説明

携帯端末

【課題】印刷密度を高い状態に保ちながら電池の残存容量を有効利用すること。
【解決手段】電池の温度を検出する温度検出回路と電圧を検出する電圧検出回路を備え、電池の温度と残容量を監視する。そして、携帯端末は、ある閾値を用いて温度の高低、電圧の高低を判断し、これらによってサーマルヘッドの同時最大駆動ドット数を変更する。電池温度が閾値より小さい場合、携帯端末は、同時駆動ドット数を低くしてピーク時の消費電力を抑え、電圧降下によるシステムダウンを防ぎつつ、電池持続時間を長くする。電池の電圧が閾値より小さい場合、同時駆動ドット数を低くしてピーク時の消費電力を抑え、電圧降下によるシステムダウンを防ぎつつ、電池持続時間を長くする。電池の電圧は、印刷開始前と印刷中について計測し、この値を用いてライン毎に同時最大駆動ドット数を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関し、例えば、サーマルヘッドで分割印刷するものに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末は、電池で駆動し、サーバに無線でアクセスするため、利用者は場所に拘束されずにサーバが提供するサービスを利用することができる。
そして、携帯端末にはプリンタを装備したものがあり、例えば、領収書や注文書の印刷(印字)を行うことにより、携帯端末を業務用などに広く用いることができる。
このように携帯端末に内蔵されるプリンタとしては、サーマルヘッドで感熱紙を加熱するものが一般的である。
【0003】
これら携帯端末に内蔵されたプリンタには、電池切れによる印刷の中断の回避、消費電力の制御による電池の持続時間の向上、印刷速度の高速化などが求められている。
次の文献の「印刷装置の制御方法」では、印刷の中断を回避しながら電池の持続時間を向上させる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2003−316558
【0004】
この技術は、プリンタの動作を制御する正規データ、省電力用データを用意しておき、電源容量によって、これらを使い分けるものである。
省電力用データでは、印刷ドットを間引きし、これによってプリンタの消費電力が低減されるようになっている。
このように、電源の残量に応じて印刷密度(印刷解像度)を変更することにより、印刷の中断を回避し、電池の残存容量を有効利用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、印刷密度を低く設定すると、印刷が粗くなり、印刷物が不鮮明になったり、見栄えが低下するなどの問題があった。
一方、印刷密度を高い状態に維持すると、当該印刷密度で印刷してもシステムダウンしない程度の電池残量で携帯端末を使用停止する必要があるため、低解像度でなら印刷できる電池残量があるにも関わらず携帯端末を停止しなければならなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、印刷密度を高い状態に保ちながら電池の残存容量を有効利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、複数の発熱体を配列して構成されたサーマルヘッドと、感熱紙を前記サーマルヘッドに供給する感熱紙供給手段と、電池を装着する電池装着手段と、前記装着した電池の電圧、又は温度の少なくとも一方を計測する計測手段と、前記計測手段で計測した計測値を用いて同時に発熱させる前記発熱体の個数を設定する発熱体数設定手段と、前記設定した個数の単位毎に印刷データを分割し、当該分割単位で順次前記発熱体を発熱させて前記供給された感熱紙に印刷する印刷手段と、を具備したことを特徴とする携帯端末を提供する(第1の構成)。
第1の構成において、前記計測手段は、前記印刷手段が前記発熱体を発熱させている際の値を計測するように構成することもできる(第2の構成)。
第1の構成、又は第2の構成において、前記発熱体数設定手段は、メインCPUにより実現されており、前記印刷手段は、印刷用CPUにて実現されており、前記メインCPUから前記印刷用CPUへは、前記設定した発熱体の個数と、印刷データが伝達され、前記印刷手段は、前記伝達された発熱体の個数と印刷データを用いて前記発熱体を発熱させるように構成することもできる(第3の構成)。
第3の構成において、前記メインCPUは、1行の印刷で発熱させる発熱体の合計個数が前記設定した個数以下か否かを判断する合計個数判断手段を具備し、前記合計個数が前記設定した個数以下の場合、前記メインCPUは、前記印刷用CPUに対して、前記印刷手段に、印刷データを分割せずに、発熱させる発熱体の全てを同時に発熱させるように構成することもできる(第4の構成)。
