説明

携帯型情報端末装置及び表示デバイス

【課題】視認対象に関する情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能であり、かつ携帯性とユーザーインターフェイスとに優れた薄型軽量で低消費電力の携帯型情報端末装置及び表示デバイスを提供する。
【解決手段】視認対象を特定して信号を出力する視認対象特定手段4と、視認対象特定手段が出力する信号に基づいて視認対象に関するデータを所定の情報検索手段から取得して出力するデータ取得手段5と、データ取得手段が出力するデータに基づいて視認対象に関する情報を表示する視認デバイス1と、視認対象特定手段が出力する信号を処理してデータ取得手段に向け出力しかつデータ取得手段が出力するデータを処理して視認デバイスに向け出力する情報処理手段2と、視認対象特定手段及びデータ取得手段及び視認デバイス及び情報処理手段を少なくとも駆動するための電源手段3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認対象に係る情報を表示可能な携帯型情報端末装置、及びその携帯型情報端末装置に適した表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、博物館における展示物や店舗における陳列物等の視認対象に関する名称や特徴等の情報を視認者が取得するために、携帯型情報端末装置が好適に用いられている。
【0003】
この従来の携帯型情報端末装置は、バーコードやスタック型シンボル又はマトリックス型シンボル等の2次元シンボル等の情報伝達手段によって記述された情報を光学的に読み取る光学的情報取得手段や、磁気データによって記述された情報を磁気的に読み取る磁気的情報取得手段等を用いることにより、展示物や陳列物等の視認対象に関する様々な情報を取得し、その取得した情報を表示デバイスに表示することが可能に構成されている。従って、この携帯型情報端末装置を用いることにより、視認者は、自己の視認対象である展示物や陳列物等に関する様々な情報を、携帯型情報端末装置の表示デバイスを介して容易に取得することが可能となる。
【0004】
ところで、上述したバーコードや2次元シンボル、磁気データ等を用いる情報伝達手段は、伝達可能な情報量が比較的少ないことや、特にバーコードや2次元シンボルでは情報の書き換えが実質的に不可能である等の欠点を有している。又、これらの情報伝達手段では、バーコードリーダーの物理的な接触によるバーコードの汚染又は損傷や、磁石等の近接による磁気データの破損又は消失等により、展示物や陳列物等の視認対象に関する情報を読み取る際に読み取りエラーが発生する場合がある。そこで、近年では、上述したバーコードや2次元シンボル、磁気データ等を用いる情報伝達手段に代わる情報伝達手段として、電磁誘導又は電磁波(以下、単に電波という)を用いて情報を伝達する情報伝達手段が様々な分野において好適に用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
この電磁誘導又は電波を用いて情報を伝達する情報伝達手段では、展示物や陳列物等の視認対象における任意の位置に、その展示物や陳列物等の視認対象に関する様々な情報(例えば、視認対象の名称、特徴、価格等)を記憶しかつその情報を電波によって送出可能な小型のICチップ(無線タグ、RFタグ、又は、ICタグ)が設けられている。つまり、このICチップからは、展示物や陳列物等の視認対象に関する情報のデータが、電波によって送信されている。一方、視認者は、自己が所持する携帯型情報端末装置を、自己が視認する展示物や陳列物等の視認対象の近傍に配置する。すると、携帯型情報端末装置は、ICチップから送信される展示物や陳列物等の視認対象に関する情報のデータが含まれた電波を受信してこれを抽出し、これにより視認対象に関する情報を携帯型情報端末装置が備える所定の表示デバイスに表示する。これにより、視認者は、展示物や陳列物等の視認対象に関する様々な情報を知り得ることが可能となる。
【0006】
ここで、上述したICチップは、大容量のデータを記憶することが可能であると共に、そのデータを必要に応じて任意に書き換えることが可能である。又、このICチップによれば、非接触状態の下で視認対象に関する情報の伝達が行われるため、バーコードや磁気データ等の情報伝達手段を用いる従来の構成と比べて、視認対象に関する情報を読み取る際の読み取りエラーを防止することが可能となる。更に、このICチップは、カード型やシール状、コイン型等の任意の形状に形成することが可能であるため、利用形態に応じて様々な用途に用いることが可能である。そして、これらの理由により、電波を用いて視認対象に関する情報を伝達する情報伝達手段は、商品の管理や物品の識別等の様々な用途において利用することが可能であり、又、将来のユビキタス社会の実現のために重要な役割を果たす情報伝達手段として期待されている。
【非特許文献1】“自動認識とは−自動認識技術の種類−”、[online]、平成16年2月25日、社団法人 日本自動認識システム協会、[平成16年10月29日検索]、インターネット<URL: http://www.jaisa.or.jp/about/pdfs/20040225AIDC.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した電波を用いて視認対象に関する情報を伝達する情報伝達手段では、ICチップが送信する電波の送信出力は、通常、数マイクロワットから数ミリワット程度の微弱電力である。そのため、ICチップが送信する電波が届く範囲は、そのICチップから数センチメートル〜数メートル程度の限られた範囲内のみである。つまり、視認対象に関する情報を取得するためには、ICチップが送信する電波の届く範囲内となるように視認者が移動する必要がある。換言すれば、視認者は、ICチップが送信する電波の電界強度が強い強電界エリアにおいては視認対象に関する情報を容易にかつ正確に取得することが可能であるが、電界強度が弱い弱電界エリア又は不感エリア等では、その視認対象に関する情報を取得することは困難又は不能である。このように、従来のICチップを用いる情報伝達手段では、視認者から遠方にある視認対象に関する情報を取得することは不可能であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされてものであり、視認対象に関する情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能であり、かつ携帯性とユーザーインターフェイスとに優れた薄型軽量で低消費電力の携帯型情報端末装置及びその表示デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る携帯型情報端末装置は、視認対象を特定して信号を出力する視認対象特定手段と、前記視認対象特定手段が出力する前記信号に基づいて前記視認対象に関するデータを所定の情報検索手段から取得して出力するデータ取得手段と、前記データ取得手段が出力する前記データに基づいて前記視認対象に関する情報を表示する視認デバイスと、前記視認対象特定手段が出力する前記信号を処理して前記データ取得手段に向け出力しかつ前記データ取得手段が出力する前記データを処理して前記視認デバイスに向け出力する情報処理手段と、前記視認対象特定手段及び前記データ取得手段及び前記視認デバイス及び前記情報処理手段を少なくとも駆動するための電源手段とを具備し、前記視認デバイスが前記視認対象を視認可能な視認デバイスであり、前記視認デバイスを介した前記視認対象の視認時に前記視認対象に関する前記情報が前記視認デバイスに表示される構成が好ましい(請求項1)。かかる構成とすると、視認者が視認デバイスによって視認対象を視認する際に、その視認対象に関する情報が視認デバイスに表示されるので、視認対象に関する情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能になる。
