説明

搬送装置,搬送装置用キャリッジ及び搬送装置用サポート

【課題】 キャリッジがワイヤの折曲箇所を円滑かつ容易に乗り越えることができるようにし、搬送物の搬送方向を容易にかつ確実に変換することができ、搬送物の搬送環境に対応した搬送を行なうことができるようにする。
【解決手段】 搬送物の搬送方向が変更される方向変更地点に設置され搬送方向の変更により折曲される第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbをガイドするサポート30を備え、このサポート30を、サポート本体31に回転自在に設けられ第1ワイヤWaをガイドする第1シーブ33と第2ワイヤWbをガイドする第2シーブ34とを備えて構成し、キャリッジ10に、キャリッジ10がサポート30を乗り越えて移動する際、各ワイヤWa,Wbを離脱不能にガイドする第1ワイヤガイド機構20及び第2ワイヤガイド機構25を設け、キャリッジ10を第2シーブ34に対して所定の位置関係にガイドして接触移動させる接触移動機構44を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一地点及び他地点に亘る区間の全部若しくは一部において搬送物を牽引して搬送する搬送装置に係り、特に、搬送物として例えば伐採された樹木等の木材を、伐採された地点から集材する地点に牽引して搬送する搬送装置に関する。また、これに用いられるキャリッジ及びサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送装置として、例えば、図13に示すように、搬送物Mとして例えば伐採された樹木等の木材を伐採された地点(荷掛け位置)から集材する地点(荷降ろし位置)に牽引して搬送する搬送装置が知られている(例えば特開2002−21107号公報掲載)。
これは、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の全部若しくは一部において搬送物Mを牽引して搬送する搬送装置であって、一地点Taの立木に設けられたプーリ1と、このプーリ1に巻き掛けられて折り返され繰り出し及び巻き戻しされる第1ワイヤWaと、第1ワイヤWaの繰り出し時に巻き戻され第1ワイヤWaの巻き戻し時に繰り出されるとともに先端Wbsに搬送物Mが係止される第2ワイヤWbと、他地点Tbに設置され第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbの基端側で各ワイヤWa,Wbの繰り出し及び巻き戻しを行なう第1ウインチ3a及び第2ウインチ3bを備えた油圧ショベルからなるワイヤ駆動機2と、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbによって移動させられるキャリッジ100とを備えている。
【0003】
キャリッジ100は、第1ワイヤWaの先端Wasが固定されるキャリッジ本体101と、キャリッジ本体101に回転自在に設けられ第1ワイヤWaのワイヤ駆動機2からプーリ1に亘る区間を走行する第1滑車103と、キャリッジ本体101に回転自在に設けられ第2ワイヤWbが巻き掛けられる第2滑車104とを備えて構成されている。
【0004】
そして、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の全部若しくは一部において、この搬送装置によって木材からなる搬送物Mを、荷掛け位置Na(一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の何れかの位置)から荷降ろし位置Nb(一般には他地点Tb近傍の位置)まで搬送して集材するときは、伐採された数本の木材(搬送物M)を吊荷ワイヤ4で結束して、この吊荷ワイヤ4を第2ワイヤWbの先端に設けたフック5に係止し、ワイヤ駆動機2において、第1ウインチ3aにより第1ワイヤWaを繰り出し第2ウインチ3bにより第2ワイヤWbを巻き戻す。これにより、キャリッジ100が他地点Tb側に移動させられるとともに搬送物Mがキャリッジ100を介して牽引され、搬送物Mは荷降ろし位置Nbに集材させられる。荷降ろし位置Nbにおいては、吊荷ワイヤ4の結束を解いて搬送物Mを降ろす。その後、今度は、ワイヤ駆動機2において、第1ウインチ3aにより第1ワイヤWaを巻き戻し、第2ウインチ3bにより第2ワイヤWbを繰り出す。これにより、キャリッジ100が一地点Ta側に移動させられ、再び、所要の荷掛け位置Naに停止させられる。このようにして、順次搬送物Mを搬送して集材するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−21107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の搬送装置にあっては、キャリッジ100が同一の搬送経路を往復動するので、設置スペースの制約が少ないという利点を有するが、反面、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbの経路を曲げて搬送物Mの搬送方向を変更しようとする場合には、対応が困難になり、種々の搬送環境に対応できないという問題があった。
即ち、搬送物Mが例えば山林で伐採した木材の場合、山林の伐採環境によっては、伐採地点から集材地点まで、必ずしも直線の経路に沿って搬送することができない場合が多く、そのため、このような場合には、図14に示すように、従来においては、ワイヤWを伐採周囲の立木に設けた滑車105を介してループ上に掛け渡し、この滑車105により、方向変更を行ない、ワイヤ駆動機106により、ワイヤWを循環移動させて、木材をその搬送方向を適宜変更しながら集材するようにしている(例えば、特開2005−40050号公報掲載)。この集材方法を、上記の従来のタイプの搬送装置に適用しようとすると、方向変換箇所に滑車を設け、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbの経路を曲げることになるが、その場合、キャリッジ100が滑車を乗り越えなければならず、この際には、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbが滑車から離間してしまうので、キャリッジ100が滑車から脱落し易くなって、キャリッジ100の移動がほとんど不能になってしまい、この方法をそのまま適用できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて為されたもので、キャリッジがワイヤの折曲箇所を円滑かつ容易に乗り越えることができるようにし、搬送物の搬送方向を容易にかつ確実に変換することができ、搬送物の搬送環境に対応した搬送を行なうことができるようにした搬送装置を提供することを目的とする。