説明

携帯用マット

【課題】クッション性と携帯性とを兼ねているだけでなく、製造が容易である携帯用マットの構成を提供すること。
【解決手段】縦方向及び横方向の両側が接続されている2枚のプラスチックシートにおいて、狭幅の横方向、又はその斜方向に複数本のシール設定用ライン2を選択し、当該シール設定用ライン2の横方向端部、中途部位の何れか又は双方に空気通過用のシール空隙部位32を隣接し合う各シール空隙部位32が横方向を基準として少なくとも部分的に共通する領域が存在するような状態にて設け、その余のシール設定用ライン2において、2枚のプラスチックシートをシールし、かつシート1に設定した空気注入口4から空気を注入し、かつシール部31間の領域に空気を充満した場合に、寝た状態の人体に対し、クッション性を発揮できるようなパイプ状態を形成し得ることに基づき、前記課題を達成することができる携帯用マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯性とクッション性とを兼用しているマットの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害時又は野外旅行に際し、マットを携帯したうえで、当該マットに就寝を行わねばならない場合が存在する。
【0003】
このようなマットにおいては、クッション性と携帯性との双方を具備していることを不可欠としている。
【0004】
特許文献1においては、身体をその上に乗せて、かつ移動させる防災用具及び救命用具の分野では、内部に海綿等の弾力性を有し、かつ伸縮自在の素材を内包させ、使用時に該素材を膨張させると共に、用具中に空気を吸入させることによってクッション性を発揮させ、不使用時においては素材を圧縮させて吸入された空気を排出し、容積を収縮させることによるマットの構成が採用されている。
【0005】
しかしながら、前記構成のマットの場合には、海綿等の弾力性を有する素材を採用していることから、たとえ携帯において当該弾力性の素材を圧縮したとしても、一定の重量及び容積を占めることになり、決して携帯において便利という訳ではなく、しかも、そのような圧縮作業は必ずしも容易に可能という訳ではない。
【0006】
他方、特許文献2においては、身体の前側を覆い、かつ開閉自在である上側部分と、身体の後側を覆う下側部分とからなるシラフにおいて、下側部分に複数本の空気を密閉性を有し、かつ変形自在な素材によるパイプを隣接し合うパイプが、相互に連通した状態にて設け、複数本のパイプの内の何れかのパイプにおいて、空気の吸入及び排出口を接続したことに基づくクッション性シラフの構成が採用されている。
【0007】
前記構成のシラフは、携帯用マットの構成とも共通しており、しかも、クッション性と携帯性とを十分発揮することが可能である。
但し、前記構成の場合には、複数本のパイプを隣接した構成とすることを不可欠としており、そのようなパイプ状態をプラスチック又はゴム状物質によって製造することは、相当煩雑であり、前記構成は製造段階における前記煩雑性を必ずしも解決している訳ではない。
【0008】
【特許文献1】実公平6−21466号公報。
【特許文献2】特許第3059986号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、クッション性と携帯性とを兼ねているだけでなく、製造が容易である携帯用マットの構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、縦方向及び横方向の両側が接続されている2枚のプラスチックシートにおいて、狭幅の横方向、又はその斜方向に複数本のシール設定用ラインを選択し、当該シール設定用ラインの横方向端部、中途部位の何れか又は双方に空気通過用のシール空隙部位を隣接し合う各シール空隙部位が横方向を基準として少なくとも部分的に共通する領域が存在するような状態にて設け、その余のシール設定用ラインにおいて、2枚のプラスチックシートをシールし、かつシートに設定した空気注入口から空気を注入し、かつシール部間の領域に空気を充満した場合に、寝た状態の人体に対し、クッション性を発揮できるようなパイプ状態を形成し得ることに基づく携帯用マットからなる。
【発明の効果】
【0011】
前記基本構成を採用している発明においては、単にクッション性と携帯性とを兼用し得るだけではなく、縦方向端部、及び横方向端部において接続されている2枚のプラスチックシートについて、単にシール設定用ラインに沿ってシールを施すという簡単な製造方法によって前記兼用を実現すると共に、空気通過用のシール空隙部位につき、隣通しが横方向に沿って、共通の領域が存在するように設けていることから、使用者が自らのブレスによって空気を注入する場合、容易に空気をクッション内に充満させるという使用上の容易性をも確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
