説明

摺動部品

【課題】高い潤滑効果を伴って摺動することを可能とし、耐摩耗性の一層の向上を図る。
【解決手段】鋼製の第1摺動部材と第2摺動部材とが相互に荷重がかかった状態で相互に摺動する摺動部品において、第1摺動部材および第2摺動部材の各表面に、互いに異なる炭化物からなる皮膜を形成する。そして、これら炭化物皮膜の硬度比(大きい方の硬度/小さい方の硬度)を、1.4以下の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のリンクがピンを介して連結された車両用のチェーン等の摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動部の動力を従動部に伝達するチェーンは、多数のリンクがピンを介して無端状に連結された構成である。リンクとピンは相対回転自在に組み込まれており、チェーンの作動時にはリンクの内周面とピンの外周面とが摺動する。車両用の駆動チェーン、例えばカムシャフト駆動用、オイルポンプ駆動用、バランサシャフト駆動用等のチェーンには、騒音が低減されたいわゆるサイレントチェーンが多用されてきている。このようなチェーンに関しては、リンクとピンとが摺動して摩耗することに起因する摩耗伸びが少ないことが求められている(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−132637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献には、リンクの内周面にCrC(炭化クロム)皮膜を形成し、ピンの外周面にVC(炭化バナジウム)皮膜を形成することにより、表面を硬化させて摩耗伸びを防止することが記載されている。しかしながら、近年ではチェーンの高強度化のニーズが増大しており、さらなる耐摩耗性が望まれている。
よって本発明は、耐摩耗性の一層の向上が図られる摺動部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、摺動部材の表面の硬度の差に基づく硬度比に着目して鋭意研究を行った結果、硬度比が小さいほど両者の摩耗量(総摩耗量)を少なくすることができるという知見を得た。本発明はこのような知見を基になされたものであり、鋼製の第1摺動部材と第2摺動部材とが相互に荷重がかかった状態で相互に摺動する摺動部品であって、第1摺動部材および第2摺動部材の各表面には互いに異なる炭化物からなる皮膜が形成されており、これら炭化物皮膜の硬度比が1.4以下であることを特徴とする。ここでいう硬度比は、第1摺動部材と第2摺動部材の炭化物皮膜の硬度が互いに異なる場合において、小さい方の硬度に対する大きい方の硬度の比率、すなわち大きい方の硬度を小さい方の硬度で割った値を言う。本発明では、双方の硬度が同じ場合、すなわち硬度比1の組み合わせも含む。硬度比の調整は、用いる炭化物の種類を変えることによって可能であり、また、炭化物皮膜を複数の炭化物によって複相とする場合には用いる各炭化物の比率を変えることによって可能である。
【0006】
本発明によれば、摺動部材の表面に形成する炭化物皮膜の硬度を異ならせ、かつ異なる程度として、硬度比を適切な値(1.4以下)に規定することによって、耐摩耗性の一層の向上が図られる。なお、例え硬度比が1であろうとも、同一材質の組み合わせでは焼き付きが起こりやすく不適当である。硬度比が1.4以下が適切であるという理由は、以下による。すなわち硬度が大きい炭化物皮膜と、それよりも硬度が小さい炭化物皮膜が互いに摺動する場合、微視的な焼き付きで剥離した硬度大側の炭化物皮膜の一部である脱落粒子が、硬度小側の炭化物皮膜の表面に噛み込まれてしまい、その脱落粒子を噛み込んだ硬度小側の炭化物皮膜が、結果的に硬度大側の炭化物皮膜を摩耗させてしまうといった現象が生じる。このような摩耗現象は、硬度比が1.4を超えると顕著に生じるため、本発明では硬度比を1.4以下と規定した。
【0007】
炭化物皮膜としては、炭化物からなるマトリックス相中に炭化物相が分散してなる複相硬質皮膜が挙げられ、本発明では、この複相硬質皮膜が第1摺動部材と第2摺動部材の少なくとも一方に形成されている形態を特徴とする。
【0008】
また、本発明では、第1摺動部材の炭化物皮膜は炭化物からなる単相硬質皮膜であり、第2摺動部材の炭化物皮膜は炭化物からなるマトリックス相中に炭化物相が分散してなる複相硬質皮膜である形態も特徴する。この場合、第1摺動部材の表面と第2摺動部材の表面との間に潤滑油が介在して摺動する形態とされる。この形態では、第2摺動部材側の複相硬質皮膜においては摩耗しやすい炭化物相が優先的に摩耗し、残存した炭化物の間に凹部が有効なオイルピットとして形成され、その結果良好な摺動性を得ることができる。
【0009】
この形態の具体例としては、第1摺動部材の炭化物皮膜である単相硬質皮膜は、炭化クロムからなり、第2摺動部材の炭化物皮膜である複相硬質皮膜は、炭化クロムからなるマトリックス相中に炭化バナジウム相および/または炭化チタン相が分散してなる形態が挙げられる。これらの硬質皮膜は、拡散浸透処理により各摺動部材の表面に形成することができる。その場合には、硬質皮膜を各摺動部材の表面に対し母材への良好な接着性をもって被覆させることができ、その結果として各硬質皮膜は各摺動部材に強固に固着し、剥離するおそれがない。
【0010】
なお、以下の説明中、炭化クロムからなる第1摺動部材側の単相硬質皮膜を「CrC」、炭化バナジウムを「VC」、炭化チタンを「TiC」、第2摺動部材側のCrCからなるマトリックス相中にVCが分散している複相硬質皮膜を「CrVC」、第2摺動部材側のCrCからなるマトリックス相中にTiCが分散している複相硬質皮膜を「CrTiC」と表記する場合がある。
【0011】
上記のように第1摺動部材側の単相硬質皮膜と、第2摺動部材側の複相硬質皮膜のマトリックス相とに、CrCを用いることは、次の理由により好ましい。すなわち、CrC以外ではVCやTiCなどが考えられるが、これらでは母材との界面で剥離が生じやすく、またそれらの拡散浸透処理温度は比較的高温(900℃以上)であるため、処理後に母材の鋼が劣化しやすいといった不都合な点がある。その点、CrCの拡散浸透処理は900℃以下で可能であって母材への接着性が良好な特性を有し、さらに硬さが比較的高いといった利点がある。
【0012】
また、上記のように第1摺動部材の表面をCrCの単相硬質皮膜とし、第2摺動部材の表面をCrCからなるマトリックス相中にVC相および/またはTiC相が分散してなる複相硬質皮膜とした形態では、次のような作用を示す。すなわち、第2摺動部材の複相硬質皮膜においてはVCやTiCよりも硬度が低いCrCからなるマトリックス相が優先的に摩耗し、また、摩耗して脱落するCrCはVCやTiCよりも十分に小さいため、VCやTiCは脱落しにくく表面に残留する。したがって第2摺動部材の複相硬質皮膜の表面においては、摩耗したマトリックス相の表面にVCおよび/またはTiC粒子が突出して分散し、VC粒子間、TiC粒子間、またはVC粒子とTiC粒子との間に、凹部が形成された状態となる。この凹部が潤滑油を保持するオイルピットとなり、潤滑性が格段に向上する。その結果、高い潤滑効果を伴って第1摺動部材と第2摺動部材とは相互に摺動し、耐摩耗性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに摺動する摺動部材の表面に形成する炭化物皮膜の硬度比を適切な値に規定することによって、耐摩耗性の一層の向上が図られ、高強度部材に好適であるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明が適用された一実施形態のサイレントチェーンの一部を示している。このチェーンは、複数列に並んだリンク10がピン20によって連結された構成である。リンク10は、内側のリンク11と、隣接する内側リンク11にわたる外側のリンクプレート12がある。ピン20は、リンク10に対し相対回転自在に組み込まれている。このサイレントチェーンにおいては、リンク10が本発明の第1摺動部材、ピン20が本発明の第2摺動部材に該当する。
【0015】
このサイレントチェーンは図示せぬ駆動スプロケットと従動スプロケットとに架け渡され、駆動スプロケットの動力を従動スプロケットに伝達する。作動状態においては、特に各スプロケットを通過する屈曲部分のところで、リンク10とピン20とは、相互に強い荷重がかかって摩耗が生じやすい。本実施形態のサイレントチェーンは、車両用の駆動チェーン、例えばカムシャフト駆動用、オイルポンプ駆動用、バランサシャフト駆動用等のチェーンに適用される。
【0016】
上記リンク10およびピン20は、母材となる炭素鋼または合金鋼等の適宜な鋼の表面に、次の硬質皮膜が形成されている。すなわちリンク10の表面には、炭化クロムからなる単相硬質皮膜:CrCが表面に形成されている。一方、ピン20の表面には、炭化クロム(CrC)からなるマトリックス相中に該マトリックス相の粒径と同じかそれ以上の大きさの炭化バナジウム(VC)粒子が分散してなる複相硬質皮膜:CrVCが形成されている。このように表面が硬質とされたリンク10とピン20との材質的な組み合わせを、ここでは「CrC−CrVC」と表す。
【0017】
なお、本発明では、第2摺動部材(ここではピン20)の複相硬質皮膜は、炭化クロム(CrC)からなるマトリックス相中に該マトリックス相の粒径と同じかそれ以上の大きさの炭化チタン(TiC)粒子が分散してなるCrTiCの場合も含む。この場合の第1摺動部材と第2摺動部材との組み合わせは、「CrC−CrTiC」と表される。さらに複相硬質皮膜のマトリックス相中に分散する炭化物粒子としては、VCとTiCの両方が混合した形態であってもよい。
【0018】
リンク10とピン20とが摺動する際には、リンク10の単相硬質皮膜CrCとピン20の複相硬質皮膜CrVCとが、間に潤滑油が介在した状態で相互に摺動する。ここで、複相硬質皮膜CrVCにおいてはCrCからなるマトリックス相が優先的に摩耗し、また、脱落するCrC粒子はVC粒子よりも十分に小さいため、VC粒子は脱落しにくく表面に残留する。したがって複相硬質皮膜CrVCの表面においては摩耗したマトリックス相CrCの表面にVC粒子が突出して分散し、VC粒子間に凹部が形成された状態となる。この凹部が潤滑油を保持するオイルピットとなり、潤滑性が格段に向上する。
【0019】
図2は、ピン20の表面の複相硬質皮膜CrVCに相手材(単相硬質皮膜:CrC)が摺動して潤滑効果を得るメカニズムを示している。図の左側は摺動初期で、複相硬質皮膜のCrC粒子が摩耗により脱落している。CrC粒子は比較的柔らかく、かつ小径であることから摩耗系外に容易に排出される。摺動がある程度経過すると、複相硬質皮膜の表面においては摩耗したマトリックス相CrCの表面にVC粒子が突出して分散した状態になるとともに、VC粒子間に凹部が形成された状態となる。この凹部が潤滑油を保持するオイルピットとなり、潤滑性が格段に向上するものとなる。図2では相手材がCrCであるが、相手材は母材である鋼:Feの場合もこの作用は同様に発生する。
【0020】
リンクの表面に形成する単相硬質皮膜CrCおよびピンの表面に形成する複相硬質皮膜CrVCの形成方法としては、以下のような拡散浸透処理が挙げられる。リンク表面に形成するCrCは、拡散浸透処理剤としてクロム含有粉末(例えば金属クロム)、焼結防止材(例えばアルミナ:Al2O3)および促進剤(例えば塩化アンモニウム:NH4Cl等のハロゲン化物)の3種類の処理剤を充填した炉内にリンクを装入し、850〜900℃で加熱処理することにより形成することができる。一方、ピン表面に形成するCrVCは、拡散浸透処理剤として、上記3種類の処理剤にVC粒子を混合したものを炉内に充填し、炉内に装入したピンを950〜1050℃で加熱処理することにより形成することができる。
【0021】
ピンは高炭素鋼であり、CrCとVCの接合強度の向上とピンの耐久性向上を目的として、従来よりもCrVC皮膜を厚くするために、比較的処理温度が高めに設定される。一方、リンクは中炭素鋼であり、900℃以上で加熱されると素材の劣化を招くため、処理温度はピンの処理温度よりも低く設定されるが、850℃以下では耐久性が確保される厚さの皮膜が得られないため、処理温度は上記温度とされる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を具体化した実施例を挙げて本発明の効果を実証する。
