説明

携帯可能電子装置

【課題】指定された順序で初期応答コマンドレスポンス通信を行うことのできる携帯可能電子装置を提供する。
【解決手段】スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置2であって、外部機器1から初期応答要求コマンドを受信する受信部107と、受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)を認識する認識部101と、乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部109と、携帯可能電子装置に対して設定されるメイン又はサブの情報を記憶する記憶部104と、携帯可能電子装置に対してメインと設定されているときは、ロジック部が生成する整数nを0として1回目の初期応答コマンドに応答させる制御部101とを備えた携帯可能電子装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コマンドを送受信することにより種々の処理を実現する携帯可能電子装置に関し、特に指定された順序で初期応答コマンドレスポンス通信を行うことのできる携帯可能電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)またはフラッシュROMなどの不揮発性メモリと、種々の演算を実行するCPUとを有している。
【0003】
ICカードは、携帯性に優れ、且つ、外部装置との通信及び複雑な演算処理を行う事ができる。また、偽造が難しい為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納してセキュリティシステム、電子商取引などに用いられることが想定される。
【0004】
近年では、非接触通信によりデータの送受信を行うことができるICカードが一般的に普及している。上記したような非接触ICカードは、ICチップとアンテナとを備えている。この非接触ICカードは、ICカードを処理する端末装置のリーダライタから発せられる磁界を受けて、カード内のアンテナを電磁誘導により起電させることにより動作する。
【0005】
ところで、通信可能範囲内に複数枚のICカードが存在する場合、初期応答において端末装置がこれらの複数のICカードを正しく識別できない状態「コリジョン」が発生し得る。このコリジョンを防止して、複数枚のICカードを正しく識別するために、端末装置は、スロットマーカ方式によりアンチコリジョンの処理を行うことができる。
【0006】
スロットマーカ方式では、端末装置は、スロットの総数Nを含めた初期応答コマンドを複数の非接触ICカードに送信する。それぞれの非接触ICカードは、0から(N−1)までのN個の整数のうちn(整数)をロジック回路で生成する。生成したn=0のときは、非接触ICカードは、直ちに初期応答レスポンスを返信する。生成したnが0以外のときは、非接触ICカードは、直ちに初期応答レスポンスを返信せずに、その後、端末装置から、非接触ICカードが生成したnと同じスロットを指定したスロットマーカコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ISO/IEC(International Organization For Standardization/International Electro technical Commission)14443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、非接触ICカードでは、処理する順序が定められる場合がある。例えば、ある金融機関が発行した非接触ICカードを使用して決済する場合、最初にメインとなる非接触ICカードで所定額の決済を行い、次にサブとなる非接触ICカードで残額の決済を行うことが考えられる。
【0009】
しかしながら、ISO/IEC 14443 Type Bに準拠したスロットマーカ方式では、それぞれの非接触ICカードで独立にスロットnを生成するため、常にメインとなる非接触ICカードがサブとなる非接触ICカードよりも早く初期応答コマンドレスポンス通信を行うことを保証できなかった。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、指定された順序で初期応答コマンドレスポンス通信を行うことのできる携帯可能電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)を認識する認識部と、乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、前記携帯可能電子装置に対して設定されるメイン又はサブの情報を記憶する記憶部と、前記携帯可能電子装置に対してメインと設定されているときは、前記ロジック部が生成する整数nを0として1回目の初期応答コマンドに応答させる制御部とを備えた携帯可能電子装置である。
【0012】
また本発明は、スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)を認識する認識部と、乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、前記携帯可能電子装置に対して設定されるメイン又はサブの情報を記憶する記憶部と、前記帯可能電子機器に対してサブと設定されているときは、前記ロジック部が生成する整数nを1乃至(N−1)のいずれかの値に制御して2回目以降の初期応答コマンドに応答させる制御部とを備えた携帯可能電子装置である。
【0013】
また本発明は、スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)と、少なくとも一つの優先順位基準値とを認識する認識部と、乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、前記携帯可能電子装置に設定される優先順位の情報を記憶する記憶部と、前記携帯可能電子装置に設定される優先順位が一番高い優先順位基準値以上であるときは前記ロジック部が生成する整数nを0として1回目の初期応答コマンドに応答させる制御部とを備えた携帯可能電子装置である。
【0014】