予め本発明の基本的前提について説明するに、前記基本構成からも明らかなように、本発明においては、空気の注入を介して空気をクッション内の各シール部に囲まれた領域を充満することを要件としているが、当該空気の充満は人間のブレス又はポンプなどの何れも採用可能である。
但し、災害時などにおいては、ポンプを使用できない場合があることから、人間のブレスによって空気の充満を実現し得ることを基本的前提としている。
【0013】
このように、空気が充満した際、各シール設定用ライン2に沿って形成されている各シール部31に囲まれたシート1領域が完全に面方向に伸長する余裕がなければ、空気の注入によって、各シール部31によって囲まれた領域を空気を充満させたうえでパイプ状とし、かつクッション性を発揮することができない。
【0014】
したがって、前記基本構成においては、シール部31に囲まれたシート1領域は、面方向によって空気の充満に伴ってパイプ状に膨らみ、かつクッション性を発揮する程度の面方向の余裕を有していることを不可欠としている。
【0015】
前記のようなパイプ状に膨らんだ状態を形成するためには、シール部31によって囲まれている各シート1領域が相互に連通していることを不可欠としている。
【0016】
図5に示すような端部から端部付近に及ぶシール部31が相互に蛇行状に形成されている場合には、注入された空気が順次蛇行状に移行し、各シート1領域を順次充満させパイプ状に膨らませることになるが、そのような空気の蛇行状の移行においては、空気の流路は直列状態となるため相当の流入抵抗が伴い、空気を注入するために必要なブレスに相当の負担を要する。
【0017】
このような状況を避けるため、本発明においては、空気通過用のシール空隙部位32を隣接し合う各空隙部位が、横方向に沿って共通の領域が存在するような状態にて設けている。
【0018】
このように、空隙部位が横方向に沿って共通する領域が存在することから、注入された空気は、当該共通領域を介して順次奥の方に進行するが、当該進行するに伴って、シール部31によって囲まれた各領域によって、空気の進行につき、並列流路が形成されることになり、図5の場合のようなブレスの過大な負担を伴わずに空気をマットの全体領域に充満させることが可能となる。
【0019】
図1は、前記基本構成の典型的な実施形態を示しており、両側の端部付近にシール空隙部位32を設定したことを特徴としている。
【0020】
このように、両側端部付近において、シール空隙部位32を設けていることによって使用者が自らのブレスによって空気をマット内に注入する際、空気は注入口からその反対側にまで容易に進行した後、その後は横方向に各シール部31によって囲まれた領域によって形成された並列流路に沿って、空気の進行が行われ、過大なブレスの負担を伴わずに空気の注入及び充満を実現することが可能となる(尚、図1はシール設定用ライン2を横方向に設けた場合を示す。)。
【0021】
図2は、隣接し合うシール設定用ライン2のうち、一方の端部付近にシール空隙部位32を設け、他方の端部にシール空隙部位32を設け、かつこのような配置関係を交互に繰り返すことを特徴とする実施形態を示す(尚、図2はシール設定用ライン2を横方向に設けた場合を示す。)。
【0022】
当該実施形態の場合には、図5の場合と似たような蛇行状を形成しているが、端部及び端部付近において、シール空隙部位32において横方向に沿って共通の領域が存在するため、速やかに端部両側付近のシール空隙部位32を介して注入口の反対側にまで空気が移動した後、図1の実施形態の場合と同様、並列流路の形成に基づき過大なブレスを伴わずに、空気の充満を実現することが可能となる。
【0023】
図3は、シート1の横方向幅の約1/3の長さ範囲を以って、横方向略中央に空気通過用隙間を設けたことを特徴とする実施形態を示している(尚、図3はシール設定用ライン2を横方向に設けた場合を示す。)。
【0024】
当該実施形態においても、図1及び図2の実施形態と同様の根拠に基づき、ブレスの過大な負担を伴わずに、空気の充満を実現し得ると共に、横方向に跨って略1/3の領域範囲において、シール部31が存在しないことから平坦な膨らんだ状態を実現し、均一状態によるクッション性を発揮することが可能となる。
【0025】
本発明においては、図4に示すように、空気通過用隙間を両側の端部に設ける実施形態も採用不可能ではない(尚、図4は、シール設定用ライン2を横方向の斜方向に設けた場合を示す。)。
【0026】
