説明

撚り合わせロープのスプライス方法

本発明は、少なくとも2本のストランドを含む撚り合わせロープ構造においてスプライスを作る方法に関する。この方法では、a)第1のロープ端部の一端を、それぞれ第1の本数のストランドと第2の本数のストランドを含む、第1の部分と第2の部分に分割する。第1の本数のストランドは、第2の本数のストランドより多くても1本多い。b)第1の部分を、一方の側から第2のロープの開口部内に差し込む。開口部は、一方の側に第2のロープの第1の本数のストランドを有し、他方の側に第2の本数のストランドを有し、第1の本数と第2の本数の差は多くても1本である。c)第2の部分を、他方の側から第2のロープの開口部内に差し込む。d)ステップb)およびステップc)を、それぞれ少なくとも3回および少なくとも3+1回繰返す。これにより、第2のロープのそれぞれの開口部は、第1の部分と第2の部分が第2のロープの少なくともすべてのストランドを一回横切っており、第1の部分と第2の部分がそれぞれの最後の開口部で第2のロープから離れるように分離されている。本発明は、さらに、アイを持つロープ、グラメット、ホーサー、ラウンドスリング、またはエンドレスロープなど、この新しいスプライスを含む撚り合わせロープ構造に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも2本のストランドを含む撚り合わせロープ(laid rope)構造においてスプライス(splice:接合部)を作る方法に関し、前記方法によって得ることができる新規な接合ロープ構造に関する。
【0002】
スプライスは、とりわけ、ロープ、グラメット、ホーサーおよびラウンドスリング用のアイスプライスおよび末端間スプライスで用いられる。スプライスは、エンドレスロープの製造においても用いられる。
【0003】
撚り合わせロープにスプライスを作る方法は、「Barbara Merryのスプライスハンドブック(The Splicing Handbook of Barbara Merry)」、ISBN 0−07−135438−7で公知である。ここでは、ロープを1本1本のストランドに分割し、アイスプライスの場合は、この1本1本のストランドをこのロープの別の部分に差し込むことによって、あるいは2本のロープを互いに接続する場合は、この1本1本のストランドを別のロープに差し込むことによって、スプライスを作る。公知の方法では、通常すべての構成ストランドを個々に別のロープに差し込むか、アイを作るために同一ロープの別の部分に差し込む。
【0004】
公知のスプライスを用いてロープに作られた接続の強度は、元のロープの強度より低い。これは、公知のスプライスの強度保持(スプライスの強度と元のロープの強度の比であり、以下「効率」と呼ぶ)が100%より低いことを意味する。
【0005】
本発明は、少なくともストランドの2本のロープを有する撚り合わせロープ構造においてスプライスを作る方法を提供することを目的とするものである。この方法により、スプライスの効率は公知のスプライスより高くなる。
【0006】
この目的は、次のステップを含む方法により達成される。
a)第1のロープ端部の一端を、それぞれ第1の本数のストランドと第2の本数のストランドを含む、第1の部分と第2の部分に分割するステップであって、前記第1の本数のストランドが、前記第2の本数のストランドより多くても1本多いとした、ステップと、
b)前記第1の部分を、一方の側から第2のロープの開口部内に差し込む(tuck)ステップであって、前記開口部が、一方の側に前記第2のロープの第1の本数のストランドを有し、他方の側に第2の本数のストランドを有し、前記第1の本数と第2の本数の差が多くても1本であるとした、ステップと、
c)前記第2の部分を、他方の側から前記第2のロープの前記開口部内に差し込むステップと、
d)ステップb)およびステップc)を、それぞれ少なくとも3回および少なくとも3+1回繰返すステップであって、これにより、前記第2のロープのそれぞれの開口部が、前記第1の部分と第2の部分が前記第2のロープの少なくともすべてのストランドを一回横切り、前記第1の部分と第2の部分がそれぞれの最後の開口部で前記第2のロープから離れるように分離される、ステップ。
【0007】
本発明の方法を用いると、驚くべきことに、効率が公知のスプライスより高いことが見出された。
【0008】
