は、幅方向Yに沿って複数(本実施形態では6つ)設けられている。同図において右側の3つの従動ローラー32及び左側の3つの従動ローラー32は、それぞれ連結部32bによって連結されている。なお、図示は省略するが、搬送ローラー22も幅方向Yに沿って従動ローラー32と同数(本実施形態では6つ)設けられている。また、搬送ローラー23,24は幅方向Yに間隔をおいて複数(本実施形態では各7つ)設けられている。また、従動ローラー34は、幅方向Yにおいて中央付近に幅の小さいものが1つ設けられているとともに、その両側に幅の大きいものが各1つ(合計で3つ)設けられている。
【0039】
搬送経路形成部材38には、従動ローラー32及び搬送ローラー22と対応する位置にそれぞれ挿通孔38aが形成されている。そして、搬送ローラー22と従動ローラー32とは、挿通孔38aを通じて互いに接触するようになっている。また、搬送経路形成部材38には、搬送方向Xにおいて挿通孔38aと対応する位置であって、幅方向Yにおける中央付近となる位置に、センサー50の光を通過させるための通過孔38bが形成されている。
【0040】
図3に示すように、従動ローラー34は、搬送ローラー24との間にシートSTを挟持したときに、シートSTの搬送に伴って従動回転するとともに、搬送ローラー23との間でシートSTを屈曲させることで、シートSTのカール(巻きぐせ)を矯正する(デカールする)ようになっている。なお、搬送ローラー23は、搬送方向Xにおいて搬送ローラー24の上流側に配置されて搬送ローラー24に向けてシートSTを搬送するとともに、シートSTが屈曲されるときに、その屈曲部分の上流側を支持する支持部として機能する。
【0041】
図2及び図3に示すように、ガイド部材51,52は、搬送ローラー24に向けてシートSTを案内するために、搬送方向Xにおいて搬送ローラー24の上流側に配置されている。なお、ガイド部材51は搬送ローラー23によって搬送されるシートSTの裏面側(下面側)をガイドする一方、ガイド部材52は搬送ローラー23によって搬送されるシートSTの表面側(上面側)をガイドするようになっている。
【0042】
図2〜図6に示すように、ガイド部材51は、搬送方向Xの上流側に設けられた基端部51aと、基端部51aから搬送方向Xの下流側に向けて延設される櫛歯状の案内部51bとを有している。なお、図4及び図5に示すように、幅方向Yにおいて、ガイド部材51の案内部51bは、隣接する搬送ローラー23同士の間であって、シートSTの端部と対応する位置に配置されている。また、搬送経路形成部材38はガイド部材51の案内部51bよりも搬送方向Xの上流側に配置されている。さらに、図6に示すように、ガイド部材51の案内部51bには、搬送方向Xにおける上流側に向かうほど搬送経路形成部材38から離間するように屈曲する屈曲部51cが形成されている。
【0043】
図4〜図6に示すように、搬送経路形成部材38の搬送方向Xにおける下流端には、幅方向Yにおいてガイド部材51の案内部51bと対応する位置に、案内部51bの変位を許容するための切欠部38cが形成されている。なお、切欠部38cやガイド部材51を明示するために、図4〜図6ではガイド部材52の図示を省略しているとともに、図6では搬送ローラー22,23,24、従動ローラー32及びカットシートCSの図示を省略している。また、図4及び図5においては、カットシートCSを二点鎖線で図示している。
【0044】
図2及び図3に示すように、カム機構60は、本体ケース12に支持されたカム軸62と、カム軸62の回転に伴って回転する第1カム部材としてのカム部材63及び第2カム部材としてのカム部材64と、カム部材63,64の回転にそれぞれ従動するレバー65,66とを備えている。レバー65は、搬送方向Xにおいてカム軸62の上流側に配置されたレバー軸67を中心に回転可能となっている。また、レバー66は、搬送方向Xにおいてカム軸62の下流側に配置されたレバー軸68を中心に回転可能となっている。なお、図6に示すように、カム部材63,64及びレバー65,66はカム軸62の両端側にそれぞれ設けられている。
【0045】
レバー65は、レバー軸67から搬送方向Xの下流側に向けて延びる支持部65aにガイド部材51が固定されているとともに、支持部65aから搬送方向Xの下流側に向けて斜め下方向に延びる係合部65bがカム部材63と係合している。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図2における反時計回り方向に付勢され、常時は図2,図4及び図6に示す状態に保持されている。
【0046】
レバー66は、レバー軸68から下方に延びる係合部66aがカム部材64と係合している。レバー66において、レバー軸68から上方に延びる支持部66bの先端側には、従動ローラー34の軸部34aが回転自在に支持されている。また、レバー66の支持部66bには、ガイド部材52が固定されている。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図2における反時計回り方向に付勢され、常時は図2,図4及び図6に示す状態に保持されている。
