説明

携帯通信端末

【課題】利用者が希望したデータのダウンロード等を受信状態が良好な場所において自動的に開始することにより、ダウンロードを行う間、利用者の時間を束縛しない携帯通信端末を提供する。
【解決手段】端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、CPU9は、利用者から入力されたダウンロード予約情報をメモリ21に記憶し、予測下りデータ通信速度、又は所定の期間における予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が、予め設定されているデータ通信開始閾値以上となった場合に、ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、予測した下りデータ通信速度を基地局へ通知することにより、基地局が予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の高速無線通信方式としてcdma2000 1x-EV DO方式が開発されている。
上記cdma2000 1x-EV DO方式は、Qualcomm社によるcdma2000 1xの拡張方式であるHDR(High Data Rate)方式を標準化した方式として、電波産業界ARIBにおいてStd.T-64 1S-2000 C.S.0024“cdma2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification"で標準化されているもので、現在国内ではKDDI社によりサービスされているcdmaOne方式(国内ではARIB T-53、北米、韓国等ではEIA/TIA/IS-95等)を拡張し、第3世代方式(3G)に対応させたcdma2000 1x方式を更にデータ通信に特化して通信速度を改善することを目的とした方式である。
なお、cdma2000 lx-EV DOにおいて、EVはEvolution、DOはData onlyの意である。
【0003】
cdma2000 1x-EV DO方式では、携帯通信端末から受信した受信状態を通知する情報に基づいて、基地局が当該端末へ送信するデータの変調方式を切り替えることにより、当該端末の受信状態が良好な時は誤り耐性が低いが高速な通信レート、受信状態が悪いときは低速だが誤り耐性の高い通信レートを使用することが可能となる。
【0004】
また、cdma2000 1x-EV DO方式の下り方向(基地局から携帯通信端末への方向)では、時間を1/600秒単位で分割し、その時間内では一つの携帯通信端末だけとの通信を行い、通信相手の携帯通信端末を時間により切り替えることにより複数の携帯通信端末と通信を行う、時分割多重アクセス(TDMA;time division multiplex access)を採用している。
これにより、常に、個々の携帯通信端末に対して最大の電力を持ってデータ送信を行うことが可能となり、携帯通信端末間で行うデータ通信を最速の通信速度で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述したcdma2000 1x-EV DO方式は、基地局から携帯通信端末への方向のデータ通信速度が携帯通信端末における受信状態(例えば受信電界強度、搬送波対干渉比=CIR)によって、大きく変化するという特性を有している。
例えば、携帯通信端末の受信状態が最も良好なときであれば通信速度2.4Mbpsでのデータ通信が可能となるが、受信状態が悪いときでは数10kbps程度にまでデータ通信速度が低下してしまう。
そして、携帯通信端末での受信状態が悪く、低い下りデータ通信速度しか得られないような状況で比較的大きな容量のデータのダウンロードを開始してしまうと、以下に示すような問題が生じる。
【0007】
まず、第1に、データダウンロード終了までに長い時間要するため、利用者はその間、時間を束縛されることとなり、十分なサービスを行える環境を提供することができない。
第2に、通信時間が長くなるため通信費が高額になってしまう。
第3に、ダウンロードを行っている期間は、CPU(中央処理装置)処理能力の一部がデータ通信の処理に割かれることになり、キー入力等の利用者操作に対する反応が遅くなる。
【0008】
第4に、RF部を有する携帯通信端末の消費電流はRF部での消費電流が支配的であり、RF部での消費電流はデータ通信速度よりもRF部が起動している時間に大きく依存するため、低いデータ通信速度で長時間データ通信を行う場合は、高いデータ通信速度で短時間に行う場合に比べ、電力の消費が大きくなってしまう。