本発明は、少なくとも2本のストランドを有する撚り合わせロープ構造においてスプライスを作る方法を提供する。2本のストランドしか含まないロープは、それ自体は一般に使用されないが、より大きなロープ構造の一部を形成することができ、この構造においてスプライスを用いて接続することができる。一般にロープがより対称的なので、撚り合わせロープは少なくとも3本のストランドを含むことが好ましい。好ましい実施形態では、ロープは3本、4本、または6本のストランドを含む。
【0009】
本発明の方法では、第1のロープの一端を、それぞれ第1のストランド本数と第2のストランド本数を含む、第1の部分と第2の部分に分割する。第1の部分のストランド本数は、第2の部分のストランド本数に対して、多くても1本だけである。これは、ストランド3本のロープの場合は、2本のストランドを持つ第1の部分と、1本のストランドしか持たない第2の部分とに分割されることを意味する。ストランド4本のロープはストランド2本の2つの部分に分割され、ストランド6本のロープはストランド3本の2つの部分に分割される。
【0010】
本発明の方法では、第1の部分を、一方の側から第2のロープの開口部内に押し込む。この開口部は、一方の側に第2のロープの第1の本数のストランドを有し、他方の側に第2の本数のストランドを有する。この第1の本数と第2の本数の差は多くても1本である。本出願の第2のロープとは、2本のロープを互いに接続する場合の第2のロープまたは別のロープを意味するだけではなく、アイを作る場合の第1のロープの他の部分をも意味する。第2のロープは、ラウンドスリングまたはグラメットを作る場合の第1のロープの他端とすることもできる。一般に、第1のロープと第2のロープのストランド本数は同一である。
【0011】
第1のロープと第2のロープのストランドがそれぞれ3本の場合は、前記開口部の一方の側にはストランドが2本あり、他方の側にはストランドが1本ある。第1のロープと第2のロープのストランドが4本または6本の場合は、前記開口部の両側にストランドがそれぞれ2本または3本ある。
【0012】
本発明の方法では、第2の部分を、他の側から第2のロープの同じ開口部に差し込む。これは、第1のロープの両方の部分を、第2のロープの開口部を通して異なる方向に差し込むことを意味する。
【0013】
本発明の方法では、ステップb)およびステップc)を少なくとも3回繰返す。これにより、それぞれの開口部は、第1の部分と第2の部分が第2のロープの少なくともすべてのストランドを一回横切っており、第1の部分と第2の部分がそれぞれの最後の開口部で第2のロープから離れるように分離される。ステップb)とステップc)を繰返す順序は、得られるスプライスの効率には重要でない。初めに第1の部分を数回差し入れ、次いでもう一方の部分を差し入れるのが、時間を短縮できるので有利であろう。
【0014】
スプライスをより良いより密な構造とするために、ステップb)およびステップc)の後毎回、両方の部分を引っ張ってから次のステップに進むことが好ましい。
【0015】
第1の部分を少なくとも3回、第2の部分を少なくとも3+1回差し込んだ後、スプライスを先細にすることができる。少なくとも3+1回とは、2つの部分の先細化が同じ場所で始まることを避けるために、第2の部分は、第1の部分より少なくとも1回多く差し込むことを意味する。
【0016】
先細化は、第1のロープの第1の部分および第2の部分の半分または1/3を切り離し、ステップb)およびステップc)をさらに3回または4回続けることによって行うことができる。この先細化のプロセスは、残りの第1部分および第2の部分が完全に切り離されるまで繰返すことができる。
【0017】
スプライスは、
e)最後の開口部を離れる部分で第1の部分および第2から、完全なストランドを切り離すステップと、
f)ステップb)とステップc)を少なくとも3回繰返すステップと、
g)最後のストランド1本のロープが切り離されるまで、ステップe)とステップf)を繰返すステップによって、先細にすることが好ましい。
【0018】
先細化ステップを含む本発明の方法の有利な点は、特にストランド多数本のロープ構造においてスプライスを作る場合、ストランド1本のロープの糸の半分または1/3を見つけるより、それぞれストランド3本のロープ2本からなる部分の半分または1/3を決める方が易しいことである。
【0019】
