説明

播き機

【課題】確実な覆土が可能な不耕起播種機を提供する。
【解決手段】不耕起播種機は、播種溝に下端側を挿入して圃場表面部のうち播種溝の他側方に位置する部分を他側方に寄せることで播種溝を拡幅する播種ディスク61,62を播種溝形成爪の後方に備える。不耕起播種機は、施肥溝に下端側を挿入して圃場表面部のうち播種溝と施肥溝の間に位置する部分を他側方に寄せることで施肥溝を拡幅するとともに播種溝を閉塞して種子に覆土する施肥ディスク63,64を施肥溝形成爪の後方に備える。不耕起播種機は、排水溝に下端側を挿入して圃場表面部のうち施肥溝と排水溝の間に位置する部分を他側方に寄せることで排水溝を拡幅するとともに施肥溝を閉塞して肥料に覆土する排水用ディスク65,66を排水溝形成爪の後方に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば不耕起圃場等に対して覆土作業を行う播き機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラクタ等の走行車に連結される機体と、この機体に幅方向に複数配置された溝形成手段である作溝輪と、これら作溝輪の上方に配置されたホッパとを備えた播き機である播種機が知られている。この播種機の作溝輪は、それぞれ下端部が圃場表面部に接地され、駆動手段により回転駆動されることで進行方向に沿う播種溝を圃場表面部に形成する。また、ホッパには、被播き物である種子と被播き物である肥料とがそれぞれ別個に収容され、作溝輪によって形成された播種溝に種子と肥料とを同時に供給するように構成されている。そして、播種溝に播かれた種子と肥料とに対しては、作溝輪の後部に圃場表面部へと垂下された覆土チェンによって覆土を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−94711号公報(第5−9頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば土が固い不耕起圃場の場合、上述の播種機のように圃場表面部へと垂下した覆土チェンによって覆土するだけでは覆土が確実でないという問題点を有している。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、確実な覆土が可能な播き機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の播き機は、圃場表面部に進行方向に沿って一の溝を形成する一の溝形成手段と、圃場表面部のうち前記一の溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝を形成する他の溝形成手段と、前記一の溝形成手段の後方に配置され、前記一の溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記一の溝の他側方に位置する部分を他側方に寄せることで前記一の溝を拡幅する一の拡幅手段と、この一の拡幅手段により拡幅された前記一の溝に被播き物を播く播き手段と、前記他の溝形成手段の後方に配置され、前記他の溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記一の溝と前記他の溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記他の溝を拡幅するとともに前記一の溝を閉塞してこの一の溝に播かれた被播き物に対して覆土する他の拡幅手段とを具備したものである。
【0007】
請求項2記載の播き機は、請求項1記載の播き機において、一の拡幅手段と他の拡幅手段とは、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように互いに対向して配置されて回転しながら圃場表面部を少なくとも他側方へと寄せる対をなす拡幅用回転ディスクにてそれぞれ構成され、対をなす前記拡幅用回転ディスクは、一側方に位置する一方と他側方に位置する他方とが、それぞれ進行方向に対して傾斜状に配置されているものである。
【0008】
請求項3記載の播き機は、請求項1記載の播き機において、一の拡幅手段と他の拡幅手段とは、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように互いに対向して配置されて回転しながら圃場表面部を少なくとも他側方へと寄せる対をなす拡幅用回転ディスクにてそれぞれ構成され、対をなす前記拡幅用回転ディスクは、一側方に位置する一方が進行方向に平行に配置され、他側方に位置する他方が進行方向に対して傾斜状に配置されているものである。
【0009】
請求項4記載の播き機は、請求項1ないし3いずれか一記載の播き機において、所定方向に回転する回転体を具備し、一の溝形成手段と他の溝形成手段とは、前記回転体に配置された溝形成爪にてそれぞれ構成されているものである。
【0010】
請求項5記載の播き機は、請求項4記載の播き機において、各溝形成爪の少なくともいずれかは、先端側が回転体の回転方向の前側から後側へと屈曲しているものである。
【0011】
