説明

搬送装置

【課題】 簡単な構成であることからメンテナンス作業が極めて容易な搬送装置を提供する。
【解決手段】 回転自在の複数のスプロケット2と、これらスプロケット2に巻装されてエンドレスに循環すると共に、所定間隔ごとにワークWを載置するための冶具3aを備えた循環チェーン3とを有するテーブル1と、先端にチルチングドッグ7を有するシリンダー6とを備え、前記シリンダー6の伸長動作により前記循環チェーン3がピッチ送りされる搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種加工機にワークを供給するための搬送装置に関し、特に、簡単な構成によることからメンテナンスが極めて容易な搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤加工機、ホーミング加工機、スロッター加工機等に被加工物(ワーク)を供給する搬送装置として、従来より多種多様なものが存在する。これら搬送装置は、ワークが載置されたパレット(冶具)をテーブル上において循環させ、所定の移載位置へと移動されたワークをロボットやローダ等を用いて各種加工機へと順次移動させるためのものである。
【0003】
このような従来の搬送装置の一例として、ワークテーブルの基台上に設けられた一対のスプロケットホイールに巻装されたチェーンにより、ワークを載置した多数のパレットを循環させ、基台上の所定位置にあるパレットと工作機械との間においてワークを授受するように構成されたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3205863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される装置にあっては、チェーンが巻装されたスプロケットホイールの駆動源としてギヤモータを用いていることから、装置の定期点検や故障時の修理の際には、機械的のみならず電気的な知識・技術を有するサービスマンを必要とするために、この装置を海外へ提供するにあたっては、メンテナンスの複雑さゆえに迅速なアフターサービスを提供することが難しく、結果として加工・生産が一時的に途絶えてしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記従来の問題に鑑み、簡単な構成であることからメンテナンス作業が極めて容易な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の搬送装置は、回転自在の複数のスプロケットと、これらスプロケットに巻装されてエンドレスに循環すると共に、所定間隔ごとにワークを載置するための冶具を備えた循環チェーンとを有するテーブルと、先端にチルチングドッグを有するシリンダーとを備え、前記シリンダーの伸長動作により前記循環チェーンがピッチ送りされることを特徴とする。
【0007】
このような構成とすることにより、ワークを載せた循環チェーンを所定のピッチ間隔ごとに間欠搬送することをシリンダーの伸長動作だけで実行することが可能であることから、特別に複雑な機構を必要としないので、万が一の故障時においても迅速、簡単に対処することが可能となる。
【0008】
また、上記搬送装置において、回転自在の一対のスプロケットと、この一対のスプロケットに巻装された駆動チェーンとを有する駆動機構を更に備え、前記循環チェーンが巻装された複数のスプロケットのうちの1つと、前記駆動機構の一対のスプロケットの内の1つのスプロケットとが同期回転可能に連結され、前記シリンダーの伸長動作により前記チルチングドッグが前記駆動チェーンの所定箇所に設けられたドッグを押すことで、前記循環チェーンがピッチ送りされる構成とすることができる。このような構成とすれば、ワークを載せた循環チェーンをシリンダーのチルチングドッグが直接蹴り出すことがないので、チルチングドッグの蹴り出し動作による振動によってワークが搬送途中において脱落したりすることがなくなるので、スムーズなワークの供給が行える。
【0009】
また、前記シリンダーと対向する向きに、先端にチルチングドッグを有する別のシリンダーが配設された構成とすると、ワークを一方向のみならず、往復方向に送ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークを載せた循環チェーンを所定ピッチ間隔ごとに間欠搬送するための機構が、先端にチルチングドッグを備えたシリンダーの伸長動作だけであることから、万が一の故障時においても迅速、簡単に修理を施すことが可能であるので、メンテナンスフリー装置として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の搬送装置の一実施形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
