説明

播種機

【課題】トラクターの機体後部の取付部材2に複数台並列に連結され、トラクターに牽引されて走行する播種機において、条止め、株間調整及びメンテナンスを容易に行えるようにする。
【解決手段】播種機本体部1と、播種機本体部を取付部材2に連結する連結機構3からなり、播種機本体部は、機体フレーム4に、駆動輪7、鎮圧輪8、播種装置9、駆動輪7の回転による駆動力を播種装置へ伝達する動力伝達機構11を備える。連結機構は、取付部材に固定される第1アーム29と、機体フレームに固定される第2アーム31と、両アーム間に回転自在に連結された支持アーム34からなり、播種機本体部は牽引走行に伴い上下動及び縦揺れ走行自在である。連結機構に設置されたロック機構(フック35と係止バー36)により、播種機本体部を鎮圧輪が接地し駆動輪が地表から浮いた吊り下げ姿勢にロックできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターの機体後部の取付部材に複数台並列に連結され、トラクターに牽引されて走行する播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の播種機は播種機本体部と、播種機本体部を前記取付部材に連結する連結機構からなる。播種機本体部は、一般に機体フレームと、機体フレームの前後に回転自在に取り付けられた駆動輪(前輪)及び鎮圧輪(後輪)と、駆動輪と鎮圧輪の間で機体フレームに設置された播種装置と、駆動輪の回転による駆動力を播種装置へ伝達する動力伝達機構を備える。また、播種装置は種子を多数収容する種子収容部と、動力伝達機構から駆動力を受け、種子収容部から種子を所定量ずつ繰り出し所定間隔で地表に落下させる繰出機構と、さらに播種溝形成用の作溝部材及び播種後の播種溝に覆土する覆土板を備える。この種の播種機は下記特許文献1,2に記載され、また、トラクター牽引型ではないが、類似の播種機が下記特許文献3,4に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−225515号公報
【特許文献2】実用新案登録第2502863号公報
【特許文献3】特開2005−318870号公報
【特許文献4】特開2005−333979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の播種機をトラクターの機体後部に複数台並列に連結し、播種機本体部をトラクターで牽引して圃場に播種を行うと、播種機の台数に応じた条数で播種が行われるが、圃場の端にきたとき、場合によってはより少ない条数で播種する必要が出てくる。このようなとき、従来の播種機では、駆動輪から播種装置への動力伝達をカットし、駆動輪が地表を走行しても播種装置が作動しないようにしている(これを条止めという)。駆動輪から播種装置へ伝達される動力は、一般に動力伝達機構の末端に配置された互いに噛み合う一対のスプロケット(一方が繰り出し機構の繰り出しロールと同軸に設置されている)に伝達され、該スプロケットの回転が前記繰り出しロールに伝達されるが、動力伝達のカットは、例えば、いずれかのスプロケットを回転軸に対して空回りするように、該スプロケットを回転軸に固定するピンを外すことにより行われている。しかし、トラクターの機体後部に複数台並列に配置された播種機相互の間隔は一般的に狭く、動力伝達をカットするにはその狭い間隔に手を差し入れてピンを外す必要があり、これは極めて操作しにくい作業である。
【0005】
また、株間調整(同じ条での播種間隔の調整)は、上記スプロケット対を異なる変速比の対に交換し、あるいは駆動輪に設置した変速回転板(特許文献4参照)に噛み合うピニオン歯車の位置を変更して行われるが、播種機相互の間隔が狭いため、これもやはり極めて操作しにくい作業である。さらに、播種作業中及び播種作業前後のメンテナンスも、従来は各播種機を取り外すか、横方向にずらして行わざるを得ず、これも面倒な作業であった。