請求項6記載の播き機は、請求項1ないし5いずれか一記載の播き機において、圃場表面部に進行方向に沿って一の溝としての第1溝を形成する一の溝形成手段としての第1溝形成手段と、圃場表面部のうち前記第1溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝および一の溝としての第2溝を形成する他の溝形成手段としての第2溝形成手段と、圃場表面部のうち前記第2溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝としての排水溝を形成する他の溝形成手段としての第3溝形成手段と、前記第1溝形成手段の後方に配置され、前記第1溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第1溝の他側方に位置する部分を他側方に寄せることで前記第1溝を拡幅する一の拡幅手段としての第1拡幅手段と、この第1拡幅手段により拡幅された前記第1溝に被播き物としての種子と被播き物としての肥料とのいずれか一方を播く播き手段としての第1播き手段と、前記第2溝形成手段の後方に配置され、前記第2溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第1溝と前記第2溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記第2溝を拡幅するとともに前記第1溝を閉塞してこの第1溝に播かれた種子と肥料とのいずれか一方に対して覆土する他の拡幅手段および一の拡幅手段としての第2拡幅手段と、この第2拡幅手段により拡幅された前記第2溝に被播き物としての種子と被播き物としての肥料とのいずれか他方を播く播き手段としての第2播き手段と、前記第3溝形成手段の後方に配置され、前記排水溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第2溝と前記排水溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記排水溝を拡幅するとともに前記第2溝を閉塞してこの第2溝に播かれた種子と肥料とのいずれか他方に対して覆土する他の拡幅手段としての第3拡幅手段とを具備したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、他の拡幅手段によって他の溝を拡幅させるために圃場表面部のうち一の溝と他の溝との間に位置する部分を他側方へと寄せることで一の溝を閉塞することにより、確実な覆土が可能になる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、一の拡幅手段および他の拡幅手段を対をなす拡幅用回転ディスクにより構成し、これら対をなす拡幅用回転ディスクのそれぞれを進行方向に対して傾斜状に配置することにより、確実な覆土が可能になるとともに、一の溝および他の溝をより広く拡幅できる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、一の拡幅手段および他の拡幅手段を対をなす拡幅用回転ディスクにより構成し、一側に位置する一方の拡幅用回転ディスクを進行方向に平行に配置し、他側方に位置する他方の拡幅用回転ディスクを進行方向に対して傾斜状に配置することにより、確実な覆土が可能になるとともに、一の拡幅手段により一の溝を拡幅させる際に一方の拡幅用回転ディスクによって圃場表面部を他の溝側へと寄せてこの他の溝を閉塞することがない。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、一の溝形成手段および他の溝形成手段を構成する溝形成爪により、圃場表面部に一の溝および他の溝を確実に形成できる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、各溝形成爪の少なくともいずれかの先端側を回転体の回転方向の前側から後側へと屈曲させることにより、圃場表面部に各溝をより形成しやすくなる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、第2拡幅手段によって第2溝を拡幅させるために圃場表面部のうち第1溝と第2溝との間に位置する部分を他側方へと寄せることで第1溝を閉塞するとともに、第3拡幅手段によって排水溝を拡幅させるために圃場表面部のうち第2溝と排水溝との間に位置する部分を他側方へと寄せることで第2溝を閉塞することにより、確実な覆土が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る播き機の各拡幅手段の平面図である。
【図2】(a)〜(c)は同上各拡幅手段による拡幅作業を示す説明図である。
【図3】(a)は同上播き機の各溝形成手段の平面図、(b)は同上各溝形成手段により形成される各溝を示す説明図である。
【図4】同上各溝形成手段の側面図である。
【図5】同上播き機の要部平面図である。
【図6】同上播き機の側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る播き機の各拡幅手段の平面図である。
【図8】(a)〜(c)は同上各拡幅手段による拡幅作業を示す説明図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係る播き機の各溝形成手段の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図5および図6において、1は播き機としての播種機である不耕起播種機(不耕起播き機)で、この不耕起播種機1は、図示しない走行車であるトラクタの後部の3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)に連結されトラクタの走行により進行方向前方に移動しながら圃場を耕耘することなく被播き物としての第1被播き物である種子Sおよび被播き物としての第2被播き物である肥料F(図2)を圃場に播くものである。
【0021】
不耕起播種機1は、トラクタの3点リンクヒッチ部に連結される機枠2と、この機枠2にそれぞれ取り付けられた複数の溝形成部である作溝輪としての溝切部3と、これら溝切部3のそれぞれの後方にて機枠2に取り付けられた複数の播き部4と、溝切部3のそれぞれの後方でかつ播き部4の下方にて機枠2に取り付けられた複数の拡幅部5とを備えている。なお、図5において、不耕起播種機1は、幅方向の一側部のみを図示しており、幅方向の他側部については幅方向の一側部と同様の構成であるので、図示を省略している。
【0022】