【0010】
この場合、前記所定の情報検索手段が外部情報処理基地であり、前記データ取得手段が前記データを前記外部情報処理基地から無線通信によって取得する構成が好ましい(請求項2)。かかる構成とすると、データ取得手段がデータを外部情報処理基地から無線通信によって取得するので、任意の場所において視認対象に関する情報を容易に取得することが可能になる。
【0011】
又、上記の場合、前記視認デバイスが、該視認デバイスを通して前記視認対象を視認可能なシースルー型の視認デバイスである構成が好ましい(請求項3)。かかる構成とすると、視認デバイスがシースルー型の視認デバイスであるので、視認デバイスを通して視認対象を視認することが可能になる。
【0012】
又、上記の場合、前記視認対象特定手段が撮像手段である構成が好ましい(請求項4)。かかる構成とすると、従来から好適に用いられているデジタルカメラ等の撮像手段によって視認対象特定手段を構成することができるので、携帯型情報端末装置を比較的安価に構成することが可能になる。
【0013】
この場合、前記撮像手段により撮像した前記視認対象の画像が前記視認デバイスに表示される構成が好ましい(請求項5)。かかる構成とすると、視認対象の画像が視認デバイスに表示されるので、視認デバイスにより視認対象を視認することが可能になる。
【0014】
又、この場合、前記画像に関する画像信号が前記信号として前記撮像手段から出力される構成が好ましい(請求項6)。かかる構成とすると、視認対象に係る画像信号が撮像手段から出力されるので、視認対象に関する情報を正確に取得することが可能になる。
【0015】
又、上記の場合、前記視認対象特定手段が無線手段である構成が好ましい(請求項7)。かかる構成としても、従来から好適に用いられている受信機器等の無線手段によって視認対象特定手段を構成することができるので、携帯型情報端末装置を比較的安価に構成することが可能になる。
【0016】
この場合、前記視認対象が電磁波を送信する送信手段を備え、前記無線手段が指向性を有する空中線を備え、前記送信手段から送信される前記電磁波を、前記無線手段が前記空中線の指向性を利用して選択的に受信する構成が好ましい(請求項8)。かかる構成とすると、送信手段から送信される電磁波を、無線手段が空中線の指向性を利用して選択的に受信するので、視認対象を容易に選択することが可能になる。
【0017】
又、この場合、前記電磁波が前記視認対象を識別するための識別信号を含み、前記無線手段により前記電磁波から抽出された前記識別信号が前記信号として前記無線手段から出力される構成が好ましい(請求項9)。かかる構成とすると、視認対象に係る識別信号が無線手段から出力されるので、視認対象に関する情報を正確に取得することが可能になる。
【0018】
又、上記の場合、前記視認デバイスが高分子分散型液晶表示デバイスである構成が好ましい(請求項10)。かかる構成とすると、高分子分散型液晶表示デバイスはTN型液晶表示デバイス等で必要となる減光性を有する偏光板を必要とせず、従って光の透過率が高く視認対象を透視によって視認するのに適しているため、視認性に優れた携帯型情報端末装置を構成することが可能になる。
【0019】
又、上記の場合、前記視認デバイスが画像メモリ性を有する表示デバイスである構成が好ましい(請求項11)。かかる構成とすると、画像メモリ性を有する表示デバイスを用いることにより、電力を供給することなく、視認者にとって必要な情報を長時間に渡り表示し続けることが可能になる。又、視認デバイスを取り外すことが可能になるので、携帯性に優れた携帯型情報端末装置を提供することが可能になる。
【0020】
この場合、前記画像メモリ性を有する表示デバイスがコレステリック型液晶表示デバイスである構成が好ましい(請求項12)。かかる構成とすると、画像メモリ性を有する表示デバイスを、既存の表示デバイスを用いて容易に構成することが可能になる。
【0021】
又、この場合、前記画像メモリ性を有する表示デバイスが帯電粒子移動型表示デバイスである構成が好ましい(請求項13)。かかる構成としても、画像メモリ性を有する表示デバイスを、既存の表示デバイスを用いて容易に構成することが可能になる。
【0022】
上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスが画像表示のための複数の帯電粒子を有し、該複数の帯電粒子が光透過性を有する帯電粒子を少なくとも含んでいる構成が好ましい(請求項14)。かかる構成とすると、複数の帯電粒子が光透過性を有する帯電粒子を少なくとも含んでいるので、帯電粒子移動型表示デバイスを用いたシースルー型の表示デバイスを好適に構成することが可能になる。
【0023】
又、上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスがマトリクス状に配置された画素毎に前記複数の帯電粒子を移動させるための第1電極及び第2電極を有し、該第1電極及び第2電極が透明誘電体で構成されている構成が好ましい(請求項15)。かかる構成とすると、透明誘電体が良好な光透過性を有しているので、視認性に優れたシースルー型の表示デバイスを容易に構成することが可能になる。
【0024】
又、上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスが前記複数の帯電粒子を内包するための一対の透明基板を有し、該一対の透明基板における一方の透明基板上に前記第1電極及び第2電極が形成されている構成が好ましい(請求項16)。かかる構成とすると、第1電極及び第2電極を一方の透明基板上に形成するので、帯電粒子移動型表示デバイスの構成が複雑化することを防止することが可能になる。
【0025】
又、上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスが前記複数の帯電粒子を内包するための一対の透明基板を有し、該一対の透明基板の各々が樹脂性フィルムで構成されかつその厚みが0.1mm以上0.5mm以下である構成が好ましい(請求項17)。かかる構成とすると、厚みが0.1mm以上0.5mm以下である樹脂製フィルムは柔軟性に富んでいるので、フレキシブル性に優れた帯電粒子移動型表示デバイスを提供することが可能になる。
