摺動受け部材およびその製造方法並びに製造装置
【課題】ラックピニオン式ステアリング装置のラックガイドの本体を、板状部材のプレス加工により形成し、その強度向上を図る。
【解決手段】ラックガイド5において、一端が閉塞された筒状体を本体9とし、この本体9の閉塞端側をモールド樹脂の層10(以下、モールド樹脂層10ともいう)により覆ってなる。即ち、本体9は金属の板状部材からプレス加工により一端閉塞型の円筒状に形成され、筒状側面部の両端間の途中から閉塞端に至る部分は、当該両端間の途中から開放端に至る部分よりも径小となっている。金属板材をプレス加工して筒状に形成された本体9に、段面部15およびくびれ部16を形成する。この段面部15およびくびれ部16によって本体9の周側面部の強度が高くなり、別体の補強体を本体9の内側に収納する等せずとも済む。
【解決手段】ラックガイド5において、一端が閉塞された筒状体を本体9とし、この本体9の閉塞端側をモールド樹脂の層10(以下、モールド樹脂層10ともいう)により覆ってなる。即ち、本体9は金属の板状部材からプレス加工により一端閉塞型の円筒状に形成され、筒状側面部の両端間の途中から閉塞端に至る部分は、当該両端間の途中から開放端に至る部分よりも径小となっている。金属板材をプレス加工して筒状に形成された本体9に、段面部15およびくびれ部16を形成する。この段面部15およびくびれ部16によって本体9の周側面部の強度が高くなり、別体の補強体を本体9の内側に収納する等せずとも済む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の相手材を摺動自在に支持する摺動受け部材およびその製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などのラックピニオン式ステアリング装置は、ケーシング内に、ステアリング操作によって回転されるように軸受により支持されたピニオンと、このピニオンの回転によって直線的に往復移動されるラックバーと、このラックバーを摺動自在に支持するラックガイド(摺動受け部材)とを設けてなる。ラックガイドは、ケーシングに設けられた支持穴内に、ラックバーの移動方向と直交する方向に移動自在に支持され、コイルばねによってラックバーに弾性的に押圧されている。
【0003】
ラックガイドは、一般に、ダイキャスト品や厚みを持たせた焼結体により形成されているが、そのような焼結体等からなるラックガイドは重量が増し、比較的高価であることから、特許文献1,2のように、板状部材を絞り成形することによって製造することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−323850号公報
【特許文献2】特開平7−323851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2では、板状部材として1.2mm厚の鋼板を用い、この鋼板を深絞り成形することによって円筒状のラックガイド本体を形成し、このラックガイド本体の端面に形成された凹状面部にラックバーを受ける摺動片を取り付けると共に、ラックガイド本体の内側に、1.0mm厚の鋼板から深絞り成形によって形成された補強体を装着してラックガイド本体を補強するようにしている。
【0006】
このようにラックガイドを板状部材から絞り成形によって形成するものでは、板状部材の板厚が厚いと絞り成形が難しくなるために、厚さの比較的薄い板状部材を使用する傾向がある。薄い板状部材を用いると、ラックガイド本体の筒状側面部(スカート部)がラックバーの荷重を受けた場合に径方向に拡がり易く、その拡がりのために、スカート部がハウジングの支持穴の内面に強く当たって異音を発したり、スカート部の摺動特性が悪くなったりする。引用文献1,2では、ラックガイド本体を補強体によって補強しているので、上述のような不具合の発生は防止できると考えられる。しかしながら、ラックガイド本体を別体の補強体によって補強する構成では、製造コストが高くなる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、板状部材により形成される摺動受け部材にあって、別体の補強体を用いずとも高強度とすることができる摺動受け部材を提供し、併せて、そのような摺動受け部材を製造する方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の摺動受け部材では、本体の筒状側面部に高剛性部が設けられているので、本体が板状部材によって形成されていても、本体の筒状側面部が相手材の荷重を受けて径方向に拡がるように変形することを極力防止することができる。
【0009】
請求項2の摺動受け部材では、高剛性部として、本体の筒状側面部の両端間の途中から前記閉塞端に至る部分を径小にする形状の段面部および/または筒状側面部の両端間の途中にくびれ形状に形成したくびれ部を設けているので、本体の強度を確実に高くすることができる。
請求項3の摺動受け部材では、板状部材が金属であることから、段面部やくびれ部を形成する際に本体の筒状側面部を加工硬化させることができるので、筒状側面部の剛性を容易に上げることができる。また、筒状側面部に急加熱急冷処理を施すことにより、そこの硬度を上げて筒状側面部の剛性を容易に上げることができる。
【0010】
請求項4の摺動受け部材では、金属の板状部材が、鋼板に摺動用金属を被着した複層材からなり、摺動用金属の層が本体の外表面に現れているので、摺動受け部材を支持穴内に摺動可能に配置する場合、支持穴の内面との摺動特性を向上させることができる。
請求項5の摺動受け部材では、摺動用金属の層が空孔率5%以下の焼結金属からなっているので、摺動用金属の層の強度が高い。また、板状部材を絞り成形する場合などにおいて、摺動用金属の層が剥離したり、摺動用金属の層を構成する焼結金属粒が脱落したりする恐れがない。
【0011】
請求項6の摺動受け部材では、凹状面が樹脂により覆われているので、相手材との摺動特性を向上させることができる。
請求項7の摺動受け部材では、スリットを形成することによって筒状側面部を径方向に拡げ易くなるので、支持穴の内面との隙間を小さくすることができ、且つ、支持穴の内面との接触圧が過度に大きくならないようにすることができる。スリットの位置は、相手材の軸線方向やそれに垂直な方向に設けることが制御面において好ましい。
請求項8の摺動受け部材では、台座部が凹状面と共にモールド樹脂によって覆われているので、相手材および支持穴の内面との摺動特性を向上させることができる。また、モールド樹脂による被覆からスカート部を除外する場合、モールド用の樹脂の使用コストを低減することができる。
【0012】
請求項9の摺動受け部材では、スカート部と台座部との間にくびれ部が設けられているので、筒状側面部の剛性をより一層高めることができる。また、モールド樹脂の固定を強固にすることができる。
請求項10の摺動受け部材では、スカート部に形成されたインデントに潤滑油などの潤滑剤を貯留できるので、支持穴の内面との摺動特性を向上させることができると共に、特に微小振動によるフレッティング摩耗を防止することができる。
【0013】
請求項11の摺動受け部材の製造方法および請求項13の製造装置によれば、高剛性部として段面部とくびれ部を有した摺動部材を容易に製造でき、しかも、段面部を平坦に成形でき、且つ、凹状面の成形と同時にくびれ部を据え込んでより高剛性にすることができる。
請求項12の摺動受け部材の摺動方法および請求項14の製造装置によれば、台座部を凹状面と共に覆うモールド樹脂の層をインサート成形によって容易に成形でき、しかも、この際、段面部が平坦に仕上げられていることにより、モールド樹脂が段面部からスカート部にかけてバリ状に漏れ出ることを極力防止でき、バリ取りなどの後処理を行わずとも済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、(a)は図2のA−A線に沿うラックガイドの断面図、(b)は図2のB−B線に沿うラックガイドの断面図
【図2】ラックガイドの斜視図
【図3】ラックガイドの本体の斜視図
【図4】ラックピニオン式ステアリング装置の断面図
【図5】ラックガイドの本体を形成する板状部材の部分的な拡大断面図
【図6】トランスファプレス装置の全体を概略的に示す断面図