本発明の搬送装置は、図1〜図2に示すように、テーブル1上に備えられた主スプロケット2aと副スプロケット2bとからなる複数のスプロケット2と、これら複数のスプロケット2に巻装されて一続きの循環経路を形成する循環チェーン3と、この循環チェーン3をピッチ送りする駆動機構4とからなる。循環チェーン3は、所定間隔ごとにワークWが載置される冶具3aを有し、冶具3aを有する各チェーンリンクの下部にはワークWを安定して移送するための車輪3bが設けられている。図3〜図4に示すように、循環チェーン3は、これら車輪3bによってテーブル1の上面より所定間隔を隔てた高さ位置において循環するが、各スプロケット2においてもテーブル1の上面より同じ間隔を隔てた高さに配設されていることから、各スプロケット2,2aの高さ位置と、循環するチェーン3の高さ位置とが適合し、スプロケット2の歯と循環チェーン3の各チェーンリンクとが互いに平行に噛み合う。
【0013】
複数のスプロケット2の内の任意の1つは、主スプロケット2aとして機能し、主スプロケット2aはその真下に位置する駆動機構4に備えられた一対のスプロケット5の内の一方5aと連結軸10を介して同期回転可能に連結されている。駆動機構4が有する一対のスプロケット5には、駆動チェーン8が巻装されており、この駆動チェーン8には所定間隔ごとにドッグ9が設けられている。なお、連結軸10にて連結されるテーブル1上の主スプロケット2aと、駆動機構4の一方のスプロケット5aは同じ大きさ、同じ歯数に構成されている。また、駆動チェーン8の各ドッグ9間の間隔は、循環チェーン3の各冶具3a間の間隔と同じになるように設定されている。
【0014】
駆動機構4は更に、先端にチルチングドッグ7を備えた油圧シリンダー6を有する。このシリンダー6が1回伸長動作する距離は、駆動チェーン8の各ドッグ9間のピッチと同じ、つまり循環チェーン3の各冶具3a間のピッチと同じである。チルチングドッグ7は、図5に示すように、アーム7bと、先端側が支軸7cによりアーム7bに対し回動可能に支持されたプッシュ部7aと、プッシュ部7aの支軸7cを中心とした回動を可能にすると共に、プッシュ部7aの後端を下方に向けて付勢する付勢部材7dとを有する。シリンダー6が伸長動作する際には、プッシュ部7aの先端が駆動チェーン8のドッグ9を押して駆動チェーン8を1ピッチ回転させるが、シリンダー6が退行動作する時は、プッシュ部7aの傾斜面7eがドッグ9に当接した際にプッシュ部7aの先端に下方への押し下げ力が働く。この時、プッシュ部7aの後端を下方に向けて付勢する付勢部材7dの付勢力は、ドッグ9がプッシュ部7aの先端を押し下げる力よりも小さくなるように設定されていることから、プッシュ部7aの先端が下方に移動するようにプッシュ部7aが支軸7cを介してアーム7bに対して回動することで、駆動チェーン8を逆回転させることなくシリンダー6が元の状態へと戻ることができる。
【0015】
また、テーブル1上の複数のスプロケット2と、駆動機構4の一対のスプロケット5は、何れもそれらの回転中心軸がそれぞれ対応する軸受により回転自在に支持されているだけであり、モーター等のいかなる回転手段とも接続されていない。つまり、循環チェーン3と駆動チェーン8は、何れも手で引っ張って動かすことができるフリーの状態で各スプロケット2,5に巻装されていることから、修理や点検時、あるいは万一の歩留まり発生時に簡単に手で動かすことができる。なお、図2の例では、駆動機構4の一対のスプロケット5の内の一方5aとテーブル1上の主スプロケット2aとを連結する連結軸10は、スプロケット5aの下方に延びて駆動機構4が載置されている台11に設けられた軸受10aにその下端が支持された構成を示しているが、この構成に限らず、駆動機構4の他方のスプロケット5と同様に、連結軸10の下端も駆動機構4によって支持されるような構成とすることも可能である。
【0016】
次に、本発明の搬送装置を用いたワークの搬送動作について説明する。本発明の搬送装置は、NC旋盤加工機、ホーミング加工機、スロッター加工機等の各種加工装置(図示せず)の近傍に配置される。また、本発明の搬送装置からワークWを受取って加工装置へとワークWを移載するロボットやローダ等の移載装置(図示せず)が、本発明の搬送装置と前述の加工装置との間に配置される。
【0017】
本発明の搬送装置の駆動機構4は、専用の油圧源を必要としない。つまり、加工装置と油圧ケーブルを介して接続されることで、加工装置本体を油圧源とすることができる。このような構成とすることにより、本発明の搬送装置は、加工装置からの要求に基づいてワークWを循環させ、加工装置へと供給することができる。また、移載装置にあっては、モーター駆動式、カム機構を備えた油圧駆動式等から適宜選択し使用すればよく、油圧駆動式の場合は、加工装置を油圧源とすることができる。このような構成とすると、移載装置は、加工装置からの要求に応じて本発明の搬送装置の所定の位置からワークWを受取って、加工装置へと移載することができる。
【0018】
まず、本発明の搬送装置にワークWを載置する。本発明の循環チェーン3は、前述のとおり、簡単に手で引っ張り動かすことができるので、作業員の手によって循環チェーン3を動かしながら順次ワークWを冶具3a上に載置することができる。また、本発明の搬送装置の近傍にフィーダ(図示せず)を配置し、このフィーダからロボットアーム等(図示せず)により循環チェーン3の冶具3aにワークWを載置する構成としてもよい。この様にフィーダからロボットアームを用いてワークWを載置する際には、循環チェーン3の循環経路の任意の箇所を載置位置として設定し、フィーダの油圧系を本発明の搬送装置の駆動機構4の油圧源とすることができる。このような構成とすると、フィーダ側からの指令に基づき駆動機構4がシリンダー6を1ストローク伸長させて循環チェーン3を1ピッチ動かし、ロボットアームにより前述の載置位置にある冶具3a上にワークWが載置され、ワークWの載置後には、再びシリンダー6が伸長して次の冶具3aが載置位置に来るようにフィーダと搬送装置を連動させることができる。
【0019】
次に、循環チェーン3の循環経路の別の任意の箇所を移載位置に設定し、この移載位置にある冶具3a上のワークWを前述の移載装置が受取って、加工装置へと運ぶようにする。移載位置にあるワークWが移載装置により運ばれると、駆動機構4のシリンダー6が1ストローク動作して循環チェーン3が1ピッチ動かされ、次のワークWが移載位置に来る。また、全ての冶具3a上にワークWが載置された後に加工装置への移載を行う方法の他に、加工装置・フィーダ・搬送装置・移載装置・ロボットアームを全て単一の油圧源により同期動作可能に設定し、載置位置にある冶具3a上にワークWを載置するタイミングと、移載位置にあるワークWが移載装置により運ばれるタイミングとを同期化させて、駆動機構4のシリンダー6の動作により次のワークWの載置と加工装置への移載が同時に行えるようにすることも可能である。
【0020】
フィーダから本発明の搬送装置へとワークWを載置する方法、ならびに本発明の搬送装置から加工機械へとワークWを移載する方法にあっては、上記のうちから任意の方法を適宜選択・組合せて用いることが可能であるが、以下の説明においては、ワークWが本発明の搬送装置のテーブル1上を循環・搬送される工程・手順のみを詳細に表す。
【0021】
加工機械(油圧源)がワークWを受入れて加工する準備が整った時点で、加工機械から搬送装置の駆動機構4へと油圧信号が送られる。油圧信号が送られると、駆動機構4の油圧シリンダー6が1ストローク伸長動作する。この時、シリンダー6の先端に備えられたチルチングドッグ7が駆動チェーン8のドッグ9に係合してこのドッグ9を押すことで駆動チェーン8が所定距離をピッチ送りされる。この駆動チェーン8のピッチ送りに伴って、駆動機構4の一対のスプロケット5が回転する。
【0022】
駆動機構4の一対のスプロケット5の内の一方5aは、連結軸10によってテーブル1上の主スプロケット2aと同期回転可能に連結されていることから、シリンダー6の1伸長動作ごとに主スプロケット2aも駆動機構4のスプロケット5aと同じだけ回転する。テーブル1上には、主スプロケット2a以外に、複数の副スプロケット5bが回転自在に配設され、これらスプロケット2には循環チェーン3が一続きに巻装されていることから、主スプロケット2aの回転によって循環チェーン3が所定距離ピッチ送りされる。循環チェーン3が所定距離(冶具3a間の距離に相当)をピッチ送りされることで、循環チェーン3の冶具3a上に載置されたワークWが順次予め定められた方向・距離搬送される。
【0023】
油圧シリンダー6が1ストローク伸長した後には、自動的に1ストローク退行するが、前述のとおりチルチングドッグ7のプッシュ部7aは、駆動チェーン8のドッグ9を逆向きに押さないように付勢部材7dの付勢力に逆らって下方移動し、ドッグ9を通り過ぎた後に付勢部材7dの付勢力によってプッシュ部7aの後端部が下方へ押されることでプッシュ部7aが支軸7c回りに回動してプッシュ部7aの先端部が再びドッグ9に係合する位置へと戻る。
【0024】
以上の工程を繰り返すことで、循環チェーン3を所定距離ずつピッチ送りしてワークWを順次テーブル1上の任意の位置に定めた移載位置へと搬送させ、移載装置により加工機械へと移載させることができる。この時、ワークWが載置された循環チェーン3の各冶具3aは、その下部に車輪3bを備えていることから、テーブル1上を循環経路に沿って左右に曲がりながら動いても非常にバランスが良いことから、ワークWが落ちることがない。
【0025】
本発明の搬送装置はワークWの供給先である加工機械を油圧源としていることから、加工機械からの指令(呼び出し)に応じて順次ワークWを供給することができる。また、本発明の搬送装置は、モーター等の駆動源を一切備えず、フリーに回転するスプロケット2と、これに巻装された循環チェーン3と、フリーに回転するスプロケット5とチルチングドッグ7を先端に備えた油圧シリンダー6とを有する駆動機構4とからなる簡便な構成であることから、故障等が極めて発生し難く、また、故障発生時にも簡単に修復・調整が行えるので、特に速やかにアフターサービスを施すことが難しい海外での使用に適したものとなる。
【0026】
なお、上記の説明では、油圧シリンダー6を1本備えた構成を示したが、それぞれ先端にチルチングドッグ7を備えた油圧シリンダー6を互いに対向させて2本備えた構成とすれば、何らかの理由によって循環チェーン3を逆回転させる必要が生じた際にもう1本の油圧シリンダーを1伸長動作させることで循環チェーン3を逆回転させることができる。
【0027】
また、上記実施形態においては、連結軸10にて連結されたテーブル1側のスプロケット2aと、駆動機構4側のスプロケット5aとを、同じ大きさ、同じ歯数に構成した例を示したが、これに限らず、異なる大きさ、異なる歯数に構成し、駆動チェーン8の各ドッグ9間のピッチや油圧シリンダー6の伸長長さとの組合せにより、シリンダー6の1伸長動作によってワークWが循環経路上を所定ピッチで搬送されるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したとおり、本発明の搬送装置は、ワークを載せた循環チェーンを所定ピッチ間隔ごとに間欠搬送するための機構が、先端にチルチングドッグを備えたシリンダーの伸長動作だけであることから、万が一の故障時においても迅速、簡単に修理を施すことが可能であるので、メンテナンスフリー装置として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の搬送装置の構成を示す斜視図
【図2】同上の搬送装置の構成を示す側面図
【図3】同上の搬送装置における循環チェーンの構成の一部を拡大して示す斜視図
【図4】同上の搬送装置における循環チェーンの構成の一部を拡大して示す側面図
【図5】同上の搬送装置における駆動機構の構成を拡大して示す側面図
【符号の説明】
【0030】
1 テーブル
2 スプロケット
3 循環チェーン
4 駆動機構
5 スプロケット
6 油圧シリンダー
7 チルチングドッグ
8 駆動チェーン
9 ドッグ
10 連結軸
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在の複数のスプロケットと、これらスプロケットに巻装されてエンドレスに循環すると共に、所定間隔ごとにワークを載置するための冶具を備えた循環チェーンとを有するテーブルと、
先端にチルチングドッグを有するシリンダーとを備えた搬送装置であって、
前記シリンダーの伸長動作により前記循環チェーンがピッチ送りされることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
回転自在の一対のスプロケットと、この一対のスプロケットに巻装された駆動チェーンとを有する駆動機構を更に備え、前記循環チェーンが巻装された複数のスプロケットのうちの1つと、前記駆動機構の一対のスプロケットの内の1つのスプロケットとが同期回転可能に連結され、前記シリンダーの伸長動作により前記チルチングドッグが前記駆動チェーンの所定箇所に設けられたドッグを押すことで、前記循環チェーンがピッチ送りされる請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記シリンダーと対向する向きに、先端にチルチングドッグを有する別のシリンダーが設けられ、それぞれのシリンダーの伸長動作により、前記循環チェーンが往復方向にピッチ送りされる請求項1または2に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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