第5に、通信網側から携帯通信端末へ動画データや音楽データをダウンロードしながら、端末での再生も並行して行う(動画や音楽のストリーミング再生)ようなサービスを受ける場合には、所定値以上の下りデータ通信速度が必要とされるが、この時、必要とされる下りデータ通信速度が得られない場合には、画質、音質の低下や動画停止、音の途切れ等の影響が考えられ、十分なサービス品質が得られない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、利用者が希望したデータのダウンロード等を受信状態が良好な場所において自動的に開始することにより、ダウンロードを行う間、利用者の時間を束縛しない携帯通信端末を提供することである。
また他の目的は、利用者が希望したデータのダウンロードを行うのに、良好な電波状態が確保できた場合に、その旨を利用者に通知し、ダウンロードの開始を促すことにより、常に最適なデータ通信の環境下でデータのダウンロードを可能とする携帯通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、ダウンロードを希望するデータの情報をダウンロード予約情報として記憶する記憶手段と、前記予測下りデータ通信速度、又は所定の期間における前記予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が予め設定されているデータ通信開始閾値以上であるかを判断する判断手段と、前記予測した下りデータ通信速度、又は前記平均予測下りデータ通信速度が前記閾値以上であった場合に、前記ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始するダウンロード開始手段とを具備することを特徴とする携帯通信端末を提供する。
【0011】
このような構成によれば、携帯通信端末利用者はダウンロードしたいデータ量が比較的大きくダウンロードに時間がかかりそうな場合、ダウンロードしたいデータ量はそれ程多くはないが受信状態が悪くダウンロードに時間がかかりそうな場合、すぐには必要のないデータをダウンロードする場合等に、ダウンロードを希望するデータの情報(例えば、接続先アドレス等)と、そのデータをダウンロードする際の希望下り方向のデータ通信速度を予め携帯通信端末に設定する。
かかる操作が行われると、当該携帯通信端末は、入力されたこれらの情報をダウンロード予約情報として記憶する。
そして、携帯通信端末における基地局信号の受信状態が、利用者の移動等により改善され、予め設定されたデータ通信開始閾値以上となった場合に、自動的にデータダウンロードを開始する。
【0012】
このように、通信状態が良好であるときに予約したデータのダウンロードが自動的に行われるため、利用者はデータのダウンロードに自己の時間を束縛されることなく、ダウンロード終了を待つストレスから開放される。
また、利用者が端末を利用していないときにダウンロードを行う可能性が高いため、CPU(中央処理装置)処理能力の一部がデータ通信の処理に割かれ、キー入力等の利用者操作に対する反応が遅くなる等の問題を解消することができる。
また、常に受信状態が良好な場合においてデータのダウンロードを実行するため、データダウンロードの時間を短縮することができ、通信費用及び消費電力の削減を図ることが可能となる。
また、常に好適な環境においてデータ通信を行うことが可能となることから、動画や音楽のストリーミング再生のようなサービスを受ける場合でも、画質、音質の低下や動画停止、音の途切れ等の影響を解消し、十分なサービス品質を得ることができるという効果が得られる。
なお、上述の判断手段、ダウンロード開始手段は、後述の実施形態においては、CPUがROMに格納されているプログラムを実行することにより行う。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明は、端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、ダウンロードを希望するデータの情報をダウンロード予約情報として記憶する記憶手段と、前記予測下りデータ通信速度又は所定の期間における前記予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が予め設定されているデータ通信開始閾値以上であるかを判断する判断手段と、前記予測した下りデータ通信速度、又は前記平均予測下りデータ通信速度が前記閾値以上であった場合に、ダウンロード開始の条件を満たした旨を通知する通知手段と、利用者からダウンロード開始の指示がなされたか否かを検出する検出手段と、前記ダウンロード開始の指示があった場合に、前記ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始するダウンロード開始手段とを具備することを特徴とする携帯通信端末を提供する。
【0014】
このような構成によれば、携帯通信端末利用者はダウンロードしたいデータ量が比較的大きくダウンロードに時間がかかりそうな場合、ダウンロードしたいデータ量はそれ程多くはないが受信状態が悪くダウンロードに時間がかかりそうな場合、すぐには必要のないデータをダウンロードする場合、動画、音楽のストリーミング再生型配信サービスの利用などで良好な受信状態でのデータ通信が要求される場合等に、ダウンロードを希望するデータの情報(例えば、接続先アドレス等)と、そのデータをダウンロードする際の希望下り方向のデータ通信速度を予め携帯通信端末に設定する。
係る操作が行われると、携帯通信端末は、入力されたこれらの情報をダウンロード予約情報として記憶する。
そして、携帯通信端末における基地局信号の受信状態が、利用者の移動等により改善され、予め設定されたデータ通信開始閾値以上となった場合に、利用者に対して、ダウンロードに適切な通信状態になった事をアラーム音などにより知らせ、データダウンロードの開始を促す。
これにより、通信網側から携帯通信端末へ動画データや音楽データをダウンロードしながら、端末での再生も並行して行う(動画や音楽のストリーミング再生)ようなサービスを受ける場合に必要とされるデータ通信速度が得られる環境となったことを旨を通知してくれるので、利用者は、常に安定した品質の動画や音楽のストリーミング再生を楽しむことができる。
【0015】
また、本発明の携帯通信端末において、データ通信開始閾値は、ダウンロードするデータの属性に応じて個々に設定されることを特徴とする。
これにより、データ量の大小或いは、データの属性例えば音声データであるのか、通信データであるのか、ストリーミング再生サービスであるのか等のダウンロードするデータの属性に合わせて、それぞれデータ通信開始閾値を設定することができるので、各データによって最適と考えられているデータ通信速度を超えた場合にのみ、データ通信を開始するので、効率よくデータのダウンロードを行うことが可能となる。
【0016】
また、上記発明によれば、予約設定された時刻からの経過時間を計時する計時手段と、前記ダウンロードが開始した時点で前記経過時間の計時をリセットするリセット手段と、前記経過時間が予め設定されている制限時間を超えたか否かを判断する制限時間判断手段と、前記経過時間が前記制限時間を超えた場合に、その旨を通知する第2の通知手段とを更に備えることを特徴とする。
これにより、ある一定期間にダウンロードを行われなかった場合でも利用者はその旨を把握することができるので、その時の状況に応じて、再度予約をやり直したり、予約をキャンセルしたりすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の携帯通信端末によれば、利用者によって予約されたデータのダウンロードが、通信状態が良好であるときに自動的に行われる。
これにより、利用者はデータのダウンロードに自己の時間を束縛されることなく、ダウンロード終了を待つストレスから開放される。
また、利用者が端末を利用していないときにダウンロードを行う可能性が高いため、CPU(中央処理装置)処理能力の一部がデータ通信の処理に割かれ、キー入力等の利用者操作に対する反応が遅くなる等の問題を解消することができる。
また、常に受信状態が良好な場合においてデータのダウンロードを実行するため、データダウンロードの時間を短縮することができ、通信費用及び消費電力の低下を図ることが可能となる。
また、常に好適な環境においてデータ通信を行うことが可能となることから、動画や音楽のストリーミング再生のようなサービスを受ける場合でも、画質、音質の低下や動画停止、音の途切れ等の影響を解消し、十分なサービス品質を得ることができるという効果が得られる。
【0018】
また、本発明の携帯通信端末によれば、利用者によって予約されたデータのダウンロードを行う条件を満たす状態になった場合に、利用者に対して、ダウンロードに適切な通信状態になったことをアラーム音などにより知らせ、データダウンロードの開始要求を促す。
これにより、ダウンロード開始には必ず利用者の指示が必要となるため、利用者は、常にダウンロードの開始を認識することができる。
この結果、利用者は、動画や音楽のストリーミング再生のサービスを好適な環境で且つ安定した品質で受けることができる