【図7】第1絞り用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図8】第2絞り用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図9】ネッキング加工用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図10】予備仕上げ用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図11】仕上げ用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図12】トランスファプレス装置の各工程における加工内容を示す断面図
【図13】仕上げ用成形型による仕上げ工程を示すもので、(a)および(b)は筒状体および仕上げ用成形型を90度異なる位置で切断して示す部分的な断面図
【図14】ラックガイドの本体の強度試験の状態を示すもので、(a)は実施例品についての側面図、(b)は比較例品についての側面図、(a−1)は実施例品の計測方向を示す平面図、(b−1)は比較例品の計測方向を示す平面図
【図15】ラックガイドの本体の強度試験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
ラックピニオン式ステアリング装置1は、図4に示すように、ケーシング2内に、ボールベアリング3によって回転自在に支持されたピニオン4と、ラックガイド(摺動受け部材)5によって直線移動自在に支持されたラックバー(相手材)6を収納してなる。ピニオン4は、図示しないステアリングホイールに連結され、当該ステアリングホイールの回転操作によって回転される。一方、ラックバー6は、ピニオン4に噛み合うラック歯6aを有し、ピニオン4の回転によって直線移動される。
【0016】
ラックガイド5は、ケーシング2内に形成された支持穴7内に、ラックバー6の移動方向と直交する方向に移動可能に支持されている。このラックガイド5と支持穴7の底部を構成する蓋板2aとの間には圧縮コイルばね8が設けられており、この圧縮コイルばね8はラックガイド5を介してラックバー6をピニオン4側に向けて付勢し、ラックバー6のラック歯6aをピニオン4に弾性的に押圧している。
【0017】
前記ラックガイド5は、本発明に係る摺動受け部材に相当するもので、図1〜図3に示すように、一端が閉塞された筒状体を本体9とし、この本体9の閉塞端側をモールド樹脂の層10(以下、モールド樹脂層10ともいう)により覆ってなる。即ち、本体9は金属の板状部材から後述のようにして一端閉塞型の円筒状に形成され、筒状側面部の両端間の途中から閉塞端に至る部分は、当該両端間の途中から開放端に至る部分よりも径小となっている。
【0018】
本体9の筒状側面部のうち、開放端側の径大な部分はスカート部11とされ、閉塞端側の径小な部分は台座部12とされている。そして、スカート部11の開放端側の部分には、180度隔てて例えばT型のスリット13が形成されている。このスリット13は、スカート部11の開放端において外方に開放されている。また、台座部12の先端面たる閉塞端面は、ほぼ半円弧状に窪む凹状面14に形成されている。
【0019】
スカート部11と台座部12との境界部分は、平坦な環状の段面部15に形成されている。この段部面15の内側の径寸法は、台座部12の径寸法よりも小さく定められており、これにより、台座部12の段面部15側の部分には、段面部15の内径側部分に連なるくびれ部16が形成されている。このくびれ部16は、凹状面14の最下底部に連なる部分では、図1(b)に示すように潰されて段面部15に接した形態となっており、凹状面14の最下底部に連なる部分から離れるに従って次第に起き上がる斜状の形態(図1(a)参照)となっている。くびれ部16において、最も斜状に起き上がった位置16aから段面部15上面位置までの距離は、板状部材の厚さの2〜5倍が、強度面や製造面で好ましい。また、円筒状の本体9の段面部15上面位置を境としてスカート部11軸線方向長さを台座部12軸線方向長さの0.5〜1.5倍とすると、強度面や製造面で好ましい。
【0020】
モールド樹脂層10は、段面部15から台座部12の凹状面14に至る全体を覆っており、台座部12の外周面を覆う部分の外径寸法は、スカート部11の外径寸法と同一とされていることから、モールド樹脂層10の外周面とスカート部11の外周面とは面一となっている。モールド樹脂層10のうち、台座部12の凹状面14を覆う部分は、円弧状の受け凹面17に形成され、この受け凹面17によってラックバー6の円弧状外面を受けるようになっている。なお、受け凹面17には、グリースなどの潤滑剤を貯留するための溝17aが形成されている。モールド樹脂は、台座部12の内側にも充填されている。この台座部12の内外に渡るモールド樹脂層10は、凹状面14の中央部に形成された小孔18を通じて一体化されている。
【0021】
以上のようなラックガイド5の本体9を形成する金属の板状部材19は、図5に示すように、例えば0.9mm厚の鋼板20の一方の面に摺動用金属の層(以下、摺動用金属層ともいう)としてリン青銅系や青銅系の銅系軸受合金からなる焼結金属を被着したバイメタルによって構成されている。この焼結金属の層21(以下、焼結層21ともいう)は、空孔率が5%以下の緻密な構造となっている。なお、焼結層21を例えば空孔率20〜40%程度の多孔質金属を主構成とした形態にした場合は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂などの摺動性樹脂を含浸させ、且つ、その焼結層21の表面をその摺動性樹脂の層で例えば10〜30μmの厚さで覆うようにしても良い。
【0022】
焼結層21を空孔率5%以下の緻密構造とするためには、焼結後に行う圧延の際、圧下率を高くしなければならないが、この高圧下率での圧延によって銅系軸受合金の焼結金属粒が高密度になって焼結層21の機械的強度が向上すると共に鋼板20への接着強度も向上する。これにより、後述する絞り加工などのプレス加工時に焼結層21が鋼板20から剥がれたり、焼結層21を構成する焼結金属粒が脱落したりすることが防止される。そして、板状部材19が本体9として形成された状態では、焼結層21が本体9の外表面に現れるようにしている。
【0023】
次に、ラックガイド5の製造について説明する。ラックガイド5を製造するには、上記板状部材19を所定形状、例えば円形に打ち抜き、この打ち抜いた円形の板状部材、即ちブランク(図示せず)に対し、図6に示すトランスファプレス装置(本体製造装置)22により複数工程のプレス加工を施してラックガイド5の本体9を形成し、その後、プラスチック成形型を用いたインサート成形によって本体9にモールド樹脂層10を型成形する。
【0024】
トランスファプレス装置22は、プレス機械のボルスタ23に下型ホルダ24を固定すると共に、プレス機械のラム25に上型ホルダ26を固定し、それら下型ホルダ24と上型ホルダ26とに、第1絞り用成形型27、第2絞り用成形型28、ネッキング加工用成形型29、予備仕上げ用成形型30、仕上げ用成形型31および孔明け用打抜型32の下型33〜38と上型39〜44を取り付けて構成されている。また、トランスファプレス装置22は、第1絞り用成形型27〜孔明け用打抜型32でプレス加工したワークを一斉に次工程のプレス型に搬送する搬送装置(図示せず)を備えている。
【0025】
第1絞り用成形型27は、板状部材19を円筒状に絞る第1絞り加工を行うもので、図7に示すように、下型33および上型39はパンチおよびダイからなる。第2絞り用成形型28は、図8に示すように、台座部12を成形するための第2絞り加工を行うもので、下型34は傾斜段34aの付いたパンチからなり、上型40は傾斜段40aの付いたダイ穴を有したダイからなる。ネッキング加工用成形型29は、図9に示すように、くびれ部16を成形するためのネッキング加工を行うもので、下型35はワークを被せるホルダからなり、上型41は環状に構成される上下動可能な複数分割形の横パンチ41a、この横パンチ41aを縮径方向に移動させるためのカム機構41bおよび縮径方向に移動した横パンチ41aを元位置に戻すための横復帰用のコイルばね41cから構成されている。
【0026】
予備仕上げ加工用成形型30は、段面部15を成形するための平打ち加工を行うもので、図10に示すように、下型36は平坦段部36aを有したパンチからなり、上型42はダイ穴内に平坦段部42aを有したダイからなる。仕上げ加工用成形型31は、図11に示すように、凹状面14を成形する他、仕上げ加工を行うためのもので、下型37は段付き状パンチからなり、上型43はダイ穴の上部に半円状突部43aを有した成形パンチとダイからなる。孔明け用打抜型32は、スリット13、小孔18およびインサート成形時の位置決め部として機能する切欠45を形成する打ち抜き加工を行うためのもので、下型38は複数のダイ穴(38a、38b、38c)を有したダイからなり、上型44は図示はしないがスリット13を打ち抜くための横パンチ、この横パンチを横方向に移動させるためのカム機構および復帰用のコイルばね、小孔18を打ち抜くためのパンチを備える他、図示はしないが、切欠45を打ち抜くための横パンチ、この横パンチを横方向に移動させるためのカム機構および復帰用のコイルばねを備えている。