[1]摩耗試験1
図3のグラフの右に示す表面硬化処理がなされたピンとリンクとの組み合わせF〜Iでローラチェーンを試験的に作製して作動させ、ピンとリンクそれぞれ、および両者を併せた総摩耗量を調べた。ここでのオーステンパーは、靱性、耐摩耗性、耐衝撃性を向上させるとともに歪みや寸法変化を少なくするための周知のオーステンパー処理がされた鋼である。オーステンパー処理は、鋼材を無酸化雰囲気中で800〜900℃の温度に上げ、250〜400℃の塩浴に恒温焼入れする処理である。
【0023】
ローラチェーンの作動条件は、両端のスプロケット歯数:18T×36T、スプロケット回転数:18T側が8000rpm、チェーン張力:186kgf、潤滑油:10W−30にコンタミ油0.73%添加、潤滑油量:1リットル/min 潤滑油温:80〜90℃とした。図3のグラフによれば、総摩耗量の観点から硬度比は小さい方がよいことが判った。
【0024】
[2]焼き付き試験
図4に示すように、リンク材にピン材を荷重をかけながら往復摺動させ、相互の接触面圧と摩擦荷重を調べるとともに、焼き付き限界を調べる焼き付き試験を行った。この試験に供した試料の組み合わせ「第1の摺動部材であるリンク材(単相硬質皮膜の材質)−第2の摺動部材であるピン材(複相硬質皮膜の材質)」は、以下のA〜Eの5種類である。なお、以下の説明での「硬度比」は「ピン材の硬度/リンク材の硬度」を言う。
【0025】
A: CrC−CrTiC 硬度比1.4(本発明に相当)
(ピン側のCrTiCは炭化クロムからなるマトリックス相中に該マトリックス相の粒径と同じかそれ以上の大きさの炭化チタン粒子が分散してなる複相硬質皮膜)
B: CrC−CrVC 硬度比1.2(本発明に相当)
(ピン側のCrVCは炭化クロムからなるマトリックス相中に該マトリックス相の粒径と同じかそれ以上の大きさの炭化バナジウム粒子が分散してなる複相硬質皮膜)
C: CrC−VC 硬度比1.4 (本発明に相当)
(ピン側のVCは炭化バナジウムからなる単相硬質皮膜が表面に形成されている)
D:CrC−CrC 硬度比1 (本発明外の比較例)
(硬度比は本発明に一致するが同じ材質同士)
E:Fe−VC 硬度比4.4 (本発明外の比較例)
(リンク側は鋼:Feで硬質皮膜なし)
【0026】
焼き付き試験は、摺動速度:0.53m/sec、1回の摺動ストロークを20mmとし、摺動サイクル(往復回数)が5000回になるごとに荷重を10kgずつ増やして測定値を得ながら、摺動不可能となる焼き付きが起こるまで続けた。また、リンク材とピン材の間には、低粘度油(5W−20 100℃相当)を充填しながら摺動させた。
【0027】
図5は、リンク材とピン材の組み合わせが上記A〜Eで行った焼き付き試験の結果であって、接触面圧と摩擦荷重との関係を示しており、図中の上向き矢印(↑)は焼き付きが起こったことを示している。また、図6はA〜Eの焼き付き時の荷重を示している。これらの結果によると、本発明のCrC−CrVCの組み合わせ(上記B)が最も高い接触面圧を示した。また、その際の摩擦荷重は特に高いものではなく、焼き付き荷重すなわち焼き付きになってしまう限界が最も高いことが判る。また、本発明のCrC−CrTiCの組み合わせ(上記A)では、焼き付き荷重および接触面圧がCrC−CrVCの次に高く、焼き付き防止に効果的であることが判った。これらA,Bでは、いずれもピン側の複相硬質皮膜において摩耗しやすい炭化物粒子(VCおよびTiC)が優先的に摩耗し、残存した炭化物粒子の間に凹部が有効なオイルピットとして形成され、その結果良好な摺動性が得られたと推測された。また、本発明のCrC−VCの組み合わせ(上記C)は単相硬質皮膜同士の摺動であり、一方が複相硬質皮膜の上記A,Bの場合よりは摺動性が低かったが、硬度比が1.4であるため、比較例(D,E)よりは高いレベルで摺動性が確保されていた。
【0028】
一方、CrC−CrCの場合(上記D)は、硬度比が1であるものの同じ材質同士であること、また、Fe−VCでは硬度比が4.4と大きすぎることがそれぞれ原因で、いずれも焼き付き荷重は低く摺動性に劣っていることが判った。
【0029】