また、本発明の携帯通信端末において、データ通信開始閾値は、ダウンロードするデータの属性に応じて個々に設定されることを特徴とする。
これにより、データ量の大小或いは、データの属性例えば音声データであるのか、通信データであるのか、ストリーミング再生サービスであるのか等のダウンロードするデータの属性に合わせて、それぞれデータ通信開始閾値を設定することができるので、各データによって最適と考えられているデータ通信速度を超えた場合にのみ、データ通信を開始するので、効率よくデータのダウンロードを行うことが可能となる。
【0019】
また、上記発明によれば、予約設定された時刻からの経過時間を計時する計時手段と、前記ダウンロードが開始した時点で前記経過時間の計時をリセットするリセット手段と、前記経過時間が予め設定されている制限時間を超えたか否かを判断する制限時間判断手段と、前記経過時間が前記制限時間を超えた場合に、その旨を通知する第2の通知手段とを更に備えることを特徴とする。
これにより、ある一定期間にダウンロードを行われなかった場合でも利用者はその旨を把握することができるので、その時の状況に応じて、再度予約をやり直したり、予約をキャンセルしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯通信端末の概略構成を示すブロック図である。
【図2】CIR−DRC変換テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るcdma2000 1x-EV DO方式を採用した携帯通信端末の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る携帯通信端末は、アンテナ1、共用器3、復調器5、変調器19からなるRF部と、復号器7、予測器11、CIR−DRC変換部13、マルチプレクサ(MUX;Multiplexer)15からなるベースバンド処理部と、CPU9、メモリ21、液晶ディスプレイ等からなる表示部23、キーパッド、キーボード等の操作部25を備えている。
また、当該携帯通信端末を無線モデムとして使用できるように、パーソナルコンピュータ(PC)29との外部インターフェース(例えばシリアルポート、パラレルポート、USB、blue-tooth、赤外線通信、10base-T LAN等)27を備えている。
【0022】
《cdma2000 1x-EV DO方式を採用した当該携帯通信端末の動作概要》次に、上記構成からなる携帯通信端末について、cdma2000 1x-EV DO方式を採用した動作概要を説明する。
携帯通信端末によって受信された基地局からの下りパイロット信号はアンテナ1、共用器3を経由して復調器5により復調される。
このとき、復調器5は、基地局から受信した受信信号の変調方式に対応する復調方式によって、ベースバンド帯域の受信信号から多重化信号を復調する。
なお、本実施形態においては、QPSK(quadriphase phase shift keying)、8PSK(8 phase shift keying)、16QAM(16 amplitude modulation)の3種のいずれかの復調方式によって復調を行う。
【0023】
復調器5によって復調された受信データは、復号器7へ出力され、復号器7によって復号処理される。
即ち、スペクトル拡散されている受信多重化信号をスペクトル逆拡散する。
ここで、自局に割り当てられた受信データ(例えば、通話相手からの通話信号やダウンロードを希望したデータ等)があった場合には、受信データは復号器7からCPU9へ出力される。
この受信データは、CPU9内において処理されるか、又はCPU9及び外部インターフェース27を経由して外部のPC等29へ送られる。
更に、復号器7は復号処理の過程において、Ec/Io(パイロット信号強度対全受信信号強度)を求め、以下に示す(1)式に基づいてCIR(搬送波対干渉比)を算出する。
CIR=(Ec/lo)/(1-Ec/lo)…(1)
上述の式に基づいて求められたCIRは、復号器7から予測器11に出力され、予測器11において、次の受信スロットタイミング(ここで、1スロットは1.66ms=1/600秒)におけるCIRの値が予測される。
ここでの予測の方法については、特に限定しないが、線形予測等の方法が例として挙げられる。
また、上記予測器11が何スロット後のCIRを予測すればよいかを指示する情報は、当該携帯通信端末の電源オン時に基地局から送信されてくる種々の制御信号に含まれている。
そして、予測器11によって求められた予測CIRは、続くCIR−DRC変換部13へ出力される。
