携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー
【課題】簡易な構造において密封性とシールド効果とを発揮して携帯電子機器の電波を確実に遮断することのできる携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーを提供する。
【解決手段】開口枠11によって開口した本体1と、外蓋部21と内蓋部22とを有した蓋体と、この蓋体の閉蓋状態を維持する保持機構とから構成される。前記蓋体は、本体1の開口枠11の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部21と、外蓋部21の内部から本体1の開口枠11の内面に沿って本体1内へ突出しうる内蓋部22とを有し、開口枠11は、閉蓋状態において、外蓋部21と内蓋部22の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部21の内側面、内蓋部22の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材3が配設される。
【解決手段】開口枠11によって開口した本体1と、外蓋部21と内蓋部22とを有した蓋体と、この蓋体の閉蓋状態を維持する保持機構とから構成される。前記蓋体は、本体1の開口枠11の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部21と、外蓋部21の内部から本体1の開口枠11の内面に沿って本体1内へ突出しうる内蓋部22とを有し、開口枠11は、閉蓋状態において、外蓋部21と内蓋部22の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部21の内側面、内蓋部22の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材3が配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話や通信機能を有した携帯端末(以下、これらを携帯電子機器という)を一個または複数個単位で収容し、通信用の電波を遮断する携帯電子機器用電波遮断ケース、又は/及び、複数個の携帯電子機器をまとめて収容し、通信用の電波を遮断する携帯電子機器用電波遮断ロッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な機能を有する携帯電話をはじめとする携帯電子機器は、その使用方法に関して電波障害問題、機密漏えい問題、不正受験問題、迷惑騒音問題、といった様々な問題が発生している。例えば電波障害問題として、携帯電話による電波干渉或いは電磁干渉によって、航空機の誘導システムや計器類などに影響を与えるおそれがあり、また病院施設などでは、輸液ポンプ、人工呼吸器、心電図テレメーター、超音波ドプラ血流計といった医療機器への干渉をおこすおそれがある。また機密漏えい問題として、機密管理が必要とされる裁判所の傍聴席などの場所において、携帯電子機器を用いた盗聴、録音、撮影等の機密漏えい行為がなされたり、不正受験問題として、試験会場において、携帯電子機器を用いたカンニング行為や試験問題の不正流出行為がなされたりするおそれがある。また迷惑騒音問題として、携帯電話の着信音や報知音(アラーム)が周囲の迷惑となるような場所では携帯電子機器の電源を切ることが推奨されているが、多人数を収容する場所ではそれを徹底することは困難である。
【0003】
このような問題の解決策として、学校や乗物の機内、病院、映画館等の各種集合施設において、携帯電子機器を一括で又は個別に収納する収納ロッカー或いは収納ケースを設け、このロッカー或いはケースによって保管中の携帯電子機器の通信電波を遮断することで、施設内での携帯電子機器の使用を制限する方法が考えられる。
【0004】
このような携帯電子機器機の収納材として従来、アルミ箔のフィルムを三層使用し、プラスチックフィルムとともにラミネート加工したものを袋状に形成することで、収容された携帯電子機器の通信を遮断する包装袋が開示される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また従来、携帯電子機器機測定用のシールドボックスとして、電磁遮蔽室に携帯電子機器機を載置する箱体と、箱体と開閉自在に結合する蓋体とでシールドボックスを構成し、電磁遮蔽室の周囲に溝を設け、弾性体のシールド線を埋設したものが開示される(例えば特許文献2参照)。これは蓋体の溝に弾性体のシールド線を埋設する。蓋体を閉じると、蓋体の凸部のそれぞれが箱体のシールド線に接触し、箱体の凸部が溝のシールド線に接触する。箱体の外装および蓋体は軽量の金属体で一体成形が可能であり製造容易となる。箱体に蓋体を閉じた状態では、凸部と凸部が交差し、シールド性能が向上するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案3146497号公報
【特許文献2】特開平10−260215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような携帯電子機器遮断用のシールドボックスを作成しようとすると、僅かな隙間からでも電波は侵入してしまうため、ボックス全体を導電性の高い金属によって形成すると共に高い密封性の構造とする必要があり、簡易な構造として得ることができない。
【0008】
そこで本発明は、簡易な構造において密封性とシールド効果とを発揮して携帯電子機器の電波を確実に遮断することのできる携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(8)の手段を講じている。
(1)本発明の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーは、
開口枠11によって上方或いは周囲四方のうち一方向に開口した本体1と、外蓋部21と内蓋部22とを一体的に有する2重蓋構造としてなり、前記本体1の開口を開閉する開閉機構付きの蓋体2と、蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4とから構成され、閉蓋状態で携帯電子機器を密閉状態で収容する収容空間Sを形成する携帯電子機器用電波遮断ケースであって、
蓋体2は、本体1の開口枠11の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部21と、外蓋部21の内部(蓋板210の下面)から本体1の開口枠11の内面に沿って本体1内へ突出しうる内蓋部22とを有し、
前記開口枠は、閉蓋状態において、外蓋部21と内蓋部22の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部21の内側面、内蓋部22の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、
この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材3が配設され、
閉蓋状態において、シールド部材3が嵌合方向に10体積%以上圧縮され、前記収容空間Sが、隙間なく電気導通可能な構成面のみによって閉空間形成されることを特徴とする。
【0010】
(2)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、
前記本体1は、開口枠11の外周に亘って外方へ突出し、周方向に亘る片側の突出面上にシールド部材を保持するシールド保持部13を有し、
前記蓋体2の外蓋部21は、閉蓋状態において前記シールド保持部13の外周を覆うと共に、その側端部が、保持されたシールド部材13を挟圧することで、前記収容空間Sを形成することが好ましい。
【0011】
上記実施形態である後述の実施例2において、蓋体2は、内蓋部22の外部に連続形成された断面凹部の蓋溝部の周りに断面凸部からなる外蓋部21を有してなり、本体1の開口先端部11Eは、閉蓋状態でその外周面が外蓋部21と周方向へ連続的に面接触する周接触部を有し、前記シールド部材3は、閉蓋状態においてこの周接触部と連なり、外蓋部21によって圧縮変形する。
【0012】
(3)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、前記開閉機構は、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造からなることが好ましい。
【0013】
(4)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、本体1は、本体1枠の内側に開口した内函を有し、
蓋体2の前記蓋溝部よりも内側の部分、及び、本体1の開口先端部11Eよりも内側の部分が、共に一枚の導電性原材の深絞り加工によって一体的に形成された表面材からなることが好ましい。
【0014】
(5)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、蓋体2は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部22及び蓋溝部が形成され、閉蓋状態で、各蓋溝部に圧縮変形可能なシールド部材3が固定されることが好ましい。
【0015】
(6)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、本体1は、複数の携帯電子機器を収容する収容空間を有すると共に、各携帯電子機器を弾性によって圧縮保持し得る緩衝材からなる仕切り材を有してなり、この仕切り材の圧縮保持部の少なくとも一部が導電性材で構成されることが好ましい。
【0016】
(7)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、蓋体2の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバー84を有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバー84がスライド又は回転することで、係止レバー84の基部片に隠された蓋体2の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできることが好ましい。
【0017】
(8)なお前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、収容空間は、携帯電子機器のストラップ付属品を収容し得る付属収容部を開閉機構側に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は略密封の収容空間を構成することで、簡易な構造において密封性とシールド効果とを発揮して携帯電子機器の電波を確実に遮断することのできる携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーを提供することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースのA−A軸側面視断面図。
【図2】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面図。
【図3】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースの平面図。
【図4】実施例2の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面視軸断面図。
【図5】実施例3の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面視軸断面図。
【図6】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の斜視図。
【図7】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋収容状態の平面図。