【0026】
又、上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスの駆動方式がパッシブマトリクス駆動方式である構成が好ましい(請求項18)。かかる構成とすると、パッシブマトリクス駆動によって画像を表示するので、単純な構成によって表示デバイスを構成することが可能になる。
【0027】
又、上記の場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスの駆動方式がアクティブマトリクス駆動方式である構成が好ましい(請求項19)。かかる構成とすると、アクティブマトリクス駆動によって画像を表示するので、走査電極が数百本以上も必要となるような比較的大規模な表示デバイスを用いて高品位な画像表示を行うことが可能になる。
【0028】
この場合、前記帯電粒子移動型表示デバイスがマトリクス状に配置された画素毎に前記第1電極及び第2電極への電圧の印加を制御するためのアクティブ素子を有し、該アクティブ素子の半導体層が有機物半導体で構成されている構成が好ましい(請求項20)。かかる構成とすると、半導体層を印刷等の手段によって形成される薄膜状の柔軟性を有する半導体層とすることができので、フレキシブル性が損なわれることのない表示デバイスを好適に構成することが可能になる。
【0029】
又、上記の場合、前記視認デバイスが前記情報処理手段と前記電源手段との少なくとも何れか一方と着脱自在に装着されている構成が好ましい(請求項21)。かかる構成とすると、視認デバイスを携帯型情報端末装置の本体から取り外して取り扱うことができるので、利便性に優れた携帯型情報端末装置を提供すことが可能になる。
【0030】
又、上記の場合、前記情報処理手段及び前記電源手段が前記視認デバイスの表示部よりも外側に位置するように構成されている構成が好ましい(請求項22)。かかる構成とすると、視認デバイスの表示部よりも外側に位置するように情報処理手段及び電源手段が配設されるので、シースルー型の携帯型情報端末装置を好適に構成することが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上に説明したような解決手段によって実施され、視認対象に関する情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能であり、かつ携帯性とユーザーインターフェイスとに優れた薄型軽量で低消費電力の携帯型情報端末装置を提供することが可能になるという効果が得られる。
【0032】
又、本発明に係る薄型軽量で低消費電力のシースルー型表示デバイスを用いることにより、携帯性とユーザーインターフェイスとに優れた薄型軽量で低消費電力の携帯型情報端末装置を具体的に提供することが可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末装置の構成を模式的に示す外観図であって、図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線における断面図である。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100は、例えば博物館における展示物や店舗における陳列物等の視認対象を特定して所定の信号を出力する視認対象特定部4と、この視認対象特定部4が出力する所定の信号に基づいて上述した視認対象の情報に係るデータ(例えば、視認対象の名称、特徴、値段等の情報を含む電子データ)を所定の外部情報処理基地から無線通信によって取得してそれを出力するアンテナ部5aを備える通信部5と、この通信部5が出力する上述したデータに基づいて視認対象に関する情報(例えば、視認対象の名称、特徴、値段等の情報)を表示する視認デバイス1と、上述した視認対象特定部4が出力する所定の信号を適宜処理して上述した通信部5に向けて出力しかつ通信部5が出力するデータを処理して視認デバイス1に向けて出力する情報処理部2と、視認対象特定部4及び通信部5及び視認デバイス1及び情報処理部2を少なくとも駆動するための電源部3とを備えている。
【0036】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る視認デバイス1は、正面視において横長状の矩形形状を有している。そして、本実施の形態では、この視認デバイス1として、視認デバイス1を通して視認対象を視認可能なシースルー型の帯電粒子移動型表示デバイスが用いられている。この帯電粒子移動型表示デバイスでは、帯電した複数の粒子が内設された電極に対して画像信号に応じた電圧が印加されるによって移動することにより、その画像信号に応じた画像が表示される。
【0037】
又、図1(a)及び図1(b)に示すように、視認デバイス1の背後には、情報処理部2及び電源部3が設けられている。ここで、情報処理部2は、通常、MPUやCPU等の演算素子(大規模集積回路)を少なくとも有している。又、電源部3は、通常、充放電可能なバッテリー(二次電池)等の電源供給手段を少なくとも有している。そして、これらの情報処理部2及び電源部3は、図1(a)及び図1(b)に示すように、略一定の幅の額縁状(中央に開口を有する矩形の板状)に形成されている。又、視認デバイス1と情報処理部2と電源部3とは、視認デバイス1の周縁部の裏面と情報処理部2の内縁部の表面とが互いに接するように、又、情報処理部2の周縁部の裏面と電源部3の内縁部の表面とが互いに接するようにして、相互に着脱自在に一体化されている。つまり、この携帯型情報端末装置100は、携帯型情報端末装置100の視認デバイス1を通して視認対象を視認することが可能に構成されている。又、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100は、視認デバイス1と情報処理部2と電源部3とが相互に分離可能に構成されている。
【0038】
又、図1(a)に示すように、情報処理部2における所定の位置には、視認対象特定部4と通信部5とが各々設けられている。通信部5は、この通信部5から延出するアンテナ部5aを有している。ここで、本実施の形態に係る視認対象特定部4としては、CCD素子等の撮像素子を有する、視認対象に係る画像情報を電子データとして出力可能なデジタルカメラ等が好適に用いられる。又、視認対象特定部4としては、視認対象に係る識別情報を電子データとして出力可能な手段であれば、如何なる視認対象特定手段を用いてもよい。例えば、上述したデジタルカメラ以外の視認対象特定部4としては、視認対象に設けられた小型のICチップから送信される電波を受信可能な無線受信機器等を用いることが可能である。このICチップはアンテナ部を有しており、このアンテナ部を介して電波を送信する。この場合、ICチップが有する記憶部には予め視認対象に関する識別情報が記憶されており、その識別情報を電子データとしてICチップが有する送信部からアンテナ部を介して送信する。つまり、視認対象特定部4としての無線受信機器は、そのICチップから送信される電波を受信して、視認対象に関する識別情報を取得する。これにより、視認対象特定部4としての無線受信機器は、上述したCCD等の撮像素子を用いる場合と同様に機能する。尚、この視認対象に関する情報データを、アンテナを介して電波を用いる無線通信によって記録又は読み出しする技術は、従来からRFIDと呼ばれている。
