説明

携帯用通信装置および、これを用いたICカードシステム

【課題】 リーダライタの起動を最小限にして消費電力を抑え、電池の寿命を延ばす事ができる携帯用通信装置およびそれを用いたICカードシステムを提供する事。
【解決手段】 携帯用通信装置1にはカード収納部とリーダライタ12とトランシーバ14と情報記憶部15と電源部10で構成し、ICカード4をカード収納部に収納して用いる時、リーダライタ12と電源部10の間に電力供給を制御するスイッチを設けて、リーダライタ12の起動を制御し、更に情報記憶部15に記憶したカード情報を使用して通信する事でリーダライタの起動回数を抑えて省電力化を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のICカードを用いて人体近傍通信により通信を行う携帯用通信装置および、これを用いたICカードシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接触型ICカードは端子を接触し、また非接触型ICカードは無線でリーダライタと通信して、それぞれのカード情報の読み取りや書き込みを行っていたが、通信を行う度に財布等の収納場所からICカードを取り出してリーダライタに挿入、あるいは近接しなければならなかった。一方で、その煩わしさを解消しようと、人体近傍通信システムが研究されている。これは、人体に近接させてカード型の送信機を携帯し、そこから発せられる電界が、人体の表面を伝搬して環境に埋め込む受信機にID情報を伝達する事を利用して認証を行い、従来のカードを取り出す煩わしさを解消している(たとえば非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、市場では既にICカードを用いたシステムが数多く稼働しており、また発行されている各種のICカードの数は膨大なものである。それらのシステムを更改し、大量の発行済みICカードを入れ替えるには莫大な費用と時間がかかる。このため、当分の間は従来のICカードを用いたシステムと、人体近傍通信を用いたシステムが併存する事が避けられず、既存のICカードも併用できるシステムが望まれる。
【0004】
このような両方のシステムで使用できる方法として、人体近傍通信システムに既存のICカードも使用できる様に、ICカードの情報を一旦、リーダライタで読み取りその情報を人体近傍通信システムの情報形態に随時変換して通信を行う携帯用通信装置の提案がされている(たとえば特許文献2〜4)。
【0005】
次に非接触方式のICカードを用いて人体近傍通信システムの情報形態に変換して使用する場合の従来技術を示す。図9は、従来技術によるシステム構成図である。携帯用通信装置1とともにその近くにICカード4を携帯し、ICカード4の情報は携帯用通信装置1に内蔵されているICカード通信部18のアンテナ11を介してリーダライタ12で読み取り、その情報は人体近傍通信部19に送られ、トランシーバ14で人体近傍通信の方式に変換されて電極13から人体3に電界を発生する。環境に設置された据置用通信装置2は人体3を介して内蔵されている電極23で電界の変化を検出し、トランシーバ24がデータに変換して人体近傍通信部29から制御装置25に情報が伝送される。制御装置25は必要があればサーバ30と通信してICカード4の情報を基に認証などの処理を行う。この様にする事により既存のICカード4も人体近傍通信システムで使用する事が可能となる。尚、図9に示す様に、ICカード通信部18、人体近傍通信部19を動かすために携帯用通信装置1には電池のような電源部10を持つ必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−352298号公報
【特許文献2】特開2007−226560号公報
【特許文献3】特開2006―352318号公報
【特許文献4】特開2009―81771号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NTT技術ジャーナル、2010年1月、p.12−32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、図9の従来技術は、ICカード4を読み取るためにリーダライタ12を常に動作させておかなければならず、通常の人体近傍通信だけの携帯用通信装置に比べて消費電力が大きく、それに伴い使用している電池の取り替え回数、もしくは充電回数が増えてしまい手間がかかるとともに運用コストが高くなってしまうという課題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