【図8】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋収容状態の断面図。
【図9】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の断面図。
【図10】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの平面図。
【図11】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の断面図。
【図12】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の断面図。
【図13】実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の斜視図。
【図14】実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の正面図。
【図15】図14のD−D側断面図。
【図16】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の斜視図。
【図17】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋途中の状態の斜視図。
【図18】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の平面視断面図。
【図19】図18のヒンジ部分の拡大図。
【図20】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの一部分解斜視図。
【図21】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の閉蓋状態の平面視断面図。
【図22】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の蓋を取り外した状態の正面図。
【図23】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の蓋を取り外した状態の左側面視断面図。
【図24】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける蓋体のうちバネ構造部分の一部拡大斜視図。
【図25】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の斜視図。
【図26】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の斜視図。
【図27】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の側面視一部拡大断面図。
【図28】実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースの使用状態を示す斜視外観図。
【図29】実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の側面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態例を実施例として示す各図とともに説明する。実施例1〜4(図1〜図9)及び実施例9〜10(図25〜図29)に示す本発明の携帯電子機器用電波遮断ケースは、基本的に、携帯通信機器を一個ずつ収納し得る収納口を有した本体1と、本体1の収納口に嵌合して閉蓋し得る蓋体2と、本体1及び蓋体2の嵌合接触部に介設される環状のシールド部材3と、閉蓋状態を維持する保持機構4とから構成される。そして蓋体2の蓋裏側には、本体1の収納口に嵌合突出する内蓋部22を有した蓋体2を有し、また収納口又は内蓋部22に沿って、導電性材料からなる環状のシールド材3が配される。閉蓋状態ではこのシールド材3が少なくとも10体積%以上、好ましくは20〜30体積%以上圧縮された挟圧状態となることで、電波が通るような隙間を埋めた密封の収容空間Sが形成される。また、本体1と蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4によって、前記挟圧状態が確実に維持される。
【0021】
また実施例5〜8(図10〜図24)に示す本発明の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、基本的に、携帯通信機器を一つずつ収納し得る函体53を複数個分纏めて一つの収容口に開口収容してなる本体1と、本体1の収納口に嵌合して閉蓋し得る蓋体2とから構成される。そして蓋体2の蓋裏側には、本体1の収納口に嵌合突出する内蓋部22を有した蓋体2を有し、また収納口又は内蓋部22に沿って、周囲に導電性材料からなる環状のシールド材3が配される。閉蓋状態ではこのシールド材3が10体積%以上圧縮された挟圧状態となることで、電波が通るような隙間を埋めた密封の収容空間Sが形成される。また、函体5と蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4によって、前記挟圧状態が確実に維持される。
【0022】
上記携帯電子機器用電波遮断ケース、携帯電子機器用電波遮断ロッカーのいずれにおいても、密封の収容空間Sは、ケース内面及び蓋体2の裏面が、共に隙間の無い導電性材面のみで構成されると共に、ケース内面と蓋体2との境界がシールド材で塞がれることによる閉空間である。構成材として、導電性を有する金属や、導電性樹脂、導電性繊維などの導電性材料であれば任意の物を使用することができるが、例えばアルミ、ステンレスといった電磁シールド性を有し、かつ加工性に優れた金属性材が用いられる。
【0023】
例えばケース内面及び蓋体2の裏面をそれぞれ前記導電性材の構成面で一体構成し、ケース外目や蓋体2外面に露出する外部材を非導電性材で構成することができる。また他の形態として、本体1全体或いは蓋体2全体を導電性材で一体的に構成してもよい。
【0024】
シールド部材は環状の導通性材料からなり、本体1又は蓋体2のいずれか一方の凹状部内又はいずれか他方の凸状部上に設けられ、閉蓋時に収納口の先端部、外周面、内周面のいずれかに配され、挟圧圧縮されることで密封性を確保している。この圧縮率は、体積比にて解放時の少なくとも10%以上が必要であり、好ましくは20〜30%の範囲内の圧縮率となるように設計されることが好ましい。圧縮率が10%未満ではシールド部材3の表面の微細突起によって、当接した対象面との間に微小な隙間が生じる。なお圧縮率が50%を超えると過剰な弾性反力が発生するため、閉蓋時の作業性を考慮すると、圧縮率は40%以下、さらに言えば30%以下が好ましい。
【0025】
本体1及び蓋体2、あるいは函体53及び蓋体2による密封の収容空間の形状は様々なものを選択することができ、内部に仕切りや衝撃緩衝材を設けてもよく、そのいずれかの表面を電波遮蔽材によって構成してもよい。
【0026】
導電性材料の貼り合わせによって収容空間Sの半部ないし函体を形成する場合には、導電性を有するシールド性材を貼り合わせ境界に沿って被せ、導電性接着剤でまたは導電性溶接材によって固着することが好ましい。導電性材料の貼り合わせではなく、導電性材料の成形によって収容空間Sの半部ないし函体を一体形成する場合には、電気伝導率の高い金属など、展延性を有する材料からなる一枚の板状の原材を、立方体、多角柱又は円柱形状に深絞り加工することによるものとすることができる。特に深絞り加工による成形は隙間の発生を確実に抑制することができ、密封性とシールド効果を最大限に発揮し得るものとなる。
【実施例1】
【0027】
図1〜3に示す実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースは、上方に開口した円筒状の開口枠11を有する本体1と、側部が円筒状の外蓋部21を有して本体1の開口枠11に外嵌して閉蓋し得る蓋体2と、この蓋体2の外蓋部21の内側面の上隅部に周状に設けられた環状のシールド部材3と、蓋体2及び本体1に分離配置された部品同士が組み合わさって閉蓋状態を維持する保持機構4と、蓋体2の外蓋部21の上方に固定されたハンドル7とを具備してなる。本体1及び蓋体2の内側面はそれぞれ、深絞り加工によって圧延形成された一枚の金属板を原材とし、閉蓋状態ではこの金属板と金属板間に挟圧されたシールド部材3とによって、縦型円柱状の密封の収容空間Sが形成される。収容空間Sは内部に一個以上の携帯電子機器を縦方向に収容する大きさである。
【0028】
開口枠11の開口先端部11E付近は、先端に向かって徐々に薄くなるように形成され、内外面がそれぞれ1度以内の僅かな傾斜角度で緩湾曲する。
【0029】
また外蓋部21の内側には、外蓋部21の天面210の裏面から、外蓋部21の内側面よりも一回り小さい平面視形状で下方へ突出する内蓋部22が、外蓋部21と一体的に構成される。外蓋部21は円板状の天面板210とその周囲から下方へ枠状に伸びる側部とから構成される。内蓋部22は天面板210の裏面から下方へ突出する側部と側部の下端を円板状に覆う中板220とから構成される。そして外蓋部21の内隅部と内蓋部22の上端隅部との間に、本体1の開口先端部11Eが嵌合しうる等幅環状の蓋溝部2Dが形成される。
【0030】
内蓋部22は閉蓋状態で本体1内へ円柱状に嵌合突出し、本体1の開口枠11の内面と周方向に面接触した内周接触部を有する。この内蓋部22の円柱状の外周側面は突出方向(下方)へ向かってわずかに縮径するようにテーパー形成され、外蓋部21の円筒状の内周側面は、下端へ向かって僅かに拡径するようにテーパー形成される。これらのテーパー形成は対軸方向1度以内の傾斜面をもって構成され、それぞれ緩湾曲形成した開口先端部11Eの内外面に沿ってなることで、開口先端部11Eが蓋溝部2D内に確実に嵌入し、また嵌合状態で内外面の周面接触部を確実に確保するものとしている。
【0031】
そして蓋溝部2D内には、天面板210の下面に接して環状に繋がった弾性のシールド部材3が埋め込まれて配設される。シールド部材3はネオプレーン又はシリコンのエラストマー樹脂からなる円形断面の弾性芯材の周囲を鉄・銅・スズ合金製の金属網材で覆った環状体からなる。例えば、20psiにて30%、40psiにて50%の圧縮性を有するものを使用することができる。
【0032】
実施例1の保持機構4は、本体1の開口枠11の外周に沿って設けられ、ループ枠43を保持するループ保持材41と、蓋体の外蓋部21の外周であって前記各保持部材への対向位置一対設けられたフック42とから構成される。ループ保持材41は、開口枠11の外周面に沿って倒れた倒着状態からその下端が起き上がった倒立状態まで可動しうるように取り付けられ、ループ枠43はループ所の三方枠を一体的に構成する枠体であり、基端部がループ保持材41の両側面にそれぞれ回動可能に貫通固定され、先端部が両側からループ状に連なって、前記フック42に係止し得る。
【0033】
実施例1のハンドル7は、蓋体2の外蓋部21の外周両側部から上方を半円弧状に亘る湾曲板からなり、その上部中央が上方へ倒立コ字状に折曲されることで内側に吊り下げ窪み71が形成される。既存のフックに吊り下げて使用する場合、この吊り下げ窪み71内に吊り下げ対象のフックが嵌めこまれる。
【実施例2】
【0034】
図4に示す実施例2の携帯電子機器用電波遮断ケースは、閉蓋状態で開口枠11の外周面に、外蓋部21の内側面と周方向へ連続的に面接触する周接触部、すなわち外周接触部を有する。シールド部材3は、開口枠11の外周から側方に張り出したシールド保持部13の、張り出し上面に外部固定されてなり、蓋溝部2Dには内部収容されていない。実施例2の外蓋部21はシールド保持部13の張り出し量よりも厚い蓋厚さで開口枠11の周囲を覆い、下端内側面にはシールド保持部13及びシールド保持部13上に固定されたシールド部材3を収容しうる倒立L字状の切り欠き部21Dが周方向に形成される。シールド部材3は、閉蓋状態においてこの外周接触部と周方向へ連続的に連なり、外蓋部21の端部21の下面から側部の内側面にかけて形成された段状の切り欠き部21Dによって、それ自体の外周及び上面が覆われ、シールド保持部13と切り欠き部21Dとに挟まれて上下方向に圧縮変形する。シールド保持部13は周囲4方を囲われて挟圧保持されるため、不要な方向への変形が生じず、弾性反力による確実な密封性、シールド効果を確保し得る。
