説明

搬送装置及び記録装置

【課題】第1ローラを回転する駆動モータを用いて、被記録材を挟むニップ力の大きさ切り替え、被記録材を搬送方向の上流側に戻すときにニップ力を小さくし、解除部材によって被記録材のニップ状態の解除を可能にする。
【解決手段】LFローラ3にピンチローラ4を押圧させるねじりコイルばね9と、ニップ状態を解除するためのニップ解除レバー13と、ねじりコイルばね9がホルダ11を付勢する付勢力を切り替える切り替えカム8と、駆動モータ1によって回転されるLFローラ3に連動して切り替えカム8を作動させる第1ギア5、第2ギア6、第3ギア7と、を備える。また、用紙12に記録を行っているときに用紙12を搬送する順方向に回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させない非連動状態と、順方向とは逆方向に回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させる連動状態とに切り替えるワンウエイクラッチ14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のローラによって被記録材を挟んで搬送する搬送装置、及び被記録材に液体を吐出して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用する用紙の厚みにかかわらずに、厚みが異なる様々な用紙を搬送可能な技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の構成では、搬送ローラとピンチローラとの間に挟む用紙の厚みに応じて、搬送ローラに対するピンチローラの位置を切り替えることによって、厚みが異なる種々の用紙を搬送可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許7,506,870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載の構成は、厚みが同一の用紙を搬送するときに用紙のニップ力を切り替えることを主の目的とするものではなく、かつ、搬送ローラとニップローラによって用紙が挟まれたニップ状態を手動で解除することができない。
【0006】
特許文献1に記載の構成では、フェイルセーフの観点から、用紙詰まりが発生したときに電源が強制的に「オフ」にされている。しかし、このような場合には、用紙のニップ状態を手動で解除して、用紙詰まりを起こしている用紙を取り除くことができないという問題がある。用紙詰まりが発生した場合には、手動で用紙を取り除くことで、迅速に復旧することが可能になるので、用紙のニップ状態を手動で解除できるように構成することが望ましい。
【0007】
また、搬送方向とは逆方向に用紙を搬送する場合には、搬送ローラとピンチローラとの間に挟まれた用紙が、ニップ力によって損傷するおそれがあり、ニップ力を小さくすることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題のいずれかを解決し、被記録材を搬送方向と逆方向に搬送するときにニップ力を小さく切り替えることを可能にし、解除部材によって被記録材のニップ状態を解除することができる搬送装置及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る搬送装置は、被記録材を挟んで搬送する第1ローラ及び第2ローラと、第1ローラを回転する駆動モータと、第1ローラに対して接離する方向に第2ローラを移動可能に支持するローラ支持部材と、第1ローラに第2ローラを押圧させる方向にローラ支持部材を付勢する付勢部材と、付勢部材の付勢力に抗してローラ支持部材を移動させ、第1ローラと第2ローラとの間に被記録材を挟んだニップ状態を解除するための解除部材と、付勢部材に当接する状態が変化することによって、付勢部材がローラ支持部材を付勢する付勢力を切り替える切り替え部材と、駆動モータによって回転される第1ローラに連動して切り替え部材を作動させる駆動伝達機構と、を備える。また、被記録材に記録を行っているときに被記録材を搬送する順方向に回転する第1ローラと駆動伝達機構とを連動させない非連動状態と、順方向とは逆方向に回転する第1ローラと駆動伝達機構とを連動させる連動状態とに切り替えるクラッチ手段を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1ローラを回転する駆動モータを、ニップ力の大きさを切り替えるための駆動力として利用することによって、駆動モータを増やすことなくニップ力の大きさを切り替えることができる。また、被記録材の交換時や、被記録材が搬送径路上に詰まったときなどは、解除部材によって第2ローラを第1ローラから退避させて、第1ローラと第2ローラとの間から被記録材を取り除くことができる。したがって、本発明によれば、安価な構成でニップ力を切り替えることが可能になり、被記録材の交換時の作業が容易になり、搬送径路上に被記録材が詰まった場合などの異常状態が発生したときに容易に復帰することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のインクジェット記録装置全体を示す斜視図である。
