説明

摩擦評価具、摩擦評価方法及びサンプルの製造方法

【課題】 サンプルの所定面の摩擦特性を容易かつ正確に評価することができる摩擦評価具、摩擦評価方法及びサンプルの製造方法を提供する。
【解決手段】 サンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価具1であって、サンプルを介して把持可能な把持面21が外周に形成されている重錘2を備え、把持面21は、水平面Xとのなす角aが0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されている摩擦評価具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム手袋などのサンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価具、摩擦評価方法及びサンプルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム手袋などのサンプルの摩擦特性を評価するものとして、傾斜式のすべり試験装置が従来から知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このすべり試験装置100は、図3に示すように、水平に設置された固定台101と、固定台101に対して回動可能に取り付けられた回動板102と、固定台101と回動板102とのなす角度を測定する角度測定計103とを備えている。このすべり試験装置100によりサンプルの摩擦特性を評価するときは、まず、回動板102の上面にサンプルの試験片104を張り付け、試験片104上に重錘105を載置した状態で、回動板102を回動させる。次に、回動板102の回動に伴い、重錘105が回動板102の傾斜に沿って試験片104上を滑り始めたとき、固定台101と回動板102とのなす角度を角度測定計103により測定する。こうしてサンプルの摩擦特性を評価する。
【特許文献1】実開昭60−4941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなすべり試験装置100では、サンプルから試験片104を切り出し、この試験片104を回動板102に張り付ける作業を要するので、試験作業が煩わしいという問題があった。また、摩擦特性を評価する部分が、例えばゴム手袋の指先部分等の狭小な部分である場合には、必要な大きさの試験片104をサンプルから切り出すことができず、この部分の摩擦特性を評価することができないという問題があった。また、試験片104によりサンプルの摩擦特性を評価するので、サンプルの実際の使用状態における摩擦特性を評価することができず、正確な評価が行えないという問題があった。
【0005】
また、サンプルの使用状態に基づく摩擦特性を評価するために、上記のすべり試験装置100による評価とは別に、試験者がサンプルを装着した状態で評価試験を行うことも考えられるが、この場合には、試験者の感覚などに基づいて摩擦特性を主観的に評価せざるを得ず、正確に評価することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、サンプルの所定面の摩擦特性を容易かつ正確に評価することができる摩擦評価具、摩擦評価方法及びサンプルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、サンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価具であって、サンプルを介して把持可能な把持面が外周に形成されている重錘を備え、前記把持面は、水平面とのなす角が0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されている摩擦評価具により達成される。
【0008】
上記摩擦評価具において、水平面に載置される基台と、前記基台から鉛直に延びるように設けられたガイド棒とを更に備え、前記重錘は、前記ガイド棒に沿ってスライド可能に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記把持面は、円錐面であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記目的は、上記のいずれかの摩擦評価具によりサンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価方法であって、サンプルを介して前記把持面を把持するステップと、前記把持面を把持した状態で前記重錘を持ち上げるステップと、前記重錘の持ち上げ高さに基づいてサンプルの摩擦特性を判定するステップとを備える摩擦評価方法により達成される。
【0011】
或いは、本発明の前記目的は、所望の摩擦特性を有するサンプルを製造するサンプルの製造方法であって、サンプルを成形する成形ステップと、前記成形ステップで成形されたサンプルの摩擦特性を上記のいずれかの摩擦評価具により評価する摩擦評価ステップとを備え、前記摩擦評価ステップは、サンプルを介して前記把持面を把持するステップと、前記把持面を把持した状態で前記重錘を持ち上げるステップと、前記重錘の持ち上げ高さに基づいてサンプルの摩擦特性を判定するステップとを備えるサンプルの製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の摩擦評価具、摩擦評価方法及びサンプルの製造方法によれば、サンプルの所定面の摩擦特性を容易かつ正確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦評価具の縦断面図である。
【0014】
図1に示すように、摩擦評価具1は、基台10と、基台10から鉛直に延びるように設けられたガイド棒3と、ガイド棒3に挿入された重錘2とを備えている。
【0015】
基台10は、上部を覆う被覆材11を備えており、水平面に載置されている。被覆材11は、重錘2を載置可能なように水平な面に形成された載置部12を有しており、基台10上に重錘2が落下したときの衝撃を吸収する観点から、コルクなどのクッション性を有する材料から構成されていることが好ましい。
【0016】
ガイド棒3は、下部が基台10に固定された円筒状の部材からなり、本実施形態では10cmの高さを有し、上端部には重錘2の移動を規制するストッパー30が設けられている。ストッパー30は、ガイド棒3より大径の円筒状の部材からなり、重錘2が当接する当接部31が下面に形成されている。