【0039】
図2は、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置から視認デバイス及び電源部を取り外した状態を模式的に示す外観図である。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100では、視認デバイス1と情報処理部2と電源部3とを必要に応じて相互に分離することが可能に構成されている。このように、特に視認デバイス1を情報処理部2から分離可能な構成とすることにより、視認デバイス1に表示された情報だけを見たい場合、その視認デバイス1のみを本体から分離して携帯することが可能となる。つまり、視認デバイス1を、電子ペーパーの如く取り扱うことが可能となる。これにより、携帯性に優れた特徴を有する携帯型情報端末装置100を提供することが可能になる。尚、視認デバイス1と情報処理部2と電源部3とを必要に応じて相互に分離可能とするための一体化手段としては、特に限定されることがなく、既存の一体化手段を用いることが可能である。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態に係る視認デバイスの内部構成を模式的に示すブロック図である。ここで、視認デバイス1の縦方向と横方向とを、便宜上、図3に示すように定義する。
【0042】
以下、本実施の形態に係る視認デバイスの構成と動作原理とについて、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図3に示すように、本実施の形態に係る視認デバイス1は、マトリクス状に配置された複数の画素14からなる表示部13を備えている。又、この視認デバイス1は、表示部13を画像表示のために駆動する第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12を備えている。更に、この視認デバイス1は、第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12を画像表示のために制御する制御部10を備えている。そして、各々の画素14は後述するように図3では図示しない第1電極及び第2電極を備えており、これらの第1電極及び第2電極は第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12に各々接続されている。又、第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12の各々は、制御部10に接続されている。
【0044】
視認デバイス1の表示部13に画像が表示される場合、制御部10には、図1に示した情報処理部2によって、画像を表示するための画像信号が入力される。そして、その入力される画像信号に応じた電圧が、制御部10から第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12に印加される。これにより、第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12から第1電極及び第2電極に対して、画像信号に応じた電圧が印加される。すると、第1電極及び第2電極に対して画像信号に応じた電圧が印加されることにより、画素14の各々においては後述する帯電粒子が移動して、これにより表示部13には画像信号に応じた画像が表示される。
【0045】
図4は、本発明の実施の形態に係る視認デバイスの文字表示を行っていない場合における画素の状態を模式的に示す状態図であって、図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)のIVb−IVb線における断面図である。又、図5は、本発明の実施の形態に係る表示デバイスの文字表示を行っている場合における画素の状態を模式的に示す状態図であって、図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線における断面図である。尚、図4及び図5では、視認デバイスにおける1つの画素の内部状態について模式的に示している。又、説明の便宜上、図中のX方向及びY方向を図3に示す表示部13の横方向及び縦方向とし、かつZ方向を図3に示す表示部13の紙面垂直方向とする。
【0046】
図4及び図5に示すように、本実施の形態に係る視認デバイス1の画素14では、上側基板24と下側基板25とが図4及び図5では特に図示しないスペーサを介して対向して配置されている。これらの上側基板24及び下側基板25は、その厚さが0.1mm乃至0.3mm程度の透明樹脂製のフィルムで構成されている。これにより、視認デバイス1を軽量かつフレキシブルな視認デバイスとすることが可能となる。又、この上側基板24と下側基板25とのギャップGは、本実施の形態では、100μm程度とされている。そして、この上側基板24と下側基板25とで形成されるギャップGが100μm程度の空気層26には、正又は負に帯電したここでは2種類の帯電粒子群が充填されている。ここで、その2種類の帯電粒子群は、正に帯電した無着色の透明粒子23と、負に帯電した黒色粒子22とで構成されている。本実施の形態では、黒色粒子22は、透明粒子23と共に、上側基板24と下側基板25との間の空気層26に分散されている。
【0047】
上述したように、本実施の形態では、前述したスペーサによって形成されている空気層26のギャップGは100μm程度である。そして、この空気層26の内部に、黒色粒子22と透明粒子23とが充填されている。ここで、この黒色粒子22の充填率は、空気層26の体積換算で黒色粒子22の重量比5%乃至20%程度とされている。一方、黒色粒子22と共に空気層26の内部に充填されている透明粒子23の充填率は、80%乃至95%程度とされている。そのため、視認デバイス1における表示面積の内、黒色粒子22の占める面積の割合は比較的少ない。従って、視認デバイス1の光線透過率は全体でも20%以下であるため、視認デバイス1を通して視認対象を観察するには支障が生じない。
【0048】
本実施の形態では、この黒色粒子22として、アクリル粒子、ブラックカーボン等から合成された球状の黒色粒子が用いられている。そして、その黒色粒子22の粒径は、1μm乃至10μm程度とされている。尚、黒色粒子22が凝集するのを防止するため、黒色粒子22の粒径は均一であることが好ましい。一方、透明粒子23としては、無色透明のアクリル樹脂からなる球状の透明粒子が用いられている。尚、透明粒子23の凝集を防止するため、黒色粒子22の場合と同様、透明粒子23の粒径も均一とされていることが好ましい。
【0049】
