撚線およびその製造方法
【課題】撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、を備えたものである。
【解決手段】不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材として銅を主成分とする撚線およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、電気用銅合金荒引き線を所定の径まで伸線して硬銅線を作製し、作製した硬銅線に焼鈍処理を行って軟銅線を作製する導体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の導体の製造方法は、軟銅線を得るために焼鈍処理が必要であり、この焼鈍処理により、導体の硬さが決定する。また従来の軟銅線の材質は、低コストの観点からタフピッチ銅を使用するのが一般的である。
【0004】
また、従来のCVケーブルには、屈曲特性を備えるべく撚線を使用する。
【0005】
従来の撚線の製造方法は、伸線工程において、所望の線径に伸線した硬銅線を通電アニーラによる通電発熱による焼鈍を行って、軟銅線にしたものを撚線工程で撚線とする。この方法は、軟銅線の製造方法として実用化されている製造方法であり、インラインでの作業が可能となる点で生産性に優れるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−224538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一方で撚線工程における撚線加工時に、軟銅線の加工硬化が進み、所望の軟質性を備えた撚線を得ることができない問題がある。
【0008】
また、撚線のなかには、撚線加工の後に撚線断面形状を整えるために、軽度の圧縮加工を施すものがあるが、この圧縮加工により撚線に加工硬化が加わってしまうことがあり、同様に、所望の軟質性を備えた撚線を得ることができない問題がある。
【0009】
このように、ケーブルが軟質性がない場合、建物内部や屋外での配索をする際に、作業性が非常に悪くなる。やわらかいケーブルであれば、曲げて配索するときにでも、曲げたままの形状を保つことができるが、硬いケーブルを使用した場合は、配索する形状に曲げた場合でも元の真っ直ぐな状態に戻ろうとしてしまうので、配索するために力が必要であるのと、元の形に戻ろうとしたときに、人や物に当ってしまう危険性もあるため、やわらかいケーブルが必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
を備えたことを特徴とする撚線の製造方法である。
【0012】
また本発明は、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
該撚線の外周に樹脂を被覆する被覆工程と、
を備えたことを特徴とする絶縁電線の製造方法である。
【0013】
不可避的不純物を含む銅に添加する添加元素は、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、不可避的不純物を含む銅は、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るケーブルの概略図である。
【図2】従来工法で作製した本発明の実施材1と比較材1の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図3】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材2と比較材2の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図4】従来工法で作製した本発明の実施材3と比較材3の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図5】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材4と比較材4の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図6】従来工法で作製した本発明の実施材5と比較材5の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図7】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材6と比較材6の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明の撚線及びその製造方法を適用したケーブル1の概略図を示したものである。
【0018】
ケーブル1は、導体2、及び複数の導体2から形成された撚線を覆う絶縁体3を有する絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するシース5とを備えて概略構成されている。
【0019】
この撚線からなる導体2の製造方法は、以下の工程で作製される。
【0020】
まず、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように伸線加工を施して硬銅線を作製する(硬銅線作製工程)。
【0021】
次に、硬銅線を撚り合せ、撚線を作製する(撚線工程)。
【0022】
この撚線を焼鈍炉に入れ、軟銅線に変質させる(焼鈍工程)。
【0023】
以上の工程で導体2が作製され、この導体2の外周に樹脂を被覆して絶縁体3を形成して絶縁電線4とされ、さらにその絶縁電線4の外周にシース5が被覆されてケーブル1とされる。
【0024】
次に本実施の形態に係る撚線に使用する導体の構成について説明する。
【0025】
(1)添加元素について
本実施の形態に係るCVケーブルなどに使用する導体は、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅および不可避的不純物である軟質希薄銅合金材料である。
【0026】
添加元素としてTi、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、及びCrからなる群から選択される元素を選択した理由は、これらの元素は他の元素と結合しやすい活性元素であり、Sと結合しやすいためSをトラップすることができ、銅母材(マトリクス)を高純度化し、素材の硬さを低下させることができるためである。添加元素は1種類以上含まれていてもよい。また、合金の性質に悪影響を及ぼすことのないその他の元素及び不純物を合金に含有させることもできる。
【0027】
また、以下に説明する好適な実施の形態においては、酸素含有量が2mass ppmを超え30mass ppm以下が良好であることを説明しているが、添加元素の添加量及びSの含有量によっては、合金の性質を備える範囲において、2mass ppmを超え400mass ppmを含むことができる。
【0028】
(2)組成比率について
本実施の形態に係る撚線は、導電性材料として使用されるものであるため、より導電性が高いものが好まれる。
