説明

摺動子保持構造

【課題】従来技術では、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料とした摺動子の長手方向に力が働いた場合、摺動子に亀裂が発生する虞があると言う課題があった。また、板ばねで接触子を押し付けた構造なので、取付け精度が悪くしっかりとした固定ができないと言う課題もあった。
【解決手段】カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成した摺動子と、摺動子を所定位置に固定する基台と、摺動子を基台に保持固定する保持部材とを備えた摺動子保持構造において、摺動子は、一方側に摺接部と他方側に被保持部とを有し、摺動子の一部分に基準部位を備え、基台は、所定のX軸方向と該X軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面と基台の所定位置に設けた当接部とを有し、保持部材は、押さえ面を有し、保持面と押さえ面との間に被保持部を挟み込み、基準部位を当接部に当接して、摺動子を位置決めした状態で、保持部材を基台に固定したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基台に摺動子を取り付けた摺動子保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接触式のリニアセンサあるいは接触式のロータリーセンサには、金属製の摺動子が使用されていたが、近年、長寿命化や摺動ノイズの低減化等の観点から、カーボン繊維で作られたカーボン摺動子が使用され始めてきた。
【0003】
特許文献1では、図12に示すように、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料とした接触子909を備えた可変抵抗器900が提案されている。図12に示す可変抵抗器900は、接点部907s及び被保持部907dを備えた接触子909と、接触子909を直接または間接的に保持するホルダ917と、接触子909の接点部907sを抵抗体905に押し付けるための力付与機構924とから構成されている。そして、ホルダ917には、傾斜貫通孔923が形成されており、この傾斜貫通孔923に、接触子909の接点部907sを露出させるようにして、接触子909が収容されている。また、力付与機構924は、板ばね925と板ばね925をホルダ本体918の上に固定する固定部材927とを備え、板ばね925の先端の自由端で接触子909の被保持部907dの端部を抵抗体905に向かって押す力を発生するように構成されている。
【0004】
このように構成された接触子909の保持構造では、接触子909が摺動中に撓むことがない剛性を有しているため、接触子909が移動しているときに、板ばね925で接触子909を抵抗体905に向かって押しているので、接点部907sが跳ねる(スキップする)ことがないとしている。また、ホルダ917に形成された傾斜貫通孔923に接触子909を収容しているので、接触子909の接点部907sのホルダ917に対する相対的な位置も変わることがないので、抵抗体905と接点部907sとの位置決めができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/142160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このカーボン繊維と合成樹脂とを主原料とした接触子(摺動子)は、繊維の長手方向に対する屈曲の力に弱く、そのような力が働いた場合、摺動子に亀裂(クラック)が生じる虞がある。しかしながら、従来例1のような構成では、接触子909の一方を付勢し、他方にある接点部907sを抵抗体905に押し付けているので、接触子909の繊維の長手方向に対する屈曲の力がかかり、接触子909にクラックが発生する虞が高くなると言う課題があった。また、ホルダ917に形成された傾斜貫通孔923に接触子909を挿入し、板ばね925で接触子909の被保持部907dの端部を押し付けただけの構造なので、取付け精度が悪く、しっかりとした固定ができないと言う課題もあった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、摺動子にクラック等の破損が生じなく、しかも、正確な位置決めができる摺動子保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による摺動子保持構造は、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成した摺動子と、該摺動子を所定位置に固定する基台と、前記摺動子を前記基台に保持固定する保持部材とを備えた摺動子保持構造において、前記摺動子は、一方側に摺接部と、他方側に被保持部とを有し、前記摺動子の一部分に基準部位を備え、前記基台は、所定のX軸方向と該X軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面と、前記基台の所定位置に設けた当接部とを有し、前記保持部材は、押さえ面を有し、前記保持面と前記押さえ面との間に前記被保持部を挟み込み、前記基準部位を前記当接部に当接して、前記摺動子を位置決めした状態で、前記保持部材を前記基台に固定したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の請求項2による摺動子保持構造は、前記当接部は、前記保持面の前記X軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第1の当接部を有し、前記基準部位は、前記被保持部の前記X軸方向に沿った第1の端面に第1の基準部位を有し、前記第1の基準部位を前記第1の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項3による摺動子保持構造は、前記当接部は、前記保持面の前記Y軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第2の当接部を有し、前記基準部位は、前記被保持部の前記第1の端面に略直交する第2の端面に第2の基準部位を有し、前記第2の基準部位を前記第2の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項4による摺動子保持構造は、前記被保持部の前記X軸方向側の縁部には、前記第1の端面と略直交する立設板部を有し、前記立設板部の前記被保持部側の面には、第3の基準部位を有し、前記基