しかしながら、当該実施形態の場合には、空気の注入及び充満に基づいて、端部において不要かつ無意味な縦方向の膨らんだパイプ状態が実現し、しかも、端部におけるシール部31の不存在はクッションの強度維持のうえから必ずしも好ましい状態ではない。
【0027】
したがって、図4の実施形態よりも図1、2、3に示す各実施形態の方が優れている。
【0028】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例においては、図6に示すように、プラスチックシートがポリエチレン/ナイロン/ポリエチレンの3層によって構成されていることを特徴としている。
【0030】
3層のうち、内側層としてポリエチレンを採用した場合には、ポリエチレンの融点が低いことから(低密度ポリエチレンの場合の融点は110〜112℃であり、高密度ポリエチレンの場合の融点は130〜140℃ある。)、容易にシートシールを実現することが可能となる。
【0031】
外側層としてポリエチレンを採用した場合には、ポリエチレンの機密性によって吸湿性を低く設定することが可能となる。
【0032】
中間層としてナイロンを採用することによって、高い強度を発揮することが可能となり、耐摩耗性、及び耐久性を発揮することができる。
【0033】
通常、前記3層の厚さとしては、ポリエチレンの厚さが41〜15μmとし、ナイロンにつき50〜20μmとするような選択を行うことによって、耐摩耗性及び耐久性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、クッションの分野だけでなく、特許文献2に示すようなシラフの下側構成としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態を示す平面図である(但し、必ずしも好ましい実施形態ではない。)
【図5】シール部分を一方の端部、他方の端部付近にまで交互に蛇行状に設けたことによる構成を示す(本発明の構成には該当していない。)。
【図6】実施例による3層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 シート
11 ポリエチレン層
12 ナイロン層
2 シール設定用ライン
31 シール部
32 シール空隙部位
4 空気注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向の両側が接続されている2枚のプラスチックシートにおいて、狭幅の横方向、又はその斜方向に複数本のシール設定用ラインを選択し、当該シール設定用ラインの横方向端部、中途部位の何れか又は双方に空気通過用のシール空隙部位を隣接し合う各シール空隙部位が横方向を基準として少なくとも部分的に共通する領域が存在するような状態にて設け、その余のシール設定用ラインにおいて、2枚のプラスチックシートをシールし、かつシートに設定した空気注入口から空気を注入し、かつシール部間の領域に空気を充満した場合に、寝た状態の人体に対し、クッション性を発揮できるようなパイプ状態を形成し得ることに基づく携帯用マット。
【請求項2】
両側の端部付近にシール空隙部位を設定したことを特徴とする請求項1記載の携帯用マット。
【請求項3】
隣接し合うシール設定ラインのうち、一方の端部付近にシール空隙部位を設け、他方の端部に、シール空隙部位を設け、かつこのような配置関係を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1記載の携帯用マット。
【請求項4】
シートの横方向幅の約1/3の長さ範囲を以って、横方向、又はその斜方向に略中央に空気通過用隙間を設けたことを特徴とする請求項1記載の携帯用マット。
【請求項5】
プラスチックシートがポリエチレン/ナイロン/ポリエチレンの3層によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯用マット。
【請求項6】
ポリエチレンの厚さが40〜15μmであり、ナイロンの厚さが50〜20μmであることを特徴とする請求項5記載の携帯用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−143604(P2007−143604A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338612(P2005−338612)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(599051890)株式会社風船工房匠 (13)
【出願人】(505435877)株式会社シェアアップ (1)
【Fターム(参考)】