摂食機能評価用スプーン、摂食機能評価システム及び摂食機能評価方法
【課題】被験者の摂食機能の評価が、日常の食事場面を通して従来方法より正確に行えるようにする。
【解決手段】摂食機能評価用スプーン20のさじ部23の近傍に、磁界変化検出部を設けた。そして、被験者の唇の近傍に磁石11を取り付けておき、スプーン20のさじ部23が唇bに接近して口腔内に挿入したタイミングを磁界変化検出部の出力から判断できるようにする。さらに、そのようにして検出された、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングをトリガとして、摂食に関与する機能の状態を各センサで検出する。
【解決手段】摂食機能評価用スプーン20のさじ部23の近傍に、磁界変化検出部を設けた。そして、被験者の唇の近傍に磁石11を取り付けておき、スプーン20のさじ部23が唇bに接近して口腔内に挿入したタイミングを磁界変化検出部の出力から判断できるようにする。さらに、そのようにして検出された、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングをトリガとして、摂食に関与する機能の状態を各センサで検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食機能の評価のために適用される好適な摂食機能評価用スプーン、及びそのスプーンを使って行われる摂食機能評価システム並びに摂食機能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食機能障害とは、食物の口腔内への取り入れ,咀嚼,食塊形成,食塊の送り込み,嚥下反射,食道への移送という、一連の摂食運動過程の、一つあるいは複数の運動に障害を来すことである。特に、嚥下反射の遅延や消失により、本来、食道へ流入すべき食塊の一部が気管の方へ侵入するという誤嚥が発生して、最悪の場合には、誤嚥性肺炎や窒息などがおこる危険性がある。
この障害は、脳血管性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの多くの疾病の一次障害(疾患が直接の原因となって生じる障害)や、二次障害(疾患の安静によって生じる障害)として出現する。さらに、認知症患者や虚弱高齢者にも、この障害を合併する者が増加している。
摂食機能障害は、リハビリテーションを行うことでその機能改善が可能であり、そのためにはどのような摂食機能障害が起きているのかを、早期に正しく診断して対応することが重要である。
【0003】
従来の摂食機能障害の診断手法としては、嚥下造影検査、内視鏡検査、頚部聴診法が知られている。これらの診断手法の内で、嚥下造影検査は、X線装置を使って造影剤入り模擬食品を摂食させ、確実に誤嚥の有無を調べる検査であるが、X線を投射しながらの検査であるため、検査場所の制約や被爆のリスクなどから、日常的な摂食機能の状態を検査できるものではない。また、嚥下造影検査結果から誤嚥の原因や摂食機能の状態を診断できる医師が少ないため、適切なリハビリテーション指示をもらうことが困難である。
内視鏡検査は、特定の器官や組織に限って、直接的に内視鏡で見るものであるため、診断技能を持った医師であれば、誤嚥の診断は可能であるが、その診断が断片的で特定の器官や組織に限られる点が問題である。
頚部聴診法は、検査場所の制約や検査のリスクがない半面、誤嚥の診断の技能が必要であり、特に口腔や咽頭内部に発生する他音と誤嚥を区別するのが困難であるという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するのに既に知られた手法として、特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」がある。
特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」は、甲状軟骨の動きに関与する筋の収縮を検出する筋収縮検出手段と、飲み込んだものが咽頭周辺部を通過する音を検出する音検出手段と、甲状軟骨の動きを検出する手段と、呼吸の検出手段などを設けて、これらの検出手段の検出データを時系列に同期させて表示させるものである。
各検出手段は、具体的には、頚部の近傍や胸や鼻などにマイクロフォンや温度センサなどのセンサを取り付けることで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−14727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」によると、比較的小型のセンサを被験者の上半身の各部に取り付けるだけで、食物の飲み込みに関する評価が可能であり、誤嚥などの摂食機能障害の検出が、被験者に与える負荷が比較的少ない状況で、良好に行える。即ち、健常者が摂食する場合、口腔内の食塊を食道に移送するためには嚥下反射が、無呼吸期間に行われ、その嚥下反射が無呼吸期間でない期間に行われた場合には、摂食機能障害である可能性があり、これらの判断が、各センサの出力の表示から判る。被験者にとっては、比較的小型のセンサを被験者の上半身の各部に取り付けるだけでよく、さらに被験者の日常の食事場面を通して評価できる効果がある。
【0007】
ところで、これらのセンサなどを使って摂食機能障害についての評価を行う上で、被験者に摂食動作の開始を指示して、その摂食開始からの各センサ出力の変化を観察することが重要である。即ち、食物を口腔内に入れたタイミングが判らないと、センサ出力が嚥下反射であるのか、それ以外の反応であるかの判断ができない。無呼吸についても、食物を口腔内に入れたタイミングが判らないと、嚥下反射に連動した無呼吸かどうか判断がつかない。
また、摂食機能障害を正確に判定する要因の1つとして、食物を口腔内に入れたタイミングから嚥下反射までの時間についても、摂食機能障害の程度や原因を判断する上で重要な評価情報であり、このような点からも食物を口腔内に入れたタイミングが重要である。
【0008】
このため、従来、この種のシステムで摂食機能障害の有無を評価する場合には、被験者が摂食するのを介護者が横で見ていて、その介護者が摂食開始を指示するスイッチを持って、食物を運ぶスプーンが唇に触れたタイミングでそのスイッチを押すなどの対処が必要であった。
【0009】
しかしながら、介護者が被験者の動作を見ながら手動でスイッチを押すようにすると、押すタイミングが介護者によって異なり、常時、均一な状態での評価が行われているとは言えない状況であった。また、介護者が常時スイッチを操作しなければならないのは、介護者にとって負担が大きいという問題があった。
【0010】
また、ここまでは摂食機能障害を評価する場合の問題について説明したが、広い概念での摂食機能障害について考えた場合、指示された一口量を厳守してスプーンにのせているのか、食物を口腔内に入れる動作や口腔内に移す動作が正しく行えているのか、一回にスプーンから捕食できた量はどの程度か、一回の食事あたりの運搬回数や実摂取量などの評価を行うことも重要である。しかしながら、従来の被験者の各部にセンサを着けて評価を行うシステムでは、食塊を飲み込む動作である嚥下反射運動が判るだけであり、それらを検出することは不可能であった。
【0011】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、被験者の摂食機能の評価が、日常の食事場面を通して従来方法より正確に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の摂食機能評価用スプーンは、食物を口腔内に取り込むさじ部を備えたスプーンにおいて、そのさじ部の近傍に磁界変化検出部を設けたものである。
このように構成したことで、被験者の唇の近傍に磁石を取り付けておくことで、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを判断できるようになる。従って、そのさじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングをトリガとして、摂食機能を評価できるようになる。
【0013】
また本発明の摂食機能評価システム及び摂食機能評価方法は、被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価するものである。
スプーンは、食物を口腔内に取り込むさじ部を備えたスプーンにおいて、そのさじ部の近傍に磁界変化検出部を設けたものを使用する。
そして、被験者の嚥下反射などの反応を検出する検出センサ部を設け、スプーンの磁界変化検出部で検出された磁石による磁界変化から、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを検出し、検出したタイミング後に検出センサ部で検出される反応から、摂食機能の評価を行うものである。
このように評価を行うことで、食物を口腔内に挿入したタイミングが判り、摂食機能についての評価を、介護者がスイッチなどを操作することなく正確に行えるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の摂食機能評価用スプーンによって、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングが磁界変化として検出でき、その検出タイミングをトリガとして、嚥下反射などを評価できるようになる。従って、食物を口腔内に挿入したタイミングが判り、その後の嚥下反射などの検出で、摂食機能を正確に評価できる効果を有する。
【0015】
この場合、磁界変化検出部は、励磁用コイルと検出用コイルとを設け、励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、検出用コイルでの周波数信号の検出状態の変化から磁界変化検出を行う構成としたことで、金属製の食器にスプーンを挿入した状態と、スプーンを口腔内に挿入した状態とを区別できるようになり、スプーンを口腔内に挿入した状態を、誤検出なく正確に検出できるようになる効果を有する。
【0016】
また、さじ部に加わる荷重を検出する歪みゲージを備えたことで、その歪みゲージの検出出力から、食器から取り出した、またはスプーンで口腔内に入れた食物の重さを判断でき、どの程度の量、捕食したのかが判断できるようになる効果を有する。特に、食物を口腔内に挿入したタイミングが判ることで、食物を口腔内に挿入する直前のさじ部に加わる加重と、さじ部を取り出す際の加重との比較から、摂食した重量を正確に判断できるようになる。
【0017】
また本発明の摂食機能評価システム及び摂食機能評価方法によると、食物を口腔内に挿入するタイミングがスプーンに設けた磁界変化検出部から判り、嚥下反射検出センサ部などの出力に基づいた摂食機能についての評価を、介護者が別途スイッチなどを操作することなく正確に行えるようになり、簡単かつ正確に摂食機能を評価できるようになる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による摂食機能評価システムの例を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による評価処理例のフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態によるスプーンの評価用検出波形の概要を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと3つの波形などを示した評価用検出波形例(健常者の例)を示す波形図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと3つの波形などを示した評価用検出波形例(症例1)を示す波形図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと2つの波形などを示した評価用検出波形例(症例2)を示す波形図である。