[3]摩耗試験2
図7に示す2種類の組み合わせの表面硬化処理がなされたリンク材(第1摺動部材)とピン材(第2摺動部材)との組み合わせでサイレントチェーンを試験的に作製して作動させ、リンク材とピン材それぞれ、および両者を併せた総摩耗量を調べた。なお、組み合わせは、リンク材−ピン材が、「Fe−CrVC」と「CrC−CrVC(本発明)」である。チェーンの作動条件は、両端のスプロケット歯数:18T×36T、スプロケット回転数:18T側が8000rpm、チェーン張力:186kgf、潤滑油:10W−30にコンタミ油0.9%添加、潤滑油量:1リットル/min 潤滑油温:80〜90℃とし、50時間作動させた。
【0030】
サイレントチェーンでの摩耗試験結果を示した図7のグラフによっても、硬度比が小さいと摩耗が少ないことが判り、特に本発明のリンク材の表面がCrC、ピンの表面がCrVCである「CrC−CrVC」の組み合わせは摩耗が少ないことが顕著であった。
【0031】
また、図7に示すFe−CrVC(リンク材がFe、ピン材がCrVCで表面硬質化)のチェーンと、本発明のCrC−CrVCのチェーンの摩耗状態を、それぞれ図8および図9の写真に示す。Fe−CrVCの組み合わせでは、(a)のピン材、(b)のリンク材とも周方向に筋が明確に刻まれており、カジリが起こったことが認められた。一方、本発明のCrC−CrVCの組み合わせでは、(a)のピン材、(b)のリンク材とも表面に損傷はなく、摺動面は鏡面状態になっており、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用された一実施形態のサイレントチェーンの一部を示す断面図である。
【図2】第2摺動部材の複相硬質皮膜CrVCに相手材(第1摺動部材:CrC)が摺動して潤滑効果を得るメカニズムを模式的に示す図である。
【図3】実施例で行った摩耗試験1の結果を示すグラフである。
【図4】実施例で行った焼き付き試験の方法を示す斜視図である。
【図5】同焼き付き試験の結果を示す折れ線グラフである。
【図6】実施例で行った焼き付き試験の結果を示す棒グラフである。
【図7】実施例で行った摩耗試験2の結果を示すグラフである。
【図8】ピン材とリンク材との組み合わせが本発明外の場合の摩耗状態を示す写真であって、(a)はピン材、(b)はリンク材の摺動面である。
【図9】ピン材とリンク材との組み合わせが本発明の場合の摩耗状態を示す写真であって、(a)はピン材、(b)はリンク材の摺動面である。
【符号の説明】
【0033】
10…リンク(第1摺動部材)
20…ピン(第2摺動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の第1摺動部材と第2摺動部材とが相互に荷重がかかった状態で相互に摺動する摺動部品であって、
前記第1摺動部材および前記第2摺動部材の各表面には互いに異なる炭化物からなる皮膜が形成されており、
これら炭化物皮膜の硬度比が1.4以下であることを特徴とする摺動部品。
【請求項2】
前記第1摺動部材の前記炭化物皮膜と前記第2摺動部材の炭化物皮膜の少なくとも一方が、炭化物からなるマトリックス相中に炭化物相が分散してなる複相硬質皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記第1摺動部材の炭化物皮膜は炭化物からなる単相硬質皮膜であり、
前記第2摺動部材の炭化物皮膜は炭化物からなるマトリックス相中に炭化物相が分散してなる複相硬質皮膜であり、
第1摺動部材の表面と第2摺動部材の表面との間に、潤滑油が介在することを特徴とする請求項2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記第1摺動部材の炭化物皮膜である前記単相硬質皮膜は、炭化クロムからなり、
前記第2摺動部材の炭化物皮膜である前記複相硬質皮膜は、炭化クロムからなるマトリックス相中に炭化バナジウム相および/または炭化チタン相が分散してなることを特徴とする請求項3に記載の摺動部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate