説明

搬送車両システム

【課題】搬送台車及び駆動車の各旋回中心を一致させて、より精度よく搬送台車を走行する搬送車両システムを提供する。
【解決手段】第1の固定車輪11、12、及び第1の固定車輪11、12を駆動する駆動源13、14を備え、その場旋回可能な駆動車15と、駆動車15に備えられ、第2の固定車輪43、44を備えてその場旋回可能で駆動車15に連結可能な搬送台車16の旋回中心を検知する旋回中心検知手段31と、駆動車15に設けられ、旋回中心検知手段31の出力から、搬送台車16の旋回中心が、駆動車15の旋回中心に一致したことを検知して、搬送台車16と駆動車15を固定する連結手段40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産工場等では、搬送台車を取り付けて、この搬送台車を移動させる駆動車が利用されている。例えば特許文献1に記載された駆動車(搬送ロボット)は、軸心方向が固定されて搬送台車に設けられた対となる固定車輪と駆動車に設けられた基準点との距離を一定に保った状態で、搬送台車を固定して走行している。これによって、搬送台車と駆動車を有する搬送車両システムは、所定の軌道に沿って安定的に方向変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、搬送台車及び駆動車の各旋回中心を一致させて、より精度よく搬送台車を走行する搬送車両システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る搬送車両システムは、第1の固定車輪、及び前記第1の固定車輪又はそれ以外の車輪を駆動する駆動源を備え、その場旋回可能な駆動車と、前記駆動車に備えられ、第2の固定車輪を備えてその場旋回可能で前記駆動車に連結可能な搬送台車の旋回中心を検知する旋回中心検知手段と、前記駆動車に設けられ、前記旋回中心検知手段の出力から、前記搬送台車の旋回中心が、前記駆動車の旋回中心に一致したことを検知して、前記搬送台車と前記駆動車を固定する連結手段とを有する。
【0006】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、従動車輪とは別に設けられる前記第1の固定車輪は駆動車輪からなって、前記搬送台車と前記駆動車が連結した状態で、前記駆動車輪の受ける荷重は前記従動車輪の受ける荷重より大きくなっているのが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、前記旋回中心検知手段は、前記第2の固定車輪までの距離を計測する距離センサを備えているのが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、前記連結手段は前記搬送台車に設けられた掛止部を有する固定部材に係合する突出物と、該突出物を上下する昇降手段とを有するのが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、前記連結手段は、前記突出物に生じる負荷により、該突出物が前記固定部材を含む前記搬送台車に接触しているのを検出して、該固定部材の位置を検知するのが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る搬送車両システムは、第1の固定車輪、及び前記第1の固定車輪又はそれ以外の車輪を駆動する駆動源を備え、その場旋回可能な駆動車と、第2の固定車輪を備えてその場旋回可能な搬送台車と、前記駆動車に備えられ、前記搬送台車の旋回中心を検知する旋回中心検知手段と、前記駆動車又は前記搬送台車に設けられ、前記旋回中心検知手段の出力から、前記搬送台車の旋回中心が、前記駆動車の旋回中心に一致したことを検知して、前記搬送台車と前記駆動車を固定する連結手段とを有する。
【発明の効果】
【0011】
第1、第2の発明に係る搬送車両システムは、搬送台車の旋回中心が、駆動車の旋回中心に一致したことを検知して、搬送台車と駆動車を固定する連結手段を有するので、搬送車両システムは、搬送台車及び駆動車が旋回の際に横滑りしない状態で、搬送台車と駆動車を固定することができる。即ち、旋回中心が異なる異種の搬送台車であっても搬送台車及び駆動車の各旋回中心を一致させることで、より精度よく搬送台車を走行させることができる。
【0012】
第1の発明に係る搬送車両システム及び搬送車両において、搬送台車と駆動車が連結した状態で、駆動車輪の受ける荷重が従動車輪の受ける荷重より大きくなっている場合、駆動車輪と接地面の間に生じる摩擦力が大きくなり、駆動車輪は、駆動車の走行の際に空転の発生を抑制された状態になることができる。
【0013】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、旋回中心検知手段が、第2の固定車輪までの距離を計測する距離センサを備えている場合、旋回中心検知手段は、第2の固定車輪の位置によって定まる搬送台車の旋回中心の位置を安定して検知することが可能である。
【0014】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、連結手段が搬送台車に設けられた掛止部を有する固定部材に係合する突出物と、突出物を上下する昇降手段とを有する場合、搬送車両システムは、搬送台車と駆動車を容易に連結することができる。
【0015】
第1の発明に係る搬送車両システムにおいて、連結手段が、突出物に生じる負荷により、突出物が固定部材を含む搬送台車に接触しているのを検出して、固定部材の位置を検知する場合、搬送車両システムは、固定部材の位置検出のために複雑な演算回路を設けることなく搬送台車と駆動車を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)、(B)は、それぞれ本発明の一実施の形態に係る搬送車両システムに用いられる駆動車の側面図及び平面図である。
【図2】同搬送車両システムの制御装置の信号接続を示すブロック図である。
【図3】(A)、(B)は、それぞれ搬送台車の固定前及び固定後の駆動車の状態を示す側面図である。
【図4】(A)、(B)は、それぞれ旋回中心検知手段によって導出される計測結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る搬送車両システム10は、駆動車輪(第1の固定車輪)11、12及び駆動車輪11、12をそれぞれ駆動する駆動源(例え電動モータ)13、14を備え、その場旋回可能な駆動車15と、固定車輪(第2の固定車輪)を備えてその場旋回可能で駆動車15に連結可能な搬送台車とを有している。駆動車15には、大きさ等の異なる複数種の搬送台車(例えば、図3(A)、(B)示す搬送台車16)が連結できる。以下、詳細に説明する。
【0018】
図1(A)、(B)に示すように、駆動車15は、駆動車輪11、12が取り付けられた車体18を有している。駆動車輪11、12は、各軸心が実質的に同軸上に位置し、一方が他方に対して逆方向に回転駆動して車体18をその場旋回(以下、単に「旋回」ともいう)させることができる。駆動車輪11、12は、軸心方向が固定された状態で車体18の下部に取り付けられている。車体18の下部には、駆動車輪11、12と距離を有する、対となる従動車輪19、20が設けられている。従動車輪19、20の回転数及び車体18に対する向きは、車体18の移動速度及び向きに合わせて変化する。
旋回する際の車体18の旋回中心Cは、平面視して駆動車輪11、12の軸心を結んだ線上にあり、本実施の形態では、駆動車輪11、12の中心に位置している。
【0019】
車体18には、駆動源13、14を介して駆動車輪11、12の回転動作を制御する制御装置21(図2参照)が内蔵され、車体18は、制御装置21から駆動源13、14への出力に応じて前進、後退、旋回等を行う。
車体18の上部には、制御装置21からの信号によって作動する昇降手段22によって、昇降する昇降台23が設けられ、昇降台23の上部には、前後方向に沿って配置された対となるガイドレール24が配置されている。対となるガイドレール24には、ガイドレール24に沿って移動するスライドブロック25が取り付けられ、スライドブロック25の上部には、横長に形成された突出物26が固定されている。
制御装置21は、スライドブロック25に指示信号を送って、スライドブロック25をガイドレール24に沿って移動させることができる。制御装置21は、昇降台23の高さ及びスライドブロック25の位置調整によって、突出物26の位置を制御可能である。
【0020】