第1の構成から第4の構成までのうちの何れか1の構成において、1行の印刷で発熱させる発熱体の個数が零である場合、前記印刷手段は、前記発熱体を発熱させず、かつ、前記感熱紙供給手段は感熱紙を1行分送るように構成することもできる(第5の構成)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池の温度と電圧の少なくとも一方を用いて動的に分割印刷を行うことにより、印刷密度を高い状態に保ちながら電池の残存容量を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)実施の形態の概要
電池の温度を検出する温度検出回路と電圧を検出する電圧検出回路を備え、電池の温度と残容量を表す電池電圧を監視する。
そして、携帯端末は、ある閾値を用いて温度の高低、電圧の高低を判断し、これらによってサーマルヘッドの同時最大駆動ドット数を変更する。
電池温度が閾値より小さい場合、携帯端末は、同時駆動ドット数を低くしてピーク時の消費電力を抑え、電圧降下によるシステムダウンを防ぎつつ、電池持続時間を長くする。
また、電池の電圧についても閾値より小さい場合、同時駆動ドット数を低くしてピーク時の消費電力を抑え、電圧降下によるシステムダウンを防ぎつつ、電池持続時間を長くする。
電池の電圧は、内部抵抗などの影響により印刷開始前と印刷中では異なるため、印刷開始前と印刷中について電圧を計測し、この値を用いてラインごとに同時最大駆動ドット数を変更する。
そして、本実施の形態の携帯端末は、電池の温度と電圧の高低の組合せにより、より細かな同時駆動ドット数の設定を行い、印刷ドットを間引かずに、電池持続時間の長期化と印刷速度の高速化などの両立を図る。
【0010】
(2)実施の形態の詳細
図1は、本実施の形態の携帯端末の全体を示した斜視図である。本実施の形態の携帯端末1は、一例として、クレジットカード決済端末とする。
携帯端末1は、縦長の直方体状に形成され、上面には入力部6、及び表示部24が形成されている。
入力部6には、テンキーや機能キーなどからなるキー5が配置されており、ユーザは、キー5によって決済金額やコマンド、その他の情報を入力することができる。
表示部24は、例えば、液晶ディスプレイなどによって構成された表示パネル7を備えており、「カードを挿入して下さい」などのユーザに対する操作指示や、決済金額、その他の情報を表示するようになっている。
【0011】
入力部6の手前側には、磁気カードスロット部21が形成されている。磁気カードスロット部21は、磁気ストライプが形成された磁気カードを挿入する溝8が有している。
溝8の内部には、図示しない磁気ヘッドが形成されており、磁気カードを溝8に挿入してスライドさせると、磁気ストライプに記録されたデータが磁気ヘッドによって読み取られる。
【0012】
携帯端末1の手前端部の下部には、ICカード挿入口11を有するICカードスロット部23が形成されている。
ICカードスロット部23の内部には、図示しない接触端子が設けられており、ICカード挿入口11から挿入したICカードの接触端子と、ICカードスロット部23内部の接触端子が接触することにより、携帯端末1とICカードとの間で情報の送受信が行われる。
【0013】
携帯端末1の右側面には、電池パック取付部12が形成されている。電池パック取付部12の内部には、携帯端末1を駆動する電源である電池(バッテリ)が格納され、電池の電極が携帯端末1に接続されている(電池装着手段)。
この電池は、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池(充電が可能な電池)などの電池パックによって構成されている。
なお、これは一例であって、例えば、アルカリイオン電池などの一次電池(充電を行わないもの)を用いてもよい。
【0014】
携帯端末1の奥側端部には、プリンタ部9が形成されている。
プリンタ部9は、開閉可能なペーパーカバー4によって覆われており、内部にはロール状に巻かれた感熱紙が収納されている。
ペーパーカバー4の手前端部には印刷を終えた感熱紙を排出する隙間10が設けられている。隙間10の縁には図示しないペーパーカッターが設けられており、ユーザが排出された感熱を切断できるようになっている。
ロールから隙間10に至る感熱紙の経路には、図示しないサーマルヘッドと、感熱紙をフィードするフィード機構(感熱紙供給手段)が設けられている。サーマルヘッドについては後ほど詳細に説明する。
【0015】
図2は、携帯端末1のハードウェア的な構成を模式的に表したブロック図である。
携帯端末1は、CPU(Central Processing Unit)31に、機能部群32、電圧検出回路33、電池34、温度検出回路35、サーミスタ36、プリンタ制御CPU37、プリンタモジュール38などがバスラインで接続することにより構成されている。
【0016】
CPU31(メインCPU)は、所定のプログラムに従って各種情報処理や携帯端末1の制御などを行う中央処理装置である。
機能部群32は、携帯端末1にクレジットカード決済端末としての機能を発揮させる各種の機能部から成り、携帯端末1のプリンタ制御に直接的に関わらないものをまとめて図示したものである。
電池34は、電池パック取付部12(図1)に格納された充電池であり、直流電源として機能している。
また、電池34は、図示しない充電回路に接続されており、放電した後充電して再利用することが可能である。
【0017】
電圧検出回路33は、電池34の直流電圧を検出する回路であり(計測手段)、CPU31が電池34の電池残量を計測するのに用いられる。
このように、電圧検出回路33は、電池34の電圧を検出する計測手段として機能している。
電圧検出回路33は、CPU31から電圧検出要求を受信すると、電池34の電圧をデジタル信号に変換してCPU31に送信する。
このように、本実施の形態では、電池34の電圧により電池34の電池残量を計測するが、他の方法によって計測するように構成してもよい。
【0018】
サーミスタ36は、例えば、熱伝導シリコンなど用いて電池34に密着しており、電池34の温度に応じた電気抵抗値を示す。
温度検出回路35は、CPU31から温度検出要求を受信すると、サーミスタ36の抵抗値を温度にデジタル変換してCPU31に送信する。
このように、温度検出回路35は、電池34の温度を計測する計測手段として機能している。
【0019】
プリンタモジュール38は、サーマルヘッドや感熱紙のフィード機構などを用いて構成されている。
プリンタモジュール38は、プリンタ制御CPU37からの信号に基づいてサーマルヘッドの発熱体を発熱させたり、感熱紙をフィードしたりする。
【0020】
プリンタ制御CPU37(印刷用CPU)は、印刷指令をCPU31から受信し、これに基づいてプリンタモジュール38を駆動する。
印刷指令には、1行分の印刷データと、当該印刷データを分割印刷する際のドット設定などが含まれている。また、分割印刷せずに、一括印刷せよとの印刷指令もある。
ドット設定は、一度に発熱させる発熱体の最大数(同時駆動ドット数の最大値)を規定する指令であって、本実施の形態では、一例として、16ドット設定、32ドット設定、48ドット設定、及び64ドット設定が可能である(発熱体数設定手段)。
例えば、ドット設定として16ドットが設定されている場合、プリンタ制御CPU37は、同時に発熱させる発熱体の数が16ドット以内となるように印刷データを分割してプリンタモジュール38に分割印刷させる(印刷手段)。
【0021】
後ほど図9で示す実験結果で示すように、電池温度の高温側ではドット数が多い方が電池34の持続時間が長く、電池温度の低温側ではドット数が少ない方が電池34の持続時間が長くなるという性質がある。
これは、低温では電池34の内部抵抗が上昇するため、ドット数を多く設定して電流を多く流すと、内部抵抗による電圧降下が大きくなるためである。
そのため、本実施の形態では、携帯端末1を、電池34の温度に閾値を設定し、この閾値よりも電池34の温度が高い場合はドット数が多く、この閾値よりも電池34の温度が低い場合はドット数が少なくなるようにドット設定するように構成した。
【0022】
本実施の形態では、温度の閾値として10[℃]を採用し、この温度を基準として電池34の温度の高低を判断することとした。
後ほど図9で示すように、本実施の形態の電池34の場合、10[℃]より高温側では、ドット設定数が大きい方が電池34の持続時間が長くなり、10[℃]より低温側では、ドット設定数が小さい方が電池34の持続時間が長くなり、10[℃]で電池34の持続時間がほぼ等しくなる。
なお、この温度の閾値は一例であって、電池34の性質やサーマルヘッドの規格など、様々な要因により変化する。
【0023】
一方、ドット設定数が大きいと印刷速度は速くなるが電池34が消耗し、ドット設定数が小さいと電池34の消耗は小さいが印刷速度が遅くなるという関係がある。
また、電池34の電圧が低くなった場合、ドット設定数を小さく設定することによりピーク電流値を抑えて印刷を持続することが可能となる。