【図2】実施形態のインクジェット記録装置の内部構造を示す斜視図である。
【図3】実施形態において、所定のニップ力よりも小さいニップ力に切り替えられた状態を示す側面図である。
【図4】実施形態において、所定のニップ力に切り替えられた状態を示す側面図である。
【図5】実施形態において、ニップ力を解除した状態を示す側面図である。
【図6】実施形態における搬送部が、ニップ力を切り替える動作を説明するために示す側面図である。
【図7】実施形態における搬送部が、用紙の先端を頭出しする動作を説明するために示す側面図である。
【図8】実施形態において、ニップ力を制御する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な本実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態のインクジェット記録装置の全体と、内部構成の概略構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置)は、被記録材としてのロール紙12(以下、用紙12と称する)を回転可能に保持し、用紙12を給紙する供給部としての給紙部101を備える。記録装置は、給紙部101から給紙された用紙12を搬送する搬送装置としての搬送部103と、搬送部103から搬送された用紙12を支持しながら用紙12に液体であるインクを吐出して記録を行う記録手段としての記録部106と、を備える。また、記録装置は、画像が記録された用紙12を装置外に排出するための排紙部104と、記録画像の仕様設定を行うための操作部107と、を備える。
【0015】
給紙部101は、ロール状の用紙12を送り出す給送ローラとしての一対の給紙ローラを備える。搬送部103は、記録動作時に用紙12を所定量ずつ搬送するための第1ローラとしての搬送ローラであるLF(ラインフィード)ローラ3と、LFローラ3に所定の加圧力で付勢しながら従動回転する第2ローラとしての複数のピンチローラ4と、を備える。記録部106は、用紙12を吸引しながら平面状に保持するためのプラテン110と、記録ヘッド111を保持し、搬送方向Yに直交する走査方向Xに往復走査するキャリッジ102と、を備える。
【0016】
図2に示すように、記録装置の内部には、支持体112が設けられており、この支持体112上にプラテン110が配置され、記録部106上の搬送方向Yの上流側に用紙12を搬送する搬送部103が形成されている。
【0017】
プラテン110は、記録部106において、記録ヘッド111と記録部106上の用紙12との間に所定の隙間を形成するように用紙12を案内支持する。本実施形態におけるプラテン110は、用紙12を案内するプラテン110の支持面に用紙12を吸着させることができる吸引プラテンとして構成されている。このプラテン110は、内部に密閉空間を構成する支持体112の上面に支持され、この密閉空間とプラテン110の吸引口とが連通されている。本実施形態における吸引力発生部は、この支持体112の右端部に配置された吸引ファンを有する吸引ファンユニット114によって構成されている。
【0018】
さらに、支持体112の長手方向に沿って延設されたメインレール(図示せず)に、主走査方向Xに往復移動するキャリッジ102が支持されている。搬送方向Yにおける本体正面側(副搬送方向の上流側)から見て用紙12の右端部を基準側115a、左端部を反基準側115bとする。そして、記録ヘッド111が搭載されたキャリッジ102は、基準側115aと反基準側115bとの間を往復移動して、プラテン110上に支持された用紙12に、記録ヘッド111からインクを吐出して記録を行う。
【0019】
次に、図3〜図7を参照して、本実施形態の記録装置の搬送装置を説明する。
【0020】
本実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態では、本発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明を解決するために必須であることを限定するものではない。
【0021】
図3に、所定のニップ力よりも小さいニップ力に切り替えられた状態の側面図を示す。
【0022】