車体18には、前側(一側)に車体18から視認できる外環境を撮像するカメラ27が設けられ、制御装置21は、カメラ27の撮像方向を変えることができる。制御装置21には、予めパターンマッチング用の複数の画像(以下、「ランドマーク」ともいう)が記憶されている。制御装置21は、パターンマッチングによって、カメラ27を介して得られる画像とランドマークを比較して、車体18の位置及び向きを検知する。制御装置21は、カメラ27から得られる画像に加え、駆動車輪11、12の向き及び回転数の履歴等を基にして、車体18の現在位置及び向きを検知可能である。
【0021】
車体18は、後部に距離センサの一例である光電センサ28、29を備えている。光電センサ28(光電センサ29についても同じ)は、発光素子から発した光の反射を利用して、光電センサ28に対して特定の方向にある対象物と光電センサ28の距離を計測する。光電センサ28が対象物の存在を計測可能な最長計測距離は、光電センサ28の設定もしくは仕様によって決められている。
光電センサ28、29は、図2に示すように、信号処理器30に信号接続されている。信号処理器30は、光電センサ28、29の計測値から、駆動車15が連結しようとする搬送台車の固定車輪までの距離を検出することができる。本実施の形態では、光電センサ28、29及び信号処理器30によって旋回中心検知手段31が構成されている。
制御装置21及び信号処理器30は、例えば車体18に搭載されているマイクロコンピュータからなり、相互にデータの入出力が可能である。
【0022】
突出物26には、大きさ等の異なる複数種の搬送台車(搬送台車16を含む)の固定が想定されている。駆動車15及び搬送台車は、駆動車15と搬送台車が連結された状態で、旋回中に全ての車輪が横滑りしないことを旋回の条件にしている。制御装置21には、図2に示すように、それぞれ駆動車輪11、12に生じている負荷を計測する負荷検出センサ36、37が信号接続されている。制御装置21は、負荷検出センサ36(負荷検出センサ37についても同じ)の計測値によって、駆動車輪11に予め設定された値以上の負荷が生じているのを検出したとき、搬送台車又は駆動車15に横滑りが発生しているのを検知する。
【0023】
搬送台車の旋回中心位置は固定車輪の位置によって決まるため、信号処理器30は、搬送台車の固定車輪までの距離を検出することで、その搬送台車の旋回中心の位置を検知することができる。制御装置21は、信号処理器30の出力から、駆動車15が連結しようとする搬送台車の旋回中心位置を検知し、制御装置21が記憶している車体18の旋回中心Cに対する搬送台車の旋回中心の位置関係を算出可能である。制御装置21は、算出した車体18の旋回中心Cに対する搬送台車の旋回中心の位置関係を基に、搬送台車と駆動車15の各旋回中心が一致したことを検知して、昇降台23及びスライドブロック25の位置調整を行い、駆動車15に搬送台車を固定する。
【0024】
制御装置21には、昇降手段22に生じている荷重を検出する荷重センサ38が装着されている。荷重センサ38は、昇降手段22に対して掛けられた荷重を計測して、その計測値を制御装置21に送信する。荷重センサ38の計測値は、図3(A)に示すように、搬送台車16が突出物26に固定されていない状態のときに0(零)になり、図3(B)に示すように、搬送台車16が突出物26に固定された状態のとき0を超えた値になる。
スライドブロック25には、突出物26又はスライドブロック25に生じている負荷を検出する負荷検出センサ39(図2参照)が取り付けられている。負荷検出センサ39は、突出物26又はスライドブロック25が物に接触して、突出物26又はスライドブロック25にスライドブロック25の移動を妨げる負荷が掛かっているのを検出する。制御装置21は、負荷検出センサ39の検出結果から、突出物26又はスライドブロック25に物が接触しているのを検知する。
本実施の形態では、制御装置21、昇降手段22、昇降台23、ガイドレール24、スライドブロック25及び突出物26によって、連結手段40が構成されている。
【0025】
駆動車15に固定可能な搬送台車16は、図3(A)、(B)に示すように、平面視して矩形のカゴ部材41を有している。カゴ部材41の側壁部には、突出物26が係合する固定部材42が取り付けられ、固定部材42は、突出物26が掛止される図示しない掛止部を備えている。搬送台車16は、カゴ部材41に搬送物を収容可能である。
