説明

摩擦部材およびその製造方法

【課題】 ディスク3のすべりを防止できると共に、ディスク用ドライブ装置の静音化に効果的に寄与しうるような、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブル2に一体化される摩擦部材1を提供する。
【解決手段】 ディスク用ドライブ装置のドライブテーブル2に一体化される摩擦部材1をエラストマー層(ゴム層12)と不織布層11を含む積層構造に構成する。エラストマー層(ゴム層12)と不織布層11とは互いに隣接して一体化されて、エラストマー層(ゴム層12)が露出するようにドライブテーブル2に一体化される。不織布層11は、スパンボンド不織布や熱プレスされた不織布により構成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク用ドライブ装置に使用される摩擦部材、特にディスクを保持するドライブテーブルに一体化されて使用され、ディスクとドライブテーブルの間のすべりを防止する摩擦部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報機器などに使用されるCDやDVDやブルーレイディスクなどのディスクは、ディスク用ドライブ装置によって、情報の記録・再生が行われる。その際、ディスクは、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに保持されて回転する。ディスクとドライブテーブルが互いに滑らないように、ドライブテーブルには、ドーナツ状の摩擦部材が設けられることが多い。この摩擦部材はディスクストッパーといわれることもある。
【0003】
例えば、図6に示すように、特許文献1には、ターンテーブル5を回転駆動するスピンドルモータ4を備えた光ディスク装置において、ターンテーブル5の摩擦部材貼り付け面20に、ターンテーブル5の面振れを調整する調整用部材12を貼着して、調整用部材12の上に摩擦部材9を貼り付けることが開示されている(図6として特許文献1の図3を引用する)。また、特許文献2には、PETフィルムなどの担体フィルム上にゴムを溶剤で糊化したものをコーティングし、乾燥し、布目処理し、電子線架橋して、滑り抵抗性に優れた緩衝用ゴムシートを得てドライブテーブル用の摩擦部材として使用することが開示されている。さらに、特許文献3には、ゴムと接着しないPETフィルムに、ゴム溶液をスクリーン印刷によりリング状に塗布し、架橋してゴム層とした後に、ゴム層の表面に粘着層をスクリーン印刷により形成し、その後、リング状のゴム層をPETフィルムから剥離して、ドライブテーブル用の摩擦部材として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−158055号公報
【特許文献2】特開平9−306157号公報
【特許文献3】特開2005−239913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら摩擦部材は、ディスクのすべりを防止すべく、摩擦を高めるよう構成され、そのための工夫が積み重ねられてきた。
【0006】
しかしながら、近年、ディスク用ドライブ装置の高速化に伴い、装置の運転中にディスクの回転部分からうなり音が発生するといった、音の問題が顕在化し、装置の静音化が求められるに至った。
【0007】
本発明の目的は、ディスクのすべりを防止できると共に、ディスク用ドライブ装置の静音化に効果的に寄与しうるような、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化される摩擦部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、不織布層とエラストマー層の積層構造により摩擦部材を構成すると、上記課題を解決しうることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化される摩擦部材であって、摩擦部材はエラストマー層と不織布層を含む積層構造を有すると共に、エラストマー層と不織布層とは互いに隣接して一体化され、エラストマー層が露出するようにドライブテーブルに一体化される摩擦部材である(第1発明)。
【0010】