図3に示すように、搬送装置としての搬送部103は、LFローラ3及びピンチローラ4と、LFローラ3を駆動するベルト2a及びプーリ2bを有する駆動機構2と、駆動機構2を介してLFローラ3を回転する駆動モータ1と、を備える。駆動モータ1は、制御部20に電気的に接続されており、制御部20によって駆動制御される。
【0023】
また、搬送部103は、LFローラ3に対して接離する方向にピンチローラ4を移動可能に支持するローラ支持部材としてのホルダ11と、ホルダ11を付勢してピンチローラ4をLFローラ3に押圧するための付勢部材としてのねじりコイルばね9と、を備える。また、搬送部103は、LFローラ3とピンチローラ4とで用紙12が挟まれたニップ状態の解除を行う解除部材としてのニップ解除レバー13を備える。
【0024】
ホルダ11は、中央部が回転軸11aに支持されており、一端部にピンチローラ4が回転自在に設けられている。ねじりコイルばね9は、一端がホルダ11に当接されて設けられている。ニップ解除レバー13は、一端部が回転軸13aに支持されており、後述するニップ解除カム10が、ニップ解除レバー13の一端部に固定されている。ニップ状態の解除を行うときに、ニップ解除レバー13を手動で回動させることによって、ニップ解除カム10がホルダ11を回転させ、ピンチローラ4をLFローラ3から退避させる。
【0025】
また、搬送部103は、ねじりコイルばね9に当接する状態が変化することによって、ホルダ11を付勢するねじりコイルばね9の付勢力を切り替える切り替え部材としての切り替えカム8を備える。また、搬送部103は、駆動モータ1によって回転されるLFローラ3に連動してニップ力を切り替える切り替えカム8を作動させる駆動伝達機構としての第1ギア5、第2ギア6、第3ギア7を備える。
【0026】
切り替えカム8は、回転軸8aに支持されており、ねじりコイルばね9の他端部に当接されて配置されている。第1ギア5は、LFローラ3の回転軸(不図示)に設けられている。第2ギア6は、第1ギア5に噛み合わされて回転自在に支持されている。第3ギア7は、第2ギア6に噛み合わされて、切り替えカム8の回転軸8aに支持されている。
【0027】
また、搬送部103は、LFローラ3が順方向とは逆方向に回転するときのみニップ力を切り替える切り替えカム8を作用させるクラッチ手段としてのワンウエイクラッチ14を有する。
【0028】
ワンウエイクラッチ14は、LFローラ3の回転軸に設けられている。ワンウエイクラッチ14は、回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させない非連動状態と、回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させる連動状態とに切り替える。ワンウエイクラッチ14は、記録部106によって用紙12に記録を行っているときに用紙12を搬送する順方向にLFローラ3が回転する場合、回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させずに非連動状態になる。また、ワンウエイクラッチ14は、LFローラ3が順方向とは逆方向に回転する場合、回転するLFローラ3と第1ギア5とを連動させることで連動状態になる。
【0029】
LFローラ3が順方向とは逆方向に回転するときに、ワンウエイクラッチ14によってLFローラ3と第1ギア5が連結されることで、第1ギア5から第3ギア7までが連結駆動される。第3ギア7が回転することで切り替えカム8が回転し、切り替えカム8の回転に伴って、切り替えカム8がねじりコイルばね9に当接する状態が変化する。これによって、ホルダ11を付勢するねじりコイルばね9の付勢力が切り替えられ、ピンチローラ4によるニップ力の大きさが切り替えられる。
【0030】
また、切り替えカム8の回転軸8aには、第3ギア7と切り替えカム8とを連動させる連動状態と、第3ギア7と切り替えカム8とを連動させない非連動状態とに切り替える、他のクラッチ手段としての電磁クラッチ16が設けられている。電磁クラッチ16は、制御部20によって制御されている。電磁クラッチ16を制御することによって、搬送方向に対する用紙12の斜行の補正時に用紙12を所定量だけ送り出すときと、その後、用紙12の先端を記録開始位置まで巻き戻すときに、所定のニップ力よりもニップ力を小さくする。また、用紙12の先端が記録開始位置まで戻した後、記録開始時には、電磁クラッチ16を制御することによって、所定のニップ力に戻す。
【0031】