決しリーダライタの起動を最小限にして消費電力を抑え、電池の寿命を延ばす事ができる携帯用通信装置およびそれを用いたICカードシステムを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、ICカードを収納して保持するためのカード収納部と、ICカードの情報を読み取りまたは、読み取りと書き込みを行うリーダまたはリーダライタと、カード収納部に保持したICカードのカード情報を記憶するメモリで構成した情報記憶部と、情報記憶部にアクセスしカード情報の読み出し及び書き込みが可能で、据置用通信装置と人体近傍通信を行うトランシーバと、リーダまたはリーダライタとトランシーバに電力を供給する電源部を有し、リーダまたはリーダライタへの電力の供給を制御するスイッチを具備しており、このスイッチは電源部からリーダまたはリーダライタへ電力を供給する電源ラインに設けられていて、スイッチをonにする事でリーダまたはリーダライタに電力を供給し、スイッチをoffにする事で電力の供給を停止する事ができる。スイッチとしては、ICカードの挿入を機械的に検出して接点の接続、開放を行う機械式の、たとえばリミットスイッチとしても良く、あるいはトランシーバから電気的にon/offを切り替える事ができるFETなどの半導体スイッチを用いても良い。
【0011】
カード収納部は、例えば携帯用通信装置と一体に形成され、ICカードを挿入するスリット部に上方からICカードを挿入して、奥まで挿入する事で装置内部に収納される。この時、ICカードは携帯用通信装置に内蔵されたリーダまたはリーダライタと通信可能な位置に保持される。また、カード収納部には図示していないが内部に収納したICカードが不用意に抜け落ちない様にICカードを機械的にロックする機構や、収納したICカードを抜き取る際に、カードを抜き取り可能な位置まで排出するイジェクト機構を設けても良い。
【0012】
ICカードの収納状態は、カード収納部に配置された少なくとも1つ以上のセンサの信号をトランシーバ側で監視する事で、ICカードを挿入されてからカード収納部に保持し、その後ICカードを抜き取る一連の動作を検出できる様に配置されている。
【0013】
情報記憶部は1つまたは複数のメモリで構成した、目的毎に3つに区分される記憶領域の総称で、区分毎に揮発性メモリや不揮発性メモリを組み合わせて使用して構わない。また、情報記憶部へのアクセス方法として、リーダまたはリーダライタとトランシーバの双方からアクセスできる構成としても良いし、トランシーバ側からアクセスする構成としても良い。
【0014】
ICカードとしてはリーダまたはリーダライタとアンテナを介して無線で通信する非接触型ICカードであっても良く、また接触型のリーダまたはリーダライタを用いれば端子を接触して通信する接触型ICカードであっても良い。
【0015】
すなわち本発明によれば、環境に設置された据置用通信装置と人体表面を伝搬する電界を利用して通信を行う携帯用通信装置において、ICカードを収納するカード収納部と、前記ICカードの情報を読み取りまたは、読み取りと書き込みを行うリーダまたはリーダライタと、前記ICカードのカード情報を格納する情報記憶部と、前記情報記憶部にアクセスし前記カード情報の読み出し及び書き込みが可能で、前記据置用通信装置と通信を行うトランシーバと、前記リーダまたはリーダライタと前記トランシーバに電力を供給する電源部を有し、前記リーダまたはリーダライタへの電力の供給および停止を制御するスイッチを具備する事を特徴とする携帯用通信装置が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記カード収納部には、前記ICカードの状態を検出する少なくとも1つ以上のセンサが配置され、前記トランシーバは前記ICカードが挿入された状態と完全に収納されている状態および、抜き取られた状態を検出可能である事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記情報記憶部は、3つに区分された1つまたは複数のメモリで構成され、第1の区分には前記トランシーバが検出した前記ICカードの前記収納状態が書き込まれ、第2の区分には固有情報が格納され、第3の区分には前記カード収納部に前記ICカードが収納されている場合に、前記ICカードの前記カード情報が書き込まれる事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記第2の区分と前記第3の区分は、前記トランシーバが前記据置用通信装置の要求を人体近傍通信により受信して判断し、選択的に読