機枠2は、左右幅方向に沿って水平状に伸びる第1フレームパイプ11と、この第1フレームパイプ11の左右両側部に前端部が連結されて後方へと水平状に伸びるフレーム部12と、このフレーム部12の後端の下部に連結されて左右幅方向に沿って水平状に伸びる第2フレームパイプ13とを有している。第1フレームパイプ11には、トラクタの3点リンクヒッチ部に連結される3点連結部15が取り付けられている。この3点連結部15は、例えばトップリンク16および対をなすロワーリンク17(一方のみ図示)等にて構成されている。また、第1フレームパイプ11の左右幅方向の中心部の下部には、ミッションケース18に覆われた変速機構部19が取り付けられている。この変速機構部19は、ミッションケース18の前部に突出した回転可能な入力軸21と連結されており、この入力軸21はトラクタのPTO軸に対して、ジョイントおよび伝動シャフト等にて構成された動力伝達手段(図示せず)により接続されている。
【0023】
また、変速機構部19は、左右幅方向に水平状に伸びる回転可能な溝形成部駆動軸としてのチェン駆動軸25を備えており、このチェン駆動軸25は、それぞれチェンケース26に覆われた複数の伝達部としてのチェン部27の上端側と連結されている。各チェン部27(チェンケース26)は、機枠2の第1フレームパイプ11に取り付けられたチェンケース取付部28に上端側が取り付けられている。さらに、各チェン部27の後方へと傾斜した下端側は、各溝切部3と連結されている。そして、各チェンケース26の下端側の上部には、ブラケット部26aが突出しており、このブラケット部26aには、溝形成部調節部としての溝形成部懸架手段である溝切部調節パイプ31の下端側がそれぞれ回動可能に連結されている。各溝切部調節パイプ31は、チェンケース26を介して各溝切部3を下方へと付勢した状態で弾性的に独立懸架するものであり、上端側が前方へと若干傾斜しており、第1フレームパイプ11から後方へと伸びる取付腕部32の後端に上端側が回動可能に支持されている。
【0024】
各溝切部3は、図3ないし図6に示すように、左右幅方向に沿う水平状の回転軸34およびこの回転軸34の一端側に一体的に取り付けられた溝形成部円板部である円板部35を備えた回転体としての回転部36と、この回転部36の円板部35にそれぞれ取り付けられた複数の一の溝形成手段(第1溝形成手段)としての溝形成爪である播種溝形成爪37、複数の他の溝形成手段および一の溝形成手段(第2溝形成手段)としての溝形成爪である施肥溝形成爪38および複数の他の溝形成手段(第3溝形成手段)および排水溝形成手段としての溝形成爪である排水溝形成爪39とを備えており、溝形成部カバーとしての溝切部カバー40により上側が覆われている。
【0025】
各回転軸34の他端側には、チェン部27の図示しない無端状のチェンが巻き掛けられており、動力伝達手段を介して入力軸21から変速機構部19へと入力された動力により回転するチェン駆動軸25の回転力がチェン部27を介して伝達されることにより回転部36を介して各溝切部3を所定方向、ここでは矢印A方向に回転駆動させるように構成されている。
【0026】
各播種溝形成爪37は、一の溝としての第1溝(第1播き溝)である播種溝D1を形成する第1溝形成爪であり、直爪状に形成され、円板部35の一側に一端側が固定され、他端側が円板部35の外周から外方へと突出している。すなわち、各播種溝形成爪37は、円板部35に対して放射状、すなわち径方向に沿って取り付けられている。そして、これら播種溝形成爪37により圃場表面部Hに形成された各播種溝D1は、それぞれ種子Sを播くためのものである。
【0027】
施肥溝形成爪38は、他の溝および一の溝としての第2溝(第2播き溝)である施肥溝D2を形成する第2溝形成爪であり、直爪状に形成され、円板部35の他側、すなわち各播種溝形成爪37と反対側に一端側が固定され、他端側が円板部35の外周から外方へと突出している。すなわち、各施肥溝形成爪38は、円板部35に対して放射状、すなわち径方向に沿って取り付けられている。そして、これら施肥溝形成爪38により圃場表面部Hに形成された各施肥溝D2は、それぞれ肥料Fを播くためのものである。
【0028】
排水溝形成爪39は、他の溝(第3溝)としての排水溝D3を形成する第3溝形成爪であり、直爪状に形成され、円板部35の他側、すなわち各施肥溝形成爪38と同側に一端側が固定され、他端側が円板部35の外周から外方へと突出している。すなわち、各排水溝形成爪39は、円板部35に対して放射状、すなわち径方向に沿って取り付けられている。そして、これら排水溝形成爪39により圃場表面部Hに形成された各排水溝D3は、雨水等が溜まるものである。
【0029】
ここで、各形成爪37,38,39は、図3(a)および図4に示すように、ここではそれぞれ例えば3つずつが円板部35に対して取り付けられ、互いに周方向に略等角度に離間されて順次配置されている。また、各形成爪37,38,39は、左右幅方向に互いに略等間隔に離間されている。さらに、各形成爪37,38は、互いに略等しい長さに形成されて円板部35の外周からの突出量が互いに略等しく、排水溝形成爪39は、各形成爪37,38よりも長尺状に形成されて円板部35の外周からの突出量が相対的に大きく設定されている。したがって、図3(b)に示すように、圃場表面部Hには、各溝切部3の回転により、左右幅方向に略等間隔に播種溝D1、施肥溝D2および排水溝D3が一側から他側へと順次形成され、播種溝D1および施肥溝D2の深さが互いに略等しく、かつ、排水溝D3が播種溝D1および施肥溝D2よりも深くなるように形成される。
【0030】
また、図5および図6に示すように、各播き部4は、例えば大麦、小麦、稲等の種子S(図2)を収容する被播き物収容部(第1被播き物収容部)としての種子ボックス43と、例えば粒状化成肥料等の肥料F(図2)を収容する被播き物収容部としての第2被播き物収容部である肥料ボックス44とを前後に備えている。これらボックス43,44の下部には、それぞれ繰出手段(第1繰出手段)としての繰出ローラ45および繰出手段(第2繰出手段)としての繰出ローラ46が配置されている。繰出ローラ45の下部には、被播き物導管(第1被播き物導管)としての種子パイプ47が連結され、繰出ローラ46の下部には、被播き物導管(第2被播き物導管)としての肥料パイプ48が連結されている。そして、種子ボックス43、繰出ローラ45および種子パイプ47によって、播種溝D1に種子S(図2)を播くための播き手段としての第1播き手段である種子播き部49が構成されている。また、肥料ボックス44、繰出ローラ46および肥料パイプ48によって、施肥溝D2に肥料F(図2)を播くための播き手段としての第2播き手段である肥料播き部50が構成されている。
