説明

搬送補助装置

【課題】汎用的な印刷装置に対して印刷媒体が正確に搬送される状態を容易に実現することは困難であった。
【解決手段】複数の凹凸を形成するレンズを有する印刷媒体を搬送する搬送トレイであって、前記レンズによって形成された凹部に嵌められる凸部が形成された搬送トレイと、前記搬送トレイが取り付けられるとともに当該搬送トレイの移動方向を直線方向に制限する移動方向制限部と、前記移動方向制限部が設置される第1設置部と印刷装置が設置される第2設置部とを備える設置台であって、前記第1設置部に前記移動方向制限部が設置された状態における前記移動方向と、前記第2設置部に前記印刷装置が設置された状態における当該印刷装置の副走査方向と、が一致する設置台と、を備える搬送補助装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体の搬送を補助するための搬送補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の凹凸を形成するレンズを有する印刷媒体に記録剤を記録する際に、主走査方向における記録剤の記録位置を高精度に規定するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、レンチキュラーレンズを有する印刷媒体を載せる台にレンチキュラーレンズと同形状かつ印刷装置の副走査方向に平行な方向に延びる凹凸を形成し、レンチキュラーレンズと当該凹凸とを噛み合わせながら印刷媒体を搬送することによって印刷媒体を正確に搬送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、汎用的な印刷装置に対して印刷媒体が正確に搬送される状態を容易に実現することは困難であった。すなわち、特許文献1に開示された技術においては、印刷媒体を載せる台(シートガイド)に形成された凹凸とレンチキュラーレンズとを噛み合わせながら搬送するために印刷媒体を正確に搬送することが可能である。そして、特許文献1に開示された技術においては、印刷装置の筐体に形成された2カ所のねじ挿通口を利用し、印刷媒体を載せる台をねじによって印刷装置に固定することが可能である。
【0005】
しかし、このような構成においては、台と印刷装置とが固定される前の状態で、台と印刷装置との双方が自由に移動可能な状態である。また、ねじは一般的に遊びがありねじの挿入方向に自由度がある。さらに、ねじの締めつけ度合いに応じて台と印刷装置との相対位置関係が変動し得る。従って、ねじによって、台上での印刷媒体の搬送方向と印刷装置における副走査方向とを正確に一致させることは困難である。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、汎用的な印刷装置に対して印刷媒体が正確に搬送される状態を容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、レンズによって形成された凹部に嵌められる凸部を搬送トレイに形成し、移動方向制限部によって当該搬送トレイの移動方向を直線方向に制限する。さらに、設置台の第1設置部に移動方向制限部が設置され、第2設置部に印刷装置が設置される構成とし、かつ、第1設置部に移動方向制限部が設置された状態における移動方向と、第2設置部に印刷装置が設置された状態における当該印刷装置の副走査方向と、が一致するように構成する。
【0007】
この構成によれば、移動方向制限部と印刷装置とを設置部に設置した状態で、搬送トレイの移動方向を印刷装置の副走査方向と一致させることができる。また、搬送用トレイ上にはレンズによって形成された凹部を嵌めることが可能な凸部が形成されているため、レンズを有する印刷媒体を搬送トレイ上で正確に位置決めして載置することが可能である。このため、汎用的な印刷装置を本発明にかかる搬送補助装置に設置し、さらに、レンズを有する印刷媒体を搬送トレイ上に載置した状態で搬送トレイを移動させることにより、印刷装置において印刷媒体を搬送する搬送方向である副走査方向に沿って印刷媒体を正確に搬送することが可能になる。
【0008】
さらに、第1設置部と第2設置部とは、それぞれに対して移動方向制限部と印刷装置とを設置することによって、搬送トレイの移動方向と副走査方向とが一致するように構成されている。従って、汎用的な印刷装置に対して印刷媒体が正確に搬送される状態を容易に実現することが可能である。なお、本発明においては、設置台に対して移動方向制限部と印刷装置とを設置する構成であるため、印刷装置に対して移動方向制限部を接合するためのねじ挿入部が不要である。従って、ねじ挿入部等を備えない汎用的な印刷装置に対して印刷媒体が正確に搬送される状態を実現することが可能である。
【0009】
ここで、レンズは曲率が0より大きい部分を有するとともに光を屈折させることが可能な透明体によって構成されていれば良く、印刷媒体には当該透明体が接合されるとともに当該印刷媒体には当該透明体において光の進行方向を調整するための凹凸が複数個形成されていればよい。すなわち、搬送トレイに形成された凸部に嵌められることによって搬送トレイ上においてレンズを位置決めすることが可能な凹部がレンズに備えられていればよい。
【0010】
移動方向制限部は、搬送トレイの移動方向を直線方向に制限する機構を備えていればよい。例えば、溝や棒などの直線状の部位を備える部材と、当該直線状の部位を備える部材に取り付けられて当該直線状の部位が延びる方向に沿って移動可能となっている移動部とによって構成されるリニアガイド等を構成し、当該移動部と搬送トレイとを接合する構成等によって実現可能である。
【0011】
設置台は、移動方向制限部と印刷装置とを設置可能であるとともに、移動方向制限部と印刷装置とを設置台に設置することによって搬送トレイの移動方向と副走査方向とが一致するように構成されていればよい。例えば、第1設置部においては移動方向制限部の設置位置および設置方向が決められており、第2設置部においては印刷装置の設置位置および設置方向が決められている構成とすればよい。この構成によれば、移動方向制限部と印刷装置との相対位置関係を考慮することなく、単に、設置台に対して移動方向制限部と印刷装置とのそれぞれを設置することによって、搬送トレイの移動方向と副走査方向とを正確に一致させることが可能である。
【0012】
さらに、印刷媒体が正確に搬送される状態を容易に実現するための構成として、第1設置部に対して移動方向制限部を設置する際に搬送トレイの移動方向を調整できる構成を採用しても良い。例えば、印刷装置が設置されることによって当該印刷装置における副走査方向が特定の方向に配向するように第2設置部を構成し、第1設置部が当該特定の方向と搬送トレイの移動方向とを一致させるための角度調整手段を備えるように構成する。この構成によれば、角度調整手段により、印刷装置を設置台に設置した状態における副走査方向(特定の方向)と搬送トレイの移動方向とを容易に一致させることが可能である。
【0013】
さらに、角度調整手段においては、移動方向制限部を設置した結果、搬送トレイの移動方向が調整される構成であっても良いし、移動方向制限部を設置する際に搬送トレイの移動方向を調整可能な構成であっても良い。
【0014】
前者としては、例えば、移動方向制限部に2カ所以上の穴を形成する構成とし、角度調整手段が、これらの穴のそれぞれに対して挿入される挿入部であって、特定の方向に平行な方向に延びる2以上の挿入部を備える構成を採用しても良い。この構成によれば、移動方向制限部の穴に挿入部を挿入して移動方向制限部を設置台に設置した結果、印刷装置における副走査方向と搬送トレイの移動方向とが一致するように調整される。
【0015】
後者としては、例えば、角度調整手段が、移動方向制限部に形成された穴に対して挿入される挿入部であって、第2設置部に印刷装置が設置された状態における当該印刷装置の副走査方向および主走査方向に対して垂直な方向に延びる挿入部と、移動方向制限部の挿入部に対する回転角を任意の角度に設定して固定する固定手段とを備える構成を採用しても良い。すなわち、動方向制御部の穴に対して挿入部を挿入した状態で当該移動方向制限部は、挿入部を軸にして回転可能な状態となる。また、固定手段においては、移動方向制限部の回転角を任意の回転角に設定して固定することが可能であるため、移動方向制限部の回転角を所望の回転角に調整して移動方向制限部を設置台に対して固定することが可能である。この構成により、印刷装置における副走査方向と搬送トレイの移動方向とが一致するように容易に調整することが可能になる。なお、移動方向制限部の回転角の再現性を向上させるために、移動方向制限部の回転角や移動方向制限部と印刷装置との相対関係を計測するための計量器を備える構成としても良い。
【0016】
さらに、搬送補助装置が、印刷媒体に対する記録剤の記録位置精度を高める構成を備えていても良い。例えば、印刷媒体が複数の凹凸を形成するレンチキュラーレンズである場合、例えば、印刷媒体は、複数の凸レンズを備えるレンズ面と当該レンズ面に対向する平面とを有するレンズシートを印刷用紙に接合することによって構成される。すなわち、レンズシートの平面と印刷用紙の平面とを接合することにより、印刷媒体の一方の面がレンズ面、他方の面が印刷用紙となるように構成することによってレンチキュラーレンズを有する印刷媒体を構成することができる。さらに、レンチキュラーレンズのレンズ面においては、複数の凸レンズが一方の方向に対して平行に延びるとともに、当該凸レンズが延びる方向に対して直交する方向には所定の周期で凸レンズが並んでいる。
【0017】
また、レンチキュラーレンズは、印刷媒体に印刷された画像を立体的に見せる視覚効果や、印刷媒体に印刷された画像を見る角度によって変化させる視覚効果や、印刷媒体に印刷された画像を動画のように見せる視覚効果などがある。これらの視覚効果を確実に実現するためには、凸レンズが延びる方向に対して直交する方向における凸レンズの周期に合わせて画像を正確な位置に印刷することが必要である。すなわち、印刷媒体に対して印刷される画像が凸レンズの周期と同じ周期で構成され、かつ、凸レンズが延びる方向に対して直交する方向において凸レンズに同期して画像が形成される必要がある。具体的には、凸レンズが延びる方向に対して直交する方向における一つの凸レンズの端から端に対応する位置に一周期の画像の端から端が対応するように画像が印刷されている場合には適正な画像が視認される。一方、凸レンズが延びる方向に対して直交する方向における一つの凸レンズの端に対応する位置と一周期の画像の端が印刷される位置が異なる場合には適正な画像が視認されない。
【0018】
但し、予め決められた位置に予め決められた画像が印刷されることが理想であるものの、レンチキュラーレンズは所定の周期で凸レンズが並ぶレンズであるため、仮に凸レンズが延びる方向に対して直交する方向における一つの凸レンズの端に対応する位置と一周期の画像の端が印刷される位置とが、凸レンズの周期だけずれて印刷されていたとしてもさほど視覚効果は変わらない。そこで、レンチキュラーレンズを有する印刷媒体を印刷するために、搬送トレイに形成する凸部同士の距離をレンチキュラーレンズによって形成された凹部同士の距離の整数倍となるように構成する。この構成によれば、搬送トレイ上の凸部に対してレンチキュラーレンズによって形成された凹部を合わせるように印刷媒体を載置することで、レンチキュラーレンズの凸レンズが延びる方向に対して直交する方向における凸レンズの端が必ず特定の位置となるように位置決めすることができる。このため、当該特定の位置が一周期の画像における端の位置に一致するように印刷装置を制御すれば、レンチキュラーレンズによって適正な画像を視認することができるように正確に画像を印刷することが可能である。
【0019】
さらに、より正確に搬送トレイが搬送されるように構成してもよい。例えば、平板状の搬送トレイにおいて、うら面に搬送トレイの移動方向と平行な方向に延びる突起が形成される構成とする。また、移動方向制限部においては、当該うら面に対向する面に、搬送トレイの移動方向に平行な方向に延びるとともに当該突起に係合する溝が形成される構成とする。この構成によれば、搬送トレイのうら面の突起と移動方向制限部の溝との係合によって、搬送トレイの移動方向が上述の直線方向となるように補助される。従って、上述の直線方向に制限された移動方向に沿ってより正確に搬送トレイが搬送されるように構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(1A)は搬送補助装置を副走査方向および主走査方向に垂直な方向から眺めた図、(1B)は搬送補助装置を副走査方向に垂直および主走査方向に平行な方向から眺めた図、(1C)は移動方向制限部および印刷装置を設置台に設置する様子を示す図である。
【図2】(2A)はレンチキュラーレンズおよび搬送補助装置の断面図、(2B)(2C)はレンチキュラーレンズの断面図である。
【図3】(3A)(3B)はレンチキュラーレンズおよび搬送補助装置の断面図、(3C)は搬送補助装置を副走査方向および主走査方向に垂直な方向から眺めた図である。
【図4】(4A)は搬送補助装置を副走査方向および主走査方向に垂直な方向から眺めた図、(4B)は搬送補助装置を副走査方向に垂直および主走査方向に平行な方向から眺めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)搬送補助装置の構成:
(2)印刷処理:
(3)他の実施形態:
【0022】
(1)搬送補助装置の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる搬送補助装置10に対して印刷装置20を設置した状態において当該搬送補助装置10をz軸に平行な方向から眺めた状態を示し、図1Bは搬送補助装置10に対して印刷装置20を設置した状態において当該搬送補助装置10をy軸に平行な方向から眺めた状態を示している。なお、搬送補助装置10は後述する設置台10cを備えるとともに設置台10cの下部は平板状の直方体10c3によって構成されている。そして、z軸は当該平板状の直方体10c3の最も大きな平面に対して垂直な方向であり、x軸はz軸に対して垂直であるとともに当該平板状の直方体10c3の一側面に対して平行な方向であり、y軸はz軸に対して垂直であるとともに当該平板状の直方体10c3の他の側面に対して平行な方向である。
【0023】
本実施形態において、搬送補助装置10は、搬送トレイ10aと移動方向制限部10bと設置台10cとを備えている。搬送トレイ10aは、レンチキュラーレンズを有する印刷媒体を搬送するトレイであり、平板状の部材によって構成されている。当該搬送トレイ10aには、そのおもて面(移動方向制限部10bと逆側の面)に複数の凸部10a1が形成されている。凸部10a1は半球状の突起であり、搬送トレイ10aのおもて面において、x軸およびy軸に対して平行な方向に周期Lで並ぶように配置されている。印刷媒体に対して印刷を行う際には、搬送トレイ10aのおもて面に印刷媒体を載置し、搬送トレイ10aとともに印刷媒体を搬送することになるが、この際に、複数の凸部10a1がレンチキュラーレンズによって形成された凹部に対して嵌められることになる。
【0024】
移動方向制限部10bは、搬送トレイ10aが取り付けられるとともに当該搬送トレイ10aの移動方向を直線方向に制限する機能を有している。本実施形態においてはリニアガイドによって搬送トレイ10aの移動方向を直線方向に制限する構成としている。すなわち、移動方向制限部10bは、略直方体の筐体を備えており、当該筐体内にx軸に平行な方向に向かって延びる直線状の部位10b1が取り付けられている。また、当該直線状の部位10b1には当該直線状の部位10b1に沿って移動可能な移動部10b2が取り付けられている。また、移動方向制限部10bの筐体の上面(搬送トレイ10aが載置される面)にはx軸に平行な方向に延びる矩形の穴10b3が形成されている。当該穴10b3の開口部は長方形であるとともに各辺がx軸あるいはy軸に平行であり、当該y軸に平行な辺によって移動部10b2の可動範囲を規定している。
【0025】
すなわち、移動部10b2の上部はx−y平面に水平な方向の断面が矩形となるように構成されており、当該上部が穴10b3の上方の開口部よりも上に位置するように配置され、当該移動部10b2の上部が搬送トレイ10aのうら面に接合される。また、移動部10b2のy軸方向の幅は穴10b3の開口部のy軸方向の幅より僅かに小さくなっている。従って、移動部10b2は、穴10b3内において開口部の一方の短辺から他方の短辺までx軸方向に平行な方向に移動可能であり、移動部10b2とともに移動する搬送トレイ10aの移動方向をx軸方向に平行な方向に制限することが可能である。
【0026】
設置台10cは、移動方向制限部10bが設置される第1設置部と印刷装置20が設置される第2設置部とを備えている。すなわち、設置台10cは、平板状の直方体10c3と当該平板状の直方体10c3の最も大きな平面からz軸方向に延びる第1設置部とを備え、さらに、ねじ穴によって構成された第2設置部を備えている。
【0027】
第1設置部は、直方体の部材10c1と当該直方体の部材10c1の一面に対して取り付けられた挿入部10c2とによって構成される。また、直方体の部材10c1は、直方体の部材10c1を構成する二面がx−y平面に平行であり、他の二面がy−z平面に平行であり、さらに他の二面がz−x平面に平行に向くように平板状の直方体10c3に対して取り付けられている。なお、本実施形態において、直方体の部材10c1は平板状の直方体10c3のy軸方向の両端に取り付けられており、直方体の部材10c1が取り付けられた位置を基準としてx軸方向の一方側に移動方向制限部10bを設置するように構成され、他方側には印刷装置20を設置する第2設置部が構成されている。
【0028】
挿入部10c2は、円柱状の部材であるとともに当該円柱の軸がx軸方向に平行な方向を向くとともに、当該挿入部10c2は印刷装置20を設置する第2設置部と逆側に向けて延びるように直方体の部材10c1に対して取り付けられている。さらに、移動方向制限部10bの筐体においては、x軸方向の一方側の端部を構成するy−z平面に平行な平面の2カ所に挿入部10c2の径よりも僅かに大きな径の筒状の穴10b4が形成されている(図1C参照)。従って、図1Cに二点鎖線の折れ線で示すように、当該筒状の穴10b4を挿入部10c2に合わせながら挿入部10c2を筒状の穴10b4に挿入し、移動方向制限部10bを設置台10cに設置することが可能である。ここで、移動方向制限部10bにおいては、当該筒状の穴10b4が延びる方向と、直線状の部位10b1および穴10b3が延びる方向とが平行になるように構成されている。従って、移動方向制限部10bを設置台10cに設置した状態にすることによって搬送トレイ10aの移動方向をx軸に平行な方向に制限することになる。
【0029】
なお、挿入部10c2はx軸方向に延びる円柱状の部材であるとともに、設置台10cにおいては2カ所の位置に直方体の部材10c1(および挿入部10c2)が形成されている。さらに、移動方向制限部10bにおいては、x軸方向の一方側に張出部10b5が形成されており、移動方向制限部10bを設置台10cに設置した状態において当該張出部10b5の下面と直方体の部材10c1の上面とが接触するように構成されている。さらに、移動方向制限部10bの下面は平面であって、移動方向制限部10bの下面と平板状の直方体10c3の上面とが接触した状態で、移動方向制限部10bが設置台10cに設置されるように構成されている。すなわち、張出部10b5と直方体の部材10c3とで直方体の部材10c1を挟むように移動方向制限部10bが設置台10cに設置されるように構成されている。従って、当該挿入部10c2を移動方向制限部10bに形成された筒状の穴10b4に対して挿入して移動方向制限部10bを設置することにより、移動方向制限部10bがx軸方向に対して傾斜する方向にずれることを防止することができる。この結果、搬送トレイ10aの移動方向を正確に規定することが可能である。なお、挿入部10c2および当該挿入部10c2が挿入される筒状の穴10b4の形状は円柱状および筒状に限定されない。すなわち、x軸方向に平行な方向に延びる軸を持つ他の形状であっても良く、四角柱や三角柱の挿入部と当該挿入部に対応する穴を構成してもよい。むろん、挿入部10c2によって移動方向制限部10bの設置角を調整した状態を確実に維持するために、ねじ等によって移動方向制限部10bと設置台10cとの固定を補助する構成としても良い。
【0030】
本実施形態において、第2設置部は、平板状の直方体10c3に形成されたねじ穴10c4によって構成される。すなわち、本実施形態において、印刷装置20の下部には筐体の下面から下方に延びる4カ所の足部20cが取り付けられており、当該足部20cの底にはねじ穴が形成されている。従って、印刷装置20を平板状の直方体10c3に載置した状態で足部20cのねじ穴および直方体の部材10c1に形成されたねじ穴10c4を利用して印刷装置20を設置台10c上に固定することができる。
【0031】
なお、印刷装置20においては、印刷ヘッド20aを所定の直線方向に往復動させながら印刷ヘッド20aから記録剤であるインクを吐出して印刷媒体に画像を印刷する。本実施形態においては、当該印刷ヘッド20aの移動方向を主走査方向と呼ぶ。また、印刷装置20は、筐体内に複数のローラー20bを備えており、これらのローラー20bの中の少なくとも一つに対して図示しないモーターの動力が伝達されることによって印刷媒体が搬送される。本実施形態においては、当該印刷媒体が搬送される方向を副走査方向と呼ぶ。なお、本実施形態において、ローラー20bが延びる方向は印刷ヘッド20aの移動方向に平行な方向であるため、副走査方向は主走査方向に対して垂直である。また、印刷装置20内において少なくとも印刷ヘッド20aの下方では印刷媒体が平面内を移動するように搬送される。本実施形態においては、当該印刷ヘッド20aの下方において印刷媒体が移動する平面を搬送平面と呼ぶ。なお、図1B、図1Cにおいては、搬送平面を一点鎖線によって示している。
【0032】
本実施形態において、ねじ穴10c4は、印刷装置20が設置台10c上に固定された状態において、印刷装置20における副走査方向がx軸に配向し、かつ、搬送平面がx−y平面と平行になるように構成されている。また、上述のように、移動方向制限部10bが設置台10cに対して設置されると、移動方向制限部10bによって搬送トレイ10aを移動させる際の移動方向はx軸に平行な方向に制限される。従って、設置台10cに対して移動方向制限部10bと印刷装置20とを設置した状態においては、搬送トレイ10aが印刷装置20の副走査方向に平行な方向、かつ、搬送平面に対して平行な方向に対して正確に搬送される。
【0033】
(2)印刷処理:
次に、以上の搬送補助装置10を利用した印刷処理について説明する。図2Aは、レンチキュラーレンズを有する印刷媒体Pに対して画像を印刷する様子を説明する図であり、当該図2Aは、図1AのA−A断面図である。同図2Aに示すように移動方向制限部10bの上面には搬送トレイ10aが載置された状態となっており、当該搬送トレイ10aのおもて面(上面)の凸部10a1にはレンチキュラーレンズを有する印刷媒体Pにおいてレンチキュラーレンズによって形成された凹部が嵌められる。
【0034】
レンチキュラーレンズは、そのレンズ面において、複数の凸レンズが一方の方向(図2Aのように載置した場合においてはy軸およびz軸に垂直なx軸に平行な方向)に対して平行に延びるように構成されるとともに、当該凸レンズが延びる方向に対して直交する方向(図2Aにおいてはy軸に平行な方向)には所定の周期で凸レンズが並ぶレンズである。本実施形態における印刷媒体Pは、印刷用紙の平面に対して当該レンチキュラーレンズが構成されたレンズシートが接合されることによって構成される。図2Aにおいては、印刷用紙とレンズシートとの接合面を破線によって示している。
【0035】
図2Bは、図2Aから印刷媒体Pを抜き出すとともに凸レンズを上側にして示した図である。同図に示すように印刷媒体Pの一方の面には、高さが最大値Hmaxから最小値Hminまで変化する、断面が半円状の凸レンズが複数個形成されている。すなわち、印刷媒体Pにおいては、高さが最小値Hminから最大値Hmaxまで変化する複数の凸レンズが形成されており、同時に高さが最大値Hmaxから最小値Hminまで変化する複数の凹部Cが形成されている。上述のように、レンチキュラーレンズの凸部が所定の周期で形成されているため、凸部に伴って形成される凹部Cも所定の周期で形成される。図2Bにおいては当該所定の周期をDとして示している。このように、一つの凸レンズの端から端までの距離は凹部同士の距離に等しく、周期Dである。
【0036】
一方、搬送トレイ10aのおもて面に形成される凸部10a1のy軸方向に平行な方向の周期はLであり、周期Lは周期Dの整数倍に設定される。本実施形態においては、L=2Dである。従って、印刷媒体Pの凹部Cのうち特定の凹部を凸部10a1のいずれかに合わせるように嵌めると、他の凹部も凸部10a1のいずれかに適合し、印刷媒体Pが主走査方向(y軸に平行な方向)にずれないように位置決めすることができる。このため、搬送トレイ10a上に印刷媒体Pを載置した状態で、印刷装置20のローラー20bにて搬送トレイ10aおよび印刷媒体Pを搬送して印刷を実行する(すなわち、レンズ面と逆側の面に記録剤を記録する)ことにより、印刷媒体Pが主走査方向にずれないように位置決めした状態で印刷を実行することが可能である。
【0037】
さらに、凸部10a1の周期Lが凹部Cの周期Dの整数倍に設定されているため、印刷媒体Pを搬送トレイ10a上に載置するにあたり、印刷媒体Pに形成された凸レンズの端が必ずいずれかの凸部10a1の頂点の上方に位置するように印刷媒体Pの配置を規制することができる。このため、ある印刷媒体Pに印刷を行った後、他の印刷媒体を搬送トレイ10a上に載置する際に仮に印刷媒体Pの配置が主走査方向にずれた位置に配置した場合であっても、その位置のずれ量は必ず主走査方向に対して周期Dの整数倍となる。
【0038】
このように、主走査方向に対する印刷媒体Pのずれが周期Dの整数倍となるように規制されると、レンチキュラーレンズによって適正な視覚効果を得るための画像を極めて容易に印刷することが可能になる。すなわち、レンチキュラーレンズは、印刷媒体に印刷された画像を立体的に見せる視覚効果や、印刷媒体に印刷された画像を見る角度によって変化させる視覚効果や、印刷媒体に印刷された画像を動画のように見せる視覚効果などがある。これらの視覚効果を実現するためには、凹部Cの周期D(凸レンズの周期)に合わせて画像を正確な位置に印刷することが理想とされる。
【0039】
すなわち、印刷媒体に対して印刷される画像が凹部Cの周期Dと同じ周期で構成され、かつ、主走査方向(y軸方向に平行な方向)において凸レンズに同期して画像が形成される状態が理想である。図2Cは、印刷媒体Pに印刷される画像を説明するための図である。同図2Cにおいては、印刷媒体Pに対する記録剤の記録面側に、画像の記録領域を矩形で示している。すなわち、レンチキュラーレンズにおいて、n個(nは正の整数)の画像が角度に応じて視認されるようにするためには、例えば、n個の画像を細分化するとともに各凸レンズの端から端までの間の領域をn個に細分化し、細分化された各領域に細分化された画像を配置することになる。
【0040】
図2Cにおいては、画像1〜画像4の計4個の画像を視認可能にする場合の例を示している。この場合、各凸レンズの端から端までの間の領域が4個の領域に細分化される。また、図2Cに示す例においては、当該図2Cにおける凸レンズの左端に画像1を細分化した画像が印刷され、右隣に画像2を細分化した画像、さらに右隣に画像3を細分化した画像、さらに右隣に画像4を細分化した画像が印刷される。図2Cにおいては、印刷媒体Pの直上において矩形にて細分化された画像の印刷領域を示しており、各矩形の主走査方向(y軸方向に平行な方向)の長さが細分化された領域の主走査方向の長さに相当する。
【0041】
さらに、当該図2Cにおいては、各領域に印刷されるべき画像を1〜4の数値で示している。レンチキュラーレンズによって適正な視覚効果を得るためには、図2Cに示すような各領域の位置に細分化された画像が正確に記録されることが理想である。例えば、図2Cに示すような領域において、凸レンズの左端に対応する位置に画像2〜画像4が印刷されると適正な視覚効果が得られない。しかし、レンチキュラーレンズは周期Dで凸レンズが並ぶレンズであるため、主走査方向(y軸方向に平行な方向)における一つの凸レンズの端に対応する位置P0に対して印刷されるべき画像が画像I0である場合に、仮に印刷位置が周期Dだけずれて画像I1が印刷されたとしてもさほど視覚効果は変わらない。すなわち、図2Cに示す例において、数値1と記載した領域に画像1を細分化した画像が印刷される限り、理想的な印刷位置から周期Dだけずれた位置に印刷が行われたとしてもさほど視覚効果は変わらない。
【0042】
一方、本実施形態においては、上述のように、印刷媒体Pを搬送トレイ10aに配置する場合の主走査方向のずれが周期Dの整数倍になるように構成されている。このため、印刷媒体Pを載置する位置がずれたとしても、凸レンズの端は凸レンズの端が配置されるべき位置に配置される。例えば、図2Cに示す位置P0には必ず凸レンズの端が配置される。従って、印刷装置20において決められた位置に画像が形成されるように印刷制御を行ったとしても、レンチキュラーレンズによる視覚効果を損なわれないように画像を印刷することが可能である。
【0043】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、設置台を利用して印刷装置の副走査方向と移動方向制限部10bによる搬送トレイの搬送方向とを一致させることが可能である限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、印刷媒体Pを搬送トレイ10aに載置する際の向きは、上述のように凸レンズが延びる方向がx軸に平行となるような向きに限定されない。すなわち、凸部10a1は、図1Aに示すようにx軸およびy軸に対して平行な方向に周期Lで並ぶように配置されているため、凸レンズが延びる方向がy軸に平行となるような向きに印刷媒体Pを配向させても良い。むろん、凸レンズが延びる方向がx軸およびy軸に対して傾いた向き(45°傾いた向きなど)となるように印刷媒体Pを配向させても良い。
【0044】
さらに、搬送トレイがより正確に搬送されるような構成を採用しても良い。図3Aは、搬送トレイ10aおよび移動方向制限部10bに対してより正確に搬送するための構成を追加した場合の一実施形態を示す図である。同図3Aは、図2Aと同様のA−A断面図であり、図2Aと同様な構成は同様の符号で示している。図3Aに示す搬送トレイ101aには、搬送トレイ10aと同様の構成に加え、そのうら面に搬送トレイ101aの移動方向(x軸方向)と平行な方向に延びる突起が形成されている。また、移動方向制限部101bには、移動方向制限部10bと同様の構成に加え、搬送トレイ101aのうら面に対向する面に、搬送トレイ101aの移動方向(x軸方向)に平行な方向に延びるとともに搬送トレイ101aの突起に係合する溝が形成されている。
【0045】
図3Aに示す構成において突起や溝はレンズシートと同形状のシートによって構成されている。すなわち、搬送トレイ101aのうら面には、印刷媒体Pを構成するレンズシートと同形状のシート101a2が取り付けられるとともに凸部が延びる方向がx軸と平行な方向を向くように構成されている。従って、図3Aに示す例においては、シート101a2によって形成される凸部が上述の突起に相当する。また、移動方向制限部101bにおける搬送トレイのうら面に対向する面にも印刷媒体Pを構成するレンズシートと同形状のシート101b2が取り付けられるとともに、凸部が延びる方向がx軸と平行な方向を向くように構成されている。従って、図3Aに示す例においては、シート101b2によって形成される凹部が上述の溝に相当する。なお、シート101b2においては、移動方向制限部101bに形成された穴10b3の開口部と同形状の開口部となる穴101b3が形成されており、移動部10b2がx軸に平行な方向に移動することが可能である。
【0046】
以上のような構成によれば、搬送トレイ101aのうら面においてシート101a2が形成する突起と、移動方向制限部101bの上面に取り付けられたシート101b2が形成する溝との係合によって、搬送トレイの移動方向がx軸に平行な方向となるように補助される。従って、x軸方向に平行な方向に沿ってより正確に搬送トレイが搬送される。このため、搬送トレイ101aを副走査方向に沿って正確に搬送することが可能である。なお、シート101a2,101b2はレンズシートであっても良い。
【0047】
さらに、搬送トレイに形成される凸部10a1は半球状の突起に限定されない。例えば、搬送トレイの移動方向に平行に延びる凸部によって構成してもよい。図3Bは、図3Aに示す構成と同様の構成に対して凸部10a1の代わりに搬送トレイの移動方向に平行に延びる凸部を追加した構成を示している。同図3Bは、図2Aと同様のA−A断面図であり、同図3Bに示すように、搬送トレイ102aのおもて面には印刷媒体Pを構成するレンズシートと同形状のシート102a1が取り付けられるとともに凸部が延びる方向がx軸と平行な方向を向くように構成されている。従って、印刷媒体Pのレンズシートによって形成された凹部にシート102a1の凸部を嵌めることによってy軸方向に正確に位置決めをした状態で印刷媒体Pを搬送トレイ102a上に載置することが可能になる。むろん、凸部10a1としては、他にも種々の形状を採用可能であり、搬送トレイ上に印刷媒体Pのレンズシートによって形成された凸部が嵌められる凹部が形成されていても良いし、三角錐や四角錐等の多角錐や円錐等で構成されていてもよい。
【0048】
さらに、印刷媒体検出センサを備える印刷装置に対して本発明を適用しても良い。この場合、さらに、搬送トレイ上に印刷媒体検出センサによって検出される記号を記しておくことが好ましい。図3Cは、搬送トレイ上に当該記号を記した場合の構成例である。図3Cに示す例は搬送補助装置を図1Aと同様な方向から眺めた状態で示しており、図1Aと同様の構成については同じ符号で示している。図3Cに示す例は、印刷装置20内に印刷媒体検出センサ20dを備える点、搬送トレイ10aが黒色に着色されている点、搬送トレイ10aのおもて面に白色の記号103aが記されている点で図1に示す構成と相違している。
【0049】
より具体的には、印刷装置20は白色の物体の存在を検出する印刷媒体検出センサ20dを備えている。当該印刷媒体検出センサ20dは、印刷装置20における印刷媒体Pの搬送面よりz軸方向の上方に設置されており、印刷装置20に搬送される印刷媒体のy軸方向の端部を含む所定範囲内が検出範囲となっている。すなわち、印刷装置20においては、搬送面内で白色の物体が搬送される際に、白色の物体が印刷媒体検出センサ20dの直下に存在する場合には当該白色の物体が搬送面内の所定位置に存在することを検出可能である。
【0050】
搬送トレイ10aのおもて面には、搬送面のy軸に平行な方向の全幅に渡る白線の記号103aが記されている。従って、搬送トレイ10aが搬送面上を搬送され、白線が印刷媒体検出センサ20dの直下に達すると、印刷装置20においては印刷媒体が搬送面内の所定位置に存在するとみなすことになる。本例において、印刷装置20は、一旦図3Cの右側に搬送トレイ10aを搬送した後、搬送トレイ10aを図3Cの左側に搬送しながら印刷を行うように構成されている。また、レンズシートが取り付けられた印刷媒体Pに対して印刷する際には、印刷媒体Pの端部を記号103a上に合わせた状態で印刷媒体Pを搬送トレイ10a上に載置するように決められている。
【0051】
従って、搬送トレイ10a上に印刷媒体Pを載置した状態で印刷を開始すると、印刷装置20は、記号103aによって印刷媒体Pの端部(x軸方向の端部)を特定することが可能になる。さらに、記号103aは搬送トレイ10aのy軸方向に平行な方向の全幅に渡って記されているため、印刷媒体検出センサ20dは、記号103aを検出することによって搬送トレイ10aのy軸方向の端部を検出することができる。そして、印刷媒体Pは、レンズシートが形成する凹部が凸部10a1に嵌められるように位置決めされるため、印刷媒体Pを搬送トレイ10aに配置する場合の主走査方向のずれが周期Dの整数倍となる。このため、印刷装置20において、印刷媒体検出センサ20dによって特定された搬送トレイ10aのy軸方向の端部を基準とし、当該基準に基づいて、印刷媒体Pの凸レンズの端に対応する位置の周期を正確に特定することが可能である。従って、凸レンズの端に対応する位置に印刷されるべき画像を当該位置に対して正確に印刷することが可能である。
【0052】
さらに、第1設置部に対して移動方向制限部を設置する際に搬送トレイの移動方向をより柔軟に調整可能な構成としても良い。例えば、設置台からz軸方向に延びる軸を構成し、当該軸を中心にした回転方向への移動方向制限部の角度調整を行うことができるように構成してもよい。図4A,図4Bは当該角度調整を行えるように構成した実施形態を示す図であり、図4Aは図1Aと同様の方向、図4Bは図1Bと同様の方向から搬送補助装置を眺めた状態を示す図である。また、図4A,図4Bにおいて、図1A,図1Bと同様の構成については同様の符号を付して示している。
【0053】
図4A,図4Bに示す構成においては、設置台10cの平板状の直方体10c3に直方体の部材10c1を取り付ける代わりに、y軸方向の一方側の端部寄りに、円柱状の部材104c1が取り付けられている。円柱状の部材104c1はその軸がz軸と平行の方向を向くように設置台に取り付けられており、その上部には同軸で径がより小さい円柱状の部材104c2が取り付けられている。また、設置台10cの平板状の直方体10c3のy軸方向の他方側の端部寄りには、上部に薄い板状の部位104c4が取り付けられた直方体の部材104c3が取り付けられている。
【0054】
一方、移動方向制限部10bにおいては、円柱状の部材104c2に対応する位置に当該円柱状の部材104c2の径よりも僅かに大きい径の穴が形成されるとともに、当該円柱状の部材104c2を穴に挿入した状態で円柱状の部材104c1の周と移動方向制限部10bの壁面とが接触しながら回転できるような切欠104b4が形成されている。さらに、移動方向制限部10bにおいては、板状の部材104c4に対面するような板状の部材104b5が取り付けられている。
【0055】
さらに、板状の部材104c4および板状の部材104c5には、ねじ穴が形成されており、ねじSを回転挿入することが可能である。従って、移動方向制限部10bに形成された穴に対して円柱状の部材104c2を挿入した状態でねじSを板状の部材104c4および板状の部材104c5に対して回転挿入し、ねじSの回転量を調整することにより、移動方向制限部10bの、円柱状の部材104c2に対する回転角を調整することが可能である。当該回転角の調整によれば、搬送トレイ10aをx−y平面内に平行な面内に維持しながらx軸に対する搬送トレイ10aの向きを調整することが可能である。従って、容易に搬送トレイ10aの移動方向を印刷装置20の副走査方向に一致させることができる。なお、この構成においては、ねじSの挿入量や板状の部材104c4と板状の部材104c5との距離を計測する計測器(マイクロメーター等)や、板状の部材104c4と板状の部材104c5とを接近させる力を作用させるバネを両者に取り付けることにより、より正確に搬送トレイ10aの向きを調整可能に構成し、また、再現可能に構成してもよい。
【0056】
さらに、上述の実施形態は、印刷媒体Pを構成するレンズがレンチキュラーレンズであったが、印刷媒体Pを構成するレンズが凹部あるいは凸部を形成するのであれば他のレンズ(例えば、フレネルレンズ、凹レンズや凸レンズが2次元的に配列されたレンズ、インテグラルフォトグラフィーを実現するためのレンズアレイ(例えば、凸レンズを蜂の巣状に配置したレンズ)等)であっても良い。さらに、上述の説明における凹凸の形状は、視点を変えることによって凹凸が逆になるように見ることも可能である。例えば、上述の実施形態において、レンズによって形成された凹部に対して搬送トレイに形成された凸部を嵌めることとして説明した構成について、レンズによって凸部が形成され、搬送トレイに形成した凹部に対してレンズの凸部を嵌めると見ることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…搬送補助装置、10a…搬送トレイ、10a1…凸部、10b…移動方向制限部、10c…設置台、20…印刷装置、20a…印刷ヘッド、20b…ローラー、20c…足部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹凸を形成するレンズを有する印刷媒体を搬送する搬送トレイであって、前記レンズによって形成された凹部に嵌められる凸部が形成された搬送トレイと、
前記搬送トレイが取り付けられるとともに当該搬送トレイの移動方向を直線方向に制限する移動方向制限部と、
前記移動方向制限部が設置される第1設置部と印刷装置が設置される第2設置部とを備える設置台であって、前記第1設置部に前記移動方向制限部が設置された状態における前記移動方向と、前記第2設置部に前記印刷装置が設置された状態における当該印刷装置の副走査方向と、が一致する設置台と、
を備える搬送補助装置。
【請求項2】
前記第2設置部は、前記印刷装置が設置されることによって当該印刷装置における前記副走査方向が特定の方向に配向する設置部であり、
前記第1設置部は、前記特定の方向と前記移動方向とを一致させるための角度調整手段を備える、
請求項1に記載の搬送補助装置。
【請求項3】
前記角度調整手段は、前記移動方向制限部に形成された2カ所以上の穴のそれぞれに対して挿入される挿入部であって、前記特定の方向に平行な方向に延びる2以上の挿入部を備える、
請求項2に記載の搬送補助装置。
【請求項4】
前記角度調整手段は、
前記移動方向制限部に形成された穴に対して挿入される挿入部であって、前記第2設置部に前記印刷装置が設置された状態における当該印刷装置の副走査方向および主走査方向に対して垂直な方向に延びる挿入部と、
前記移動方向制限部の前記挿入部に対する回転角を任意の角度に設定して固定する固定手段とを備える、
請求項2に記載の搬送補助装置。
【請求項5】
前記レンズは、複数の凹凸を形成するレンチキュラーレンズであり、
前記搬送トレイに形成された前記凸部同士の距離は前記レンチキュラーレンズによって形成された凹部同士の距離の整数倍である、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の搬送補助装置。
【請求項6】
前記搬送トレイは平板状であるとともに、おもて面に前記凸部が形成され、うら面に前記移動方向と平行な方向に延びる突起が形成され、
前記移動方向制限部における前記うら面に対向する面に、前記移動方向に平行な方向に延びるとともに前記突起に係合する溝が形成されている、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の搬送補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157209(P2011−157209A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22852(P2010−22852)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】