み出して応答する事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記第3の区分の前記カード情報は、前記カード収納部から前記ICカードが抜かれるか、または電源が切れた場合には、前記カード情報が消去される事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、前記スイッチが前記カード収納部に配置され、前記ICカードが前記カード収納部に挿入された時に、前記ICカードに接触する事で機械的に動作し、前記スイッチに前記ICカードが接触している期間、電力が供給される事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、前記スイッチが前記トランシーバにより電気的に制御される事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、前記据置用通信装置が、前記ICカードの収納状態と、前記第3の区分の前記カード情報の有無を確認することにより、前記スイッチの動作及び第3の区分の前記カード情報の書き込みまたは消去を制御してなり、前記ICカードが収納された状態で、かつ前記第3の区分に前記カード情報が書き込まれていない場合は、前記据置用通信装置からの指示により、前記スイッチをonにして前記リーダライタへ前記電力を供給し、前記ICカードの前記カード情報を読み取りし、読み取った前記カード情報を前記トランシーバが直接または前記据置用通信装置を介して前記第3の区分に書き込みし、書き込みが終了した後、前記スイッチをoffにして、前記リーダライタへの前記電力の供給を停止し、前記ICカードが収納されていない状態で、かつ前記第3の区分に前記カード情報が書き込まれている場合は、前記トランシーバが直接または前記据置用通信装置からの指示により、前記カード情報を消去し、前記ICカードが収納された状態で、かつ第3の区分にカード情報が書き込まれている場合、または前記ICカードが収納されていない状態で、かつ第3の区分にカード情報が書き込まれていない場合は、前記スイッチの動作及び前記第3の区分へ書き込みもしくは消去しないか、または第2の区分を読み取るよう構成された事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0023】
また、本発明によれば、前記ICカードの収納状態を、前記第1の区分を読み取ることにより確認する事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0024】
また、本発明によれば、前記ICカードの収納状態を、前記トランシーバが前記センサの検出結果を読み取ることにより確認する事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0025】
また、本発明によれば、前記ICカードが非接触型ICカードである事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0026】
また、本発明によれば、前記ICカードが接触型ICカードである事を特徴とする上記の携帯用通信装置が得られる。
【0027】
また、本発明によれば、上記の携帯用通信装置を人体の近傍に所持し、前記据置用通信装置と前記人体表面を伝搬する電界を利用して情報の送受信を行うシステムであって、前記携帯用通信装置に前記ICカードを収納する事で、前記ICカードによる認証および取引を可能とした事を特徴とするICカードシステムが得られる。
【0028】
また、本発明によれば、上記の携帯用通信装置を人体の近傍に所持し、前記据置用通信装置と前記人体表面を伝搬する電界を利用して情報の送受信を行うシステムであって、前記据置用通信装置と従来のICカード用のリーダまたはリーダライタを併設した事を特徴とするICカードシステムが得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来技術の課題を解決しリーダライタの起動を最小限にして消費電力を抑え、電池の寿命を延ばす事ができる携帯用通信装置およびそれを用いたICカードシステムを提供する事ができる。
【0030】
また、環境に設置される据置用通信装置に人体近傍通信システムの通信部分と既存のICカードの通信部分の双方の機能を持たせておく場合には、携帯用通信装置の電池が消耗してしまって通信できない場合でも、ICカードを取り出して、該ICカード通信部と通信する事により所望の目的が達成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるシステム構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態によるシステム構成図。