【0031】
ボックス43,44は上部が蓋体43a,44aによりそれぞれ開閉可能であり、下側の開口部に繰出ローラ45,46が取り付けられて構成されている。
【0032】
繰出ローラ45,46は、ボックス43,44に収容された種子Sおよび肥料Fを例えば使用者によって設定された一定量ずつパイプ47,48へと繰り出すものであり、繰出ローラ45は、駆動軸である繰出ローラ駆動軸51を介して駆動手段としてのモータ52により回転駆動され、繰出ローラ46は、この繰出ローラ45の回転に伴い従動回転するように構成されている。
【0033】
そして、図1、図5および図6に示すように、各拡幅部5は、各溝切部3の後方でかつ各播き部4の下方に対応する位置に配置されており、一側に位置する拡幅手段支持手段としてのディスク支持手段であるディスクフレーム54に対して、他側方および下方へと突出した取付部材としてのディスク取付アーム55,56,57の基端側が固定されている。そして、これらディスク取付アーム55,56,57の先端側には、一の拡幅手段(第1拡幅手段)としての対をなす(一対の)拡幅用回転ディスクである播種ディスク(第1ディスク)61,62と、他の拡幅手段および一の拡幅手段(第2拡幅手段)としての対をなす(一対の)拡幅用回転ディスクである施肥ディスク(第2ディスク)63,64と、他の拡幅手段(第3拡幅手段)としての排水溝拡幅手段である対をなす(一対の)拡幅用回転ディスクである排水用ディスク(第3ディスク)65,66とがそれぞれ回転可能に軸支されている。
【0034】
ディスクフレーム54は、前後方向に長尺状に形成されており、第2フレームパイプ13に対して下方へと突出する取付部71に対して、前端側が例えば対をなす回動リンク72,72を介して取り付けられている。これら回動リンク72,72はディスクフレーム54の両側のそれぞれで上下に離間されて位置し、取付部71とディスクフレーム54とのそれぞれに対して、ピン73,74により回動可能に軸支されている。したがって、ディスクフレーム54(各拡幅部5)は、第2フレームパイプ13(機枠2)および回動リンク72,72とともに平行リンク機構を構成し、水平状態を保ちつつ第2フレームパイプ13(機枠2)に対して上下方向に回動可能に支持されている。また、ディスクフレーム54の後端側には、拡幅部調節部としての拡幅部懸架手段であるディスク調整パイプ76の下端部が回動可能に連結されている。このディスク調整パイプ76は、ディスクフレーム54を介して各拡幅部5を下方へと付勢した状態で弾性的に独立懸架するものであり、上端側が前方へと若干傾斜しており、第2フレームパイプ13から後方へと伸びる取付アーム77の後端に上端側が回動可能に支持されている。
【0035】
ディスク取付アーム55,56,57は、ディスクフレーム54の長手方向である前後方向に互いに略等間隔に離間されて取り付けられている。ディスク取付アーム55は、ディスクフレーム54の前端に位置し、ディスク取付アーム57は、ディスクフレーム54の後端に位置し、ディスク取付アーム56は、これらディスク取付アーム55,57の略中間に位置している。すなわち、ディスク取付アーム56は、ディスク取付アーム55の後方に位置し、ディスク取付アーム57は、ディスク取付アーム56の後方に位置している。また、これらディスク取付アーム55,56,57の先端側である下端側の高さ位置は、互いに略等しく設定されている。
【0036】
播種ディスク61,62は、互いに略等しい径寸法を有し、ディスク取付アーム55の下端側の一側と他側とにそれぞれ回転自在に軸支され、下端側が圃場表面部H(図2)に接触して従動回転するものである。また、一側に位置する一方の播種ディスク61は、前端側が他側方へと傾斜状に配置され、他側に位置する他方の播種ディスク62は、前端側が一側方へと傾斜状に配置されている。したがって、これら播種ディスク61,62は、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように、すなわち平面視で逆V字状に互いに対向して配置されており、前端側は隙間が殆ど形成されないように近接している。そして、これら播種ディスク61,62は、前端側の位置が、播種溝形成爪37の進行方向後方にちょうど対応する位置となっており、かつ、下端部の高さ位置が、各溝切部3の最下部に回動した播種溝形成爪37の下端部の位置と同程度となっている。このため、播種ディスク61,62は、播種溝形成爪37により圃場表面部Hに形成された播種溝D1(図2)に対して下端側が挿入されるように構成されている。さらに、これら播種ディスク61,62の間の回転軸よりも前方の位置には、取付部71に下端側が固定された種子パイプ47の下端部が下方に向けて挿入されている。
【0037】
施肥ディスク63,64は、互いに略等しく播種ディスク61,62と同程度の径寸法を有し、ディスク取付アーム56の先端側である下端側の一側と他側とにそれぞれ回転自在に軸支され、下端側が圃場表面部H(図2)に接触して従動回転するものである。また、一側に位置する一方の施肥ディスク63は、前端側が他側方へと傾斜状に配置され、他側に位置する他方の施肥ディスク64は、前端側が一側方へと傾斜状に配置されている。したがって、これら施肥ディスク63,64は、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように、すなわち平面視で逆V字状に互いに対向して配置されており、前端側は隙間が殆ど形成されないように近接している。そして、これら施肥ディスク63,64は、前端側の位置が、施肥溝形成爪38の進行方向後方にちょうど対応する位置となっており、かつ、下端部の高さ位置が、各溝切部3の最下部に回動した施肥溝形成爪38の下端部の位置と同程度となっている。このため、施肥ディスク63,64は、播種ディスク61,62の一側部の後方に位置しており、施肥溝形成爪38により圃場表面部Hに形成された施肥溝D2(図2)に対して下端側が挿入されるように構成されている。さらに、これら施肥ディスク63,64の間の回転軸よりも前方の位置には、ディスクフレーム54に下端側が固定された肥料パイプ48の下端部が下方に向けて挿入されている。