【図9】永久磁石の配置例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図12】本発明の第2の実施の形態によるスプーンの検出波形の概要を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図15】本発明の第3の実施の形態によるスプーンの検出波形の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
1.第1の実施の形態
1.1 システム全体の構成例(図1)
1.2 検出部の構成例(図2)
1.3 スプーンの構成例(図3)
1.4 評価処理の説明(図4〜図8)
1.5 磁石の配置例の説明(図9)
2.第2の実施の形態(図10〜図12)
3.第3の実施の形態(図13〜図15)
4.変形例
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 システム全体の構成例]
まず、図1を参照して、第1の実施の形態の例のシステム構成例について説明する。
本実施の形態においては、被験者aの唇bの近傍に、永久磁石11を配置する。永久磁石11は、例えば円形などの粘着シートに磁石を貼り付けた上で、その粘着シートを、唇bの上や下などに貼り付けて、永久磁石11を唇bの近傍に固定させる。
【0021】
そして、測定データを取り込む装置であるパーソナルコンピュータ装置(PC)70に、USBコントローラ40として構成された測定データ検出部を接続してある。USBコントローラ40は、パーソナルコンピュータ装置70のUSB(Universal Serial Bus)ポートに、USB方式のケーブルを介して接続される、機器としてある。USBコントローラ40の構成例については、図2で説明する。USB方式のケーブルで接続させるのは1つの例であり、別の伝送方式で接続しても良い。
【0022】
USBコントローラ40には、スプーン20及び各センサ61,62,63が接続してある。
スプーン20は、食物を被験者aが口に運ぶものであり、本実施の形態のスプーン20には、コイルから構成される磁界検出部を組み込んである。磁界検出部を組み込んであることで、被験者aの唇bの近傍に貼り付けた永久磁石11が形成する直流磁場内をスプーンが移動することでコイルに誘起電圧が発生し、スプーンの挿入・取り出しを検出する。また、歪みゲージについても、スプーン20に組み込んであり、スプーン20の先端のさじ部23に加わる荷重を検出する構成としてある。このスプーン20の詳細な構成についても後述する。
【0023】
USBコントローラ40に接続されるセンサ部としては、温度検出センサ61と、嚥下音検出センサ62と、嚥下反射検出センサ63とを備える。
温度検出センサ61は、サーミスタなどの温度検出素子を使用した温度検出センサで構成し、被験者aの鼻の鼻孔に取り付けて、吸気及び呼気の温度を検出する。この温度検出センサ61は、例えばフィルム状のセンサを鼻の下に貼り付ける構成とする。
嚥下音検出センサ62は、音に相当する比較的高い周波数成分を検出するセンサであり、例えばマイクロフォンや振動センサで構成し、サージカルテープなどで被験者aの中咽頭部の近傍の頚部に装着する。
嚥下反射検出センサ63は、変位状態を検出するセンサであり、例えば加速度センサなどで構成されるセンサであり、被験者aの甲状軟骨部の動きを検出するものであり、サージカルテープなどで被験者aの甲状軟骨部の近傍の頚部に装着する。
これらのセンサ61,62,63の検出信号を、ケーブルを介してUSBコントローラ40に供給し、USBコントローラ40内でデータ化し、USB方式のケーブルを介してパーソナルコンピュータ装置70に供給する。
【0024】
そして、USBコントローラ40からパーソナルコンピュータ装置70に供給されたデータをパーソナルコンピュータ装置70内で解析し、摂食機能に関する評価を行う。即ち、パーソナルコンピュータ装置70には、検出データから摂食機能に関する評価を行うためのソフトウェア(プログラム)を実装させてあり、そのソフトウェアの実行で、評価処理を行う。
評価結果は、パーソナルコンピュータ装置70が備える(又は接続された)ディスプレイに表示させる。
また、各センサの出力波形を、このディスプレイに表示させる。或いは、図示しないプリンタで、評価結果や波形などを印刷させてもよい。
【0025】
[1.2 検出部の構成例]
図2は、測定データ検出部としてのUSBコントローラ40と、そのUSBコントローラ40に接続される各センサ61〜63及びスプーン20の構成を示した図である。
サーミスタなどで構成される温度検出センサ61の出力は、USBコントローラ40内で増幅器51に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ52に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ52の出力を処理ボード50に供給する。
嚥下音検出センサ62についても、センサ出力をUSBコントローラ40内の増幅器53に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ54に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ54の出力を処理ボード50に供給する。
嚥下反射検出センサ63についても、センサ出力をUSBコントローラ40内の増幅器55に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ56に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ56の出力を処理ボード50に供給する。
処理ボード50内では、それぞれのセンサ61,62,63の出力信号の変化を、適切な波形データとする。
【0026】
スプーン20は、歪みゲージ24と励磁コイル25と検出コイル26とを備える。
歪みゲージ24は、スプーン20内の歪みアンプ28により増幅した信号をUSBコントローラ40に供給し、USBコントローラ40内のノイズカットフィルタ45で高域成分などのノイズをカットした後、処理ボード50に供給する。
処理ボード50では、歪みゲージ24の出力から、スプーン20のさじ部23に加わる荷重、即ちさじ部23に入れられた食物の重量を検出し、その検出値をコンピュータ装置70に供給する。
【0027】
励磁コイル25は、USBコントローラ40内の高周波発振回路41から高周波信号が供給され、その高周波信号による励磁動作が行われる。高周波発振回路41から供給される高周波信号は、例えば数kHz〜数十kHz程度の周波数とする。この高周波発振回路41からの高周波信号は、基本的に評価中は常時出力されている。
検出コイル26は、励磁コイル25に隣接した位置に配置してあり、検出コイル26の出力を、スプーン20内の電圧フォロア回路27を介して、USBコントローラ40側の差動増幅器43の一方の入力端に供給する。また、差動増幅器43の他方の入力端に、高周波発振回路41の出力を、アッテネータ42を介して供給する。
そして、差動増幅器43で励磁コイル25に供給する高周波信号と検出コイル26で検出された信号との差分が検出されて、その差分の信号を処理ボード50に供給する。
【0028】
処理ボード50では、スプーン20の検出コイル26からの信号に基づいて、スプーン20のさじ部23を被験者aの口腔内に挿入したことを検出する。また、この口腔内にさじ部23を挿入した状態から、外部に取り出したことを検出する。さらに、図示はしないが、食物が入った食器にスプーン20を挿入した状態、及びその食器からスプーン20を取り出した状態も検出できる。これらの各検出の具体的な検出状態については後述する。
【0029】
[1.3 スプーンの構成例]
図3は、本実施の形態のスプーン20の具体的な構成例を示した図である。
図3(a)は、上から見た平面図であり、図3(b)は、縦断面図である。
スプーン20は、使用時に手で持つ部分であるベース部21に、細長形状の柄部22を介して先端にさじ部23が取り付けてある。この場合、柄部22の地中に幅狭部22aを有し、その幅狭部22aに歪みゲージ24を配置してある。
また、食物を運ぶ部分である、さじ部23には、励磁コイル25と検出コイル26とが並べて配置してある。
【0030】
スプーン20のベース部21内には、電圧フォロア回路27と歪みアンプ回路28とコネクタ基板29とが配置してあり、図2で既に説明したように、歪みゲージ24が歪みアンプ回路28に接続してあり、検出コイル26が電圧フォロア回路27に接続してあり、それぞれの信号がコネクタ基板29に接続されたケーブルを介して、USBコントローラ40側に出力される。
【0031】
なお、歪みゲージ24や各コイル25,26は、基本的にスプーン20の内部に配置して、外側からは歪みゲージ24や各コイル25,26が見えないようにするのが好ましい。例えば、コイル25,26や歪みゲージ24が配置された上から、樹脂モールドなどを施して、コイルや歪みゲージに利用者が触れないような構成とすることが考えられる。
【0032】
[1.4 評価処理の説明]
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態のシステムで評価を行う場合の処理例について、順に説明する。ここでは、被験者の前に置かれた金属製の食器に液体などの食物を入れ、スプーン20のさじ部23でその食物を掬って、口腔内への摂食動作を被験者aに実行させ、その摂食機能を評価するものである。被験者aには、図1に示したように、唇の近傍に永久磁石11を取り付けてある。
この図4のフローチャートの処理は、例えば、USBコントローラ40からの検出データが供給されるパーソナルコンピュータ装置70内での検出データの解析により実行される。
【0033】
まず、検出コイル26の出力及び歪みゲージ24の出力から、スプーン20のさじ部23を食器に挿入した状態か、あるいは、口腔内に挿入した状態か、あるいは、いずれでもないかの判断を行う(ステップS11)。いずれでもない状態では、ここでの判断が繰り返し行われる。
ここで、さじ部23を食器に挿入した状態の判断は、食器にスプーン20が挿入されることで、周囲の環境の変化で、励磁コイル25からの発振信号が検出コイル26で検出し難い状態となり、検出コイル26の出力の高周波成分の減衰から検出できる。また、歪みゲージ24の出力についても安定しない状態になることからも、さじ部23を食器に挿入した状態であると検出できる。これら検出コイル26の出力と歪みゲージ24の出力との2つを総合的に判断して、食器に挿入した状態か否か判断するのが好ましい。但し、いずれか一方だけから判断してもよい。