【図3】本発明の携帯用通信装置のカード収納部の一例を示す外観図。
【図4】本発明の実施の形態における情報記憶部の構成図。
【図5】本発明の第1の実施の形態によるスイッチの構成図。
【図6】本発明の第1の実施の形態によるスイッチの動作状態の一例を示す構成図。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるスイッチの動作状態の他の例を示す構成図。
【図8】本発明の第2の実施の形態によるスイッチの構成図。
【図9】従来技術によるシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明の第1の実施の形態によるシステム構成図である。携帯用通信装置1には図9の従来の形態と同様に従来のICカード4の情報の読み取りと書き込みを行うICカード通信部18(アンテナ11、リーダライタ12で構成)と、人体近傍通信部19(電極13、トランシーバ14で構成)の2つの通信機能を持っており、電源部10からリーダライタ12への電源供給ラインには機械式スイッチ17が設けられ、図示しないカード収納部にはセンサ16が配置されている。第1の実施の形態では、リーダライタ12とトランシーバ14の双方からアクセス可能な情報記憶部15が設けられている。
【0034】
図1で環境に設置される据置用通信装置2には人体近傍通信部29(電極23、トランシーバ24で構成)が制御装置25と通信可能に接続してあり、この他にICカード通信部28(アンテナ21、リーダライタ22で構成)も機能として併設した場合を示している。制御装置25は必要に応じてサーバ30と通信して認証などの処理を行う。
【0035】
図3は本発明の携帯用通信装置のカード収納部の一例を示す外観図である。カード収納部100は携帯用通信装置1に一体に設けられ、ICカード4が図中矢印方向から挿入されて装置内に収納される。また、携帯用通信装置1には装置を携帯する人に近接する部分に電極13があり、図示しないトランシーバからのデータ信号を微弱な電界に変換し、人体表面に誘起して送信を行ったり、あるいは送信された電界を検出して受信を行ったりしてデータの送受信を行う。
【0036】
図4は本発明の実施の形態における情報記憶部15の構成図である。情報記憶部は3つに区分されており、不揮発性、揮発性のいずれか1つまたはいずれか複数のメモリで構成されている。第1の区分31にはICカードが収納されている事を示す情報が、第2の区分32には携帯用通信装置の予め定められた識別情報が、第3の区分33にはICカードのカード情報が記憶される。
【0037】
図5は本発明の第1の実施の形態によるスイッチの構成図であり、更に図6はスイッチの動作状態の一例を示す構成図であり、図7はスイッチの動作状態の他の例を示す構成図である。第1の実施の形態ではカード収納部100の入り口部に、機械式スイッチ17が設けられ、カード収納部100の奥にはセンサ162が配置されている。図5はICカード4がカード収納部100に挿入されていない状態を表し、機械式スイッチ17は接点172が開いた状態であるため、電源部10からの電源ラインは開放されて、リーダライタ12に電力は供給されない。
【0038】
次に図6に示す様に、ICカード4がカード収納部100に挿入されると、ICカード4の先端が機械式スイッチ17に接触してスイッチが作動し、接点172が閉じて電源ラインが接続され、リーダライタ12は電力が供給されて起動する。リーダライタ12はアンテナ11を介してICカード4と通信を行い、ICカード4のカード情報を読み出して情報記憶部15の第3の区分にこの情報を書き込む。
【0039】
次に図7に示す様に、ICカード4がカード収納部100の奥まで到達すると、ICカード4の後端が機械式スイッチ17を通過してスイッチが戻り、接点172が開いて電源ラインが開放されて、リーダライタ12への電力供給が停止する。この時、カード収納部100の奥に配置されたセンサ162が反応し、トランシーバ14はこれを検出してICカード4がカード収納部100に保持されたと判断して、情報記憶部15の第1の区分にICカード4が収納されている事を示す情報を書き込む。この様にする事で、ICカード4を挿入する間だけリーダライタ12に電力が供給され、ICカード4がカード収納部100に保持されている間は電力が供給されないので、従来技術に比べてリーダライタ12の消費電力を最小とする事ができ、電池等の寿命を延ばす事が可能となる。