【0038】
排水用ディスク65,66は、互いに略等しくかつ播種ディスク61,62および施肥ディスク63,64よりも大きい径寸法を有し、ディスク取付アーム57の先端側である下端側の一側と他側とにそれぞれ回転自在に軸支され、下端側が圃場表面部H(図2)に接触して従動回転するものである。また、一側に位置する一方の排水用ディスク65は、前端側が他側方へと傾斜状に配置され、他側に位置する他方の排水用ディスク66は、前端側が一側方へと傾斜状に配置されている。したがって、これら排水用ディスク65,66は、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように、すなわち平面視で逆V字状に互いに対向して配置されており、前端側は隙間が殆ど形成されないように近接している。そして、これら排水用ディスク65,66は、前端側の位置が、排水溝形成爪39の進行方向後方にちょうど対応する位置となっており、かつ、下端部の高さ位置が、各溝切部3の最下部に回動した排水溝形成爪39の下端部の位置と同程度となっている。すなわち、これら排水用ディスク65,66の下端部は、播種ディスク61,62および施肥ディスク63,64のそれぞれの下端部よりも下方に位置している。このため、排水用ディスク65,66は、施肥ディスク63,64の一側部の後方に位置しており、排水溝形成爪39により圃場表面部Hに形成された排水溝D3(図2)に対して下端側が挿入されるように構成されている。
【0039】
次に、不耕起播種機1の作用等を説明する。
【0040】
不耕起播種機1をトラクタの3点リンクヒッチ部に連結し、この不耕起播種機1を相対的に下方へと移動させて作業状態とした後、トラクタの走行により不耕起播種機1を圃場にて移動させる。
【0041】
この不耕起播種機1は、トラクタの走行の際に、このトラクタ側から入力軸21を介して入力された動力が変速機構部19、チェン駆動軸25およびチェン部27を介して回転軸34に伝達されることにより各溝切部3が回転駆動され、各形成爪部37,38,39によって、圃場表面部Hに図3(a)に示す播種溝D1、施肥溝D2および排水溝D3がそれぞれトラクタの進行方向X(図1)に沿って形成される。
【0042】
さらにトラクタが走行することにより、播種溝形成爪部37により形成された播種溝D1に対して、播種溝形成爪部37の後方に位置する播種ディスク61,62の下端側が挿入され、トラクタの走行に従って、進行方向Xに対するこれら播種ディスク61,62の傾斜により圃場表面部Hのうち播種溝D1の両側の位置する部分P0,P1がそれぞれ両側方へと寄せられ播種溝D1が断面視V溝状に徐々に拡幅される(図2(a))。そして、この拡幅された播種溝D1には、種子播き部49の繰出ローラ45の回転によって種子パイプ47から落下供給された種子Sが播かれる。
【0043】
また、さらにトラクタが走行することにより、施肥溝形成爪部38により形成された施肥溝D2に対して、施肥溝形成爪部38の後方に位置する施肥ディスク63,64の下端側が挿入される。ここで、施肥ディスク63,64の下端側が施肥溝D2に挿入される直前の状態で、圃場表面部Hのうち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1が播種ディスク61,62による播種溝D1の拡幅時に一側方(図2中の右側)へと寄せられているため、施肥溝D2の上側の部分は狭くなっているものの、施肥ディスク63,64の挿入の妨げとなることはない。そして、トラクタの走行に従って、進行方向Xに対するこれら施肥ディスク63,64の傾斜により圃場表面部Hのうち施肥溝D2の両側部分、すなわち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1および施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2がそれぞれ両側方へと寄せられる。この結果、施肥溝D2が断面視V溝状に徐々に拡幅されるとともに、種子Sが播かれた播種溝D1に対して播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1(残耕(未耕地))が播種溝D1側へと寄せられて播種溝D1が閉塞され、種子Sに対して覆土される(図2(b))。拡幅された施肥溝D2には、肥料播き部50の繰出ローラ46の回転によって肥料パイプ48から落下供給された肥料Fが播かれる(側条施肥)。
【0044】
そして、さらにトラクタが走行することにより、排水溝形成爪部39により形成された排水溝D3に対して、排水溝形成爪部39の後方に位置する排水用ディスク65,66の下端側が挿入される。ここで、排水用ディスク65,66の下端側が排水溝D3に挿入される直前の状態で、圃場表面部Hのうち施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2が施肥ディスク63,64による施肥溝D2の拡幅時に一側方(図2中の右側)へと寄せられているため、排水溝D3の上側の部分は狭くなっているものの、排水用ディスク65,66の挿入の妨げとなることはない。そして、トラクタの走行に従って、進行方向Xに対するこれら排水用ディスク65,66の傾斜により圃場表面部Hのうち排水溝D3の両側部分P2,P3がそれぞれ両側方へと寄せられる。この結果、排水溝D3が断面視V溝状に徐々に拡幅されるとともに、肥料Fが播かれた施肥溝D2に対して施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2(残耕(未耕地))が施肥溝D2側へと寄せられて施肥溝D2が閉塞され、肥料Fに対して覆土される(図2(c))。