台は、前記立設板部を収納する開口部を有し、前記開口部の前記保持面側の面には、第3の当接部を設け、前記保持部材は、前記開口部に挿入される凸設部を有し、前記凸設部を前記開口部に挿入し、前記凸設部の一方面と前記第3の当接部とで前記立設板部を狭持する際に、前記第3の基準部位を前記第3の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項5による摺動子保持構造は、前記立設板部は、曲面状に形成された曲面部を有し、前記基台の前記第3の当接部は、前記曲面部に沿うような曲面形状部を有していることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項6による摺動子保持構造は、前記摺動子は、前記摺接部の中間部にスリットを有し、前記スリットの内壁に、第4の基準部位を有し、前記基台は、前記スリットの幅より小さい外形の突起部を有し、前記突起部の外縁に、第4の当接部を有し、前記第4の基準部位を前記第4の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項7による摺動子保持構造は、前記摺動子は貫通孔を有し、前記貫通孔にネジを挿通して、前記保持部材を介して前記基台に前記摺動子をネジ止めするものであって、前記貫通孔の内形は、前記ネジの外径より大きいことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項8による摺動子保持構造は、前記摺動子及び前記保持部材には、それぞれ貫通孔を有し、前記基台に設けられた凸部を前記それぞれの貫通孔に挿通し、前記凸部を変形させることにより、前記保持部材を介して前記基台に前記摺動子を固定するものであって、前記貫通孔の内形は前記凸部の外形より大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、摺動子保持構造は、保持部材の押さえ面と基台の保持面との間に摺動子の被保持部を挟み込んで、保持部材を基台に固定したことより、摺動子を面で押さえ込むため、摺動子の板状面に対して斜め方向の応力が掛からないように摺動子を固定できる。このことにより、固定時において、摺動子にクラック等の破損が生じなくすることができる。また、摺動子に設けられた基準部位を基台の所定位置に設けた当接部に当接して、摺動子を位置決めすることにより、摺動子を正確に位置決めして組み込むことができる。したがって、摺動子にクラック等の破損が生じなく、しかも、正確な位置決めができる摺動子保持構造を提供することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、摺動子保持構造は、摺動子の被保持部の第1の端面に設けられた第1の基準部位を、基台の保持面の辺部から立設して設けられた第1の当接部に当接して、摺動子を位置決めしたので、摺動子のY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、摺動子保持構造は、摺動子の被保持部の第2の端面に設けられた第2の基準部位を、基台の保持面の辺部から立設して設けられた第2の当接部に当接して、摺動子を位置決めしたので、摺動子のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、摺動子保持構造は、保持部材の凸設部と基台の開口部とで、摺動子の被保持部の縁部に設けられた立設板部を狭持する際に、摺動子の立設板部の第3の基準部位を、基台の開口部に設けられた第3の当接部に当接して、摺動子を位置決めしたので、摺動子のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、摺動子保持構造は、基台の第3の当接部は、摺動子の立設板部の曲面状に形成された曲面部に沿うような曲面形状部を有しているので、立設板部の第3の基準部位を基台の第3の当接部に当接する際に、より正確に当接することができ、摺動子のX軸方向の位置決めをより正確に行うことができる。このことにより、摺動子にクラック等の破損が生じないように、より一層正確に位置決めして組み込むことができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、摺動子保持構造は、摺接部と被保持部との中間部に設けたスリットの内壁の第4の基準部位を、基台の突起部の外縁に設けられた第4の当接部に当接して、摺動子を位置決めしたので、摺動子のX軸方向及びY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、摺動子保持構造は、摺動子の貫通孔にネジを挿通して保持部材を基台に、摺動子を介してネジ止めするので、組立時に摺動子を所定の位置に確実にセットすることができる。また、摺動子の貫通孔の内形は、ネジの外径より大きいので、ネジの挿通の際に摺動子がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0023】
請求項8の発明によれば、摺動子保持構造は、摺動子の貫通孔及び保持部材の貫通孔に基台に設けられた凸部を挿通して、凸部を変形させることにより、保持部材を基台に、摺動子を介して固定するので、組立時に摺動子を所定の位置に確実にセットできるとともに、容易に保持部材を基台に保持することができる。また、摺動子の貫通孔の内形は、凸部の外径より大きいので、凸部の挿通の際に摺動子がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0024】
したがって、本発明の摺動子保持構造は、摺動子にクラック等の破損が生じなく、しかも、正確な位置決めができる摺動子保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造を説明する分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造の摺動子を説明する図であって、図2(a)は、摺動子の斜視図であり、図2(b)は、摺動子の平面図であり、図2(c)は、摺動子の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造を説明する図であって、図3(a)は、図1に示すP部分の拡大斜視図であり、図3(b)は、図3(a)とは別な角度から見た拡大斜視図であり、図3(c)は、図3(a)とは更に別な角度から見た拡大斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造の保持部材を説明する図であって、図4(a)は、保持部材を上方から見た斜視図であり、図3(b)は、保持部材を下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造の組立方法を説明する拡大斜視図であって、図5(a)は、基台の部分を示し、図5(b)は、基台に摺動子が載置された状態を示し、図5(c)は、図5(b)に保持部材を載置した状態を示し、図5(d)は、図5(c)の後、基台に設けられた凸部を変形した状態を示している。