【0017】
重錘2は、例えば500gfの重量を有する金属製の部材からなり、上方に向かって縮径する円錐台形状を有している。また、重錘2は、基台10の載置部12に載置され、中心部に形成されたガイド孔20と、外周に形成された把持面21とを備えている。
【0018】
重錘2は、ガイド孔20にガイド棒3が挿入されることによりガイド棒3に沿ってスライド可能なように構成されている。ガイド孔20及びガイド棒3の径をそれぞれ調整することにより、両者の抵抗を調整し、重錘2をガイド棒3に沿ってスライドさせるときの動きに対する抵抗を調整することができる。
【0019】
把持面21は、基台10が水平面に載置された状態で、斜め上方を向くように、すなわち、上部が重錘2の径方向外方に張り出さないように形成されている。具体的には、基台10が水平面に載置された状態で、図に点線で示す水平面Xとのなす角aが0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されている。本実施形態では、重錘2の外周全面に把持面21が形成されており、把持面21と水平面Xとのなす角aが、重錘2の下端から上端まで例えば45度で一定になるように形成されている。また、把持面21は、ガイド棒3を中心軸とする円錐面となるように形成されており、表面が滑らかになるように処理されている。
【0020】
次に、以上のように構成された摩擦評価具1を用いてサンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価方法について説明する。
【0021】
まず、サンプルを介して把持面21を把持する把持ステップを行う。具体的には、試験者がサンプルを装着した状態で、サンプルにおいて摩擦特性を評価する所定面で把持面21を把持する。本実施形態では、サンプルをゴム手袋とし、摩擦特性を評価する所定面をゴム手袋の指先部分の面(以下、指先面とする)としている。したがって、試験者は、ゴム手袋を装着した状態で、指先により把持面21を把持する。このとき、試験者、把持位置及び把持力などの試験条件を一定にすることが好ましい。
【0022】
次に、持ち上げステップを行う。具体的には、ゴム手袋を装着した試験者が指先により把持面21を把持した状態で、重錘2をガイド棒3に沿って上方に持ち上げる。このとき、把持面21とゴム手袋の指先面との摩擦力の鉛直成分が重錘2の重力に比べて大きい場合は、重錘2をガイド棒3の上端部まで持ち上げることができる。ガイド棒3の上端部まで移動した重錘2は、当接部31に当接し、ストッパー30により移動が規制される。一方、把持面21とゴム手袋の指先面との摩擦力の鉛直成分が重錘2の重力に比べて小さい場合は、重錘2をガイド棒3の上端部まで持ち上げることができない。
【0023】
続いて、サンプル(ゴム手袋)の摩擦特性を判定する判定ステップを行う。具体的には、重錘2をガイド棒3の上端部まで持ち上げることができたときは、ゴム手袋の指先面が滑り難く、摩擦力が大きいと判断する。滑り難いゴム手袋を入手することが目的の場合には、このゴム手袋を合格製品として扱う。一方、重錘2をガイド棒3の上端部まで持ち上げることができなかったときは、指先面が滑り易いので不合格のゴム手袋とする。このようにしてサンプルの摩擦特性を評価する。
【0024】
本実施形態に係る摩擦評価具1によれば、サンプルを介して把持可能な把持面21が外周に形成されている重錘2を備え、把持面21が、水平面Xとのなす角aが0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されているので、試験者がサンプル(ゴム手袋)を装着した状態で、所定面(指先面)により把持面21を把持することができる。したがって、サンプルの所定面の摩擦特性を、サンプルの実際の使用状態において評価することができ、正確な評価が行える。また、サンプルから試験片を切り出す等の手間を要さないので、摩擦特性を容易に評価することができる。さらに、重錘2を持ち上げることができたか否かという客観的に認識可能な基準により摩擦特性を評価することができるので、正確な評価が行える。
【0025】
また、このような摩擦評価具1が、水平面に載置される基台10と、基台10から鉛直に延びるように設けられたガイド棒3とを更に備え、重錘2がガイド棒3に沿ってスライド可能に設けられているので、重錘2を基台10に載置して安定させた状態から、ガイド棒3に沿って持ち上げることができる。したがって、重錘2を水平方向に振れることなく、鉛直上方へ安定して持ち上げることができるので、試験結果を安定させることができ、サンプルの摩擦特性をより正確に評価することができる。
【0026】
また、把持面21が円錐面であるので、把持面21の周方向において把持位置が変わっても一定の把持状態で重錘2を把持することができ、より正確にサンプルの摩擦特性を評価することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0028】
例えば、本実施形態では、把持面21は、円錐面となるように形成されていたが、基台10が水平面に載置された状態で、水平面Xとのなす角aが0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されていればその構成は特に限定されず、例えば、角錐面や円柱面となるように形成されていてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、把持面21は、重錘2の外周全面に形成されていたが、これに限定されず、重錘2の外周の任意の位置に形成することができる。この場合、把持面21を把持したときに重錘2を安定させる観点から、把持面21は、平面視においてガイド棒に関して対称な位置に形成されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、一定重量の重錘2を用いていたが、重量が異なる複数の重錘2を用意しておき、サンプルの摩擦特性に応じて、これらを使い分けることにより、試験条件を変更することができる。例えば、指先面が滑り難いゴム手袋がサンプルである場合には、大きな重量の重錘2を用いて評価試験を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、平滑な把持面21の重錘2を用いていたが、把持面21の表面粗さが異なる複数の重錘2を用意することにより、上記と同様に、サンプルに応じて試験条件を変更することができる。例えば、表面が粗い把持面21を備える重錘2を用いる場合は、把持面21とサンプルとの摩擦力が大きくなるので、滑り難いサンプルの評価試験に適している。