そのため、本実施の形態では、電池34の電圧に閾値を設け、この閾値よりも電圧が大きい場合はドット設定数を多く、この閾値よりも電圧が低い場合はドット設定数を小さく設定するように構成し、印刷速度と電池34の持続時間の長期化を両立させる。
【0024】
更に、本実施の形態では、印刷していない場合と、印刷している場合のそれぞれについて電圧の閾値を設定し、一例として、印刷していない場合は7.6[V]を、印刷中の場合は7.3[V]を閾値とした。
これは、電池34の内部抵抗や使用回数による劣化などにより、負荷状態での電圧は無負荷状態よりも低くなる特性があるためである。
【0025】
なお、この電圧の閾値は一例であって、電池34の性質やサーマルヘッドの規格など、様々な要因により変化する。
CPU31は、印刷開始後にも、1ラインごとに(複数ラインでもよい)電池34の電圧を検出し、実駆動に合った最大駆動ドット数にドット設定を変更することによって、瞬断などの無い、より安定した印刷を行う。
【0026】
以上、本実施の形態では、電池34の温度と電圧に閾値を設けたが、これによって温度と電圧の組合せは、(温度高、電圧高)、(温度高、電圧低)、(温度低、電圧高)、(温度低、電圧低)の4つが存在する。
後にフローチャートで説明するが、本実施の形態では(温度高、電圧高)の場合は64ドット、(温度高、電圧低)の場合は48ドット、(温度低、電圧高)の場合は32ドット、(温度低、電圧低)の場合は16ドットにドット設定を行う。
このようにドット設定を行うことにより、印刷速度をなるべく速く保ちながら電池34の持続時間を長くすることができる。
【0027】
なお、電圧による判断は行わず温度によってドット設定を行ったり、あるいは、温度による判断は行わずに電圧によってドット設定を行うように構成することもできる。
温度によってドット設定する場合は、高温側でドット数を大きく、低温側でドット数を小さく設定すると電池34の持続時間を長くすることができる。
また、電圧によってドット設定する場合は、高圧側でドット数を大きく、低圧側でドット数を小さく設定すると、印刷速度をなるべく早く保ちながら電池34の持続時間を長くすることができる。
【0028】
図3は、機能部群32(図2)のハードウェア的な構成を模式的に表したブロック図である。
ROM(Read Only Memory)は、制御プログラムや処理データが格納されるメモリである。
SDRAM(Synchronous DRAM)は、プログラムのワークエリアとして、一時的にデータやプログラムが格納されるメモリである。
SRAM(Static Random Access Memory)は、セキュリティデータなどが格納されたメモリである。
【0029】
RTC(Real Time Clock)は、時刻、年月日を計時する時計、カレンダ用のIC(integrated circuit)である。SRAMとRTCは、副電池によってバックアップされている。
【0030】
キーボードは、携帯端末1の操作や金額情報、暗証番号情報などを入力するためのボタンなどから構成されており、キー5(図1)を備えている。
ブザーは、キー入力時や、正常動作、エラー動作などをユーザに音によって通知するデバイスである。
RS232Cドライバは、内部信号の電気レベルをRS232C通信の電気レベルに変換、又は逆変換するためのデバイスである。
外部コネクタは、外部機器とRS232C通信するためのケーブルを接続するコネクタである。
【0031】
CF IF(CompactFlash Interface)は、コンパクトフラッシュ(登録商標)規格のインターフェースコネクタである。
通信カードは、コンパクトフラッシュ(登録商標)規格のインターフェースをもつ通信カードをCF IFに接続し、外部サーバなどとデータ通信するためのデバイスである。
LCD(Liquid Crystal Display)モジュールは、操作メニューなどを表示するユーザインターフェースとしての表示モジュールであり、表示パネル7(図1)を備えている。
【0032】
磁気カードリーダは、クレジットカード、キャッシュカードなどの磁気記録データを磁気ヘッドによって読み取るモジュールであり、磁気カードスロット部21を備えている。
復調ICは、磁気カードリーダから出力されたアナログ信号をCPU31で読むためのデジタル信号に変換するデバイスである。
図示しないが、この他に、機能部群32は、ICカードにリードライトを行うリーダライタなどを備えている。
【0033】
図4は、サーマルヘッドの外観を示した図である。
サーマルヘッドには、384ドット分の(即ち384個の)発熱体41、41、・・・が直線上に等間隔で配列されている。発熱体41の1つが1ドットに対応する。