【0027】
このようなトランスファプレス装置22によって板状部材19からラックガイド5の本体9を形成するには、まず、図示しない打ち抜き型により、板状部材19から円形のブランクを打ち抜く。打ち抜かれたブランクは、トランスファプレス装置22に送られ、第1絞り用成形型27の下型33上にセットされる。そして、ラム25が下降すると、第1絞り用成形型27の下型33と上型39とにより、ブランクは、図12(a)に示すように、一端が開放され、他端が閉塞された円形の筒状体46に絞り成形される(第1絞り加工工程)。この第1絞り加工により、筒状体46は、例えば外径28.2mmに絞られる。なお、ブランクの焼結層21側を上にして下型33上にセットすることによって、焼結層21が筒状体46の外表面に現れるようになる。
【0028】
第1絞り用成形型27で加工された筒状体46は、搬送装置によって第2絞り用成形型28に送られ、当該第2絞り用成形型28の下型34に被せられる。そして、ラム25が下降すると、筒状体46は、当該第2の絞り用成形型28の下型34と上型40とにより、図12(b)に示すように、筒状体46の両端間の途中から閉塞端(上端)に至る部分が径小に絞られ、これにより、筒状体46が開放端側の径大なスカート部11と閉塞端側の径小な台座部12とに分けられると共に、スカート部11がしごかれる(第2絞り加工工程)。また、この第2絞り用成形型28により、台座部12とスカート部11との境界部分が傾斜面46aに形成される。この第2絞り加工によって、筒状体46のスカート部11は、例えば外径28mm、台座部12は、例えば外径24mmに絞られる。
【0029】
第2絞り用成形型28で台座部12が形成された筒状部46は、搬送装置によってネッキング加工用成形型29に送られ、当該ネッキング加工用成形型29の下型35に被せられる。そして、ラム25が下降すると、まず上型41の上型ホルダ41dが下型35の下型ノックアウト35aに当接して停止するため、その後のラム25の下降によってカム機構41bが機能して横パンチ41aを縮径方向に移動させる。これにより、図12(c)に示すように、スカート部11と台座部12とを繋ぐ途中部分、即ち傾斜面46aが縮径されてくびれ部16が形成される(ネッキング加工工程)。
【0030】
ネッキング加工用成形型29でネッキング加工された筒状体46は、搬送装置によって予備仕上げ加工用成形型30に送られ、当該予備仕上げ加工用成形型30の下型36に被せられる。そして、ラム25が下降すると、筒状体46の傾斜面46aが下型36の平坦段部36aと上型42の平坦段部42aとの間で平打ちされて図12(d)に示すように平坦な段面部15が形成される(予備仕上げ工程)。
【0031】
予備仕上げ加工用成形型30で平打ち加工された筒状体46は、搬送装置によって仕上げ加工用成形型31に送られ、下型37に被せられる。そして、ラム25が下降すると、上型43の半円状突部43aが筒状体46の台座部12の閉塞端面部を強く押圧する。これにより、図12(e)に示すように台座部12の閉塞端面部に凹状面14が成形される。このとき、半円状突部43aの押圧力を受けて台座部12の周側面部のくびれ部16が図13(b)にも示すように座屈して鋭角状に押し縮められ、最も押し縮められる部分、つまり凹状面14の最下底部に連なる部分では、図13(a)にも示すようにくびれ部16が段面部15に接触するように完全に押し縮められるようになる。また、同時にスカート部11がしごかれて更に精密に外径寸法が仕上げられる(仕上げ工程)。
【0032】
仕上げ加工用成形型31で凹状面14が形成された筒状体46は、搬送装置によって孔明け用打抜型32に送られ、下型38に被せられる。そして、ラム25が下降すると、上型38のスリット13の打ち抜き用の横パンチおよび切欠45の打ち抜き用の横パンチが下型38に当接し、その後のラム25の下降によって両横パンチがカム機構によって縮径方向に移動されてスカート部11にスリット13および切欠45を打ち抜くと共に、上型44のパンチが凹状面14に小孔18を打ち抜く(孔明け加工工程)。
【0033】
以上により板状部材19からラックガイド5の本体9が形成される。この本体9は、その後、図示しないプラスチック成形型へと移送され、プラスチック成形型内にセットされる。このとき、切欠45はプラスチック成形型に設けられた突部に嵌合され、これによりプラスチック成形型内での本体9の位置決めが行われる。そして、このプラスチック成形型のキャビティ内に樹脂、例えばポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂などの摺動性樹脂が注入されて本体9の台座部12の内外にモールド樹脂層10が成形される。ラックガイド5は、以上のようにして製造される。
【0034】
このように本実施形態では、本体9の筒状側面部である周側面部に、段面部15およびくびれ部16が形成されているので、当該周側面部の強度が高くなって周側面部の径方向に変形し難くなる。しかも、本体9の周側面部は、第1絞り用成形型27および第2絞り用成形型28による絞り加工、第2絞り用成形型28および仕上げ加工用成形型31によるスカート部11のしごき加工などによって加工硬化が起きて硬度が高くなるので、この加工硬化によっても周側面部の強度が向上する。これらの段面部15、くびれ部16、スカート部11の加工硬化部分は、本発明の高剛性部に相当する。更に、図1,4に示すように、本体9の台座部12の内側をモールド樹脂層10によってモールドする場合、圧縮コイルばね8のような部材と当接させるときに好ましい。
【0035】
このため、本体9の内側に、鋼板から深絞り成形によって形成された補強体を装着して本体9を補強するといった対策を講ぜずとも済む。ここで、本体9の強度が十分であることを確認するために、本発明者は、モールド樹脂層10を設ける前の本体9について、比較例品と共に強度試験を実施した。比較例品は、図14(b)に示すように、高剛性部である段部面15やくびれ部16のない状態のもの、つまり、台座部12のない一端が開放され他端が閉塞された円筒状で、閉塞端面に受け凹面が形成された形態のものである。
【0036】
強度試験は、図14(a)および(b)に示すように、本発明の実施例品(モールド樹脂層10の形成前の本体9)および比較例品の凹状面14に丸棒Rを宛がい、当該丸棒に荷重を加えて開放端の外径の変化を、丸棒Rの中心軸線と直交する方向(図14(a−1)および(b−1)にX−X’で示す。)と丸棒Rの中心軸線方向(図14(a−1)および(b−1)にY−Y’で示す。)について測定した。荷重は次の表1に示すように、徐々に上昇させ、開放端の外径を測定した。この測定結果を表1に示すと共に、図15に外径の変化量をグラフにして示した。図15では、実施例品を実線で示し、比較例品を破線で示すと共に、X−X’方向のものを黒塗りの四角で示し、Y−Y’ 方向のものを黒塗りの丸で示した。
【0037】
【表1】
【0038】
この強度試験から、実施例品の方が、比較例品に比べて、拡径量および縮径量が少なく、強度向上効果に優れていることが理解される。
【0039】
本実施形態では、本体9は、摺動用金属層からなる焼結層21が外表面に現れており、また、台座部12はモールド樹脂層10によって覆われて当該モールド樹脂層10の端面に凹状面14が形成されているので、ラックガイド5の支持穴7の内面に対する摺動特性およびラックバー6に対する摺動特性が向上する。
【0040】
ところで、本体9は、ブランクを絞り加工して筒状に形成するため、本体9には、拡径方向の内部応力が存在する。このような本体9のスカート部11にスリット13を形成すると、当該スカート部11は若干ではあるが、拡げることが可能である。一方、ラックガイド5の外周面を構成する本体9のスカート部11およびモールド樹脂層10の外径寸法は、ラックガイド5が支持穴7内でスムーズに移動できるようにするために、当該支持穴7の内径寸法よりも僅かに小さく設定される。したがって、ラックガイド5と支持穴7との間には僅かなギャップが生ずる。
【0041】
このようなラックガイド5において、スカート部11にスリット13を形成することにより、当該スカート部11が若干拡径すると、上記のラックガイド5と支持穴7との間のギャップがスカート部11においてはなくなる、或はほんの僅かなものとなるので、ラックガイド5は支持穴7内でがたつくことなく移動するようになる。勿論、スカート部11はスリット13の形成によって拡縮方向に弾性を持つようになるので、支持穴7内面にスカート部11が強く当たって円滑な摺動を阻害する恐れもない。
【0042】
スリット13の幅は本体9の直径の1〜10%が、スリット13の長さはスカート部11の長さの20〜80%が、本体9の拡縮程度の制御に好ましい。
さて、インサート成形によって本体9の台座部12のみをモールド樹脂層10で覆う場合、台座部12とスカート部11との境界部分が傾斜していたりすると、モールド樹脂層10がバリ状になってスカート部11に垂れ下がったような状態になり易い。しかしながら、本実施形態では、予備仕上げ工程により台座部12とスカート部11との間は段面部15としてその段面部15とスカート部11との角部の曲率を、極力小さくしたので、モールド樹脂層10がバリ状に垂れ下がることを極力防止できる。
【0043】
そして、この段面部15は、筒状体46に台座部12を形成してスカート部11との境界部分を傾斜面46aに形成し、その後、この傾斜面46aを予備仕上げ加工用成形型30により平打ち加工することによって形成したので、平坦な段面部15の加工が容易となる。
【0044】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或は変更が可能である。
モールド樹脂層10は、本体9の閉塞端の凹状面14を覆うだけのものであっても良い。
段面部15およびくびれ部16は、どちらか一方でも良い。
板状部材19はアルミ合金を被着したバイメタルであっても良い。
銅系軸受合金からなる焼結層21はAl−Sn系、Al−Sn−Si系、Al−Zn系のアルミ系軸受合金層に換えても良い。
【0045】
モールド樹脂層10はなくても良い。この場合、本体9の凹状面14によって直接ラックバー6を支持する構成であっても良い。この場合、凹状面14を樹脂によってコーティングしても良い。
本体9を形成する素材である板状部材19はバイメタルに限られない。例えば、鋼板単体であっても良い。また、板状部材19は金属でなく、プラスチック板を熱成形するものであっても良い。
【0046】
スリット13はT字形に限られず、I字形など他に種々考えられる。
スカート部11の外周面にインデントを形成しても良い。インデントに潤滑剤を貯留することにより、摺動特性を向上できると共に、特に微振動によるフレッティング摩耗を防止することができる。また、インデント形成部が金属からなる場合は、インデントを圧縮成形する際に当該形成部に加工歪を発生させて硬度を向上させることもできる。なお、インデントに固体潤滑剤を配しても良いし、例えばMoS2のような固体潤滑剤をスカート部11等にインデントを設けることなく配する構成であっても良い。
板状部材19からブランクを打ち抜く打ち抜き型もトランスファプレス装置22に組み入れても良い。
第1絞り用成形型27〜孔明け用打抜型32は、それぞれ異なるプレス機械に取り付けるようにしても良い。
ラックピニオン式ステアリング装置1のラックガイド5に限られず、筒状の本体の閉塞端に直接または摺動材を介して間接的に相手材を支持する摺動受け部材に広く適用できる。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1はラックピニオン式ステアリング装置、5はラックガイド(摺動受け部材)、6はラックバー(相手材)、9は本体、10はモールド樹脂、11はスカート部、12は台座部、13はスリット、14は凹状面、15は段面部、16はくびれ部、17は受け凹面、19は板状部材、20は鋼板、21は焼結層(摺動用金属層)、22はトランスファプレス装置、27は第1絞り用成形型、28は第2絞り用成形型、29はネッキング加工用成形型、30は予備仕上げ用成形型、31は仕上げ用成形型、32は孔明け用打抜型、46は筒状体を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の相手材を摺動自在に支持する摺動受け部材およびその製造方法並びに製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などのラックピニオン式ステアリング装置は、ケーシング内に、ステアリング操作によって回転されるように軸受により支持されたピニオンと、このピニオンの回転によって直線的に往復移動されるラックバーと、このラックバーを摺動自在に支持するラックガイド(摺動受け部材)とを設けてなる。ラックガイドは、ケーシングに設けられた支持穴内に、ラックバーの移動方向と直交する方向に移動自在に支持され、コイルばねによってラックバーに弾性的に押圧されている。
【0003】
ラックガイドは、一般に、ダイキャスト品や厚みを持たせた焼結体により形成されているが、そのような焼結体等からなるラックガイドは重量が増し、比較的高価であることから、特許文献1,2のように、板状部材を絞り成形することによって製造することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−323850号公報
【特許文献2】特開平7−323851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2では、板状部材として1.2mm厚の鋼板を用い、この鋼板を深絞り成形することによって円筒状のラックガイド本体を形成し、このラックガイド本体の端面に形成された凹状面部にラックバーを受ける摺動片を取り付けると共に、ラックガイド本体の内側に、1.0mm厚の鋼板から深絞り成形によって形成された補強体を装着してラックガイド本体を補強するようにしている。
【0006】
このようにラックガイドを板状部材から絞り成形によって形成するものでは、板状部材の板厚が厚いと絞り成形が難しくなるために、厚さの比較的薄い板状部材を使用する傾向がある。薄い板状部材を用いると、ラックガイド本体の筒状側面部(スカート部)がラックバーの荷重を受けた場合に径方向に拡がり易く、その拡がりのために、スカート部がハウジングの支持穴の内面に強く当たって異音を発したり、スカート部の摺動特性が悪くなったりする。引用文献1,2では、ラックガイド本体を補強体によって補強しているので、上述のような不具合の発生は防止できると考えられる。しかしながら、ラックガイド本体を別体の補強体によって補強する構成では、製造コストが高くなる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、板状部材により形成される摺動受け部材にあって、別体の補強体を用いずとも高強度とすることができる摺動受け部材を提供し、併せて、そのような摺動受け部材を製造する方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の摺動受け部材では、本体の筒状側面部に高剛性部が設けられているので、本体が板状部材によって形成されていても、本体の筒状側面部が相手材の荷重を受けて径方向に拡がるように変形することを極力防止することができる。
【0009】
請求項2の摺動受け部材では、高剛性部として、本体の筒状側面部の両端間の途中から前記閉塞端に至る部分を径小にする形状の段面部および/または筒状側面部の両端間の途中にくびれ形状に形成したくびれ部を設けているので、本体の強度を確実に高くすることができる。
請求項3の摺動受け部材では、板状部材が金属であることから、段面部やくびれ部を形成する際に本体の筒状側面部を加工硬化させることができるので、筒状側面部の剛性を容易に上げることができる。また、筒状側面部に急加熱急冷処理を施すことにより、そこの硬度を上げて筒状側面部の剛性を容易に上げることができる。
【0010】
請求項4の摺動受け部材では、金属の板状部材が、鋼板に摺動用金属を被着した複層材からなり、摺動用金属の層が本体の外表面に現れているので、摺動受け部材を支持穴内に摺動可能に配置する場合、支持穴の内面との摺動特性を向上させることができる。
請求項5の摺動受け部材では、摺動用金属の層が空孔率5%以下の焼結金属からなっているので、摺動用金属の層の強度が高い。また、板状部材を絞り成形する場合などにおいて、摺動用金属の層が剥離したり、摺動用金属の層を構成する焼結金属粒が脱落したりする恐れがない。
【0011】
請求項6の摺動受け部材では、凹状面が樹脂により覆われているので、相手材との摺動特性を向上させることができる。
請求項7の摺動受け部材では、スリットを形成することによって筒状側面部を径方向に拡げ易くなるので、支持穴の内面との隙間を小さくすることができ、且つ、支持穴の内面との接触圧が過度に大きくならないようにすることができる。スリットの位置は、相手材の軸線方向やそれに垂直な方向に設けることが制御面において好ましい。
請求項8の摺動受け部材では、台座部が凹状面と共にモールド樹脂によって覆われているので、相手材および支持穴の内面との摺動特性を向上させることができる。また、モールド樹脂による被覆からスカート部を除外する場合、モールド用の樹脂の使用コストを低減することができる。
【0012】
請求項9の摺動受け部材では、スカート部と台座部との間にくびれ部が設けられているので、筒状側面部の剛性をより一層高めることができる。また、モールド樹脂の固定を強固にすることができる。
請求項10の摺動受け部材では、スカート部に形成されたインデントに潤滑油などの潤滑剤を貯留できるので、支持穴の内面との摺動特性を向上させることができると共に、特に微小振動によるフレッティング摩耗を防止することができる。
【0013】
請求項11の摺動受け部材の製造方法および請求項13の製造装置によれば、高剛性部として段面部とくびれ部を有した摺動部材を容易に製造でき、しかも、段面部を平坦に成形でき、且つ、凹状面の成形と同時にくびれ部を据え込んでより高剛性にすることができる。
請求項12の摺動受け部材の摺動方法および請求項14の製造装置によれば、台座部を凹状面と共に覆うモールド樹脂の層をインサート成形によって容易に成形でき、しかも、この際、段面部が平坦に仕上げられていることにより、モールド樹脂が段面部からスカート部にかけてバリ状に漏れ出ることを極力防止でき、バリ取りなどの後処理を行わずとも済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、(a)は図2のA−A線に沿うラックガイドの断面図、(b)は図2のB−B線に沿うラックガイドの断面図
【図2】ラックガイドの斜視図
【図3】ラックガイドの本体の斜視図
【図4】ラックピニオン式ステアリング装置の断面図
【図5】ラックガイドの本体を形成する板状部材の部分的な拡大断面図
【図6】トランスファプレス装置の全体を概略的に示す断面図
【図7】第1絞り用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図8】第2絞り用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図9】ネッキング加工用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図10】予備仕上げ用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図11】仕上げ用成形型を示し、(a)は加工時の状態で示す断面図、(b)は加工後の状態で示す断面図
【図12】トランスファプレス装置の各工程における加工内容を示す断面図
【図13】仕上げ用成形型による仕上げ工程を示すもので、(a)および(b)は筒状体および仕上げ用成形型を90度異なる位置で切断して示す部分的な断面図
【図14】ラックガイドの本体の強度試験の状態を示すもので、(a)は実施例品についての側面図、(b)は比較例品についての側面図、(a−1)は実施例品の計測方向を示す平面図、(b−1)は比較例品の計測方向を示す平面図
【図15】ラックガイドの本体の強度試験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
ラックピニオン式ステアリング装置1は、図4に示すように、ケーシング2内に、ボールベアリング3によって回転自在に支持されたピニオン4と、ラックガイド(摺動受け部材)5によって直線移動自在に支持されたラックバー(相手材)6を収納してなる。ピニオン4は、図示しないステアリングホイールに連結され、当該ステアリングホイールの回転操作によって回転される。一方、ラックバー6は、ピニオン4に噛み合うラック歯6aを有し、ピニオン4の回転によって直線移動される。
【0016】
ラックガイド5は、ケーシング2内に形成された支持穴7内に、ラックバー6の移動方向と直交する方向に移動可能に支持されている。このラックガイド5と支持穴7の底部を構成する蓋板2aとの間には圧縮コイルばね8が設けられており、この圧縮コイルばね8はラックガイド5を介してラックバー6をピニオン4側に向けて付勢し、ラックバー6のラック歯6aをピニオン4に弾性的に押圧している。
【0017】
前記ラックガイド5は、本発明に係る摺動受け部材に相当するもので、図1〜図3に示すように、一端が閉塞された筒状体を本体9とし、この本体9の閉塞端側をモールド樹脂の層10(以下、モールド樹脂層10ともいう)により覆ってなる。即ち、本体9は金属の板状部材から後述のようにして一端閉塞型の円筒状に形成され、筒状側面部の両端間の途中から閉塞端に至る部分は、当該両端間の途中から開放端に至る部分よりも径小となっている。
【0018】
本体9の筒状側面部のうち、開放端側の径大な部分はスカート部11とされ、閉塞端側の径小な部分は台座部12とされている。そして、スカート部11の開放端側の部分には、180度隔てて例えばT型のスリット13が形成されている。このスリット13は、スカート部11の開放端において外方に開放されている。また、台座部12の先端面たる閉塞端面は、ほぼ半円弧状に窪む凹状面14に形成されている。
【0019】
スカート部11と台座部12との境界部分は、平坦な環状の段面部15に形成されている。この段部面15の内側の径寸法は、台座部12の径寸法よりも小さく定められており、これにより、台座部12の段面部15側の部分には、段面部15の内径側部分に連なるくびれ部16が形成されている。このくびれ部16は、凹状面14の最下底部に連なる部分では、図1(b)に示すように潰されて段面部15に接した形態となっており、凹状面14の最下底部に連なる部分から離れるに従って次第に起き上がる斜状の形態(図1(a)参照)となっている。くびれ部16において、最も斜状に起き上がった位置16aから段面部15上面位置までの距離は、板状部材の厚さの2〜5倍が、強度面や製造面で好ましい。また、円筒状の本体9の段面部15上面位置を境としてスカート部11軸線方向長さを台座部12軸線方向長さの0.5〜1.5倍とすると、強度面や製造面で好ましい。
【0020】
モールド樹脂層10は、段面部15から台座部12の凹状面14に至る全体を覆っており、台座部12の外周面を覆う部分の外径寸法は、スカート部11の外径寸法と同一とされていることから、モールド樹脂層10の外周面とスカート部11の外周面とは面一となっている。モールド樹脂層10のうち、台座部12の凹状面14を覆う部分は、円弧状の受け凹面17に形成され、この受け凹面17によってラックバー6の円弧状外面を受けるようになっている。なお、受け凹面17には、グリースなどの潤滑剤を貯留するための溝17aが形成されている。モールド樹脂は、台座部12の内側にも充填されている。この台座部12の内外に渡るモールド樹脂層10は、凹状面14の中央部に形成された小孔18を通じて一体化されている。
【0021】
以上のようなラックガイド5の本体9を形成する金属の板状部材19は、図5に示すように、例えば0.9mm厚の鋼板20の一方の面に摺動用金属の層(以下、摺動用金属層ともいう)としてリン青銅系や青銅系の銅系軸受合金からなる焼結金属を被着したバイメタルによって構成されている。この焼結金属の層21(以下、焼結層21ともいう)は、空孔率が5%以下の緻密な構造となっている。なお、焼結層21を例えば空孔率20〜40%程度の多孔質金属を主構成とした形態にした場合は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂などの摺動性樹脂を含浸させ、且つ、その焼結層21の表面をその摺動性樹脂の層で例えば10〜30μmの厚さで覆うようにしても良い。
【0022】
焼結層21を空孔率5%以下の緻密構造とするためには、焼結後に行う圧延の際、圧下率を高くしなければならないが、この高圧下率での圧延によって銅系軸受合金の焼結金属粒が高密度になって焼結層21の機械的強度が向上すると共に鋼板20への接着強度も向上する。これにより、後述する絞り加工などのプレス加工時に焼結層21が鋼板20から剥がれたり、焼結層21を構成する焼結金属粒が脱落したりすることが防止される。そして、板状部材19が本体9として形成された状態では、焼結層21が本体9の外表面に現れるようにしている。
【0023】