また、この搬送装置に用いられる搬送装置用キャリッジ及び搬送装置用サポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため本発明の搬送装置は、一地点及び他地点に亘る区間の全部若しくは一部において搬送物を牽引して搬送する搬送装置であって、上記一地点に設けられたプーリと、該プーリに巻き掛けられて折り返され繰り出し及び巻き戻しされる第1ワイヤと、該第1ワイヤの繰り出し時に巻き戻され上記第1ワイヤの巻き戻し時に繰り出されるとともに先端に搬送物が係止される第2ワイヤと、上記他地点に設置され上記第1ワイヤ及び第2ワイヤの基端側で該各ワイヤの繰り出し及び巻き戻しを行なうワイヤ駆動機と、上記第1ワイヤ及び第2ワイヤによって移動させられるキャリッジとを備え、該キャリッジを、上記第1ワイヤの先端が固定されるキャリッジ本体と、該キャリッジ本体に回転自在に設けられ上記第1ワイヤの上記ワイヤ駆動機から上記プーリに亘る区間を走行する第1滑車と、上記キャリッジ本体に回転自在に設けられ上記第2ワイヤが巻き掛けられる第2滑車とを備えて構成した搬送装置において、
上記区間の途中であって搬送物の搬送方向が変更される方向変更地点に設置された支持部材に設けられ該搬送方向の変更により折曲される上記第1ワイヤ及び第2ワイヤをガイドするサポートを備え、
該サポートを、上記支持部材に懸吊されるサポート本体と、該サポート本体に回転自在に設けられ上記第1ワイヤをガイドする第1シーブと、上記サポート本体に上記第1シーブと同軸かつ回転自在に設けられ上記第2ワイヤをガイドする第2シーブとを備えて構成し、
上記キャリッジに、該キャリッジが上記サポートの第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、該第1シーブ及び第2シーブから離間する上記第1ワイヤ及び第2ワイヤを夫々該キャリッジから離脱不能にガイドする第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構を設け、
上記キャリッジが上記サポートの第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、該キャリッジを該第2シーブに対して所定の位置関係にガイドして接触移動させる接触移動機構を設けた構成としている。
【0009】
これにより、本搬送装置を設置するときは、一地点にプーリを設け、他地点にワイヤ駆動機を設置する。また、一地点及び他地点に亘る区間の途中であって搬送物の搬送方向を変更する方向変更地点にサポートを設置する。そして、ワイヤを張設するとともに、キャリッジを装着する。
この状態で、一地点及び他地点に亘る区間の全部若しくは一部において、搬送物を例えば一地点側の何れかの位置(荷掛け位置)から他地点側の他の位置(荷降ろし位置)に搬送するときは、搬送物を第2ワイヤの先端に係止し、ワイヤ駆動機において、第1ウインチにより第1ワイヤを繰り出し第2ウインチにより第2ワイヤを巻き戻す。これにより、キャリッジが他地点側に移動させられるとともに搬送物がキャリッジを介して牽引され、搬送物は荷降ろし位置に集材させられる。荷降ろし位置においては、第2ワイヤに対する係止を解除して搬送物を降ろす。その後、今度は、ワイヤ駆動機において、第1ウインチにより第1ワイヤを巻き戻し第2ウインチにより第2ワイヤを繰り出す。これにより、キャリッジが一地点側に移動させられ、再び、所要の荷掛け位置に停止させられる。このようにして、順次搬送物を搬送して集材するようにする。
【0010】
この搬送においては、一地点及び他地点に亘る区間の途中にある方向変更地点には、サポートが設置されており、キャリッジはサポートを乗り越えて移動し、この乗り越えにより搬送物の搬送方向が変更される。この場合、第1ワイヤ及び第2ワイヤは、第1シーブ及び第2シーブから離間するが、第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構によって、夫々、キャリッジから離脱不能にガイドされるとともに、接触移動機構により、キャリッジが第2シーブに対して所定の位置関係にガイドされて接触移動させられるので、キャリッジが円滑にサポートを通過する。そのため、単にワイヤを折曲させる滑車を設けた場合には、第1ワイヤ及び第2ワイヤが滑車から離間してキャリッジが滑車を乗り越えるので、キャリッジが滑車から脱落し易くなって、キャリッジの移動がほとんど不能になるが、本発明においては、このような事態が防止され、キャリッジが円滑にサポートを通過する。そのため、搬送物の搬送方向を容易にかつ確実に変更することができ、搬送物の搬送環境に対応した搬送を行なうことができるようになる。
【0011】
特に、第1シーブは、第1ワイヤの進行方向の関係上、キャリッジの移動方向とは反対の方向に回転し、即ち、キャリッジに対して抵抗になる方向に回転する一方、第2シーブは、第2ワイヤの進行方向の関係上、第1シーブとは逆回転し、キャリッジの移動方向と同方向に回転するが、接触移動機構により、キャリッジは主にキャリッジの移動方向に向けて回転する第2シーブに対して所定の位置関係にガイドされて接触移動させられることから、キャリッジの姿勢が保持されてキャリッジの進行が円滑に行なわれる。また、キャリッジは第2シーブに対して所定の位置関係で通過することから、キャリッジがサポートを通過後には、再び、各ワイヤが各シーブ上の正規の位置に接触して円滑にガイドされるようになる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記第1シーブ及び第2シーブの組を、ワイヤの繰り出し巻き戻し方向に沿って複数組列設した構成としている。
これにより、第1シーブ及び第2シーブの組を、複数設けたので、1つの場合には、この1つの第1シーブ及び第2シーブの組によって、方向変更角度分を変更させなければならないが、本発明では、キャリッジの移動方向最前位にある第1シーブ及び第2シーブの組と、キャリッジの移動方向最後位にある第1シーブ及び第2シーブの組との間において、ワイヤを直線状にすることができることから、キャリッジの移動方向最前位にある第1シーブ及び第2シーブの組と、キャリッジの移動方向最後位にある第1シーブ及び第2シーブの組とが夫々受け持つ方向変更角度は、全体の方向変更角度の半分で済み、そのため、キャリッジやサポートに無理な力が作用しないことから、それだけ、円滑にキャリッジの方向変更を行なわせることができるようになる。