【0029】
例えば、本実施の形態に係る横巻線は、導電率98%IACS(万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)以上、抵抗率1.7241×10-8Ωmを100%とした場合の導電率)、好ましくは100%IACS以上、より好ましくは102%IACS以上を満足する軟質型銅材としての軟質希薄銅合金材料を用いて構成されるのが好ましい。
【0030】
導電率が98%IACS以上の軟質銅材を得る場合、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜55mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用い、この軟質希薄銅合金材料からワイヤロッド(荒引き線)を製造する。
【0031】
ここで、導電率が100%IACS以上の軟質銅材を得る場合には、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、2〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜37mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いる。
【0032】
また、導電率が102%IACS以上の軟質銅材を得る場合には、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜25mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いる。
【0033】
通常、純銅の工業的製造において、電気銅を製造する際に硫黄が銅の中に取り込まれるので、硫黄を3mass ppm以下にすることは困難である。汎用電気銅の硫黄濃度の上限は、12mass ppmである。
【0034】
2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素を含有していることから、この実施の形態では、いわゆる低酸素銅(LOC)を対象としている。
【0035】
酸素濃度が低い場合、撚線に使用する導体の硬度が低下しにくいので、酸素濃度は2mass ppmを超える量に制御する。また、酸素濃度が高い場合、熱間圧延工程で導体の表面に傷が生じやすくなるので、30mass ppm以下に制御する。
【0036】
(3)分散している物質について
本実施の形態に係るCVケーブル、横巻線等に使用する導体内に分散している分散粒子のサイズは小さいことが好ましく、また、導体内に分散粒子が多く分散していることが好ましい。その理由は、分散粒子は、硫黄の析出サイトとしての機能を有するからであり、析出サイトとしてはサイズが小さく、数が多いことが要求され、ひいては分散粒子の形成及び分散粒子への硫黄の析出は、銅母材のマトリックスの純度を向上させ、材料硬さの低減に寄与するからである。
【0037】
具体的には、 導体に含まれる硫黄及びチタンは、TiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物又はTiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物の凝集物として含まれ、残部のTi及びSが固溶体として含まれる。
【0038】
(4)撚線加工前の導体の性質について
硬銅線を使用する。この硬銅線としては、加工度では50%以上またはビッカース硬度では110以上のものが望ましい。このように加工度又はビッカース硬度を規定したのは、この数値を下回るものでは撚線加工後の熱処理による導体の軟質化を効果的に享受することができないためである。
【0039】
(5)本発明に係る撚線について
撚線は、ビッカース硬度70以下、好ましくは60以下のものが望ましい。このように規定した理由は、ビッカース硬度がこの数値を上回るとケーブルとしての軟質特性が不十分であり、ケーブル配索時に不都合が生じる可能性があるためである。
【0040】
次に、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の製造方法を説明する。
【0041】
本実施の形態に係る撚線に使用する導体の製造方法は以下のとおりである。例として、Tiを添加元素に選択した場合を説明する。
【0042】
まず、撚線の原料としてのTiを含む軟質希薄銅合金材料を準備する(原料準備工程)。
【0043】
次に、この軟質希薄銅合金材料を1100℃以上1320℃以下の溶銅温度で溶湯にする(溶湯製造工程)。
【0044】
次に、溶湯からワイヤロッドを作製する(ワイヤロッド作製工程)。続いて、ワイヤロッドに880℃以下550℃以上の温度で熱間圧延を施す(熱間圧延工程)。
【0045】
更に、熱間圧延工程を経たワイヤロッドに伸線加工および熱処理を施す(伸線加工、熱処理工程)。
【0046】
熱処理方法としては、管状炉を用いた走行焼鈍や、抵抗発熱を利用した通電焼鈍などが適用できる。その他、バッチ式の焼鈍も可能である。これにより、本実施の形態に係る撚線に使用する導体が製造される。
【0047】
また、この導体の製造には、上述した2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いるのが好ましい。
【0048】
そこで、本発明者は、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の硬度の低下と、この導体の導電率の向上とを実現すべく、以下の二つの方策を検討した。
【0049】
そして、以下の二つの方策を銅ワイヤロッドの製造に併せ用いることで、本実施の形態に係る撚線に使用する導体を得た。
【0050】
まず、第1の方策は、酸素濃度が2mass ppmを超える量のCuに、チタン(Ti)を添加した状態で、Cuの溶湯を作製することである。この溶湯中においては、TiSとチタンの酸化物(例えば、TiO2)とTi−O−S粒子とが形成されると考えられる。
【0051】
次に、第2の方策は、銅中に転位を導入することにより硫黄(S)の析出を容易にすることを目的として、熱間圧延工程における温度を通常の銅の製造条件における温度(つまり、950℃〜600℃)より低い温度(880℃〜550℃)に設定することである。このような温度設定により、転位上へのSの析出、又はチタンの酸化物(例えば、TiO2)を核としてSを析出させることができる。
【0052】
以上の第1の方策及び第2の方策により、銅に含まれる硫黄が晶出すると共に析出するので、所望の軟質特性と所望の導電率とを有する銅ワイヤロッドを冷間伸線加工後に得ることができる。
【0053】
本実施の形態に係る撚線に使用する導体は、SCR連続鋳造設備を用い、表面の傷が少なく、製造範囲が広く、安定生産が可能である。
【0054】
SCR連続鋳造圧延により、鋳塊ロッドの加工度が90%(30mm)〜99.8%(5mm)でワイヤロッドを作製する。一例として、加工度99.3%でφ8mmのワイヤロッドを製造する条件を採用する。
【0055】