【図6】本発明の第1実施形態の摺動子保持構造を説明する図であって、図6(a)は、図5(c)の上面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すXI−XI線における拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の摺動子保持構造の摺動子を説明する図であって、図7(a)は、摺動子の斜視図であり、図7(b)は、摺動子の平面図であり、図7(c)は、摺動子の側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の摺動子保持構造を説明する図であって、図8(a)は、基台の部分の拡大斜視図であり、図8(b)は、図8(a)とは別な角度から見た拡大斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態の摺動子保持構造の保持部材を説明する図であって、図9(a)は、保持部材を上方から見た斜視図であり、図9(b)は、保持部材を下方から見た斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態の摺動子保持構造の摺動子を説明する図であって、図10(a)は、摺動子の斜視図であり、図10(b)は、摺動子の平面図であり、図10(c)は、摺動子の側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の摺動子保持構造を説明する図であって、図11(a)は、基台の部分の拡大斜視図であり、図11(b)は、図11(a)とは別な角度から見た拡大斜視図である。
【図12】従来例1における可変抵抗器を説明する図であって、図12(a)は、摺動子の保持構造部分の分解斜視図であり、図12(b)は、その部分の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101を有した回転型の電気部品501の一部を示した図であって、摺動子保持構造101の分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101の摺動子1を説明する図であって、図2(a)は、摺動子1の斜視図であり、図2(b)は、摺動子1の平面図であり、図2(c)は、摺動子1の側面図である。図3は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101を説明する図であって、図3(a)は、図1に示すP部分の拡大斜視図であり、図3(b)は、図3(a)とは別な角度から見た拡大斜視図であり、図3(c)は、図3(a)とは更に別な角度から見た拡大斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101の保持部材8を説明する図であって、図4(a)は、保持部材8を上方から見た斜視図であり、図4(b)は、保持部材8を下方から見た斜視図である。
【0028】
本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101は、図1に示すように、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成した摺動子1と、摺動子1を所定位置に固定する基台4と、摺動子1を基台4に保持固定する保持部材8とを備えて構成される。基台4は、凸状の操作部19tを設けた平板状のロータ19に、一体となって形成されている。また、図1の電気部品501には、もう一つの摺動子保持構造が示されており、同様にして、基台4Bがロータ19に一体となって形成されている。なお、基台4Bに対応する摺動子及び保持部材は、説明を容易にするため、省略している。
【0029】
また、電気部品501は、例えばユーザにより操作されてロータ19が回転すると、基台4に保持固定された摺動子1も同じく回転し、摺動子1の先端部にある接点11sが、対向して配置されている抵抗体(図示していない)の部分を摺動することによって、電気的な導通を行うようにしている。また、図中の摺動子1は抵抗体に押し付けられている状態を表しているので、湾曲状に弾性変形している。なお、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101は、回転型の電気部品501に適用しているが、回転型に限るものではなく、スライド型等の他の電気部品に適用することができる。
【0030】
摺動子1は、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成されており、図2に示すように、一方側に摺接部11と、他方側に被保持部12とを有し、摺接部11と被保持部12とがつながった構成となっている。また、被保持部12のX軸方向(X1)側の縁部には、曲面状に形成された曲面部13kを設けた立設板部13が立体的に成形され、被保持部12と曲面部13kとがつながった構成である。
【0031】
また、摺接部11には、摺接部11の中間部にスリットS1を有し、スリットS1を挟んで、3組の接点子11pが、それぞれ弾性変形可能に摺接部11の途中から延出している。接点子11pは、自由端の先端部に接点部位11bを有し、対向して配置されている抵抗体(図示していない)との接触を確実にするため、Z1方向に曲げられて形成されている。なお、接点部位11b及び立設板部13は、合成樹脂を含浸させたカーボン繊維を合成樹脂が未硬化のうちに各々Z軸方向に曲げ加工して作製した。
【0032】
また、被保持部12には、円形状の貫通孔H1を2つ有するとともに、Y軸方向側の被保持部12の端面にはX軸方向に沿った第1の端面P11を有し、後述する第1の当接部T11と当接する第1の基準部位K11が設けられている。なお、図2(b)に示す第1の端面P11は、Y2側に設けているが、基台4から立設して設けられた第1の当接部T11に当接する端面なので、Y1側に第1の当接部T11が位置する場合、第1の端面P11を紙面のY2側に設けなければいけない。
【0033】
また、立設板部13は、図2(c)に示すように、被保持部12のX軸方向(X1)側の縁部に連続して、しかも第1の端面P11と略直交して設けられている。そして、被保持部12と接続した立設板部13の部分は、摺動子1の加工性や強度等を考慮して、曲面状に形成し、曲面部13kとしている。また、立設板部13の被保持部12側(X2側)の面には、第3の基準部位K13を有していて、後述する基台4の第3の当接部T13と当接させる。
【0034】
基台4は、図3に示すように、X軸方向とX軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面15と、保持面15のX軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第1の当接部T11と、図2に示す摺動子1の立設板部13を収納する開口部7と、開口部7の保持面15側(X2側)の面に第3の当接部T13とを備えて構成される。そして、基台4は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂を用い、ロータ19と一体で射出形成されることにより得られる。
【0035】
また、基台4の第3の当接部T13は、摺動子1の立設板部13が開口部7に挿入された際に、摺動子1の曲面部13kに沿うような曲面形状の曲面形状部55を有している。また、基台4の保持面15から延出して設けられた柱状の凸部16が2個形成され、摺動子1が基台4に固定される際に、図2に示す摺動子1の貫通孔H1のそれぞれが凸部16のそれぞれに挿通されるようになる。そして、摺動子1の貫通孔H1の内形(内径)は、凸部16の外形(外径)より大きくなっている。
【0036】
保持部材8は、図4に示すように、ブロック状の基部18と、図3に示す開口部7に挿入され、基部18から下方側に突出した凸設部58と、図2に示す摺動子1の被保持部12と当接する押さえ面38pとを備えて構成される。また、凸設部58の押さえ面38p側の面は、摺動子1の立設板部13と当接する一方面58Pになっている。また、保持部材8の基部18には、基台4に設けられた2個の凸部16が挿入される貫通孔H8を2個有しており、保持部材8の貫通孔H8の内形(内径)は、図3に示す凸部16の外形より大きくなっている。保持部材8も基台4と同様に、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂を用い、射出形成により得られる。
【0037】
次に、上記構成の摺動子保持構造101の組立方法の一例について、説明する。
図5は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101の組立方法を説明する拡大斜視図であって、図5(a)は、基台4の部分を示し、図5(b)は、基台4に摺動子1が載置された状態を示し、図5(c)は、図5(b)に保持部材8を載置した状態を示し、図5(d)は、図5(c)の後、基台4に設けられた凸部16を変形した状態を示している。図6は、本発明の第1実施形態の摺動子保持構造101を説明する図であって、図6(a)は、図5(c)の上面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すXI−XI線における拡大断面図である
【0038】
先ず、図5(a)及び図5(b)に示すように、上方側から、基台4の開口部7に摺動子1の立設板部13を挿入するとともに、図2に示す摺動子1の貫通孔H1に基台4の凸部16を挿入し、基台4の保持面15と摺動子1の被保持部12とが当接するように摺動子1を基台4に載置する。その際、摺動子1は、摺動子1の接点11sと、対向して配置されている抵抗体(図示していない)とを接触させるため、接点11sが上方側に向くように、載置する。
【0039】
次に、図4、図5(c)及び図6に示すように、上方側から、基台4の開口部7に保持部材8の凸設部58を挿入するとともに、保持部材8の貫通孔H8に基台4の凸部16を挿入し、基台4の保持面15と保持部材8の押さえ面38pとの間に摺動子1の被保持部12を挟み込み、同時に、凸設部58の一方面58Pと基台4の第3の当接部T13とで摺動子1の立設板部13を狭持するように、載置して固定する。
【0040】
このため、保持部材8の押さえ面38pと基台4の保持面15との間に摺動子1の被保持部12を挟み込んで、保持部材8を基台4に固定したことより、摺動子1を面で押さえ込むため、摺動子1の板状面に対して斜め方向の応力が掛からないように摺動子1を固定できる。このことにより、固定時において、摺動子1にクラック等の破損が生じなくすることができる。
【0041】
また、この載置の際に、摺動子1の第1の端面P11に設けられた基準部位である第1の基準部位K11を、基台4の所定位置に設けられた当接部である第1の当接部T11に当接して、摺動子1の位置を決める。また、摺動子1の立設板部13に設けられた基準部位である第3の基準部位K13を、基台4の所定位置に設けられた当接部である第3の当接部T13に当接して、摺動子1の位置を決める。
【0042】
このため、摺動子1に設けられた基準部位を基台4の所定位置に設けた当接部に当接して、摺動子1を位置決めすることにより、摺動子1を正確に位置決めして組み込むことができる。特に、摺動子1の被保持部12の第1の端面P11に設けられた第1の基準部位K11を、基台4の保持面15の辺部から立設して設けられた第1の当接部T11に当接して、摺動子1を位置決めしたので、摺動子1のY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。また、摺動子1の立設板部13の第3の基準部位K13を、基台4の開口部7に設けられた第3の当接部T13に当接して、摺動子1を位置決めしたので、摺動子1のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。
【0043】
また、基台4の第3の当接部T13は、摺動子1の立設板部13の曲面状に形成された曲面部13kに沿うような曲面形状部55を有しているので、立設板部13の第3の基準部位K13を第3の当接部T13に当接する際に、より正確に当接することができ、摺動子1のX軸方向の位置決めをより正確に行うことができる。
【0044】
最後に、図5(c)及び図5(d)に示すように、保持部材8を載置した後に、熱かしめ等の方法を用いて、保持部材8の貫通孔H8から突出した凸部16の部分を変形させる。このことにより、保持部材8を介して基台4に摺動子1を固定することができる。このため、摺動子1及び保持部材8の貫通孔H8に基台4に設けられた凸部16を挿通して、凸部16の先端部を潰して変形させることにより、保持部材8を基台4に、摺動子1を介して固定するので、組立時に摺動子1を所定の位置に確実にセットできるとともに、容易に保持部材8を基台4に保持することができる。
【0045】
また、摺動子1の貫通孔H1の内形(内径)は、凸部16の外形(外径)より大きいので、凸部16の挿通の際に摺動子1がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子1にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0046】
以上により、図2ないし図6に示すように、本発明の摺動子保持構造101は、保持部材8の押さえ面38pと基台4の保持面15との間に摺動子1の被保持部12を挟み込んで、保持部材8を基台4に固定したことより、摺動子1を面で押さえ込むため、摺動子1の板状面に対して斜め方向の応力が掛からないように摺動子1を固定できる。このことにより、固定時において、摺動子1にクラック等の破損が生じなくすることができる。また、摺動子1に設けられた基準部位を基台4の所定位置に設けた当接部に当接して、摺動子1を位置決めすることにより、摺動子1を正確に位置決めして組み込むことができる。したがって、摺動子1にクラック等の破損が生じなく、しかも、正確な位置決めができる摺動子保持構造を提供することができる。
【0047】
また、図2、図3及び図5に示すように、摺動子1の被保持部12の第1の端面P11に設けられた第1の基準部位K11を、基台4の保持面15の辺部から立設して設けられた第1の当接部T11に当接して、摺動子1を位置決めしたので、摺動子1のY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子1にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0048】
また、図2ないし図6に示すように、保持部材8の凸設部58と基台4の開口部7とで、摺動子1の被保持部12の縁部に設けられた立設板部13を狭持する際に、摺動子1の立設板部13の第3の基準部位K13を、基台4の開口部7に設けられた第3の当接部T13に当接して、摺動子1を位置決めしたので、摺動子1のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子1にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0049】
また、図2、図3、図5及び図6に示すように、基台4の第3の当接部T13は、摺動子1の立設板部13の曲面状に形成された曲面部13kに沿うような曲面形状部55を有しているので、立設板部13の第3の基準部位K13を基台4の第3の当接部T13に当接する際に、より正確に当接することができ、摺動子1のX軸方向の位置決めをより正確に行うことができる。このことにより、摺動子1にクラック等の破損が生じないように、より一層正確に位置決めして組み込むことができる。
【0050】
また、図2、図4及び図5に示すように、摺動子1の貫通孔H1及び保持部材8の貫通孔H8に基台4に設けられた凸部16を挿通して、凸部16の先端部を潰して変形させることにより、保持部材8を基台4に、摺動子1を介して固定するので、組立時に摺動子1を所定の位置に確実にセットできるとともに、容易に保持部材8を基台4に保持することができる。また、摺動子1の貫通孔H1の内形(内径)は、凸部16の外形(外径)より大きいので、凸部16の挿通の際に摺動子1がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子1にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0051】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態の摺動子保持構造102の摺動子2を説明する図であって、図7(a)は、摺動子2の斜視図であり、図7(b)は、摺動子2の平面図であり、図7(c)は、摺動子2の側面図である。図8は、本発明の第2実施形態の摺動子保持構造102を説明する図であって、図8(a)は、基台5の部分の拡大斜視図であり、図8(b)は、図8(a)とは別な角度から見た拡大斜視図である。図9は、本発明の第2実施形態の摺動子保持構造102の保持部材28を説明する図であって、図9(a)は、保持部材28を上方から見た斜視図であり、図9(b)は、保持部材28を下方から見た斜視図である。第2実施形態の摺動子保持構造102は、第1実施形態に対し、摺動子2に第2の基準部位K12を設けている点と基台5に第2の当接部T12を設けている点が異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
本発明の第2実施形態の摺動子保持構造102は、図7に示す摺動子2と、図8に示す基台5と、図9に示す保持部材28とを備えて構成される。なお、基台5は、第1実施形態と同様に、平板状のロータ19に、一体となって形成されている。
【0053】
摺動子2は、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成されており、図7に示すように、一方側に摺接部11と、他方側に被保持部12とを有し、摺接部11と被保持部12とがつながった構成となっている。また、摺動子2は、第1実施形態の摺動子1と異なり、被保持部12のX軸方向(X1)側の縁部に設けた立設板部13が成形されていない。
【0054】
また、摺動子2は、Y軸方向(Y1)側の被保持部12の端面には、X軸方向に沿った第1の端面P21を有し、後述する第1の当接部T21と当接する第1の基準部位K21が設けられている。また、被保持部12の第1の端面P21に略直交するX軸方向(X1)側の被保持部12の端面には、第2の端面P12を有し、後述する第2の当接部T12と当接する第2の基準部位K12が設けられている。
【0055】
基台5は、図8に示すように、X軸方向とX軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面15と、保持面15のX軸方向に沿った辺部から立設して設けられた凸状部75にある第1の当接部T21と、保持面15のY軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第2の当接部T12と、後述する保持部材28の凸設部58を収納する開口部7とを備えて構成される。そして、基台5は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂を用い、ロータ19と一体で射出形成されることにより得られる。