また本発明は、スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)と、複数の優先順位基準値とを認識する認識部と、乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、前記携帯可能電子装置に設定される優先順位の情報を記憶する記憶部と、前記携帯可能電子装置に設定される優先順位が一番高い優先順位基準値S以上であるときは、NとSとから求めた整数をmとして前記ロジック部が生成する整数nが0乃至mとなるように制御して、前記ロジック部が生成する整数nが0のときは1回目の初期応答コマンドに応答させ、前記ロジック部が生成する整数nが0以外のときは2回目以降の初期応答コマンドに応答させる制御部とを備えた携帯可能電子装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、指定された順序で初期応答コマンドレスポンス通信を行うことのできる携帯可能電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る携帯可能電子装置を用いたICカード処理システムの構成例について説明するための図。
【図2】図1に示す端末装置の構成例について説明するための図。
【図3】図1に示す非接触ICカードの構成例について説明するための図。
【図4】優先順位がメインと設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャート。
【図5】優先順位がサブと設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャート。
【図6】5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャート。
【図7】5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するバリエーションの動作を示すフローチャート。
【図8】5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信する他の動作を示すフローチャート。
【図9】5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの他のバリエーションの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る携帯可能電子装置について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯可能電子装置を用いたICカード処理システム10の構成例について説明するための図である。
図1に示すようにICカード処理システム10は、携帯可能電子装置の処理装置(端末装置)1と携帯可能電子装置(非接触ICカード)2とを備えている。端末装置1と非接触ICカード2とは、無線通信により互いに種々のデータの送受信を行う。
【0019】
図2は、図1に示す端末装置の構成例について説明するための図である。図2に示すように、端末装置1は、制御部11、ディスプレイ12、キーボード13、カードリーダライタ14、及び記憶部15を有している。
【0020】
制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどを備える。制御部11は、端末装置1全体の動作を制御する。
ディスプレイ12は、制御部11の制御により種々の情報を表示する。キーボード13は、端末装置1の操作者による操作を操作信号として受け取る。
【0021】
カードリーダライタ14は、非接触ICカード2と通信を行うためのインターフェース装置である。カードリーダライタ14は、非接触ICカード2に対して、電源供給、クロック供給、リセット制御、及びデータの送受信を行う。即ち、カードリーダライタ14は、送受信部として機能する。記憶部15は、制御部11が実行する動作のプログラム、及びデータなどを記憶する。
【0022】
制御部11は、カードリーダライタ14を介して非接触ICカード2に対して種々のコマンドを入力する。非接触ICカード2は、例えば、カードリーダライタ14からデータの書き込みコマンドを受信した場合、受信したデータを内部の不揮発性メモリに書き込む処理を行う。
【0023】
また、制御部11は、非接触ICカード2に読み取りコマンドを送信することにより、非接触ICカード2からデータを読み出す。制御部11は、非接触ICカード2から受信したデータに基づいて種々の処理を行う。
【0024】
上記のカードリーダライタ14は、無線通信により非接触ICカード2とデータの送受信を行う。この為に、カードリーダライタ14は、図示しない信号処理部、送受信回路、及びアンテナなどを備えている。
【0025】
信号処理部は、非接触ICカード2との間で送受信するデータの符号化、復号化、変調、及び復調を行なう。送受信回路は、信号処理部により変調されたデータ、及び、アンテナにより受信したデータを増幅する。
【0026】
アンテナは、送信するデータに応じて磁界を発生させることにより、非接触ICカード2に対してデータを送信する。また、アンテナは、電磁誘導により発生した誘導電流に基づいて非接触ICカード2から送信されるデータを認識する。
【0027】
非接触ICカード2が、アンテナによる磁界の変化を認識することができる範囲が通信可能範囲となる。カードリーダライタ14は、この通信可能範囲内に存在する非接触ICカード2を検知し、処理を行う。
【0028】
制御部11は、カードリーダライタ14により非接触ICカード2に初期応答コマンドを送信することにより、非接触ICカード2との通信に関する設定を行う。非接触ICカード2の検知を行なう為に、カードリーダライタ14は、初期応答コマンドを通信可能範囲に送信する。
【0029】
図3は、図1に示す非接触ICカード2の構成例について説明するための図である。
非接触ICカード2は、カード状の本体21と、本体21内に内蔵されたICモジュール22とを備えている。そしてICモジュール22には、CPU101、ROM102、RAM103、不揮発性メモリ104、共振部105、送信部106、受信部107、電源及びクロック抽出部108及びロジック部109が設けられている。
【0030】