【0040】
ICカード4が収納された状態で、携帯用通信装置1を所持した人体3が、据置用通信装置2に近づき通信可能な位置まで近接すると、図1に示す携帯用通信装置1の人体近傍通信部19と据置用通信装置2の人体近傍通信部29が人体3を通信媒体として人体近傍通信を行う。この時、制御装置25が据置用通信装置2を介してICカード4のカード情報を要求した場合、携帯用通信装置1のトランシーバ14は情報記憶部15の第1の区分を参照し、ICカード4がカード収納部100に収納されている場合、情報記憶部15の第3の区分からカード情報を読み出し、据置用通信装置2に応答する。ICカードが収納されていない場合は、エラーを応答してICカード4を所持していない事を通知する。制御装置25は応答された情報を基に、必要があればサーバ30と通信して認証などを行う事ができる。
【0041】
制御装置25が据置用通信装置2を介して携帯用通信装置1の予め定められた識別情報を要求した場合は、携帯用通信装置1のトランシーバ14は、情報記憶部15の第2の区分に記憶されている携帯用通信装置1の予め定められた識別情報を読み出し、据置用通信装置2に応答する。この様にする事で、携帯用通信装置1はICカード4を所持している事で認証を行う据置用通信装置2と、携帯用通信装置1を所持している事で認証を行う他の据置用通信装置の両方に対応する事ができ、例えばオフィス内でセキュリティレベルを2段階に設定する様な用途に対応できる。
【0042】
ICカード4を携帯用通信装置1のカード収納部100から抜き取る場合、挿入時とは逆の方向にICカード4が移動して、図7の状態から図6の状態となった時、リーダライタ12に電力が供給される。情報記憶部15の第3の区分に記憶されているカード情報が更新されている場合は、このタイミングでカード情報をICカード4に書き戻す事ができる。また、このタイミングで情報記憶部15に書き込まれた第1の区分と第3の区分の情報を消去する事で、ICカード4が抜き取られた後にカード情報が残らない様にしている。更にICカードを抜き取り、図6の状態から図5の状態となってICカード4が完全に抜き取られると、リーダライタ12への電力の供給が再び停止され、不要な電力の消費が抑えられる。
【0043】
本発明の第1の実施の形態ではICカード通信部18と人体近傍通信部19を独立させて構成する事ができ、既存のリーダライタ12やトランシーバ14を組み合わせて比較的簡単な構成で本発明の課題を解決する事ができるという利点がある。
【0044】
図2は本発明の第2の実施の形態によるシステム構成図である。携帯用通信装置1には図1と同様に従来のICカード4の情報の読み取りと書き込みを行うICカード通信部18(アンテナ11、リーダライタ12で構成)と、人体近傍通信部19(電極13、トランシーバ14で構成)の2つの通信機能を持っており、電源部10からリーダライタ12への電源供給ラインには半導体スイッチ5が設けられ、図示しないカード収納部にはセンサ16が配置されている。第2の実施の形態では、情報記憶部15はトランシーバ14からアクセスする構成としている。図1と同様に環境に設置される据置用通信装置2は人体近傍通信部29の他にICカード通信部28も機能として併設した場合を示している。
【0045】
図2で環境に設置される据置用通信装置2には人体近傍通信部29(電極23、トランシーバ24で構成)が制御装置25と通信可能に接続してあり、この他にICカード通信部28(アンテナ21、リーダライタ22で構成)も機能として併設した場合を示している。制御装置25は必要に応じてサーバ30と通信して認証などの処理を行う。
【0046】
図8は本発明の第2の実施の形態によるスイッチの構成図である。第2の実施の形態では、電源部10からリーダライタ12に電力を供給する電源ラインに半導体スイッチ5が設けられている。半導体スイッチ5はトランシーバ14からの制御信号によりonとoffを切り替えられる様になっており、onの時にリーダライタ12に電力が供給され、offの時に電力の供給を停止するする。ICカード4が挿入されていない初期状態では半導体スイッチ5はoffに制御されており、リーダライタ12に電力は供給されていない。
【0047】
図8において、カード収納部100の入り口部にはセンサ161、奥部にはセンサ162が配置されており、ICカード4がカード収納部100に完全に収納された時、2つのセンサが反応する位置に配置してある。尚、センサ161、162の構造は光学式でも、機械式あるいはその他の方式でも所望の動作が得られればどの形式でも構わない。
【0048】