【0056】
保持部材28は、図9に示すように、ブロック状の基部18と、図8に示す開口部7に挿入され、基部18から下方側に突出した凸設部58と、図7に示す摺動子2の被保持部12と当接する押さえ面38pとを備えて構成される。また、保持部材28には、基台5の凸状部75を収納するための凹状部78が、凸設部58側であって、押さえ面38pの辺部と連続した部分に形成されている。また、保持部材28の基部18には、基台5に設けられた2個の凸部16が挿入される貫通孔H8を2個有しており、保持部材28の貫通孔H8の内形(内径)は、図8に示す凸部16の外形より大きくなっている。保持部材28も基台5と同様に、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂を用い、射出形成により得られる。
【0057】
次に、上記構成の摺動子保持構造102の組立方法の一例について、説明するが、図5を用いて説明した第1実施形態の摺動子保持構造101の組立方法の一例とほぼ同じなので、説明図は省略する。
【0058】
先ず、上方側から、摺動子2の貫通孔H1に基台4の凸部16を挿入し、基台5の保持面15と摺動子2の被保持部12とが当接するように摺動子2を基台5に載置する。その際、摺動子2は、摺動子2の接点11sと、対向して配置されている抵抗体(図示していない)とを接触させるため、接点11sが上方側に向くように、載置する。
【0059】
次に、上方側から、基台5の開口部7に保持部材28の凸設部58を挿入するとともに、保持部材28の貫通孔H8に基台5の凸部16を挿入し、基台5の保持面15と保持部材28の押さえ面38pとの間に摺動子2の被保持部12を挟み込むように載置して固定する。
【0060】
このため、保持部材28の押さえ面38pと基台5の保持面15との間に摺動子2の被保持部12を挟み込んで、保持部材28を基台5に固定したことより、摺動子2を面で押さえ込むため、摺動子2の板状面に対して斜め方向の応力が掛からないように摺動子2を固定できる。このことにより、固定時において、摺動子2にクラック等の破損が生じなくすることができる。
【0061】
また、この載置の際に、摺動子2の第1の端面P21に設けられた基準部位である第1の基準部位K21を、基台5の所定位置に設けられた当接部である第1の当接部T21に当接して、摺動子2の位置を決める。また、摺動子2の第2の端面P12に設けられた基準部位である第2の基準部位K12を、基台5の所定位置に設けられた当接部である第2の当接部T12に当接して、摺動子2の位置を決める。
【0062】
このため、摺動子2に設けられた基準部位を基台5の所定位置に設けた当接部に当接して、摺動子2を位置決めすることにより、摺動子2を正確に位置決めして組み込むことができる。特に、摺動子2の被保持部12の第1の端面P21に設けられた第1の基準部位K21を、基台5の保持面15の辺部から立設して設けられた第1の当接部T21に当接して、摺動子2を位置決めしたので、摺動子2のY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。また、摺動子2の第2の端面P12に設けられた第2の基準部位K12を、基台5の所定位置に設けられた当接部である第2の当接部T12に当接して、摺動子2を位置決めしたので、摺動子2のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。
【0063】
最後に、保持部材28を載置した後に、熱かしめ等の方法を用いて、保持部材28の貫通孔H8から突出した凸部16の部分を変形させる。このことにより、保持部材28を介して基台5に摺動子2を固定することができる。このため、摺動子2及び保持部材28の貫通孔H8に基台5に設けられた凸部16を挿通して、凸部16の先端部を潰して変形させることにより、保持部材28を基台5に、摺動子2を介して固定するので、組立時に摺動子2を所定の位置に確実にセットできるとともに、容易に保持部材28を基台5に保持することができる。
【0064】
また、摺動子2の貫通孔H1の内形(内径)は、凸部16の外形(外径)より大きいので、凸部16の挿通の際に摺動子2がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子2にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0065】
以上により、本発明の摺動子保持構造102は、保持部材28の押さえ面38pと基台5の保持面15との間に摺動子2の被保持部12を挟み込んで、保持部材28を基台5に固定したことより、摺動子2を面で押さえ込むため、摺動子2の板状面に対して斜め方向の応力が掛からないように摺動子2を固定できる。このことにより、固定時において、摺動子2にクラック等の破損が生じなくすることができる。また、摺動子2に設けられた基準部位を基台5の所定位置に設けた当接部に当接して、摺動子2を位置決めすることにより、摺動子2を正確に位置決めして組み込むことができる。したがって、摺動子2にクラック等の破損が生じなく、しかも、正確な位置決めができる摺動子保持構造を提供することができる。
【0066】
また、摺動子2の被保持部12の第1の端面P21に設けられた第1の基準部位K21を、基台5の保持面15の辺部から立設して設けられた第1の当接部T21に当接して、摺動子2を位置決めしたので、摺動子2のY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子2にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0067】
また、摺動子2の被保持部12の第2の端面P12に設けられた第2の基準部位K12を、基台5の保持面15の辺部から立設して設けられた第2の当接部T12に当接して、摺動子2を位置決めしたので、摺動子2のX軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子2にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0068】
また、摺動子2の貫通孔H1及び保持部材28の貫通孔H8に基台5に設けられた凸部16を挿通して、凸部16の先端部を潰して変形させることにより、保持部材28を基台5に、摺動子2を介して固定するので、組立時に摺動子2を所定の位置に確実にセットできるとともに、容易に保持部材28を基台5に保持することができる。また、摺動子2の貫通孔H1の内形(内径)は、凸部16の外形(外径)より大きいので、凸部16の挿通の際に摺動子2がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子2にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0069】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態の摺動子保持構造103の摺動子3を説明する図であって、図10(a)は、摺動子3の斜視図であり、図10(b)は、摺動子3の平面図であり、図10(c)は、摺動子3の側面図である。図11は、本発明の第3実施形態の摺動子保持構造103を説明する図であって、図11(a)は、基台6の部分の拡大斜視図であり、図11(b)は、図11(a)とは別な角度から見た拡大斜視図である。第3実施形態の摺動子保持構造103は、第1実施形態に対し、摺動子3に第4の基準部位K14を設けている点と基台6に第4の当接部T14を設けている点が主に異なる。他に、ネジ止めのためのねじ穴(タップ)N9が、基台6に設けられているところが異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
本発明の第3実施形態の摺動子保持構造103は、図10に示す摺動子3と、図11に示す基台6と、第1実施形態で用いた保持部材8とを備えて構成される。基台6は、第1実施形態と同様に、平板状のロータ19に、一体となって形成されている。
【0071】
摺動子3は、カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成されており、図10に示すように、一方側に摺接部11と、他方側に被保持部12とを有し、摺接部11と被保持部12とがつながった構成となっている。また、摺動子3は、第1実施形態の摺動子1と異なり、被保持部12のX軸方向(X1)側の縁部に設けた立設板部13が成形されていない。
【0072】
また、摺動子3の摺接部11には、摺接部11の中間部にスリットS3を有し、スリットS3を挟んで、3組の接点子11pが、それぞれ弾性変形可能に摺接部11の途中から延出している。また、スリットS3の内壁に、後述する基台6の第4の当接部T14と当接する第4の基準部位K14が設けられている。
【0073】
基台6は、図11に示すように、X軸方向とX軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面15と、保持面15のX軸方向(X2)側に立設して設けられ、スリットS3の幅より小さい外形の突起部14と、突起部14の外縁に設けられた第4の当接部T14と、保持部材8の凸設部58を収納する開口部7とを備えて構成される。他に、ネジ止めのためのねじ穴(タップ)N9が、基台6に設けられている。
【0074】
次に、上記構成の摺動子保持構造103の組立方法の一例について、説明するが、図5を用いて説明した第1実施形態の摺動子保持構造101の組立方法の一例とほぼ同じなので、説明図は省略する。
【0075】
先ず、上方側から、摺動子3のスリットS3に基台6の突起部14が挟まれるとともに、基台6の保持面15と摺動子3の被保持部12とが当接するように摺動子3を基台6に載置する。その際、摺動子3は、摺動子3の接点11sと、対向して配置されている抵抗体(図示していない)とを接触させるため、接点11sが上方側に向くように、載置する。また、この載置の際には、摺動子3の貫通孔H1の位置が、基台6に設けられたねじ穴(タップ)N9の位置と一致し、貫通孔H1の内形(内径)は、ねじ穴(タップ)N9の外径より大きくなっている。このため、後述するネジの外形が貫通孔H1に余裕を持って挿通される。
【0076】
次に、上方側から、基台6の開口部7に保持部材8の凸設部58を挿入するとともに、基台6の保持面15と保持部材8の押さえ面38pとの間に摺動子3の被保持部12を挟み込むように載置して固定する。
【0077】
また、この載置の際に、摺動子3のスリットS3の内壁に設けられた基準部位である第4の基準部位K14を、基台6の所定位置に設けられた当接部である第4の当接部T14に当接して、摺動子3の位置を決める。そして、図10及び図11に示すように、基台6の突起部14の外径形状が、X軸方向の面及びY軸方向面を有した形状になっているので、スリットS3の内壁の内形形状を突起部14の2つの面の形状に合わせることで、摺動子3のスリットS3の内壁に第4の基準部位K14を2箇所設けることができる。
【0078】
このため、摺接部11と被保持部12との中間部に設けたスリットS3の内壁の第4の基準部位K14を、基台6の突起部14の外縁に設けられた第4の当接部T14に当接して、摺動子3を位置決めしたので、摺動子3のX軸方向及びY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子3にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0079】
最後に、保持部材8を載置した後に、保持部材8の貫通孔H8及び摺動子3の貫通孔H1にネジを挿通して、保持部材8を介して基台6に摺動子3をネジ止めする。このことにより、組立時に摺動子3を所定の位置に確実にセットすることができる。
【0080】
また、摺動子3の貫通孔H1の内形(内径)は、ネジの外径より大きいので、ネジの挿通の際に摺動子3がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子3にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0081】
以上により、本発明の摺動子保持構造103は、摺接部11と被保持部12との中間部に設けたスリットS3の内壁の第4の基準部位K14を、基台6の突起部14の外縁に設けられた第4の当接部T14に当接して、摺動子3を位置決めしたので、摺動子3のX軸方向及びY軸方向の位置決めを正確に行うことができる。このことにより、摺動子3にクラック等の破損が生じないように、より正確に位置決めして組み込むことができる。
【0082】
また、摺動子3の貫通孔H1にネジを挿通して保持部材8を基台6に、摺動子3を介してネジ止めするので、組立時に摺動子3を所定の位置に確実にセットすることができる。また、摺動子3の貫通孔H1の内形(内径)は、ネジの外径より大きいので、ネジの挿通の際に摺動子3がつられて動き、破損する不具合が生じない。このことにより、組立時において、組立が容易になるばかりでなく、摺動子3にクラック等の破損が生じないようにできる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0084】
<変形例1>
上記第1実施形態では、摺動子1にスリットS1が設けられていたが、スリットS1が設けられていなくても良い。また、上記第1実施形態では、摺動子1の接点子11pは6個で構成されていたが、6個に限るものではなく、1個以上あれば良い。また、上記第1実施形態では、摺動子1の接点子11pの自由端側が、上方側に曲げられていたが、下方側に曲げられた構成でも良い。その際の接点は、先端部でなく、曲げられて凸になった部分になる。
<変形例2>
上記第1実施形態では、基台4の凸部16は2つで構成されていたが、2個に限るものではなく、1個以上あれば良い。
【0085】
<変形例3>
上記第2実施形態及び第3実施形態では、基台5の開口部7に保持部材28の凸設部58が挿入されるように構成したが、基台5の開口部7及び保持部材28の凸設部58を設けない構成にしてもよい。
【0086】
<変形例4>
上記第3実施形態の摺動子3と保持部材8の構成を、Y軸方向の辺部に切り欠き部を設けた摺動子と、切り欠き部と係合する突設部を設けた保持部材との構成にしても良い。このことにより、切り欠き部と突設部が係合しているので、保持部材を動かすだけで、摺動子を持たずに摺動子を動かすことができ、摺動子を痛めることが無い。
【0087】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1、2、3 摺動子
11 摺接部
12 被保持部
13 立設板部
13k 曲面部
4、4B、5、6 基台
14 突起部
15 保持面
55 曲面形状部
16 凸部
7 開口部
8、28 保持部材
38p 押さえ面
58 凸設部
H1 摺動子の貫通孔
H8 保持部材の貫通孔
K11、K21 第1の基準部位
K12 第2の基準部位
K13 第3の基準部位
K14 第4の基準部位
P11、P21 第1の端面
P12 第2の端面
S1、S3 スリット
T11、T21 第1の当接部
T12 第2の当接部
T13 第3の当接部
T14 第4の当接部
X1、X2 X軸方向
Y1、Y2 Y軸方向
101、102、103 摺動子保持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン繊維と合成樹脂とを主原料として板状に形成した摺動子と、該摺動子を所定位置に固定する基台と、前記摺動子を前記基台に保持固定する保持部材とを備えた摺動子保持構造において、
前記摺動子は、一方側に摺接部と、他方側に被保持部とを有し、前記摺動子の一部分に基準部位を備え、
前記基台は、所定のX軸方向と該X軸方向に略直交したY軸方向とを有した保持面と、前記基台の所定位置に設けた当接部とを有し、
前記保持部材は、押さえ面を有し、
前記保持面と前記押さえ面との間に前記被保持部を挟み込み、
前記基準部位を前記当接部に当接して、前記摺動子を位置決めした状態で、前記保持部材を前記基台に固定したことを特徴とする摺動子保持構造。
【請求項2】
前記当接部は、前記保持面の前記X軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第1の当接部を有し、
前記基準部位は、前記被保持部の前記X軸方向に沿った第1の端面に第1の基準部位を有し、
前記第1の基準部位を前記第1の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴とする請求項1に記載の摺動子保持構造。
【請求項3】
前記当接部は、前記保持面の前記Y軸方向に沿った辺部から立設して設けられた第2の当接部を有し、
前記基準部位は、前記被保持部の前記第1の端面に略直交する第2の端面に第2の基準部位を有し、
前記第2の基準部位を前記第2の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摺動子保持構造。
【請求項4】
前記被保持部の前記X軸方向側の縁部には、前記第1の端面と略直交する立設板部を有し、前記立設板部の前記被保持部側の面には、第3の基準部位を有し、
前記基台は、前記立設板部を収納する開口部を有し、前記開口部の前記保持面側の面には、第3の当接部を設け、
前記保持部材は、前記開口部に挿入される凸設部を有し、
前記凸設部を前記開口部に挿入し、前記凸設部の一方面と前記第3の当接部とで前記立設板部を狭持する際に、
前記第3の基準部位を前記第3の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摺動子保持構造。
【請求項5】
前記立設板部は、曲面状に形成された曲面部を有し、
前記基台の前記第3の当接部は、前記曲面部に沿うような曲面形状部を有していることを特徴とする請求項4に記載の摺動子保持構造。
【請求項6】
前記摺動子は、前記摺接部の中間部にスリットを有し、前記スリットの内壁に、第4の基準部位を有し、
前記基台は、前記スリットの幅より小さい外形の突起部を有し、前記突起部の外縁に、第4の当接部を有し、
前記第4の基準部位を前記第4の当接部に当接して、前記摺動子を位置決めしたことを特徴とする請求項1に記載の摺動子保持構造。
【請求項7】
前記摺動子は貫通孔を有し、前記貫通孔にネジを挿通して、前記保持部材を介して前記基台に前記摺動子をネジ止めするものであって、
前記貫通孔の内形は、前記ネジの外径より大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の摺動子保持構造。
【請求項8】
前記摺動子及び前記保持部材には、それぞれ貫通孔を有し、
前記基台に設けられた凸部を前記それぞれの貫通孔に挿通し、前記凸部を変形させることにより、前記保持部材を介して前記基台に前記摺動子を固定するものであって、
前記貫通孔の内形は前記凸部の外形より大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の摺動子保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244047(P2012−244047A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114698(P2011−114698)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】