更に、透明粒子23及び黒色粒子22としては、その比重が小さく、かつ流動性に優れている粒子を用いることが好ましい。そこで、本実施の形態では、その直径が5μmである真球状のアクリル粒子の表層全面に、直径30nmの真球状のシリカ微粒子をメカノケミカル等の固定化方法を用いて固定化処理した。ここで、上述したシリカ微粒子には帯電処理を施したシリカ微粒子を使用し、これにより、透明粒子23及び黒色粒子22を全体として帯電性を有する粒子としている。尚、透明粒子23及び黒色粒子22の比重を更に小さくするためには、アクリル粒子として中空状又は多孔質の粒子を用いるのがより望ましい。このような構成とすることにより、透明粒子23及び黒色粒子22の流動性が更に向上するため、粒子が移動する際の摩擦抵抗が小さくなる。又、摩擦抵抗が小さくなるために粒子の移動に必要な運動エネルギーが小さくなるため、画像表示における応答性(応答速度)が高速になると共に、低電圧での駆動が可能となる。
【0050】
一方、図4及び図5に示すように、上側基板24の下面には、本体部20bと複数の櫛歯部20aとを有する櫛状の第1電極20と、この第1電極20の隣り合う櫛歯部20aに囲まれるようにして画素毎に設けられる矩形状の第2電極21とが、各々形成されている。ここで、第1電極20と第2電極21とは、相互に電気的に絶縁されている。又、これらの第1電極20と第2電極21は、ITO等の透明な電極材料で構成された透明導電体である。尚、第1電極20の櫛歯部20aは、表示部13の横方向(X方向)において本体部20bによって複数連結されている。そして、この本体部20bは、所定の配線によって第1電極ドライバ11に接続されている。又、第2電極21は、表示部13の縦方向(Y方向)において図示しない配線によって電気的に接続されており、更に、第2電極ドライバ12に接続されている。
【0051】
このように、本実施の形態に係る視認デバイス1は、第1電極20及び第2電極21がその表面に形成されている上側基板24と下側基板25とが所定のスペーサを介してエポキシ系の接着剤等によって気密封止するように一体化されており、その上側基板24と下側基板25との間の空気層26の内部に帯電粒子である透明粒子23及び黒色粒子22が充填されている。尚、上側基板24の第1電極20と対向する所定の位置には、ブラックマトリクスが形成されている。従って、第1電極20の電極材料としては、透明性を有さないITO以外の如何なる電極材料を用いてもよい。
【0052】
次に、以上のようにして構成される本実施の形態に係る視認デバイスの動作について、図3〜図5を参照しながら説明する。
【0053】
本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100の視認デバイス1では、図1に示した情報処理部2から画像信号が制御部10に入力される。そして、制御部10は、その入力される画像信号に応じた制御信号を、第1電極ドライバ11及び第2電極ドライバ12に対して各々出力する。その結果、第1電極ドライバ11が第1電極20に対して所定の電圧を印加すると共に、第2電極ドライバ12がその印加のタイミングに合わせて画像信号に応じた電圧を各画素14に形成されている第2電極21に印加する。
【0054】
視認デバイス1において、文字情報等を表示しない場合の動作は、次のようにして実現される。即ち、制御部10から出力された制御信号に応じて、第1電極ドライバ11は第1電極20に対して正の電圧を、又、第2電極ドライバ12は第2電極21に対して負の電圧を、各々印加する。ここで、前述したように、透明粒子23は正の電荷に、又、黒色粒子22は負の電荷に予め帯電させてある。そのため、この場合では、図4(a)及び図4(b)に示すように、透明粒子23は第2電極21の表面上に、又、黒色粒子22は第1電極20の表面上に、各々静電引力によって引き寄せられて付着する。ところで、上述したように、第2電極21は透明導電体で構成されており、又、透明粒子23は無色透明の粒子によって構成されている。又、第1電極20と対向する所定の位置には、その第1電極と同様の形状を有するブラックマトリクスが形成されている。そのため、視認デバイス1の表示部13は、文字情報等が一切表示されない状態となる。つまり、視認デバイス1は、その視認デバイス1を通して視認対象を視認することが可能な状態となる。これにより、視認者は、視認デバイス1を介して(通して)視認対象を観察することが可能となる。
【0055】
一方、視認デバイス1において、文字情報等が表示される場合の動作は、次のようにして実現される。即ち、制御部10から出力された制御信号に応じて、第1電極ドライバ11は第1電極20に対して負の電圧を、又、第2電極ドライバ12は第2電極21に対して正の電圧を、各々印加する。この時、透明粒子23は正の電荷に、又、黒色粒子22は負の電荷に予め帯電させてあるため、図5(a)及び図5(b)に示すように、透明粒子23は第1電極20の表面上に、又、黒色粒子22は第2電極21の表面上に、各々静電引力によって引き寄せられて付着する。この場合、上述したように、第2電極21は透明導電体で構成されているので、視認デバイス1の表示部13には、画像信号に応じた文字情報等の画像が表示される。又、この場合、文字情報等の画像は表示部13の一部においてのみ表示されるので、視認者は視認デバイス1を介した視認対象の観察を継続することが可能となる。つまり、視認デバイス1を通した視認対象の視認と、その視認対象に関する情報とを同時に視認することが可能となる。これにより、視認者は、視認対象に関する情報を容易に取得することが可能になる。
【0056】
以上のように、文字情報を表示する際には、第2電極21に正電圧が印加されて負帯電した黒色粒子22が第2電極上に移動することによって、必要な情報を表示することが可能となる。そして、一旦移動して第2電極21上に付着した黒色粒子22は、ファンデルワールス力や鏡像力等の付着力によって強固に第2電極21上に付着しているため、電源部3から電源を供給しない場合であっても、視認対象に関する文字情報等の表示を維持することが可能となる。即ち、本実施の形態に係る帯電粒子移動型表示デバイスを用いた視認デバイス1は画像メモリ性を有しているため、一旦文字情報等が表示された後は、電力を供給することなく、必要な情報を表示し続けることが可能である。これにより、携帯性に優れた低消費電力の携帯型情報端末装置を構成することが可能になる。又、視認デバイス1を携帯型情報端末装置100から取り外しても、表示された情報が消えずに保持される。
【0057】
次に、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置を用いる携帯型情報端末システムの構成とその動作とについて、図面を参照しながら説明する。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末システムの第1の構成を模式的に示すシステム図である。尚、図6では、視認対象特定部4として、CCD素子等の撮像素子を有するデジタルカメラを用いる形態について示している。
【0059】