両センサからの信号はトランシーバ14に入力されている。ICカード4が図8の上方から挿入されると、まず、センサ161が反応して、その信号がトランシーバ14に入力される。トランシーバ14がこれを検出すると半導体スイッチ5をonにして、リーダライタ12に電力を供給して起動する。リーダライタ12はアンテナ11を介してICカード4と通信を行い、ICカード4のカード情報を読み出してトランシーバ14に送信し、トランシーバ14が情報記憶部15の第3の区分にこの情報を書き込む。
【0049】
図8においてICカード4がカード収納部100の奥まで到達すると、センサ162が反応して、その信号がトランシーバ14に入力される。トランシーバ14がこれを検出するとICカード4がカード収納部100に保持されたと判断して、情報記憶部15の第1の区分にICカード4が収納されている事を示す情報を書き込み、半導体スイッチ5をoffにして、リーダライタ12への電力の供給を停止する。この様にする事で、ICカード4を挿入する間、リーダライタ12に電力が供給され、第1の実施の形態と同様の電源制御を実現する事ができる。
【0050】
ICカード4が収納された状態で、携帯用通信装置1を所持した人体3が、据置用通信装置2に近づき通信可能な位置まで近接すると、図2に示す携帯用通信装置1の人体近傍通信部19と据置用通信装置2の人体近傍通信部29が人体3を通信媒体として人体近傍通信を行う。この時、制御装置25が据置用通信装置2を介してICカード4のカード情報を要求した場合、携帯用通信装置1のトランシーバ14は情報記憶部15の第1の区分を参照し、ICカード4がカード収納部100に収納されている場合、情報記憶部15の第3の区分からカード情報を読み出し、据置用通信装置2に応答する。ICカードが収納されていない場合は、エラーを応答してICカード4を所持していない事を通知する。制御装置25は応答された情報を基に、必要があればサーバ30と通信して認証などを行う事ができる。
【0051】
制御装置25が据置用通信装置2を介してICカード4との相互認証やバリュー減算処理などの、情報記憶部15の第3の区分に書き込まれたカード情報だけでは処理できない手順を要求した場合、トランシーバ14は半導体スイッチ5をonにして、リーダライタ12を起動しICカード4と通信して制御装置25からの要求に対応した処理を実現する。トランシーバ14、24は制御装置25とICカード4の通信を中継して一連の手順を実行可能にし、手順が完了したら半導体スイッチ5をoffにして、リーダライタ12への電力の供給を停止して電力の消費を最小限に制御する。この様にする事で、相互認証を行う高度な認証システムや、バリュー減算を伴う様な電子マネーの取引など、高機能のICカードを用いたシステムにも対応する事ができる上に、従来技術に比べてリーダライタ12の消費電力を必要最小限に抑える事ができ、電池等の寿命を延ばす事が可能となる。
【0052】
また、第1の実施の形態と同様に制御装置25が据置用通信装置2を介して携帯用通信装置1の予め定められた識別情報を要求した場合は、携帯用通信装置1のトランシーバ14は、情報記憶部15の第2の区分に記憶されている携帯用通信装置1の予め定められた識別情報を読み出し、据置用通信装置2に応答する。この様にする事で、携帯用通信装置1はICカード4を所持している事で認証を行う据置用通信装置2と、携帯用通信装置1を所持している事で認証を行う他の据置用通信装置の両方に対応する事ができ、例えばオフィス内でセキュリティレベルを2段階に設定する様な用途に対応できる。
【0053】
図8において、ICカード4を携帯用通信装置1のカード収納部100から抜き取る場合、センサ161とセンサ162が共にカードを検出している状態から、挿入時とは逆の方向にICカード4が移動して、まずセンサ162がカードを検出できなくなる。トランシーバ14がこれを検出すると半導体スイッチ5をonにして、リーダライタ12に電力が供給される。情報記憶部15の第3の区分に記憶されているカード情報が更新されている場合は、このタイミングでカード情報をICカード4に書き戻す事ができる。また、このタイミングで情報記憶部15に書き込まれた第1の区分と第3の区分の情報を消去する事で、ICカード4が抜き取られた後にカード情報が残らない様にしている。更にICカード4を抜き取り、センサ161もカードを検出できなくなると、ICカード4が完全に抜き取られたと判断し、トランシーバ14が半導体スイッチ5をoffにして、リーダライタ12への電力の供給が再び停止して、不要な電力の消費が抑えられる。
【0054】
本発明の第2の実施の形態では高機能のICカードシステムにも適用する事ができ、応用範囲をICカード全般に広げる事ができる上に、更に本発明の課題を解決する事ができるという利点がある。