また、ステップS11で、スプーン20のさじ部23が、口腔内に挿入されたことの検出については、励磁コイル25からの高周波信号と永久磁石11との作用で、検出コイル26が永久磁石11に接近した際に生じる、検出コイル26の波形変化から検出される。
【0034】
ステップS11で、食器に挿入した状態と判断した場合には、ステップS12に移り、食器からのスプーン20の取り出しがあったか否か判断する。この判断は、ステップS11で判断した検出コイル26の出力の高周波成分の減衰が無くなることから検出できる。また、歪みゲージ24の出力からも判断できる。
食器からの取り出しを検出した場合には、ステップS11でスプーン20を食器に挿入したと判断した状態になってから、ステップS12でスプーン20が食器から取り出されるまでの時間を判断する(ステップS13)。そして、歪みゲージ24の出力から、スプーン20で運んでいる食物の重量を判定する(ステップS14)。
その後、ステップS11の判断に戻る。
【0035】
ステップS11で、スプーン20が被験者の口腔内に挿入されたと判断した場合には、その口腔内に挿入したと判断したタイミングで、トリガパルスを発生させる(ステップS15)。トリガパルスに基づいた動作は後述する。
さらにその後、スプーン20のさじ部23が口腔外へ出たか否か判断する(ステップS16)。この口腔内から取り出したことの検出についても、励磁コイル25からの高周波信号と永久磁石11との作用で、検出コイル26が永久磁石11に接近した際に生じる、検出コイル26の波形変化から検出される。但し、口腔内への挿入時と、口腔内からの取り出しの際の波形変化は相対的であり、波形変化からそれぞれの状態を識別できる。
【0036】
ステップS16で口腔外へ出たと判断した場合には、歪みゲージ24の出力から、スプーン20に残っている食物の重量を判定する(ステップS17)。
ここまでの判断が行われると、ステップS11の判断に戻る。
【0037】
そして、図4のフローチャートでステップS15のトリガパルス発生から破線で接続して示すように、このトリガパルスの発生タイミングを基準として、センサ61,62,63の出力から、嚥下反射、嚥下音、呼吸状態を検出する(ステップS21)。その後、トリガパルスからの各状態の検出時間などから、摂食機能を評価し、その評価した摂食機能の検出波形を表示させると共に、必要によりその検出波形の形態評価も行う(ステップS22)。
【0038】
図5は、本実施の形態のスプーン20の検出コイル26の出力電圧の変化例(図5(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図5(b))の概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、検出コイル26の検出電圧の時間軸と歪みゲージ24の出力の時間軸を一致させて示してある。なお、この図5は、実際の検出波形を正確に示したものではなく、変化する傾向を示したものである。
【0039】
状態の変化を順に示すと、まずタイミングT1で、食器にスプーン20の先端のさじ部23を挿入し、タイミングT2で食器からスプーンを取り出したとする。このとき、タイミングT1からタイミングT2までの間は、検出コイル26の出力については、比較的変化が少ない信号V0となり、その前後の区間よりも波形変化が少ない状態となる。
従って、この信号V0となる状態への変化、及びその状態からの復帰を検出することで、図4のフローチャートに示した食器への挿入及び取り出しを判断できる。なお、歪みゲージ24の出力については、タイミングT1からタイミングT2までの間は、食物を掬おうとしているため、比較的大きく振れることになる。この歪みゲージ24の出力変動についても、食器への挿入及び取り出しを判断するための判断材料とすることができる。
【0040】
その後、検出コイル26の出力電圧が電圧V1に振れる状態があると、そのタイミングでさじ部23を口腔内に挿入したと判断する。この状態のタイミングT3で、トリガパルスが発生される。さらに、検出コイル26の出力電圧が逆方向に電圧V2に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23を口腔外に取り出したと判断される。電圧V1,V2の電位は、さじ部23が移動する速度や磁石の強さ、または検出コイルの巻数などに対応した電位であり、それらの条件によっては電圧V1,V2を良好に検出可能である。
【0041】
なお、タイミングT2で食器からスプーン20が取り出されてから、口腔内に移動するまでの間で、スプーン20のさじ部23で口に食物を運んでいる状態であるとすると、歪みゲージ24の出力には、その食物の重さに比例した電位V3が生じる。従って、その電位V3から、被験者が口に運んだ食物の重量を検出できることになる。
さらに図5には示していないが、口腔外にスプーン20を取り出した状態で、なおかつ歪みゲージ24の出力が生じている状態では、取り残しが生じている状態であり、その差により被験者が口腔内に取り入れた食物の重量を計算できる。図4のフローチャートのステップS17では、このことを検出している。
【0042】
次に、スプーン20を口腔内に挿入したタイミングで発生するトリガパルスと、センサ61,62,63の出力との関係を、図6から図8を参照して説明する。
先に説明したように、センサ61は呼吸(無呼吸)を検出するセンサであり、センサ62は嚥下音を検出するセンサであり、センサ63は嚥下反射を測定するセンサであり、それぞれのセンサの出力波形を図6以降に示してある。
【0043】
図6は、健常者の場合の例であり、各センサ出力として、図6(a)は嚥下反射、図6(b)は嚥下音、図6(c)は呼吸状態であり、図6(d)にトリガパルスを示す。
スプーン20を口腔内に挿入したタイミングT11でトリガパルスが発生した後、比較的速やかにタイミングT16からタイミングT17までに無呼吸があり、その無呼吸の発生に同期して、タイミングT12からタイミングT13まで嚥下反射の出現があり、タイミングT14からタイミングT15までは嚥下音が発生している。従って、無呼吸の期間に食塊が食道に移送されて、正常な摂食が行われていることが判る。
【0044】
図7は、症例1の患者の例である。
この例でも、図7(a)は嚥下反射、図7(b)は嚥下音、図7(c)は呼吸状態であり、図7(d)にトリガパルスを示す。
この図7の症例の場合には、タイミングT22からT23までの嚥下反射と、タイミングT24からT25までの嚥下音と、タイミングT26からT27までの無呼吸とが同期はしているが、タイミングT21でトリガパルスが発生してから、これらの嚥下反射、嚥下音、無呼吸が出現するまでの時間が非常に長く、さらに呼吸の相が図6の健常者の相と異なり呼吸回数も非常に多く、摂食機能障害が疑われる。本実施の形態の場合には、このような症例の場合でも、トリガパルスの発生タイミングが正確であるため、確実に検出が可能である。
【0045】
図8は、症例2の患者の例である。
この例では、図8(a)は嚥下反射、図8(b)は呼吸状態であり、図8(c)にトリガパルスを示し、嚥下音は省略してある。
この例では、タイミングT31でトリガパルスが発生した後、嚥下反射がタイミングT32からT33までにあり、それとは同期していないタイミングT34からT35までで無呼吸が発生している。従って、この症例の場合には、正しく食道に食塊が移送されていない誤嚥が疑われる評価結果である。
【0046】
このように本実施の形態の評価システムによると、日常的な食事場面を通して、摂食機能の評価が適切に行える。特に、食物を口腔内に挿入したトリガタイミングが自動的に生成され、介護者などがトリガタイミングを生成させるためのスイッチ操作を行う必要がなく、評価が簡単に行えるようになる。そして、その自動的に得られたトリガタイミングを基準として、摂食機能を正確に検出して評価するためのデータが得られる効果を有する。
しかも本実施の形態の場合には、励磁コイル25で励磁させながら、検出コイル26で永久磁石11からの磁界を検出する構成としたことで、食器内にスプーン20を挿入した状態と、口腔内にスプーン20を挿入した状態とを確実に区別でき、確実な検出が可能になる。
さらにまた、本実施の形態のスプーン20は、歪みゲージ24を設けたために、口腔内に入れた食物の重量が判り、コンピュータ装置70で口腔内に入れた食物の重量の累積値を算出することで、被験者がどの程度食物を摂取したのかが判るようになる。この場合、さらにスプーン20を口腔内から取り出した際に残っている食物の重量についても判断することで、より正確な実摂取量が判るようになる。
【0047】
[1.5 磁石の配置例の説明]
永久磁石11を取り付ける位置については、被験者の唇の近傍であれば、種々の位置が想定される。
例えば、図9(a)に示したように、下唇の下側に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。
或いは、図9(b)に示したように、上唇の上側に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。
さらに、図9(c)に示したように、下唇の下側と上唇の上側の2箇所に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。この2箇所の取り付けで、より効率の良い磁界を発生させるようにしてもよい。
【0048】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を、図10〜図12を参照して説明する。
この第2の実施の形態で説明する図10〜図12において、第1の実施の形態で既に説明した図1〜図9に対応する部分については、同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0049】
この第2の実施の形態においては、システム全体の構成は、第1の実施の形態で図1に説明した構成と同じであり、本実施の形態においては、スプーンのさじ部に配置するセンサとして、コイルの他に、ホール素子を設けるようにしたものである。
即ち、図10に示したように、スプーン20′内に、磁界変化検出部として機能するホール素子71を配置する。そして、そのホール素子71の出力を、USBコントローラ40内の増幅器57で増幅し、その増幅信号を、ノイズカットフィルタ45を介して処理ボード50に供給する。
【0050】
図11は、スプーン20′のさじ部23にホール素子71を配置した状態の例を示した図である。
ホール素子71は、図11に示したように、励磁コイル25及び検出コイル26とは別の位置のさじ部23内に配置する。この例では、さじ部23のほぼ中央に、2つのコイル25,26を配置し、先端寄りにホール素子71を配置するようしてあるが、これは1つの例である。
さじ部23内に配置したホール素子71は、ベース部21のコネクタ基板29と接続してあり、そのコネクタ基板29を介して、図10に示した増幅器57側と接続してある。
図10及び図11のその他の部分は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3と同様に構成する。
【0051】
図12は、本実施の形態のスプーン20′の検出コイル26の出力電圧の変化例(図12(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図12(b))と、ホール素子の出力の変化例(図12(b))の概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、検出コイル26の検出電圧の時間軸と歪みゲージ24の出力の時間軸とホール素子71の検出電圧とを一致させて示してある。なお、図12は、既に説明した図5の変化状態に、ホール素子71の出力を追加したものであり、図5と同じ状況でのホール素子71の出力変化を示したものである。
【0052】
ホール素子71は、被験者が装着した永久磁石11(図1)に接近することで、その永久磁石11による磁界の影響で、電圧V4が生じる。この電圧V4が生じるタイミングは、検出コイル26の出力電圧が電圧V1に振れるタイミング、さらに歪みゲージの電圧V3が変化するタイミングとも一致し、このタイミングでさじ部23が口腔内に入ったと判断できる。この判断したタイミングで、第1の実施の形態で説明したトリガパルスが生成される。
また、ホール素子71の出力電圧が、電圧V4の後に再度同程度の電圧である、電圧V5に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23が口腔外に出たと判断できる。
【0053】
このように、ホール素子71を検出コイル26とともに配置したスプーン20′を用意することで、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しを判断するための判断材料が増え、より正確なスプーンの口腔内への挿入を判断できるようになる。
第2の実施の形態での全体的な評価処理は、図4のフローチャートに示した処理と同じであり、ここでは省略する。
【0054】
<3.第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を、図13〜図15を参照して説明する。
この第3の実施の形態で説明する図13〜図15において、第1及び第2の実施の形態で既に説明した図1〜図12に対応する部分については、同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0055】
この第3の実施の形態においては、システム全体の構成は、第1の実施の形態で図1に説明した構成と同じであり、本実施の形態においては、スプーンのさじ部に配置する磁界検出用のセンサとして、コイルを省略して、ホール素子だけを設けるようにしたものである。
即ち、図13に示したように、スプーン20″内に、磁界変化検出部として機能するホール素子71を配置する。そして、そのホール素子71の出力を、USBコントローラ40内の増幅器57で増幅し、その増幅信号を、ノイズカットフィルタ45を介して処理ボード50に供給する。
【0056】
図14は、スプーン20″のさじ部23にホール素子71を配置した状態の例を示した図である。
図14に示したように、ホール素子71をさじ部23に配置し、他の実施の形態で説明した励磁コイル25及び検出コイル26は配置していない。
さじ部23内に配置したホール素子71は、ベース部21のコネクタ基板29と接続してあり、そのコネクタ基板29を介して、図13に示した増幅器57側と接続してある。
図13及び図14のその他の部分は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3と同様に構成する。
【0057】
図15は、本実施の形態のスプーン20のホール素子71の出力の変化例(図15(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図15(b))との概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、ホール素子71の検出電圧と歪みゲージ24の出力の時間軸とを一致させて示してある。なお、図15は、既に説明した図12の変化状態から、コイルの出力を除いたものであり、図5と同じ状況でのホール素子71の出力変化を示したものである。
【0058】
ホール素子71は、被験者が装着した永久磁石11(図1)に接近することで、その永久磁石11による磁界の影響で、電圧V4が生じる。この電圧V4が生じるタイミングは、歪みゲージの電圧V3が変化するタイミングと一致し、このタイミングで、さじ部23が口腔内に入ったと判断できる。この判断したタイミングで、第1の実施の形態で説明したトリガパルスが生成される。
また、ホール素子71の出力電圧が、電圧V4の後に再度同程度の電圧である、電圧V5に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23が口腔外に出たと判断できる。
【0059】
このように、ホール素子71を配置したスプーン20″を用意することで、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しを判断できるようになる。
第3の実施の形態での全体的な評価処理は、図4のフローチャートに示した処理と同じであり、ここでは省略する。但し、第3の実施の形態の処理では、検出コイル26がないため、タイミングT1及びタイミングT3での食器への挿入及び取り出しを判断する場合には、歪みゲージ24の出力状態から判断することになる。或いは、この第3の実施の形態の構成の場合には、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しの検出処理だけを行って、食器への挿入及び取り出しは検出しない構成としてもよい。
【0060】
<4.変形例>
ここまで説明した実施の形態では、摂食機能を評価するための温度検出センサ61と、嚥下音検出センサ62と、嚥下反射検出センサセンサ63とを設けた構成としたが、その他のセンサ構成で摂食機能を評価するようにしてもよい。
【0061】
また、スプーンに励磁コイルと検出コイルとを配置した例や、ホール素子を配置した例で、磁界検出を行うようにした構成以外の磁界検出手段を使用してもよい。また、スプーンには磁界検出手段としてのコイルの他に、歪みゲージを配置したが、磁界検出手段だけを配置して、口腔内への挿入及び取り出しだけを検出する構成として、スプーンの構成をより簡素化してもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、本実施の形態の処理を行うプログラムが実装されたパーソナルコンピュータ装置を使用して、評価結果のデータの表示や判定などを行うようにしたが、本実施の形態の処理を行うための専用の装置として構成してもよいことは勿論である。
【0063】
さらに、スプーンや各センサは、ケーブルで測定データ検出部であるUSBコントローラ側と接続させたが、無線伝送が可能であれば、これらのケーブルは省略してもよい。例えば、図3に示したスプーン20内に、検出データを無線伝送する送信部を内蔵させて、USBコントローラ40側に受信部を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
a…被験者、b…唇、11…永久磁石、20,20′,20″…スプーン、21…ベース部、22…柄部、23…さじ部、24…歪みゲージ、25…励磁コイル、26…検出コイル、27…電圧フォロア回路、28…歪みアンプ回路、29…コネクタ基板、30…接続ケーブル、40…USBコントローラ、41…高周波発振回路、42…アッテネータ、43…差動増幅器、45…ノイズカットフィルタ、50…処理ボード、51…増幅器、52…ノイズカットフィルタ、53…増幅器、54…ノイズカットフィルタ、55…増幅器、56…ノイズカットフィルタ、57…増幅器、58…ノイズカットフィルタ、61…温度検出センサ、62…嚥下音検出センサ、63…嚥下反射検出センサ、70…パーソナルコンピュータ装置、71…ホール素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食機能の評価のために適用される好適な摂食機能評価用スプーン、及びそのスプーンを使って行われる摂食機能評価システム並びに摂食機能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食機能障害とは、食物の口腔内への取り入れ,咀嚼,食塊形成,食塊の送り込み,嚥下反射,食道への移送という、一連の摂食運動過程の、一つあるいは複数の運動に障害を来すことである。特に、嚥下反射の遅延や消失により、本来、食道へ流入すべき食塊の一部が気管の方へ侵入するという誤嚥が発生して、最悪の場合には、誤嚥性肺炎や窒息などがおこる危険性がある。
この障害は、脳血管性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの多くの疾病の一次障害(疾患が直接の原因となって生じる障害)や、二次障害(疾患の安静によって生じる障害)として出現する。さらに、認知症患者や虚弱高齢者にも、この障害を合併する者が増加している。
摂食機能障害は、リハビリテーションを行うことでその機能改善が可能であり、そのためにはどのような摂食機能障害が起きているのかを、早期に正しく診断して対応することが重要である。
【0003】
従来の摂食機能障害の診断手法としては、嚥下造影検査、内視鏡検査、頚部聴診法が知られている。これらの診断手法の内で、嚥下造影検査は、X線装置を使って造影剤入り模擬食品を摂食させ、確実に誤嚥の有無を調べる検査であるが、X線を投射しながらの検査であるため、検査場所の制約や被爆のリスクなどから、日常的な摂食機能の状態を検査できるものではない。また、嚥下造影検査結果から誤嚥の原因や摂食機能の状態を診断できる医師が少ないため、適切なリハビリテーション指示をもらうことが困難である。
内視鏡検査は、特定の器官や組織に限って、直接的に内視鏡で見るものであるため、診断技能を持った医師であれば、誤嚥の診断は可能であるが、その診断が断片的で特定の器官や組織に限られる点が問題である。
頚部聴診法は、検査場所の制約や検査のリスクがない半面、誤嚥の診断の技能が必要であり、特に口腔や咽頭内部に発生する他音と誤嚥を区別するのが困難であるという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するのに既に知られた手法として、特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」がある。
特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」は、甲状軟骨の動きに関与する筋の収縮を検出する筋収縮検出手段と、飲み込んだものが咽頭周辺部を通過する音を検出する音検出手段と、甲状軟骨の動きを検出する手段と、呼吸の検出手段などを設けて、これらの検出手段の検出データを時系列に同期させて表示させるものである。
各検出手段は、具体的には、頚部の近傍や胸や鼻などにマイクロフォンや温度センサなどのセンサを取り付けることで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−14727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「飲み込み評価システム」によると、比較的小型のセンサを被験者の上半身の各部に取り付けるだけで、食物の飲み込みに関する評価が可能であり、誤嚥などの摂食機能障害の検出が、被験者に与える負荷が比較的少ない状況で、良好に行える。即ち、健常者が摂食する場合、口腔内の食塊を食道に移送するためには嚥下反射が、無呼吸期間に行われ、その嚥下反射が無呼吸期間でない期間に行われた場合には、摂食機能障害である可能性があり、これらの判断が、各センサの出力の表示から判る。被験者にとっては、比較的小型のセンサを被験者の上半身の各部に取り付けるだけでよく、さらに被験者の日常の食事場面を通して評価できる効果がある。
【0007】
ところで、これらのセンサなどを使って摂食機能障害についての評価を行う上で、被験者に摂食動作の開始を指示して、その摂食開始からの各センサ出力の変化を観察することが重要である。即ち、食物を口腔内に入れたタイミングが判らないと、センサ出力が嚥下反射であるのか、それ以外の反応であるかの判断ができない。無呼吸についても、食物を口腔内に入れたタイミングが判らないと、嚥下反射に連動した無呼吸かどうか判断がつかない。
また、摂食機能障害を正確に判定する要因の1つとして、食物を口腔内に入れたタイミングから嚥下反射までの時間についても、摂食機能障害の程度や原因を判断する上で重要な評価情報であり、このような点からも食物を口腔内に入れたタイミングが重要である。
【0008】
このため、従来、この種のシステムで摂食機能障害の有無を評価する場合には、被験者が摂食するのを介護者が横で見ていて、その介護者が摂食開始を指示するスイッチを持って、食物を運ぶスプーンが唇に触れたタイミングでそのスイッチを押すなどの対処が必要であった。
【0009】
しかしながら、介護者が被験者の動作を見ながら手動でスイッチを押すようにすると、押すタイミングが介護者によって異なり、常時、均一な状態での評価が行われているとは言えない状況であった。また、介護者が常時スイッチを操作しなければならないのは、介護者にとって負担が大きいという問題があった。
【0010】
また、ここまでは摂食機能障害を評価する場合の問題について説明したが、広い概念での摂食機能障害について考えた場合、指示された一口量を厳守してスプーンにのせているのか、食物を口腔内に入れる動作や口腔内に移す動作が正しく行えているのか、一回にスプーンから捕食できた量はどの程度か、一回の食事あたりの運搬回数や実摂取量などの評価を行うことも重要である。しかしながら、従来の被験者の各部にセンサを着けて評価を行うシステムでは、食塊を飲み込む動作である嚥下反射運動が判るだけであり、それらを検出することは不可能であった。
【0011】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、被験者の摂食機能の評価が、日常の食事場面を通して従来方法より正確に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の摂食機能評価用スプーンは、食物を口腔内に取り込むさじ部を備えたスプーンにおいて、そのさじ部の近傍に磁界変化検出部を設けたものである。
このように構成したことで、被験者の唇の近傍に磁石を取り付けておくことで、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを判断できるようになる。従って、そのさじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングをトリガとして、摂食機能を評価できるようになる。
【0013】
また本発明の摂食機能評価システム及び摂食機能評価方法は、被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価するものである。
スプーンは、食物を口腔内に取り込むさじ部を備えたスプーンにおいて、そのさじ部の近傍に磁界変化検出部を設けたものを使用する。
そして、被験者の嚥下反射などの反応を検出する検出センサ部を設け、スプーンの磁界変化検出部で検出された磁石による磁界変化から、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを検出し、検出したタイミング後に検出センサ部で検出される反応から、摂食機能の評価を行うものである。
このように評価を行うことで、食物を口腔内に挿入したタイミングが判り、摂食機能についての評価を、介護者がスイッチなどを操作することなく正確に行えるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の摂食機能評価用スプーンによって、さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングが磁界変化として検出でき、その検出タイミングをトリガとして、嚥下反射などを評価できるようになる。従って、食物を口腔内に挿入したタイミングが判り、その後の嚥下反射などの検出で、摂食機能を正確に評価できる効果を有する。
【0015】
この場合、磁界変化検出部は、励磁用コイルと検出用コイルとを設け、励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、検出用コイルでの周波数信号の検出状態の変化から磁界変化検出を行う構成としたことで、金属製の食器にスプーンを挿入した状態と、スプーンを口腔内に挿入した状態とを区別できるようになり、スプーンを口腔内に挿入した状態を、誤検出なく正確に検出できるようになる効果を有する。
【0016】
また、さじ部に加わる荷重を検出する歪みゲージを備えたことで、その歪みゲージの検出出力から、食器から取り出した、またはスプーンで口腔内に入れた食物の重さを判断でき、どの程度の量、捕食したのかが判断できるようになる効果を有する。特に、食物を口腔内に挿入したタイミングが判ることで、食物を口腔内に挿入する直前のさじ部に加わる加重と、さじ部を取り出す際の加重との比較から、摂食した重量を正確に判断できるようになる。
【0017】
また本発明の摂食機能評価システム及び摂食機能評価方法によると、食物を口腔内に挿入するタイミングがスプーンに設けた磁界変化検出部から判り、嚥下反射検出センサ部などの出力に基づいた摂食機能についての評価を、介護者が別途スイッチなどを操作することなく正確に行えるようになり、簡単かつ正確に摂食機能を評価できるようになる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による摂食機能評価システムの例を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による評価処理例のフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態によるスプーンの評価用検出波形の概要を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと3つの波形などを示した評価用検出波形例(健常者の例)を示す波形図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと3つの波形などを示した評価用検出波形例(症例1)を示す波形図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態によるトリガパルスと2つの波形などを示した評価用検出波形例(症例2)を示す波形図である。
【図9】永久磁石の配置例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図12】本発明の第2の実施の形態によるスプーンの検出波形の概要を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による検出部の例を示す構成図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態によるスプーンの構成例を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【図15】本発明の第3の実施の形態によるスプーンの検出波形の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
1.第1の実施の形態
1.1 システム全体の構成例(図1)
1.2 検出部の構成例(図2)
1.3 スプーンの構成例(図3)
1.4 評価処理の説明(図4〜図8)
1.5 磁石の配置例の説明(図9)
2.第2の実施の形態(図10〜図12)
3.第3の実施の形態(図13〜図15)
4.変形例
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 システム全体の構成例]
まず、図1を参照して、第1の実施の形態の例のシステム構成例について説明する。
本実施の形態においては、被験者aの唇bの近傍に、永久磁石11を配置する。永久磁石11は、例えば円形などの粘着シートに磁石を貼り付けた上で、その粘着シートを、唇bの上や下などに貼り付けて、永久磁石11を唇bの近傍に固定させる。
【0021】
そして、測定データを取り込む装置であるパーソナルコンピュータ装置(PC)70に、USBコントローラ40として構成された測定データ検出部を接続してある。USBコントローラ40は、パーソナルコンピュータ装置70のUSB(Universal Serial Bus)ポートに、USB方式のケーブルを介して接続される、機器としてある。USBコントローラ40の構成例については、図2で説明する。USB方式のケーブルで接続させるのは1つの例であり、別の伝送方式で接続しても良い。
【0022】
USBコントローラ40には、スプーン20及び各センサ61,62,63が接続してある。
スプーン20は、食物を被験者aが口に運ぶものであり、本実施の形態のスプーン20には、コイルから構成される磁界検出部を組み込んである。磁界検出部を組み込んであることで、被験者aの唇bの近傍に貼り付けた永久磁石11が形成する直流磁場内をスプーンが移動することでコイルに誘起電圧が発生し、スプーンの挿入・取り出しを検出する。また、歪みゲージについても、スプーン20に組み込んであり、スプーン20の先端のさじ部23に加わる荷重を検出する構成としてある。このスプーン20の詳細な構成についても後述する。
【0023】
USBコントローラ40に接続されるセンサ部としては、温度検出センサ61と、嚥下音検出センサ62と、嚥下反射検出センサ63とを備える。
温度検出センサ61は、サーミスタなどの温度検出素子を使用した温度検出センサで構成し、被験者aの鼻の鼻孔に取り付けて、吸気及び呼気の温度を検出する。この温度検出センサ61は、例えばフィルム状のセンサを鼻の下に貼り付ける構成とする。
嚥下音検出センサ62は、音に相当する比較的高い周波数成分を検出するセンサであり、例えばマイクロフォンや振動センサで構成し、サージカルテープなどで被験者aの中咽頭部の近傍の頚部に装着する。
嚥下反射検出センサ63は、変位状態を検出するセンサであり、例えば加速度センサなどで構成されるセンサであり、被験者aの甲状軟骨部の動きを検出するものであり、サージカルテープなどで被験者aの甲状軟骨部の近傍の頚部に装着する。
これらのセンサ61,62,63の検出信号を、ケーブルを介してUSBコントローラ40に供給し、USBコントローラ40内でデータ化し、USB方式のケーブルを介してパーソナルコンピュータ装置70に供給する。
【0024】
そして、USBコントローラ40からパーソナルコンピュータ装置70に供給されたデータをパーソナルコンピュータ装置70内で解析し、摂食機能に関する評価を行う。即ち、パーソナルコンピュータ装置70には、検出データから摂食機能に関する評価を行うためのソフトウェア(プログラム)を実装させてあり、そのソフトウェアの実行で、評価処理を行う。
評価結果は、パーソナルコンピュータ装置70が備える(又は接続された)ディスプレイに表示させる。
また、各センサの出力波形を、このディスプレイに表示させる。或いは、図示しないプリンタで、評価結果や波形などを印刷させてもよい。
【0025】
[1.2 検出部の構成例]
図2は、測定データ検出部としてのUSBコントローラ40と、そのUSBコントローラ40に接続される各センサ61〜63及びスプーン20の構成を示した図である。
サーミスタなどで構成される温度検出センサ61の出力は、USBコントローラ40内で増幅器51に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ52に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ52の出力を処理ボード50に供給する。
嚥下音検出センサ62についても、センサ出力をUSBコントローラ40内の増幅器53に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ54に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ54の出力を処理ボード50に供給する。
嚥下反射検出センサ63についても、センサ出力をUSBコントローラ40内の増幅器55に供給して増幅すると共に、その増幅された信号をノイズカットフィルタ56に供給して高域成分などのノイズをカットし、ノイズカットフィルタ56の出力を処理ボード50に供給する。
処理ボード50内では、それぞれのセンサ61,62,63の出力信号の変化を、適切な波形データとする。
【0026】
スプーン20は、歪みゲージ24と励磁コイル25と検出コイル26とを備える。
歪みゲージ24は、スプーン20内の歪みアンプ28により増幅した信号をUSBコントローラ40に供給し、USBコントローラ40内のノイズカットフィルタ45で高域成分などのノイズをカットした後、処理ボード50に供給する。
処理ボード50では、歪みゲージ24の出力から、スプーン20のさじ部23に加わる荷重、即ちさじ部23に入れられた食物の重量を検出し、その検出値をコンピュータ装置70に供給する。
【0027】
励磁コイル25は、USBコントローラ40内の高周波発振回路41から高周波信号が供給され、その高周波信号による励磁動作が行われる。高周波発振回路41から供給される高周波信号は、例えば数kHz〜数十kHz程度の周波数とする。この高周波発振回路41からの高周波信号は、基本的に評価中は常時出力されている。
検出コイル26は、励磁コイル25に隣接した位置に配置してあり、検出コイル26の出力を、スプーン20内の電圧フォロア回路27を介して、USBコントローラ40側の差動増幅器43の一方の入力端に供給する。また、差動増幅器43の他方の入力端に、高周波発振回路41の出力を、アッテネータ42を介して供給する。
そして、差動増幅器43で励磁コイル25に供給する高周波信号と検出コイル26で検出された信号との差分が検出されて、その差分の信号を処理ボード50に供給する。
【0028】
処理ボード50では、スプーン20の検出コイル26からの信号に基づいて、スプーン20のさじ部23を被験者aの口腔内に挿入したことを検出する。また、この口腔内にさじ部23を挿入した状態から、外部に取り出したことを検出する。さらに、図示はしないが、食物が入った食器にスプーン20を挿入した状態、及びその食器からスプーン20を取り出した状態も検出できる。これらの各検出の具体的な検出状態については後述する。
【0029】
[1.3 スプーンの構成例]
図3は、本実施の形態のスプーン20の具体的な構成例を示した図である。
図3(a)は、上から見た平面図であり、図3(b)は、縦断面図である。
スプーン20は、使用時に手で持つ部分であるベース部21に、細長形状の柄部22を介して先端にさじ部23が取り付けてある。この場合、柄部22の地中に幅狭部22aを有し、その幅狭部22aに歪みゲージ24を配置してある。
また、食物を運ぶ部分である、さじ部23には、励磁コイル25と検出コイル26とが並べて配置してある。
【0030】
スプーン20のベース部21内には、電圧フォロア回路27と歪みアンプ回路28とコネクタ基板29とが配置してあり、図2で既に説明したように、歪みゲージ24が歪みアンプ回路28に接続してあり、検出コイル26が電圧フォロア回路27に接続してあり、それぞれの信号がコネクタ基板29に接続されたケーブルを介して、USBコントローラ40側に出力される。
【0031】
なお、歪みゲージ24や各コイル25,26は、基本的にスプーン20の内部に配置して、外側からは歪みゲージ24や各コイル25,26が見えないようにするのが好ましい。例えば、コイル25,26や歪みゲージ24が配置された上から、樹脂モールドなどを施して、コイルや歪みゲージに利用者が触れないような構成とすることが考えられる。
【0032】
[1.4 評価処理の説明]
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態のシステムで評価を行う場合の処理例について、順に説明する。ここでは、被験者の前に置かれた金属製の食器に液体などの食物を入れ、スプーン20のさじ部23でその食物を掬って、口腔内への摂食動作を被験者aに実行させ、その摂食機能を評価するものである。被験者aには、図1に示したように、唇の近傍に永久磁石11を取り付けてある。
この図4のフローチャートの処理は、例えば、USBコントローラ40からの検出データが供給されるパーソナルコンピュータ装置70内での検出データの解析により実行される。
【0033】
まず、検出コイル26の出力及び歪みゲージ24の出力から、スプーン20のさじ部23を食器に挿入した状態か、あるいは、口腔内に挿入した状態か、あるいは、いずれでもないかの判断を行う(ステップS11)。いずれでもない状態では、ここでの判断が繰り返し行われる。
ここで、さじ部23を食器に挿入した状態の判断は、食器にスプーン20が挿入されることで、周囲の環境の変化で、励磁コイル25からの発振信号が検出コイル26で検出し難い状態となり、検出コイル26の出力の高周波成分の減衰から検出できる。また、歪みゲージ24の出力についても安定しない状態になることからも、さじ部23を食器に挿入した状態であると検出できる。これら検出コイル26の出力と歪みゲージ24の出力との2つを総合的に判断して、食器に挿入した状態か否か判断するのが好ましい。但し、いずれか一方だけから判断してもよい。
また、ステップS11で、スプーン20のさじ部23が、口腔内に挿入されたことの検出については、励磁コイル25からの高周波信号と永久磁石11との作用で、検出コイル26が永久磁石11に接近した際に生じる、検出コイル26の波形変化から検出される。
【0034】
ステップS11で、食器に挿入した状態と判断した場合には、ステップS12に移り、食器からのスプーン20の取り出しがあったか否か判断する。この判断は、ステップS11で判断した検出コイル26の出力の高周波成分の減衰が無くなることから検出できる。また、歪みゲージ24の出力からも判断できる。
食器からの取り出しを検出した場合には、ステップS11でスプーン20を食器に挿入したと判断した状態になってから、ステップS12でスプーン20が食器から取り出されるまでの時間を判断する(ステップS13)。そして、歪みゲージ24の出力から、スプーン20で運んでいる食物の重量を判定する(ステップS14)。
その後、ステップS11の判断に戻る。
【0035】
ステップS11で、スプーン20が被験者の口腔内に挿入されたと判断した場合には、その口腔内に挿入したと判断したタイミングで、トリガパルスを発生させる(ステップS15)。トリガパルスに基づいた動作は後述する。
さらにその後、スプーン20のさじ部23が口腔外へ出たか否か判断する(ステップS16)。この口腔内から取り出したことの検出についても、励磁コイル25からの高周波信号と永久磁石11との作用で、検出コイル26が永久磁石11に接近した際に生じる、検出コイル26の波形変化から検出される。但し、口腔内への挿入時と、口腔内からの取り出しの際の波形変化は相対的であり、波形変化からそれぞれの状態を識別できる。
【0036】
ステップS16で口腔外へ出たと判断した場合には、歪みゲージ24の出力から、スプーン20に残っている食物の重量を判定する(ステップS17)。
ここまでの判断が行われると、ステップS11の判断に戻る。
【0037】
そして、図4のフローチャートでステップS15のトリガパルス発生から破線で接続して示すように、このトリガパルスの発生タイミングを基準として、センサ61,62,63の出力から、嚥下反射、嚥下音、呼吸状態を検出する(ステップS21)。その後、トリガパルスからの各状態の検出時間などから、摂食機能を評価し、その評価した摂食機能の検出波形を表示させると共に、必要によりその検出波形の形態評価も行う(ステップS22)。
【0038】
図5は、本実施の形態のスプーン20の検出コイル26の出力電圧の変化例(図5(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図5(b))の概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、検出コイル26の検出電圧の時間軸と歪みゲージ24の出力の時間軸を一致させて示してある。なお、この図5は、実際の検出波形を正確に示したものではなく、変化する傾向を示したものである。
【0039】
状態の変化を順に示すと、まずタイミングT1で、食器にスプーン20の先端のさじ部23を挿入し、タイミングT2で食器からスプーンを取り出したとする。このとき、タイミングT1からタイミングT2までの間は、検出コイル26の出力については、比較的変化が少ない信号V0となり、その前後の区間よりも波形変化が少ない状態となる。
従って、この信号V0となる状態への変化、及びその状態からの復帰を検出することで、図4のフローチャートに示した食器への挿入及び取り出しを判断できる。なお、歪みゲージ24の出力については、タイミングT1からタイミングT2までの間は、食物を掬おうとしているため、比較的大きく振れることになる。この歪みゲージ24の出力変動についても、食器への挿入及び取り出しを判断するための判断材料とすることができる。
【0040】
その後、検出コイル26の出力電圧が電圧V1に振れる状態があると、そのタイミングでさじ部23を口腔内に挿入したと判断する。この状態のタイミングT3で、トリガパルスが発生される。さらに、検出コイル26の出力電圧が逆方向に電圧V2に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23を口腔外に取り出したと判断される。電圧V1,V2の電位は、さじ部23が移動する速度や磁石の強さ、または検出コイルの巻数などに対応した電位であり、それらの条件によっては電圧V1,V2を良好に検出可能である。
【0041】
なお、タイミングT2で食器からスプーン20が取り出されてから、口腔内に移動するまでの間で、スプーン20のさじ部23で口に食物を運んでいる状態であるとすると、歪みゲージ24の出力には、その食物の重さに比例した電位V3が生じる。従って、その電位V3から、被験者が口に運んだ食物の重量を検出できることになる。
さらに図5には示していないが、口腔外にスプーン20を取り出した状態で、なおかつ歪みゲージ24の出力が生じている状態では、取り残しが生じている状態であり、その差により被験者が口腔内に取り入れた食物の重量を計算できる。図4のフローチャートのステップS17では、このことを検出している。
【0042】
次に、スプーン20を口腔内に挿入したタイミングで発生するトリガパルスと、センサ61,62,63の出力との関係を、図6から図8を参照して説明する。
先に説明したように、センサ61は呼吸(無呼吸)を検出するセンサであり、センサ62は嚥下音を検出するセンサであり、センサ63は嚥下反射を測定するセンサであり、それぞれのセンサの出力波形を図6以降に示してある。
【0043】
図6は、健常者の場合の例であり、各センサ出力として、図6(a)は嚥下反射、図6(b)は嚥下音、図6(c)は呼吸状態であり、図6(d)にトリガパルスを示す。
スプーン20を口腔内に挿入したタイミングT11でトリガパルスが発生した後、比較的速やかにタイミングT16からタイミングT17までに無呼吸があり、その無呼吸の発生に同期して、タイミングT12からタイミングT13まで嚥下反射の出現があり、タイミングT14からタイミングT15までは嚥下音が発生している。従って、無呼吸の期間に食塊が食道に移送されて、正常な摂食が行われていることが判る。
【0044】
図7は、症例1の患者の例である。
この例でも、図7(a)は嚥下反射、図7(b)は嚥下音、図7(c)は呼吸状態であり、図7(d)にトリガパルスを示す。
この図7の症例の場合には、タイミングT22からT23までの嚥下反射と、タイミングT24からT25までの嚥下音と、タイミングT26からT27までの無呼吸とが同期はしているが、タイミングT21でトリガパルスが発生してから、これらの嚥下反射、嚥下音、無呼吸が出現するまでの時間が非常に長く、さらに呼吸の相が図6の健常者の相と異なり呼吸回数も非常に多く、摂食機能障害が疑われる。本実施の形態の場合には、このような症例の場合でも、トリガパルスの発生タイミングが正確であるため、確実に検出が可能である。
【0045】
図8は、症例2の患者の例である。
この例では、図8(a)は嚥下反射、図8(b)は呼吸状態であり、図8(c)にトリガパルスを示し、嚥下音は省略してある。
この例では、タイミングT31でトリガパルスが発生した後、嚥下反射がタイミングT32からT33までにあり、それとは同期していないタイミングT34からT35までで無呼吸が発生している。従って、この症例の場合には、正しく食道に食塊が移送されていない誤嚥が疑われる評価結果である。
【0046】
このように本実施の形態の評価システムによると、日常的な食事場面を通して、摂食機能の評価が適切に行える。特に、食物を口腔内に挿入したトリガタイミングが自動的に生成され、介護者などがトリガタイミングを生成させるためのスイッチ操作を行う必要がなく、評価が簡単に行えるようになる。そして、その自動的に得られたトリガタイミングを基準として、摂食機能を正確に検出して評価するためのデータが得られる効果を有する。
しかも本実施の形態の場合には、励磁コイル25で励磁させながら、検出コイル26で永久磁石11からの磁界を検出する構成としたことで、食器内にスプーン20を挿入した状態と、口腔内にスプーン20を挿入した状態とを確実に区別でき、確実な検出が可能になる。
さらにまた、本実施の形態のスプーン20は、歪みゲージ24を設けたために、口腔内に入れた食物の重量が判り、コンピュータ装置70で口腔内に入れた食物の重量の累積値を算出することで、被験者がどの程度食物を摂取したのかが判るようになる。この場合、さらにスプーン20を口腔内から取り出した際に残っている食物の重量についても判断することで、より正確な実摂取量が判るようになる。
【0047】
[1.5 磁石の配置例の説明]
永久磁石11を取り付ける位置については、被験者の唇の近傍であれば、種々の位置が想定される。
例えば、図9(a)に示したように、下唇の下側に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。
或いは、図9(b)に示したように、上唇の上側に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。
さらに、図9(c)に示したように、下唇の下側と上唇の上側の2箇所に永久磁石11を取り付けるようにしてもよい。この2箇所の取り付けで、より効率の良い磁界を発生させるようにしてもよい。
【0048】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を、図10〜図12を参照して説明する。
この第2の実施の形態で説明する図10〜図12において、第1の実施の形態で既に説明した図1〜図9に対応する部分については、同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0049】
この第2の実施の形態においては、システム全体の構成は、第1の実施の形態で図1に説明した構成と同じであり、本実施の形態においては、スプーンのさじ部に配置するセンサとして、コイルの他に、ホール素子を設けるようにしたものである。
即ち、図10に示したように、スプーン20′内に、磁界変化検出部として機能するホール素子71を配置する。そして、そのホール素子71の出力を、USBコントローラ40内の増幅器57で増幅し、その増幅信号を、ノイズカットフィルタ45を介して処理ボード50に供給する。
【0050】
図11は、スプーン20′のさじ部23にホール素子71を配置した状態の例を示した図である。
ホール素子71は、図11に示したように、励磁コイル25及び検出コイル26とは別の位置のさじ部23内に配置する。この例では、さじ部23のほぼ中央に、2つのコイル25,26を配置し、先端寄りにホール素子71を配置するようしてあるが、これは1つの例である。
さじ部23内に配置したホール素子71は、ベース部21のコネクタ基板29と接続してあり、そのコネクタ基板29を介して、図10に示した増幅器57側と接続してある。
図10及び図11のその他の部分は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3と同様に構成する。
【0051】
図12は、本実施の形態のスプーン20′の検出コイル26の出力電圧の変化例(図12(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図12(b))と、ホール素子の出力の変化例(図12(b))の概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、検出コイル26の検出電圧の時間軸と歪みゲージ24の出力の時間軸とホール素子71の検出電圧とを一致させて示してある。なお、図12は、既に説明した図5の変化状態に、ホール素子71の出力を追加したものであり、図5と同じ状況でのホール素子71の出力変化を示したものである。
【0052】
ホール素子71は、被験者が装着した永久磁石11(図1)に接近することで、その永久磁石11による磁界の影響で、電圧V4が生じる。この電圧V4が生じるタイミングは、検出コイル26の出力電圧が電圧V1に振れるタイミング、さらに歪みゲージの電圧V3が変化するタイミングとも一致し、このタイミングでさじ部23が口腔内に入ったと判断できる。この判断したタイミングで、第1の実施の形態で説明したトリガパルスが生成される。
また、ホール素子71の出力電圧が、電圧V4の後に再度同程度の電圧である、電圧V5に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23が口腔外に出たと判断できる。
【0053】
このように、ホール素子71を検出コイル26とともに配置したスプーン20′を用意することで、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しを判断するための判断材料が増え、より正確なスプーンの口腔内への挿入を判断できるようになる。
第2の実施の形態での全体的な評価処理は、図4のフローチャートに示した処理と同じであり、ここでは省略する。
【0054】
<3.第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を、図13〜図15を参照して説明する。
この第3の実施の形態で説明する図13〜図15において、第1及び第2の実施の形態で既に説明した図1〜図12に対応する部分については、同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0055】
この第3の実施の形態においては、システム全体の構成は、第1の実施の形態で図1に説明した構成と同じであり、本実施の形態においては、スプーンのさじ部に配置する磁界検出用のセンサとして、コイルを省略して、ホール素子だけを設けるようにしたものである。
即ち、図13に示したように、スプーン20″内に、磁界変化検出部として機能するホール素子71を配置する。そして、そのホール素子71の出力を、USBコントローラ40内の増幅器57で増幅し、その増幅信号を、ノイズカットフィルタ45を介して処理ボード50に供給する。
【0056】
図14は、スプーン20″のさじ部23にホール素子71を配置した状態の例を示した図である。
図14に示したように、ホール素子71をさじ部23に配置し、他の実施の形態で説明した励磁コイル25及び検出コイル26は配置していない。
さじ部23内に配置したホール素子71は、ベース部21のコネクタ基板29と接続してあり、そのコネクタ基板29を介して、図13に示した増幅器57側と接続してある。
図13及び図14のその他の部分は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3と同様に構成する。
【0057】
図15は、本実施の形態のスプーン20のホール素子71の出力の変化例(図15(a))と、歪みゲージ24の出力の変化例(図15(b))との概要を示したもので、それぞれ横軸が時間で、縦軸が電圧値であり、ホール素子71の検出電圧と歪みゲージ24の出力の時間軸とを一致させて示してある。なお、図15は、既に説明した図12の変化状態から、コイルの出力を除いたものであり、図5と同じ状況でのホール素子71の出力変化を示したものである。
【0058】
ホール素子71は、被験者が装着した永久磁石11(図1)に接近することで、その永久磁石11による磁界の影響で、電圧V4が生じる。この電圧V4が生じるタイミングは、歪みゲージの電圧V3が変化するタイミングと一致し、このタイミングで、さじ部23が口腔内に入ったと判断できる。この判断したタイミングで、第1の実施の形態で説明したトリガパルスが生成される。
また、ホール素子71の出力電圧が、電圧V4の後に再度同程度の電圧である、電圧V5に振れる状態があると、そのタイミングT4でさじ部23が口腔外に出たと判断できる。
【0059】
このように、ホール素子71を配置したスプーン20″を用意することで、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しを判断できるようになる。
第3の実施の形態での全体的な評価処理は、図4のフローチャートに示した処理と同じであり、ここでは省略する。但し、第3の実施の形態の処理では、検出コイル26がないため、タイミングT1及びタイミングT3での食器への挿入及び取り出しを判断する場合には、歪みゲージ24の出力状態から判断することになる。或いは、この第3の実施の形態の構成の場合には、スプーンの口腔内への挿入及び取り出しの検出処理だけを行って、食器への挿入及び取り出しは検出しない構成としてもよい。
【0060】
<4.変形例>
ここまで説明した実施の形態では、摂食機能を評価するための温度検出センサ61と、嚥下音検出センサ62と、嚥下反射検出センサセンサ63とを設けた構成としたが、その他のセンサ構成で摂食機能を評価するようにしてもよい。
【0061】
また、スプーンに励磁コイルと検出コイルとを配置した例や、ホール素子を配置した例で、磁界検出を行うようにした構成以外の磁界検出手段を使用してもよい。また、スプーンには磁界検出手段としてのコイルの他に、歪みゲージを配置したが、磁界検出手段だけを配置して、口腔内への挿入及び取り出しだけを検出する構成として、スプーンの構成をより簡素化してもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、本実施の形態の処理を行うプログラムが実装されたパーソナルコンピュータ装置を使用して、評価結果のデータの表示や判定などを行うようにしたが、本実施の形態の処理を行うための専用の装置として構成してもよいことは勿論である。
【0063】
さらに、スプーンや各センサは、ケーブルで測定データ検出部であるUSBコントローラ側と接続させたが、無線伝送が可能であれば、これらのケーブルは省略してもよい。例えば、図3に示したスプーン20内に、検出データを無線伝送する送信部を内蔵させて、USBコントローラ40側に受信部を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
a…被験者、b…唇、11…永久磁石、20,20′,20″…スプーン、21…ベース部、22…柄部、23…さじ部、24…歪みゲージ、25…励磁コイル、26…検出コイル、27…電圧フォロア回路、28…歪みアンプ回路、29…コネクタ基板、30…接続ケーブル、40…USBコントローラ、41…高周波発振回路、42…アッテネータ、43…差動増幅器、45…ノイズカットフィルタ、50…処理ボード、51…増幅器、52…ノイズカットフィルタ、53…増幅器、54…ノイズカットフィルタ、55…増幅器、56…ノイズカットフィルタ、57…増幅器、58…ノイズカットフィルタ、61…温度検出センサ、62…嚥下音検出センサ、63…嚥下反射検出センサ、70…パーソナルコンピュータ装置、71…ホール素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物を口腔内に取り込むさじ部と、前記さじ部の近傍に設けた磁界変化検出部を備えた
摂食機能評価用スプーン。
【請求項2】
請求項1記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記磁界変化検出部は、励磁用コイルと検出用コイルとを有し、
前記励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、前記検出用コイルでの
前記周波数の信号の検出状態の変化から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価用
スプーン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記磁界変化検出部は、ホール素子を有し、
前記ホール素子から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価用スプーン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記さじ部に加わる荷重を検出する歪ゲージを備えた摂食機能評価用スプーン。
【請求項5】
被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価する摂食機能評価システムであり、
食物を口腔内に取り込むさじ部と、前記さじ部の近傍に設けた磁界変化検出部とを備えたスプーンと、
前記被験者の摂食機能に関する3つの波形を検出するセンサ部と、
前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から、前記さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを検出し、前記タイミング後に前記の検出センサ部で検出される3つの波形から、摂食機能に関する評価を行う評価部を備えた摂食機能評価システム。
【請求項6】
請求項5記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記スプーンの磁界変化検出部として、励磁用コイルと検出用コイルとを有し、
前記励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、前記検出用コイルでの前記周波数の信号の検出状態の変化から、前記磁石による磁界変化検出を行う摂食機能評価システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記磁界変化検出部として、ホール素子を有し、
前記ホール素子から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記スプーンは前記さじ部に加わる荷重を検出する歪ゲージを備え、
前記評価部は、前記歪ゲージで検出された荷重から、被験者の口腔内に取り込んだ食物の重さを判断する摂食機能評価システム。
【請求項9】
請求項8記載の摂食機能評価システムにおいて、
さらに、前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から前記さじ部の口腔内からの取り出しを検出した後に、前記歪ゲージで検出された荷重から、食物の取り残しを判断する摂食機能評価システム。
【請求項10】
被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価する摂食機能評価方法であり、
食物を口腔内に取り込むさじ部の近傍に磁界変化検出部を備えたスプーンを用意し、前記被験者の3つの摂食機能に関する反応をセンサで検出し、前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から前記さじ部の口腔内への挿入タイミングを検出し、前記タイミング後に前記センサで検出される3つの波形から摂食機能に関する評価を行う摂食機能評価方法。
【請求項1】
食物を口腔内に取り込むさじ部と、前記さじ部の近傍に設けた磁界変化検出部を備えた
摂食機能評価用スプーン。
【請求項2】
請求項1記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記磁界変化検出部は、励磁用コイルと検出用コイルとを有し、
前記励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、前記検出用コイルでの
前記周波数の信号の検出状態の変化から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価用
スプーン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記磁界変化検出部は、ホール素子を有し、
前記ホール素子から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価用スプーン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の摂食機能評価用スプーンにおいて、
前記さじ部に加わる荷重を検出する歪ゲージを備えた摂食機能評価用スプーン。
【請求項5】
被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価する摂食機能評価システムであり、
食物を口腔内に取り込むさじ部と、前記さじ部の近傍に設けた磁界変化検出部とを備えたスプーンと、
前記被験者の摂食機能に関する3つの波形を検出するセンサ部と、
前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から、前記さじ部が唇に接近して口腔内に挿入したタイミングを検出し、前記タイミング後に前記の検出センサ部で検出される3つの波形から、摂食機能に関する評価を行う評価部を備えた摂食機能評価システム。
【請求項6】
請求項5記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記スプーンの磁界変化検出部として、励磁用コイルと検出用コイルとを有し、
前記励磁用コイルで所定の周波数の信号による励磁処理を行い、前記検出用コイルでの前記周波数の信号の検出状態の変化から、前記磁石による磁界変化検出を行う摂食機能評価システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記磁界変化検出部として、ホール素子を有し、
前記ホール素子から磁界変化検出を行う構成とした摂食機能評価システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の摂食機能評価システムにおいて、
前記スプーンは前記さじ部に加わる荷重を検出する歪ゲージを備え、
前記評価部は、前記歪ゲージで検出された荷重から、被験者の口腔内に取り込んだ食物の重さを判断する摂食機能評価システム。
【請求項9】
請求項8記載の摂食機能評価システムにおいて、
さらに、前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から前記さじ部の口腔内からの取り出しを検出した後に、前記歪ゲージで検出された荷重から、食物の取り残しを判断する摂食機能評価システム。
【請求項10】
被験者の唇の近傍に磁石を取り付けて被験者の摂食機能を評価する摂食機能評価方法であり、
食物を口腔内に取り込むさじ部の近傍に磁界変化検出部を備えたスプーンを用意し、前記被験者の3つの摂食機能に関する反応をセンサで検出し、前記スプーンの磁界変化検出部で検出された前記磁石による磁界変化から前記さじ部の口腔内への挿入タイミングを検出し、前記タイミング後に前記センサで検出される3つの波形から摂食機能に関する評価を行う摂食機能評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−212231(P2011−212231A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83383(P2010−83383)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(308030787)サイエンスリサーチ株式会社 (3)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(308030787)サイエンスリサーチ株式会社 (3)
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