図6に示すように、提示物や陳列物等の視認対象7に関する情報を取得する際、携帯型情報端末装置100の使用者は、シースルー型の視認デバイス1を通して視認対象7を目視により視認する。この時、デジタルカメラ等で構成される撮像部101は、携帯型情報端末装置100の使用者が視認する視認対象7と同じ画像をリアルタイムで取り込み、その取り込んだ画像に関する画像信号を情報処理部2に向けて出力する。すると、情報処理部2では、その撮像部101が出力する画像信号を必要に応じて処理した後、その処理した画像信号を通信部5に向けて出力する。そして、通信部5では、情報処理部2において必要に応じて処理された画像信号が入力されると、その画像信号によって所定の変調方式を用いて変調された伝送信号を電波として、通信部5が有するアンテナ部5aを介して外部情報処理基地8に送信する。尚、この場合、送信する電波の復調エラーを防止する観点から、変調方式はデジタル変調とすることが望ましい。
【0060】
一方、外部情報処理基地8では、その外部情報処理基地8が有するアンテナ部8eによって、携帯型情報端末装置100の通信部5から送信された電波が受信される。すると、アンテナ部8eでは、受信された電波が伝送信号(高周波電流)に変換される。そして、そのアンテナ部8aで変換された伝送信号は、外部情報処理基地8が有する通信部8aに入力され、その通信部8aにおいて復調されて画像信号が抽出される。そして、その抽出された視認対象7に関する画像信号が、外部情報処理基地8の解析部8bに伝達される。
【0061】
視認対象7に関する画像信号が外部情報処理基地8の解析部8bに伝達されると、その伝達された画像信号に基づく画像解析によって、視認対象7に関する名称、特徴、価格等の情報が外部情報処理基地8の解析部8bにおいて検索及び収集される。この時、解析部8bは、通信部8aから入力される画像信号と、記憶部8cが有するデータベース8dに記憶されている画像信号とを用いて、視認対象7に関する情報を検索及び収集する。
【0062】
解析部8bによって視認対象7に関する情報が検索及び収集されると、その情報はデータ信号に変換されて通信部8aに入力される。そして、この通信部8aにおいて、そのデータ信号により所定の変調方式を用いて変調された伝送信号が生成される。そして、この通信部8aは、この伝送信号を電波としてアンテナ部8eから送信する。
【0063】
外部情報処理基地8のアンテナ部8eから送信された電波は、携帯型情報端末装置100の通信部5が有するアンテナ部5aによって受信される。そして、このアンテナ部5aにおいて、その受信された電波が伝送信号(高周波電流)に変換される。又、この変換された伝送信号が、通信部5に入力される。すると、通信部5は、この変換された伝送信号を復調してデータ信号を抽出し、この抽出したデータ信号を情報処理部2に向けて出力する。
【0064】
通信部5から出力された視認対象に関する情報を有するデータ信号が情報処理部2に入力されると、その入力されたデータ信号を用いて情報処理部2は画像表示のための画像表示信号を生成し、この画像表示信号が視認デバイス1に入力される。この入力される画像表示信号に応じて、視認デバイス1は、携帯型情報端末装置100の使用者が視認する視認対象に関する情報を例えば文字情報として視認デバイス1の表示部13に表示する。この時、使用者は、視認デバイス1を通して視認対象を視認すると共に、その視認対象に関する情報も同時に認識することになる。即ち、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100を用いることにより、視認対象に関する情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能になる。尚、このような撮像手段を用いて視認対象を特定する構成は、視認対象が視認者から遠方にある場合において特に有効である。
【0065】
一方、図7は、本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末システムの第2の構成を模式的に示すシステム図である。この図7では、視認対象特定部4として、ICチップ等から送信される電波を受信及び復調可能な受信機器を用いる形態について示している。尚、図6で示した第1の構成と比較した場合、図7に示す構成では、視認対象にICチップ等が設けられており、このICチップが送信する電波を受信することによって視認対象を特定する点で異なっている。このため、以下の説明では、その相違点についてのみ説明し、その他の相違点を有さない点に関する説明は省略する。
【0066】
図7に示すように、携帯型情報端末装置100の使用者が視認する視認対象7には、小型のICチップ6が設けられている。このICチップ6は、通常、無線タグ、RFタグ、又は、ICタグと呼ばれている。このICチップ6は内部に記憶部を有しており、この記憶部には視認対象7を識別するための識別データが記憶されている。又、このICチップ6は、上述した識別データが変調された電波を生成してこれを送信する送信部を有している。更に、図7に示すように、このICチップ6は、アンテナ部6aを有している。そして、ICチップ6は、上述した識別データが変調された電波を送信部からアンテナ部6aを介して送信する。
【0067】
一方、図7に示すように、携帯型情報端末装置100は、ICチップ6から送信される電波を受信可能な受信部102を有している。又、この受信部102は、鋭い指向性を有するアンテナ部102aを備えている。そして、携帯型情報端末装置100の使用者が視認デバイス1を通して視認対象7を視認する際、アンテナ部102aはその鋭い指向性によってICチップ6から送信される電波のみを受信する。即ち、図7に示す構成では、アンテナ部102aが、ICチップ6からアンテナ部6aを介して送信される電波を受信して伝送信号(高周波電流)に変換し、これを受信部102に出力する。すると、受信部102では、そのアンテナ部102aから入力される伝送信号が復調され、ICチップ6の記憶部に記憶されている識別データが抽出される。そして、この識別データを情報処理部2に向けて出力する。携帯型情報端末装置100は、この情報処理部2に入力される識別データを基にして、視認対象7に関する情報を視認デバイス1の表示部13に表示する。かかる構成としても、視認対象特定部4としてデジタルカメラ等を用いる場合と同様、視認対象7の視認と、その視認対象7に関する名称や特徴等の情報の認識とを同時に行うことが可能になる。尚、このような受信機器を用いて視認対象を特定する構成は、視認対象が視認者から近隣にある場合において特に有効である。その他の点については、図6で示した視認対象特定部4がデジタルカメラ等の撮像手段によって構成されている場合と同様である。
【0068】