【0045】
このように不耕起播種機1によれば、施肥ディスク63,64によって施肥溝D2を拡幅させるために圃場表面部Hのうち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1を他側方すなわち播種溝D1側へと寄せることで播種溝D1を閉塞するとともに、排水用ディスク65,66によって排水溝D3を拡幅させるために圃場表面部Hのうち施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2を他側方すなわち施肥溝D2側へと寄せることで施肥溝D2を閉塞することにより、例えば土が固い不耕起圃場等に対しても、耕耘等をすることなく確実な覆土が可能になる。
【0046】
そして、このように種子Sおよび肥料Fが確実に覆土されるので、鳥害を抑制できる。
【0047】
また、溝切部3、播き部4および拡幅部5は、上記のように幅方向に多連に構成することが可能であり、このように多連に構成することにより1工程で多数の溝を形成できるため、作業効率が良好である。
【0048】
さらに、種子Sを播いた播種溝D1の側方に施肥溝D2を形成して、この施肥溝D2に肥料Fを播く側条施肥とすることにより、肥料Fの利用効率が高まり、減肥が可能になる。
【0049】
そして、上記不耕起播種機1は、耕耘用の動力等を用いることなく確実な覆土が可能であるため、低馬力で高効率な作業が可能となり、エコロジー(省エネルギー)の観点からも好ましい。
【0050】
また、各拡幅手段を各ディスク61〜66により構成し、これらディスク61〜66のそれぞれを進行方向に対して傾斜状に配置することにより、例えば土が固い不耕起圃場等に対しても確実な覆土が可能になるとともに、各溝D1〜D3の拡幅時に、これら溝D1〜D3をより広く拡幅することが可能になり、種子Sや肥料Fをより播きやすくなるだけでなく、排水溝D3をより広く確保できる。
【0051】
さらに、各溝形成手段を構成する各形成爪37〜39により、例えば土が固い不耕起圃場等に対しても、播種溝D1、施肥溝D2および排水溝D3を確実に形成できる。
【0052】
なお、不耕起播種機1は、進行方向Xに対するディスク61,63,65の傾斜角度をディスク62,64,66よりも相対的に小さくしてもよい。例えば図7および図8に示すように、ディスク61,63,65を進行方向Xに平行に配置してもよい。
【0053】
この図7および図8に示す不耕起播種機1は、一方の播種ディスク61が進行方向Xに平行に配置され他方の播種ディスク62のみの前端側が一側方すなわち一方の播種ディスク61側へと傾斜するように、すなわち進行方向Xに対して傾斜状に配置されて、これら播種ディスク61,62は進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように配置されている。
【0054】
同様に、一方の施肥ディスク63が進行方向Xに平行に配置され他方の施肥ディスク64のみの前端側が一側方すなわち一方の施肥ディスク63側へと傾斜するように、すなわち進行方向Xに対して傾斜状に配置されて、これら施肥ディスク63,64は進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように配置されている。
【0055】
さらに、一方の排水用ディスク65が進行方向Xに平行に配置され他方の排水用ディスク66のみの前端側が一側方すなわち一方の排水用ディスク65側へと傾斜するように、すなわち進行方向Xに対して傾斜状に配置されて、これら排水用ディスク65,66は進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように配置されている。
【0056】
そして、トラクタが走行することにより、播種溝形成爪部37により形成された播種溝D1に対して、播種溝形成爪部37の後方に位置する播種ディスク61,62の下端側が挿入され、トラクタの走行に従って、進行方向Xに対する播種ディスク62の傾斜により圃場表面部Hのうち播種溝D1の他側方に位置する部分P0が他側方へと寄せられ播種溝D1が徐々に拡幅される(図8(a))。ここで、播種ディスク61は、進行方向Xに平行、すなわち播種溝D1に平行であるため、播種溝D1の拡幅時に、圃場表面部Hのうち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1が一側方(図8中の右側)すなわち施肥溝D2側へと寄せられることはなく、したがってこの部分P1によって施肥溝D2が狭くなることがない。そして、この拡幅された播種溝D1には、種子播き部49の繰出ローラ45の回転によって種子パイプ47から落下供給された種子Sが播かれる。
【0057】
また、さらにトラクタが走行することにより、施肥溝形成爪部38により形成された施肥溝D2に対して、施肥溝形成爪部38の後方に位置する施肥ディスク63,64の下端側が挿入される。そして、トラクタの走行に従って、進行方向Xに対する施肥ディスク64の傾斜により圃場表面部Hのうち施肥溝D2の他側部分、すなわち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1が他側方すなわち播種溝D1側へと寄せられる。この結果、施肥溝D2が徐々に拡幅されるとともに、種子Sが播かれた播種溝D1に対して播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P1(残耕(未耕地))が播種溝D1側へと寄せられて播種溝D1が閉塞され、種子Sに対して覆土される(図8(b))。ここで、施肥ディスク63は、進行方向Xに平行、すなわち施肥溝D2に平行であるため、施肥溝D2の拡幅時に、圃場表面部Hのうち施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2が一側方(図8中の右側)すなわち排水溝D3側へと寄せられることはなく、したがってこの部分P2によって排水溝D3が狭くなることがない。拡幅された施肥溝D2には、肥料播き部50の繰出ローラ46の回転によって肥料パイプ48から落下供給された肥料Fが播かれる(側条施肥)。