発熱体41の配列のピッチは、0.125[mm]であり、発熱体41の配列の幅は48[mm]である。また、印刷密度は、8ドット/mmである。
各発熱体41は、プリンタ制御CPU37によって個別に発熱させることができる。そして、発熱体41を感熱紙に当接させて発熱させると感熱紙の加熱された部位が発色し、感熱紙に印刷がなされる。
【0034】
図5は、プリンタ制御CPU37が、ドット設定に従って発熱体41を発熱させ、印刷データを分割印刷する手順を説明するための図である。
ここでは、説明を容易にするためCPU31がプリンタ制御CPU37に4ドット設定を指令したものとする。
【0035】
プリンタ制御CPU37は、CPU31から送信されてくる印刷データによって、発熱体41を発熱させるか否かをサーマルヘッドの一端側から判断し、発熱させる発熱体41が4個となったところでこれらを同時に発熱させる。
プリンタ制御CPU37は、この動作をサーマルヘッドの他端側まで繰り返し、他端側に4ドット未満の端数があった場合はこれを最後に同時に発熱させて1行分を印刷する。
【0036】
また、プリンタ制御CPU37は、CPU31から一括印刷を指令された場合は、分割制御を行わずに、印刷データに従って発熱させる発熱体41を全て同時に発熱させる。
このように、プリンタ制御CPU37は、1行の印刷データを複数回に分けて分割印刷する機能と、一括印刷する機能を備えている。
【0037】
図5の例では、プリンタ制御CPU37は、N行目(Nは自然数)の印刷に対し、第1回目にサーマルヘッドの端部から4個分の発熱体41を発熱させ、第2回目に隣接する4個の発熱体41を発熱させ、同様に(最終回−1)回まで、発熱体41を4個ずつ、サーマルヘッドの他端側にかけて発熱させていく。
発熱させる発熱体41の総個数が4で割り切れない場合、プリンタ制御CPU37は、端数分の発熱体41を最終回に発熱させる。
プリンタ制御CPU37は、このようにしてN行目の印刷を終えると、N+1行目に対して、同様に4個ずつの発熱体41を順次発熱させていく。
【0038】
一般に、プリンタ制御CPU37は、指令されたドット設定がMドットの場合(Mは自然数)、サーマルヘッドの一端側から他端側にかけて、発熱体41を発熱させるか否かを印刷データに従って判断し、発熱させる発熱体41の個数がM個に達すると、これらを同時に発熱させる。
即ち、Mドットを超えない範囲で物理ブロックをまとめることで、物理ブロックごとに分割印刷する。
【0039】
以上のように構成された携帯端末1で感熱紙に印刷する手順を図6のフローチャートを用いて説明する。
キー5操作などによって、印刷が指示されると、CPU31は、電圧検出回路33に電池34の電圧計測を要求し、電池34の電圧を検知する。
更に、CPU31は、温度検出回路35に電池34の温度計測を要求し、電池34の温度を検知する(ステップ5)。
【0040】
次に、CPU31は、検知した温度と電圧の組合せにより、サーマルヘッドの印刷ドット数を、16ドット、32ドット、48ドット、64ドットの何れに設定するか判断する。なお、電圧が終止電圧(充電を要する電圧)の場合、CPU31は、印刷処理を中止し、充電警告を発するかを判断する。
本実施の形態では、一例として終止電圧を電池34の無負荷時(即ち、印刷していないときの電圧)で7.3[V]とする。
【0041】
ステップ5で検知した電圧が終止電圧(7.3[V])以下の場合、CPU31は、印刷処理を中止し、表示パネル7やブザーなどによって充電警告を発する(ステップ30)。
ステップ5で検知した電圧が7.3[V]より大きく7.6[V]以下であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以下の場合、CPU31は、16ドット設定を選択する(ステップ10)。
ステップ5で検知した電圧が7.6[V]以上であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以下の場合、CPU31は、32ドット設定を選択する(ステップ15)。
【0042】
ステップ5で検知した電圧が7.3[V]より大きく7.6[V]以下であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以上の場合、CPU31は、48ドット設定を選択する(ステップ20)。
ステップ5で検知した電圧が7.6[V]以上であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以上の場合、CPU31は、64ドット設定を選択する(ステップ25)。