以上、本実施の形態に係る携帯型情報端末装置100によれば、使用者は、シースルー型の視認デバイス1を通して観察される視認対象7に関する情報を、視認対象7の視認と同時に、瞬時にかつ容易に得ることが可能となる。この際、複雑な作業は伴わず、視認デバイス1を通して視認対象7を視認するだけで、その視認対象7に関する情報を容易に取得することができる。又、使用者と視認対象7との距離に関係なく、視認対象7が使用者から遠方にある場合でも、又は、視認対象7が使用者から近隣にある場合でも、その視認対象7に関する情報を容易に所得することが可能である。又、視認デバイス1としてフレキシブル性を有する表示デバイスを用いるので、視認デバイス1を電子ペーパーの如く取り扱うことが可能になる。更に、視認デバイス1として画像メモリ性を有する表示デバイスを用いるので、低消費電力な携帯型情報端末装置100を構成することが可能になると共に、視認デバイス1を携帯型情報端末装置100から取り外すことが可能になる。
【0069】
尚、本実施の形態では、視認デバイス1として帯電粒子移動型の表示デバイスを用いているが、これに限定されず、シースルー型の視認デバイスを構成可能な表示デバイスであれば、如何なる表示デバイスを用いてもよい。例えば、視認デバイス1として、高分子分散型の液晶表示デバイスを用いることが可能である。この高分子分散型液晶表示デバイスは画像メモリ性を有していないが、減光性を有する偏向板を用いないため、光の透過率が優れている。そのため、シースルー型の視認デバイスとして好適である。又、視認デバイス1として、コレステリック型の液晶表示デバイスを用いることも可能である。このコレステリック型液晶表示デバイスは画像メモリ性を有しているため、帯電粒子移動型表示デバイスを用いる場合と同様の携帯型情報端末装置100を構成することが可能である。
【0070】
又、本実施の形態では、視認デバイス1としてシースルー型の表示デバイスを用いた形態について説明したが、視認デバイス1として反射型液晶表示デバイスを用い、視認対象特定部4としてのデジタルカメラ等を用いて撮像した視認対象7の画像を等身大に画像処理して視認デバイス1に映し出すことで、擬似的にシースルーと同様に見せる形態としてもよい。このような形態によれば、反射型液晶表示デバイスはバックライト等の光源を必要としないため、透過型の液晶表示デバイスを用いる場合と比べて、低消費電力かつ薄型軽量の携帯型情報端末装置100を構成することが可能になる。
【0071】
又、本実施の形態では、視認デバイス1の駆動方式として、パッシブマトリクス駆動を適用している。具体的には、本実施の形態では、帯電粒子移動型表示デバイスを用いてこれをパッシブマトリクス駆動している。ここで、この帯電粒子移動型表示デバイスは、帯電粒子が気相中を移動して表示を行う方式の表示デバイスであって、帯電粒子の移動に必要な閾値電圧が存在するため、パッシブマトリクス駆動による画像表示を行うことが可能である。一方、電気泳動型表示デバイスのように、液相中を粒子が移動する方式の表示デバイスの場合は、粒子の駆動に必要な閾値電圧が存在しないため、クロストークが発生し易い。そのため、この電気泳動型表示デバイスを用いる場合には、パッシブマトリクス駆動を適用することは困難である。
【0072】
又、走査電極が数百本以上も必要となるような比較的大規模な表示デバイスを用いて高品位な画像表示を行うためには、画素毎にアクティブ素子を設け、そのアクティブ素子をオン/オフ制御することによって画素毎に第1電極20及び第2電極21に対して電圧を印加して、これにより画像を表示する構成とすることが好ましい。即ち、視認デバイス1の駆動方式として、アクティブマトリクス駆動を適用することが好ましい。この場合、アクティブ素子としては、半導体層の材料として有機物半導体を用いる、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)を用いることが好ましい。このような構成とすることにより、有機TFTの半導体層が印刷等の手段によって形成される薄膜状の柔軟性を有する半導体層であるため、この有機TFTを樹脂製の基板(即ち、上側基板24及び下側基板25に相当)上に形成する構成とすれば、フレキシブル性が損なわれることのない視認デバイス1を好適に構成することが可能になる。つまり、視認デバイス1を電子ペーパーの如く構成することが可能になり、これにより視認デバイス1の携帯性や利便性を更に向上させることが可能になる。
【0073】
又、以上説明したシースルー型の帯電粒子移動型表示デバイスでは、モノクロ表示は容易に実現可能であるが、高画質のカラー表示の実現は困難である。そこで、高画質のカラー表示が必要である場合は、視認デバイス1として、無機EL型、或いは、有機EL型の表示デバイスを用いることが望ましい。しかし、何れのカラー表示用表示デバイスを用いる場合でも、そのカラー表示用表示デバイスは画像メモリ性を有していないため、長時間の画像表示には不向きである。そのため、カラー表示を必要とする場合には、画質は若干低下するが、光の三原色のカラーフィルターを備える帯電粒子移動型表示デバイスを用いる構成が現実的であると考えられる。
【0074】
又、本実施の形態では、携帯型情報端末装置100と外部情報処理基地8との間で無線通信が行われ、この無線通信により視認対象7に関する情報を取得する形態について説明したが、この無線通信を利用する形態に限定されることはない。例えば、携帯型情報端末装置100が視認対象7に関する情報を有するストレージメディア及びその駆動手段を備えており、このストレージメディアから視認対象7に関する情報を取得する形態としてもよい。この場合、ストレージメディアとしては、CD又はDVD等の記録メディアや、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリースティック、マイクロドライブ等のメモリーカード等が挙げられる。かかる構成とすれば、通信部5が不要になると共に、視認者が不感地帯や病院内等の無線通信が困難な場所にいる場合においても、視認対象7に関する情報を確実に取得することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る携帯型情報端末装置及び表示デバイスは、視認対象に関する物品情報を瞬時にかつ容易に取得することが可能であり、かつ携帯性とユーザーインターフェイスとに優れた薄型軽量で低消費電力の携帯型情報端末装置及び表示デバイスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末装置の構成を模式的に示す外観図であって、図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線における断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末装置から視認デバイス及び電源部を取り外した状態を模式的に示す外観図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表示デバイスの内部構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る表示デバイスの文字表示を行っていない場合における画素の状態を模式的に示す状態図であって、図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)のIVb−IVb線における断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る表示デバイスの文字表示を行っている場合における画素の状態を模式的に示す状態図であって、図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線における断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末システムの第1の構成を模式的に示すシステム図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る携帯型情報端末システムの第2の構成を模式的に示すシステム図である。