【0058】
そして、さらにトラクタが走行することにより、排水溝形成爪部39により形成された排水溝D3に対して、排水溝形成爪部39の後方に位置する排水用ディスク65,66の下端側が挿入される。このトラクタの走行に従って、進行方向Xに対する排水用ディスク66の傾斜により圃場表面部Hのうち排水溝D3の他側部分、すなわち施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2が他側方すなわち施肥溝D2側へと寄せられる。この結果、排水溝D3が徐々に拡幅されるとともに、肥料Fが播かれた施肥溝D2に対して施肥溝D2と排水溝D3との間の部分P2(残耕(未耕地))が施肥溝D2側へと寄せられて施肥溝D2が閉塞され、肥料Fに対して覆土される(図8(c))。また、排水溝ディスク65は、進行方向Xに平行、すなわち排水溝D3に平行であるため、排水溝D3の拡幅時に、圃場表面部Hのうち排水溝D2の一側方に位置する部分P3が一側方(図8中の右側)へと寄せられることはない。
【0059】
このように、各拡幅手段を各ディスク61〜66により構成し、一側に位置する一方のディスク61,63を進行方向Xに平行に配置し、他側方に位置する他方のディスク62,64を進行方向に対して傾斜状に配置することにより、例えば土が固い不耕起圃場等に対しても確実な覆土が可能になるとともに、播種ディスク61,62により播種溝D1を拡幅させる際に一方の播種ディスク61によって圃場表面部Hのうち播種溝D1と施肥溝D2との間に位置する部分P2を施肥溝D2側へと寄せて施肥溝D2を閉塞することがなく、また、施肥ディスク63,64により施肥溝D2を拡幅させる際に一方の施肥ディスク63によって圃場表面部Hのうち施肥溝D2と排水溝D3との間に位置する部分P2を排水溝D3側へと寄せて排水溝D3を閉塞することがない。
【0060】
また、対をなす各ディスクをそれぞれ進行方向Xに対して傾斜させた場合と比較して、トラクタ走行時の圃場表面部Hに対する抵抗が抑制されるので、走行負荷をより抑制できる。
【0061】
なお、この図7および図8に示す実施の形態において、一方の排水用ディスク65は、排水溝D3を拡幅させる際に、他の溝等を閉塞するおそれがないので、図1ないし図6に示す実施の形態と同様に、一方の排水用ディスク65は、進行方向Xに対して傾斜状に配置してもよい。
【0062】
また、不耕起播種機1は、例えば図9に示すように、形成爪37〜39の少なくともいずれか、ここでは全ての形成爪37〜39の先端側を屈曲させてもよい。
【0063】
この図9に示す不耕起播種機1は、播種溝形成爪37が、直爪状の直爪部37aと、この直爪部37aの先端に連続して矢印Aに対して反対側、すなわち回転部36の回転方向前側から後側へと屈曲した屈曲爪部37bとを一体に有している。
【0064】
同様に、施肥溝形成爪38は、直爪状の直爪部38aと、この直爪部38aの先端に連続して矢印Aに対して反対側、すなわち回転部36の回転方向前側から後側へと屈曲した屈曲爪部38bとを一体に有し、排水溝形成爪39は、直爪状の直爪部39aと、この直爪部39aの先端に連続して矢印Aに対して反対側、すなわち回転部36の回転方向前側から後側へと屈曲した屈曲爪部39bとを一体に有している。
【0065】
そして、このように各形成爪37〜39の先端側を回転部36の回転方向(矢印A)の前側から後側へと屈曲させることにより、回転部36の回転に従って形成爪37〜39の屈曲爪部37b〜39bの圃場表面部Hに対して食い込む部分が徐々に大きくなるので、抵抗が少なく、形成爪37〜39が圃場表面部Hに対してより食い込みやすくなり、例えば土が固い不耕起圃場等に対しても、播種溝D1、施肥溝D2および排水溝D3をより形成しやすくなる。
【0066】
なお、上記各実施の形態において、各播き部49,50の細部は、上記構成に限定されない。
【0067】
また、被播き物としては、種子Sおよび肥料F以外でも、任意のものを用いることが可能である。
【0068】
さらに、各溝切部3は、一の溝形成手段を1つのみ備える構成としてもよい。この場合には、各拡幅部5も、一の拡幅手段を1つのみ備える構成とすることにより、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
そして、各溝切部3は、他の溝形成手段および一の溝形成手段の機能を有する溝形成手段を2つ以上備える構成としてもよい。この場合には、各拡幅部5も、他の拡幅手段および一の拡幅手段の機能を有する拡幅手段を2つ以上備える構成とすることにより、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
また、第1播き手段により肥料Fを播き、第2播き手段により種子Sを播いてもよい。
【0071】
さらに、各溝切部3は、上記矢印A方向に回転(正転)させる構成としたが、この矢印Aと反対方向に回転(逆転)させる構成でもよく、回転方向を圃場の種類等に応じて切り換え可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 播き機である不耕起播種機
36 回転体としての回転部
37 一の溝形成手段(第1溝形成手段)としての溝形成爪である播種溝形成爪
38 他の溝形成手段および一の溝形成手段(第2溝形成手段)としての溝形成爪である施肥溝形成爪
39 他の溝形成手段(第3溝形成手段)としての溝形成爪である排水溝形成爪
49 播き手段としての第1播き手段である種子播き部
