説明

搬送装置

【課題】パレットの搬送ピッチが可変であり、且つ、安定した搬送ピッチでパレットを搬送することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】隣り合う一対のパレット2a,2bを連結部10を介して搬送方向で係合させて連結する。また、上流側のパレット2aが低速搬送領域C1に、下流側のパレット2bが高速搬送領域C2に配された位置で、連結部10の係合状態を解除することにより、パレット2a,2bの搬送速度差により両者の間隔が変更される。その後、連結部10の係合部材11を、解除される以前の係合位置(係合溝12a)と異なる係合位置(係合溝12b)で係合させることにより、パレット2a,2bの搬送ピッチが変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパレットを所定間隔で搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組付ラインでは、車体を載せたパレットを所定間隔で搬送し、このパレットの上で組付作業が行われる。例えば、図5に示す搬送装置は、車体Wを載せた複数のパレット101を連結部102で連結して搬送するものである。この搬送装置100では、パレット2の搬送ピッチが一定となっているため、車体Wのフロント側のみで作業を行う場合(図5のA部参照)は車体Wの間の作業スペースが過大となり、車体Wのバックドアを開けて作業をする場合や、フロント側の作業とリア側の作業を同時に行う場合(図5のB部参照)は、車体Wの間の作業スペースが過小となっている。このように、搬送ピッチが一定の搬送設備では、無駄なスペースができて設備の拡大を招いたり、作業スペースが不足して作業性の低下を招く恐れがある。
【0003】
例えば特許文献1には、軸線に対する角度が異なる2種類のフリクションローラを直列に配し、これにより各フリクションローラによるパレットの搬送速度を異ならせることにより、パレットの搬送ピッチを可変としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−179239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、フリクションローラとパレットとの摩擦力のみにより、各パレットが位置決めされているため、組付作業の衝撃等によりパレットの搬送ピッチが変動する恐れがある。パレットの搬送ピッチが不安定であると、上述のようにパレット間の作業スペースが過大あるいは過小となる恐れがある。また、パレットが所定の搬送ピッチで搬送されることを前提に、ロボットによる組付作業等の制御を行う場合、組付作業に支障を来たす恐れがある。さらに、パレット間に作業板を掛け渡し、この作業板の上で作業を行う場合、パレットの搬送ピッチが不安定であると作業板が不安定となり、最悪の場合作業板がパレットから脱落する恐れがある。
【0006】
本発明が解決すべき課題は、パレットの搬送ピッチが可変であり、且つ、安定した搬送ピッチでパレットを搬送することができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のパレットを搬送する搬送装置であって、低速搬送領域及び高速搬送領域を有するパレット搬送路と、隣り合う一対のパレットを搬送方向で係合させて連結し、異なる搬送ピッチに対応した複数の係合位置を有する連結部と、前記連結部により連結された一対のパレットの一方が低速搬送領域に他方が高速搬送領域に配された位置で、前記連結部の係合状態を解除する解除手段と、前記解除手段により係合状態が解除された前記連結部を、解除される以前と異なる係合位置で係合させる再連結手段とを備えた搬送装置を提供する。
【0008】
このように、本発明の搬送装置では、隣り合う一対のパレットを連結部を介して搬送方向で係合させて連結しているため、パレットの搬送ピッチが連結部により固定され、安定したピッチでパレットを搬送することができる。また、解除手段により、連結部により連結された一対のパレットの一方が低速搬送領域に他方が高速搬送領域に配された位置で、この連結部の係合状態を解除すると、これらのパレットの搬送速度差によりパレットの間隔が拡大あるいは縮小される。こうしてパレットの間隔が変更された状態で係合状態が解除された連結部を、解除される以前と異なる係合位置で係合させることにより、連結部の係合位置が変更され、パレットの搬送ピッチを変更することができる。