エラストマー層は、所定の弾力性を有すると共に、ディスクと直接接触して摩擦力を発生させる層である。エラストマー層は、例えば、架橋されたゴムや未架橋ゴムといったゴム、あるいは、熱可塑性エラストマーや、ウレタン樹脂といった熱硬化性樹脂によって構成されうる。
【0011】
本発明においては、不織布層がスパンボンド不織布とされることが好ましい(第2発明)。さらに、本発明においては、不織布層を熱プレスされた不織布とすることが好ましい(第3発明)。
【0012】
また、本発明は、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化される摩擦部材の製造方法であって、不織布にエラストマー成分を含む液を塗布する工程、塗布された液を固形化して、エラストマー層が不織布に積層状態で一体化された積層シートを得る工程、積層シートを切断して摩擦部材を製造する工程、を含む摩擦部材の製造方法である(第4発明)。
【0013】
エラストマー成分を含む液とは、エラストマー層となるべきエラストマーやその原料(例えば未架橋物、主剤と硬化剤など)を含む液である。エラストマー成分を含む液としては、例えば、未架橋の液状ゴムや、固形の未架橋ゴムを溶剤により液状に希釈したゴム液、未架橋ゴム成分を含むエマルジョンやラテックス、ウレタン樹脂の液状プレポリマー、熱可塑性エラストマーを溶剤により液状に希釈した液などが例示できる。
【0014】
エラストマー成分を含む液は、不織布に塗布されたのちに、固形化工程を経ることにより、不織布に積層状態で一体化され、エラストマー層となる。
液の固形化の手段としては、例えば、架橋や、溶剤や水分の揮発・乾燥、硬化反応などを例示することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の摩擦部材(第1発明)によれば、ディスクのすべりを防止しながら、ディスク用ドライブ装置の静音化に貢献できるという効果が得られる。
【0016】
さらに、第2発明のように、不織布層をスパンボンド不織布とした場合には、摩擦部材を薄肉なものとしながらも、摩擦部材に適度なコシを与えて取り扱い性を良くできると共に、適度な振動吸収性を持たせて、より静音化を図ることができる。
また、第3発明のように、不織布層を熱プレスされた不織布とした場合には、滑り防止性能の向上に特に効果的である。
【0017】
本発明の摩擦部材製造方法(第4発明)によれば、摩擦部材を効率的に製造できると共に、エラストマー層と不織布層の一体化が強固なものとなり、エラストマー層の耐久性が向上して滑り防止効果を長期間にわたって発揮できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明第1実施形態の摩擦部材の平面図及び断面図。
【図2】摩擦部材がドライブテーブルに一体化されて使用される状態を示す断面図。
【図3】本発明の摩擦部材の製造方法の例を示す模式図。
【図4】本発明の摩擦部材におけるゴム層の形態の例を示す図。
【図5】本発明の摩擦部材の他の実施形態を示す平面図及び断面図。
【図6】従来の摩擦部材の使用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。まず、一例として、エラストマー層がゴムにより形成されるゴム層であるような第1の実施形態について説明する。なお本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0020】
図1に本発明の第1の実施形態の摩擦部材の平面図及び断面図を示す。図2には、摩擦部材がドライブテーブルに一体化されて使用される状態を断面図で示す。摩擦部材1は、ドーナツ状の平面形態を有する部材であり、ゴム層12と不織布層11とが互いに隣接して積層され一体化された積層構造を有する部材である。本実施形態においては、ゴム層12がエラストマー層として設けられている。本実施形態においては、ゴム層12は、不織布層11の片面にメッシュ状をなすように形成されている。このようなゴム層12は、後述するようにスクリーン印刷を利用して形成し、不織布に一体化できる。
【0021】
ゴム層12の形態は、メッシュ状の形態のほか、ドットを散在させた形態や、線やブロックを散在させた形態といった、ゴムが存在しない空隙部を有する形態とすることができる。あるいは、ゴム層12は空隙部を持たない通常のシート状の形態などとすることもできる。ゴム層を、空隙部のないシート状とする場合には、表面に布目をつけることが好ましい。ゴム層12はディスクと直接接触して摩擦力を発生させる層であるので、ゴム層12の形態は、ゴム層の摩擦力や弾力性や耐久性の観点から、メッシュ状とすることが特に好ましい。
【0022】
ゴム層12を形成するゴムの材質は、特に制限されず、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム、クロロプレンゴムのほか、水素添加イソプレンゴム(H−IR)等の任意のゴムを使用することができる。これらのゴムには、加硫剤、補強剤、発泡剤等の適当な配合剤を添加できる。架橋により、不織布に対し接着一体化可能なゴムであることが好ましい。
【0023】
不織布層11を形成する不織布としては、特にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂繊維やポリプロピレン(PP)樹脂繊維のような合成樹脂繊維で構成される不織布が好ましく使用できるが、他の繊維で構成される不織布であっても良い。また、不織布としては、スパンボンド不織布やサーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、バインダを使用した不織布などが使用できる。中でも、スパンボンド不織布やサーマルボンド不織布が好ましく使用できる。また、不織布として、熱プレス処理を施した不織布を本発明の実施に供することも好ましい。
【0024】
不織布層11とゴム層12(すなわちエラストマー層)の一体化には、多様な手段が採用されうる。ゴム層をゴムシートにより構成する場合であれば、ゴムシートと不織布は接着剤や粘着材により一体化されうる。液状のゴム液を不織布に塗布し、架橋してゴム層を形成する場合には、ゴム層12と不織布層11とは直接接着一体化される。後者の方法を採用すると、不織布の繊維の間にゴムが入り込んで、ゴム層と不織布層の一体化が特に強固なものとできる。
【0025】
本発明にかかる摩擦部材1の使用形態について説明する。摩擦部材1はディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化されて使用される。ここで、ディスク用ドライブ装置とは、CDやDVD、ブルーレイディスクといった取り出し可能な情報記録用ディスクに対し、情報の記録・再生を行う装置である。ディスク用ドライブ装置には、ディスクを保持し回転駆動するためのドライブテーブルが設けられており、ドライブテーブルは、ディスクを機械的に保持するための機構を備える。
【0026】
摩擦部材1は、図2に示されるように、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブル2上に一体化(例えば両面テープにより貼着)されて使用される。その際、不織布層11の側がドライブテーブル2の側に面し、ゴム層12(エラストマー層)の側が露出するように、即ち装着されるディスクとゴム層12が対向するように、ドライブテーブルに一体化される。そして、ドライブテーブル2に、CDやDVDなどのディスク3が保持される。図2には、ディスク3が保持された状態を示している。なお、図2において、ドライブテーブルの保持機構や駆動機構の詳細は省略している。ディスク3は、摩擦部材1のゴム層12に当接するように保持され、ゴム層12とディスク3の間の摩擦により、ディスク3とドライブテーブル2との間の相対回転(滑り)が規制される。
【0027】
摩擦部材1をドライブテーブル2に一体化する手段には、両面テープや、粘着剤、接着剤の利用、などが例示できる。ドライブテーブル2となる部材を樹脂の射出成形により形成する場合には、ドライブテーブル2を射出成形する際に、摩擦部材1を金型内部の所定位置に配置しておいて、いわゆるインサート成形を行って、ドライブテーブル2と摩擦部材1を一体化することもできる。
【0028】
摩擦部材1の製造方法の一例について説明する。摩擦部材1は、不織布層11とゴム層12とが積層された積層シートLを得る工程に引き続き、得られた積層シートLを所定の形状に切断(例えば打ち抜き加工)して摩擦部材に形成する工程を経て製造できる。
【0029】
積層シートLを得る工程としては、例えば、架橋されたゴムシートと不織布とを接着剤により積層一体化する工程が採用可能である。
【0030】
積層シートLを得る工程として特に好ましい工程は、未架橋のゴムを含むゴム液を不織布に塗布し、架橋して積層シートを得る工程である。より具体的には以下のような工程を経て積層シートLが得られる。