本発明は、上記従来の播種装置の問題点に鑑みてなされたもので、トラクターの機体後部の取付部材に複数台並列に連結され、トラクターに牽引されて走行する播種機において、条止め、株間調整及びメンテナンスを従来より容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トラクターの機体後部の取付部材に複数台並列に連結され、トラクターに牽引されて走行する播種機本体部と、前記播種機本体部を前記取付部材に連結する連結機構からなり、前記播種機本体部が、機体フレームと、前記機体フレームの前後に回転自在に取り付けられた駆動輪及び鎮圧輪と、前記駆動輪と鎮圧輪の間で前記機体フレームに設置された播種装置と、前記駆動輪の回転による駆動力を播種装置へ伝達する動力伝達機構を備え、前記播種装置が、種子を多数収容する種子収容部と、前記動力伝達機構から駆動力を受け、前記種子収容部から種子を所定量ずつ繰り出し所定間隔で地表に落下させる繰出機構を備える播種機において、前記連結機構は、前記取付部材に対し播種機本体部を上下動及び縦揺れ走行自在に連結するとともに、前記鎮圧輪を接地させかつ前記駆動輪を地表から浮かせた吊り下げ姿勢で連結可能とするロック機構を備えることを特徴とする。
【0007】
好ましい実施の形態として、前記連結機構は、前記取付部材に固定される第1部材と、前記機体フレームに固定された第2部材と、一端が水平設置された第1連結支軸により前記第1部材に回転自在に連結され、他端が水平設置された第2連結支軸により前記第2部材に回転自在に連結された支持アームを備える。この場合、例えば、前記ロック機構は前記支持アームに設置された第1係止部材と、前記取付部材に設置され前記第1係止部材と協働してロック作用をなす第2係止部材からなる。
別の好ましい実施の形態として、前記機体フレームが前記駆動輪及び鎮圧輪の軸より上方位置に設置されていること、前記機体フレームが前記播種機本体部の片側のみに位置し、該機体フレームに播種機本体部の他の構成要素が支持されていることが挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラクターの機体後部に連結された複数の播種機のうち、一部の播種機において、播種機本体部の駆動輪側を持ち上げて前記ロック機構を作動させ、前記取付部材に対し播種機本体部を、鎮圧輪を接地させかつ前記駆動輪を地表から浮かせた吊り下げ姿勢で連結固定(ロック)することにより、播種機本体が走行しても駆動輪が回転せず、条止めが可能となる。つまり、単に播種機の駆動輪側を持ち上げ、駆動輪を地表から浮かせてロックするだけで、条止めが可能となるので、従来のように播種機同士の狭い隙間に手を入れて条止め作業を行う必要がなく、条止め作業が容易に行える。
また、駆動輪を地表から浮かせた状態で播種機本体部をロックできるので、同じく株間調整も容易に行える。株間調整後はロックを解いて播種機本体部を地表に下ろせばよい。同様の理由でメンテナンスも容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1〜3を参照して、本発明に係る播種機について説明する。
この播種機は、播種機本体部1と、播種機本体部1をトラクター(図示せず)の機体後部の取付部材2(紙面に垂直方向に所定長さを有する矩形中空断面の管状部材)に連結する連結機構3からなり、取付部材2に複数台並列に連結される。
播種機本体部1は、略水平に設置された機体フレーム4と、機体フレーム4の前後にそれぞれブラケット5,6を介して回転自在に取り付けられた駆動輪7及び鎮圧輪8と、駆動輪7と鎮圧輪8の間で機体フレーム4に設置された播種装置9と、駆動輪7の回転による駆動力を播種装置9へ伝達する動力伝達機構11と、播種装置9の下方に設置された播種溝形成用の作溝部材12、及び播種後の播種溝に覆土する覆土板13を備える。
【0010】
播種装置9は、種子を多数収容する種子収容部14(ホッパー)と、前記動力伝達機構から駆動力を受け、種子収容部14から種子を所定量ずつ繰り出し所定間隔で地表に落下させる繰出機構部15を備える。繰り出し機構部15には、図示しない繰り出しロールと、繰り出しロールから繰り出される種子を一時的に受け止めて下方に送り、下方で開放し落下させる図示しないシャッター機構を備える(いずれも特許文献4参照)。
【0011】
動力伝達機構11は、駆動輪7に固定され該駆動輪7と共に回転する変速回転板16(特許文献4参照)と、第1回転軸17及び第2回転軸18と、第1回転軸17に軸方向に位置調節自在に設置され、変速回転板16に同心円状に複数段、周方向に沿って等間隔に多数穿設された掛止穴19に噛み合うスプロケット21と、第2回転軸18の回転駆動力を90度変向させて次に伝達するベベルギア対(図示せず)と、該ベベルギア対に連結されたスプロケット22(図2参照)及びそれに噛み合うスプロケット23を備える。駆動輪7の回転駆動力は、変速回転板16、スプロケット21、第1,第2回転軸17,18、さらにベベルギア対を介してスプロケット22,23へと伝達され、スプロケット23の回転駆動力が同軸に固定された前記繰り出しロールへと伝達される。
【0012】
なお、動力伝達機構11において、第1回転軸17はフレーム24の両端に設置された軸受に回転自在に軸支され、その後端は自在継ぎ手25を介して第2回転軸18に連結されている。また、フレーム24は機体フレーム4に固定されたブラケット26に支持され、かつばね27により変速回転板16の側に(図1において紙面に垂直下向きに)押し付けられこれによりスプロケット21の歯が前記掛止穴19に嵌入している。
株間調整を行うときは、前記ばね27の付勢力に抗してフレーム24を変速回転板16から引き離す方向に引っ張ってスプロケット21を掛止穴19から外し、スプロケット21を第1回転軸17に沿って前後方向に移動させ、径の異なる他の段の同心円状の掛止穴17の位置で該掛止穴17に噛み合わせる。あるいはスプロケット23,24の組を異なる径比のスプロケットの組に変更する。
【0013】
前記連結機構3は、取付部材2への固定機構部28と、固定機構部28に斜め前方下向きに固定された第1リンク(第1部材)29と、機体フレーム4の駆動輪7と播種装置9の間に立設された第2リンク(第2部材)31と、一端が水平設置された第1連結支軸32により第1リンク29に回転自在に連結され、他端が水平設置された第2連結支軸33により第2リンク31に回転自在に連結された支持アーム34を備える。この連結構造により、播種機本体部1は前記取付部材2に上下動及び縦揺れ(ピッチング)走行自在に連結され、かつ牽引されて地表の起伏に沿って上下動及び縦揺れ自在に走行する。なお、従来の平行リンク機構からなる連結機構の場合(特許文献1,2参照)、上下動は自由に行われるがピッチングが制限されるため圃場表面への追従性が劣る。
【0014】
前記連結機構3には、ロック機構が設置される。このロック機構は、支持アーム34の上面側に固定されたフック(第1係止部材)35と、固定機構部28に設置された係止バー(第2係止部材)36からなる。係止バー36は、図3に示すように、固定機構部28にブラケット37により取り付けられた略四角形のリング状部材38の一部であり、固定機構部28を取付部材2に固定したとき該取付部材2に設置されることになる。
支持アーム34を手で引き上げて播種機本体部1を持ち上げ、フック35を係止バー36に引っ掛ける(仮想線参照)ことにより、播種機本体部1を、鎮圧輪8を接地させかつ駆動輪7を地表から浮かせた吊り下げ姿勢で取付部材2に連結固定(ロック)することができる。この状態で播種機本体部1を走行させても、駆動輪7が回転せず、駆動力が発生しないので、播種装置9による種子の繰り出しは生じない(すなわち条止めができる)。播種機本体部1の持ち上げ高さは、作溝部材12が地表から浮く程度、さらに覆土板13が地表から浮く程度が望ましい。
また、ロックした播種機本体部は、並列に配置された他のロックしていない播種機本体部より上方に位置し、その播種機本体部について株間調整やメンテナンスが従来より容易に行える。株間調整やメンテナンスが終われば、その播種機本体部はロックを解き、次の播種機本体部をロックして株間調整やメンテナンスを行い、これを繰り返すとよい。
【0015】
前記連結機構3には、さらに播種機本体部1を下向きに適度の圧力で押さえる接地圧調整機構39が設置されている。設置圧調整機構39は、固定機構部28の側面から斜め上向きに突出するレバー41と、支持アーム34に固定されたブラケット42と、下端がブラケット42に揺動自在に支持され、上端近傍がレバー41の先端に水平に突出しかつ回転自在に取り付けられた受け部材43の穴に摺動可能に挿通されたロッド44と、ロッド44の周囲に被嵌した圧縮ばね45を備える。圧縮ばね45は上端が前記受け部材43で規制され、下端がロッド44の長さ方向の複数カ所に形成された穴に挿入可能なロックピン46で止められ、播種機本体部1に接地圧を付加する。
【0016】
前記連結機構3には、第1リンク29の上面側にストッパ47が設置されている。このストッパ47は、例えばトラクターが圃場の端に到達して停止し、次いで方向転換する前に取付部材2を上昇させたとき、支持アーム34が下にだれ下がると、播種機本体部1が十分上昇しないため、支持アーム34の端部を係止して、支持アーム34が一定の角度から下にだれ下がらないようにするものである。