溶解炉内での溶銅温度は1100℃以上1320℃以下に制御することが好ましい。溶銅の温度が高いとブローホールが多くなり、傷が発生すると共に粒子サイズが大きくなる傾向にあるので1320℃以下に制御する。また、1100℃以上に制御する理由は、銅が固まりやすく、製造が安定しないことが理由であるものの、溶銅温度は可能な限り低い温度が望ましい。
【0056】
熱間圧延加工の温度は、最初の圧延ロールにおける温度を880℃以下に制御すると共に、最終圧延ロールでの温度を550℃以上に制御することが好ましい。
【0057】
これらの鋳造条件は、 通常の純銅の製造条件と異なり、溶銅中での硫黄の晶出及び熱間圧延中における硫黄の析出の駆動力である固溶限をより小さくすることを目的としているものである。
【0058】
また、通常の熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて950℃以下、最終圧延ロールにおいて600℃以上であるが、固溶限をより小さくすることを目的として、本実施の形態では、最初の圧延ロールにおいて880℃以下、最終圧延ロールにおいて550℃以上に設定することが望ましい。
【0059】
なお、最終圧延ロールにおける温度を550℃以上に設定する理由は、550℃未満の温度では得られるワイヤロッドの傷が多くなり、製造される導体を製品として扱うことができないからである。熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて880℃以下の温度、最終圧延ロールにおいて550℃以上の温度に制御すると共に、可能な限り低い温度であることが好ましい。このような温度設定にすることで、導体のマトリックスの硬さを、高純度銅(5N以上)の硬さに近づけることができる。
【0060】
ベース材の銅は、シャフト炉で溶解された後、還元状態で樋に流すことが好ましい。すなわち、還元ガス(例えば、CO)雰囲気下において、希薄合金の硫黄濃度、チタン濃度、及び酸素濃度を制御しつつ鋳造すると共に、材料に圧延加工を施すことにより、ワイヤロッドを安定的に製造することが好ましい。なお、銅酸化物が混入すること、及び/又は粒子サイズが所定サイズより大きいことは、製造される導体の品質を低下させる。
【0061】
以上より、タフピッチ銅(TPC)の導体に比してより軟らかい軟質希薄銅合金材料を、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の原料として得ることができる。
【0062】
なお、軟質希薄銅合金材料の表面にめっき層を形成することもできる。更に、軟質希薄銅合金材料の形状は特に限定されず、断面丸形状、棒状、又は平角導体状にすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、SCR連続鋳造圧延法によりワイヤロッドを作製すると共に、熱間圧延にて軟質材を作製したが、双ロール式連続鋳造圧延法又はプロペルチ式連続鋳造圧延法を採用することもできる。
【0064】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る絶縁電線は、生産性が高く、軟化温度に優れており、また、ケーブル完成時において加工硬化が少なく、やわらかい可とう性に優れたものである。また、本実施の形態に係る絶縁電線は、導体の焼鈍工程において消費する電力等のエネルギー費用、焼鈍工程の設備費用、設備メンテナンス費用、焼鈍工程にかかる時間及び人件費等を低減できる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明のケーブルや絶縁電線の導体として用いられる撚線の実施例について説明する。
【0066】
実施例1;
まず、酸素濃度7mass ppm〜8mass ppm、硫黄濃度5mass ppm、チタン濃度13mass ppmを有するφ8mmの銅線(ワイヤロッド、加工度99.3%)を作製した。
【0067】
次に、このワイヤロッドに伸線加工(加工度:89.4%)を施して最終線径(例えばφ2.61mm)にした後、例えば、7本撚りされた撚線を作製し、所定のサイズに仕上げる。次に、焼鈍炉に入れ、所定の温度、時間で軟銅撚線にした後、樹脂で被覆し、絶縁体3を形成する(被覆工程)。
【0068】
この焼鈍工程は、例えば、バッチ式の焼鈍炉で低温で加熱することにより行われる。焼鈍時において、導体2には、焼鈍温度(150℃〜180℃)の熱が加わる。
【0069】
比較例1
比較例1の試料は、原材料としてタフピッチ銅を使用すること以外は、上記実施例と同様に製造した。
【0070】
この実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を用い、従来から実施しているφ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を通電アニーラにて焼鈍して軟銅線にした素線を撚り合わせて撚線を作製し、これを実施材1、比較材1として、各々の熱処理条件で熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を図2に示した。
【0071】
図2から熱処理後でも比較材1、実施材1ともに導体のビッカース硬さは初期状態のものと大差がないことが分かる。
【0072】
次に、実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を用い、本発明の製造方法に基づき、φ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を撚り合わせた撚線を、各々の熱処理条件で熱処理して、実施材2、比較材2とした後のビッカース硬さを測定した結果を図3に示した。
【0073】
図3に示す通り、硬銅線を撚り合わせた撚線を焼鈍したものは、比較材2では、150℃、1hでは変化がなく、180℃、1hの熱処理でようやくビッカース硬さが86HVまでしか低下しないが、実施材2では、150℃、1hでも60HV、180℃、1hでも61HVと十分にやわらかい撚線となっていることが分かる。
【0074】
また、実施材2では、150℃、1hの比較的低温の焼鈍条件において、比較材2に比してより軟質特性の点において顕著な差異が生じるものであり、硬銅線を撚り合わせた後に焼鈍した場合に特に顕著な差異が生じていることがわかる。
【0075】
従来の軟銅線を撚り合せる工程では、撚り合わせたときの加工歪によって、撚線が硬くなってしまうことがあったが、本発明のように、所定の添加元素を添加した銅材料を用い、この硬銅線を撚り合わせてから、撚線を焼鈍することによって、軟質の撚線のままで絶縁体を被覆することが可能となる。
【0076】
次に、シース5(例えばビニールシース、ポリエチレンシース、耐燃性ポリエチレンシース)を押出被覆することでケーブル(絶縁ケーブル)1を作製する。
【0077】
なお、本実施例のケーブルの製造方法は、撚線単芯の絶縁ケーブルに限定されるものではなく、複数の絶縁電線を撚り合わせて、さらにシースを押出することで作製される絶縁ケーブルであってもよい。
【0078】
実施例2;
まず、撚線の製造工程までは、上記の実施例1と同様である。
【0079】
次に、この撚線を走行させながら、管状炉の中を通して、焼鈍を行い撚線を作製して実施材4とした。
【0080】
比較例の試料は、原材料としてタフピッチ銅を使用すること以外は、上記実施材4と同様に製造して比較材4とした。
【0081】
また、実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を、従来実施しているφ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を通電アニーラにて焼鈍して軟銅線にした素線を撚り合わせて撚線を作製し、これを実施材3、比較材3とした後、各々の熱処理条件で熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を図4に示した。
【0082】
図4から熱処理後でも比較材3、実施材3ともに導体のビッカース硬さは初期状態のものと大差がないことが分かる。
【0083】
これに対して、実施材4、比較材4は、上述のように、φ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を撚り合わせた撚線を熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を示したものである。
【0084】
図5に示す通り、硬銅線を撚り合わせた撚線を焼鈍したものは、比較材4では、76HVまでしか低下しないが、実施材4では、61HVまで低下して十分にやわらかい導体になっていることが分かる。
【0085】
上記の実施例2においても、上記実施例1と同様の効果が認められ、所定の添加元素を添加した銅材料を用い、この硬銅線を撚り合わせてから、撚線を焼鈍することによって、この焼鈍工程における熱処理により導体2を効果的に軟化させることができる。
【0086】
このため、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線を実現することができる。
【0087】
次に、導体2により撚線を作製し、撚線に樹脂を押出被覆することで絶縁電線4を作製する。次に、絶縁電線4にシース5を押出被覆することでケーブル1を作製する。
【0088】
実施例3;
[軽圧縮錫めっき撚線の実施例]
例えば、0.26mm径の37本の軽圧縮錫めっき撚線の製造例を記す。
【0089】
φ8.0mmまでの製造については実施例1、2と同様に行う。
【0090】
φ8.0mmから伸線して所望の最終線径0.9mm径のものを作製し、この0.9mm径のものに対して溶融錫めっきを行い、その後冷間伸線にて0.26mm径まで伸線する。得られた錫めっき素線を撚線機にて、37本撚り合わせた後、撚線断面形状を断面円形に整える程度の軽度の圧縮加工を施す。これを実施材6とする。
【0091】
通常は、0.9mm径で溶融錫めっきを行って、その後冷間伸線にて0.26mm径まで伸線したものを通電アニーラに通過させることによって、通電による抵抗発熱によって焼鈍を行い0.26mm径の錫めっき軟銅線を得る。これを撚線にして、実施例1と同様の原材料を使用したものを実施材5、タフピッチ銅(TPC)を原材料としたものを比較材5とする。
【0092】
比較材6は、タフピッチ銅(TPC)を原材料として使用すること以外は、実施材6と同様に製造し、0.26mm径の錫めっき軟質銅線材を37本撚り合わせ、軽度の圧縮加工を施したものを用意した。
【0093】
図6は0.26mm径の軟質錫めっき銅線37本を撚線にした比較材5と実施材5の通常工程で製造したものの各温度での1時間熱処理後の横断面のビッカース硬さ試験結果を比較したグラフである。
【0094】
比較材5は、タフピッチ銅(TPC)からなる0.26mm径の錫めっき硬質銅線材を37本撚り合わせたものである。
【0095】
図7は0.26mm径の錫めっき硬質銅線37本を撚線にし、軽度の圧縮加工を施した比較材6と実施材6の各温度での1時間熱処理後のビッカース硬さ試験結果を比較したグラフである。
【0096】
図5から、従来の工法では、実施材5を用いてもビッカース硬さが85(HV)までしか下がらないが、図7の硬質銅線を撚線にした実施材6においては、150℃、1hの熱処理後にビッカース硬さが70(HV)まで低下してやわらかくなる。
【0097】
この材料及び撚線に焼鈍を施すことにより、従来は85(HV)までしか下がらなかった撚線のビッカース硬さが、70(HV)まで低下させることができる。さらには、180℃、1hでは、66(HV)に低下することができ、すなわち、やわらかい撚線とすることが可能となる。
【0098】
以上、上記の実施例1〜3によれば、撚線を作製したときに、加工歪によって加工硬化しても、軟質の撚線のままケーブルとすることができるため、やわらかい絶縁電線又はケーブルを得ることができる。比較材である従来のタフピッチ銅(TPC)を素材とする撚線と比べると、特に硬銅線を撚り合わせた後に同じ温度で焼鈍しても、よりやわらかい撚線を得ることが可能である。
【0099】
これにより、電気代費用が削減できる。すなわち焼鈍工程のための大型アニール装置が必要ない。従って、低コスト設備で導体2に熱を与えることが可能であり、加工硬化の影響が小さいケーブル1を作製することができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態及びその実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0101】
1 ケーブル
2 導体
3 絶縁体
4 絶縁電線
5 シース
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材として銅を主成分とする撚線およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、電気用銅合金荒引き線を所定の径まで伸線して硬銅線を作製し、作製した硬銅線に焼鈍処理を行って軟銅線を作製する導体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の導体の製造方法は、軟銅線を得るために焼鈍処理が必要であり、この焼鈍処理により、導体の硬さが決定する。また従来の軟銅線の材質は、低コストの観点からタフピッチ銅を使用するのが一般的である。
【0004】
また、従来のCVケーブルには、屈曲特性を備えるべく撚線を使用する。
【0005】
従来の撚線の製造方法は、伸線工程において、所望の線径に伸線した硬銅線を通電アニーラによる通電発熱による焼鈍を行って、軟銅線にしたものを撚線工程で撚線とする。この方法は、軟銅線の製造方法として実用化されている製造方法であり、インラインでの作業が可能となる点で生産性に優れるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−224538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一方で撚線工程における撚線加工時に、軟銅線の加工硬化が進み、所望の軟質性を備えた撚線を得ることができない問題がある。