【0035】
収容空間内には底部に弾性材からなる保持床60と、保持床60の一部を切り欠いた切り欠き部に埋められる保持ブロック61,62とを有する。保持ブロック61,62を保持床60から選択して取り外すことで、携帯電子機器HPの保持収容穴を構成する。携帯電子機器を保持収容した保持床60、保持ブロック61,62が衝撃緩衝機能を果たすことで、携帯電子機器HPの保管時の傷つきを防止することができる。他の特記しない形態は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0036】
図5に示す実施例3の携帯電子機器用電波遮断ケースは、実施例2と同様、閉蓋状態で開口枠11の外周面に、外蓋部21の内側面と周方向へ連続的に面接触する周接触部、すなわち外周接触部を有する。シールド部材3として、外蓋部の内隅部の蓋溝部内に収容された矩形断面の第一シールド部材31と、開口枠11の外周から側方突出したシールド保持部13の突出した上面に外部固定された円形断面の第二シールド部材32との2つを有してなる。このうち第二シールド部材32は蓋溝部2Dには内部収容されていない。
【0037】
第一、第二シールド部材32は、閉蓋状態においてこの外周接触部と周方向へ連続的に連なり、外蓋部21の下端面によって、それ自体の上面が当接され、シールド保持部13と外蓋部21とに挟まれて上下方向に圧縮変形する。第二シールド部材32はまた、内周面が開口枠11によって囲われ、外周方向に開放した状態で挟圧保持されることで、外蓋部21、開口枠11又はシールド保持部13との隙間が埋められると共に余材が外方へ押し出される形に弾性変形する。また第一シールド部材31が、内蓋部22と外蓋部21間の蓋溝部内に充填収容され、開口枠11と蓋体2との2つの嵌合接触面間の隙間をうめることにより、弾性反力による確実な密封性、シールド効果を確保し得る。他の特記しない形態は実施例2と同様である。
【実施例4】
【0038】
図6〜9に示す実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の蓋溝部2D内及び本体1の開口先端部11E付近にそれぞれ設けられた第一シールド部材31、第二シールド部材32と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて保持する保持構造4とを具備してなる。収容空間Sは平型扁平の略矩形形状からなり、内部に一個または複数個の携帯電子機器が収容される。
【0039】
本体1は開口枠11の外側に、本体溝部1Dを隔てて外蓋部12が形成される。開口枠11と外蓋部12とは同じ高さの上面部を有し、壁面全体の上端が倒立コ字状に形成される。倒立コ字状に窪んだ内部は等幅の本体溝部1Dであって、溝内に矩形断面の第二シールド部材32が埋設される。
【0040】
収容空間S内には、携帯電子機器を中空状態で挟持するための弾性材からなる保持ブロック61〜65が充填される。保持ブロック61〜65は振動吸収による吸音機能を有する発泡弾性樹脂材からなり、収容空間全体の半分高さ乃至三分の二高さ以内の立方体形状としてなる。各保持ブロックは平面視形状の長手辺を5分割し、互いに隣接させることで収容空間内に弾性圧縮状態で充填される。各保持ブロックの側面中央には携帯電子機器HPを差し込んで保持するために細溝形状の保持溝6Dが設けられる。
【0041】
使用時には例えば、組み合わせた中央位置の保持ブロック62/63/64の少なくともいずれかを取り外して収容空間Sを形成し、残りの一方片側の保持ブロック61/62と他方片側の保持ブロック64/65それぞれの互いに対向する保持溝6Dに、携帯電子機器HPの両端部を差し込み、両側から携帯電子機器を挟むようにして中空状態で保持する。このとき携帯電子機器にストラップ様の付属品STが連結されている場合には、保持ブロックの上面に付属品STを載置することで、携帯電子機器と非接触状態にすることが好ましい(図6〜図9)。
【0042】
携帯電子機器を中空位置に挟み込んで保持することで振動を吸収し(図8、図9)、またストラップ等の付属品と非接触状態で保持することで、付属品との接触音の発生や傷付きを防止することができる。
【実施例5】
【0043】
図10〜12に示す実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の蓋溝部2D内及び本体1の開口先端部11E付近にそれぞれ設けられた第一シールド部材31、第二シールド部材32と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて保持する保持構造4とを具備してなる。収容空間Sは平型扁平の略矩形形状からなり、内部に一個または複数個の携帯電子機器が収容される。
【0044】
本体1は開口枠11の外側に、本体溝部1Dを隔てて外蓋部12が形成される。開口枠11と外蓋部12とは同じ高さの上面部を有し、壁面全体の上端が倒立コ字状に形成される。倒立コ字状に窪んだ内部は等幅の本体溝部1Dであって、溝内に矩形断面の第二シールド部材32が埋設される。
【0045】
収容空間S内には、携帯電子機器を中空状態で挟持するための弾性材からなる保持ブロック61〜65が充填される。保持ブロック61〜65は振動吸収による吸音機能を有する発泡弾性樹脂材からなり、収容空間全体の半分高さ乃至三分の二高さ以内の立方体形状としてなる。各保持ブロックは平面視形状の長手辺を5分割し、互いに隣接させることで収容空間内に弾性圧縮状態で充填される。各保持ブロックの側面中央には携帯電子機器HPを差し込んで保持するために細溝形状の保持溝6Dが設けられる。
【0046】
使用時には例えば、組み合わせた中央位置の保持ブロック62/63/64の少なくともいずれかを取り外して収容空間Sを形成し、残りの一方片側の保持ブロック61/62と他方片側の保持ブロック64/65それぞれの互いに対向する保持溝6Dに、携帯電子機器HPの両端部を差し込み、両側から携帯電子機器を挟むようにして中空状態で保持する。このとき携帯電子機器にストラップ様の付属品STが連結されている場合には、保持ブロックの上面に付属品STを載置することで、携帯電子機器と非接触状態にすることが好ましい(図7、図8)。携帯電子機器を中空位置に挟み込んで保持し、またストラップ等の付属品と非接触状態で保持することで、携帯電子機器HPが収容空間Sの構成面や付属品との接触を回避して傷付きを防止することができる。
【0047】
実施例5の本体1の開口枠11の外周には、開口枠11の天面と外側面との角部を外周に沿って断面L字状に切り欠いた切り欠き部5Dが設けられ、切り欠き部5Dの内側が開口枠11として上方に突出する。図11に示す閉蓋状態において、蓋体2の外蓋部21は開口枠11の外側面に嵌合し、外蓋部21の下部先端が切り欠き部5Dに当接するとともに、蓋体2の外蓋部21と内蓋部22の間の溝内に収容されたシールド部材3が、開口枠11によって圧縮変形し、外周部と密着した密封状態となる。
【0048】
ハンドル7は蓋体2の片側側面に形成された略コ字状ハンドルであり、把持部の中央内側にはつりさげ用の窪み71が形成される。
【実施例6】
【0049】
図13〜15に示す実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、開口に当接する蓋体2の内面周囲に設けられたシールド部材3と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて閉蓋状態を保持する保持構造4とを具備してなる。
【0050】
本体1の開口は、内部が格子状に交差して立設された複数の縦仕切り51、各縦仕切り51間を亘って水平固定される複数の横仕切り52によって仕切られて、複数の収容空間Sが整列構成され、各収容空間S内にそれぞれ1個ずつ携帯電子機器HPが収容される。
【0051】
実施例6のように、携帯電子機器通信遮断ロッカーとして使用する場合には、一側面の開口した収容部を有するロッカー函体と、一面の開口された函状に形成されて前記収容部に取り付けられる導電性を有する内函と、前記内函の開口を開閉する蓋体2とを備えるものとすることができる。かかる構成では、携帯電子機器を収容する収容空間を形成する内函がロッカーの蓋体2とは別体に形成されている。こうした場合、電波遮断構造としなければならない部材が、その内函と扉体、及びそれらの間のクリアランスのみとなる。そのため、ロッカー全体を電波遮断構造とする場合と比して、保管する携帯電子機器の通信遮断を容易に実現することができるようになる。
【0052】
ちなみに、こうした場合の携帯電子機器通信遮断ロッカーの携帯電子機器の通信遮断機能の付加は、既存のロッカーの函体に上記の如く形成された内函を追加し、その扉体を、電波遮断性を有したものに交換するだけでその具現が可能である。すなわち電波遮断機能を有していない既存のロッカーの函体を流用し、扉体の変更と内函の追加といった簡易な改造を施すだけでその実現が可能である。
【0053】
なお、こうした携帯電子機器通信遮断ロッカーの内函は、導電性を有する金属や、導電性樹脂、導電性繊維などの導電性材料により形成したり、非導電性材料からなる内函函体の表面または内部に導電性材を取り付けて形成したりすることができる。
【0054】
また、こうした携帯電子機器通信遮断ロッカーにおいて、前記内函の開口の周囲に一体形成された戸当り部と、前記扉体及び前記戸当り部のいずれかに取り付けられて、前記扉体が閉じられたときの同扉体と前記戸当り部との隙間を密封する弾性を有した導電性材料からなるシールド部材3とを備えるようにすれば、扉体と戸当り部との間の隙間からの電波の侵入を確実に遮断することができるようになる。
【0055】
電波遮断を確実に行うには、扉体と戸当り部との隙間をシールド部材3によって確実に密封する必要がある。その点、扉体を閉じた状態にロックすると共に、そのロック動作に応じて扉体を戸当り部に近接する方向に移動させるロック部材を備えるようにすれば、扉体をロックすることで、扉体と戸当り部との間にある程度の圧力でシールド部材3ガ挟み込まれるようになる。そのため、シールド部材3による密封を確実に行うことができ、保管する携帯電子機器の外部との通信遮断をより確実に行うことができるようになる。
【0056】
こうしたロック部材は、係合穴と、扉体に設けられてその係合穴への係合に応じて同扉体を閉じた状態にロックする止め金とを備えて構成すると共に、係合穴を、同係合穴への係合に応じて止め金を戸当り部に近接する方向へと案内する形状に形成することで実現することが可能である。この場合、ロック部材のロック動作に、すなわち係合穴への止め金の係合に応じて、係合穴の穴縁部に案内されて止め金が戸当り部美に近接する方向へと移動するようになる。そしてそうした止め金の移動と共に、その止め金の設けられた扉体が戸当り部に近接する方向へと移動し、扉体と戸当り部とに挟まれたシールド部材3に挟持圧が印加されることになる。
【0057】
なおこうした扉体と戸当り部とによるシールド部材3の挟持圧は、大きすぎても小さすぎても電波遮断を十分に行うことが困難になる。その点、扉体及び戸当り部のうちのシールド部材3の取り付けられていない一方と同シールド部材3とが全面的に当接する位置から0.3〜0.7mmだけ戸当り部に向けて扉体を移動させるようにロック部材を構成すれば、適度な圧力でシールド部材3を挟持して、十分に電波遮断を行うことができるようになる。
【0058】
一方、シールド部材3の挟持圧に部位ごとのばらつきがあれば、扉体と戸当り部との間に隙間が発生して電波遮断性が低下する懸念がある。その点、開き角度が3〜6°になるまで蓋体2が閉じられた時点で、扉体及び戸当り部のうちのシールド部材3の取り付けられていない一方と接触するようにシールド部材3を配設すれば、シールド部材3の挟持圧を均一として、電波遮断を確実に行うことができるようになる。
【0059】
また、吸音材や遮音材を取り付けるようにすることもできる。こうした場合には、携帯電子機器の報知音が鳴った場合でも外部に漏れ出す音を小さくすることができるようになる。
【実施例7】
【0060】
図16〜19に示す実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおいて、蓋体は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部及び嵌合溝が形成され、閉蓋状態で、各嵌合溝に圧縮変形可能なシールド部材が固定される。具体的には図16に示すように、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が階段状に段付き開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にそれぞれヒンジ固定され、開口を二重に覆う外蓋部21及び内蓋部221と、内蓋部221の裏面から開口部側へ突出形成された内蓋突出部220と、本体1の段付きの開口枠11の1段目、2段目の階段状部にそれぞれに当接固定された環状の第二シールド部材32及び第一シールド部材31と、本体1内の開口を縦横に仕切って複数の内部収容空間を構成する縦仕切り板51、横仕切り板52とを具備してなる。
【0061】
内蓋部221の外面には外蓋部21との閉蓋状態での距離を保つために、外蓋部21の戸当り用の突起222が突出固定される(図17)。第一シールド部材31は階段状の開口枠11の2段目の枠前面に微小枠状に突出形成された第一突出枠111の内側部に沿って貼り付け固定されることで、それ自体の内側部が開口の内側部を延長する。第二シールド部材32は階段状の開口枠11の1段目の枠前面に微小枠状に突出形成された第二突出枠112の内側部に沿って貼り付け固定されることで、それ自体の内側部が開口枠の一段目の内側部を延長する。本体1は前面に突出した外枠部12によって外蓋部21の外周を囲う。外蓋部21には開放辺付近に錠が取り付けられ、本体1の外枠部12の内側面に設けられた錠孔に施錠片が突入して閉状態を保持する(図18)。他の特記しない構成は実施例6と同様である。
【実施例8】
【0062】
図20〜24に示す実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の開口に当接する内面周囲に設けられたシールド部材3と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて閉蓋状態を保持する保持構造4とを具備してなる。他の特記しない構成は実施例6と同様である。
【0063】
実施例8では、仕切られた整列空間内にそれぞれ、箱形に一体形成された内函5が組み込まれ、各内函5それぞれに扉状の蓋体2を取り付けるものとしている(図20)。すなわち実施例8は、扉体を一体に取り付けた扉一体型の戸当り90付きの内函5を各整列空間内に取り付けたものである。実施例8の本体1は既存のロッカーの函体やラックとすることができ、この場合、一体化した扉体及び戸当り付き内函からなるアッセンブリを組みつけることで、電波遮断を有した実施例8の携帯電子機器通信遮断ロッカーを低コストかつ極めて簡単に得られる。
【0064】
各整列空間の正面視片側部には、縦方向に戸当り90が設けられ、戸当り90にはマグネットプレートに保持されたマグネット9が正面側に露出して埋め込まれる(図22)。閉蓋時には金属製の蓋体内面がマグネット9に磁着して閉蓋状態を確実に保持する。
【0065】
蓋体2のヒンジ部内部には、図24に示すコイルばね81が蓋内部の下面から上方突出した第一係止材80、及び蓋裏面から蓋内部へ側方突出した第二係止材82によって係止支持される。第一係止材80はコイルばね81のコイル内に嵌入する山型突起であり、第二係止材82は、蓋体2の裏面に当接するコイルばね81の一延長端の上部に係止すべく略水平方向に突出した三角錐型突起である。コイルばね81の他延長端は蓋体2の裏面に設けられたバネ用孔81Hから蓋体2の裏面側に突出し(図24)、突出した先側が、シールド部材3外側の本体1のヒンジ部側の開口側辺に設けられたヒンジ空間内に突出し、シールド部材3の外側面に押しあてられる(図21)。
【実施例9】
【0066】
図25〜27に示す実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、携帯電子機器を保持収容し得る凹状の保持空間を有して本体1内に収容固定された収容材14と、本体1の開口枠11の内角部に開口の周囲に沿って環状に設けられた断面L字状の切り欠き部と、この切り欠き部内に収容固定された環状の弾性材からなるシールド部材3と、蓋体2の開放辺から突出入可能に設けられ、本体1の切り欠き部1Dに係止して閉蓋状態を保持する係止レバー84とを具備してなる。蓋体2の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバー84を有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバー84がスライド又は回転することで、係止レバー84の基部片に隠された蓋体2の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできることが好ましい。
【0067】
係止レバー84はL字板状の先部に、内側への返し部86を有した折曲片が固定されてなり、蓋体2の上面端部に設けられたスライド溝内へ、図25で矢印に示すスライド方向に往復移動可能に収容保持される。このときL字状の一片が蓋体2の蓋天面を覆い、L字状の折曲した他片が外蓋部21の外側面ないし開口枠11の側面を覆うと共に、他片の先から折曲した折曲片が、開口枠11の側面に設けられた切り欠き部1D内へ突入し得る。折曲片が切り欠き部1D内へ突入した閉蓋状態では、折曲片の先端から上方へ微小突出した返し部86と、切り欠き部1Dの切り欠き口を狭めるように突出した返し部16とが互いに鉤状に係止し、閉蓋状態をロックする(図27)。
【0068】
係止レバー84のうち、蓋体2の蓋天面を覆うL字状の一片は、外面が連続山型状の手掛かり85が形成され、係止レバー84の操作時にはこの手掛かり85によってロック係止/解除の操作を行う。
【0069】
内蓋部22は弾性材からなり、外蓋部21の内側に接して本体1の開口内へ突出する枠部を有して倒立凹状に形成される。また収容材14は本体内の開口に沿う枠部を有して凹状に形成され、閉蓋状態においてその上面が前記内蓋部22の突出先端と対向接触し、内蓋部22と共に弾性圧縮される(図27)。
【0070】
実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースは例えば机上や壁面に本体1の底部10の下面が貼り付け固定され、携帯電子機器の所有者の傍に据え付けられる。
【実施例10】
【0071】
図28〜29に示す実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ44によってヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、携帯電子機器を保持収容し得る凹状の保持空間を有して本体1内に収容固定された収容材14と、本体1の開口枠11の上端面に、開口の周囲に沿って環状に設けられた断面倒立コ字状の切り欠き部と、この切り欠き部内に収容固定された環状の弾性材からなるシールド部材3と、蓋体2の開放辺部及び本体1の開放辺部の各外面に設けられ、互いに係止して閉蓋状態を保持する第一保持バネ410,第二保持バネ420とを具備してなる(図29)。
【0072】
実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースは例えば図28に示すような椅子の背面や壁面に本体1の底部10の裏面が貼り付け固定され、携帯電子機器の所有者の傍に据え付けられる。
【0073】
その他本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、一部構成の組み合わせ、削除、置換、或いは抽出が可能である。例えば実施例1、2或いは実施例3の開閉機構4として、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 本体
11 開口枠
11E 開口先端
13 シールド保持部
2 蓋体
21 外蓋部
210 蓋板
22 内蓋部
3 シールド部材
4 保持機構
5 内函
60 保持床
61,62 保持ブロック
7 ハンドル
84 係止レバー
S 収容空間
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話や通信機能を有した携帯端末(以下、これらを携帯電子機器という)を一個または複数個単位で収容し、通信用の電波を遮断する携帯電子機器用電波遮断ケース、又は/及び、複数個の携帯電子機器をまとめて収容し、通信用の電波を遮断する携帯電子機器用電波遮断ロッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な機能を有する携帯電話をはじめとする携帯電子機器は、その使用方法に関して電波障害問題、機密漏えい問題、不正受験問題、迷惑騒音問題、といった様々な問題が発生している。例えば電波障害問題として、携帯電話による電波干渉或いは電磁干渉によって、航空機の誘導システムや計器類などに影響を与えるおそれがあり、また病院施設などでは、輸液ポンプ、人工呼吸器、心電図テレメーター、超音波ドプラ血流計といった医療機器への干渉をおこすおそれがある。また機密漏えい問題として、機密管理が必要とされる裁判所の傍聴席などの場所において、携帯電子機器を用いた盗聴、録音、撮影等の機密漏えい行為がなされたり、不正受験問題として、試験会場において、携帯電子機器を用いたカンニング行為や試験問題の不正流出行為がなされたりするおそれがある。また迷惑騒音問題として、携帯電話の着信音や報知音(アラーム)が周囲の迷惑となるような場所では携帯電子機器の電源を切ることが推奨されているが、多人数を収容する場所ではそれを徹底することは困難である。
【0003】
このような問題の解決策として、学校や乗物の機内、病院、映画館等の各種集合施設において、携帯電子機器を一括で又は個別に収納する収納ロッカー或いは収納ケースを設け、このロッカー或いはケースによって保管中の携帯電子機器の通信電波を遮断することで、施設内での携帯電子機器の使用を制限する方法が考えられる。
【0004】
このような携帯電子機器機の収納材として従来、アルミ箔のフィルムを三層使用し、プラスチックフィルムとともにラミネート加工したものを袋状に形成することで、収容された携帯電子機器の通信を遮断する包装袋が開示される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また従来、携帯電子機器機測定用のシールドボックスとして、電磁遮蔽室に携帯電子機器機を載置する箱体と、箱体と開閉自在に結合する蓋体とでシールドボックスを構成し、電磁遮蔽室の周囲に溝を設け、弾性体のシールド線を埋設したものが開示される(例えば特許文献2参照)。これは蓋体の溝に弾性体のシールド線を埋設する。蓋体を閉じると、蓋体の凸部のそれぞれが箱体のシールド線に接触し、箱体の凸部が溝のシールド線に接触する。箱体の外装および蓋体は軽量の金属体で一体成形が可能であり製造容易となる。箱体に蓋体を閉じた状態では、凸部と凸部が交差し、シールド性能が向上するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案3146497号公報
【特許文献2】特開平10−260215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような携帯電子機器遮断用のシールドボックスを作成しようとすると、僅かな隙間からでも電波は侵入してしまうため、ボックス全体を導電性の高い金属によって形成すると共に高い密封性の構造とする必要があり、簡易な構造として得ることができない。
【0008】
そこで本発明は、簡易な構造において密封性とシールド効果とを発揮して携帯電子機器の電波を確実に遮断することのできる携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(8)の手段を講じている。
(1)本発明の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーは、
開口枠11によって上方或いは周囲四方のうち一方向に開口した本体1と、外蓋部21と内蓋部22とを一体的に有する2重蓋構造としてなり、前記本体1の開口を開閉する開閉機構付きの蓋体2と、蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4とから構成され、閉蓋状態で携帯電子機器を密閉状態で収容する収容空間Sを形成する携帯電子機器用電波遮断ケースであって、
蓋体2は、本体1の開口枠11の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部21と、外蓋部21の内部(蓋板210の下面)から本体1の開口枠11の内面に沿って本体1内へ突出しうる内蓋部22とを有し、
前記開口枠は、閉蓋状態において、外蓋部21と内蓋部22の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部21の内側面、内蓋部22の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、
この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材3が配設され、
閉蓋状態において、シールド部材3が嵌合方向に10体積%以上圧縮され、前記収容空間Sが、隙間なく電気導通可能な構成面のみによって閉空間形成されることを特徴とする。
【0010】
(2)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、
前記本体1は、開口枠11の外周に亘って外方へ突出し、周方向に亘る片側の突出面上にシールド部材を保持するシールド保持部13を有し、
前記蓋体2の外蓋部21は、閉蓋状態において前記シールド保持部13の外周を覆うと共に、その側端部が、保持されたシールド部材13を挟圧することで、前記収容空間Sを形成することが好ましい。
【0011】
上記実施形態である後述の実施例2において、蓋体2は、内蓋部22の外部に連続形成された断面凹部の蓋溝部の周りに断面凸部からなる外蓋部21を有してなり、本体1の開口先端部11Eは、閉蓋状態でその外周面が外蓋部21と周方向へ連続的に面接触する周接触部を有し、前記シールド部材3は、閉蓋状態においてこの周接触部と連なり、外蓋部21によって圧縮変形する。
【0012】
(3)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、前記開閉機構は、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造からなることが好ましい。
【0013】
(4)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、本体1は、本体1枠の内側に開口した内函を有し、
蓋体2の前記蓋溝部よりも内側の部分、及び、本体1の開口先端部11Eよりも内側の部分が、共に一枚の導電性原材の深絞り加工によって一体的に形成された表面材からなることが好ましい。
【0014】
(5)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、蓋体2は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部22及び蓋溝部が形成され、閉蓋状態で、各蓋溝部に圧縮変形可能なシールド部材3が固定されることが好ましい。
【0015】
(6)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、本体1は、複数の携帯電子機器を収容する収容空間を有すると共に、各携帯電子機器を弾性によって圧縮保持し得る緩衝材からなる仕切り材を有してなり、この仕切り材の圧縮保持部の少なくとも一部が導電性材で構成されることが好ましい。
【0016】
(7)前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、蓋体2の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバー84を有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバー84がスライド又は回転することで、係止レバー84の基部片に隠された蓋体2の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできることが好ましい。
【0017】
(8)なお前記携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーにおいて、収容空間は、携帯電子機器のストラップ付属品を収容し得る付属収容部を開閉機構側に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は略密封の収容空間を構成することで、簡易な構造において密封性とシールド効果とを発揮して携帯電子機器の電波を確実に遮断することのできる携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカーを提供することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースのA−A軸側面視断面図。
【図2】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面図。
【図3】実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースの平面図。
【図4】実施例2の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面視軸断面図。
【図5】実施例3の携帯電子機器用電波遮断ケースの側面視軸断面図。
【図6】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の斜視図。
【図7】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋収容状態の平面図。
【図8】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋収容状態の断面図。
【図9】実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の断面図。
【図10】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの平面図。
【図11】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の断面図。
【図12】実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の断面図。
【図13】実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の斜視図。
【図14】実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の正面図。
【図15】図14のD−D側断面図。
【図16】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの開蓋状態の斜視図。
【図17】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋途中の状態の斜視図。
【図18】実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの閉蓋状態の平面視断面図。
【図19】図18のヒンジ部分の拡大図。
【図20】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーの一部分解斜視図。
【図21】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の閉蓋状態の平面視断面図。
【図22】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の蓋を取り外した状態の正面図。
【図23】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける一収容部の蓋を取り外した状態の左側面視断面図。
【図24】実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおける蓋体のうちバネ構造部分の一部拡大斜視図。
【図25】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の斜視図。
【図26】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの開蓋収容状態の斜視図。
【図27】実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の側面視一部拡大断面図。
【図28】実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースの使用状態を示す斜視外観図。
【図29】実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースの閉蓋状態の側面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態例を実施例として示す各図とともに説明する。実施例1〜4(図1〜図9)及び実施例9〜10(図25〜図29)に示す本発明の携帯電子機器用電波遮断ケースは、基本的に、携帯通信機器を一個ずつ収納し得る収納口を有した本体1と、本体1の収納口に嵌合して閉蓋し得る蓋体2と、本体1及び蓋体2の嵌合接触部に介設される環状のシールド部材3と、閉蓋状態を維持する保持機構4とから構成される。そして蓋体2の蓋裏側には、本体1の収納口に嵌合突出する内蓋部22を有した蓋体2を有し、また収納口又は内蓋部22に沿って、導電性材料からなる環状のシールド材3が配される。閉蓋状態ではこのシールド材3が少なくとも10体積%以上、好ましくは20〜30体積%以上圧縮された挟圧状態となることで、電波が通るような隙間を埋めた密封の収容空間Sが形成される。また、本体1と蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4によって、前記挟圧状態が確実に維持される。
【0021】
また実施例5〜8(図10〜図24)に示す本発明の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、基本的に、携帯通信機器を一つずつ収納し得る函体53を複数個分纏めて一つの収容口に開口収容してなる本体1と、本体1の収納口に嵌合して閉蓋し得る蓋体2とから構成される。そして蓋体2の蓋裏側には、本体1の収納口に嵌合突出する内蓋部22を有した蓋体2を有し、また収納口又は内蓋部22に沿って、周囲に導電性材料からなる環状のシールド材3が配される。閉蓋状態ではこのシールド材3が10体積%以上圧縮された挟圧状態となることで、電波が通るような隙間を埋めた密封の収容空間Sが形成される。また、函体5と蓋体2の閉蓋状態を維持する保持機構4によって、前記挟圧状態が確実に維持される。
【0022】
上記携帯電子機器用電波遮断ケース、携帯電子機器用電波遮断ロッカーのいずれにおいても、密封の収容空間Sは、ケース内面及び蓋体2の裏面が、共に隙間の無い導電性材面のみで構成されると共に、ケース内面と蓋体2との境界がシールド材で塞がれることによる閉空間である。構成材として、導電性を有する金属や、導電性樹脂、導電性繊維などの導電性材料であれば任意の物を使用することができるが、例えばアルミ、ステンレスといった電磁シールド性を有し、かつ加工性に優れた金属性材が用いられる。
【0023】
例えばケース内面及び蓋体2の裏面をそれぞれ前記導電性材の構成面で一体構成し、ケース外目や蓋体2外面に露出する外部材を非導電性材で構成することができる。また他の形態として、本体1全体或いは蓋体2全体を導電性材で一体的に構成してもよい。
【0024】
シールド部材は環状の導通性材料からなり、本体1又は蓋体2のいずれか一方の凹状部内又はいずれか他方の凸状部上に設けられ、閉蓋時に収納口の先端部、外周面、内周面のいずれかに配され、挟圧圧縮されることで密封性を確保している。この圧縮率は、体積比にて解放時の少なくとも10%以上が必要であり、好ましくは20〜30%の範囲内の圧縮率となるように設計されることが好ましい。圧縮率が10%未満ではシールド部材3の表面の微細突起によって、当接した対象面との間に微小な隙間が生じる。なお圧縮率が50%を超えると過剰な弾性反力が発生するため、閉蓋時の作業性を考慮すると、圧縮率は40%以下、さらに言えば30%以下が好ましい。
【0025】
本体1及び蓋体2、あるいは函体53及び蓋体2による密封の収容空間の形状は様々なものを選択することができ、内部に仕切りや衝撃緩衝材を設けてもよく、そのいずれかの表面を電波遮蔽材によって構成してもよい。
【0026】
導電性材料の貼り合わせによって収容空間Sの半部ないし函体を形成する場合には、導電性を有するシールド性材を貼り合わせ境界に沿って被せ、導電性接着剤でまたは導電性溶接材によって固着することが好ましい。導電性材料の貼り合わせではなく、導電性材料の成形によって収容空間Sの半部ないし函体を一体形成する場合には、電気伝導率の高い金属など、展延性を有する材料からなる一枚の板状の原材を、立方体、多角柱又は円柱形状に深絞り加工することによるものとすることができる。特に深絞り加工による成形は隙間の発生を確実に抑制することができ、密封性とシールド効果を最大限に発揮し得るものとなる。
【実施例1】
【0027】
図1〜3に示す実施例1の携帯電子機器用電波遮断ケースは、上方に開口した円筒状の開口枠11を有する本体1と、側部が円筒状の外蓋部21を有して本体1の開口枠11に外嵌して閉蓋し得る蓋体2と、この蓋体2の外蓋部21の内側面の上隅部に周状に設けられた環状のシールド部材3と、蓋体2及び本体1に分離配置された部品同士が組み合わさって閉蓋状態を維持する保持機構4と、蓋体2の外蓋部21の上方に固定されたハンドル7とを具備してなる。本体1及び蓋体2の内側面はそれぞれ、深絞り加工によって圧延形成された一枚の金属板を原材とし、閉蓋状態ではこの金属板と金属板間に挟圧されたシールド部材3とによって、縦型円柱状の密封の収容空間Sが形成される。収容空間Sは内部に一個以上の携帯電子機器を縦方向に収容する大きさである。
【0028】
開口枠11の開口先端部11E付近は、先端に向かって徐々に薄くなるように形成され、内外面がそれぞれ1度以内の僅かな傾斜角度で緩湾曲する。
【0029】
また外蓋部21の内側には、外蓋部21の天面210の裏面から、外蓋部21の内側面よりも一回り小さい平面視形状で下方へ突出する内蓋部22が、外蓋部21と一体的に構成される。外蓋部21は円板状の天面板210とその周囲から下方へ枠状に伸びる側部とから構成される。内蓋部22は天面板210の裏面から下方へ突出する側部と側部の下端を円板状に覆う中板220とから構成される。そして外蓋部21の内隅部と内蓋部22の上端隅部との間に、本体1の開口先端部11Eが嵌合しうる等幅環状の蓋溝部2Dが形成される。
【0030】
内蓋部22は閉蓋状態で本体1内へ円柱状に嵌合突出し、本体1の開口枠11の内面と周方向に面接触した内周接触部を有する。この内蓋部22の円柱状の外周側面は突出方向(下方)へ向かってわずかに縮径するようにテーパー形成され、外蓋部21の円筒状の内周側面は、下端へ向かって僅かに拡径するようにテーパー形成される。これらのテーパー形成は対軸方向1度以内の傾斜面をもって構成され、それぞれ緩湾曲形成した開口先端部11Eの内外面に沿ってなることで、開口先端部11Eが蓋溝部2D内に確実に嵌入し、また嵌合状態で内外面の周面接触部を確実に確保するものとしている。
【0031】
そして蓋溝部2D内には、天面板210の下面に接して環状に繋がった弾性のシールド部材3が埋め込まれて配設される。シールド部材3はネオプレーン又はシリコンのエラストマー樹脂からなる円形断面の弾性芯材の周囲を鉄・銅・スズ合金製の金属網材で覆った環状体からなる。例えば、20psiにて30%、40psiにて50%の圧縮性を有するものを使用することができる。
【0032】
実施例1の保持機構4は、本体1の開口枠11の外周に沿って設けられ、ループ枠43を保持するループ保持材41と、蓋体の外蓋部21の外周であって前記各保持部材への対向位置一対設けられたフック42とから構成される。ループ保持材41は、開口枠11の外周面に沿って倒れた倒着状態からその下端が起き上がった倒立状態まで可動しうるように取り付けられ、ループ枠43はループ所の三方枠を一体的に構成する枠体であり、基端部がループ保持材41の両側面にそれぞれ回動可能に貫通固定され、先端部が両側からループ状に連なって、前記フック42に係止し得る。
【0033】
実施例1のハンドル7は、蓋体2の外蓋部21の外周両側部から上方を半円弧状に亘る湾曲板からなり、その上部中央が上方へ倒立コ字状に折曲されることで内側に吊り下げ窪み71が形成される。既存のフックに吊り下げて使用する場合、この吊り下げ窪み71内に吊り下げ対象のフックが嵌めこまれる。
【実施例2】
【0034】
図4に示す実施例2の携帯電子機器用電波遮断ケースは、閉蓋状態で開口枠11の外周面に、外蓋部21の内側面と周方向へ連続的に面接触する周接触部、すなわち外周接触部を有する。シールド部材3は、開口枠11の外周から側方に張り出したシールド保持部13の、張り出し上面に外部固定されてなり、蓋溝部2Dには内部収容されていない。実施例2の外蓋部21はシールド保持部13の張り出し量よりも厚い蓋厚さで開口枠11の周囲を覆い、下端内側面にはシールド保持部13及びシールド保持部13上に固定されたシールド部材3を収容しうる倒立L字状の切り欠き部21Dが周方向に形成される。シールド部材3は、閉蓋状態においてこの外周接触部と周方向へ連続的に連なり、外蓋部21の端部21の下面から側部の内側面にかけて形成された段状の切り欠き部21Dによって、それ自体の外周及び上面が覆われ、シールド保持部13と切り欠き部21Dとに挟まれて上下方向に圧縮変形する。シールド保持部13は周囲4方を囲われて挟圧保持されるため、不要な方向への変形が生じず、弾性反力による確実な密封性、シールド効果を確保し得る。
【0035】
収容空間内には底部に弾性材からなる保持床60と、保持床60の一部を切り欠いた切り欠き部に埋められる保持ブロック61,62とを有する。保持ブロック61,62を保持床60から選択して取り外すことで、携帯電子機器HPの保持収容穴を構成する。携帯電子機器を保持収容した保持床60、保持ブロック61,62が衝撃緩衝機能を果たすことで、携帯電子機器HPの保管時の傷つきを防止することができる。他の特記しない形態は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0036】
図5に示す実施例3の携帯電子機器用電波遮断ケースは、実施例2と同様、閉蓋状態で開口枠11の外周面に、外蓋部21の内側面と周方向へ連続的に面接触する周接触部、すなわち外周接触部を有する。シールド部材3として、外蓋部の内隅部の蓋溝部内に収容された矩形断面の第一シールド部材31と、開口枠11の外周から側方突出したシールド保持部13の突出した上面に外部固定された円形断面の第二シールド部材32との2つを有してなる。このうち第二シールド部材32は蓋溝部2Dには内部収容されていない。
【0037】
第一、第二シールド部材32は、閉蓋状態においてこの外周接触部と周方向へ連続的に連なり、外蓋部21の下端面によって、それ自体の上面が当接され、シールド保持部13と外蓋部21とに挟まれて上下方向に圧縮変形する。第二シールド部材32はまた、内周面が開口枠11によって囲われ、外周方向に開放した状態で挟圧保持されることで、外蓋部21、開口枠11又はシールド保持部13との隙間が埋められると共に余材が外方へ押し出される形に弾性変形する。また第一シールド部材31が、内蓋部22と外蓋部21間の蓋溝部内に充填収容され、開口枠11と蓋体2との2つの嵌合接触面間の隙間をうめることにより、弾性反力による確実な密封性、シールド効果を確保し得る。他の特記しない形態は実施例2と同様である。
【実施例4】
【0038】
図6〜9に示す実施例4の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の蓋溝部2D内及び本体1の開口先端部11E付近にそれぞれ設けられた第一シールド部材31、第二シールド部材32と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて保持する保持構造4とを具備してなる。収容空間Sは平型扁平の略矩形形状からなり、内部に一個または複数個の携帯電子機器が収容される。
【0039】
本体1は開口枠11の外側に、本体溝部1Dを隔てて外蓋部12が形成される。開口枠11と外蓋部12とは同じ高さの上面部を有し、壁面全体の上端が倒立コ字状に形成される。倒立コ字状に窪んだ内部は等幅の本体溝部1Dであって、溝内に矩形断面の第二シールド部材32が埋設される。
【0040】
収容空間S内には、携帯電子機器を中空状態で挟持するための弾性材からなる保持ブロック61〜65が充填される。保持ブロック61〜65は振動吸収による吸音機能を有する発泡弾性樹脂材からなり、収容空間全体の半分高さ乃至三分の二高さ以内の立方体形状としてなる。各保持ブロックは平面視形状の長手辺を5分割し、互いに隣接させることで収容空間内に弾性圧縮状態で充填される。各保持ブロックの側面中央には携帯電子機器HPを差し込んで保持するために細溝形状の保持溝6Dが設けられる。
【0041】
使用時には例えば、組み合わせた中央位置の保持ブロック62/63/64の少なくともいずれかを取り外して収容空間Sを形成し、残りの一方片側の保持ブロック61/62と他方片側の保持ブロック64/65それぞれの互いに対向する保持溝6Dに、携帯電子機器HPの両端部を差し込み、両側から携帯電子機器を挟むようにして中空状態で保持する。このとき携帯電子機器にストラップ様の付属品STが連結されている場合には、保持ブロックの上面に付属品STを載置することで、携帯電子機器と非接触状態にすることが好ましい(図6〜図9)。
【0042】
携帯電子機器を中空位置に挟み込んで保持することで振動を吸収し(図8、図9)、またストラップ等の付属品と非接触状態で保持することで、付属品との接触音の発生や傷付きを防止することができる。
【実施例5】
【0043】
図10〜12に示す実施例5の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の蓋溝部2D内及び本体1の開口先端部11E付近にそれぞれ設けられた第一シールド部材31、第二シールド部材32と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて保持する保持構造4とを具備してなる。収容空間Sは平型扁平の略矩形形状からなり、内部に一個または複数個の携帯電子機器が収容される。
【0044】
本体1は開口枠11の外側に、本体溝部1Dを隔てて外蓋部12が形成される。開口枠11と外蓋部12とは同じ高さの上面部を有し、壁面全体の上端が倒立コ字状に形成される。倒立コ字状に窪んだ内部は等幅の本体溝部1Dであって、溝内に矩形断面の第二シールド部材32が埋設される。
【0045】
収容空間S内には、携帯電子機器を中空状態で挟持するための弾性材からなる保持ブロック61〜65が充填される。保持ブロック61〜65は振動吸収による吸音機能を有する発泡弾性樹脂材からなり、収容空間全体の半分高さ乃至三分の二高さ以内の立方体形状としてなる。各保持ブロックは平面視形状の長手辺を5分割し、互いに隣接させることで収容空間内に弾性圧縮状態で充填される。各保持ブロックの側面中央には携帯電子機器HPを差し込んで保持するために細溝形状の保持溝6Dが設けられる。
【0046】
使用時には例えば、組み合わせた中央位置の保持ブロック62/63/64の少なくともいずれかを取り外して収容空間Sを形成し、残りの一方片側の保持ブロック61/62と他方片側の保持ブロック64/65それぞれの互いに対向する保持溝6Dに、携帯電子機器HPの両端部を差し込み、両側から携帯電子機器を挟むようにして中空状態で保持する。このとき携帯電子機器にストラップ様の付属品STが連結されている場合には、保持ブロックの上面に付属品STを載置することで、携帯電子機器と非接触状態にすることが好ましい(図7、図8)。携帯電子機器を中空位置に挟み込んで保持し、またストラップ等の付属品と非接触状態で保持することで、携帯電子機器HPが収容空間Sの構成面や付属品との接触を回避して傷付きを防止することができる。
【0047】
実施例5の本体1の開口枠11の外周には、開口枠11の天面と外側面との角部を外周に沿って断面L字状に切り欠いた切り欠き部5Dが設けられ、切り欠き部5Dの内側が開口枠11として上方に突出する。図11に示す閉蓋状態において、蓋体2の外蓋部21は開口枠11の外側面に嵌合し、外蓋部21の下部先端が切り欠き部5Dに当接するとともに、蓋体2の外蓋部21と内蓋部22の間の溝内に収容されたシールド部材3が、開口枠11によって圧縮変形し、外周部と密着した密封状態となる。
【0048】
ハンドル7は蓋体2の片側側面に形成された略コ字状ハンドルであり、把持部の中央内側にはつりさげ用の窪み71が形成される。
【実施例6】
【0049】
図13〜15に示す実施例6の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、開口に当接する蓋体2の内面周囲に設けられたシールド部材3と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて閉蓋状態を保持する保持構造4とを具備してなる。
【0050】
本体1の開口は、内部が格子状に交差して立設された複数の縦仕切り51、各縦仕切り51間を亘って水平固定される複数の横仕切り52によって仕切られて、複数の収容空間Sが整列構成され、各収容空間S内にそれぞれ1個ずつ携帯電子機器HPが収容される。
【0051】
実施例6のように、携帯電子機器通信遮断ロッカーとして使用する場合には、一側面の開口した収容部を有するロッカー函体と、一面の開口された函状に形成されて前記収容部に取り付けられる導電性を有する内函と、前記内函の開口を開閉する蓋体2とを備えるものとすることができる。かかる構成では、携帯電子機器を収容する収容空間を形成する内函がロッカーの蓋体2とは別体に形成されている。こうした場合、電波遮断構造としなければならない部材が、その内函と扉体、及びそれらの間のクリアランスのみとなる。そのため、ロッカー全体を電波遮断構造とする場合と比して、保管する携帯電子機器の通信遮断を容易に実現することができるようになる。
【0052】
ちなみに、こうした場合の携帯電子機器通信遮断ロッカーの携帯電子機器の通信遮断機能の付加は、既存のロッカーの函体に上記の如く形成された内函を追加し、その扉体を、電波遮断性を有したものに交換するだけでその具現が可能である。すなわち電波遮断機能を有していない既存のロッカーの函体を流用し、扉体の変更と内函の追加といった簡易な改造を施すだけでその実現が可能である。
【0053】
なお、こうした携帯電子機器通信遮断ロッカーの内函は、導電性を有する金属や、導電性樹脂、導電性繊維などの導電性材料により形成したり、非導電性材料からなる内函函体の表面または内部に導電性材を取り付けて形成したりすることができる。
【0054】
また、こうした携帯電子機器通信遮断ロッカーにおいて、前記内函の開口の周囲に一体形成された戸当り部と、前記扉体及び前記戸当り部のいずれかに取り付けられて、前記扉体が閉じられたときの同扉体と前記戸当り部との隙間を密封する弾性を有した導電性材料からなるシールド部材3とを備えるようにすれば、扉体と戸当り部との間の隙間からの電波の侵入を確実に遮断することができるようになる。
【0055】
電波遮断を確実に行うには、扉体と戸当り部との隙間をシールド部材3によって確実に密封する必要がある。その点、扉体を閉じた状態にロックすると共に、そのロック動作に応じて扉体を戸当り部に近接する方向に移動させるロック部材を備えるようにすれば、扉体をロックすることで、扉体と戸当り部との間にある程度の圧力でシールド部材3ガ挟み込まれるようになる。そのため、シールド部材3による密封を確実に行うことができ、保管する携帯電子機器の外部との通信遮断をより確実に行うことができるようになる。
【0056】
こうしたロック部材は、係合穴と、扉体に設けられてその係合穴への係合に応じて同扉体を閉じた状態にロックする止め金とを備えて構成すると共に、係合穴を、同係合穴への係合に応じて止め金を戸当り部に近接する方向へと案内する形状に形成することで実現することが可能である。この場合、ロック部材のロック動作に、すなわち係合穴への止め金の係合に応じて、係合穴の穴縁部に案内されて止め金が戸当り部美に近接する方向へと移動するようになる。そしてそうした止め金の移動と共に、その止め金の設けられた扉体が戸当り部に近接する方向へと移動し、扉体と戸当り部とに挟まれたシールド部材3に挟持圧が印加されることになる。
【0057】
なおこうした扉体と戸当り部とによるシールド部材3の挟持圧は、大きすぎても小さすぎても電波遮断を十分に行うことが困難になる。その点、扉体及び戸当り部のうちのシールド部材3の取り付けられていない一方と同シールド部材3とが全面的に当接する位置から0.3〜0.7mmだけ戸当り部に向けて扉体を移動させるようにロック部材を構成すれば、適度な圧力でシールド部材3を挟持して、十分に電波遮断を行うことができるようになる。
【0058】
一方、シールド部材3の挟持圧に部位ごとのばらつきがあれば、扉体と戸当り部との間に隙間が発生して電波遮断性が低下する懸念がある。その点、開き角度が3〜6°になるまで蓋体2が閉じられた時点で、扉体及び戸当り部のうちのシールド部材3の取り付けられていない一方と接触するようにシールド部材3を配設すれば、シールド部材3の挟持圧を均一として、電波遮断を確実に行うことができるようになる。
【0059】
また、吸音材や遮音材を取り付けるようにすることもできる。こうした場合には、携帯電子機器の報知音が鳴った場合でも外部に漏れ出す音を小さくすることができるようになる。
【実施例7】
【0060】
図16〜19に示す実施例7の携帯電子機器用電波遮断ロッカーにおいて、蓋体は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部及び嵌合溝が形成され、閉蓋状態で、各嵌合溝に圧縮変形可能なシールド部材が固定される。具体的には図16に示すように、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が階段状に段付き開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にそれぞれヒンジ固定され、開口を二重に覆う外蓋部21及び内蓋部221と、内蓋部221の裏面から開口部側へ突出形成された内蓋突出部220と、本体1の段付きの開口枠11の1段目、2段目の階段状部にそれぞれに当接固定された環状の第二シールド部材32及び第一シールド部材31と、本体1内の開口を縦横に仕切って複数の内部収容空間を構成する縦仕切り板51、横仕切り板52とを具備してなる。
【0061】
内蓋部221の外面には外蓋部21との閉蓋状態での距離を保つために、外蓋部21の戸当り用の突起222が突出固定される(図17)。第一シールド部材31は階段状の開口枠11の2段目の枠前面に微小枠状に突出形成された第一突出枠111の内側部に沿って貼り付け固定されることで、それ自体の内側部が開口の内側部を延長する。第二シールド部材32は階段状の開口枠11の1段目の枠前面に微小枠状に突出形成された第二突出枠112の内側部に沿って貼り付け固定されることで、それ自体の内側部が開口枠の一段目の内側部を延長する。本体1は前面に突出した外枠部12によって外蓋部21の外周を囲う。外蓋部21には開放辺付近に錠が取り付けられ、本体1の外枠部12の内側面に設けられた錠孔に施錠片が突入して閉状態を保持する(図18)。他の特記しない構成は実施例6と同様である。
【実施例8】
【0062】
図20〜24に示す実施例8の携帯電子機器用電波遮断ロッカーは、奥行き方向に薄型の立方体形状の前方が開口した本体1と、本体1の開口内が縦横方向に仕切られることで整列形成された複数の収容空間Sと、本体1の開口の一側辺にヒンジ固定され、外蓋部と内蓋部とが一体的に形成された蓋体2と、蓋体2の開口に当接する内面周囲に設けられたシールド部材3と、本体1及び蓋体2に分離して設けられ、閉蓋状態で組み合されて閉蓋状態を保持する保持構造4とを具備してなる。他の特記しない構成は実施例6と同様である。
【0063】
実施例8では、仕切られた整列空間内にそれぞれ、箱形に一体形成された内函5が組み込まれ、各内函5それぞれに扉状の蓋体2を取り付けるものとしている(図20)。すなわち実施例8は、扉体を一体に取り付けた扉一体型の戸当り90付きの内函5を各整列空間内に取り付けたものである。実施例8の本体1は既存のロッカーの函体やラックとすることができ、この場合、一体化した扉体及び戸当り付き内函からなるアッセンブリを組みつけることで、電波遮断を有した実施例8の携帯電子機器通信遮断ロッカーを低コストかつ極めて簡単に得られる。
【0064】
各整列空間の正面視片側部には、縦方向に戸当り90が設けられ、戸当り90にはマグネットプレートに保持されたマグネット9が正面側に露出して埋め込まれる(図22)。閉蓋時には金属製の蓋体内面がマグネット9に磁着して閉蓋状態を確実に保持する。
【0065】
蓋体2のヒンジ部内部には、図24に示すコイルばね81が蓋内部の下面から上方突出した第一係止材80、及び蓋裏面から蓋内部へ側方突出した第二係止材82によって係止支持される。第一係止材80はコイルばね81のコイル内に嵌入する山型突起であり、第二係止材82は、蓋体2の裏面に当接するコイルばね81の一延長端の上部に係止すべく略水平方向に突出した三角錐型突起である。コイルばね81の他延長端は蓋体2の裏面に設けられたバネ用孔81Hから蓋体2の裏面側に突出し(図24)、突出した先側が、シールド部材3外側の本体1のヒンジ部側の開口側辺に設けられたヒンジ空間内に突出し、シールド部材3の外側面に押しあてられる(図21)。
【実施例9】
【0066】
図25〜27に示す実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、携帯電子機器を保持収容し得る凹状の保持空間を有して本体1内に収容固定された収容材14と、本体1の開口枠11の内角部に開口の周囲に沿って環状に設けられた断面L字状の切り欠き部と、この切り欠き部内に収容固定された環状の弾性材からなるシールド部材3と、蓋体2の開放辺から突出入可能に設けられ、本体1の切り欠き部1Dに係止して閉蓋状態を保持する係止レバー84とを具備してなる。蓋体2の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバー84を有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバー84がスライド又は回転することで、係止レバー84の基部片に隠された蓋体2の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできることが好ましい。