本発明の方法について上に説明したステップの順序は、ロープにアイを作るのに特に適している。この場合、必要に応じてシンブルを使用して、その周りにアイを作ることができる。2本のロープを、即ち同じロープまたは2本の異なるロープからの2つの端部を、接続する場合、第2のロープの端部または尾部に、この同じステップの順序を繰返すことが好ましい。第2のロープの端部を第1のロープに差し込むことにより、最良の接続が作られる。
【0020】
本発明の方法で使用されるロープは、ヤーン用に一般に使用される、天然または合成の任意の材料から作ることができる。少なくとも2本のストランドを有するロープに使用される合成材料の例としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエチレン、および高分子量ポリエチレンが挙げられる。
【0021】
本発明の方法のその他の有利な点は、この方法を用いると、公知の方法よりはるかに速くスプライスを作ることができることである。この利点は、ストランド多数本のロープに特に適しており、特に高分子量線上ポリエチレンの高延伸繊維から製造されるロープに適している。この材料から作られる繊維やロープの摩擦係数が小さいために、高い効率を得るには、一般に比較的差し込み数(タック数)の多いスプライス、例えば差し込みが少なくとも9回のスプライスが必要となる。コーティングを施した高分子量ポリエチレンロープを使うことによって、高い効率を得るために必要な差し込み数を約7回に下げることができる。公知のスプライスと比較して、本発明のスプライスは、差し込み回数がこの程度であり、より速く作製できるという利点と合わせると、本発明の方法を、高分子量線状ポリエチレンの高延伸繊維を含むロープで用いることが好ましい。本明細書では、高分子量とは、少なくとも400,000g/モルの重量平均分子量(又はモル質量)を意味する。
【0022】
本明細書では、線状ポリエチレンとは、炭素原子100個当り1個未満の側鎖または分枝を意味し、好ましくは炭素原子300個当り1個未満の側鎖を意味する。側鎖は、少なくとも10個の炭素原子を含むものである。このポリエチレンは、これと共重合できる5モル%までの1種または複数種のアルケン、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテンまたはオクテンなども含むことができる。
【0023】
例えば英国特許出願公開第2042414号明細書、英国特許出願公開第2051667号明細書、または国際公開第01/73173号パンフレットに記載の、ゲル紡糸法で作製されたポリエチレンフィラメントからなるポリエチレン繊維を使用することが好ましい。この方法は、主として、極限粘度の高いポリオレフィン溶液を調製するステップと、この溶液を溶解温度を超える温度でフィラメントに紡糸するステップと、このフィラメントをこの溶液のゲル化温度未満の温度で冷却してゲル化を起こすステップと、溶媒の除去前、除去中、または除去後にこのフィラメントを延伸するステップとを含む。
【0024】
本発明は、さらに、本発明の方法によって得ることができるスプライスロープ構造に関し、ロープにアイを作るための、ならびにロープ、グラメット、ホーサー、ラウンドスリング、またはエンドレスロープでの末端間スプライス(end-for-end splices)のための、このスプライス方法の使用に関する。
【0025】
本発明は、さらに、本発明に従ってスプライスしたロープ構造、例えばグラメット、ホーサー、ラウンドスリング、またはエンドレスロープに関する。
【0026】
さらに、以下の実施例、比較例によって本発明を説明する。これらの実施例、比較例は、高分子量線状ポリエチレン高延伸繊維(オランダ国、DSM High Performance Fibers製のDyneema(登録商標)SK75)からなる、ストランド3本の撚り合わせロープを用いて行われた。この繊維の構造は、3×24×1/1760dTex、39g/m、および撚り長さ62mmであった。
【0027】
ロープには、乾燥後ロープが(ロープ重量に対して)16質量%のコーティング材料を含むように、Lago(ベルギー国、GOVI製)/水混合物(Lago1重量部と水2重量部)を塗布した。
【0028】
ボラード間長さ210cmのロープに4000Nの予備的応力をかけ、100トンのZwick引張り試験機を用いて速度150mm/分で引張り試験を行った。
【0029】
(実施例I)