【0009】
具体的には、例えば、連結部が、一方のパレットに回転可能に設けられ、下方に突出した係合爪を有する係合部材と、他方のパレットに設けられ、係合爪とパレット搬送方向で係合する係合溝とからなり、解除手段が、係合部材を上方に回転させることにより、係合爪と係合溝との係合を解除する構成とすることができる。この場合、カム機構により係合部材を回転させれば、複雑な制御を要することなく搬送ピッチを変更することができる。
【0010】
上記の搬送装置は、パレットの搬送ピッチを安定させることができるため、隣り合う一対のパレットの間に掛け渡された作業板を有する場合でも、作業板がパレットから脱落する事態を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の搬送装置によれば、パレットの搬送ピッチが可変であり、且つ、安定した搬送ピッチでパレットを搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】搬送装置の平面図である。
【図2】搬送装置の側面図であり、(a)は搬送ピッチ拡張前、(b)は搬送ピッチ拡張中、(c)は搬送ピッチ拡張後の状態を示す。
【図3】図2(a)の連結部付近の拡大図である。
【図4】搬送装置の側面図であり、(a)は搬送ピッチ縮小前、(b)は搬送ピッチ縮小中、(c)は搬送ピッチ縮小後の状態を示す。
【図5】従来の搬送装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す搬送装置1は、複数のパレット2を所定方向(図1では右から左)に搬送するものであり、各パレット2の上には車体Wが搭載される。隣り合う一対のパレット2には作業板3が掛け渡され、この作業板3の上に作業者が立って車体Wへの組付作業が行われる。
【0015】
パレット2は、例えば下面にローラ(図2参照)を有し、パレット搬送路上で移動可能とされる。パレット搬送路は、搬送速度の異なる複数の領域を有し、本実施形態では、図1に示すように、パレット2を低速(例えば5m/分)で搬送する低速搬送領域C1と、低速搬送領域C1の下流側に設けられ、パレット2を高速(例えば6m/分)で搬送する高速搬送領域C2とを有する。高速搬送領域C2におけるパレット2の搬送ピッチL2は、低速搬送領域C1におけるパレット2の搬送ピッチL1よりも大きくなっている。
【0016】
パレット2は連結部10で連結され(図2参照)、連結された複数のパレット2のうち、先頭(下流端)のパレット2を駆動することにより、それ以降のパレット2を引っ張って搬送する。具体的には、図1に示すように、低速搬送領域C1の下流端部に低速駆動手段4(例えば低速フリクションモータ)を設け、この低速駆動手段4により、低速搬送領域C1の先頭(下流端)のパレット2を下流側に駆動することにより、それ以降のパレット2を同速度で搬送する。同様に、高速搬送領域C2の下流端部に高速駆動手段(例えば高速フリクションモータ、図示省略)を設け、この高速駆動手段により、高速搬送領域C2の先頭のパレット2を下流側に駆動することにより、それ以降のパレット2を同速度で搬送する。
【0017】
連結部10は、隣り合う一対のパレット2を搬送方向で係合させて連結するものであり、異なる搬送ピッチに対応した複数の係合位置を有し、その係合位置を変更可能な構造となっている。本実施形態では、図3に示すように、下流側のパレット(同図では2bで示す)の上流側端部に設けられた係合部材11と、上流側のパレット(同図では2aで示す)の下流側端部に設けられた被係合部材12とで、連結部10が構成される。係合部材11は、基端部を下流側のパレット2bに回転可能に取り付けられ、先端部には下方に突出した係合爪11aを有する。被係合部材12は、前後方向に離隔した2箇所に係合溝12a,12bを有する。上流側の係合溝12aは狭い方の搬送ピッチL1に対応するものであり、下流側の係合溝12bは広い方の搬送ピッチL2に対応するものである。
【0018】
搬送装置1には、パレット2が所定位置に達したとき、すなわち、連結部10により連結されたパレット2の一方が低速搬送領域C1に、他方が高速搬送領域C2に配された状態となったとき(図2(b)参照)に、連結部10の係合状態を解除する解除手段が設けられる。本実施形態では、係合部材11を上方に回転させるカム機構により、解除手段が構成される。本実施形態では、図3に示すように、搬送装置1に、係合部材11から下方に伸び、下端にローラ21aを有するカムフォロア21と、カムフォロア21のローラ21aが乗り上げる丘部22とが設けられる。丘部22は、床面から一段高くなった平面部22aと、平面部22aと床面とを連続する傾斜面22b,22cとを有する(図2参照)。このカムフォロア21と、丘部22の平面部22a及び上流側の傾斜面22bとで、解除手段が構成される。平面部22aの床面からの高さh(図3参照)は、カムフォロア21のローラ21aが乗り上げたときに、係合爪11aと係合溝12a,12bとの係合が解除される高さに設定される。
【0019】
搬送装置1には、解除手段により係合状態が解除された連結部10を、再び係合させる再連結手段が設けられる。本実施形態では、係合部材11に設けられたカムフォロア21と、丘部22の下流側の傾斜面22c(図2参照)とで、再連結手段が構成される。
【0020】
次に、連結部10により連結された一対のパレット2a,2bの搬送ピッチを変更する手順を、図2を用いて説明する。
【0021】
図2(a)は、一対のパレット2a,2bが、共に低速搬送領域C1内に配された状態を示している。このとき、パレット2a,2b間の連結部10は、係合部材11と上流側の係合溝12aとが係合しており、これによりパレット2a,2bの間隔は狭くなっている(搬送ピッチL1)。
【0022】
連結部10が係合解除位置に達したら、解除手段により連結部10の係合状態が解除される。具体的には、係合部材11に設けられたカムフォロア21が丘部22に乗り上げることにより、係合部材11が上方に回転して係合溝12aとの係合が解除される(図2(b)参照)。その後、ローラ21aが丘部22の平面部22aの上を走行している間、連結部10の係合状態を解除した状態で維持される。
【0023】
上記のように、連結部10の係合状態が解除されると同時に、下流側のパレット2bが低速搬送領域C1から高速搬送領域C2に進入し、搬送速度が切り替えられる。具体的には、ローラ21aが丘部22に乗り上げて連結部10の係合状態が解除されると共に、下流側のパレット2bが低速駆動手段4を越えて両者が非接触となり、低速駆動が解除される。これとほぼ同時に、下流側のパレット2bの下流端部の被係合部材12が、さらに下流側のパレット(図示省略)を介して高速駆動手段(図示省略)により下流側に引っ張られ、高速駆動が開始される。このとき、低速駆動の解除及び高速駆動の開始は同時であることが理想的であるが、現実的には、低速駆動の解除の直前に高速駆動が開始される。この場合、下流側のパレット2bが、瞬間的に、高速駆動手段及び低速駆動手段4の双方に駆動されることになるが、一方の駆動手段がパレット2bに対して滑ることにより、駆動手段に過剰な負荷が加わることを防止できる。
【0024】
こうして、一対のパレット2a,2bの連結を解除すると共に、両パレット2a,2bを異なる速度で搬送することにより、両パレット2a,2bはその間隔を広げながら下流側に搬送される。このとき、作業板3は、一方のパレット(図示例では下流側のパレット2b)に固定されると共に、他方のパレット(図示例では上流側のパレット2a)には固定されておらず、パレット2a上に載置されている。これにより、パレット2a,2bの間隔を変更するときでも、作業板3がパレット2a上でスライドすることにより、パレット2a,2bの間に作業板3を掛け渡した状態を維持することができる。
【0025】
連結部10が係合復帰位置に達したら、再連結手段により連結部10が再び係合状態とされる。具体的には、係合部材11のカムフォロア21が丘部22の下流側の傾斜面22cに沿って降下することにより、係合部材11が下方に回転して下流側の係合溝12bに係合する(図2(c)参照)。これにより、パレット2a,2b間の間隔を広げた状態(搬送ピッチL2)で固定されると同時に、上流側のパレット2aが下流側のパレット2bに引っ張られて高速搬送に切り替わる。
【0026】
以上のように、パレット2間の連結部10が丘部22を通過することにより、パレット2の搬送ピッチが広げられる。連結部10が係合した状態では、搬送ピッチがL1あるいはL2で固定されているため、安定した搬送ピッチでパレット2を搬送することができ、作業板3の脱落等の不具合を防止できる。また、連結部10の解除手段及び再連結手段として、カム機構を利用した構造を採用することで、複雑な制御を要することなく、搬送ピッチの変更を行うことができる。
【0027】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、パレット2の搬送ピッチを広げる場合を示しているが、例えば、パレット2の搬送ピッチを狭める場合にも、本発明を適用することができる。具体的には、図4(a)に示すように、一対のパレット2a,2bを高速搬送領域C2において広い搬送ピッチL2で搬送している状態から、下流側のパレット2bを低速搬送領域C1に進入させ、このパレット2bを低速搬送に切り替える。これにより、図4(b)に示すように、両パレット2a,2bの間隔が徐々に狭まり、下流側の係合溝12bに係合していた係合爪11aが、傾斜部11a1でガイドされながら係合溝12a,12bの間の平坦部12cに乗り上げ、連結部10の係合状態が解除される。すなわち、係合爪11aの傾斜部11a1及び被係合部材12の平坦部12cとで解除手段が構成される。さらにパレット2a,2bの間隔が狭まると、図4(c)に示すように、係合爪11aが上流側の係合溝12aに係合し、これと同時に上流側のパレット2aが低速搬送に切り替わる。すなわち、係合爪11aと、平坦部12cと係合溝12aとの段差により、再連結手段が構成される。以上により、搬送ピッチがL2からL1に切り替えられる。尚、図4では、簡略化のため、作業板3及びカムフォロア21の図示を省略している。
【0028】
また、以上で示した構成、すなわちパレットの搬送ピッチをL1からL2に広げる構成と、搬送ピッチをL2からL1に狭める構成とを組み合わせることにより、パレット搬送路をループ状に構成することができる。さらに、パレットの搬送ピッチは2種類だけでなく、3種類以上のピッチで搬送することもできる。
【0029】
また、上記の実施形態では、連結部10の係合状態を解除する解除手段として、カム機構を利用した構造が採用されているが、これに限らず、例えば、係合部材11の回転をシリンダやモータ等で制御することにより、解除手段及び再連結手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 搬送装置
2(2a,2b) パレット
3 作業板
4 低速駆動手段
10 連結部
11 係合部材
12 被係合部材
12a,12b 係合溝
21 カムフォロア
22 丘部
C1 低速搬送領域
C2 高速搬送領域
W 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパレットを搬送する搬送装置であって、
低速搬送領域及び高速搬送領域を有するパレット搬送路と、隣り合う一対のパレットを搬送方向で係合させて連結し、異なる搬送ピッチに対応した複数の係合位置を有する連結部と、前記連結部により連結された一対のパレットの一方が低速搬送領域に他方が高速搬送領域に配された位置で、前記連結部の係合状態を解除する解除手段と、前記解除手段により係合状態が解除された前記連結部を、解除される以前と異なる係合位置で係合させる再連結手段とを備えた搬送装置。
【請求項2】
前記連結部が、一方のパレットに回転可能に設けられ、下方に突出した係合爪を有する係合部材と、他方のパレットに設けられ、前記係合爪とパレット搬送方向で係合する係合溝とからなり、前記解除手段が、前記係合部材を上方に回転させることにより、前記係合爪と前記係合溝との係合を解除するものである請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記解除手段が、カム機構により前記係合部材を回転させるものである請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
隣り合う一対のパレットの間に掛け渡された作業板を有する請求項1〜3の何れかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131964(P2011−131964A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290893(P2009−290893)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)