【0024】
CIR−DRC変換部13は、図2に示すCIR−DRC変換テーブルに基づいて、予測CIRをDRC(Data Rate Control Bit)に変換する。
このDRCとは、予測CIRから期待される、当該携帯通信端末において所定の誤り率以下で受信可能な最高通信速度である。
ここで、図2に示したように、CIR−DRC変換テーブルには、基準CIRに対応するDRCが定義されている。
CIR−DRC変換部13は、入力された予測CIRが基準CIRであった場合には、そのCIRに対応するDRCをCPU9へ出力する。
一方、予測器11から入力された予測CIRが基準CIRでなかった場合には、入力された予測CIRに最も近い基準CIRに対応するDRCを取得するか、又は、入力された予測CIRに最も近い2値のCIRから補間することにより、補間したCIRに対応するDRCを取得する。
これにより、各予測CIRに応じたDRCを取得することができ、より正確な受信状態を利用者に対して通知することが可能となる。
【0025】
上述しように求められたDRCは、CIR−DRC変換部13からCPU9へ出力される。
DRCが入力されると、CPU9は、当該携帯通信端末において生成された、又は、外部のPC等29から外部インタフェース27を経由して入力された送信データがあるか否かを判断する。
そして、送信データがある場合には、CPU9は、上述したDRCと共にこの送信データをマルチプレクサ15へ出力する。
一方、送信データがない場合には、CIR−DRC変換部13から入力されたDRCをマルチプレクサ(MUX;Multiplexer)15へ出力する。
【0026】
CPU9から出力されたDRCや送信データは、マルチプレクサ15によって多重化され、符号化器17によって更に符号化され、変調器19によって特定の変調方式(例えば、QPSK)により変調され、共用器3及びアンテナ1を経由して基地局へ送信される。
基地局では、各携帯通信端末から受信したDRCに基づいて、次のスロットをどの携帯通信端末への送信に使用するか、及びその送信での通信速度(変調速度)を決定する。
【0027】
《第1の実施形態》次に、本発明の第1の実施形態に係る携帯通信端末の動作について説明する。
まず、利用者は、データのダウンロードを希望する場合、操作部25を操作することにより、データ通信に必要な接続先アドレスやダウンロードするデータ等の情報、ダウンロードを開始する際の閾値となるデータ通信開始閾値、及び、希望の下りデータ通信速度が可能となる受信状態が得られなかった場合に利用者にその旨を通知するための制限時間の設定を行う。
【0028】
係る操作により設定された予約ダウンロード情報は、操作部25からCPU9へ出力され、CPU9によりメモリ21の所定の格納エリアへ格納される。
なお、上述のデータ通信開始閾値の設定は、例えば100kbps単位等で段階的に設定可能にするとよい。
また、設定最大値の目安としては、cdma2000 1x-EV DO方式によれば、セクタあたり最大2.4Mbpsの下りデータ通信が可能であるが、移動状態でのセクタあたりの平均スループットは500〜700kbpsであるため、この程度の値に定めることが妥当である。
なお、携帯通信端末がノートPC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報機器と接続されて無線モデムとして使用される場合には、接続されている情報機器のキー等入力装置を用いて上記設定を行うようにしても良い。
【0029】
また、上述したようにCPU9には、CIR−DRC変換部13から所定期間毎にDRCが入力されている。
ここで、基地局下り信号の受信状態の良し悪しを表すCIR、及びCIRに基づいて決定されるDRCはいずれも1/600秒毎に求められ、CPU9に入力される。
CPU9は1/600秒毎に入力されるDRC(bps)と、メモリ21に格納されているデータ通信開始閾値とを比較する。
なお、1/600秒毎にこれらの比較を行ってもよいが、このようなタイミングで比較を行っても有効ではないため、即ちそれほど高速には受信状態は変化しないため、本実施形態では、もっと長い期間において取得したDRCを平均化し、平均化したDRCとデータ通信開始閾値とを比較する。
DRCの平均化は、以下に示す(2)式に基づいて求められる。
【0030】
DRC[平均]=(1-μ)DRC[1/600秒前の平均]+n・DRC[現在の値]…(2)
上記(2)式において、μは平均化の時定数で例えば0.00027(約5秒でそれまでの平均値の影響が半減する値)に設定されている。