次に、ラックガイド5の製造について説明する。ラックガイド5を製造するには、上記板状部材19を所定形状、例えば円形に打ち抜き、この打ち抜いた円形の板状部材、即ちブランク(図示せず)に対し、図6に示すトランスファプレス装置(本体製造装置)22により複数工程のプレス加工を施してラックガイド5の本体9を形成し、その後、プラスチック成形型を用いたインサート成形によって本体9にモールド樹脂層10を型成形する。
【0024】
トランスファプレス装置22は、プレス機械のボルスタ23に下型ホルダ24を固定すると共に、プレス機械のラム25に上型ホルダ26を固定し、それら下型ホルダ24と上型ホルダ26とに、第1絞り用成形型27、第2絞り用成形型28、ネッキング加工用成形型29、予備仕上げ用成形型30、仕上げ用成形型31および孔明け用打抜型32の下型33〜38と上型39〜44を取り付けて構成されている。また、トランスファプレス装置22は、第1絞り用成形型27〜孔明け用打抜型32でプレス加工したワークを一斉に次工程のプレス型に搬送する搬送装置(図示せず)を備えている。
【0025】
第1絞り用成形型27は、板状部材19を円筒状に絞る第1絞り加工を行うもので、図7に示すように、下型33および上型39はパンチおよびダイからなる。第2絞り用成形型28は、図8に示すように、台座部12を成形するための第2絞り加工を行うもので、下型34は傾斜段34aの付いたパンチからなり、上型40は傾斜段40aの付いたダイ穴を有したダイからなる。ネッキング加工用成形型29は、図9に示すように、くびれ部16を成形するためのネッキング加工を行うもので、下型35はワークを被せるホルダからなり、上型41は環状に構成される上下動可能な複数分割形の横パンチ41a、この横パンチ41aを縮径方向に移動させるためのカム機構41bおよび縮径方向に移動した横パンチ41aを元位置に戻すための横復帰用のコイルばね41cから構成されている。
【0026】
予備仕上げ加工用成形型30は、段面部15を成形するための平打ち加工を行うもので、図10に示すように、下型36は平坦段部36aを有したパンチからなり、上型42はダイ穴内に平坦段部42aを有したダイからなる。仕上げ加工用成形型31は、図11に示すように、凹状面14を成形する他、仕上げ加工を行うためのもので、下型37は段付き状パンチからなり、上型43はダイ穴の上部に半円状突部43aを有した成形パンチとダイからなる。孔明け用打抜型32は、スリット13、小孔18およびインサート成形時の位置決め部として機能する切欠45を形成する打ち抜き加工を行うためのもので、下型38は複数のダイ穴(38a、38b、38c)を有したダイからなり、上型44は図示はしないがスリット13を打ち抜くための横パンチ、この横パンチを横方向に移動させるためのカム機構および復帰用のコイルばね、小孔18を打ち抜くためのパンチを備える他、図示はしないが、切欠45を打ち抜くための横パンチ、この横パンチを横方向に移動させるためのカム機構および復帰用のコイルばねを備えている。
【0027】
このようなトランスファプレス装置22によって板状部材19からラックガイド5の本体9を形成するには、まず、図示しない打ち抜き型により、板状部材19から円形のブランクを打ち抜く。打ち抜かれたブランクは、トランスファプレス装置22に送られ、第1絞り用成形型27の下型33上にセットされる。そして、ラム25が下降すると、第1絞り用成形型27の下型33と上型39とにより、ブランクは、図12(a)に示すように、一端が開放され、他端が閉塞された円形の筒状体46に絞り成形される(第1絞り加工工程)。この第1絞り加工により、筒状体46は、例えば外径28.2mmに絞られる。なお、ブランクの焼結層21側を上にして下型33上にセットすることによって、焼結層21が筒状体46の外表面に現れるようになる。
【0028】
第1絞り用成形型27で加工された筒状体46は、搬送装置によって第2絞り用成形型28に送られ、当該第2絞り用成形型28の下型34に被せられる。そして、ラム25が下降すると、筒状体46は、当該第2の絞り用成形型28の下型34と上型40とにより、図12(b)に示すように、筒状体46の両端間の途中から閉塞端(上端)に至る部分が径小に絞られ、これにより、筒状体46が開放端側の径大なスカート部11と閉塞端側の径小な台座部12とに分けられると共に、スカート部11がしごかれる(第2絞り加工工程)。また、この第2絞り用成形型28により、台座部12とスカート部11との境界部分が傾斜面46aに形成される。この第2絞り加工によって、筒状体46のスカート部11は、例えば外径28mm、台座部12は、例えば外径24mmに絞られる。
【0029】
第2絞り用成形型28で台座部12が形成された筒状部46は、搬送装置によってネッキング加工用成形型29に送られ、当該ネッキング加工用成形型29の下型35に被せられる。そして、ラム25が下降すると、まず上型41の上型ホルダ41dが下型35の下型ノックアウト35aに当接して停止するため、その後のラム25の下降によってカム機構41bが機能して横パンチ41aを縮径方向に移動させる。これにより、図12(c)に示すように、スカート部11と台座部12とを繋ぐ途中部分、即ち傾斜面46aが縮径されてくびれ部16が形成される(ネッキング加工工程)。
【0030】
ネッキング加工用成形型29でネッキング加工された筒状体46は、搬送装置によって予備仕上げ加工用成形型30に送られ、当該予備仕上げ加工用成形型30の下型36に被せられる。そして、ラム25が下降すると、筒状体46の傾斜面46aが下型36の平坦段部36aと上型42の平坦段部42aとの間で平打ちされて図12(d)に示すように平坦な段面部15が形成される(予備仕上げ工程)。
【0031】
予備仕上げ加工用成形型30で平打ち加工された筒状体46は、搬送装置によって仕上げ加工用成形型31に送られ、下型37に被せられる。そして、ラム25が下降すると、上型43の半円状突部43aが筒状体46の台座部12の閉塞端面部を強く押圧する。これにより、図12(e)に示すように台座部12の閉塞端面部に凹状面14が成形される。このとき、半円状突部43aの押圧力を受けて台座部12の周側面部のくびれ部16が図13(b)にも示すように座屈して鋭角状に押し縮められ、最も押し縮められる部分、つまり凹状面14の最下底部に連なる部分では、図13(a)にも示すようにくびれ部16が段面部15に接触するように完全に押し縮められるようになる。また、同時にスカート部11がしごかれて更に精密に外径寸法が仕上げられる(仕上げ工程)。
【0032】
仕上げ加工用成形型31で凹状面14が形成された筒状体46は、搬送装置によって孔明け用打抜型32に送られ、下型38に被せられる。そして、ラム25が下降すると、上型38のスリット13の打ち抜き用の横パンチおよび切欠45の打ち抜き用の横パンチが下型38に当接し、その後のラム25の下降によって両横パンチがカム機構によって縮径方向に移動されてスカート部11にスリット13および切欠45を打ち抜くと共に、上型44のパンチが凹状面14に小孔18を打ち抜く(孔明け加工工程)。
【0033】
以上により板状部材19からラックガイド5の本体9が形成される。この本体9は、その後、図示しないプラスチック成形型へと移送され、プラスチック成形型内にセットされる。このとき、切欠45はプラスチック成形型に設けられた突部に嵌合され、これによりプラスチック成形型内での本体9の位置決めが行われる。そして、このプラスチック成形型のキャビティ内に樹脂、例えばポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂などの摺動性樹脂が注入されて本体9の台座部12の内外にモールド樹脂層10が成形される。ラックガイド5は、以上のようにして製造される。
【0034】
このように本実施形態では、本体9の筒状側面部である周側面部に、段面部15およびくびれ部16が形成されているので、当該周側面部の強度が高くなって周側面部の径方向に変形し難くなる。しかも、本体9の周側面部は、第1絞り用成形型27および第2絞り用成形型28による絞り加工、第2絞り用成形型28および仕上げ加工用成形型31によるスカート部11のしごき加工などによって加工硬化が起きて硬度が高くなるので、この加工硬化によっても周側面部の強度が向上する。これらの段面部15、くびれ部16、スカート部11の加工硬化部分は、本発明の高剛性部に相当する。更に、図1,4に示すように、本体9の台座部12の内側をモールド樹脂層10によってモールドする場合、圧縮コイルばね8のような部材と当接させるときに好ましい。
【0035】
このため、本体9の内側に、鋼板から深絞り成形によって形成された補強体を装着して本体9を補強するといった対策を講ぜずとも済む。ここで、本体9の強度が十分であることを確認するために、本発明者は、モールド樹脂層10を設ける前の本体9について、比較例品と共に強度試験を実施した。比較例品は、図14(b)に示すように、高剛性部である段部面15やくびれ部16のない状態のもの、つまり、台座部12のない一端が開放され他端が閉塞された円筒状で、閉塞端面に受け凹面が形成された形態のものである。
【0036】
強度試験は、図14(a)および(b)に示すように、本発明の実施例品(モールド樹脂層10の形成前の本体9)および比較例品の凹状面14に丸棒Rを宛がい、当該丸棒に荷重を加えて開放端の外径の変化を、丸棒Rの中心軸線と直交する方向(図14(a−1)および(b−1)にX−X’で示す。)と丸棒Rの中心軸線方向(図14(a−1)および(b−1)にY−Y’で示す。)について測定した。荷重は次の表1に示すように、徐々に上昇させ、開放端の外径を測定した。この測定結果を表1に示すと共に、図15に外径の変化量をグラフにして示した。図15では、実施例品を実線で示し、比較例品を破線で示すと共に、X−X’方向のものを黒塗りの四角で示し、Y−Y’ 方向のものを黒塗りの丸で示した。
【0037】
【表1】
【0038】
この強度試験から、実施例品の方が、比較例品に比べて、拡径量および縮径量が少なく、強度向上効果に優れていることが理解される。
【0039】
本実施形態では、本体9は、摺動用金属層からなる焼結層21が外表面に現れており、また、台座部12はモールド樹脂層10によって覆われて当該モールド樹脂層10の端面に凹状面14が形成されているので、ラックガイド5の支持穴7の内面に対する摺動特性およびラックバー6に対する摺動特性が向上する。
【0040】
ところで、本体9は、ブランクを絞り加工して筒状に形成するため、本体9には、拡径方向の内部応力が存在する。このような本体9のスカート部11にスリット13を形成すると、当該スカート部11は若干ではあるが、拡げることが可能である。一方、ラックガイド5の外周面を構成する本体9のスカート部11およびモールド樹脂層10の外径寸法は、ラックガイド5が支持穴7内でスムーズに移動できるようにするために、当該支持穴7の内径寸法よりも僅かに小さく設定される。したがって、ラックガイド5と支持穴7との間には僅かなギャップが生ずる。
【0041】
このようなラックガイド5において、スカート部11にスリット13を形成することにより、当該スカート部11が若干拡径すると、上記のラックガイド5と支持穴7との間のギャップがスカート部11においてはなくなる、或はほんの僅かなものとなるので、ラックガイド5は支持穴7内でがたつくことなく移動するようになる。勿論、スカート部11はスリット13の形成によって拡縮方向に弾性を持つようになるので、支持穴7内面にスカート部11が強く当たって円滑な摺動を阻害する恐れもない。
【0042】
スリット13の幅は本体9の直径の1〜10%が、スリット13の長さはスカート部11の長さの20〜80%が、本体9の拡縮程度の制御に好ましい。
さて、インサート成形によって本体9の台座部12のみをモールド樹脂層10で覆う場合、台座部12とスカート部11との境界部分が傾斜していたりすると、モールド樹脂層10がバリ状になってスカート部11に垂れ下がったような状態になり易い。しかしながら、本実施形態では、予備仕上げ工程により台座部12とスカート部11との間は段面部15としてその段面部15とスカート部11との角部の曲率を、極力小さくしたので、モールド樹脂層10がバリ状に垂れ下がることを極力防止できる。
【0043】
そして、この段面部15は、筒状体46に台座部12を形成してスカート部11との境界部分を傾斜面46aに形成し、その後、この傾斜面46aを予備仕上げ加工用成形型30により平打ち加工することによって形成したので、平坦な段面部15の加工が容易となる。
【0044】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或は変更が可能である。
モールド樹脂層10は、本体9の閉塞端の凹状面14を覆うだけのものであっても良い。
段面部15およびくびれ部16は、どちらか一方でも良い。
板状部材19はアルミ合金を被着したバイメタルであっても良い。
銅系軸受合金からなる焼結層21はAl−Sn系、Al−Sn−Si系、Al−Zn系のアルミ系軸受合金層に換えても良い。
【0045】
モールド樹脂層10はなくても良い。この場合、本体9の凹状面14によって直接ラックバー6を支持する構成であっても良い。この場合、凹状面14を樹脂によってコーティングしても良い。
本体9を形成する素材である板状部材19はバイメタルに限られない。例えば、鋼板単体であっても良い。また、板状部材19は金属でなく、プラスチック板を熱成形するものであっても良い。
【0046】
スリット13はT字形に限られず、I字形など他に種々考えられる。
スカート部11の外周面にインデントを形成しても良い。インデントに潤滑剤を貯留することにより、摺動特性を向上できると共に、特に微振動によるフレッティング摩耗を防止することができる。また、インデント形成部が金属からなる場合は、インデントを圧縮成形する際に当該形成部に加工歪を発生させて硬度を向上させることもできる。なお、インデントに固体潤滑剤を配しても良いし、例えばMoS2のような固体潤滑剤をスカート部11等にインデントを設けることなく配する構成であっても良い。
板状部材19からブランクを打ち抜く打ち抜き型もトランスファプレス装置22に組み入れても良い。
第1絞り用成形型27〜孔明け用打抜型32は、それぞれ異なるプレス機械に取り付けるようにしても良い。
ラックピニオン式ステアリング装置1のラックガイド5に限られず、筒状の本体の閉塞端に直接または摺動材を介して間接的に相手材を支持する摺動受け部材に広く適用できる。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1はラックピニオン式ステアリング装置、5はラックガイド(摺動受け部材)、6はラックバー(相手材)、9は本体、10はモールド樹脂、11はスカート部、12は台座部、13はスリット、14は凹状面、15は段面部、16はくびれ部、17は受け凹面、19は板状部材、20は鋼板、21は焼結層(摺動用金属層)、22はトランスファプレス装置、27は第1絞り用成形型、28は第2絞り用成形型、29はネッキング加工用成形型、30は予備仕上げ用成形型、31は仕上げ用成形型、32は孔明け用打抜型、46は筒状体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開放され他端が閉鎖された筒状体を本体とし、前記本体の閉塞端に棒状の相手材を直接または摺動材を介して間接的に摺動自在に支持する凹状面を形成した摺動受け部材において、
前記本体を板状部材により形成し、前記本体の筒状側面部に高剛性部を設けてなる摺動受け部材。
【請求項2】
請求項1記載の摺動受け部材において、
前記高剛性部は、前記筒状側面部の両端間の途中から前記閉塞端に至る部分を径小にすることによって生じた段面部および/または前記筒状側面部の両端間の途中に形成されたくびれ部であることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の摺動受け部材において、
前記板状部材は金属であることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項4】
請求項3記載の摺動受け部材において、
前記金属の板状部材は、鋼板に摺動用金属を被着した複層材からなり、前記摺動用金属の層が前記本体の外表面に現れていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項5】
請求項4記載の摺動受け部材において、
前記摺動用金属の層は、空孔率が5%以下の焼結金属からなることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の摺動受け部材において、
少なくとも前記凹状面が樹脂により覆われていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の摺動受け部材において、
前記筒状側面部に、前記開放端において開放されたスリットが形成されていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の摺動受け部材において、
前記高剛性部は、前記筒状側面部の両端間の途中を境にして、前記開放端から前記両端間の途中までを径大なスカート部および前記両端間の途中から前記閉塞端までを径小な台座部とすることにより、前記スカート部と前記台座部との間に形成された段面部からなり、