【0067】
係止レバー84はL字板状の先部に、内側への返し部86を有した折曲片が固定されてなり、蓋体2の上面端部に設けられたスライド溝内へ、図25で矢印に示すスライド方向に往復移動可能に収容保持される。このときL字状の一片が蓋体2の蓋天面を覆い、L字状の折曲した他片が外蓋部21の外側面ないし開口枠11の側面を覆うと共に、他片の先から折曲した折曲片が、開口枠11の側面に設けられた切り欠き部1D内へ突入し得る。折曲片が切り欠き部1D内へ突入した閉蓋状態では、折曲片の先端から上方へ微小突出した返し部86と、切り欠き部1Dの切り欠き口を狭めるように突出した返し部16とが互いに鉤状に係止し、閉蓋状態をロックする(図27)。
【0068】
係止レバー84のうち、蓋体2の蓋天面を覆うL字状の一片は、外面が連続山型状の手掛かり85が形成され、係止レバー84の操作時にはこの手掛かり85によってロック係止/解除の操作を行う。
【0069】
内蓋部22は弾性材からなり、外蓋部21の内側に接して本体1の開口内へ突出する枠部を有して倒立凹状に形成される。また収容材14は本体内の開口に沿う枠部を有して凹状に形成され、閉蓋状態においてその上面が前記内蓋部22の突出先端と対向接触し、内蓋部22と共に弾性圧縮される(図27)。
【0070】
実施例9の携帯電子機器用電波遮断ケースは例えば机上や壁面に本体1の底部10の下面が貼り付け固定され、携帯電子機器の所有者の傍に据え付けられる。
【実施例10】
【0071】
図28〜29に示す実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースは、平面視隅丸矩形であって平型の立方体形状の上方が開口した本体1と、本体1の側面上部付近にヒンジ44によってヒンジ固定され、外蓋部21と内蓋部22とが一体的に形成された蓋体2と、携帯電子機器を保持収容し得る凹状の保持空間を有して本体1内に収容固定された収容材14と、本体1の開口枠11の上端面に、開口の周囲に沿って環状に設けられた断面倒立コ字状の切り欠き部と、この切り欠き部内に収容固定された環状の弾性材からなるシールド部材3と、蓋体2の開放辺部及び本体1の開放辺部の各外面に設けられ、互いに係止して閉蓋状態を保持する第一保持バネ410,第二保持バネ420とを具備してなる(図29)。
【0072】
実施例10の携帯電子機器用電波遮断ケースは例えば図28に示すような椅子の背面や壁面に本体1の底部10の裏面が貼り付け固定され、携帯電子機器の所有者の傍に据え付けられる。
【0073】
その他本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、一部構成の組み合わせ、削除、置換、或いは抽出が可能である。例えば実施例1、2或いは実施例3の開閉機構4として、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 本体
11 開口枠
11E 開口先端
13 シールド保持部
2 蓋体
21 外蓋部
210 蓋板
22 内蓋部
3 シールド部材
4 保持機構
5 内函
60 保持床
61,62 保持ブロック
7 ハンドル
84 係止レバー
S 収容空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠によって上方或いは周囲四方のうち一方向に開口した本体と、外蓋部及び内蓋部を一体的に有して前記本体1の開口を開閉する開閉機構付きの蓋体と、蓋体の閉蓋状態を維持する保持機構とから構成され、閉蓋状態で携帯電子機器を密閉状態で収容する収容空間を形成する携帯電子機器用電波遮断ケースであって、
蓋体は、本体の開口枠の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部と、外蓋部の内部から本体の開口枠の内面に沿って本体内へ突出しうる内蓋部とを有し、
前記開口枠は、閉蓋状態において、外蓋部と内蓋部の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部の内側面、内蓋部の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、
この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材が配設され、
閉蓋状態において、シールド部材が嵌合方向に少なくとも10体積%以上圧縮され、前記収容空間が、隙間なく電気導通可能な構成面のみによって閉空間形成されることを特徴とする携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項2】
前記本体は、開口枠の外周に亘って外方へ突出し、周方向に亘る片側の突出面上にシールド部材を保持するシールド保持部を有し、前記蓋体の外蓋部は、閉蓋状態において前記シールド保持部の外周を覆うと共に、その側端部が保持されたシールド部材を挟圧することで、前記収容空間を形成する請求項1記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項3】
前記開閉機構は、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造からなる請求項1又は2記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項4】
本体は、本体枠の内側に開口した内函を有し、
蓋体の前記嵌合溝よりも内側の部分、及び、本体の開口先端よりも内側の部分が、共に一枚の導電性原材の深絞り加工によって一体的に形成された表面材からなる請求項1、2又は3に記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項5】
蓋体は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部及び嵌合溝が形成され、閉蓋状態で、各嵌合溝に圧縮変形可能なシールド部材が固定される請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項6】
本体は、複数の携帯電子機器を収容する収容空間を有すると共に、各携帯電子機器を弾性によって圧縮保持し得る緩衝材からなる仕切り材を有してなり、この仕切り材の圧縮保持部の少なくとも一部が導電性材で構成される請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項7】
蓋体の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバーを有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバーがスライド又は回転することで、係止レバーの基部片に隠された蓋体の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできる請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項8】
収容空間は、携帯電子機器のストラップ付属品を収容し得る付属収容部を開閉機構側に有する請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項1】
開口枠によって上方或いは周囲四方のうち一方向に開口した本体と、外蓋部及び内蓋部を一体的に有して前記本体1の開口を開閉する開閉機構付きの蓋体と、蓋体の閉蓋状態を維持する保持機構とから構成され、閉蓋状態で携帯電子機器を密閉状態で収容する収容空間を形成する携帯電子機器用電波遮断ケースであって、
蓋体は、本体の開口枠の外面に沿って閉蓋しうる外蓋部と、外蓋部の内部から本体の開口枠の内面に沿って本体内へ突出しうる内蓋部とを有し、
前記開口枠は、閉蓋状態において、外蓋部と内蓋部の間に嵌合すると共に、開口に沿って、外蓋部の内側面、内蓋部の外側面の少なくともいずれかと周状に接触した周接触部を有してなり、
この周接触部内には、開口周りに環状に繋がる導電性材からなるシールド部材が配設され、
閉蓋状態において、シールド部材が嵌合方向に少なくとも10体積%以上圧縮され、前記収容空間が、隙間なく電気導通可能な構成面のみによって閉空間形成されることを特徴とする携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項2】
前記本体は、開口枠の外周に亘って外方へ突出し、周方向に亘る片側の突出面上にシールド部材を保持するシールド保持部を有し、前記蓋体の外蓋部は、閉蓋状態において前記シールド保持部の外周を覆うと共に、その側端部が保持されたシールド部材を挟圧することで、前記収容空間を形成する請求項1記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項3】
前記開閉機構は、外蓋部/内蓋部のいずれか一方と、これに対向する開口枠との各側面先端から螺子形成した螺合構造からなる請求項1又は2記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項4】
本体は、本体枠の内側に開口した内函を有し、
蓋体の前記嵌合溝よりも内側の部分、及び、本体の開口先端よりも内側の部分が、共に一枚の導電性原材の深絞り加工によって一体的に形成された表面材からなる請求項1、2又は3に記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項5】
蓋体は、平面視同一辺に形成された回動軸を開閉機構とする内蓋、外蓋からなる二重の蓋構造からなり、内蓋と外蓋のそれぞれに前記内蓋部及び嵌合溝が形成され、閉蓋状態で、各嵌合溝に圧縮変形可能なシールド部材が固定される請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項6】
本体は、複数の携帯電子機器を収容する収容空間を有すると共に、各携帯電子機器を弾性によって圧縮保持し得る緩衝材からなる仕切り材を有してなり、この仕切り材の圧縮保持部の少なくとも一部が導電性材で構成される請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項7】
蓋体の表面には、レバーの基部と共に露出する係止レバーを有し、完全閉蓋にいたるまでの蓋の開閉量に連動して係止レバーがスライド又は回転することで、係止レバーの基部片に隠された蓋体の露出量が可変し、蓋の開閉量を確認することのできる請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【請求項8】
収容空間は、携帯電子機器のストラップ付属品を収容し得る付属収容部を開閉機構側に有する請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれかに記載の携帯電子機器用電波遮断ケース又はロッカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−54369(P2012−54369A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195234(P2010−195234)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(509060512)有限会社パナシア (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(509060512)有限会社パナシア (3)
【Fターム(参考)】
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