説明

搬送装置

【課題】階層間における被搬送物の搬送時間の短縮化を図ることが可能な搬送車を有する搬送装置を提供する。
【解決手段】この搬送装置は、n階の階層の天井に敷設された軌道と、軌道に沿って走行可能に設けられ、被搬送物を搬送するOHT等の搬送車とを備える。特に、この搬送装置では、n階の階層と(n−1)階の階層の間には、(n−1)階の階層の天井が設けられ、その天井にはn階の階層と(n−1)階の階層に設置された載置部との間において、搬送車の把持部により把持された被搬送物を昇降装置を通じて昇降させるための貫通孔が設けられている。よって、搬送車単独にて、n階の階層における被搬送物の搬送は勿論のこと、前記天井の貫通孔を通じてn階の階層と(n−1)階の階層の載置部との間における被搬送物の搬送を行うことができ、階層間における被搬送物の搬送時間の大幅な短縮化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層間における被搬送物の搬送を可能とする搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶などの製造工場における搬送手段は、天井より懸垂された軌道上を走行して被搬送物を搬送するOHT(Over head Hoist Transport)などの天井走行式搬送車(以下、「搬送車」とも呼ぶ)を用いた搬送システムが主流になってきている。
【0003】
これらの天井走行式搬送車により搬送を行う製造工場では、製造工程が複数階のフロアに跨って構成されている場合がある。このような製造工場では、各階のフロアにおける製造装置間における被搬送物の搬送は、各階に設けられた天井走行式搬送車によって行われている一方、各階のフロア間(階層間)における搬送は、エレベータ機能を有するリフトによって行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この種の階層間の搬送装置として、特許文献2には、例えば階層間に設けられた搬送室に昇降可能に配置された昇降ゲージと、搬入用及び搬出用コンベアとを用いて被搬送物の搬送を行うことが可能な階間搬送装置が開示されている。
【0005】
なお、走行台車と、走行台車に吊下状態に支持されて被搬送物を保持する保持装置と、走行台車に対して保持装置を昇降させる昇降装置と、を備え、昇降装置の回転軸を回転させてベルトを回転軸に巻回させ、又はその巻回を解くことによって保持装置を昇降させて被搬送物を搬送する搬送装置が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−261145号公報
【特許文献2】特開2006−111421号公報
【特許文献3】特開2000−281278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載の搬送制御装置では、各階に設けられた天井走行式搬送車は同一の階層(フロア)のみの搬送を行っており、さらに、階層間における被搬送物の搬送は天井走行式搬送車とリフトの両方を用いて行っているため、階層間における被搬送物の搬送に対して時間が掛かり過ぎてしまうといった課題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、階層間における被搬送物の搬送時間の短縮化を図ることなどが可能な搬送車を有する搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点では、搬送装置は、複数の階層のうち所定の階層の天井に敷設された軌道と、前記軌道に沿って走行可能に設けられ、被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、前記搬送車は、前記被搬送物を把持又は開放する把持部と、前記把持部を懸垂状態で支持する懸垂部と、前記懸垂部の巻き取り又は繰り出しを通じて前記把持部を昇降させる昇降装置と、を有し、前記所定の階層に対して下方に位置する他の階層には前記被搬送物を載置するための載置部が設けられ、前記所定の階層と前記他の階層の間には各階層に対応して設けられた少なくとも1つの天井が設けられ、前記少なくとも1つの天井には、前記所定の階層と前記他の階層の前記載置部との間において、前記把持部により把持された前記被搬送物を前記昇降装置を通じて昇降させるための貫通孔が設けられている。
【0010】
上記の搬送装置は、複数の階層のうち所定の階層の天井に敷設された軌道(レール)と、軌道に沿って走行可能に設けられ、被搬送物を搬送する搬送車と、を備える。ここで、被搬送物としては、例えば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の処理対象物等)を収容するFOUPなどが挙げられる。また、搬送車としては、OHTなどの天井走行式搬送車が挙げられる。
【0011】
そして、搬送車は、被搬送物を把持又は開放する把持部と、把持部を懸垂状態で支持する懸垂部(例えば、懸垂ベルト)と、懸垂部の巻き取り又は繰り出しを通じて把持部を昇降させる昇降装置と、を有する。よって、被搬送物を把持又は開放した状態で、昇降装置を通じて懸垂部の巻き取り又は繰り出しを行うことにより、被搬送物を昇降させることができる。また、所定の階層に対して下方に位置する他の階層には、被搬送物を載置するための載置部(例えば、製造装置に対応して設けられる入出庫ポートなど)が設けられているので、被搬送物を載置部へ載置させることができる。