上記構造の2本のロープに、差し込み(タック)6回で、差し込み3回毎に2工程で先細にして(以下、6/3/3スプライスと呼ぶ)、末端間スプライスを作った。本発明に従ってスプライスを作る時間は、2×5分であった。引張り強度は76.4kNであった。これは効率100%である。
【0030】
(実施例II)
上記構造のロープと、本発明の(8/3/3)スプライスを用いて単一のラウンドスリングを作った。引張り強度は2×74.8kNであった。これは効率98%に相当する。
【0031】
(実施例III)
本発明のスプライスを用いて、2つのアイスプライス(6/3/3)と、中間に1つの末端間スプライス(8/3/3)を有する上記構造のロープを作った。この構造の引張り強度は74.5kNであった。これは効率97%に相当する。
【0032】
(比較例A)
上記構造の2本のロープに、差し込み6回で、差し込み3回毎に2工程で先細にして、末端間スプライスを作った。しかし、「Barbara Merryのスプライスハンドブック(The Splicing Handbook of Barbara Merry)(ISBN 0−07−135438−7)」に記載の従来技術によるスプライス方法を用いた。本発明に従ってスプライスを作る時間は、2×20分であった。引張り強度は71.3kNであった。これは効率93%である。
【0033】
(比較例B)
比較例Aに記載の従来技術に従って、差し込み8回で、差し込み3回毎に2工程で先細にしたスプライスを用いて実施例IIを繰返した。このスプライスの強度は71.4kNであった。これは効率93%に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のストランドを含む撚り合わせロープ構造にスプライスを作る方法であって、
a)第1のロープ端部の一端を、それぞれ第1の本数のストランドと第2の本数のストランドを含む、第1の部分と第2の部分に分割するステップであって、前記第1の本数のストランドが、前記第2の本数のストランドより多くても1本多いとした、ステップと、
b)前記第1の部分を、一方の側から第2のロープの開口部内に差し込むステップであって、前記開口部が、一方の側に前記第2のロープの第1の本数のストランドを有し、他方の側に第2の本数のストランドを有し、前記第1の本数と第2の本数の差が多くても1本であるとした、ステップと、
c)前記第2の部分を、他方の側から前記第2のロープの前記開口部内に差し込むステップと、
d)ステップb)およびステップc)を、それぞれ少なくとも3回および少なくとも3+1回繰返すステップであって、これにより、前記第2のロープのそれぞれの開口部が、前記第1の部分と第2の部分が前記第2のロープの少なくともすべてのストランドを一回横切り、前記第1の部分と第2の部分がそれぞれの最後の開口部で前記第2のロープから離れるように分離される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記撚り合わせロープ構造が少なくとも3本のストランドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e)前記最後の開口部を離れる部分で、前記第1の部分および前記第2から、完全なストランドを切断するステップと、
f)ステップb)とステップc)を少なくとも3回繰返すステップと、
g)最後のストランドが切り離されるまで、ステップe)とステップf)を繰返すステップと
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項の方法によって得られる撚り合わせロープ構造。
【請求項5】
アイスプライスおよび/または末端間スプライスを含む、請求項4に記載の撚り合わせロープ構造。
【請求項6】
グラメット、ホーサー、ラウンドスリングまたはエンドレスロープである、請求項4に記載の撚り合わせロープ構造。

【公表番号】特表2006−504879(P2006−504879A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548168(P2004−548168)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000756
【国際公開番号】WO2004/039715
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505220217)デーエスエム アイピー アセッツ ベー. ヴェー. (29)
【Fターム(参考)】