【0008】
また、撚線のなかには、撚線加工の後に撚線断面形状を整えるために、軽度の圧縮加工を施すものがあるが、この圧縮加工により撚線に加工硬化が加わってしまうことがあり、同様に、所望の軟質性を備えた撚線を得ることができない問題がある。
【0009】
このように、ケーブルが軟質性がない場合、建物内部や屋外での配索をする際に、作業性が非常に悪くなる。やわらかいケーブルであれば、曲げて配索するときにでも、曲げたままの形状を保つことができるが、硬いケーブルを使用した場合は、配索する形状に曲げた場合でも元の真っ直ぐな状態に戻ろうとしてしまうので、配索するために力が必要であるのと、元の形に戻ろうとしたときに、人や物に当ってしまう危険性もあるため、やわらかいケーブルが必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
を備えたことを特徴とする撚線の製造方法である。
【0012】
また本発明は、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
該撚線の外周に樹脂を被覆する被覆工程と、
を備えたことを特徴とする絶縁電線の製造方法である。
【0013】
不可避的不純物を含む銅に添加する添加元素は、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、不可避的不純物を含む銅は、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るケーブルの概略図である。
【図2】従来工法で作製した本発明の実施材1と比較材1の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図3】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材2と比較材2の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図4】従来工法で作製した本発明の実施材3と比較材3の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図5】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材4と比較材4の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図6】従来工法で作製した本発明の実施材5と比較材5の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【図7】本発明の製造方法で作製した本発明の実施材6と比較材6の熱処理条件とビッカース硬さの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明の撚線及びその製造方法を適用したケーブル1の概略図を示したものである。
【0018】
ケーブル1は、導体2、及び複数の導体2から形成された撚線を覆う絶縁体3を有する絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するシース5とを備えて概略構成されている。
【0019】
この撚線からなる導体2の製造方法は、以下の工程で作製される。
【0020】
まず、不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように伸線加工を施して硬銅線を作製する(硬銅線作製工程)。
【0021】
次に、硬銅線を撚り合せ、撚線を作製する(撚線工程)。
【0022】
この撚線を焼鈍炉に入れ、軟銅線に変質させる(焼鈍工程)。
【0023】
以上の工程で導体2が作製され、この導体2の外周に樹脂を被覆して絶縁体3を形成して絶縁電線4とされ、さらにその絶縁電線4の外周にシース5が被覆されてケーブル1とされる。
【0024】
次に本実施の形態に係る撚線に使用する導体の構成について説明する。
【0025】
(1)添加元素について
本実施の形態に係るCVケーブルなどに使用する導体は、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅および不可避的不純物である軟質希薄銅合金材料である。
【0026】
添加元素としてTi、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、及びCrからなる群から選択される元素を選択した理由は、これらの元素は他の元素と結合しやすい活性元素であり、Sと結合しやすいためSをトラップすることができ、銅母材(マトリクス)を高純度化し、素材の硬さを低下させることができるためである。添加元素は1種類以上含まれていてもよい。また、合金の性質に悪影響を及ぼすことのないその他の元素及び不純物を合金に含有させることもできる。
【0027】
また、以下に説明する好適な実施の形態においては、酸素含有量が2mass ppmを超え30mass ppm以下が良好であることを説明しているが、添加元素の添加量及びSの含有量によっては、合金の性質を備える範囲において、2mass ppmを超え400mass ppmを含むことができる。
【0028】
(2)組成比率について
本実施の形態に係る撚線は、導電性材料として使用されるものであるため、より導電性が高いものが好まれる。
【0029】
例えば、本実施の形態に係る横巻線は、導電率98%IACS(万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)以上、抵抗率1.7241×10-8Ωmを100%とした場合の導電率)、好ましくは100%IACS以上、より好ましくは102%IACS以上を満足する軟質型銅材としての軟質希薄銅合金材料を用いて構成されるのが好ましい。
【0030】
導電率が98%IACS以上の軟質銅材を得る場合、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜55mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用い、この軟質希薄銅合金材料からワイヤロッド(荒引き線)を製造する。
【0031】
ここで、導電率が100%IACS以上の軟質銅材を得る場合には、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、2〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜37mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いる。
【0032】
また、導電率が102%IACS以上の軟質銅材を得る場合には、不可避的不純物を含む純銅(ベース素材)として、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜25mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いる。
【0033】