CPU101は、非接触ICカード2全体の制御を司る制御部として機能する。CPU101は、ROM102あるいは不揮発性メモリ104に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、カードリーダライタ14から受信したコマンドに応じて種々の処理を行い、処理結果としてのレスポンスなどのデータの生成を行なう。
【0031】
ROM102は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM102は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態で非接触ICカード2内に組み込まれる。即ち、ROM102に記憶される制御プログラム及び制御データは、予め非接触ICカード2の仕様に応じて組み込まれる。
【0032】
RAM103は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM103は、CPU101の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM103は、受信部107を介して端末装置1から受信したデータを一時的に格納する。また、RAM103は、CPU101が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0033】
不揮発性メモリ104は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリにより構成される。不揮発性メモリ104は、非接触ICカード2の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0034】
たとえば、不揮発性メモリ104では、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU101は、不揮発性メモリ104、または、ROM102に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0035】
送信部106、受信部107は、端末装置1のカードリーダライタ14と非接触通信を行うためのインターフェースである。送信部106は、符号化、変調などを行いデータを送信する。受信部107は、データ受信後、復調及び復号化を行う。
共振部105は、例えば、端末装置1のカードリーダライタ14と非接触通信を行うアンテナ及び同調コンデンサを備える。
【0036】
電源及びクロック抽出部108は、カードリーダライタ14から電波を受信し、起電力及び動作クロックを発生させる。電源及びクロック抽出部108は、発生させた電力及び動作クロックを非接触ICカード2の各部に電力を供給する。非接触ICカード2の各部は、電力の供給を受けた場合、動作可能な状態になる。
【0037】
ロジック部109は、演算、乱数生成など各種機能を実現する。例えば、カードリーダライタ14から初期応答コマンドを受信した場合、ロジック部109は乱数を生成する。
【0038】
次に、非接触ICカード2を処理する順序(以下、優先順位という)を設定する形態について説明する。
ICカード発行会社は、ユーザに非接触ICカード2を発行する際に、優先順位を書き込む。この優先順位の書き込みは非接触ICカード2発行時のみに限らず、追加して非接触ICカード2を発行する際にまとめて実施しても良い。また、一度書き込んだ優先順位は書き換えを不可としても良く、任意のタイミングで書き換え可能としても良い。更に、優先順位の書き替えは、ICカード発行会社のみが実行可能ではなく、ユーザが所有する端末装置を用いて行えるものであっても良い。上述のいずれの形態を採用するかについては、非接触ICカード2に実装されるアプリケーションの種類、あるいは非接触ICカード2が使用される状態、環境、地域等によって異なる。
【0039】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る携帯可能電子装置の動作について説明する。第1の実施の形態では、優先順位がメインとサブとの2種類のケースを扱う。
図4は、優先順位がメインと設定された非接触ICカード2が、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャートである。
【0040】
ステップ301において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、初めての初期応答コマンドを受信する。
カードリーダライタ14から送信される初期応答コマンドは、通信方式、及び速度などを決定するための複数のパラメータを有する。このパラメータの中に、スロットの総数を示す情報が含まれる。
【0041】
ステップ302において、非接触ICカード2は、初期応答コマンド内に含まれるスロットの総数Nの情報を得る。ステップ303において、非接触ICカード2は、自身の優先順位がメインに設定されている場合は、ロジック部109によって設定されるべきスロットnを強制的にn=0に設定する。その結果、ステップ304において、非接触ICカード2は、直ちに初期応答レスポンスを返信する。
【0042】
図5は、優先順位がサブと設定された非接触ICカード2が、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャートである。
【0043】
ステップ401において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、初めての初期応答コマンドを受信する。
ステップ402において、非接触ICカード2は、初期応答コマンド内に含まれるスロットの総数Nの情報を得る。ステップ403において、非接触ICカード2は、自身の優先順位がサブに設定されている場合は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは0から(N−1)のN個の整数の内、0を除いた整数である。0は既にメインに設定されたカードが使用しているためである。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、1から(N−1)までの整数の内1つの整数nを生成する。
【0044】
ステップ404において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0045】
以上説明したように第1の実施の形態による非接触ICカードには、事前に、N=1より大きい初期応答コマンドに対して、優先的に返信するメインカードあるいは、すぐには返信しないサブカードを指定する設定がなされ、これによって初期応答コマンドを受信した際の動作が制御される。
【0046】
なお、上述のように非接触ICカード運用前の発行段階でメインカードとサブカードの設定がされた後、その設定を変更できないようにする場合と、運用した後であっても特定のコマンドにより、設定を変更できるようにする場合が考えられる。
【0047】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、優先順位をメインとサブの2段階としたケースについて説明した。第2の実施の形態では、3段階、4段階、5段階、・・・と多くの優先順位を設定するケースを取り扱う。第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0048】
図6は、5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの動作を示すフローチャートである。
非接触ICカード2は、事前に初期応答レスポンスの優先順位pの設定がなされている。ここで、優先順位が高いとはpの値が大きいことを意味する。即ち、優先順位4は優先順位1よりも優先度が高い。なお、本発明では、優先順位が高いとはpの値が大きいことに限定されない。
【0049】
ステップ501において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、優先順位S(0≦S≦4)の情報がある初期応答コマンドを受信する。この優先順位Sによって、非接触ICカード2は、優先順位の高いブロックと優先順位の低いブロックとに分類される。
【0050】
ステップ502において、非接触ICカード2は、初期応答コマンドに含まれるスロットの総数N、及び優先順位Sの情報を得る。そして、ステップ503において、非接触ICカード2は、事前に設定された優先順位pと初期応答コマンドに含まれる優先順位Sとを比較する。
【0051】
ステップ503でYesの場合、即ち、優先順位p≧Sの場合、ステップ504において、非接触ICカード2は、ロジック部109によって設定されるべきスロットnを強制的にn=0に設定する。その結果、ステップ505において、非接触ICカード2は、直ちに初期応答レスポンスを返信する。
【0052】
ステップ503でNoの場合、即ち、優先順位p<Sの場合、ステップ506において非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは0から(N−1)のN個の整数の内、0を除いた整数である。0は優先順位の高いカードが使用するためである。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、1から(N−1)までの整数の内1つの整数nを生成する。
【0053】
ステップ507において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0054】
[第2の実施の形態のバリエーション]
第2の実施の形態では、初期応答コマンドに含まれる優先順位Sによって、優先順位の高い1枚の非接触ICカード2と優先順位の低い1枚の非接触ICカード2とに分類された場合の処理を説明した。第2の実施の形態のバリエーションでは、優先順位の高い複数枚の非接触ICカード2と優先順位の低い複数枚の非接触ICカード2とに分類された場合の処理を説明する。
【0055】
図7は、5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するバリエーションの動作を示すフローチャートである。
非接触ICカード2は、事前に初期応答レスポンスに対する優先順位pの設定がなされている。ここで、優先順位が高いとはpの値が大きいことを意味する。即ち、優先順位4は優先順位1よりも優先度が高い。
【0056】
ステップ601において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、優先順位S(0≦S≦4)の情報がある初期応答コマンドを受信する。この優先順位Sによって、非接触ICカード2は、優先順位の高いブロックと優先順位の低いブロックとに分類される。
【0057】
ステップ602において、非接触ICカード2は、初期応答コマンドに含まれるスロットの総数N、及び優先順位Sの情報を得る。そして、ステップ603において、非接触ICカード2は、事前に設定された優先順位pと初期応答コマンドに含まれる優先順位Sとを比較する。
【0058】
ステップ603でYesの場合、即ち、優先順位p≧Sの場合、ステップ604において、非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは0から(N−S−1)の整数である。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、0から(N−S−1)までの整数の内1つの整数nを生成する。
【0059】
ステップ605でYesの場合、即ちn=0の場合は、ステップ606において、非接触ICカード2は、直ちに初期応答レスポンスを返信する。ステップ605でNoの場合、即ちnが0でない場合は、ステップ607において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0060】
ステップ603でNoの場合、即ち、優先順位p<Sの場合、ステップ608において非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは(N−S)以上で(N−1)以下の整数である。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、(N−S)以上で(N−1)以下の整数の内1つの整数nを生成する。
【0061】
ステップ607において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0062】
[第3の実施の形態]
第2の実施の形態では、3段階、4段階、5段階、・・・と多くの優先順位を設定し、初期応答コマンドに含まれる優先順位が1つのケースを取り扱った。第3の実施の形態では、3段階、4段階、5段階、・・・と多くの優先順位を設定し、初期応答コマンドに複数の優先順位含まれるケースを取り扱う。第2の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0063】
図8は、5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信する他の動作を示すフローチャートである。
非接触ICカード2は、事前に初期応答レスポンスに対する優先順位pの設定がなされている。ここで、優先順位が高いとはpの値が大きいことを意味する。即ち、優先順位4は優先順位1よりも優先度が高い。
【0064】
ステップ701において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、優先順位S1、S2(0<S1<S2≦4)の情報がある初期応答コマンドを受信する。この優先順位S1,S2によって、非接触ICカード2は、優先順位の高いブロック、優先順位の中位のブロック、優先順位の低いブロックの3つのブロックに分類される。
【0065】
ステップ702において、非接触ICカード2は、初期応答コマンドに含まれるスロットの総数N、及び優先順位S1、S2の情報を得る。そして、ステップ703において、非接触ICカード2は、事前に設定された優先順位pと初期応答コマンドに含まれる優先順位S1、S2とを比較する。
【0066】
ステップ703の比較で優先順位p≧S2の場合、即ち、優先順位が高い場合、ステップ704において、非接触ICカード2は、ロジック部109によって設定されるべきスロットnを強制的にn=0に設定する。その結果、ステップ705において、非接触ICカード2は、直ちに初期応答レスポンスを返信する。
【0067】
ステップ703の比較で優先順位S1≦p<S2の場合、即ち、優先順位が中位の場合、ステップ706において非接触ICカード2は、ロジック部109によって設定されるべきスロットnを強制的にn=1に設定する。
【0068】
ステップ707において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したn=1と同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0069】
ステップ703の比較で優先順位p<S1の場合、即ち、優先順位が低い場合、ステップ708において非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは0から(N−1)のN個の整数の内、0及び1を除いた整数である。0及び1は優先順位の高い非接触ICカード2が使用するためである。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、2から(N−1)までの整数の内1つの整数nを生成する。
【0070】
ステップ709において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0071】
[第3の実施の形態のバリエーション]
第3の実施の形態では、初期応答コマンドに含まれる優先順位S1、S2によって、優先順位の高い1枚の非接触ICカード2と優先順位の中位の1枚の非接触ICカード2と優先順位の低い1枚の非接触ICカード2とに分類された場合の処理を説明した。第3の実施の形態のバリエーションでは、複数枚の非接触ICカード2がそれぞれの区分に分類される場合の処理を説明する。
【0072】
図9は、5段階の優先順位が設定された非接触ICカードが、初期応答コマンドを受信してから初期応答レスポンスを返信するまでの他のバリエーションの動作を示すフローチャートである。
非接触ICカード2は、事前に初期応答レスポンスに対する優先順位pの設定がなされている。ここで、優先順位が高いとはpの値が大きいことを意味する。即ち、優先順位4は優先順位1よりも優先度が高い。
【0073】
ステップ801において、非接触ICカード2は、端末装置1から搬送波を受けリセット解除されて、動作を開始する。そして、優先順位S1、S2(0<S1<S2≦4)の情報がある初期応答コマンドを受信する。この優先順位S1,S2によって、非接触ICカード2は、優先順位の高いブロック、優先順位の中位のブロック、優先順位の低いブロックの3つのブロックに分類される。
【0074】
ステップ802において、非接触ICカード2は、初期応答コマンドに含まれるスロットの総数N、及び優先順位S1、S2の情報を得る。そして、ステップ803において、非接触ICカード2は、事前に設定された優先順位pと初期応答コマンドに含まれる優先順位S1、S2とを比較する。
【0075】
ステップ603で優先順位p≧S2の場合、ステップ804において、非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは0から(N−S2−1)の整数である。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、0から(N−S2−1)までの整数の内1つの整数nを生成する。但し、(N−S2−1)が負の場合、0を生成する。
【0076】
ステップ805でYesの場合、即ちn=0の場合は、ステップ806において、非接触ICカード2は、直ちに初期応答レスポンスを返信する。ステップ805でNoの場合、即ちnが0でない場合は、ステップ807において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0077】
ステップ808で優先順位S1≦p<S2の場合、ステップ808において非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは、(N−S2)≦n<(N−S1)を満たす整数である。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、(N−S2)≦n<(N−S1)の整数の内1つの整数nを生成する。但し、N−S2=0の場合は、1≦n<(N−S1)の整数の内、1つの整数nを生成する。
【0078】
ステップ807において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0079】
ステップ803で優先順位p<S1の場合、ステップ809において非接触ICカード2は、スロットnをロジック部109にて生成させる。ここで、nは(N−S1)以上の整数である。ロジック部109は乱数を発生し、発生する乱数に基づいて、(N−S1)以上の整数の内1つの整数nを生成する。
【0080】
ステップ807において、非接触ICカード2は、すぐには初期応答レスポンスを返信せず、その後、端末装置1から、非接触ICカード2が生成したnと同じSlot−MARKERコマンドを受信したときに、初期応答レスポンスを返信する。
【0081】
以上説明した各実施の形態によれば、初期応答コマンドに優先順位を少なくとも一つ設定し、それに対応して応答する順序を制御することが可能となるため、指定された順序で初期応答コマンドレスポンス通信を行うことができる。
【0082】
なお、上述の実施の形態では、非接触ICカード2に設定される優先順位を最大5段階としたが、これに限られず任意のn段階としても良い。
また、初期応答コマンドに含まれる優先順位を最大2つとしたが、これに限られず任意のm(<n)としても良い。
【0083】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0084】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…端末装置、2…携帯可能電子装置(ICカード)、11…制御部、12…ディスプレイ、13…キーボード、14…カードリーダライタ、15…記憶部、21…本体、22…ICモジュール、101…CPU、102…ROM、103…RAM、104…不揮発性メモリ、104…記憶部、105…共振部、106…送信部、107…受信部、108…電源及びクロック抽出部、109…ロジック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、
外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)を認識する認識部と、
乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、
前記携帯可能電子装置に対して設定されるメイン又はサブの情報を記憶する記憶部と、
前記携帯可能電子装置に対してメインと設定されているときは、前記ロジック部が生成する整数nを0として1回目の初期応答コマンドに応答させる制御部と
を備えたことを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項2】
スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、
外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)を認識する認識部と、
乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、
前記携帯可能電子装置に対して設定されるメイン又はサブの情報を記憶する記憶部と、
前記携帯可能電子装置に対してサブと設定されているときは、前記ロジック部が生成する整数nを1乃至(N−1)のいずれかの値に制御して2回目以降の初期応答コマンドに応答させる制御部と
を備えたことを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項3】
スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、
外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)と、少なくとも一つの優先順位基準値とを認識する認識部と、
乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、
前記携帯可能電子装置に設定される優先順位の情報を記憶する記憶部と、
前記携帯可能電子装置に設定される優先順位が一番高い優先順位基準値以上であるときは前記ロジック部が生成する整数nを0として1回目の初期応答コマンドに応答させる制御部と
を備えたことを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項4】
スロットマーカ方式により初期応答を行う携帯可能電子装置であって、
外部機器から初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
前記受信部により受信した初期応答要求コマンドに基づいて前記外部機器において設定されるスロット総数N(2以上の整数)と、複数の優先順位基準値とを認識する認識部と、
乱数に基づいて1つの整数nを生成するロジック部と、
前記携帯可能電子装置に設定される優先順位の情報を記憶する記憶部と、
前記携帯可能電子装置に設定される優先順位が一番高い優先順位基準値S以上であるときは、NとSとから求めた整数をmとして前記ロジック部が生成する整数nが0乃至mとなるように制御して、前記ロジック部が生成する整数nが0のときは1回目の初期応答コマンドに応答させ、前記ロジック部が生成する整数nが0以外のときは2回目以降の初期応答コマンドに応答させる制御部と
を備えたことを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項5】
前記記憶されたメインまたはサブの情報の変更を許可あるいは禁止する情報書換制御部を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
前記記憶された優先順位の情報を他の優先順位の情報に変更することを許可あるいは禁止する情報書換制御部を更に備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の携帯可能電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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