なお、μの値が大きい程、最近の値の影響が大きくなり、μの値が小さい程、過去の値の影響が大きくなる。
即ち、μの値が大きい程、最近の値に対する反応、変化が反映され、μの値が小さい程、過去の値に対する反応、変化が反映される。
【0031】
CPU9は、上記(2)式に基づいてDRCを平均化すると、この平均DRCの値と、予め利用者によって設定されたデータ通信開始閾値とを比較し、平均DRCの値がデータ通信開始閾値以上であった場合に、その閾値が設定されているデータダウンロード予約を実行する旨を利用者に通知する。
この通知の手段としては、携帯通信端末の発音素子によるアラーム音発生や表示部23への文字やアニメーション表示、LED(Light-Emitting Diode)等の発光素子の点灯、振動素子(バイブレータ)の振動等の方法が例として挙げられ、これらを単独か組み合わせて使用し、利用者ヘダウンロード開始を通知する。
なお、これらの利用者ヘの通知方法の選択機能を携帯通信端末に備えることも可能である。
また、携帯通信端末がノートPCやPDA等の携帯情報機器と接続されて無線モデムとして使用される場合には、接続されている情報機器の発音素子、表示装置を用いても良い。
【0032】
そして、CPU9は、利用者ヘのダウンロード開始通知後、利用者によって設定された接続先とのデータ通信を開始し、データのダウンロードを開始する。
そして、ダウンロードが終了すると、上述と同様の方法により、ダウンロード終了を利用者へ通知する。
なお、利用者へのダウンロード開始、終了の通知は必須ではなく、利用者が希望しない場合等には省略するようにしてもよい。
【0033】
なお、上述の(2)式に基づいて算出されるDRCの値に代わって、例えば所定期間に取得したDRCの値を、単純に平均し、この平均DRCが連続して予め設定されている所定回数以上データ通信開始閾値を超えた場合に、ダウンロードを開始するようにしてもよい。
例えば、上述の所定期間を0.1秒間とした場合には、その期間内には60個のDRCが入力される。
CPU9は、この入力された60個のDRCの合計を求め、更にその合計を60で割ることによって平均DRCを求める。
そして、このようにして求めた平均DRCが、データ通信開始閾値を連続して所定回数(例えば20回)超えた場合に、ダウンロードを開始するように設定する。
【0034】
なお、データのダウンロード予約時に利用者から設定された制限時間内に希望の下りデータ通信速度が得られる状況にならなかった場合には、利用者に対して、制限時間タイムアウトを通知する。
この通知も、上述のダウンロード開始、終了と同様の手法によって行うことができる。
【0035】
《第2の実施形態》続いて、本発明の第2の実施形態に係る携帯通信端末の動作について説明する。
上述した第1の実施形態では、利用者によって設定された下りデータ通信速度が選られた場合に、CPU9は自動的にダウンロードを開始したが、第2の実施形態では、自動的にダウンロードを開始する前に、データのダウンロードが可能である状況になったことを利用者に対して通知する。
そして、この通知に対して利用者のダウンロード開始要求がなされた場合に限って、ダウンロードを実行する。
【0036】
例えば、利用者が通信網側から携帯通信端末へ動画データや音楽データをダウンロードしながら、端末での再生も並行して行う、所謂、動画や音楽のストリーミング再生のサービスを希望していた場合、上述した第1の実施形態のように自動的にダウンロードを開始したのでは、利用者は再生した画像等をみることなくダウンロードが終了しまうことになり、意味がない。
従って、本実施形態では、予約されたダウンロードを行うような受信状態になった場合に、利用者に対してダウンロードを開始するか否かを確認し、利用者の了解を得た場合にのみダウンロードを行うようにする。
これにより、利用者はダウンロードの開始を認識することができるので、動画や音楽のストリーミング再生のサービスを好適な環境で、且つ安定した品質で受けることができる。
【0037】
なお、利用者への通知手法は、上述した第1の実施形態と同様にして行うこととする。
また、この通知に対する利用者のダウンロード開始の指示としては、予め設定されている所定のキーを押下すること等により行われるものとする。
【0038】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、第1及び第2の実施形態では、利用者がダウンロードするデータに関して予約設定を行う際に、そのデータをダウンロードするデータ開始閾値や、制限時間を設定することとしたが、このデータ開始閾値はダウンロードするデータの属性によって、それぞれ最適な値が設定されているテーブルを予め当該端末のメモリ21に保持していてもよい。