【0047】
カム軸62は、カムモーター53の駆動に伴って回転するようになっている。そして、カム軸62が図2に示す状態から略180度回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が図3に示す位置まで回転する。そして、カム部材63の回転に従ってレバー65が図2における反時計回り方向に回転するとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図2における時計回り方向に回転する。
【0048】
また、カムモーター53の駆動に伴ってカム軸62が図3に示す状態から略180度回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が回転して図2に示す位置に戻る。また、カム部材63の回転に従ってレバー65が図3における時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻るとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図3における反時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻る。
【0049】
ガイド部材51は、レバー65の回転に伴って基端部51a側を中心に揺動することで、案内部51bが搬送経路を形成する案内位置(図2に示す位置)と、案内部51bが搬送経路から離間する退避位置(図3に示す位置)との間で変位する。そして、ガイド部材51は、案内位置においては、案内部51bのうち屈曲部51cよりも先端側の上面が搬送経路形成部材38の上面と略面一となってシートSTの支持面を構成するようになっている。このとき、ガイド部材51の屈曲部51cは、搬送経路形成部材38の切欠部38c内に配置される。
【0050】
従動ローラー34は、レバー66の回転に伴って、ほぼ搬送ローラー24の周面に沿う移動経路に沿って、従動ローラー34の周面が搬送経路から離間する待機位置(図2に示す位置)と、搬送ローラー24との間にシートSTを挟持してカールを矯正する矯正位置(図3に示す位置)との間を移動する。なお、矯正位置において、従動ローラー34は搬送ローラー24との離間距離がシートSTの厚さよりも短くなる位置に配置される。また、待機位置において、従動ローラー34は搬送ローラー24との離間距離がシートSTの厚さよりも長くなるように配置される。したがって、従動ローラー34が待機位置にあるときには、シートSTは従動ローラー34に挟持されることなく、搬送ローラー24によって図3に二点鎖線で示す搬送経路に沿って下流側に搬送される。
【0051】
図2に示すように、ガイド部材51は、搬送方向Xにおける長さが搬送ローラー23の直径より長くなっているとともに、案内部51bはその先端が搬送ローラー24にかかる位置まで延設されている。すなわち、ガイド部材51の案内部51bは、搬送方向Xにおける下流端が搬送ローラー24の周面の上流端よりも下流側に配置されている。また、従動ローラー34は、図3に示すように、矯正位置においてその周面が同図に二点鎖線で示す搬送経路と交差する態様となる。そのため、矯正位置にある従動ローラー34の周面と案内位置にあるガイド部材51の案内部51bとは互いに干渉することになる。
【0052】
こうしたガイド部材51と従動ローラー34との干渉を回避するために、本実施形態では、従動ローラー34が矯正位置に向けて下方に移動する場合、ガイド部材51は従動ローラー34における矯正位置から待機位置への移動経路から下方に離間した退避位置に移動可能となっている。また、カム軸62が回転すると、ガイド部材51はカム部材63の回転に伴って移動するとともに、従動ローラー34はカム部材64の回転に伴って移動する。そのため、ガイド部材51の案内部51bは、従動ローラー34が待機位置から矯正位置に向けて下方に移動するタイミングで、案内位置から退避位置に向けて下方に移動することになる。
【0053】
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。
図7に示すように、制御装置100は、制御手段としてのコンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103,104,105とを備えている。コンピューター101は、バス108を介して、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103,104,105に電気的に接続されている。
【0054】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112、不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや、CPU110による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0055】