【0043】
このように、CPU31は、温度の閾値を10[℃]、無負荷時の電圧の閾値を7.6[V]として、温度の高低と電圧の高低の組合せが(10[℃]以上、7.6[V]以上)、(10[℃]以上、7.3〜7.6[V])、(10[℃]以下、7.6[V]以上)、(10[℃]以下、7.3〜7.6[V])の4通りの何れであるか判断し、これによってドット設定を選択する。
【0044】
次に、CPU31は、印刷データを用いて1ラインドット数をカウントする(ステップ35)。
即ち、CPU31は、プリンタ制御CPU37に1行ずつ印刷データを送信して印刷させるが、このステップで、CPU31は、これからプリンタ制御CPU37に印刷させる1行のドット数を計数する。
【0045】
1ラインドット数が0ドットであった場合(ステップ;0ドット)、CPU31は、プリンタ制御CPU37に指令して感熱紙をフィードさせ、ステップ85に移行する(ステップ50)。
このように空白行をフィードすることにより、プリンタ制御CPU37が印刷データを分割印刷するための処理を行う必要がなくなり、印刷処理を高速化することができる。
【0046】
ステップ25で64ドットに設定されている場合、CPU31は、1ラインドット数のカウント数が64ドット未満か否かを判断する(合計個数判断手段)。
判断が64ドット未満であった場合、即ち、設定されたドット数が64ドットでかつ印刷するドット数が64未満であった場合(ステップ35;64ドット設定時かつカウント数が64ドット未満)の場合、CPU31は、プリンタ制御CPU37に印刷データを分割無しで一括印刷するように指示する(ステップ40)。
【0047】
この場合、プリンタ制御CPU37は、分割印刷するための処理を行わずに印刷データに従って発熱させる発熱体41を発熱させればよく、印刷処理を高速化することができる。
なお、本実施の形態では、一括印刷を64ドット設定時に判断したが、例えば、48ドット設定で1ラインのドット数が48未満の場合に一括印刷させるなど、一括印刷させるための条件は各種可能である。
【0048】
一方、1ラインドット数のカウント数が0でなく、かつ、64ドット設定でカウント数が64ドット未満でない場合(ステップ35;その他)、CPU31は、印刷に係る1行分の印刷データと選択したドット設定をプリンタ制御CPU37に通知し、プリンタ制御CPU37に分割印刷を指示する(ステップ45)。
【0049】
プリンタ制御CPU37は、ステップ45によりCPU31から分割印刷を指示されると、指示に従い印刷データを分割印刷し、また、ステップ40により分割無しでの印刷を指示されると印刷データを分割しないで印刷する(ステップ55)。
一方、CPU31は、負荷時の電池34の電圧、即ち、プリンタ制御CPU37がサーマルヘッドの発熱体を発熱させて印刷している際の電池34の電圧を電圧検出回路33により検知する(ステップ60)。
【0050】
次のステップで、CPU31は、当該負荷時の電圧を用いて再度ドット設定を選択するが、この際に使用する温度はステップ5で検知したものを用いる。これは、印刷中に電池34の温度が急激に変化することは無いためである。
なお、電圧と同様に、電池34の温度も印刷中に計測するように構成することもできる。
【0051】
ステップ60で検知した電圧が7.0[V]より大きく7.3[V]以下であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以下の場合、CPU31は、16ドット設定を選択する(ステップ65)。
ステップ60で検知した電圧が7.3[V]以上であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以下の場合、CPU31は、32ドット設定を選択する(ステップ70)。
【0052】
ステップ60で検知した電圧が7.0[V]より大きく7.3[V]以下であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以上の場合、CPU31は、48ドット設定を選択する(ステップ75)。
ステップ60で検知した電圧が7.3[V]以上であり、かつ、ステップ5で検知した温度が10[℃]以上の場合、CPU31は、64ドット設定を選択する(ステップ80)。
ステップ5では、電圧の閾値が7.6[V]であったが、ステップ60では、電圧降下を考慮して7.3[V]としてある。
【0053】
次に、CPU31は、残ライン数があるか否か(即ち、まだ印刷していない印刷データがあるか否か)を確認し、残ライン数がある場合は(ステップ85;Y)、ステップ35に戻って印刷を続行する。