用紙12の斜行補正時には、記録開始位置を越えて搬送された用紙12の先端を、記録開始位置まで巻き戻すときに、LFローラ3が逆転することになる。このとき、逆転するLFローラ3に連動して回転する第3のギア7によって切り替えカムが回転した場合、切り替えカム8の回転に伴ってニップ力が変動し、ニップ力が切り替わってしまう。このため、斜行補正時に用紙12の先端を記録開始位置まで巻き戻すときに、電磁クラッチ16によって第3ギア7と切り替えカム8とが連動しない非連動状態に切り替えられる。これによって、斜行補正時に用紙12の先端を記録開始位置まで巻き戻すときに、第3ギア7が空回りし、第3ギア7によって切り替えカム8が回転されず、ニップ力が変動しないように構成されている。つまり、斜行補正時に用紙12の先端が記録開始位置まで搬送されるまで、電磁クラッチ16によって非連動状態に切り替えられ、所定のニップ力よりも小さいニップ力に保たれている。
【0032】
上述のようにニップ力を切り替えることで、用紙12の斜行補正時などにLFローラ3とピンチローラ4によって用紙12を複数回挟み込むことに伴う用紙12への負荷が低減される。
【0033】
また、搬送部103に用紙12を供給する給紙部101は、図3に示すように、一対の給紙ローラ15が、LFローラ3に対して搬送方向の上流側に配置されている。
【0034】
切り替えカム8は、用紙12の材質、仕様等の種類、または外形寸法に応じて、ニップ力の大きさを3段階以上に切り替える。切り替えカムの外形に応じて、切り替えカムがねじりコイルばねの端部に当接する状態が複数段階で変化するように構成することで、ニップ力を複数段階で容易に切り替えることができる。
【0035】
図4に、ニップ力が大きい所定のニップ力に切り替えられた状態の側面図を示す。
【0036】
図4に示すように、記録部106によって用紙12に記録を行う場合、予め、LFローラ3が逆方向に回転することで、ワンウエイクラッチ14によってLFローラ3と第1ギア5とが連動され、第1ギア5から第3ギア7までが連結駆動される。第3のギア7が回転することによって、切り替えカム8を回転させ、切り替えカム8の回転に伴って用紙12のニップ力を変化させ、所定のニップ力に切り替える。
【0037】
続いて、LFローラ3が順方向に回転するときに、ワンウエイクラッチ14によってLFローラ3と第1ギア5とが連動されず、第1ギア5から第3ギア7までが連結駆動されない。これによって、LFローラ3の回転に伴って、所定のニップ力で用紙12が搬送される。
【0038】
図5に、ニップ状態を解除した状態の側面図を示す。図5に示すように、ニップ状態の解除を行うニップ解除レバー13によって、ホルダ11が回動され、ピンチローラ4がLFローラ3から退避される。用紙12の紙詰まり時などの異常事態には、手動操作レバーであるニップ解除レバー13を操作することによって、LFローラ3からピンチローラ4を退避させることができる。これにより、ピンチローラ4とLFローラ3との間から用紙12を容易に取り除くことが可能になり、異常状態から容易に復帰することができる。
【0039】
図6に、ニップ力を切り替える動作を説明するための側面図を示す。
【0040】
図6に示すように、LFローラ3が順方向とは逆方向に回転するときに、ワンウエイクラッチ14によってLFローラ3と第1ギア5とが連結され、第1ギア5から第3ギア7までが連動されることによって、切り替えカム8を回転させる。切り替えカム8の回転に伴って、切り替えカム8がねじりコイルばね9に当接する状態が変化する。これによって、ホルダ11を付勢するねじりコイルばね9の付勢力が切り替えられ、ピンチローラ4によるニップ力の大きさが切り替えられる。その結果、図3に示したように、所定のニップ力よりもニップ力が小さい状態に切り替えられる。
【0041】
図7に、用紙12の先端を頭出しする動作を説明するための側面図を示す。
【0042】
用紙12を給紙部101にセットするときは、ニップ位置で用紙12の先端が挟持される前にニップ力を所定の力に予め切り替えておく。また、ピンチローラ4とLFローラ3の間に用紙12が挟持されている状態でニップ力を切り替える場合、LFローラ3が逆方向に回転することで、所定のニップ力よりも小さいニップ力に切り替わり、用紙12の搬送方向とは逆方向に用紙12が戻される。続いて、LFローラ3を順方向に回転することによって用紙12の先端が記録開始時の所定の位置に戻され、用紙12が頭出しされる。
【0043】
搬送部103のLFローラ3とピンチローラ4によるニップ力を制御する処理について、図8を参照して説明する。
【0044】
図8に示すように、キャリッジ102がホームポジションに移動した後、初期化動作を開始し(ステップ51)、LF及びPE(ペーパエンド)センサ(不図示)によって用紙の有無を判定する(ステップ52)。ステップ52に示すように、用紙が有る場合にはステップ53に移行し、用紙が無い場合にはステップ54に移行する。用紙が無い場合には、LFローラ3の初期化動作を行う(ステップ54)。用紙が有る場合には、その用紙がロール紙かカット紙であるかを判定する(ステップ53)。用紙がロール紙である場合にはステップ56に移行し、用紙がカット紙である場合にはステップ55に移行する。