カゴ部材41には、下部一側(前側)の左右に対となる固定車輪(第2の固定車輪)43、44が設けられ、下部他側(後側)の左右に軸心の向きが自在に変化する対となる自在車輪45、46が設けられている。固定車輪43、44の軸心は、実質的に同軸上に配置されている。搬送台車16が備える旋回中心は、平面視して固定車輪43、44の間で固定車輪43、44の軸心を結んだ線上にあり、その位置は、搬送台車16に固定される車体18と搬送台車16の位置関係によって決まる。
【0026】
次に、駆動車15に搬送台車16を固定する工程について説明する。
搬送車両システム10には、搬送台車16を含む複数の搬送台車の位置等を管理している図示しない中央管理装置が設けられている。制御装置21は、この中央管理装置から無線通信等によって搬送台車16の位置及び向きの情報を取得する。制御装置21は、搬送台車16の位置及び向きの情報と駆動車15の現在位置及び方向の情報を基にして、駆動車15を搬送台車16の近くまで移動させる。
搬送台車16の近くまで移動した駆動車15は、カメラ27による搬送台車16の撮像画像等によって、車体18に対する搬送台車16の位置及び姿勢(向き)を検知して、駆動車15の位置及び姿勢を調整しながら移動を行う。制御装置21は、図3(A)に示すように、光電センサ28、29のある車体18の後部が、搬送台車16の固定部材42に近接する位置まで駆動車15を移動させる。駆動車15は、駆動車15が後退した場合、平面視して車体18の後部が搬送台車16の固定車輪43、44の向きに沿って移動し、固定車輪43、44の間を通過する位置及び姿勢で停車する。
【0027】
制御装置21は、突出物26の上端の高さが、搬送台車16の固定部材42の下端位置とカゴ部材41の下端位置の間にくるように、しかも昇降台23の上端位置が、カゴ部材41の下端位置より低くなるように昇降台23の高さを調整する。制御装置21は、この昇降台23の高さ調整と共に、スライドブロック25を搬送台車16から離れる方向(車体18の前方側)に移動させる。
制御装置21は、車体18の一部がカゴ部材41の下側にもぐりこむように、停車していた車体18を予め設定された距離だけ後退させる。制御装置21は、この車体18の後退の際に、駆動車輪11、12の回転数から、車体18、ひいては光電センサ28、29の移動距離を検出する。
【0028】
車体18が後退する際、光電センサ28、29は、固定車輪43、44の向きに沿って移動し、固定車輪43、44の横を通り過ぎながら、それぞれ固定車輪43、44までの距離を計測する。
信号処理器30は、車体18が後退中に、光電センサ28(固定車輪44までの距離を計測する光電センサ29も同様)及び制御装置21から、それぞれ光電センサ28の計測値及び光電センサ28の移動距離を取得して記憶する。
信号処理器30は、光電センサ28の移動距離を、光電センサ28の計測値に対応させるための処理を行い、図4(A)、(B)に示すように、光電センサ28の計測値を光電センサ28の移動量に対応させたグラフを作成する。図4(A)、(B)に示すLは、車体18の後退動作によって移動した光電センサ28の移動量を示している。
【0029】
光電センサ28の計測値は、光電センサ28の計測方向で、かつ光電センサ28の最長計測距離の範囲内に物体が存在しないときNになり、その範囲内に物体が存在するとき0以上N未満の値になる。このNの大きさは、光電センサ28の仕様等によって決められている。
αが信号処理器30に予め設定されるNより小さい値、Yを0より大きいN未満の任意の値として、光電センサ28が予め設定された距離P(0<P<L)以上移動する間、光電センサ28の計測値が、Y−α以上Y+α以下の値を維持した場合、信号処理器30は、固定車輪43が、その計測値を維持したときの光電センサ28の計測方向で、かつ光電センサ28の最長計測距離の範囲内に存在しているという判定をする。一方、光電センサ28が距離P以上移動する間、光電センサ28の計測値が、Y−α以上Y+α以下の値を維持しなかった場合、信号処理器30は、固定車輪43がその範囲内に存在していないという判定をする。
αは、光電センサ28の計測精度や、固定車輪43の表面の凹凸等を考慮して設けられたものである。Pは、光電センサ28によって計測された物体が、平面視して、光電センサ28の移動方向に沿った姿勢(向き)を有する固定車輪43であるか否かを判定するために設けられている。
【0030】
XをPより大きい値として、光電センサ28の計測値と移動量の対応グラフが、図4(A)に示すように、距離Xの移動中に計測値がY−α以上Y+α以下の値を維持した箇所を検出したとき、信号処理器30は、光電センサ28が固定車輪43の真横を通過したのを検知する。信号処理器30は、記憶している光電センサ28の位置情報と、計測値がY−α以上Y+α以下の値を維持したときの光電センサ28の位置情報とから、固定車輪43の位置を検出する。
【0031】
信号処理器30は、光電センサ28がY−α以上Y+α以下の値を計測し始めてから距離X/2移動した位置(以下、「位置T」という)を検出し、この位置Tから、固定車輪43の軸心位置を検知する。固定車輪43の軸心は、平面視して、位置Tにある光電センサ28の計測方向に位置しているので、固定車輪43の軸心位置は、位置Tから求めることができる。搬送台車16の旋回中心は、固定車輪43の軸心上に位置しているため、信号処理器30は、固定車輪43の軸心から搬送台車16の旋回中心位置を検出し、車体18の旋回中心Cと搬送台車16の旋回中心の位置関係を求める。
【0032】
信号処理器30は、距離L移動した後の光電センサ28の位置から、位置Tまでの距離D1から、光電センサ28と旋回中心Cの間隔D2(図1(A)参照)を差し引いた距離D(D=D1−D2)の情報を、制御装置21に送信する。制御装置21は、車体18が搬送台車16から遠ざかる方向に距離D移動した(即ち、搬送台車16の旋回中心が車体18の旋回中心Cに一致する)と判定するまで駆動車15を移動させる。
搬送台車16の旋回中心は、固定車輪43の軸心の延長線上で固定車輪43、44の間にあるので、車体18が距離D移動したとき、平面視して車体18の旋回中心Cと搬送台車16の旋回中心が一致(実質的に一致)した位置になる。
【0033】
車体18が距離D移動した後、制御装置21は、スライドブロック25の移動を開始する。制御装置21は、負荷検出センサ39を介して突出物26に負荷が生じているのを検知して突出物26が搬送台車16に接触しているのを検出した時点で、スライドブロック25を停止する。
スライドブロック25が停止されたとき、突出物26は、カゴ部材41の、固定部材42の下側にある部位に接触した状態になっている。制御装置21は、突出物26の現在位置の上部に固定部材42があるのを検知する。
【0034】
制御装置21は、スライドブロック25を停止した後、昇降台23を上昇させ、荷重センサ38の計測値が、予め設定された値以上になっているのを検知した時点で、昇降台23の上昇を停止する。昇降台23の上昇が停止されたとき、突出物26は、固定部材42の掛止部に係合された状態になり、搬送台車16を突出物26に固定する。
搬送台車16が駆動車15に連結されたとき、駆動車15は、昇降台23によってカゴ部材41を押し上げた状態となり、車体18には、図3(B)に示すように、搬送台車16からMの荷重が与えられる。駆動車15は、昇降台23の後部側でカゴ部材41を押し上げているため、この荷重Mの駆動車輪11、12への配分量は、従動車輪19、20に比べて大きくなる。このとき、駆動車輪11、12が受ける全体の荷重は、従動車輪19、20が受ける全体の荷重より大きくなり、駆動車輪11、12は空転が防止された状態になる。
【0035】
X’をPより大きい値として、信号処理器30の算出(作成)したグラフが、図4(B)に示すように、光電センサ28が距離X’の移動をする間傾斜し、かつ、光電センサ28がY−α以上Y+α以下の計測値を距離P以上の移動をする間、維持していなかったとき、信号処理器30は、光電センサ28が自在車輪46の真横を通過したと判定する。
これは、自在車輪45、46は、平面視して固定車輪43、44に対する向き(姿勢)が変化するため、固定車輪43、44の向きに沿って移動した光電センサ28、29の移動方向に対して傾斜している物体は、自在車輪45、46であると判断できるためである。
【0036】
信号処理器30が自在車輪45、46の存在を検知したとき、車体18の後部は、搬送台車16の固定車輪43、44の間ではなく、自在車輪45、46の間を通過したことになる。従って、車体18の後部は、もぐりこむべきカゴ部材41の位置の反対側からカゴ部材41の下側にもぐりこんだことになる。