【符号の説明】
【0077】
1 視認デバイス
2 情報処理部
3 電源部
4 視認対象特定部
5 通信部
5a アンテナ部
6 ICチップ
6a アンテナ部
7 視認対象
8 外部情報処理基地
8a 通信部
8b 解析部
8c 記憶部
8d データベース
8e アンテナ部
10 制御部
11 第1電極ドライバ
12 第2電極ドライバ
13 表示部
14 画素
20 第1電極
20a 櫛歯部
20b 本体部
21 第2電極
22 黒色粒子
23 透明粒子
24 上側基板
25 下側基板
26 空気層
100 携帯型情報端末装置
101 撮像部
102 受信部
102a アンテナ部
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認対象を特定して信号を出力する視認対象特定手段と、
前記視認対象特定手段が出力する前記信号に基づいて前記視認対象に関するデータを所定の情報検索手段から取得して出力するデータ取得手段と、
前記データ取得手段が出力する前記データに基づいて前記視認対象に関する情報を表示する視認デバイスと、
前記視認対象特定手段が出力する前記信号を処理して前記データ取得手段に向け出力しかつ前記データ取得手段が出力する前記データを処理して前記視認デバイスに向け出力する情報処理手段と、
前記視認対象特定手段及び前記データ取得手段及び前記視認デバイス及び前記情報処理手段を少なくとも駆動するための電源手段とを具備し、
前記視認デバイスが前記視認対象を視認可能な視認デバイスであり、
前記視認デバイスを介した前記視認対象の視認時に前記視認対象に関する前記情報が前記視認デバイスに表示される、携帯型情報端末装置。
【請求項2】
前記所定の情報検索手段が外部情報処理基地であり、
前記データ取得手段が前記データを前記外部情報処理基地から無線通信によって取得する、請求項1記載の携帯型情報端末装置。
【請求項3】
前記視認デバイスが、該視認デバイスを通して前記視認対象を視認可能なシースルー型の視認デバイスである、請求項1記載の携帯型情報端末装置。
【請求項4】
前記視認対象特定手段が撮像手段である、請求項1記載の携帯型情報端末装置。
【請求項5】
前記撮像手段により撮像した前記視認対象の画像が前記視認デバイスに表示される、請求項4記載の携帯型情報端末装置。
【請求項6】
前記画像に関する画像信号が前記信号として前記撮像手段から出力される、請求項4記載の携帯型情報端末装置。
【請求項7】
前記視認対象特定手段が無線手段である、請求項1記載の携帯型情報端末装置。
【請求項8】
前記視認対象が電磁波を送信する送信手段を備え、
前記無線手段が指向性を有する空中線を備え、
前記送信手段から送信される前記電磁波を、前記無線手段が前記空中線の指向性を利用して選択的に受信する、請求項7記載の携帯型情報端末装置。
【請求項9】
前記電磁波が前記視認対象を識別するための識別信号を含み、
前記無線手段により前記電磁波から抽出された前記識別信号が前記信号として前記無線手段から出力される、請求項7記載の携帯型情報端末装置。
【請求項10】
前記視認デバイスが高分子分散型液晶表示デバイスである、請求項4又は7記載の携帯型情報端末装置。
【請求項11】
前記視認デバイスが画像メモリ性を有する表示デバイスである、請求項4又は7記載の携帯型情報端末装置。
【請求項12】
前記画像メモリ性を有する表示デバイスがコレステリック型液晶表示デバイスである、請求項11記載の携帯型情報端末装置。
【請求項13】
前記画像メモリ性を有する表示デバイスが帯電粒子移動型表示デバイスである、請求項11記載の携帯型情報端末装置。
【請求項14】
前記帯電粒子移動型表示デバイスが画像表示のための複数の帯電粒子を有し、該複数の帯電粒子が光透過性を有する帯電粒子を少なくとも含んでいる、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項15】
前記帯電粒子移動型表示デバイスがマトリクス状に配置された画素毎に前記複数の帯電粒子を移動させるための第1電極及び第2電極を有し、該第1電極及び第2電極が透明誘電体で構成されている、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項16】
前記帯電粒子移動型表示デバイスが前記複数の帯電粒子を内包するための一対の透明基板を有し、該一対の透明基板における一方の透明基板上に前記第1電極及び第2電極が形成されている、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項17】
前記帯電粒子移動型表示デバイスが前記複数の帯電粒子を内包するための一対の透明基板を有し、該一対の透明基板の各々が樹脂性フィルムで構成されかつその厚みが0.1mm以上0.5mm以下である、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項18】
前記帯電粒子移動型表示デバイスの駆動方式がパッシブマトリクス駆動方式である、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項19】
前記帯電粒子移動型表示デバイスの駆動方式がアクティブマトリクス駆動方式である、請求項13記載の携帯型情報端末装置。
【請求項20】
前記帯電粒子移動型表示デバイスがマトリクス状に配置された画素毎に前記第1電極及び第2電極への電圧の印加を制御するためのアクティブ素子を有し、該アクティブ素子の半導体層が有機物半導体で構成されている、請求項19記載の携帯型情報端末装置。
【請求項21】
前記視認デバイスが前記情報処理手段と前記電源手段との少なくとも何れか一方と着脱自在に装着されている、請求項1記載の携帯型情報端末装置。
【請求項22】
前記情報処理手段及び前記電源手段が前記視認デバイスの表示部よりも外側に位置するように構成されている、請求項1記載の携帯型情報端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−127404(P2006−127404A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318204(P2004−318204)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】