また、前記連結機構3の支持アーム34と機体フレーム4の間に引っ張りばね48が設置されている。この引っ張りばね48は、播種機本体部1を吊り下げ姿勢でロックしたとき、駆動輪7を支持アーム34側に引きつけ、第2連結支軸33を中心として播種機本体1が揺動しても、駆動輪7が接地しないように地表から浮かせた状態を保持するためのものである。
【0017】
なお、播種機本体部1では、機体フレーム4を駆動輪7及び鎮圧輪8の軸より上方に位置させ、動力伝達機構11よりも上方位置に設置している。このように機体フレーム4を高い位置に設置することにより、機体フレーム4が土押ししたり、圃場の夾雑物を引っ掛けることを防止できる。なお、機体フレーム4を圃場表面から高い位置に配置する他の手段として、例えば駆動輪の大径化が考えられるが、この場合は播種機本体部1の大型化をまねく。
また、特に図2に示すように、播種機本体部1では、機体フレーム4が播種機本体部の片側のみに位置し、この機体フレーム4に他の構成要素、つまり、駆動輪7、鎮圧輪8、播種装置9、動力伝達機構11等が支持されている。これにより、播種機本体部1の幅を狭くでき、挟幅条間への適応性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る播種機の側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】フック及び係止バー付近の右側面図(フックと係止バーが係合した状態)である。
【符号の説明】
【0019】
1 播種機本体部
2 取付部材
3 連結機構
4 機体フレーム
7 駆動輪
8 鎮圧輪
9 播種装置
11 動力伝達機構
12 作溝装置
13 覆土板
16 変速回転板
29 第1リンク
31 第2リンク
34 支持アーム
35 フック(第1係止部材)
36 係止バー(第2係止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターの機体後部の取付部材に複数台並列に連結され、トラクターに牽引されて走行する播種機本体部と、前記播種機本体部を前記取付部材に連結する連結機構からなり、前記播種機本体部が、機体フレームと、前記機体フレームの前後に回転自在に取り付けられた駆動輪及び鎮圧輪と、前記駆動輪と鎮圧輪の間で前記機体フレームに設置された播種装置と、前記駆動輪の回転による駆動力を播種装置へ伝達する動力伝達機構を備え、前記播種装置が、種子を多数収容する種子収容部と、前記動力伝達機構から駆動力を受け、前記種子収容部から種子を所定量ずつ繰り出し所定間隔で地表に落下させる繰出機構を備える播種機において、前記連結機構は、前記取付部材に対し播種機本体部を上下動及び縦揺れ走行自在に連結するとともに、前記鎮圧輪を接地させかつ前記駆動輪を地表から浮かせた吊り下げ姿勢で連結可能とするロック機構を備えることを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記連結機構は、前記取付部材に固定される第1部材と、前記機体フレームに固定された第2部材と、一端が水平設置された第1連結支軸により前記第1部材に回転自在に連結され、他端が水平設置された第2連結支軸により前記第2部材に回転自在に連結された支持アームを備えることを特徴とする請求項1に記載された播種機。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記支持アームに設置された第1係止部材と、前記取付部材に設置され前記第1係止部材と協働してロック作用をなす第2係止部材からなることを特徴とする請求項2に記載された播種機。
【請求項4】
前記機体フレームが前記駆動輪及び鎮圧輪の軸より上方位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された播種機。
【請求項5】
前記機体フレームが前記播種機本体部の片側のみに位置し、該機体フレームに播種機本体部の他の構成要素が支持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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