【0013】
また、必要に応じ、上記第1シーブ及び第2シーブの各組を回転自在に支持する支持杆を設け、該支持杆を上記サポート本体に上記第1シーブ及び第2シーブの回転軸に平行な揺動軸を中心に揺動可能に設けた構成としている。
これにより、第1シーブ及び第2シーブの組が、支持杆を介して揺動するので、この揺動により、キャリッジの移動方向最前位にある第1シーブ及び第2シーブの組に対するキャリッジの進入角度を浅くすることができ、また、キャリッジの移動方向最後位にある第1シーブ及び第2シーブの組から退出する退出角度を浅くすることができ、そのため、キャリッジの第1シーブ及び第2シーブの組に対する進入及び退出を無理なく行なわせることができ、より一層、円滑にキャリッジの方向変更を行なわせることができるようになる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記第2シーブの外周に、上記第1シーブより大径に形成されるとともに、上記キャリッジが上記第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、上記キャリッジ本体に対して転動するフランジを設けた構成としている。
これにより、第1シーブは、第1ワイヤの進行方向の関係上、キャリッジの移動方向とは反対の方向に回転し、即ち、キャリッジに対して抵抗になる方向に回転する一方、第2シーブは、第2ワイヤの進行方向の関係上、第1シーブとは逆回転し、キャリッジの移動方向と同方向に回転する。この場合、キャリッジ本体は主にキャリッジの移動方向に向けて回転する第2シーブのフランジに当接し、第1シーブには当接しないようになるので、キャリッジの進行が円滑に行なわれるとともにキャリッジの姿勢が保持される。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構を、上記各ワイヤを挟んで互いに対峙しワイヤが当接可能な一対の当接部材の組を備えて構成している。これにより、第1シーブ及び第2シーブから離間した第1ワイヤ及び第2ワイヤは、当接部材によって、キャリッジから外れる事態が防止される。
この場合、上記一対の当接部材の組を、上記第1滑車及び第2滑車の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラの組で構成したことが有効である。一対のローラの組がワイヤをガイドして転動するので、無理なくキャリッジの移動が行なわれる。
【0016】
また、必要に応じ、上記第1ワイヤガイド機構を、上記ワイヤを支持する支持ローラを備えて構成するとともに、上記第1ワイヤを挟んで互いに対峙しワイヤが当接可能かつ上記第1滑車の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラの組とを備えて構成し、該ローラの組を上記第1滑車の上記第1ワイヤの繰り出し巻き戻し方向前後に一対設けて構成している。これにより、第1ワイヤは、第1ワイヤガイド機構の2組のローラの組,一対の支持ローラ及び第1滑車に囲繞されてガイドされる。そのため、第1シーブから離間した第1ワイヤは、キャリッジから離脱不能にガイドされる。特に、第1ワイヤは、キャリッジの移動方向とは逆方向に進行するが、一対のローラの組が進行方向前後でガイドして転動し、支持ローラが支持して転動するので、無理なくキャリッジの移動が行なわれる。
【0017】
更に、必要に応じ、上記接触移動機構を、上記第2シーブの外周に形成され上記第2ワイヤがガイドされる周溝と、上記キャリッジのキャリッジ本体に突出形成され上記第2シーブの周溝に係入するレール部材とを備えて構成している。第2シーブの外周に形成された周溝に、キャリッジのキャリッジ本体に突出形成されたレール部材が係入して、第2シーブがレール部材を転動するので、この点でも無理なくキャリッジの移動が行なわれる。
この場合、上記レール部材に代えて、上記周溝に係入するローラにしたことが有効である。ローラも転動するのでより無理なくキャリッジの移動が行なわれる。
【0018】
更にまた、必要に応じ、上記サポート本体に、上記第1シーブ及び上記第2シーブの外周に弾接してワイヤを押さえる押さえローラを設けた構成としている。第1ワイヤ及び第2ワイヤは、第1シーブ及び上記第2シーブの外周に弾接する押さえローラにより押さえられるので、第1シーブ及び上第2シーブからの離脱が抑止される。そのため、第1ワイヤ及び第2ワイヤは、円滑に繰り出し巻き戻しされ、キャリッジ及び搬送物を牽引する。
また、必要に応じ、上記サポートを、上記支持部材に繋ぎ止められた2本以上の索体により懸吊する構成としている。これにより、1本の索体で懸吊する場合には、各ワイヤの非引張時に第1シーブ及び第2シーブの回転軸が略水平方向に沿うようになることがあり、その場合には、ワイヤを引張する際にワイヤがシーブの回転軸方向に引かれて外れやすくなることがあるが、2本以上の索体で懸吊するので、各ワイヤの非引張時に第1シーブ及び第2シーブの回転軸が水平方向に沿わないようにある程度角度をつけて位置させることができ、即ち、回転軸が起立するようにサポートを保持できるようになる。そのため、ワイヤを引張する際にワイヤがシーブの回転軸に交差する方向に引かれるようになり、そのため、シーブから外れにくくなり、ワイヤの保持を安定化させることができる。
【0019】
そして、上記目的を達成するため本発明は、上記された搬送装置に用いられる搬送装置用キャリッジ及び搬送装置用サポートを提供する。上述したと同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の搬送装置,搬送装置用キャリッジ及び搬送装置用サポートによれば、一地点及び他地点に亘る区間において、搬送物を搬送する際、キャリッジはサポートを乗り越えて移動し、この乗り越えにより搬送物の搬送方向が変更されるが、第1ワイヤ及び第2ワイヤは、第1シーブ及び第2シーブから離間しても、第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構によって、夫々、キャリッジから離脱不能にガイドされるとともに、接触移動機構により、キャリッジが第2シーブに対して所定の位置関係にガイドされて接触移動させられるので、キャリッジは円滑にサポートを通過することができる。そのため、搬送物の搬送方向を容易にかつ確実に変更することができ、搬送物の搬送環境に対応した搬送を行なうことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る搬送装置,これに用いられる搬送装置用キャリッジ及び搬送装置用サポートについて詳細に説明する。尚、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。