50 播き手段としての第2播き手段である肥料播き部
61,62 一の拡幅手段(第1拡幅手段)としての拡幅用回転ディスクである播種ディスク
63,64 他の拡幅手段および一の拡幅手段(第2拡幅手段)としての拡幅用回転ディスクである施肥ディスク
65,66 他の拡幅手段(第3拡幅手段)としての拡幅用回転ディスクである排水用ディスク
D1 一の溝としての第1溝である播種溝
D2 他の溝および一の溝としての第2溝である施肥溝
D3 他の溝としての排水溝
F 被播き物としての肥料
H 圃場表面部
S 被播き物としての種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場表面部に進行方向に沿って一の溝を形成する一の溝形成手段と、
圃場表面部のうち前記一の溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝を形成する他の溝形成手段と、
前記一の溝形成手段の後方に配置され、前記一の溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記一の溝の他側方に位置する部分を他側方に寄せることで前記一の溝を拡幅する一の拡幅手段と、
この一の拡幅手段により拡幅された前記一の溝に被播き物を播く播き手段と、
前記他の溝形成手段の後方に配置され、前記他の溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記一の溝と前記他の溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記他の溝を拡幅するとともに前記一の溝を閉塞してこの一の溝に播かれた被播き物に対して覆土する他の拡幅手段と
を具備したことを特徴とする播き機。
【請求項2】
一の拡幅手段と他の拡幅手段とは、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように互いに対向して配置されて回転しながら圃場表面部を少なくとも他側方へと寄せる対をなす拡幅用回転ディスクにてそれぞれ構成され、
対をなす前記拡幅用回転ディスクは、一側方に位置する一方と他側方に位置する他方とが、それぞれ進行方向に対して傾斜状に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の播き機。
【請求項3】
一の拡幅手段と他の拡幅手段とは、進行方向前側から後側へと徐々に離間されるように互いに対向して配置されて回転しながら圃場表面部を少なくとも他側方へと寄せる対をなす拡幅用回転ディスクにてそれぞれ構成され、
対をなす前記拡幅用回転ディスクは、一側方に位置する一方が進行方向に平行に配置され、他側方に位置する他方が進行方向に対して傾斜状に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の播き機。
【請求項4】
所定方向に回転する回転体を具備し、
一の溝形成手段と他の溝形成手段とは、前記回転体に配置された溝形成爪にてそれぞれ構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の播き機。
【請求項5】
各溝形成爪の少なくともいずれかは、先端側が回転体の回転方向の前側から後側へと屈曲している
ことを特徴とする請求項4記載の播き機。
【請求項6】
圃場表面部に進行方向に沿って一の溝としての第1溝を形成する一の溝形成手段としての第1溝形成手段と、
圃場表面部のうち前記第1溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝および一の溝としての第2溝を形成する他の溝形成手段としての第2溝形成手段と、
圃場表面部のうち前記第2溝の一側方に位置する部分に進行方向に沿って他の溝としての排水溝を形成する他の溝形成手段としての第3溝形成手段と、
前記第1溝形成手段の後方に配置され、前記第1溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第1溝の他側方に位置する部分を他側方に寄せることで前記第1溝を拡幅する一の拡幅手段としての第1拡幅手段と、
この第1拡幅手段により拡幅された前記第1溝に被播き物としての種子と被播き物としての肥料とのいずれか一方を播く播き手段としての第1播き手段と、
前記第2溝形成手段の後方に配置され、前記第2溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第1溝と前記第2溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記第2溝を拡幅するとともに前記第1溝を閉塞してこの第1溝に播かれた種子と肥料とのいずれか一方に対して覆土する他の拡幅手段および一の拡幅手段としての第2拡幅手段と、
この第2拡幅手段により拡幅された前記第2溝に被播き物としての種子と被播き物としての肥料とのいずれか他方を播く播き手段としての第2播き手段と、
前記第3溝形成手段の後方に配置され、前記排水溝に少なくとも一部が挿入されて圃場表面部のうち少なくとも前記第2溝と前記排水溝との間に位置する部分を他側方に寄せることで前記排水溝を拡幅するとともに前記第2溝を閉塞してこの第2溝に播かれた種子と肥料とのいずれか他方に対して覆土する他の拡幅手段としての第3拡幅手段と
を具備したことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の播き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−92155(P2011−92155A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252043(P2009−252043)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】