コンピューター101は、CPU110がROM111等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド44を制御するとともに、モーター駆動回路103,104,105を介してそれぞれ回転モーター19、搬送モーター37及びカムモーター53を制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー40からの検出信号に基づいて搬送モーター37を制御する。また、コンピューター101は、センサー50の検出結果等に基づいてカムモーター53を制御する。
【0056】
次に、プリンター11におけるカール矯正処理について説明する。
プリンター11においては、記録処理が終了して切断されたカットシートCSに対してカール矯正処理(デカール処理)が施される。なお、カットシートCSの搬送方向Xにおける長さが長い場合には、切断される前のシートSTの先端側がカール矯正機構17に到達していても、記録部15に配置されたシートSTの後端側において記録処理が実行されていることがある。
【0057】
そのため、常時は、従動ローラー34が待機位置に配置されるとともにガイド部材51が案内位置に配置された状態で、シートSTに対してカールの矯正を行うことなく、シートSTの搬送が行われる。そして、シートSTの切断が完了してカットシートCSの連続的な搬送が開始された後に、コンピューター101の制御によって従動ローラー34が待機位置から矯正位置に移動されて、シートSTのカール矯正処理が開始される。
【0058】
一方、カットシートCSの搬送方向Xにおける長さが短い場合には、切断を行ったときにカットシートCSの先端側がカール矯正機構17に到達していないことがある。こうした場合にも、従動ローラー34と搬送ローラー24との間にカットシートCSの先端を確実に挿通させるために、コンピューター101は、待機位置にある従動ローラー34と搬送ローラー24との間にシートSTが挿通された状態で、従動ローラー34を待機位置から矯正位置に移動させるようになっている。
【0059】
次に、シートSTの切断が終了したときにコンピューター101が実行するカール矯正処理ルーチンについて、図8に基づいて説明する。
まず、ステップS11では、コンピューター101がカットシートCSの搬送方向Xにおける長さLを取得して、ステップS12に進む。
【0060】
ステップS12では、コンピューター101が取得したカットシートCSの長さLに基づいて、カール矯正動作を開始するタイミングを決めるカール矯正動作開始カウント値Ns及びカール矯正動作を終了するタイミングを決めるカール矯正動作終了カウント値Neを決定して、ステップS13に進む。
【0061】
ステップS13では、コンピューター101がカットシートCSの長さLが予め規定された閾値La未満であるか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カットシートCSの長さLが閾値La未満であった場合にはステップS14に進む一方、カットシートCSの長さLが閾値La以上であった場合にはステップS15に進む。なお、閾値Laは、カットシートCSの長さを判定する値として予め規定し、不揮発性メモリー113などに記憶させておくことができる。例えば、搬送方向Xにおいて、シートSTの切断を行う位置とセンサー50がシートSTの先端を検出する位置との距離をLb(図1参照)とすると、La≦Lbとすることができる。
【0062】
ステップS14では、センサー50がカットシートCSの先端を検出したか否かをコンピューター101が判定する。そして、コンピューター101は、センサー50がカットシートCSの先端を検出した場合にはステップS16に進む一方、センサー50がカットシートCSの先端を検出していなかった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0063】
ステップS15では、コンピューター101がカットシートCSの先端側がフィードローラーFRにニップ(挟持)されたか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カットシートCSがフィードローラーFRにニップされた場合にはステップS16に進む一方、カットシートCSがフィードローラーFRにニップされていなかった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0064】
なお、カットシートCSの先端側がフィードローラーFRにニップされたか否かは、カットシートCSの長さLとシートSTを切断してからのカットシートCSの搬送量とから判断することもできる。あるいは、搬送方向XにおいてフィードローラーFRの下流側に先端検出センサーを設ければ、該先端検出センサーの検出結果に基づいてカットシートCSの先端側がフィードローラーFRにニップされたか否かを判断することもできる。
【0065】
ステップS16では、コンピューター101がカウントを開始して、ステップS17に進む。
ステップS17では、コンピューター101がカウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になった場合にはステップS18に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0066】
ステップS18では、コンピューター101がカムモーター53を駆動させることで、カール矯正動作を開始させて、ステップS19に進む。具体的には、カムモーター53の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、従動ローラー34を待機位置から矯正位置に移動させるとともに、ガイド部材51を案内位置から退避位置に移動させる。これにより、ガイド部材51によって搬送ローラー24と従動ローラー34との間に先端側が挿通されたカットシートCSは、搬送ローラー23との間でカールの巻き方向と逆方向に屈曲され、カールが矯正される。
【0067】
ステップS19では、コンピューター101がカウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になった場合にはステップS20に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0068】
ステップS20では、コンピューター101がカムモーター53を駆動させることで、カール矯正動作を終了させて、処理を終了する。具体的には、カムモーター53の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、従動ローラー34を矯正位置から待機位置に移動させるとともに、ガイド部材51を退避位置から案内位置に移動させる。すなわち、ガイド部材51は、従動ローラー34の矯正位置から待機位置への移動に伴って、退避位置からシートSTを搬送経路に沿って搬送ローラー24まで案内する案内位置へ移動する。
【0069】
なお、カールが矯正されたカットシートCSは、反転経路形成部材39に沿って搬送される過程で反転され、印刷が施された表面が下側を向いた状態で排紙部12aに排紙される。また、従動ローラー34は、カットシートCSを挟持する際に、搬送ローラー24から上方に離間した待機位置から搬送方向Xにおいて待機位置よりも上流側となる矯正位置に移動する。そのため、デカールされたシートSTは搬送方向Xの下流側となる先端側が上方に向けて傾斜するように搬送ローラー24によって搬送され、反転経路にスムーズに進入するようになっている。
【0070】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シートSTは、先端側がカールしていても、搬送方向Xに延びる案内部51bを有するガイド部材51により搬送経路に沿うように案内されるので、カールした先端側部分が搬送経路から離間することなく、搬送ローラー24まで搬送される。そして、そのガイド部材51は、従動ローラー34が矯正位置に移動する場合、従動ローラー34における矯正位置から待機位置への移動経路から離間した退避位置に移動可能であるので、従動ローラー34が移動する場合にも、従動ローラー34との干渉を回避することができる。したがって、カールが矯正される前のシートSTを搬送する際の搬送不良の発生を抑制することができる。
【0071】
(2)従動ローラー34が矯正位置から待機位置に移動したときには、ガイド部材51は退避位置から案内位置に移動し、その案内位置においてシートSTを搬送ローラー24まで確実に案内することができる。
【0072】
(3)搬送ローラー23によってシートSTを搬送ローラー24に向けて確実に搬送することができる。また、ガイド部材51は搬送方向Xにおける長さが搬送ローラー23の直径よりも長いので、シートSTのカールした先端側部分が搬送ローラー23に引っかかったり巻き付いたりするのを抑制することができる。そして、ガイド部材51の搬送方向Xにおける下流端は搬送ローラー24の周面の上流端よりも下流側に配置されているので、シートSTの先端側部分がカールしている場合にも、シートSTを搬送ローラー24の周面上まで確実に案内することができる。
【0073】
(4)ガイド部材51の案内部51bは、幅方向Yに隣接する搬送ローラー23同士の間に配置されているので、幅方向YにおいてシートSTの端部と対応する位置に案内部51bを配置することで、シートSTの端部を確実に案内することができる。
【0074】
(5)ガイド部材51は搬送方向Xの上流側に設けられた基端部51a側を中心に揺動するので、シートSTの搬送を妨げることなく、案内部51bを変位させることができる。そして、案内部51bは、案内位置において櫛歯状の搬送経路を形成するので、シートSTとの摺接負荷を抑制しつつ、シートSTを案内することができる。また、搬送経路形成部材38には切欠部38cが設けられているので、搬送経路形成部材38と案内部51bとの隙間を小さくし、シートSTがその隙間に引っかかるのを抑制することができる。
【0075】
(6)ガイド部材51の案内部51bには屈曲部51cが形成されているので、上流側から搬送されてきたシートSTの先端側部分がカールしていた場合にも、その先端側部分を屈曲部51cで案内部51bの先端側に案内することができる。
【0076】
(7)カム部材64の動きをカム部材63の動きに連動させて、従動ローラー34が待機位置から矯正位置に移動するタイミングで、ガイド部材51を退避位置に移動させることができる。
【0077】
(8)搬送ローラー24の搬送方向Xの上流側に搬送ローラー23が配置されているので、シートSTの先端側がカールしている場合にも、搬送ローラー23が回転することでシートSTの引っかかりを抑制し、シートSTの先端側部分を搬送ローラー24側に向けて確実に搬送することができる。したがって、搬送ローラー24の上流側に従動ローラーが配置されている場合と比較して、カール矯正処理を施すためにシートSTを搬送する際に、シートSTのカールに起因する搬送不良の発生を抑制することができる。
【0078】
(9)従動ローラー34は矯正位置において搬送ローラー24との間にシートSTを挟持するときに、シートSTのカールを矯正することができる。また、従動ローラー34は、矯正位置から待機位置に移動することで、シートSTを屈曲させることなく通過させることができる。したがって、カールを矯正する必要がないときには、従動ローラー34を待機位置に移動させることで、シートSTを搬送する際の負荷を低減することができる。
【0079】
(10)従動ローラー34が矯正位置に移動すると、シートSTは搬送方向Xの下流側となる先端側が上方に向けて傾斜するように搬送ローラー24によって搬送されるので、シートSTを反転経路にスムーズに進入させることができる。また、従動ローラー34を駆動ローラーとすると、上方に向かうシートSTの先端が駆動ローラーの回転に伴って巻きつくような態様となってしまうが、従動ローラー34は従動ローラーなので、シートSTが従動ローラー34に巻きつくのを抑制することができる。
【0080】
(11)従動ローラー34を待機位置に移動させておくことで、シートSTを従動ローラー34と搬送ローラー24との間にスムーズに挿通させることができる。そして、従動ローラー34と搬送ローラー24との間にシートSTが挿通された状態で従動ローラー34が待機位置から矯正位置に移動されるので、シートSTを確実に挟持することができる。
【0081】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・従動ローラー34は、例えばシートSTの厚さに応じて複数の矯正位置や待機位置に移動可能な構成としてもよい。
【0082】
・搬送ローラー22,23,24及び従動ローラー32,34の設置数や幅方向Yにおけるサイズなどは、任意に変更することができる。
・センサー50は光学式センサーに限らず、接触式センサーなど、任意の方式のセンサーに変更することができる。
【0083】
・フィードローラーFRは、反転経路形成部材39の途中となる位置に設けてもよい。
・フィードローラーFRや反転経路形成部材39を備えず、例えば、図9に示すように、カットシートCSを反転させることなく、本体ケース12に設けられた開口部12bを通じて、その外部に設けられた排紙部12cに排出するようにしてもよい。なお、この場合には、カットシートCSが開口部12bから排出される過程で、その先端側が同図に二点鎖線で示すように自重でカールしてしまうことがある。そして、カールが矯正されたカットシートCSの先端側のみがこのようにカールしてしまうとバランスの悪い形状になってしまうので、このような場合には、カットシートCSの後端側にのみカール矯正処理を施すようにしてもよい。これにより、同図の排紙部12c上に図示されたカットシートCSのように、先端側と後端側とがそれぞれ逆方向にカールしたバランスの良い形状にすることができる。
【0084】
・上記実施形態では、シートSTはその先端側が搬送経路から下方に離間するようにカールする状態で搬送されているが、シートSTの先端側がその他の方向(例えば上方や側方)にカールする状態で搬送されるようにしてもよい。そして、この場合には、搬送経路を挟んでシートSTの先端側がカールする側に搬送ローラー23,24及びガイド部材51を配置する一方、搬送ローラー24と対向する位置に従動ローラー34を配置すればよい。
【0085】
・シートSTは、用紙に限らず、樹脂製フィルムや金属製フィルムなど、ロール状に巻き重ねられた状態で保持されることで巻きぐせがつく任意のシート状媒体に適用することができる。
【0086】
・記録処理は、印刷や印字を行うものに限らず、例えばシート状媒体にシールを付したり、箔を転写したり、孔をあけたり、切り目を入れたりする各種処理としてもよい。そして、これら各処理を行う処理装置に本発明の搬送装置を備え、これら処理を行う前にカールを矯正するようにしてもよいし、処理が施された後にカールを矯正するようにしてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
11…記録装置としてのプリンター、13…保持部、14…搬送装置、23…搬送ローラー、24…第1ローラーとしての搬送ローラー、34…第2ローラーとしての従動ローラー、38…搬送経路形成部材、38c…切欠部、44…記録手段としての記録ヘッド、51…ガイド部材、51a…基端部、51b…案内部、51c…屈曲部、60…カム機構、62…カム軸、63…第1カム部材としてのカム部材、64…第2カム部材としてのカム部材、RS…ロール体、ST…シート状媒体としてのシート、X…搬送方向、Y…幅方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿ってシート状媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する第1ローラーと、
前記搬送方向に延びる案内部を有して前記第1ローラーの前記搬送方向における上流側に配置されるガイド部材と、
前記第1ローラーとの間に前記シート状媒体を挟持して該シート状媒体のカールを矯正する矯正位置と、該矯正位置よりも前記搬送経路から離間した待機位置との間を移動可能な第2ローラーと、を備え、
前記ガイド部材は、前記第2ローラーが前記矯正位置に移動する場合、前記第2ローラーにおける前記矯正位置から前記待機位置への移動経路から離間した退避位置に移動可能であることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記第2ローラーの前記矯正位置から前記待機位置への移動に伴って、前記退避位置から前記シート状媒体を前記搬送経路に沿って前記第1ローラーまで案内する案内位置へ移動することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送方向の上流側から前記第1ローラーに向けて前記シート状媒体を搬送する搬送ローラーをさらに備え、
前記ガイド部材は、前記搬送方向において、前記搬送ローラーの直径よりも長く、前記搬送方向における下流端が前記第1ローラーの周面の上流端よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ローラーは、前記搬送方向と交差する前記シート状媒体の幅方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記ガイド部材の前記案内部は、前記幅方向において隣接する前記搬送ローラー同士の間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の前記案内部よりも前記搬送方向の上流側に配置された搬送経路形成部材をさらに備え、
前記ガイド部材は、前記搬送方向の上流側に設けられた基端部と、該基端部から搬送方向の下流側に向けて延設される櫛歯状の前記案内部とを有して、前記基端部側を中心に揺動することで、前記案内部が前記搬送経路を形成する前記案内位置と、前記案内部が前記搬送経路から離間する前記退避位置との間で変位し、
前記搬送経路形成部材の前記搬送方向における下流端には、前記搬送方向と交差する前記シート状媒体の幅方向において前記案内部と対応する位置に、前記案内部の変位を許容する切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の前記案内部には、前記搬送方向における上流側に向かうほど前記搬送経路形成部材から離間するように屈曲する屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
カム軸と、該カム軸の回転に伴って回転する第1カム部材及び第2カム部材とを有するカム機構をさらに備え、
前記ガイド部材は前記第1カム部材の回転に伴って移動するとともに、前記第2ローラーは前記第2カム部材の回転に伴って移動することを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
シート状媒体をロール状に巻き重ねたロール体の状態で保持する保持部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記シート状媒体に対して記録を施す記録手段と、
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の搬送装置と、を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−35992(P2012−35992A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179551(P2010−179551)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】