通常、純銅の工業的製造において、電気銅を製造する際に硫黄が銅の中に取り込まれるので、硫黄を3mass ppm以下にすることは困難である。汎用電気銅の硫黄濃度の上限は、12mass ppmである。
【0034】
2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素を含有していることから、この実施の形態では、いわゆる低酸素銅(LOC)を対象としている。
【0035】
酸素濃度が低い場合、撚線に使用する導体の硬度が低下しにくいので、酸素濃度は2mass ppmを超える量に制御する。また、酸素濃度が高い場合、熱間圧延工程で導体の表面に傷が生じやすくなるので、30mass ppm以下に制御する。
【0036】
(3)分散している物質について
本実施の形態に係るCVケーブル、横巻線等に使用する導体内に分散している分散粒子のサイズは小さいことが好ましく、また、導体内に分散粒子が多く分散していることが好ましい。その理由は、分散粒子は、硫黄の析出サイトとしての機能を有するからであり、析出サイトとしてはサイズが小さく、数が多いことが要求され、ひいては分散粒子の形成及び分散粒子への硫黄の析出は、銅母材のマトリックスの純度を向上させ、材料硬さの低減に寄与するからである。
【0037】
具体的には、 導体に含まれる硫黄及びチタンは、TiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物又はTiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物の凝集物として含まれ、残部のTi及びSが固溶体として含まれる。
【0038】
(4)撚線加工前の導体の性質について
硬銅線を使用する。この硬銅線としては、加工度では50%以上またはビッカース硬度では110以上のものが望ましい。このように加工度又はビッカース硬度を規定したのは、この数値を下回るものでは撚線加工後の熱処理による導体の軟質化を効果的に享受することができないためである。
【0039】
(5)本発明に係る撚線について
撚線は、ビッカース硬度70以下、好ましくは60以下のものが望ましい。このように規定した理由は、ビッカース硬度がこの数値を上回るとケーブルとしての軟質特性が不十分であり、ケーブル配索時に不都合が生じる可能性があるためである。
【0040】
次に、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の製造方法を説明する。
【0041】
本実施の形態に係る撚線に使用する導体の製造方法は以下のとおりである。例として、Tiを添加元素に選択した場合を説明する。
【0042】
まず、撚線の原料としてのTiを含む軟質希薄銅合金材料を準備する(原料準備工程)。
【0043】
次に、この軟質希薄銅合金材料を1100℃以上1320℃以下の溶銅温度で溶湯にする(溶湯製造工程)。
【0044】
次に、溶湯からワイヤロッドを作製する(ワイヤロッド作製工程)。続いて、ワイヤロッドに880℃以下550℃以上の温度で熱間圧延を施す(熱間圧延工程)。
【0045】
更に、熱間圧延工程を経たワイヤロッドに伸線加工および熱処理を施す(伸線加工、熱処理工程)。
【0046】
熱処理方法としては、管状炉を用いた走行焼鈍や、抵抗発熱を利用した通電焼鈍などが適用できる。その他、バッチ式の焼鈍も可能である。これにより、本実施の形態に係る撚線に使用する導体が製造される。
【0047】
また、この導体の製造には、上述した2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いるのが好ましい。
【0048】
そこで、本発明者は、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の硬度の低下と、この導体の導電率の向上とを実現すべく、以下の二つの方策を検討した。
【0049】
そして、以下の二つの方策を銅ワイヤロッドの製造に併せ用いることで、本実施の形態に係る撚線に使用する導体を得た。
【0050】
まず、第1の方策は、酸素濃度が2mass ppmを超える量のCuに、チタン(Ti)を添加した状態で、Cuの溶湯を作製することである。この溶湯中においては、TiSとチタンの酸化物(例えば、TiO2)とTi−O−S粒子とが形成されると考えられる。
【0051】
次に、第2の方策は、銅中に転位を導入することにより硫黄(S)の析出を容易にすることを目的として、熱間圧延工程における温度を通常の銅の製造条件における温度(つまり、950℃〜600℃)より低い温度(880℃〜550℃)に設定することである。このような温度設定により、転位上へのSの析出、又はチタンの酸化物(例えば、TiO2)を核としてSを析出させることができる。
【0052】
以上の第1の方策及び第2の方策により、銅に含まれる硫黄が晶出すると共に析出するので、所望の軟質特性と所望の導電率とを有する銅ワイヤロッドを冷間伸線加工後に得ることができる。
【0053】
本実施の形態に係る撚線に使用する導体は、SCR連続鋳造設備を用い、表面の傷が少なく、製造範囲が広く、安定生産が可能である。
【0054】
SCR連続鋳造圧延により、鋳塊ロッドの加工度が90%(30mm)〜99.8%(5mm)でワイヤロッドを作製する。一例として、加工度99.3%でφ8mmのワイヤロッドを製造する条件を採用する。
【0055】
溶解炉内での溶銅温度は1100℃以上1320℃以下に制御することが好ましい。溶銅の温度が高いとブローホールが多くなり、傷が発生すると共に粒子サイズが大きくなる傾向にあるので1320℃以下に制御する。また、1100℃以上に制御する理由は、銅が固まりやすく、製造が安定しないことが理由であるものの、溶銅温度は可能な限り低い温度が望ましい。
【0056】
熱間圧延加工の温度は、最初の圧延ロールにおける温度を880℃以下に制御すると共に、最終圧延ロールでの温度を550℃以上に制御することが好ましい。
【0057】
これらの鋳造条件は、 通常の純銅の製造条件と異なり、溶銅中での硫黄の晶出及び熱間圧延中における硫黄の析出の駆動力である固溶限をより小さくすることを目的としているものである。
【0058】
また、通常の熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて950℃以下、最終圧延ロールにおいて600℃以上であるが、固溶限をより小さくすることを目的として、本実施の形態では、最初の圧延ロールにおいて880℃以下、最終圧延ロールにおいて550℃以上に設定することが望ましい。
【0059】
なお、最終圧延ロールにおける温度を550℃以上に設定する理由は、550℃未満の温度では得られるワイヤロッドの傷が多くなり、製造される導体を製品として扱うことができないからである。熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて880℃以下の温度、最終圧延ロールにおいて550℃以上の温度に制御すると共に、可能な限り低い温度であることが好ましい。このような温度設定にすることで、導体のマトリックスの硬さを、高純度銅(5N以上)の硬さに近づけることができる。