【0045】
用紙がカット紙である場合には、カット紙の排紙シーケンスを行い、カット紙を排出する(ステップ55)。用紙がロール紙である場合には、用紙の設定が小さいニップ力(弱ニップ)であるか、大きいニップ力(強ニップ)であるか判定する(ステップ56)。ステップ56において用紙の設定が弱ニップである場合には、ステップ57に移行し、ニップ状態の用紙のニップ力が小さいか否かを判定する。ニップ状態の用紙のニップ力が小さく、ニップ力が設定された通りである場合には、ロール紙の斜行(蛇行)を補正するシーケンスを開始する(ステップ58)。ニップ状態の用紙のニップ力が大きく、ニップ力が設定と異なる場合には、ニップ力の大きさの切り替えるために切り替えシーケンスを開始し、ニップ力を切り替えた後、ステップ58に移行する。
【0046】
また、ステップ56において用紙の設定が強ニップである場合には、ステップ60に移行し、ニップ状態の用紙のニップ力が大きいか(所定のニップ力であるか)否かを判定する。ニップ状態の用紙のニップ力が大きく、ニップ力が設定された通りである場合には、ロール紙の蛇行を補正するシーケンスを開始する(ステップ58)。ニップ状態の用紙のニップ力が小さく、ニップ力が設定と異なる場合には、ニップ力の大きさの切り替えるために切り替えシーケンスを開始し、ニップ力を切り替えた後、ステップ58に移行する。
【0047】
上述したように、本実施形態の記録装置によれば、LFローラ3を回転する駆動モータを、ニップ力の大きさを切り替えるための駆動力として利用することによって、駆動モータ1を増やすことなくニップ力の大きさを切り替えることができる。また、用紙12を取り外す交換時や、用紙12が搬送径路上に詰まったときなどは、解除部材を手動で操作することによって、ピンチローラ4をLFローラ3から退避させて、ピンチローラ4とLFローラ3との間から用紙12を取り除くことができる。したがって、本発明によれば、安価な構成でニップ力を切り替えることが可能になり、用紙12の交換時の作業が容易になり、搬送径路上に用紙12が詰まった場合などの異常状態が発生したときに容易に復帰することが可能になる。
【0048】
また、用紙12の搬送方向に対する斜行補正時において、用紙12を所定量送り出し、その後、用紙12を記録開始位置まで巻き戻すときには、ニップ力を小さくし、記録開始時に所定のニップ力に戻される。これによって、斜行補正時に、用紙12を複数回挟み込むことに伴う用紙12への負荷を低減し、用紙12の損傷を防ぐことができる。
【0049】
また、本実施形態では、搬送部103のLFローラ3とピンチローラ4によって用紙12を挟むニップ力を切り替えるように構成されたが、給紙部101の一対の給紙ローラ15に適用されてもよい。この構成の場合にも、一対の給紙ローラ15によって用紙12を挟むニップ力を切り替えることで、上述した実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本発明に係る搬送装置は、搬送部103と給紙部101の両方に適用されてもよく、用紙の搬送動作の必要に応じてニップ力の大きさを切り替えることで、用紙12の損傷を更に良好に防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態の記録装置は、図示しないが、測色手段としての測色部を備え、搬送部103によって搬送された用紙12に記録されている画像を測色することが可能に構成されている。測色部によって用紙12に記録された画像を測色するとき、比較的大きなニップ力である所定のニップ力で用紙12を挟むことを避ける場合には、測色を行う用紙12を給紙部101にセットする前に予め、切り替えカム8によってニップ力が小さくされる。
【0051】
なお、本発明は、ロール状の被記録材を搬送する搬送装置に限定されるものではなく、カット紙を搬送する搬送装置に適用されてもよい。また、本発明は、搬送装置や、インクジェット記録装置に限定されるものではなく、例えばファクシミリ装置、複写機等の他の装置に用いられて好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 駆動モータ
3 LFローラ
4 ピンチローラ
5 第1ギア
6 第2ギア
7 第3ギア
8 切り替えカム
9 ねじりコイルばね
11 ホルダ
12 用紙
13 ニップ解除レバー
14 ワンウエイクラッチ
103 搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を挟んで搬送する第1ローラ及び第2ローラと、
前記第1ローラを回転する駆動モータと、