【0055】
次に、別の実施の形態を説明する。図8において、携帯用通信装置の低消費電力化、低コスト化のためにトランシーバ14に高性能なプロセッサを搭載しない場合がある。この場合、すべての制御は、据置用通信装置2が行うことになる。
【0056】
例えば、据置用通信装置2の人体近傍通信部が携帯用通信装置1のICカード収納状態をポーリングしていて、ICカード4が収納されていると確認された場合、情報記憶部15の第3の区分の情報を読み取り、カード情報が記載されていない場合は、トランシーバ14に指示して半導体スイッチ5をonにさせ、リーダライタ12に電力を供給して起動する。リーダライタ12は前述した方法でICカード4のカード情報を読み出して情報記憶部15の第3の区分にこの情報を書き込む。この場合、一旦読み出したカード情報を据置用通信装置2に転送し、再度据置用通信装置2から情報記憶部15へ書き込んでもよい。一方、カード情報が記載されている場合は、カード情報をICカード情報として読み取る。
【0057】
ICカード4が収納されていないと確認された場合、情報記憶部15の第3区分の情報を読み取り、カード情報が記憶されていない場合は、半導体スイッチ5を動作せず、かつ第3の区分へ書き込みもしくは消去しない等、何もしないか、代わりに第2の区分を読み取る。一方、カード情報が記載されている場合は、第3の区分の情報を消去する。
【0058】
このようにすることにより、第3の区分のメモリへのアクセスによる方法として、ICカード4を挿入または抜き取りしただけでは半導体スイッチ5は動作せず、携帯用通信装置1に高性能なプロセッサを使用しなくて済むため、低消費電力で低コストであるICカードシステムを構築することが可能となる利点がある。なお、この具体的な方法や手順は違えても上述した機能が得られるのであればよい。例えば、ICカード4の収納状態を、第1の区分を読み取ることにより確認するようにしてもよい。また、トランシーバ14がセンサ161、162の検出結果を読み取ることにより確認するようにしてもよい。また、上述したいくつかを組み合わせてもよい。
【0059】
第1および第2の実施の形態とも、情報記憶部の第3の区分を揮発性メモリとすれば、携帯用通信装置がICカードを保持した状態で電池切れなどにより電源が落ちた場合に、ICカードから読み取ったカード情報を確実に消去する事ができ望ましい。
【0060】
本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られたものでは無い事は言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なし得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 携帯用通信装置
2 据置用通信装置
3 人体
4 ICカード
5 半導体スイッチ
10 電源部
11、21 アンテナ
12、22 リーダライタ
13、23 電極
14、24 トランシーバ
15 情報記憶部
16、161、162 センサ
17 機械式スイッチ
18、28 ICカード通信部
19、29 人体近傍通信部
25 制御装置
30 サーバ
100 カード収納部
172 接点
31 第1の区分
32 第2の区分
33 第3の区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境に設置された据置用通信装置と人体表面を伝搬する電界を利用して通信を行う携帯用通信装置において、ICカードを収納するカード収納部と、前記ICカードの情報を読み取りまたは、読み取りと書き込みを行うリーダまたはリーダライタと、前記ICカードのカード情報を格納する情報記憶部と、前記情報記憶部にアクセスし前記カード情報の読み出し及び書き込みが可能で、前記据置用通信装置と通信を行うトランシーバと、前記リーダまたはリーダライタと前記トランシーバに電力を供給する電源部を有し、前記リーダまたはリーダライタへの電力の供給および停止を制御するスイッチを具備する事を特徴とする携帯用通信装置。
【請求項2】
前記カード収納部には、前記ICカードの収納状態を検出する少なくとも1つ以上のセンサが配置され、前記トランシーバは前記ICカードが挿入された状態と完全に収納されている状態および、抜き取られた状態を検出可能である事を特徴とする請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項3】