そして、ステップ55で印刷した次の行では、ステップ60での電圧値を用いたドット設定がなされる。
一方、残ライン数が無い場合(ステップ85;N)、CPU31は、印刷を終了する。
【0054】
次に、図7を用いてステップ55の印刷処理について説明する。
プリンタ制御CPU37は、印刷指示を受信する(ステップ100)。印刷指示には1行分の印刷データと、ドット設定、又は分割無し指令などの情報が含まれている。
印刷指示が分割無しの場合(ステップ105;N)、プリンタ制御CPU37は、分割処理をせずに発熱させる発熱体41を同時に発熱させる。
一方、印刷指示でドット設定がなされている場合、プリンタ制御CPU37は、ドット数の設定に従って、サーマルヘッドの一端側から他端側にかけて、分割印刷する(ステップ110)。
【0055】
図8の各図は、電池34の温度によって同時最大駆動ドット数を変更した場合の処理回数(サンプル印刷物を印刷した回数)を比較したグラフであり、平均電圧対処理回数を表している。
図8(a)は、電池34の温度が25[℃]の場合であり、図8(b)は、電池34の温度が10[℃]の場合であり、図8(c)は、電池34の温度が−10[℃]の場合である。
グラフ中の実線は64ドット分割印刷を行った場合を示しており、波線は16ドット分割印刷を行った場合を示している。
【0056】
図8(a)に示したように、電池34の温度が25[℃]の場合は、平均電流としては16ドット設定の分割印刷の方が大きいため、16ドットの方が処理回数が小さくなる。
図8(b)に示したように、電池34の温度が10[℃]の場合は、両ドット設定とも処理回数は25[℃]の場合よりも少なくなり、かつ、両ドット間の処理回数差は小さく、ほぼ同じになる。
図8(c)に示したように、電池34の温度が−10[℃]の場合は、電池34の内部抵抗が大きくなるため、印刷時の電流負荷による電圧降下が大きくなる。
そのため、16ドット設定の方が64ドット設定よりも処理回数が大きくなる。
このように、10[℃]を閾値として、電池34が高温の場合は、高ドット数、低温の場合は低ドット数で印刷することによって、電池34の電池持続時間を長く(処理回数を多く)することができる。
【0057】
図9の各図は、電池34の残容量によって、同時最大印刷ドット数を変更した場合のグラフであって、電池34の電圧対処理回数を表している。
実線は、印刷動作以外時(印刷処理を行っていないとき)を示しており、波線は印刷動作時を示している。電池34の温度は何れも25[℃]である。
終止電圧は、印刷できなくなる電圧であり、本実施の形態では7.0[V]としている。
【0058】
図9(a)は、64ドット設定時のグラフであり、図に示したように、実線、波線共に処理回数が増えるに従って電圧が低下してくる。そして、n1回印刷した時点で、波線が終止電圧となり、n1回で印刷ができなくなる。
図9(b)は、48ドット設定時のグラフであり、n2回で終止電圧となり、印刷できなくなる。電圧降下が64ドットのときよりも小さいため、印刷できなくなるまでの処理回数n2はn1よりも大きくなる。
【0059】
図9(c)は、7.6[V]以上では64ドット設定とし、7.6[V]未満では48ドット設定とした場合を示している。
比較的大きなドット数での印刷を保ちつつ、処理回数を図9(a)の場合よりもn回増やすことができる。
【0060】
印刷時はサーマルヘッドを駆動するための負荷が大きいため、電池34の内部抵抗により電圧降下が生じる。
48ドット設定の場合よりも64ドット設定の場合の方が負荷が大きいため、64ドット設定の方が電圧降下が大きくなる。
そこで、ある閾値電圧を下回ったところで、印刷ドットの設定値を小さくすることにより、印刷の処理回数を増やすことができる。
図9の各グラフは電池温度が25[℃]の場合であるが、−10[℃]の場合でもドット数の設定値が大きい方が電圧降下が大きくなる。
【0061】
図10の各図は、1回の印刷処理での負荷を示したグラフである。
図10(a)は、64ドット設定時のものであり、図10(b)は16ドット設定時のものである。
図の基準電流とは、印刷以外の用途で携帯端末1で消費する電流である。
64ドット設定時は、印刷時の最大電流(印刷電流)は大きいが、その分印刷時間が短い。
16ドット設定時は、印刷時の最大電流は小さいが、その分印刷時間が長くなる。
このように、電池34の電圧が低下して電流供給能力が低下した場合、64ドットでは印刷できなくても、16ドットにドット設定を下げることにより印刷を続行することができる。