【0031】
まず未架橋のゴム液を準備する。未架橋ゴムがシリコーンゴムや水素添加イソプレンゴムなどの液状又はペースト状ものであれば、それをそのままゴム液として使用できる。未架橋ゴムが固体に近い性状のものであれば、溶剤で溶かしてゴム液とすることができる。ゴム液は未架橋ゴムを含むラテックスやエマルジョンであってもよい。
【0032】
準備したゴム液を不織布シートNに塗布する。塗布の手段としては、はけ塗りや、スプレー、コータ、ディッピング、転写、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの手段をとりうる。特に、スクリーン印刷を採用すると、薄いゴム層をメッシュ状やドット状、その他の多彩な形状に効率的に形成できて好ましい。
【0033】
必要に応じて、不織布に塗布されたゴム液から溶剤や水分を揮発させたり乾燥させたりすると、固形化した未架橋のゴム層が不織布上に形成される。必要に応じ、スクリーン印刷やゴム液の塗布を繰り返して、ゴム層の厚みを増したり、ゴム層に立体構造を与えたりすることも可能である。
【0034】
その後、未架橋ゴム層を架橋して、ゴム層を不織布層に架橋一体化する。架橋は過酸化物架橋や放射線架橋などといった架橋手段が特に制限なく採用できる。架橋を行う熱で不織布が溶損しない程度の温度で架橋することが好ましい。以上により、架橋されたゴム層Rが不織布Nに積層一体化された積層シートLが得られる。図3(a)には、不織布Nにメッシュ状のゴム層Rを形成した積層シートLの例を示す。
【0035】
摩擦部材のドライブテーブルへの取り付けがしやすいように、必要に応じ、得られた積層シートLに粘着層を形成したり、両面テープを積層したりすることが好ましい。上記工程で得られた積層シートLの不織布層の側に、粘着剤を塗布したり、両面テープを貼り付けたりすればよい。この工程は、後述する打ち抜き工程に先立って行われることが工程の効率性の観点から好ましい。
【0036】
図3(b)に示すように、得られた積層シートLを、所定の形状(例えばドーナツ状の形状)に切断(裁断)すると、摩擦部材1が得られる。特に打ち抜き加工することが、製造の効率性の観点から好ましい。この摩擦部材はドライブテーブルに直接貼り付けて使用できる。
【0037】
本発明にかかる摩擦部材の作用及び効果を説明する。
摩擦部材1はエラストマー層たるゴム層12を備え、ディスク用ドライブ装置において、ゴム層12がディスク3に当接するようにドライブテーブル2に一体化されるので、摩擦部材1により、ディスク3とドライブテーブル2の間のすべりを防止・抑制することができる。この効果をより効果的に発揮するためには、エラストマー層(ゴム層)がメッシュ状やドット状、線状とされていることが特に好ましく、そのような形態のエラストマー層(ゴム層)は、例えばスクリーン印刷を利用して効率的に製造できる。
【0038】
そして、本発明の摩擦部材1においては、不織布層11とゴム層12とが積層されているので、不織布層11の働きにより、ディスク駆動時の異音(例えばうなり音)の発生が抑制され、ディスク用ドライブ装置の静音化に寄与する。
不織布層を設けることによる静音化のメカニズムの詳細は不明であるが、高速回転するディスク3やドライブテーブル2に生ずる振動が不織布層11を通じて互いに伝達される際に、不織布が有する繊維の交絡構造により発生する構造減衰により、振動のエネルギーが減衰されて、異音となるような大きな振動の発生が抑制されるためであると推定される。従って、エラストマー層(ゴム層)を形成するエラストマー(ゴム)は、不織布層全体に入り込んでしまうことなく、不織布層にはエラストマー(ゴム)が入り込んでいない部分が残されていることが好ましい。
【0039】
発明者らは、本発明の摩擦部材1に相当する実施例として、PET樹脂繊維からなるスパンボンド不織布にシリコーンゴムをメッシュ状にスクリーン印刷して架橋一体化した摩擦部材(外径25mm、内径19mm、全体の厚み0.5mm)を製造し、比較例との騒音の比較を行った。比較例としては、不織布をPETフィルムに置き換えたほかは、ゴム層の材質、形態、全体の形状などが実施例と同じものを製造して騒音試験を行った。
【0040】
得られた摩擦部材をDVDディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに貼付して、装置により情報の記録や再生を行ったところ、実施例、比較例共に、ディスクとドライブテーブルの間の滑りは認められなかった。一方で、PETフィルムを用いた比較例の摩擦部材での試験においては、ディスクの高速回転に伴い、ディスクや回転部分からうなり音が発生することがあったのに対し、不織布を用いた実施例の摩擦部材での試験においては、同条件で試験しても、ディスクからうなり音が発生することはなく、良好な騒音抑制効果が確認された。
【0041】
また、不織布層11がスパンボンド不織布から構成されると、摩擦部材を薄肉なものとしながらも、摩擦部材に適度なコシを与えて取り扱い性を良くできると共に、適度な振動吸収性を持たせることができる。また、摩擦部材の厚み方向の寸法精度を高めることもでき、摩擦部材のディスクへの密着性がよくなって、滑り防止に特に効果的なものになる。
【0042】
また、不織布層11を構成する不織布を熱プレスされた不織布とすれば、摩擦部材を薄肉なものとしながら、その厚み方向の寸法精度を高めることができ、摩擦部材のディスクへの密着性がよくなって、滑り防止に特に効果的なものになる。
【0043】
また、本発明の摩擦部材を製造するにあたって、不織布層11にエラストマー層(例えばゴム層12)を一体化する方法として、不織布に対しエラストマー成分を含む液(例えばゴム液)を塗布し、その液を(例えば架橋により)固形化することによって、エラストマー層(ゴム層)を形成一体化する方法を採用すると、エラストマー(上記実施形態においてはゴム)が不織布の繊維の間に入り込み、不織布表面付近の繊維を包み込むように一体化されるので、エラストマー層(ゴム層)と不織布層の一体化が強固なものとなり、エラストマー層(ゴム層)を薄く微細な形状のものとしても、エラストマー層(ゴム層)が不織布層からはがれにくくなり、ディスク3とドライブテーブル2の間のすべり防止効果を確実に発揮しうる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号をつけると共にその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0045】
エラストマー層は、上記実施形態のようにゴム層とすることもできるが、他のエラストマーにより構成することもできる。エラストマーとしては、適度な摩擦力と弾力性を有するものを使用できる。例えば、軟質ウレタン樹脂などの軟質な熱硬化性樹脂によりエラストマー層を構成できる。あるいは、熱可塑性エラストマーによりエラストマー層を構成することもできる。本発明の実施に好ましい熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマーなどが例示できる。エラストマーの硬度は特に限定されるものではないが、代表的には、JISK−6253に規定されるデュロメータタイプA硬度で40〜80度程度とされることが好ましい。
【0046】
また、エラストマー層をゴム層とする場合であっても、ゴム層は架橋ゴムで構成しても良いが、未架橋ゴムで構成することもできる。摩擦力が大きくできる観点からは未架橋ゴムを含むゴム層に構成することが好ましい。ゴム層の耐久性や強度を高める観点からは、ゴム層を架橋ゴムにより構成することが好ましい。
【0047】
第1実施形態の摩擦部材1の製造方法の説明においては、ゴム液を不織布に塗布して固形化し架橋して積層シートを得て、摩擦部材を製造する方法について説明したが、摩擦部材のエラストマー層をゴム以外のエラストマーにより構成するのであれば、エラストマーを含む液を調製して、その液を不織布に塗布し、固形化させてエラストマー層を積層した積層シートを得るようにして摩擦部材を得ることもできる。この場合、エラストマー成分を含む液は、使用するエラストマーの種類に対応して、多様な形態とすることができる。例えば、エラストマーとしてウレタン樹脂を使用するのであれば、未反応状態のウレタン樹脂の液状プレポリマーが、熱可塑性エラストマーをエラストマーとして使用するのであれば、熱可塑性エラストマーを溶剤により液状に希釈した液などが、エラストマー成分を含む液として例示できる
【0048】