【0032】
また、把持面21と水平面Xとのなす角aの角度が異なる複数の重錘2を用意することによっても、上記と同様に、サンプルに応じて試験条件を変更することができる。
【0033】
また、図2に示すように、重錘2と基台10との間にバネ4を配置し、このバネ4で重錘2と基台10とを接続することによっても、試験条件を変更することができる。この場合、バネ4により重錘2に対して下方に作用する力が付加されるので、滑り難いサンプルの評価試験に適している。また、バネ定数が異なる複数のバネ4を用意しておき、これらを使い分けることにより、サンプルに応じて試験条件を変更することができる。また、重錘2とストッパー30との間にバネ4を配置してもよい。
【0034】
また、試験を行う際の摩擦評価具1の数は特に限定されず、試験条件がそれぞれ異なる複数の摩擦評価具1を並置してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、サンプルは、ゴム手袋であったが、手又は指により物体を把持するときに手又は指に装着するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば指サックや、指先部分に滑り止めが付いた布手袋などであってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、重錘2をガイド棒3の上端部まで持ち上げることができた場合に、滑り難いサンプルであると評価していたが、摩擦特性の評価基準は特に限定されるものではない。例えば、重錘2を持ち上げることができなかったときに所定の摩擦特性を備えていると判断することもできる。この場合は、サンプルの滑り易さを評価することができる。また、重錘2をガイド棒3のどの位置まで持ち上げたかにより摩擦特性を評価することも可能である。
【0037】
また、本実施形態では、試験者がサンプルを着用して試験を行ったが、ロボット等にサンプルを装着して試験を行うことも可能である。この場合、ロボットが把持面21を把持するときの把持力を一定に設定することにより、より正確な摩擦特性の評価が行える。
【0038】
また、本実施形態では、摩擦評価具1が基台10及びガイド棒3を備える構成であったが、把持面21を把持して重錘2を上方に持ち上げることができれば、これらは必ずしも必要ではなく、重錘2のみを用いて評価試験を行うこともできる。
【0039】
また、本実施形態に係る摩擦評価具1及び摩擦評価方法を、サンプルを製造する製造方法において用いることもできる。例えば、サンプルがゴム手袋である場合、ゴム手袋を成形する成形ステップを行った後、成形されたゴム手袋の摩擦特性を、摩擦評価具1を用いた上述の摩擦評価方法により評価することができる。ゴム手袋等のサンプルを成形する方法は特に限定されないが、例えば、サンプル用の型を天然ゴムラテックスや合成ゴムラテックス等のゴムラテックス中に浸漬し、引き上げて乾燥させる工程を1回又は複数回繰り返してゴムの被膜を形成した後、この被膜を加硫することによりサンプルを成形する公知の浸漬法を用いることができる。
【0040】
このようなサンプルの製造方法によれば、サンプルを成形するステップと、成形ステップで成形されたサンプルの摩擦特性を摩擦評価具1により評価する摩擦評価ステップとを備えているので、所望の摩擦特性を有するサンプルを製造することができ、高品質のサンプルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る摩擦評価具の縦断面図である。
【図2】他の実施形態に係る摩擦評価具の縦断面図である。
【図3】従来のすべり試験装置の側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 摩擦評価具
2 重錘
3 ガイド棒
4 バネ
10 基台
11 被覆材
12 載置部
20 ガイド孔
21 把持面
30 ストッパー
31 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価具であって、
サンプルを介して把持可能な把持面が外周に形成されている重錘を備え、
前記把持面は、水平面とのなす角が0度より大きくかつ90度以下の一定角度となるように形成されている摩擦評価具。
【請求項2】
水平面に載置される基台と、
前記基台から鉛直に延びるように設けられたガイド棒とを更に備え、
前記重錘は、前記ガイド棒に沿ってスライド可能に設けられている請求項1に記載の摩擦評価具。
【請求項3】
前記把持面は、円錐面である請求項1又は2に記載の摩擦評価具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の摩擦評価具によりサンプルの摩擦特性を評価する摩擦評価方法であって、
サンプルを介して前記把持面を把持するステップと、
前記把持面を把持した状態で前記重錘を持ち上げるステップと、
前記重錘の持ち上げ高さに基づいてサンプルの摩擦特性を判定するステップとを備える摩擦評価方法。
【請求項5】
所望の摩擦特性を有するサンプルを製造するサンプルの製造方法であって、
サンプルを成形する成形ステップと、
前記成形ステップで成形されたサンプルの摩擦特性を請求項1から3のいずれかに記載の摩擦評価具により評価する摩擦評価ステップとを備え、
前記摩擦評価ステップは、サンプルを介して前記把持面を把持するステップと、前記把持面を把持した状態で前記重錘を持ち上げるステップと、前記重錘の持ち上げ高さに基づいてサンプルの摩擦特性を判定するステップとを備えるサンプルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−180556(P2008−180556A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13121(P2007−13121)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)