前記凹状面を含めて前記台座部の全体を外側からモールド樹脂により覆ってなる摺動受け部材。
【請求項9】
請求項8記載の摺動受け部材において、
前記スカート部と前記台座部との間には、前記台座部よりも径小なくびれ部が設けれていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項10】
請求項8または9記載の摺動受け部材において、
前記スカート部の外周面にはインデントが形成されていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項11】
金属からなる板状部材を絞って一端が開放され他端が閉塞された筒状体を形成する第1絞り工程と、
前記第1絞り工程後に、前記筒状体を絞って両端間の途中から前記閉塞端に至るまでを径小に形成して、前記筒状体を、前記開放端側の径大なスカート部と前記閉塞端側の径小な台座部とに分ける第2絞り工程と、
前記筒状体の前記スカート部と前記台座部を繋ぐ途中部を絞ってくびれ部を形成するネッキング加工工程と、
前記くびれ部と前記スカート部との間に平坦な段面部を形成する予備仕上げ工程と、
前記台座部に圧縮力を加えて当該台座部の閉塞端の端面に凹状面を成形し、且つ、前記くびれ部を据え込むと共に、前記スカート部をしごいて当該外径寸法を仕上げる仕上げ工程と、からなる摺動受け部材の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の摺動受け部材の製造方法において、
更に、前記摺動受け面に孔を加工する孔明け加工工程と、
前記筒状体をプラスチック成形型にセットして前記台座部の内外に樹脂を注入して当該台座部を内外から覆うモールド樹脂の層を成形するインサート成形工程と、を付加してなる摺動受け部材の製造方法。
【請求項13】
金属板材を絞って一端が開放され他端が閉塞された筒状体を形成する第1絞り用成形型と、
前記筒状体を絞って両端間の途中から前記閉塞端に至るまでを径小に形成して、前記筒状体を、前記開放端側の径大なスカート部と前記閉塞端側の径小な台座部とに分ける第2絞り用成形型と、
前記筒状体の前記スカート部と前記台座部を繋ぐ途中部を絞ってくびれ部を形成するネッキング加工用成形型と、
前記くびれ部と前記スカート部との間に平坦な段面部を形成する予備仕上げ用成形型と、
前記台座部に圧縮力を加えて当該台座部の閉塞端の端面に凹状面を成形し、且つ、前記くびれ部を据え込むと共に、前記スカート部をしごいて外径寸法を仕上げる仕上げ用成形型と、を具備してなる摺動受け部材の製造装置。
【請求項14】
請求項13に記載の摺動受け部材の製造装置において、
更に、前記摺動受け面に孔を加工する孔明け用打抜型と、
前記筒状体をプラスチック成形型にセットして前記台座部の内外に樹脂を注入して当該台座部を内外から覆うモールド樹脂の層をインサート成形するプラスチック成形型と、を付加してなる摺動受け部材の製造装置。
【請求項1】
一端が開放され他端が閉鎖された筒状体を本体とし、前記本体の閉塞端に棒状の相手材を直接または摺動材を介して間接的に摺動自在に支持する凹状面を形成した摺動受け部材において、
前記本体を板状部材により形成し、前記本体の筒状側面部に高剛性部を設けてなる摺動受け部材。
【請求項2】
請求項1記載の摺動受け部材において、
前記高剛性部は、前記筒状側面部の両端間の途中から前記閉塞端に至る部分を径小にすることによって生じた段面部および/または前記筒状側面部の両端間の途中に形成されたくびれ部であることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の摺動受け部材において、
前記板状部材は金属であることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項4】
請求項3記載の摺動受け部材において、
前記金属の板状部材は、鋼板に摺動用金属を被着した複層材からなり、前記摺動用金属の層が前記本体の外表面に現れていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項5】
請求項4記載の摺動受け部材において、
前記摺動用金属の層は、空孔率が5%以下の焼結金属からなることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の摺動受け部材において、
少なくとも前記凹状面が樹脂により覆われていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の摺動受け部材において、
前記筒状側面部に、前記開放端において開放されたスリットが形成されていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の摺動受け部材において、
前記高剛性部は、前記筒状側面部の両端間の途中を境にして、前記開放端から前記両端間の途中までを径大なスカート部および前記両端間の途中から前記閉塞端までを径小な台座部とすることにより、前記スカート部と前記台座部との間に形成された段面部からなり、
前記凹状面を含めて前記台座部の全体を外側からモールド樹脂により覆ってなる摺動受け部材。
【請求項9】
請求項8記載の摺動受け部材において、
前記スカート部と前記台座部との間には、前記台座部よりも径小なくびれ部が設けれていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項10】
請求項8または9記載の摺動受け部材において、
前記スカート部の外周面にはインデントが形成されていることを特徴とする摺動受け部材。
【請求項11】
金属からなる板状部材を絞って一端が開放され他端が閉塞された筒状体を形成する第1絞り工程と、
前記第1絞り工程後に、前記筒状体を絞って両端間の途中から前記閉塞端に至るまでを径小に形成して、前記筒状体を、前記開放端側の径大なスカート部と前記閉塞端側の径小な台座部とに分ける第2絞り工程と、
前記筒状体の前記スカート部と前記台座部を繋ぐ途中部を絞ってくびれ部を形成するネッキング加工工程と、
前記くびれ部と前記スカート部との間に平坦な段面部を形成する予備仕上げ工程と、
前記台座部に圧縮力を加えて当該台座部の閉塞端の端面に凹状面を成形し、且つ、前記くびれ部を据え込むと共に、前記スカート部をしごいて当該外径寸法を仕上げる仕上げ工程と、からなる摺動受け部材の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の摺動受け部材の製造方法において、
更に、前記摺動受け面に孔を加工する孔明け加工工程と、
前記筒状体をプラスチック成形型にセットして前記台座部の内外に樹脂を注入して当該台座部を内外から覆うモールド樹脂の層を成形するインサート成形工程と、を付加してなる摺動受け部材の製造方法。
【請求項13】
金属板材を絞って一端が開放され他端が閉塞された筒状体を形成する第1絞り用成形型と、
前記筒状体を絞って両端間の途中から前記閉塞端に至るまでを径小に形成して、前記筒状体を、前記開放端側の径大なスカート部と前記閉塞端側の径小な台座部とに分ける第2絞り用成形型と、
前記筒状体の前記スカート部と前記台座部を繋ぐ途中部を絞ってくびれ部を形成するネッキング加工用成形型と、
前記くびれ部と前記スカート部との間に平坦な段面部を形成する予備仕上げ用成形型と、
前記台座部に圧縮力を加えて当該台座部の閉塞端の端面に凹状面を成形し、且つ、前記くびれ部を据え込むと共に、前記スカート部をしごいて外径寸法を仕上げる仕上げ用成形型と、を具備してなる摺動受け部材の製造装置。
【請求項14】
請求項13に記載の摺動受け部材の製造装置において、
更に、前記摺動受け面に孔を加工する孔明け用打抜型と、
前記筒状体をプラスチック成形型にセットして前記台座部の内外に樹脂を注入して当該台座部を内外から覆うモールド樹脂の層をインサート成形するプラスチック成形型と、を付加してなる摺動受け部材の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−247783(P2010−247783A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101909(P2009−101909)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
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