前記第1ローラに対して接離する方向に前記第2ローラを移動可能に支持するローラ支持部材と、
前記第1ローラに前記第2ローラを押圧させる方向に前記ローラ支持部材を付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記ローラ支持部材を移動させ、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に被記録材を挟んだニップ状態を解除するための解除部材と、
前記付勢部材に当接する状態が変化することによって、前記付勢部材が前記ローラ支持部材を付勢する付勢力を切り替える切り替え部材と、
前記駆動モータによって回転される前記第1ローラに連動して前記切り替え部材を作動させる駆動伝達機構と、
被記録材に記録を行っているときに被記録材を搬送する順方向に回転する前記第1ローラと前記駆動伝達機構とを連動させない非連動状態と、前記順方向とは逆方向に回転する前記第1ローラと前記駆動伝達機構とを連動させる連動状態とに切り替えるクラッチ手段と、を備える搬送装置。
【請求項2】
前記第1ローラが前記順方向に回転するときに、前記付勢部材の付勢力によって前記第1ローラと前記第2ローラとの間に所定のニップ力で被記録材を挟み、
前記第1ローラを前記逆方向に回転するときに、前記切り替え部材が、前記付勢部材の付勢力を変化させ、前記所定のニップ力よりも小さいニップ力で被記録材を挟む、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動伝達機構と前記切り替え部材とを連動させる連動状態と、前記駆動伝達機構と前記切り替え部材とを連動させない非連動状態とに切り替える、他のクラッチ手段を備え、
搬送方向に対する被記録材の斜行を補正する動作時において、被記録材を所定量だけ搬送するときに前記所定のニップ力よりもニップ力を小さくすると共に、前記所定量だけ搬送した後に被記録材を記録開始位置まで戻すときに前記他のクラッチ手段によって前記非連動状態に切り替えられ、前記所定のニップ力よりも小さいニップ力に保つ、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
被記録材を供給する供給部に被記録材を配置する場合、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に被記録材の搬送方向の先端が挟まれる前に、前記切り替え部材が、前記所定のニップ力で被記録材を挟むように、前記付勢部材の付勢力を変化させ、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間に被記録材を挟んだニップ状態で前記ニップ力の大きさを切り替える場合は、前記第1ローラが前記逆方向に回転することで前記ニップ力が切り替わると共に被記録材が搬送方向の上流側に戻され、その後、前記第1ローラが順方向に回転することによって被記録材の搬送方向の先端が所定の記録開始位置に戻される、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記切り替え部材は、被記録材の種類または外形寸法に応じて、前記ニップ力の大きさを3段階以上に切り替える、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記切り替え部材は、前記駆動伝達機構によって回転されるカムであり、
前記付勢部材は、一端が前記ローラ支持部材に当接されると共に他端が前記カムに当接されたねじりコイルばねである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記第1ローラは、被記録材が配置された供給部から供給された被記録材を搬送する搬送ローラである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記第1ローラは、被記録材が配置された供給部から被記録材を供給する給送ローラである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の搬送装置と、前記搬送装置によって搬送された被記録材に液体を吐出して記録を行う記録手段と、を備える記録装置。
【請求項10】
被記録材に記録された画像を測色する測色手段を備え、
前記測色手段によって、被記録材に記録された画像の測色を行うとき、前記搬送装置は、被記録材に記録を行っているときに被記録材を搬送する前記第1ローラと前記第2ローラとの間に被記録材を挟む所定のニップ力よりもニップ力を小さくする、請求項9に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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