制御装置21は、信号処理器30が自在車輪45、46の存在を検知したとき、車体18の後部が、搬送台車16の固定部材42に近接する位置まで駆動車15を移動させ、搬送台車16の旋回中心に車体18の旋回中心Cを合わせるための動作を再度行う。これによって、仮に、制御装置21がカメラ27等の出力から、車体18をもぐりこませるべき搬送台車16の位置を誤認した場合も、誤認したことを検知することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、駆動車の駆動車輪は、車体に対して自在に方向変化する車輪であってもよく、この場合、従動車輪が、車体に対して軸心方向が固定された固定車輪となる。
距離センサは光電センサに限定されず、磁気や、静電容量等を計測して物体との距離を計測するセンサでもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:搬送車両システム、11、12:駆動車輪、13、14:駆動源、15:駆動車、16:搬送台車、18:車体、19、20:従動車輪、21:制御装置、22:昇降手段、23:昇降台、24:ガイドレール、25:スライドブロック、26:突出物、27:カメラ、28、29:光電センサ、30:信号処理器、31:旋回中心検知手段、36、37:負荷検出センサ、38:荷重センサ、39:負荷検出センサ、40:連結手段、41:カゴ部材、42:固定部材、43、44:固定車輪、45、46:自在車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固定車輪、及び前記第1の固定車輪又はそれ以外の車輪を駆動する駆動源を備え、その場旋回可能な駆動車と、
前記駆動車に備えられ、第2の固定車輪を備えてその場旋回可能で前記駆動車に連結可能な搬送台車の旋回中心を検知する旋回中心検知手段と、
前記駆動車に設けられ、前記旋回中心検知手段の出力から、前記搬送台車の旋回中心が、前記駆動車の旋回中心に一致したことを検知して、前記搬送台車と前記駆動車を固定する連結手段とを有することを特徴とする搬送車両システム。
【請求項2】
請求項1記載の搬送車両システムにおいて、従動車輪とは別に設けられる前記第1の固定車輪は駆動車輪からなって、前記搬送台車と前記駆動車が連結した状態で、前記駆動車輪の受ける荷重は前記従動車輪の受ける荷重より大きくなっていることを特徴とする搬送車両システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の搬送車両システムにおいて、前記旋回中心検知手段は、前記第2の固定車輪までの距離を計測する距離センサを備えていることを特徴とする搬送車両システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の搬送車両システムにおいて、前記連結手段は前記搬送台車に設けられた掛止部を有する固定部材に係合する突出物と、該突出物を上下する昇降手段とを有することを特徴とする搬送車両システム。
【請求項5】
請求項4記載の搬送車両システムにおいて、前記連結手段は、前記突出物に生じる負荷により、該突出物が前記固定部材を含む前記搬送台車に接触しているのを検出して、該固定部材の位置を検知することを特徴とする搬送車両システム。
【請求項6】
第1の固定車輪、及び前記第1の固定車輪又はそれ以外の車輪を駆動する駆動源を備え、その場旋回可能な駆動車と、
第2の固定車輪を備えてその場旋回可能な搬送台車と、
前記駆動車に備えられ、前記搬送台車の旋回中心を検知する旋回中心検知手段と、
前記駆動車又は前記搬送台車に設けられ、前記旋回中心検知手段の出力から、前記搬送台車の旋回中心が、前記駆動車の旋回中心に一致したことを検知して、前記搬送台車と前記駆動車を固定する連結手段とを有することを特徴とする搬送車両システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−25306(P2012−25306A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167419(P2010−167419)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】