【0060】
ベース材の銅は、シャフト炉で溶解された後、還元状態で樋に流すことが好ましい。すなわち、還元ガス(例えば、CO)雰囲気下において、希薄合金の硫黄濃度、チタン濃度、及び酸素濃度を制御しつつ鋳造すると共に、材料に圧延加工を施すことにより、ワイヤロッドを安定的に製造することが好ましい。なお、銅酸化物が混入すること、及び/又は粒子サイズが所定サイズより大きいことは、製造される導体の品質を低下させる。
【0061】
以上より、タフピッチ銅(TPC)の導体に比してより軟らかい軟質希薄銅合金材料を、本実施の形態に係る撚線に使用する導体の原料として得ることができる。
【0062】
なお、軟質希薄銅合金材料の表面にめっき層を形成することもできる。更に、軟質希薄銅合金材料の形状は特に限定されず、断面丸形状、棒状、又は平角導体状にすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、SCR連続鋳造圧延法によりワイヤロッドを作製すると共に、熱間圧延にて軟質材を作製したが、双ロール式連続鋳造圧延法又はプロペルチ式連続鋳造圧延法を採用することもできる。
【0064】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る絶縁電線は、生産性が高く、軟化温度に優れており、また、ケーブル完成時において加工硬化が少なく、やわらかい可とう性に優れたものである。また、本実施の形態に係る絶縁電線は、導体の焼鈍工程において消費する電力等のエネルギー費用、焼鈍工程の設備費用、設備メンテナンス費用、焼鈍工程にかかる時間及び人件費等を低減できる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明のケーブルや絶縁電線の導体として用いられる撚線の実施例について説明する。
【0066】
実施例1;
まず、酸素濃度7mass ppm〜8mass ppm、硫黄濃度5mass ppm、チタン濃度13mass ppmを有するφ8mmの銅線(ワイヤロッド、加工度99.3%)を作製した。
【0067】
次に、このワイヤロッドに伸線加工(加工度:89.4%)を施して最終線径(例えばφ2.61mm)にした後、例えば、7本撚りされた撚線を作製し、所定のサイズに仕上げる。次に、焼鈍炉に入れ、所定の温度、時間で軟銅撚線にした後、樹脂で被覆し、絶縁体3を形成する(被覆工程)。
【0068】
この焼鈍工程は、例えば、バッチ式の焼鈍炉で低温で加熱することにより行われる。焼鈍時において、導体2には、焼鈍温度(150℃〜180℃)の熱が加わる。
【0069】
比較例1
比較例1の試料は、原材料としてタフピッチ銅を使用すること以外は、上記実施例と同様に製造した。
【0070】
この実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を用い、従来から実施しているφ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を通電アニーラにて焼鈍して軟銅線にした素線を撚り合わせて撚線を作製し、これを実施材1、比較材1として、各々の熱処理条件で熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を図2に示した。
【0071】
図2から熱処理後でも比較材1、実施材1ともに導体のビッカース硬さは初期状態のものと大差がないことが分かる。
【0072】
次に、実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を用い、本発明の製造方法に基づき、φ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を撚り合わせた撚線を、各々の熱処理条件で熱処理して、実施材2、比較材2とした後のビッカース硬さを測定した結果を図3に示した。
【0073】
図3に示す通り、硬銅線を撚り合わせた撚線を焼鈍したものは、比較材2では、150℃、1hでは変化がなく、180℃、1hの熱処理でようやくビッカース硬さが86HVまでしか低下しないが、実施材2では、150℃、1hでも60HV、180℃、1hでも61HVと十分にやわらかい撚線となっていることが分かる。
【0074】
また、実施材2では、150℃、1hの比較的低温の焼鈍条件において、比較材2に比してより軟質特性の点において顕著な差異が生じるものであり、硬銅線を撚り合わせた後に焼鈍した場合に特に顕著な差異が生じていることがわかる。
【0075】
従来の軟銅線を撚り合せる工程では、撚り合わせたときの加工歪によって、撚線が硬くなってしまうことがあったが、本発明のように、所定の添加元素を添加した銅材料を用い、この硬銅線を撚り合わせてから、撚線を焼鈍することによって、軟質の撚線のままで絶縁体を被覆することが可能となる。
【0076】
次に、シース5(例えばビニールシース、ポリエチレンシース、耐燃性ポリエチレンシース)を押出被覆することでケーブル(絶縁ケーブル)1を作製する。
【0077】
なお、本実施例のケーブルの製造方法は、撚線単芯の絶縁ケーブルに限定されるものではなく、複数の絶縁電線を撚り合わせて、さらにシースを押出することで作製される絶縁ケーブルであってもよい。
【0078】
実施例2;
まず、撚線の製造工程までは、上記の実施例1と同様である。
【0079】
次に、この撚線を走行させながら、管状炉の中を通して、焼鈍を行い撚線を作製して実施材4とした。
【0080】
比較例の試料は、原材料としてタフピッチ銅を使用すること以外は、上記実施材4と同様に製造して比較材4とした。
【0081】
また、実施例1の導体材料と比較例1のタフピッチ銅を、従来実施しているφ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を通電アニーラにて焼鈍して軟銅線にした素線を撚り合わせて撚線を作製し、これを実施材3、比較材3とした後、各々の熱処理条件で熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を図4に示した。
【0082】
図4から熱処理後でも比較材3、実施材3ともに導体のビッカース硬さは初期状態のものと大差がないことが分かる。
【0083】
これに対して、実施材4、比較材4は、上述のように、φ8.0mmから伸線して所望の最終線径φ2.61mmにした硬銅線を撚り合わせた撚線を熱処理した後のビッカース硬さを測定した結果を示したものである。
【0084】
図5に示す通り、硬銅線を撚り合わせた撚線を焼鈍したものは、比較材4では、76HVまでしか低下しないが、実施材4では、61HVまで低下して十分にやわらかい導体になっていることが分かる。
【0085】
上記の実施例2においても、上記実施例1と同様の効果が認められ、所定の添加元素を添加した銅材料を用い、この硬銅線を撚り合わせてから、撚線を焼鈍することによって、この焼鈍工程における熱処理により導体2を効果的に軟化させることができる。
【0086】
このため、撚線工程における加工硬化を生じても、タフピッチ銅からなる撚線に比して軟質性を備えた撚線を実現することができる。