図1乃至図11に示す本発明の実施の形態に係る搬送装置は、図11に示すように、山林において伐採された木材からなる搬送物Mを搬送する装置であり、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の全部若しくは一部において搬送物Mを牽引して搬送する搬送装置である。
この搬送装置は、一地点Taの立木に懸吊されて設けられたプーリ1と、このプーリ1に巻き掛けられて折り返され繰り出し及び巻き戻しされる第1ワイヤWaと、第1ワイヤWaの繰り出し時に巻き戻され、第1ワイヤWaの巻き戻し時に繰り出されるとともに先端Wbsに搬送物Mが係止される第2ワイヤWbと、他地点Tbに設置され第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbの基端側で各ワイヤの繰り出し及び巻き戻しを行なうワイヤ駆動機2とを備えている。
【0022】
ワイヤ駆動機2は、ウインチ搭載油圧ショベルで構成されており、走行用のキャタピラを備えた車体6にブーム7を揺動可能に設け、ブーム7の先端に作業機8aを有したアーム8を揺動可能に連結し、車体6に第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbの基端側で各ワイヤの繰り出し及び巻き戻しを行なう第1ウインチ3a及び第2ウインチ3bを搭載し、アーム8に各ウインチ3a,3bからの各ワイヤWa,Wbを支持する滑車装置9を備えて構成されている。そして、搬送物Mの搬送を行なうときは、アーム8の先端の作業機8aを接地させた状態で滑車装置9を所定高さ位置に位置決めして行なう。
【0023】
また、本装置は、図1乃至図11に示すように、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbによって移動させられるキャリッジ10と、上記の区間の途中であって搬送物Mの搬送方向が変更される方向変更地点Tcに設置された立木からなる支持部材Sに設けられ、搬送方向の変更により折曲される第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbをガイドするサポート30とを備えている。
【0024】
キャリッジ10は、図1乃至図4に示すように、第1ワイヤWaの先端Wasが固定される金属性板材12で形成されたキャリッジ本体11と、キャリッジ本体11に回転自在に設けられ第1ワイヤWaのワイヤ駆動機2からプーリ1に亘る区間を走行する第1滑車13と、キャリッジ本体11に回転自在に設けられ第2ワイヤWbが巻き掛けられる第2滑車14とを備えている。第1滑車13と第2滑車14は、キャリッジ本体11を構成しワイヤを両側から挟んで対峙する板材12間に互いの回転軸13a,14aを平行にして設けられている。キャリッジ本体11の第2滑車14側であってプーリ1側の端部には、第1ワイヤWaの先端Wasを固定するため、第1ワイヤWaの先端Wasが巻き掛けられるボルト15aと、このボルト15aをキャリッジ本体11に固定するナット15bとからなるワイヤ固定部15が設けられている。また、図4に示すように、キャリッジ本体11には、ワイヤ固定部15の下側に、第2ワイヤWbの抜け止めを行なうストッパ16が設けられている。
【0025】
また、キャリッジ10には、このキャリッジ10がサポート30の後述の第1シーブ33及び第2シーブ34を乗り越えて移動する際、第1シーブ33及び第2シーブ34から離間する第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbを夫々該キャリッジ10から離脱不能にガイドする第1ワイヤガイド機構20及び第2ワイヤガイド機構25が設けられている。
【0026】
第1ワイヤガイド機構20は、キャリッジ本体11に設けられ第1ワイヤWaを挟んで互いに対峙し第1ワイヤWaが当接可能な一対の当接部材21の組を備えて構成されている。詳しくは、一対の当接部材21の組は、第1滑車13及び第2滑車14の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラ22の組で構成されている。このローラ22の組は、2組(22A,22B)備えられ、各組(22A,22B)は第1滑車13の第1ワイヤWaの繰り出し巻き戻し方向前後に夫々設けられている。
【0027】
更に、第1ワイヤガイド機構20は、キャリッジ本体11に設けられ第1ワイヤWaを支持する支持ローラ23を備えて構成されている。支持ローラ23は、第1滑車13の軸線よりも第2滑車14の軸線側であって第1滑車13に対峙して設けられているとともに第1滑車13の第1ワイヤWaの繰り出し巻き戻し方向前後に一対設けられている。
即ち、第1ワイヤWaは、第1ワイヤガイド機構20の2組のローラ22の組(22A,22B),一対の支持ローラ23及び第1滑車13に囲繞されてガイドされる。
【0028】
第2ワイヤガイド機構25は、キャリッジ本体11に設けられ第2ワイヤWbを挟んで互いに対峙しワイヤが当接可能な一対の当接部材26を備えて構成されている。詳しくは、一対の当接部材26は、キャリッジ本体11を構成し第2滑車14が設けられる板材12で構成されている。
また、第2ワイヤガイド機構25は、キャリッジ本体11に設けられ第2ワイヤWbを押さえる押さえローラ27(図4)を備えて構成されている。押さえローラ27は、第2滑車14の軸線よりも第1滑車13の軸線側であって第2滑車14に対峙して設けられているとともにワイヤ駆動機2側に設けられている。
即ち、第2ワイヤWbは、第2ワイヤガイド機構25の当接部材26(板材12)の組,押さえローラ27及び第2滑車14に囲繞されてガイドされる。
【0029】
サポート30は、図1及び図2,図5乃至図8に示すように、一端が立木からなる支持部材S(図10及び図11)に懸吊されるサポート本体31と、このサポート本体31に回転自在に設けられ第1ワイヤWaをガイドする第1シーブ33と、サポート本体31に第1シーブ33と同軸かつ回転自在に設けられ第2ワイヤWbをガイドする第2シーブ34とを備えて構成されている。
各シーブ33,34は、図8に示すように、回転軸32に回転自在に支持されるベアリング35を有した軸受部36と、軸受部36にリブ37を介して固定される円筒部38を有し、この円筒部38の略中央外周には、ワイヤWa,Wbが係入する周溝39が形成され、ワイヤWa,Wbはこの周溝39に沿ってガイドされる。
【0030】
また、図8に示すように、第1シーブ33の円筒部38の第2シーブ34側の外周は、第2シーブ34の円筒部38の第1シーブ33側の内径より小径に形成されており、この第1シーブ33の円筒部38の第2シーブ34側は、第2シーブ34の円筒部38の第1シーブ33側内に入り込んで設けられている。
更に、第2シーブ34の両外側外周には、第1シーブ33より大径に形成されるとともに、キャリッジ10が第1シーブ33及び第2シーブ34を乗り越えて移動する際、キャリッジ本体11に対して転動するフランジ40が設けられている。
【0031】
更にまた、第1シーブ33及び第2シーブ34の組は、ワイヤWa,Wbの繰り出し巻き戻し方向に沿って複数組列設されている。実施の形態では、2組(30A,30B)列設されている。
詳しくは、図1及び図2,図7乃至図9に示すように、第1シーブ33及び第2シーブ34の各組(30A,30B)は、軸方向両側に設けられた一対の支持杆41により回転軸32を中心に回転自在に支持されている。この支持杆41は、サポート本体31に第1シーブ33及び第2シーブ34の回転軸32に平行な揺動軸42を中心に揺動可能に設けられている。
【0032】
また、本実施の形態において、図1,図3及び図6に示すように、キャリッジ10がサポート30の第1シーブ33及び第2シーブ34を乗り越えて移動する際、キャリッジ10を第2シーブ34に対して所定の位置関係にガイドして、即ち、脱輪を規制して接触移動させる接触移動機構44が設けられている。
詳しくは、接触移動機構44は、第2シーブ34の外周に形成され第2ワイヤWbがガイドされる上記の周溝39と、キャリッジ10のキャリッジ本体11に突出形成され第2シーブ34の周溝39に係入するレール部材45とを備えて構成されている。レール部材45は、左右に夫々設けられており、サポート30の取り付け向きに合わせて、何れか一方のレール部材45が第2シーブ34の周溝39に係入できるようになっている。即ち、キャリッジ10は左右対称に形成されている。
【0033】
また、サポート本体31は、各シーブ33,34の組間にあって、各シーブの回転軸32を含む面に直交する面を有する板状部60を備え、この板状部60にはその一端から他端に亘って、支持部材Sに繋ぎ止められた索体Sa(ロープ)が止着される複数の止着孔61が列設形成されている。そして、図10(a)に示すように、サポート30は、支持部材Sに繋ぎ止められた2以上の索体Sa(実施の形態では2本)により懸吊されている。一方の索体Saは、板状部60の一端の止着孔61(a)に止着され、他方の索体Saは、板状部60の他端の止着孔61(b)に止着されている。この2本の索体Saにより、各ワイヤWa,Wbの非引張時に第1シーブ33及び第2シーブ34の回転軸32が水平方向に沿わないようにある程度角度をつけて位置させており、即ち、回転軸32が起立するようにサポート30を保持している。
更に、図5及び図7に示すように、サポート本体31には、第1シーブ33及び第2シーブ34の外周に弾接してワイヤWa,Wbを押さえる押さえローラ50が設けられている。押さえローラ50は、各第1シーブ33及び第2シーブ34の組に対応して、一対の組が2組(50A,50B)設けられている。押さえローラ50の各組(50A,50B)は、一対の支持アーム51の先端に回転軸52を中心に回転自在に夫々支持されている。この各支持アーム51の基端は、サポート本体31に第1シーブ33及び第2シーブ34の回転軸32に平行な揺動軸53を中心に揺動可能に設けられている。また、支持アーム51同士は、コイルスプリング54(図7)で連結されて互いに近接する方向に付勢されており、このコイルスプリング54の付勢力により、各押さえローラ50は第1シーブ33及び第2シーブ34の外周に弾接してワイヤWa,Wbを押さえる。
【0034】
従って、本発明の実施の形態に係る搬送装置を用いるときは以下のようして行なう。図11に示すように、例えば、搬送物Mとして伐採された樹木等の木材を伐採された地点(荷掛け位置Na)から集材する地点(荷降ろし位置Nb)に牽引して搬送する場合について説明する。
先ず、本装置を設置するときは、図11に示すように、一地点Taの立木にプーリ1を設け、他地点Tbにワイヤ駆動機2を設置する。また、図10及び図11に示すように、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の途中であって搬送物Mの搬送方向を変更する方向変更地点Tcにサポート30を設置する。サポート30は、複数台用意され、各方向変更地点Tc毎に設置される。設置の際には、サポート本体31の一端31aを、立木からなる支持部材Sに2本の索体Saを介して懸吊し、サポート本体31の一端を自由に揺動できるようにする。
そして、各ワイヤWa,Wbをプーリ1,キャリッジ10,サポート30の所要箇所を通して張設するとともに、第1ワイヤWaの先端Wasをキャリッジ10のワイヤ固定部15に固定し、キャリッジ10の第1滑車13がワイヤ駆動機2からプーリ1に亘る区間を走行し得るように第1ワイヤWaに係止する。
【0035】
この状態で、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の全部若しくは一部において、搬送物Mを例えば一地点Ta側の何れかの位置(荷掛け位置Na)から他地点Tb側の他の位置(荷降ろし位置Nb)に搬送する。先ず、荷掛け位置Naにおいて、搬送物Mを第2ワイヤWbの先端Wbsに係止する。この場合、例えば、伐採された数本の木材(搬送物M)を吊荷ワイヤ4(図11)で結束して、この吊荷ワイヤ4を第2ワイヤWbの先端Wbsに係止する。
【0036】
次に、ワイヤ駆動機2を駆動し、第1ウインチ3aにより第1ワイヤWaを繰り出し、第2ウインチ3bにより第2ワイヤWbを巻き戻す。これにより、キャリッジ10が他地点Tb側に移動させられるとともに搬送物Mがキャリッジ10を介して牽引され、搬送物Mは荷降ろし位置Nbに集材させられる。
この場合、図10(a)に示すように、サポート30は、2本の索体Saにより、各ワイヤWa,Wbの非引張時に第1シーブ33及び第2シーブ34の回転軸32が水平方向に沿わないようにある程度角度をつけて位置させられており、即ち、回転軸32が起立するようにサポート30が保持されているので、図10(b)に示すように、1本の索体Saで懸吊する場合には、各ワイヤWa,Wbの非引張時に第1シーブ33及び第2シーブ34の回転軸32が略水平方向に沿うようになることがあり、その場合には、ワイヤWa,Wbを引張する際にワイヤWa,Wbがシーブ33の回転軸32の方向に引かれて外れやすくなることがあるが、図10(a)に示すように、回転軸32が起立するようにサポート30を保持していることから、ワイヤWa,Wbを引張する際にワイヤWa,Wbがシーブ33,34の回転軸32に交差する方向に引かれるようになり、そのため、シーブ33,34から外れにくくなり、ワイヤWa,Wbの保持を安定化させることができる。
また、この場合、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbは、サポート30の第1シーブ33及び第2シーブ34の周溝39に係入してガイドされる。また、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbは、第1シーブ33及び第2シーブ34の外周に弾接する押さえローラ50により押さえられるので、第1シーブ33及び第2シーブ34からの離脱が抑止される。そのため、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbは、円滑に繰り出し巻き戻しされ、キャリッジ10及び搬送物Mを牽引する。
【0037】
この搬送物Mの搬送においては、一地点Ta及び他地点Tbに亘る区間の途中にある方向変更地点Tcには、サポート30が設置されており、キャリッジ10は、図9に示すように、押さえローラ50をその付勢力に抗して押し上げて、サポート30を乗り越えて移動し、この乗り越えにより搬送物Mの搬送方向が変更される。この場合、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbは、第1シーブ33及び第2シーブ34から離間するが、第1ワイヤガイド機構20及び第2ワイヤガイド機構25によって、夫々、キャリッジ10から離脱不能にガイドされるとともに、接触移動機構44により、キャリッジ10が第2シーブ34に対して所定の位置関係にガイドされて接触移動させられるので、キャリッジ10が円滑にサポート30を通過する。そのため、単にワイヤを折曲させる滑車を設けた場合には、第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbが滑車から離間してキャリッジ10が滑車を乗り越えるので、キャリッジ10が滑車から脱落し易くなって、キャリッジ10の移動がほとんど不能になるが、本実施の形態では、このような事態が防止され、キャリッジ10が円滑にサポート30を通過する。そのため、搬送物Mの搬送方向を容易にかつ確実に変更することができ、搬送物Mの搬送環境に対応した搬送を行なうことができるようになる。
【0038】
特に、第1シーブ33は、第1ワイヤWaの進行方向の関係上、キャリッジ10の移動方向とは反対の方向に回転し、即ち、キャリッジ10に対して抵抗になる方向に回転する一方、第2シーブ34は、第2ワイヤWbの進行方向の関係上、第1シーブ33とは逆回転し、キャリッジ10の移動方向と同方向に回転するが、接触移動機構44により、キャリッジ10は主にキャリッジ10の移動方向に向けて回転する第2シーブ34に対して所定の位置関係にガイドされて接触移動させられることから、キャリッジ10の姿勢が保持されてキャリッジ10の進行が円滑に行なわれる。また、キャリッジ10は第2シーブ34に対して所定の位置関係で通過することから、キャリッジ10がサポート30を通過後には、再び、各ワイヤWa,Wbが各シーブ33,34上の正規の位置に接触して円滑にガイドされるようになる。
【0039】
詳しくは、第1ワイヤWaは、第1ワイヤガイド機構20の2組のローラ22の組(22A,22B),一対の支持ローラ23及び第1滑車13に囲繞されてガイドされ、第2ワイヤWbは、第2ワイヤガイド機構25の当接部材26の組,押さえローラ27及び第2滑車14に囲繞されてガイドされる。そのため、第1シーブ33及び第2シーブ34から離間した第1ワイヤWa及び第2ワイヤWbは、夫々、キャリッジ10から離脱不能に保持される。特に、第1ワイヤWaは、キャリッジ10の移動方向とは逆方向に進行するが、一対のローラ22の組(22A,22B)が進行方向前後でガイドして転動し、支持ローラ23が支持して転動するので、無理なくキャリッジ10の移動が行なわれる。
また、接触移動機構44において、第2シーブ34の外周に形成された周溝39に、キャリッジ10のキャリッジ本体11に突出形成されたレール部材45が係入して、第2シーブ34がレール部材45を転動するので、この点でも無理なくキャリッジ10の移動が行なわれる。
【0040】
また、キャリッジ10がサポート30を乗り越えて移動する際、第1シーブ33及び第2シーブ34の組が2組(30A,30B)設けられているので、先ず、キャリッジ10は一地点Ta側の第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30A)に進入し、他地点Tb側の第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30B)から退出して行く。そのため、図9に示すように、第1シーブ33及び第2シーブ34の組が1組の場合には、この1つの第1シーブ33及び第2シーブ34の組によって、方向変更角度分を変更させなければならないが、実施の形態では、キャリッジ10の移動方向最前位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30A)と、キャリッジ10の移動方向最後位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30B)との間において、ワイヤWa,Wbを直線状にすることができることから、キャリッジ10の移動方向最前位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30A)と、キャリッジ10の移動方向最後位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30B)とが夫々受け持つ方向変更角度は、全体の方向変更角度の半分で済み、そのため、キャリッジ10やサポート30に無理な力が作用しないことから、それだけ、円滑にキャリッジ10の方向変更を行なわせることができるようになる。
【0041】