例えば、ダウンロードするデータの容量に応じて、最低必要とされるデータ通信速度が設定されており、利用者はダウンロードを希望するデータの容量を予約時に入力すれば、自動的にCPU9が上記テーブルを参照することにより、データ開始閾値を設定することとしてもよい。
【0039】
また、データの容量に関わらずにデータ開始閾値を一定の値とし、その値(通信速度)を超えた場合に、ダウンロードを開始、又は、ダウンロードを開始するか否かの通知を行うようにしてもよい。
なお、このデータ開始閾値を超えたか否かの判断は、上述した平均DRCを用いたり、更に、平均DRCが所定回数連続してデータ開始閾値を超えた場合に始めてデータ閾値を超えると判断するようにする。
また、希望の下りデータ通信速度が可能となる受信状態が得られなかった場合に利用者にその旨を通知するための制限時間は、予め設定されており、その値が常に採用されるものとしてもよい。
なお、この場合には、制限時間は任意に利用者によって変更可能な情報とする。
【符号の説明】
【0040】
1…アンテナ、3…共用器、5…復調器、7…復号器、9…CPU、11…予測器、13…CIR−DRC変換部、15…マルチプレクサ(MUX)、17…符号化器、19…変調器、21…メモリ、23…表示部、25…操作部、27…外部I/F(インターフェース)、29…PC等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、
ダウンロードを希望するデータの情報をダウンロード予約情報として記憶する記憶手段と、
前記予測下りデータ通信速度、又は所定の期間における前記予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が、予め設定されているデータ通信開始閾値以上であるかを判断する判断手段と、
前記予測下りデータ通信速度、又は前記平均予測下りデータ通信速度が前記閾値以上であった場合に、前記ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始するダウンロード開始手段と、
を具備することを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、
ダウンロードを希望するデータの情報をダウンロード予約情報として記憶する記憶手段と、
前記予測下りデータ通信速度又は所定の期間における前記予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が予め設定されているデータ通信開始閾値以上であるかを判断する判断手段と、
前記予測下りデータ通信速度、又は前記平均予測下りデータ通信速度が前記閾値以上であった場合に、ダウンロード開始の条件を満たした旨を通知する通知手段と、
利用者からダウンロード開始の指示がなされたか否かを検出する検出手段と、
前記ダウンロード開始の指示があった場合に、前記ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始するダウンロード開始手段と、
を具備することを特徴とする携帯通信端末。
【請求項3】
データ通信開始閾値は、ダウンロードするデータの属性に応じて個々に設定可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかの項に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
予約設定された時刻からの経過時間を計時する計時手段と、
前記ダウンロードが開始した時点で前記経過時間の計時をリセットするリセット手段と、
前記経過時間が予め設定されている制限時間を超えたか否かを判断する制限時間判断手段と、
前記経過時間が前記制限時間を超えた場合に、その旨を通知する第2の通知手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−268482(P2010−268482A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140986(P2010−140986)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2001−98356(P2001−98356)の分割
【原出願日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】