説明

携帯電話用防音ボックス

【課題】本発明は、パネルの組立てが内側から行えると共に、組立金具の突起が露出せず、かつ建物内のコーナー部に設置することが可能な携帯電話用防音ボックスを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、背面用壁部3および左、右側用壁部4,5は、前記床基台部2と前記天井部6との間でその上下端が内側より締結可能とされる連結機構を有し、前記左、右側用壁部4,5、床基台2及び天井部6の開放側端の周縁には防音パッキン22が取り付けられるとともに、該左、右側用壁部4,5の開放側端間には、扉部7が開閉自在な状態で枢着された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話用防音ボックスに関する。詳しくは駅構内などのように騒音の激しい場所、あるいはホテルのラウンジなどのように静寂な場所において騒音を気にせず、かつ他人に迷惑をかけずに通話をすることができる携帯電話用防音ボックスに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より公衆電話ボックスは、路上脇に設置されるものであり、防犯のために内部が確認できるように側壁やドアにガラスが組み込まれた構成のものが多く、防音効果よりも安全性に重点が置かれているのが現状である。
【0003】
しかし近年、携帯電話の需要が増加し、公衆電話の利用が激減する反面、商業ビルや駅構内など、あらゆる場所において携帯電話による通話が行われている。例えば、地下街や駅構内などの場所では非常に騒音が高く、聞き取りにくいために何度も聞き返したり、大声で会話をしている姿を見かける。また、ホテルなどのラウンジ等では非常に静かであり、携帯電話による会話では、会話がラウンジ内に響き、他人に迷惑をかけることが多々ある。
【0004】
いっぽう、楽器の練習や発声練習等を行う場合の防音室として図8に示すような、発明がある。この発明は、遮音性能を有するドアパネル101、壁パネル102、床パネル103、天井パネル104およびこれらのパネルを締着固定する組立金具105とからなる。この組立金具105は、L字型のコーナー金具と本体金具とから形成し、コーナー金具は、ドアパネル101、壁パネル102、床パネル103、天井パネル104への固定部と係合受部とから成る。係合受部に係合する掛止具と、掛止具を締め付ける操作レバーから構成され、これら組立金具105によってドアパネル101、壁パネル102、床パネル103、天井パネル104を連結する(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−17868号公報(要約書、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記構成の防音室では、床パネルを設置場所に置いた状態で防音室の内側から前記ドアパネル、壁パネル、天井パネルの組立てが組立金具によって組立・分解作業が行えるものであるが、レバーによって容易に分解することができることから公衆電話ボックスのように不特定多数の者が使用する場合には、故意にレバーを解除し、他の者が使用する際に倒壊するなどの問題が起こる恐れがある。
【0007】
また、楽器の練習や発声練習等を行う場合の防音室ではある程度の広さが確保され、特定の者が使用するために、事前の注意を促すことによって前記壁パネルに露出突起する組立金具に衣服や楽器等を引っ掛けることを未然に防ぐことができるが、電話ボックスのように非常に狭い場所で不特定多数の者が使用する場合には、衣服等を引っ掛けることでレバーが解除してパネルが脱落する、あるいは衣服等を傷つけるなどの問題がある。
【0008】
また、駅構内や地下街、あるいはホテルのラウンジなどの建物内に電話ボックスを設けようとする場合には、目立たなく、かつ通行の邪魔とならない場所での設置が必要となる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、パネルの組立てが内側から行えると共に、組立金具の突起が露出せず、かつ建物内のコーナー部に設置することが可能な携帯電話用防音ボックスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る携帯電話用防音ボックスは、遮音性を有する背面用壁部、左、右側用壁部、扉部と床基台部および天井部とから構成され、これらを組み立てる携帯用電話ボックスにおいて、前記背面用壁部および左、右側用壁部は、前記床基台部と前記天井部との間でその上下端が内側より締結可能とされる連結機構を有し、前記左、右側用壁部の開放側端の周縁には防音パッキンが取り付けられるとともに、該左、右側用壁部の開放側端間には、窓部が取り付けられる扉部が開閉自在な状態で枢着された構成とする。
【0011】
ここで、前記背面用壁部、左、右側用壁部、扉部と床基台部および天井部は少人数での搬送が可能とし、床基台部をコーナー部に載置することにより床基台部内より背面用壁部および前記左側用壁部並びに右側用壁部、天井部、扉部の取り付けが一人で行うことが可能となる。
【0012】
これにより、騒音の激しい駅構内などに設置した場合には外部の騒音に邪魔されずに携帯電話による会話が行え、静寂なホテルのロビーに設置した場合には他人に迷惑を掛けずに会話を行うことが可能となる。
【0013】
本発明による携帯電話用防音ボックスでは、床パネル、壁パネル、天井パネルおよびドアパネルを設置場所に運び入れての組立てが可能となるために、組み立てた状態での運び入れに比べて手間が省けて運搬コストが安くなる。
【0014】
また、内側からの組立てが行えるために、コーナー部分などのように外側のスペースが確保できない個所でも床パネルを設置することにより動かすことなく組立てが行えるものである。
【0015】
さらに、組立てに際しては、壁面パネルに組立金具などの突起が露出することがないために、使用者の衣服を引っ掛けることなく、かつ故意に組立を解除するような事故を未然に防ぐことができる。
【0016】
また、設置場所での組立・分解が可能となることから、例えば公演会場やイベント会場など特定場所でのレンタル設置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの一例を示す分解構成図、図2は、図1における組立て状態の斜視図、図3は、図2A−A線における断面説明図である。
【0018】
ここで示す電話ボックス1は、床基台部2とそれぞれ防音材が装着された背面用壁部3、左側用壁部4、右側用壁部5、天井部6および扉部7から構成される。そして目的とする設置場所に前記床基台部2を仮置きして位置決めをする。この床基台部2の上に前記背面用壁部3、左側用壁部4および右側用壁部5を順次組立て、これらの背面用壁部3、左側用壁部4および右側用壁部5の上に天井部6を取り付けて各部材に設けられた4個所の扉受け部8が形成される。この扉受け部8に防音パッキン22を装着して前記扉部7を開閉自在に取り付けて電話ボックス1が組み立てられる。
【0019】
そこで前記床基台部2は、建物内のコーナーに設置できるように背面側に90度角度の辺を有する五角形状とされる。この床基台部2の各辺に沿って背面用壁部取付け用ネジ穴9、左側用壁部取付け用ネジ穴9A、右側用壁部取付け用ネジ穴9Bがそれぞれ穿孔される。
【0020】
次に、前記背面用壁部3、左側用壁部4および右側用壁部5は、スチール製の枠体内に防音材10が装着された構成とされるものであり、これらの下端には前記床基台部2の各辺に沿って背面用壁部取付け用ネジ穴9、左側用壁部取付け用ネジ穴9A、右側用壁部取付け用ネジ穴9Bの位置に応じて皿状取付穴19、19A、19Bがそれぞれ内側に突設される。
【0021】
また、図1に示すように、前記背面用壁部3、左側用壁部4および右側用壁部5上端には、図4に示すように前記天井部6の各辺に沿って貫通されるネジ貫通穴11とネジ挿入穴18に相対するボルト状のネジ部12およびネジ部12Aが突設される。さらに、前記背面用壁部3と左側用壁部4および右側用壁部5との接続端面にはスポンジパッキン13が前記背面用壁部3の左,右に貼り付けられるものである。
【0022】
前記天井部6は、前記背面用壁部3、左側用壁部4および右側用壁部5の上端に突設されるネジ部12に相対するネジ貫通穴11とネジ部12Aに相対するネジ挿入穴18が設けられると共に、天窓14が取り付けられている。
【0023】
また、扉部7には窓部14Aが設けられ、一端側にはノブ15が設けられ、他端側には蝶番部材16が取り付けられる。
【0024】
次に、電話ボックス1の組み立て工程を詳述する。
まず、前記床基台部2をホールなどのコーナーに嵌合せるように設置する。そして前記背面用壁部3を床基台部2に載せて、該背面用壁部3の皿状取付穴19と前記床基台部2の背面用壁部取付け用ネジ穴9を合せた状態で図5に示すように、皿ネジ17によって前記床基台部2上に締結固着する。
【0025】
次に、前記背面用壁部3の両側に左側用壁部4および右側用壁部5を配置し、その接続端面に取り付けられるスポンジパッキン13を前記背面用壁部3の両側端面に押圧しながら前記左側用壁部4および右側用壁部5の皿状取付穴19A、19Bを床基台部2の左側用壁部取付け用ネジ穴9Aおよび右側用壁部取付け用ネジ穴9Bに合せた状態で皿ネジ17によって前記床基台部2上に締結固着する。
【0026】
このようにして前記床基台部2上に立設された前記背面用壁部3および前記左側用壁部4並びに右側用壁部5の上端にはボルト状のネジ部12およびネジ部12Aが突設されることになる。そこで前記ネジ部12は前記天井部6を貫通する長さを有し、前記ネジ部12Aは前記ネジ部12の約1/2長さとされる。
【0027】
そして前記それぞれのネジ部12およびネジ部12Aに対して天井部6のネジ貫通穴11およびネジ挿入穴18を挿通して天井部6を前記背面用壁部3および前記左側用壁部4並びに右側用壁部5の上端に取り付ける。ここで、前記天井部6を貫通するネジ部12に対しては、ナット部材20によって締結固定する。また、必要に応じて前記図1に示すような断面L字状に折曲形成される転倒防止金具21を取り付けるものとする。
【0028】
また、前記天井部6のネジ挿入18に挿穴通されるネジ部12Aは、図6に示すように、スチール製枠体23に挿通された状態で、ナット部材20によって締結固定するものである。
【0029】
次に、扉部7を取り付ける前の状態の扉受け部8の開口端に沿って図3に示すように、防音パッキン22を取り付ける。そして扉部7の蝶番部材16を前記右側用壁部5の開放端面に連結固定することによって前記扉部7を閉めた場合に、前記扉部7が前記防音パッキン22と圧接した状態となり内外からの音を遮断することができる。
【0030】
このようにして組み立てられた電話ボックス1内の前記背面用壁部3、前記左側用壁部4、右側用壁部5および扉部7の内壁面に対して図7に示すように、開口率が32〜35%程度となるように吸音穴24が設けられる反射音軽減内面板25が取り付けられる。
【0031】
次に、図7(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)に示すのは、電話ボックス1の平面形状が異なる他の例を示すものである。
ここで、図7(イ)、(ロ)で示すように、屋内のコーナー部に設置できるような形状構造とすることが最も望ましいものであるが、展示会場や公演会場などに短期間設置する場合には図7(ハ)、(ニ)で示される形状構造であっても構わない。
【0032】
以上の構成よりなる本発明の携帯電話用防音ボックスでは、少人数での搬送が可能な部品点数とし、床基台部2をコーナー部に載置することにより床基台部2内より背面用壁部3および前記左側用壁部4並びに右側用壁部5、天井部6、扉部7の取り付けが一人で行うことが可能となる。
【0033】
また、取付けに際しては取付け金具などが突出することがなく、故意による取り外しが不可能となる。また、前記背面用壁部3および前記左側用壁部4並びに右側用壁部5、扉部7内面に吸音穴24が設けられる反射音軽減内面板25を取り付けることで締結部材に直接に触れることがなく、衣服などを引っ掛けることがない。
【0034】
このような携帯電話用防音ボックスにおける遮音効果を詳述する。
地下街や駅構内の平均的な音量は90〜100デシベルとされ、通常会話の音量は40〜55デシベルの範囲とされる。また、通常の会話が聞こえない音量は20〜30デシベルとされる。
【0035】
また、会話の周波数としては、男子の場合では100〜200Hz バス:80Hz以下とされ、女子の場合では200〜400Hz ソプラノ:1000Hz以下とされる。
【0036】
そこで本発明の携帯電話用防音ボックスをコーナーに設置し、該携帯電話用防音ボックスに音源を設け、前記携帯電話用防音ボックスの扉部より距離1mおよび高さ1mの位置に騒音計測器を配置して音圧(dB)の測定を行った結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
例えば、男の人は125Hzの周波数域で比較的大きい音声(86.7dB)で会話した場合には、携帯電話用防音ボックスの扉部より1mの位置で58.7(dB)となり、扉部に二重窓を設置した場合には56.7(dB)となり約30(dB)の吸音がされたことになる。
【0039】
すなわち男女ともに比較的大きな声で会話した場合でも約30(dB)の吸音がされることにより一般的なホテルのロビーの音量(40〜50dB)となり他人に会話を聞き取られることなくプライベートな会話を楽しむことが可能となる。
【0040】
また、本発明の携帯電話用防音ボックスを駅構内などの騒音の激しい場所に設置した場合では、約50(dB)の吸音がされることによりボックス内の音量が(40〜50dB)の環境となり、通常の通話を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの一例を示す分解構成図である。
【図2】図1における組立て状態を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線における断面説明図である。
【図4】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの天井部の内面側を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの床基台部と背面用壁部および前記左側用壁部並びに右側用壁部との接続機構の一例を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの天井部と背面用壁部および前記左側用壁部並びに右側用壁部との接続機構の一例を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの防音性壁部材の一例を示す説明図である。
【図8】本発明を適用した携帯電話用防音ボックスの他の形状構造を示す説明図である。
【図9】従来の組立式防音室の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 電話ボックス
2 床基台部
3 背面用壁部
4 左側用壁部
5 右側用壁部
6 天井部
7 扉部
8 扉受け部
9 背面用壁部取付け用ネジ穴
9A 左側用壁部取付け用ネジ穴
9B 右側用壁部取付け用ネジ穴
10 防音材
11 ネジ貫通穴
12、12A ネジ部
13 スポンジパッキン
14 天窓
14A 窓部
15 ノブ
16 蝶番部材
17 皿ネジ
18 ネジ挿入穴
19 皿状取付穴
19A 皿状取付穴
19B 皿状取付穴
20 ナット部材
21 転倒防止金具
22 防音パッキン
23 スチール製枠体
24 吸音穴
25 反射音軽減内面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音性を有する背面用壁部、左、右側用壁部、扉部と床基台部および天井部とから構成され、これらを組み立てて形成される携帯電話用防音ボックスにおいて、
前記背面用壁部および左、右側用壁部は、前記床基台部と前記天井部との間でその上下端が内側より締結可能とされる連結機構を有し、
前記左、右側用壁部の開放側端の周縁には防音パッキンが取り付けられるとともに、該左、右側用壁部の開放側端間には、窓部が取り付けられる扉部が開閉自在な状態で枢着される
ことを特徴とする携帯電話用防音ボックス。
【請求項2】
前記床基台部は、屋内のコーナー部に密接する形状とされる
ことを特徴とする請求項1記載の携帯電話用防音ボックス。
【請求項3】
前記背面用壁部および左、右側用壁部並びに扉部内面に無数の吸音穴が設けられる反射音軽減内面板が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の携帯電話用防音ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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