更に、このキャリッジ10がサポート30を乗り越えて移動する際、第1シーブ33及び第2シーブ34の組が、支持杆41を介して揺動する。そのため、この揺動により、キャリッジ10の移動方向最前位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30A)に対するキャリッジ10の進入角度を浅くすることができ、また、キャリッジ10の移動方向最後位にある第1シーブ33及び第2シーブ34の組(30B)から退出する退出角度を浅くすることができ、そのため、キャリッジ10の第1シーブ33及び第2シーブ34の組に対する進入及び退出を無理なく行なわせることができ、より一層、円滑にキャリッジ10の方向変更を行なわせることができるようになる。
【0042】
更にまた、上述したように、第1シーブ33は、第1ワイヤWaの進行方向の関係上、キャリッジ10の移動方向とは反対の方向に回転し、即ち、キャリッジ10に対して抵抗になる方向に回転する一方、第2シーブ34は、第2ワイヤWbの進行方向の関係上、第1シーブ33とは逆回転し、キャリッジ10の移動方向と同方向に回転するが、第2シーブ34の外周には、第1シーブ33より大径に形成されるとともに、キャリッジ10が第1シーブ33及び第2シーブ34を乗り越えて移動する際、キャリッジ本体11に対して転動するフランジ40が設けられているので、キャリッジ本体11は主にキャリッジ10の移動方向に向けて回転する第2シーブ34のフランジ40に当接し、第1シーブ33には当接しないようになり、このため、抵抗がきわめて少なくなり、キャリッジ10の進行が円滑に行なわれるとともにキャリッジ10の姿勢が保持される。
【0043】
このようにして、キャリッジ10を介して搬送物Mが牽引されて搬送される。荷降ろし位置Nbにおいては、第2ワイヤWbに対する係止を解除して搬送物Mを降ろす。その後、今度は、ワイヤ駆動機2において、第1ウインチ3aにより第1ワイヤWaを巻き戻し第2ウインチ3bにより第2ワイヤWbを繰り出す。これにより、キャリッジ10が一地点Ta側に移動させられ、再び、所要の荷掛け位置Naに停止させられる。この場合も、上記と同様に、キャリッジ10は無理なく各サポート30を通過して方向変換させられる。このようにして、順次搬送物Mを搬送して集材するようにする。
【0044】
尚、搬送物Mは、一地点Ta側から他地点Tb側のみならず、他地点Tb側から一地点Ta側に向けて搬送するようにしてもよく、適宜変更して差支えない。
また、図12に示すように、キャリッジ10の向きを逆にして第2ワイヤWbの先端Wbsをワイヤ固定部15に固定し、第1ワイヤWaを第2滑車14に巻掛け、その先端Wasに搬送物Mを係止し、搬送方向を上記とは逆にして、即ち、他地点Tb側から一地点Ta側に向けて搬送するように用いることもできる。
尚また、上記実施の形態では、接触移動機構44を、周溝39に係入するレール部材45を備えて構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、レール部材45に変えて、周溝39に係入するローラで構成してもよく適宜変更して差支えない。また、第2ワイヤガイド機構25の当接部材26を、キャリッジ本体11の板材12で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1ワイヤガイド機構20と同様に、第1滑車13及び第2滑車14の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラの組で構成しても良く、適宜変更して差支えない。尚また、上記実施の形態では、搬送物Mとして伐採した木材を例に説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのような搬送物であっても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る搬送装置のキャリッジ及びサポート(押さえローラは図示せず)をキャリッジがサポートを乗り越える際の状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る搬送装置のキャリッジ及びサポート(押さえローラは図示せず)をキャリッジがサポートを乗り越える際の別の状態で示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る搬送装置のキャリッジを示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る搬送装置のキャリッジを示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る搬送装置のサポートを示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る搬送装置のサポート(押さえローラは図示せず)をキャリッジがサポートを乗り越える際の状態で示す正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る搬送装置のサポートを示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る搬送装置のサポートを示す側面断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る搬送装置のキャリッジ及びサポートをキャリッジがサポートを乗り越える際の状態で示す平面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る搬送装置においてサポートの支持部材に対する支持状態を示す図であり、(a)はその作用を示す図、(b)は比較例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る搬送装置の設置例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る搬送装置の別の用い方を示すキャリッジの側面断面図である。
【図13】従来の搬送装置の設置例を示す斜視図である。
【図14】従来からある別の搬送方法の例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
M 搬送物
Ta 一地点
Tb 他地点
Tc 方向変更地点
1 プーリ
Wa 第1ワイヤ
Was 先端
Wb 第2ワイヤ
Wbs 先端
2 ワイヤ駆動機
3a 第1ウインチ
3b 第2ウインチ
10 キャリッジ
11 キャリッジ本体
12 板材
13 第1滑車
14 第2滑車
15 ワイヤ固定部
16 ストッパ
20 第1ワイヤガイド機構
21 当接部材
22 ローラ