【0087】
次に、導体2により撚線を作製し、撚線に樹脂を押出被覆することで絶縁電線4を作製する。次に、絶縁電線4にシース5を押出被覆することでケーブル1を作製する。
【0088】
実施例3;
[軽圧縮錫めっき撚線の実施例]
例えば、0.26mm径の37本の軽圧縮錫めっき撚線の製造例を記す。
【0089】
φ8.0mmまでの製造については実施例1、2と同様に行う。
【0090】
φ8.0mmから伸線して所望の最終線径0.9mm径のものを作製し、この0.9mm径のものに対して溶融錫めっきを行い、その後冷間伸線にて0.26mm径まで伸線する。得られた錫めっき素線を撚線機にて、37本撚り合わせた後、撚線断面形状を断面円形に整える程度の軽度の圧縮加工を施す。これを実施材6とする。
【0091】
通常は、0.9mm径で溶融錫めっきを行って、その後冷間伸線にて0.26mm径まで伸線したものを通電アニーラに通過させることによって、通電による抵抗発熱によって焼鈍を行い0.26mm径の錫めっき軟銅線を得る。これを撚線にして、実施例1と同様の原材料を使用したものを実施材5、タフピッチ銅(TPC)を原材料としたものを比較材5とする。
【0092】
比較材6は、タフピッチ銅(TPC)を原材料として使用すること以外は、実施材6と同様に製造し、0.26mm径の錫めっき軟質銅線材を37本撚り合わせ、軽度の圧縮加工を施したものを用意した。
【0093】
図6は0.26mm径の軟質錫めっき銅線37本を撚線にした比較材5と実施材5の通常工程で製造したものの各温度での1時間熱処理後の横断面のビッカース硬さ試験結果を比較したグラフである。
【0094】
比較材5は、タフピッチ銅(TPC)からなる0.26mm径の錫めっき硬質銅線材を37本撚り合わせたものである。
【0095】
図7は0.26mm径の錫めっき硬質銅線37本を撚線にし、軽度の圧縮加工を施した比較材6と実施材6の各温度での1時間熱処理後のビッカース硬さ試験結果を比較したグラフである。
【0096】
図5から、従来の工法では、実施材5を用いてもビッカース硬さが85(HV)までしか下がらないが、図7の硬質銅線を撚線にした実施材6においては、150℃、1hの熱処理後にビッカース硬さが70(HV)まで低下してやわらかくなる。
【0097】
この材料及び撚線に焼鈍を施すことにより、従来は85(HV)までしか下がらなかった撚線のビッカース硬さが、70(HV)まで低下させることができる。さらには、180℃、1hでは、66(HV)に低下することができ、すなわち、やわらかい撚線とすることが可能となる。
【0098】
以上、上記の実施例1〜3によれば、撚線を作製したときに、加工歪によって加工硬化しても、軟質の撚線のままケーブルとすることができるため、やわらかい絶縁電線又はケーブルを得ることができる。比較材である従来のタフピッチ銅(TPC)を素材とする撚線と比べると、特に硬銅線を撚り合わせた後に同じ温度で焼鈍しても、よりやわらかい撚線を得ることが可能である。
【0099】
これにより、電気代費用が削減できる。すなわち焼鈍工程のための大型アニール装置が必要ない。従って、低コスト設備で導体2に熱を与えることが可能であり、加工硬化の影響が小さいケーブル1を作製することができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態及びその実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0101】
1 ケーブル
2 導体
3 絶縁体
4 絶縁電線
5 シース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
を備えたことを特徴とする撚線の製造方法。
【請求項2】
前記添加元素が、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、 2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含む請求項1に記載の撚線の製造方法。
【請求項3】
不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
該撚線の外周に樹脂を被覆する被覆工程と、
を備えたことを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
前記添加元素が、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、 2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含む請求項3に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の撚線の製造方法で得られたことを特徴とする撚線。
【請求項1】
不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
を備えたことを特徴とする撚線の製造方法。
【請求項2】
前記添加元素が、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、 2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含む請求項1に記載の撚線の製造方法。
【請求項3】
不可避的不純物を含む銅と、2mass ppmを超える量の酸素と、Mg、Zr、Nb、Ca、V、N、Mn、Ti、Crの少なくとも一種の添加元素と、を含む希薄銅合金線を、最終線径となるように加工度50%以上の伸線加工を施して硬銅線を作製する硬銅線作製工程と、
該硬銅線を複数本用意し、これらを撚り合わせることにより撚線を作製する撚線作製工程と、
前記撚線に予熱処理を施して前記硬銅線を軟銅線に変質させる予熱工程と、
該撚線の外周に樹脂を被覆する被覆工程と、
を備えたことを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
前記添加元素が、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンであり、 2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超えて30mass ppm以下の酸素とを含む請求項3に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の撚線の製造方法で得られたことを特徴とする撚線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−40387(P2013−40387A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178647(P2011−178647)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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