【0012】
特に、この搬送装置では、所定の階層と他の階層の間には、各階層に対応して設けられた少なくとも1つの天井が設けられ、前記少なくとも1つの天井には、前記所定の階層と前記他の階層の載置部との間において、把持部により把持された被搬送物を昇降装置を通じて昇降させるための貫通孔が設けられている。
【0013】
よって、この搬送装置では、上記した先行技術のようなリフト(図示略)を用いずに、搬送車単独にて、同一の階層における被搬送物の搬送のみならず、天井に設けられた貫通孔を通じて所定の階層と他の階層の間における被搬送物の搬送を行うことができる。その結果、搬送車とリフト(図示略)とを組み合わせて用いる方式と比較して、階層間における被搬送物の搬送時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0014】
上記の搬送装置の一つの態様では、前記他の階層は前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられ、前記少なくとも1つの天井は、前記他の階層の天井とすることができる。つまり、この態様では、前記所定の階層をn階(nは2以上の整数)の階層とした場合、他の階層は(n−1)階の階層であり、前記少なくとも1つの天井は、(n−1)階の階層の天井とすることができる。
【0015】
上記の搬送装置の他の態様では、前記所定の階層と前記他の階層との間には複数の階層が設けられ、前記少なくとも1つの天井は、前記複数の階層の各天井及び前記他の階層の天井である。例えば、この態様では、前記所定の階層をn階(nは2以上の整数)の階層とした場合、他の階層はn階より下位層となる任意の階の階層{例えば(n−3)階の階層}とすることができ、前記少なくとも1つの天井は、前記複数の階層{例えば、(n−1)階及び(n−2)階の階層}の各天井及び前記他の階層{例えば(n−3)階の階層}の天井とすることができる。
【0016】
上記の搬送装置の他の態様では、前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、前記他の階層側の前記貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられ、前記案内部は、前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、前記把持部には、当該把持部の昇降の際に前記案内部の内壁に沿って回転する回転体が設けられている。
【0017】
この態様では、前記他の階層の天井に設けられた貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有する。そして、前記他の階層側の貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられている。また、案内部は、貫通孔の位置から載置部の上端面近傍にかけて延在している。さらに、把持部には、当該把持部の昇降の際に案内部の内壁に沿って回転する回転体(例えば、ローラーなど)が設けられている。
【0018】
この態様によれば、搬送車の昇降装置を通じて懸垂部の繰り出しを行うことにより、被搬送物を把持する把持部を貫通孔に対して正確に降ろしさえすれば、その後は、載置部に対する把持部の特段の位置合せをすることなく、把持部の回転体が案内部の内壁に沿って回転するため、把持部が貫通孔の位置から載置部の上端面まで正確に降ろされる(案内される)。なお、把持部が貫通孔に差し掛かったときに、万が一、懸垂部の揺れに起因して把持部がその貫通孔内にて階層方向と直交する方向へ揺れ動いた場合でも、貫通孔は鉢状の形状を有するので、把持部の回転体が貫通孔の内壁に沿って回転することになるため、把持部が筒状の案内部側へと確実に案内される。こうして、被搬送物を、前記所定の階層側から前記他の階層側の載置部へと短時間で正確に搬送することが可能となる。一方、前記他の階層側に設置された製造装置によって所定の処理が行われた当該他の階層の載置部に載置された被搬送物は、昇降装置を通じて懸垂部を巻き取ることにより、上記の逆順を辿り搬送車側へ引き上げられる。こうして、被搬送物を、前記他の階層の載置部から前記所定の階層へ短時間で正確に搬送することが可能となる。以上のようにして、階層間における被搬送物の搬送を短時間で正確な位置に対して行うことができる。
【0019】
上記の搬送装置の他の態様では、前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、前記他の階層側の前記貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられ、前記案内部は、前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、前記把持部の外壁及び前記案内部に沿う内壁には、磁石が配置されており、前記把持部に配置される前記磁石と、前記案内部に配置される前記磁石とは互いに反発し合う極性を有する。
【0020】