22A,22B ローラの組
23 支持ローラ
25 第2ワイヤガイド機構
26 当接部材
27 押さえローラ
30 サポート
30A,30B 第1シーブ及び第2シーブの組
31 サポート本体
32 回転軸
33 第1シーブ
34 第2シーブ
39 周溝
40 フランジ
41 支持杆
42 揺動軸
44 接触移動機構
45 レール部材
50 押さえローラ
50A,50B 押さえローラの組
51 支持アーム
52 回転軸
53 揺動軸
54 コイルスプリング
S 支持部材
Sa 索体
60 板状部
61 止着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一地点及び他地点に亘る区間の全部若しくは一部において搬送物を牽引して搬送する搬送装置であって、
上記一地点に設けられたプーリと、該プーリに巻き掛けられて折り返され繰り出し及び巻き戻しされる第1ワイヤと、該第1ワイヤの繰り出し時に巻き戻され上記第1ワイヤの巻き戻し時に繰り出されるとともに先端に搬送物が係止される第2ワイヤと、上記他地点に設置され上記第1ワイヤ及び第2ワイヤの基端側で該各ワイヤの繰り出し及び巻き戻しを行なうワイヤ駆動機と、上記第1ワイヤ及び第2ワイヤによって移動させられるキャリッジとを備え、
該キャリッジを、上記第1ワイヤの先端が固定されるキャリッジ本体と、該キャリッジ本体に回転自在に設けられ上記第1ワイヤの上記ワイヤ駆動機から上記プーリに亘る区間を走行する第1滑車と、上記キャリッジ本体に回転自在に設けられ上記第2ワイヤが巻き掛けられる第2滑車とを備えて構成した搬送装置において、
上記区間の途中であって搬送物の搬送方向が変更される方向変更地点に設置された支持部材に設けられ該搬送方向の変更により折曲される上記第1ワイヤ及び第2ワイヤをガイドするサポートを備え、
該サポートを、上記支持部材に懸吊されるサポート本体と、該サポート本体に回転自在に設けられ上記第1ワイヤをガイドする第1シーブと、上記サポート本体に上記第1シーブと同軸かつ回転自在に設けられ上記第2ワイヤをガイドする第2シーブとを備えて構成し、
上記キャリッジに、該キャリッジが上記サポートの第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、該第1シーブ及び第2シーブから離間する上記第1ワイヤ及び第2ワイヤを夫々該キャリッジから離脱不能にガイドする第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構を設け、
上記キャリッジが上記サポートの第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、該キャリッジを該第2シーブに対して所定の位置関係にガイドして接触移動させる接触移動機構を設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
上記第1シーブ及び第2シーブの組を、ワイヤの繰り出し巻き戻し方向に沿って複数組列設したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
上記第1シーブ及び第2シーブの各組を回転自在に支持する支持杆を設け、該支持杆を上記サポート本体に上記第1シーブ及び第2シーブの回転軸に平行な揺動軸を中心に揺動可能に設けたことを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
上記第2シーブの外周に、上記第1シーブより大径に形成されるとともに、上記キャリッジが上記第1シーブ及び第2シーブを乗り越えて移動する際、上記キャリッジ本体に対して転動するフランジを設けたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の搬送装置。
【請求項5】
上記第1ワイヤガイド機構及び第2ワイヤガイド機構を、上記各ワイヤを挟んで互いに対峙しワイヤが当接可能な一対の当接部材の組を備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の搬送装置。
【請求項6】
上記一対の当接部材の組を、上記第1滑車及び第2滑車の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラの組で構成したことを特徴とする請求項5記載の搬送装置。
【請求項7】
上記第1ワイヤガイド機構を、上記ワイヤを支持する支持ローラを備えて構成するとともに、上記第1ワイヤを挟んで互いに対峙しワイヤが当接可能かつ上記第1滑車の軸線に直交する軸線を有した回転自在な一対のローラの組とを備えて構成し、該ローラの組を上記第1滑車の上記第1ワイヤの繰り出し巻き戻し方向前後に一対設けて構成したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の搬送装置。
【請求項8】
上記接触移動機構を、上記第2シーブの外周に形成され上記第2ワイヤがガイドされる周溝と、上記キャリッジのキャリッジ本体に突出形成され上記第2シーブの周溝に係入するレール部材とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の搬送装置。
【請求項9】
上記レール部材に代えて、上記周溝に係入するローラにしたことを特徴とする請求項8記載の搬送装置。
【請求項10】
上記サポート本体に、上記第1シーブ及び上記第2シーブの外周に弾接してワイヤを押さえる押さえローラを設けたことを特徴とする請求項1乃至9何れかに記載の搬送装置。
【請求項11】
上記サポートを、上記支持部材に繋ぎ止められた2本以上の索体により懸吊することを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の搬送装置。
【請求項12】
上記請求項1乃至11の何れかに記載された搬送装置に用いられる搬送装置用キャリッジ。
【請求項13】
上記請求項1乃至11の何れかに記載された搬送装置に用いられる搬送装置用サポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−100819(P2008−100819A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285160(P2006−285160)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(592076308)イワフジ工業株式会社 (2)
【出願人】(390025793)岩手県 (38)