【0062】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)電池の温度、電圧によって電池の特性が変化するが、これらを計測して、これらに適した同時駆動ドット数を設定することができる。
(2)印刷速度の高速化と、電池持続時間の長期化の両立を図り、印刷中断の無いプリンタ制御が可能となる。
(3)印刷中に電圧を計測して、ラインごとに同時駆動ドット数を設定することができる。
(4)電池駆動型の携帯端末において、電池の温度や電圧によって、プリンタの最大同時駆動ドット数を変更することなどによって、電池の持続時間の向上と、印字速度の向上させ、印字中断のないシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の形態の携帯端末の全体を示した斜視図である。
【図2】携帯端末のハードウェア的な構成を模式的に表したブロック図である。
【図3】携帯端末の各種機能部群を説明するための図である。
【図4】サーマルヘッドの外観を示した図である。
【図5】分割印刷の手順を説明するための図である。
【図6】印刷手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】印刷処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】温度によって同時最大駆動ドット数を変更した場合の処理回数を比較したグラフである。
【図9】電池の残容量によって同時最大印刷ドット数を変更した場合のグラフである。
【図10】1回の印刷処理での負荷を示したグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1 携帯端末
31 CPU
32 電源スイッチ検出部
33 電圧検出回路
34 電池電圧監視回路
35 温度検出回路
37 プリンタ制御CPU
38 照度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱体を配列して構成されたサーマルヘッドと、
感熱紙を前記サーマルヘッドに供給する感熱紙供給手段と、
電池を装着する電池装着手段と、
前記装着した電池の電圧、又は温度の少なくとも一方を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測した計測値を用いて同時に発熱させる前記発熱体の個数を設定する発熱体数設定手段と、
前記設定した個数の単位毎に印刷データを分割し、当該分割単位で順次前記発熱体を発熱させて前記供給された感熱紙に印刷する印刷手段と、
を具備したことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記計測手段は、前記印刷手段が前記発熱体を発熱させている際の値を計測することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記発熱体数設定手段は、メインCPUにより実現されており、
前記印刷手段は、印刷用CPUにて実現されており、
前記メインCPUから前記印刷用CPUへは、前記設定した発熱体の個数と、印刷データが伝達され、前記印刷手段は、前記伝達された発熱体の個数と印刷データを用いて前記発熱体を発熱させることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記メインCPUは、1行の印刷で発熱させる発熱体の合計個数が前記設定した個数以下か否かを判断する合計個数判断手段を具備し、
前記合計個数が前記設定した個数以下の場合、前記メインCPUは、前記印刷用CPUに対して、前記印刷手段に、印刷データを分割せずに、発熱させる発熱体の全てを同時に発熱させることを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
1行の印刷で発熱させる発熱体の個数が零である場合、前記印刷手段は、前記発熱体を発熱させず、かつ、前記感熱紙供給手段は感熱紙を1行分送ることを特徴とする請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−80696(P2008−80696A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264540(P2006−264540)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(304048735)エスアイアイ・データサービス株式会社 (126)
【Fターム(参考)】