エラストマー成分を含む液は、不織布に塗布されたのちに、固形化工程を経ることにより、不織布に積層状態で一体化され、エラストマー層となるが、液の固形化の手段としては、第1実施形態に示したゴムの架橋に限定されるものではなく、他の手段、例えば、溶剤や水分の揮発・乾燥による固形化、硬化反応の促進による固形化などを例示することもできる。なお、ゴムによりエラストマー層を構成する場合であっても、エラストマー層の固形化工程において、架橋工程は必須ではない。未架橋ゴムによりエラストマー層を構成するのであれば、例えば、未架橋ゴムを溶剤で希釈したゴム液を不織布に塗布し、溶剤を揮発させて未架橋ゴムを固体状に固形化させれば、架橋工程無しで、エラストマー層を形成できる。
【0049】
エラストマー層の形態は、例えば、図4に示すような形態とすることができる。図4には、本発明の摩擦部材のエラストマー層の形態を示しており、図4(a)はエラストマー層をメッシュ状に形成した例、図4(b)はエラストマー層をドットが散在した、いわゆるドット状に形成した例である。図4(c)、(d)は、エラストマー層を線状に形成した例であり、図4(c)では同心円状に、図4(d)では放射状にエラストマー層が形成されている。これら形態の中でも、摩擦力が高く、エラストマー層がはがれにくいという点で、メッシュ状であることが特に好ましい。
【0050】
また、摩擦部材の形状は、上記実施形態に示したようなドーナツ状に限定されず、例えば、円形や矩形といった形状にすることも可能である。このような形状の摩擦部材とする場合には、ドライブテーブルの周囲に複数の摩擦部材を同心円状に配置して一体化することが好ましい。
【0051】
本発明の摩擦部材は、エラストマー層、不織布層以外の層を備えるものであっても良い。例えば、摩擦部材には、粘着層や接着層を含ませることができ、粘着層や接着層を摩擦部材に一体化すればドライブテーブルへの取り付けに便利である。あるいは、摩擦部材に樹脂フィルム層や他の材料(例えば金属材料など)からなる層を設けて、摩擦部材の剛性を高め、摩擦部材の取り扱い性を高めたり、摩擦部材のゴム層表面の平面性を高めたりすることも好ましい形態である。図5には、一例として、PETフィルム層53、不織布層51、ドット状に形成されたエラストマー層52の順に積層一体化した摩擦部材5を示す。
【0052】
本発明の摩擦部材が利用されるディスク用ドライブ装置が扱うディスクとしては、CD、DVD、ブルーレイディスクが例示されるが、これに限定されるものではない。取り外し可能なディスクメディアをディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに保持させて、ディスクを回転させ、記録再生を行うディスクであれば、そのようなディスクの記録・再生を行うドライブ装置に対し、本発明の摩擦部材は広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の摩擦部材は、ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化して使用され、ドライブテーブルとディスクの間のすべりを防止できて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0054】
1 摩擦部材
11 不織布層
12 ゴム層
2 ドライブテーブル
3 ディスク
N 不織布シート
R ゴム層
L 積層シート
5 摩擦部材
51 不織布層
52 エラストマー層
53 PETフィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化される摩擦部材であって、
摩擦部材はエラストマー層と不織布層を含む積層構造を有すると共に、
エラストマー層と不織布層とは互いに隣接して一体化され、
エラストマー層が露出するようにドライブテーブルに一体化される摩擦部材。
【請求項2】
不織布層がスパンボンド不織布とされた請求項1に記載の摩擦部材。
【請求項3】
不織布層を熱プレスされた不織布とした請求項1または請求項2に記載の摩擦部材。
【請求項4】
ディスク用ドライブ装置のドライブテーブルに一体化される摩擦部材の製造方法であって、
不織布にエラストマー成分を含む液を塗布する工程、
塗布された液を固形化して、エラストマー層が不織布に積層状態で一体化された積層シートを得る工程、
積層シートを切断して摩擦部材を製造する工程、
を含む摩擦部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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