この態様では、前記他の階層の天井に設けられた貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有する。そして、前記他の階層側の貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられている。また、案内部は、貫通孔の位置から載置部の上端面近傍にかけて延在している。また、把持部の外壁及び案内部に沿う内壁には、磁石が配置されている。
【0021】
特に、この態様によれば、把持部に配置される磁石と、案内部に配置される磁石とは互いに反発し合う極性(N極又はS極)を有する。このため、搬送車の昇降装置を通じて懸垂部の巻き取り又は繰り出しを行った場合、把持部の磁石と案内部の磁石とが反発し合うことになる為、その磁力により把持部と案内部の内壁との間に所定の間隔が形成され、把持部を案内部の内壁に接触させることなく、また、把持部の揺れを抑制しながら前記所定の階層と前記他の階層の載置部との間において被搬送物を昇降させることができる。ここで、把持部にローラを設けて、その把持部のローラを案内部の内壁に沿って回転させることにより被搬送物を昇降させる方式の場合には、被搬送物の昇降の際にローラと案内部の内壁との摩擦を原因とした磨耗粉が生じてしまうが、この態様によれば、把持部を案内部の内壁に接触させることなく、被搬送物を昇降させることができるので、前記の磨耗粉が発生することを抑止できる。よって、この搬送装置が設けられる製造工場のクリーン度を高めることができる。
【0022】
上記の搬送装置の他の態様では、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられ、前記案内部は、さらに前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、前記把持部には、当該把持部の昇降の際に前記案内部の内壁に沿って回転する回転体が設けられている。
【0023】
この態様によれば、搬送車の昇降装置を通じて懸垂部の繰り出しを行うことにより、被搬送物を把持する把持部を、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた階層の天井に設けられた貫通孔に対して正確に降ろしさえすれば、その後は、載置部に対する把持部の特段の位置合せをすることなく、把持部の回転体が案内部の内壁に沿って回転するため、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々及び前記貫通孔の各々と繋がる位置に設けられた各案内部、並びに、前記他の階層の天井に設けられた貫通孔及び当該他の階層の貫通孔の位置から載置部の上端面近傍にかけて延在する案内部を夫々通じて、把持部が貫通孔の位置から載置部の上端面まで正確に降ろされる(案内される)。なお、把持部が前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた階層の天井に設けられた貫通孔に差し掛かったときに、万が一、懸垂部の揺れに起因して把持部がその貫通孔内にて階層方向と直交する方向へ揺れ動いた場合でも、当該貫通孔は鉢状の形状を有するので、把持部の回転体が当該貫通孔の内壁に沿って回転することになるため、把持部が筒状の案内部側へと確実に案内される。こうして、被搬送物を、前記所定の階層側から前記他の階層側の載置部へと短時間で正確に搬送することが可能となる。一方、前記他の階層側に設置された製造装置によって所定の処理が行われた当該他の階層の載置部に載置された被搬送物は、昇降装置を通じて懸垂部を巻き取ることにより、上記の逆順を辿り搬送車側へ引き上げられる。こうして、被搬送物を、前記他の階層の載置部から前記所定の階層へ短時間で正確に搬送することが可能となる。以上のようにして、階層間における被搬送物の搬送を短時間で正確な位置に対して行うことができる。
【0024】
上記の搬送装置の他の態様では、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられ、前記案内部は、さらに前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、前記把持部の外壁及び前記案内部に沿う内壁には、磁石が各々の配置されており、前記把持部に配置される前記磁石と、前記案内部に配置される前記磁石とは互いに反発し合う極性(N極又はS極)を有する。
【0025】
この態様では、複数の階層の各天井に設けられた貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有する。そして、前記複数の階層の各天井に設けられた貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられている。また、案内部は、さらに前記他の階層の天井に設けられた貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の貫通孔の位置から載置部の上端面近傍にかけて延在している。また、把持部の外壁及び案内部に沿う内壁には、磁石が配置されている。
【0026】
特に、この態様によれば、把持部に配置される磁石と、案内部に配置される磁石とは互いに反発し合う極性を有する。このため、搬送車の昇降装置を通じて懸垂部の巻き取り又は繰り出しを行った場合、把持部の磁石と案内部の磁石とが反発し合うことになる為、その磁力により把持部と案内部の内壁との間に所定の間隔が形成され、把持部を案内部の内壁に接触させることなく、また、把持部の揺れを抑制しながら前記所定の階層と前記他の階層の載置部との間において被搬送物を昇降させることができる。ここで、把持部にローラを設けて、その把持部のローラを案内部の内壁に沿って回転させることにより被搬送物を昇降させる方式の場合には、被搬送物の昇降の際にローラと案内部の内壁との摩擦を原因とした磨耗粉が生じてしまうが、この態様によれば、把持部を案内部の内壁に接触させることなく、被搬送物を昇降させることができるので、前記の磨耗粉が発生することを抑止できる。よって、この搬送装置が設けられる製造工場のクリーン度を高めることができる。
【0027】
上記の搬送装置の他の態様では、前記案内部の内形は、前記把持部の外形より若干大きい。これにより、把持部を案内部の内壁に沿ってより正確に案内することができ、被搬送物を前記所定の階層から前記他の階層の載置部へより正確に搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
[第1実施形態]
(搬送装置の構成)
以下、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る搬送装置100の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送装置100を、軌道1の延在方向と直交する方向から見たときの搬送装置100の側面図及び断面図を示す。
【0030】
搬送装置100は、半導体や液晶などの製造工場に設置され、その製造工場内における複数の階層{n(nは2以上の整数、以下同様)階の階層(フロア)12と(n−1)階の階層(フロア)11}のうち、n階の階層12の天井70に敷設された軌道(レール)1と、軌道1に沿って走行可能に設けられ、被搬送物9を搬送する、OHT(Over head Hoist Transport)などの天井走行式の搬送車2と、を備えて構成される。この搬送装置100では、軌道1に沿って搬送車2が走行して、その搬送車2が、製造プロセスに従い、例えば同一階層及び/又は階層間における半導体製造装置間又は液晶製造装置間等において、製造過程の品物(例えば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の処理対象物等)を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)などの被搬送物9を無人にて自動搬送する。
【0031】
搬送車2は、軌道1に対して、例えば矢印Y1方向に走行可能な状態で懸垂されており、天井70側に配置された位置決め装置3と、位置決め装置3の下方に配置された昇降装置4と、を備える。
【0032】
位置決め装置3は、被搬送物9を所定の搬送場所へ正確に搬送するために、搬送車2の駆動及び停止を制御して当該搬送車2の位置決めを行う機能を有する。ここで、所定の搬送場所としては、例えば、(n−1)階の階層11に設けられた被搬送物9を載置するための載置部(半導体又は液晶の製造装置80の各々に対応して設けられた入出庫ポートなど)82が挙げられる。
【0033】
昇降装置4は、被搬送物9を把持又は開放する把持部6と、把持部6を懸垂状態で支持する懸垂部(例えば、複数の懸垂ベルト)5と、を備え、懸垂部5の巻き取り又は繰り出しを通じて、階層方向Y2に対して把持部6を昇降させる機能を有する。
【0034】
被搬送物9は、昇降装置4の把持部6により把持されるフランジ部9aと、前記製造過程の品物を収容する収容部9bと、を有する。
【0035】
以上の構成を有する搬送装置100において、n階の階層12と(n−1)階の階層11の間には、(n−1)階の階層11の天井71が設けられ、その天井71には、n階の階層12と(n−1)階の階層11の載置部82との間において、把持部6により把持された被搬送物9を昇降装置4を通じて昇降させるための貫通孔(スルーホール)71aが設けられている。
【0036】
このため、この搬送装置100では、上記した先行技術のようなリフト(図示略)を用いずに、搬送車2単独にて、同一の階層(本例ではn階の階層12)における被搬送物9の搬送のみならず、天井71に設けられた貫通孔71aを通じて階層間{n階の階層12と(n−1)階の階層11の載置部82との間}における被搬送物9の搬送を行うことができる。その結果、搬送車2とリフト(図示略)とを組み合わせて用いる方式と比較して、階層間における被搬送物9の搬送時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0037】
なお、天井71の貫通穴71aを取り囲む位置には、n階の階層12側へ突出する落下防止柵71bが設けられている。この落下防止柵71bは、n階の階層12に存在する各種の物や人などが貫通孔71aを通じて(n−1)階の階層11へ落下するのを防止する役割を有する。
【0038】
[第2実施形態]
(搬送装置の構成)
次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る搬送装置200の構成について説明する。なお、以下では、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。図2は、本発明の第2実施形態に係る搬送装置200を、軌道1の延在方向と直交する方向から見たときの搬送装置200の側面図及び断面図を示す。
【0039】
上記した第1実施形態の構成において理解されるように、n階の階層12から(n−1)階の階層11のように階を跨いで被搬送物9を搬送すると、搬送車2と載置部82との距離が離れ過ぎてしまうため、載置部82に対して搬送車2の正確な位置合せを行うことが困難なことが予測される。
【0040】
そこで、第2実施形態では、この点を考慮して、載置部82に対する搬送車2の正確な位置合せを行う為に、搬送装置200の構成に工夫を凝らす。
【0041】
具体的には、第2実施形態では、まず、(n−1)階の階層11の天井71に設けられた貫通孔71aを、n階の階層12側から(n−1)階の階層11側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状に形成する。そして、(n−1)階の階層12側の貫通孔71aに対して、筒状の案内部71cを繋げるように設けると共に、案内部71cを、貫通孔71aの位置から載置部82の上端面82a近傍にかけて延在するように設ける。さらに、搬送車2の把持部6には、当該把持部6の昇降の際に案内部71cの内壁71caに沿って回転する回転体(例えば、ローラー)8を設ける。
【0042】
以上の構成によれば、搬送車2の昇降装置4を通じて懸垂部5の繰り出しを行うことにより、被搬送物9を把持する把持部6を貫通孔71aに対して正確に降ろしさえすれば、その後は、載置部82に対する把持部6の特段の位置合せをすることなく、把持部6の回転体8が案内部71cの内壁71caに沿って回転するため、把持部6が貫通孔71aの位置から載置部82の上端面82aまで正確に降ろされる(案内される)。なお、把持部6が貫通孔71aに差し掛かったときに、万が一、懸垂部5の揺れに起因して把持部6がその貫通孔71a内にて階層方向Y2と直交する方向へ揺れ動いた場合でも、貫通孔71aは鉢状の形状を有するので、把持部6の回転体8が貫通孔71aの内壁に沿って回転することになるため、把持部6が筒状の案内部71c側へと確実に案内される。こうして、被搬送物9を、n階の階層12側から(n−1)階の階層11の載置部82へと短時間で正確に搬送することが可能となる。一方、(n−1)階の階層11側に設置された製造装置によって所定の処理が行われた(n−1)階の階層11の載置部82に載置された被搬送物9は、昇降装置4を通じて懸垂部5の巻き取りを行うことにより、上記の逆順を辿り搬送車2側へ引き上げられる。こうして、被搬送物9を、(n−1)階の階層11の載置部82からn階の階層12へ短時間で正確に搬送することが可能となる。以上のようにして、階層間における被搬送物9の搬送を、短時間で正確な位置に対して行うことができる。
【0043】
好適な例では、案内部71cの内形(各内壁71caにより形成される形)は、把持部6の外形より若干大きいことが好ましい。これにより、把持部6を案内部71cの内壁71caに沿ってより正確に案内することができ、被搬送物9をn階の階層12から(n−1)階の階層11の載置部82へより正確に搬送することが可能となる。
【0044】
[第3実施形態]
(搬送装置の構成)
次に、図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る搬送装置300の構成について説明する。なお、以下では、第1及び第2実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。図3は、本発明の第3実施形態に係る搬送装置300を、軌道1の延在方向と直交する方向から見たときの搬送装置300の側面図及び断面図を示す。
【0045】
上記の第2実施形態では、把持部6に回転体8を設けて、その把持部6の回転体8を案内部71cの内壁71caに沿って回転させることにより、n階の階層12と(n−1)階の階層11の載置部82との間において被搬送物9を昇降させるように構成した。
【0046】
しかし、この方式の採用した場合には、被搬送物9の昇降の際に、回転体8と案内部71cの内壁71caとの摩擦を原因とした磨耗粉が生じてしまう恐れがある。そうすると、搬送装置200が設けられた製造工場のクリーン度が低下してしまう。
【0047】
そこで、第3実施形態では、この点を考慮して、把持部6と案内部71cの構成に工夫を凝らす。
【0048】
具体的には、第3実施形態では、把持部6の外壁6a及び案内部71cの内壁71caに対して、それぞれ、複数の磁石90、91を適宜の間隔をおいて配置し、さらに、把持部6の外壁6aに配置される各磁石90と、案内部71cの内壁71caに配置される各磁石91とを互いに反発し合う極性(N極又はS極)とする。なお、本発明では、把持部6の外壁6aに対する磁石90の設定数、及び案内部71cの内壁71caに対する磁石91の設定数に限定はない。
【0049】
これにより、搬送車2の昇降装置4を通じて懸垂部5の巻き取り又は繰り出しを行った場合、把持部6の各磁石90と案内部71cの各磁石91とが反発し合うことになる為、その反発力(磁力)により把持部6と案内部71cの内壁71caとの間に所定の間隔が形成され、把持部6を案内部71cの内壁71caに接触させることなく、また、把持部6の揺れを抑制しながらn階の階層12と(n−1)階の階層11の載置部82との間において被搬送物9を昇降させることができ、その結果、前記の磨耗粉が発生することを抑止できる。よって、この搬送装置300が設けられる製造工場のクリーン度を高めることができる。
【0050】
[応用例]
第1乃至第3実施形態では、階層間にて被搬送物9を搬送すると、搬送車2と載置部82との距離が離れ過ぎてしまい、搬送車2側から載置部82側の状況を確認するのが困難である。このため、もし、階層間を跨いだ被搬送物9の搬送の際に、載置部82の上端面82a上に障害体(人及び物を含む)が存在していた場合には、被搬送物9を載置部82の上端面82a上へ安全に載置することできないことが起こり得る。
【0051】
そこで、この点を考慮した場合、本発明では、第1乃至第3実施形態において、階層間を跨いだ被搬送物9の搬送の際に、予め、載置部82の上端面82a上に障害体81が存在するか否かを検出するための障害体検出システムを設けることが望ましい。
【0052】
ここで、障害物検出システムの一例としての障害物検出システムは、(n−1)階の階層11に設けられ、載置部82の上端面82a上に障害体81が載置されているか否かを検出するためのセンサ84と、センサ84を載置部82に取り付けるための支持部83と、(n−1)階の階層11に設けられると共に、センサ84と電気的に接続され、センサ84から出力された障害体検出信号(図示略;障害体81を検出したときにセンサ84を通じて出力される信号)を、後述する搬送車2に内蔵された受信部88へ送信するための送信部87と、n階の階層12に設けられた搬送車2に内蔵され、送信部87から送信された障害体検出信号を受信する受信部88と、搬送車2に内蔵されると共に、受信部88と電気的に接続され、受信部88から出力された障害体検出信号に基づき把持部6の昇降を停止する制御部89と、を有する。なお、センサ84としては、反射方式光センサや超音波センサなど、既知の各種のセンサを適用し得る。
【0053】
この構成によれば、階層間を跨いだ被搬送物9の搬送に際して、センサ84は載置部82の上端面82a上に障害体81が載置されている場合には障害体検出信号を送信部87へ出力すると共に、送信部87は、センサ84から出力された前記障害体検出信号を受信部88へ送信し、さらに、受信部88は、前記障害体検出信号を制御部89へ出力する。そして、制御部89は、受信部88から出力された前記障害体検出信号に基づき把持部6の昇降を停止する。一方、この構成によれば、載置部82の上端面82a上に障害体81が存在しない場合には、階層間を跨いだ被搬送物9の搬送が行われる。こうして、階層間における被搬送物9の搬送を、より安全に且つ短時間で正確な位置に対して行うことができる。
【0054】
[変形例]
上記の第1乃至第3実施形態に係る搬送装置100、200又は300は、n階の階層12と(n−1)階の階層11の間において被搬送物9の搬送を行う構成であった。しかし、本発明に係る搬送装置は、かかる構成に限定されず、複数の階層、例えば10階の階層のうち、軌道1及び搬送車2が例えば6階の階層に設置され、載置部82が例えば3階の階層に設置されているようなケースにも適用可能である。
【0055】
つまり、本発明に係る搬送装置は、複数の階層のうち所定の階層の天井に敷設された軌道1と、軌道1に沿って走行可能に設けられ、被搬送物9を搬送する搬送車2と、を備え、搬送車2は、被搬送物9を把持又は開放する把持部6と、把持部6を懸垂状態で支持する懸垂部5と、懸垂部5の巻き取り又は繰り出しを通じて把持部6を昇降させる昇降装置4と、を有し、前記所定の階層に対して下方に位置する他の階層には被搬送物9を載置するための載置部82が設けられ、前記所定の階層と前記他の階層の間には各階層に対応して設けられた少なくとも1つの天井が設けられ、前記少なくとも1つの天井には、前記所定の階層と前記他の階層の載置部82との間において、把持部6により把持された被搬送物9を昇降装置4を通じて昇降させるための貫通孔が設けられて構成されていればよい。
【0056】
その構成の一例として、本発明に係る搬送装置は、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられ、前記案内部は、さらに前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、前記把持部には、当該把持部の昇降の際に前記案内部の内壁に沿って回転する回転体が設けられた構成とすることができる。
【0057】
よって、これらの態様において、上記の変形例を適用した場合、所定の階層(6階の階層)と他の階層(3階の階層)との間には複数の階層(4階の階層及び5階の階層)が設けられ、前記少なくとも1つの天井は、複数の階層(4階の階層及び5階の階層)の各天井及び他の階層(3階の階層)の天井となる。
【0058】
以上に述べた変形例によれば、上記した第1、第2又は第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
その他、本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置の構成を示す側面図及び断面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る搬送装置の構成を示す側面図及び断面図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る搬送装置の構成を示す側面図及び断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 軌道、 2 搬送車、 3 位置決め装置、 4 昇降装置、 5 懸垂部、 6 把持部、 6a 外壁、 8 回転体、 9 被搬送物、 11 (n−1)階の階層、 12 n階の階層、 70、71 天井、 71a 貫通孔、 71c 案内部、 71ca 内壁、 82 載置部、 90、91 磁石、 100、200、300 搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層のうち所定の階層の天井に敷設された軌道と、
前記軌道に沿って走行可能に設けられ、被搬送物を搬送する搬送車と、を備え、
前記搬送車は、前記被搬送物を把持又は開放する把持部と、前記把持部を懸垂状態で支持する懸垂部と、前記懸垂部の巻き取り又は繰り出しを通じて前記把持部を昇降させる昇降装置と、を有し、
前記所定の階層に対して下方に位置する他の階層には前記被搬送物を載置するための載置部が設けられ、
前記所定の階層と前記他の階層の間には各階層に対応して設けられた少なくとも1つの天井が設けられ、前記少なくとも1つの天井には、前記所定の階層と前記他の階層の前記載置部との間において、前記把持部により把持された前記被搬送物を前記昇降装置を通じて昇降させるための貫通孔が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記他の階層は前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられ、
前記少なくとも1つの天井は、前記他の階層の天井であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記所定の階層と前記他の階層との間には複数の階層が設けられ、
前記少なくとも1つの天井は、前記複数の階層の各天井及び前記他の階層の天井であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、
前記他の階層側の前記貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられ、
前記案内部は、前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、
前記把持部には、当該把持部の昇降の際に前記案内部の内壁に沿って回転する回転体が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、
前記他の階層側の前記貫通孔には、筒状の案内部が繋がるように設けられ、
前記案内部は、前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、
前記把持部の外壁及び前記案内部に沿う内壁には、磁石が配置されており、
前記把持部に配置される前記磁石と、前記案内部に配置される前記磁石とは互いに反発し合う極性を有することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、
前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられ、
前記案内部は、さらに前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、
前記把持部には、当該把持部の昇降の際に前記案内部の内壁に沿って回転する回転体が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔のうち、前記所定の階層に対し下方に隣接する位置に設けられた前記階層の天井に設けられた前記貫通孔は、前記所定の階層側から前記他の階層側にかけて漸次小さくなる鉢状の形状を有し、
前記複数の前記階層の前記各天井に設けられた前記貫通孔の各々と繋がる位置には、筒状の案内部が設けられ、
前記案内部は、さらに前記他の階層の前記天井に設けられた前記貫通孔に繋がっていると共に、当該他の階層の前記貫通孔の位置から前記載置部の上端面近傍にかけて延在しており、
前記把持部の外壁及び前記案内部に沿う内壁には、磁石が各々の配置されており、
前記把持部に配置される前記磁石と、前記案内部に配置される前記磁石とは互いに反発し合う極性を有することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記案内部の内形は、前記把持部の外形より若干大きいことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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