前記情報記憶部は、3つに区分された1つまたは複数のメモリで構成され、第1の区分には前記トランシーバが検出した前記ICカードの収納状態が書き込まれ、第2の区分には固有情報が格納され、第3の区分には前記カード収納部に前記ICカードが収納されている場合に、前記ICカードの前記カード情報が書き込まれる事を特徴とする請求項1または2に記載の携帯用通信装置。
【請求項4】
前記第2の区分と前記第3の区分は、前記トランシーバが前記据置用通信装置の要求を人体近傍通信により受信して判断し、選択的に読み出して応答する事を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項5】
前記第3の区分の前記カード情報は、前記カード収納部から前記ICカードが抜かれるか、または電源が切れた場合には、前記カード情報が消去される事を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項6】
前記スイッチが前記カード収納部に配置され、前記ICカードが前記カード収納部に挿入された時に、前記ICカードに接触する事で機械的に動作し、前記スイッチに前記ICカードが接触している期間、電力が供給される事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項7】
前記スイッチが前記トランシーバにより電気的に制御される事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項8】
前記据置用通信装置が、前記ICカードの収納状態と、前記第3の区分の前記カード情報の有無を確認することにより、前記スイッチの動作及び第3の区分の前記カード情報の書き込みまたは消去を制御してなり、前記ICカードが収納された状態で、かつ前記第3の区分に前記カード情報が書き込まれていない場合は、前記据置用通信装置からの指示により、前記スイッチをonにして前記リーダライタへ前記電力を供給し、前記ICカードの前記カード情報を読み取りし、読み取った前記カード情報を前記トランシーバが直接または前記据置用通信装置を介して前記第3の区分に書き込みし、書き込みが終了した後、前記スイッチをoffにして、前記リーダライタへの前記電力の供給を停止し、前記ICカードが収納されていない状態で、かつ前記第3の区分に前記カード情報が書き込まれている場合は、前記トランシーバが直接または前記据置用通信装置からの指示により、前記カード情報を消去し、前記ICカードが収納された状態で、かつ第3の区分にカード情報が書き込まれている場合、または前記ICカードが収納されていない状態で、かつ第3の区分にカード情報が書き込まれていない場合は、前記スイッチの動作及び前記第3の区分へ書き込みもしくは消去しないか、または第2の区分を読み取るよう構成された事を特徴とする請求項7に記載の携帯用通信装置。
【請求項9】
前記ICカードの収納状態を、前記第1の区分を読み取ることにより確認する事を特徴とする請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項10】
前記ICカードの収納状態を、前記トランシーバが前記センサの検出結果を読み取ることにより確認する事を特徴とする請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項11】
前記ICカードが非接触型ICカードである事を特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項12】
前記ICカードが接触型ICカードである事を特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の携帯用通信装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の携帯用通信装置を人体の近傍に所持し、前記据置用通信装置と前記人体表面を伝搬する電界を利用して情報の送受信を行うICカードシステムであって、前記携帯用通信装置に前記ICカードを収納する事で、前記ICカードによる認証および取引を可能とした事を特徴とするICカードシステム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の携帯用通信装置を人体の近傍に所持し、前記据置用通信装置と前記人体表面を伝搬する電界を利用して情報の送受信を行うICカードシステムであって、前記据置用通信装置と従来のICカード用のリーダまたはリーダライタを併設した事を特徴とするICカードシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate