説明

播種機

【課題】播種装置を備えた機体フレームの前後に前輪と後輪を配置し、前輪側に、該前輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを搭載すると共に、後輪近傍の機体フレームよりハンドルアームを延設した播種機において、段差越え作業などを、ハンドルアームを把持して行うには大きな人力を要する、という問題があった。
【解決手段】ハンドルアーム34に、補助ハンドル25を略水平に設けることにより、駆動ローラ5を支点とした鎮圧ローラ6の上昇と機体の旋回を容易し、更に、ハンドルアーム34にハンドル固定具44を設け、該ハンドル固定具44に、補助ハンドル25を回転可能に支持する支点軸45と、該補助ハンドル25を収納状態または展開状態に支持する回転規制軸46とを近接して設けることにより、補助ハンドル25を折りたたみ収納可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種装置を備えた機体フレームの前後に前輪と後輪を配置し、前記前輪側に、該前輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを搭載すると共に、前記後輪近傍の機体フレームよりハンドルアームを延設した播種機に関し、特に、該ハンドルアームの把持補助構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前輪と後輪を支承した機体フレームに播種装置を備えた播種機では、前記機体フレームの後部から延設したハンドルアームを人力で前方へ押し操作することにより、走行しながらの播種作業を行うようにしている。しかし、播種面積が広い場合や、播種の条数が多い場合に、このような人力のみで走行するには多大な労力を要した。
そこで、走行のための補助動力として走行用の電動モータを搭載し、該電動モータからの回転動力を前記前輪と後輪の少なくとも一方に伝達して駆動させる技術(例えば、特許文献1参照)が公知となっている。該技術によると、ハンドルアームを把持して押動するのに要する力が小さくて済み、人力のみで走行するのに比べて労力を大幅に軽減できる。
ただし、この技術においては、電動モータに加え、該電動モータに電力を供給するためのバッテリも播種機に搭載する必要があり、これら電動モータ・バッテリのいずれも重くて播種機の重量の増加が避けられない。このため、播種機の保管場所と圃場との間の移動や、互いに離れた圃場の間の移動など、圃場以外の場所を移動する際に、移動途中の段差を乗り越えるのが難しかった。更に、前記電動モータからの回転動力を後輪に伝達して後輪駆動にすると、この後輪の前方に配置された作条爪などの作溝具が、その先端の角度によっては、後方の後輪から加わる押動力によって土中に潜り込んでしまう場合があった。
そこで、前記電動モータとバッテリのいずれも前輪側に集中配置させ、機体の重心位置を前部に位置させる(以下、「前重心」とする)と共に、前記電動モータからの回転動力を前輪に伝達して前輪駆動とする。これにより、ハンドルアームを把持して後輪を浮かせた状態で、大きな荷重のかかった前輪を回転駆動させながら段差に当接すると、該段差の表面に沿って前輪を駆動前進させることができ、播種機が段差を乗り越え易くすると共に、前上方への牽引力を前方の前輪から作溝具に付与し、該作溝具が土中へ潜り込まないようにする対応が考えられる。
この前重心・前輪駆動タイプの播種機によると、圃場以外での前記段差越えの際はもちろんのこと、圃場内での方向転換の際にも、重い前輪側を支点にして後輪を上昇させ、続いて機体を前方に傾けた状態で容易に旋回させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−312678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハンドルアームは、播種作業での押し操作に適した構造であって、一般に、後斜め上方または略鉛直上方に延設されているため、前記段差越え作業や方向転換作業を、このハンドルアームを把持して行うには大きな人力を要する。このため、段差越えや方向転換中の作業負荷が増加し、その作業性が悪化する、という問題があった。
更に、播種装置の繰出部を後輪の回転動力によって駆動している場合には、播種作業直後の方向転換中に後輪を圃場面から確実に浮かせておかないと、後輪が圃場面に誤って接触して回転し、繰出部が駆動されて種子が無駄に繰り出され、種子コストが増加する、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、播種装置を備えた機体フレームの前後に前輪と後輪を配置し、前記前輪側に、該前輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを搭載すると共に、前記後輪近傍の機体フレームよりハンドルアームを延設した播種機において、前記ハンドルアームに、補助ハンドルを略水平に設けることにより、前記前輪を支点とした後輪の上昇と機体の旋回を容易にしたものである。
請求項2においては、前記ハンドルアームにハンドル固定具を設け、該ハンドル固定具に、前記補助ハンドルを回転可能に支持する支点軸と、該補助ハンドルを収納状態または展開状態に支持するストッパとを近接して設けることにより、前記補助ハンドルを折りたたみ収納可能とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、重量の重い前重心・前輪駆動タイプの播種機において、略水平に設けてあり把持し易い補助ハンドルを使うことにより、前輪側を支点に後輪を上昇させ、続いて機体を前方に傾けた状態で自在に旋回させることができ、後輪の上昇操作と機体の旋回操作が小さな人力ですみ、段差越え作業や方向転換作業の作業負荷が減少し、その作業性が向上する。更に、播種装置の繰出軸を後輪の回転動力によって駆動している場合であっても、播種作業直後の方向転換作業中に、後輪を圃場面から確実に浮かせておくことができ、後輪が圃場面に誤って接触して回転し繰出軸が駆動されて種子が無駄に繰り出されるのを防止し、種子コストを削減することができる。
請求項2により、播種機の格納時には、補助ハンドルを収納して、格納性を向上させることができる。更に、折りたたみ収納に必要な構造を小さくすることができ、前記ハンドル固定具のコンパクト化と部品コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わる播種機の全体構成を示す側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】補助ハンドルの斜視図である。
【図4】補助ハンドルを使った方向転換作業の説明図であって、図4(a)は補助ハンドルの引き上げによる播種機の前傾状態を示す説明図、図4(b)は補助ハンドルの水平移動による播種機の180度旋回状況を示す説明図、図4(c)は補助ハンドルの下降による播種機の水平復帰状況を示す説明図である。
【図5】深さ調節具の側面図である。
【図6】深さ調節具を使った播種深さ調節作業の説明図であって、図6(a)は後フレームの前半部を略水平に保持させた播種機の播種深さを示す説明図、図6(b)は後フレームの前半部を前傾させた播種機の播種深さを示す説明図である。
【図7】作条爪を固設した繰出ベースを示す図であって、図7(a)は同じく平面図、図7(b)は同じく側面図である。
【図8】播種装置着脱構造を使った播種装置の取り付けと動力接続との第一操作の説明図である。
【図9】作条爪を固設した繰出ベースに播種装置を取り付けた状態を示す側面図である。
【図10】別形態の播種機を示す側面図である。
【図11】同じく平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向を播種機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向などはこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
まず、本発明に関わる歩行型の播種機1について、その全体構成を図1、図2により説明する。
該播種機1には、左右一対の機体フレーム2・3が配置され、このうちの左の機体フレーム2では、前フレーム2aと後フレーム2bとが連結軸4Lを中心にして上下に屈曲可能に連結され、同様に、右の機体フレーム3でも、前フレーム3aと後フレーム3bが連結軸4Rを中心にして上下に屈曲可能に連結されている。そして、このうちの左右の前フレーム2a・3aの前部間に、駆動ローラ5のローラ軸7が支承される一方、左右の後フレーム2b・3bの後部間に、鎮圧ローラ6のローラ軸8が支承されている。
【0010】
更に、該左右の後フレーム2b・3bの前半部間には、前後に支持バー11・12が横架され、該支持バー11・12によって繰出ベース13の前後端が支持されている。該繰出ベース13の上面には、下部に繰出部14aを有する播種装置14が搭載される一方、繰出ベース13の下面には、後方に覆土板16を支持した作条爪15が固設されており、これら播種装置14、繰出ベース13、作条爪15、及び覆土板16等より、各条毎に播種ユニット17が構成されている。該播種ユニット17は、本実施例では、左右方向に略等間隔で4個列設され、該4個の播種ユニット17から播種部9が形成されている。
【0011】
そして、該播種部9の後方で前記後フレーム2b・3bの後部間には、操作部10が配置され、該操作部10は、上下のアーム部材35・36から成ると共に略鉛直上方に立設された正面視門型のハンドルアーム34と、本発明に関わる補助ハンドル25とから構成される。一方、前記播種部9の前方で前フレーム2a・3aと後フレーム2b・3bとの間には、深さ調節具26が配置され、該深さ調節具26は、前後途中で上下に屈曲可能な前記機体フレーム2・3と一緒になって播種深さ調節機構64を構成している。
【0012】
また、前記後フレーム2b・3bの前部間で、前記支持バー11・12の間には、入力軸23が回動可能に横架されると共に、該入力軸23は、後述する播種装置着脱構造27内の伝達経路を介して、前記播種装置14の繰出軸24に連結される。そして、この入力軸23の右端は、動力伝達経路18を介して、前記鎮圧ローラ6のローラ軸8に連結されている。
【0013】
ここで、該動力伝達経路18においては、右の後フレーム3bの前後中央部外面に伝動ケース19が固設され、該伝動ケース19内の前部に前記入力軸23の右端が貫入され、該右端にスプロケット21が外嵌固定される。同様に、前記伝動ケース19内の後部にも前記ローラ軸8の右端が貫入され、該右端にスプロケット20が外嵌固定されており、該スプロケット20と前記スプロケット21との間に、チェーン22が巻回されている。
【0014】
これにより、播種機1が進行すると、鎮圧ローラ6が回転し、該鎮圧ローラ6の回転動力が、ローラ軸8、スプロケット20、チェーン22、スプロケット21から入力軸23に伝達され、播種装置14の繰出軸24が駆動されて、圃場に種子が繰り出されるようにしている。
【0015】
また、前記前フレーム2a・3aの前部で、前記ローラ軸7の支承部近傍からは、左右一対の支持フレーム28L・28Rが立設され、該支持フレーム28L・28Rの上端部間には、バッテリ台29が横設されており、該バッテリ台29上に、バッテリ30が搭載される。
【0016】
該バッテリ30は、信号線31を介して、前記上アーム部材35の把持アーム部35aの左右略中央に設けたモータスイッチ33に接続されると共に、信号線32を介して、前記駆動ローラ5内に組み込んだ走行モータ37に接続される。
【0017】
これにより、ハンドルアーム34の把持アーム部35aを把持しながらモータスイッチ33を操作すると、該モータスイッチ33からの信号により、バッテリ30から走行モータ37に電力が供給され、前輪である駆動ローラ5がモータ駆動されて播種機1が走行されるようにしており、前記走行モータ37とバッテリ30のいずれも駆動ローラ5側に集中配置された前重心・前輪駆動タイプの播種機1が構成されている。
【0018】
従って、たとえ機体前方に段差があっても、前述の如く、ハンドルアームを把持して後輪を浮かせた状態で、大きな荷重のかかった重い駆動ローラ5を回転駆動させながら段差に当接すると、該段差の表面に沿って駆動ローラ5を駆動前進させることができ、アクチュエータを用いず、また特別な操作も必要とせずに、播種機1が段差を容易に乗り越えることができる。
【0019】
なお、前記駆動ローラ5において、その前方で左右の前フレーム2a・3a間には、泥落とし用の前スクレパー38が、駆動ローラ5の前部外周面に向かって突出されると共に、駆動ローラ5の上方には、バッテリ台29の下面から、持ち運び用の平面視門形の把手51が前方に突設されている。更に、前記鎮圧ローラ6の後方で後フレーム2b・3b間にも、泥落とし用の後スクレパー39が、鎮圧ローラ6の後部外周面に向かって突出されている。
【0020】
次に、前記操作部10と、それによる方向転換作業について、図1乃至図4により説明する。
図1、図2に示すように、該操作部10において、前記ハンドルアーム34は、前述の如く、上アーム部材35と下アーム部材36とから成る。
そして、このうちの下アーム部材36においては、前記ローラ軸8より後方の後フレーム2b・3bから略鉛直上方に、左右の縦アーム部36b・36bが前後回動可能に立設されると共に、該縦アーム部36b・36bの上端間が、横アーム部36aによって連結されている。
【0021】
前記縦アーム部36b・36bの上下途中部からは、左右一対のステー41・41が前方に突設され、該ステー41・41の前端部には、図示せぬネジ孔が開口され、該ネジ孔と同軸状にナット42a・42aが外側面に固設されている。一方、前記ローラ軸8より前方の後フレーム2b・3bからは、それぞれ左右一対の突出部2b1・3b1が上方に突設され、該突出部2b1・3b1の上端に、ハンドル傾斜調節フレーム40・40の下端が前後回動可能に連結される。そして、該ハンドル傾斜調節フレーム40・40の上端には、長孔40a・40aが設けられており、該長孔40a・40aを挿通するようにして、ボルト42b・42bが内側から前記ナット42aに締められている。
【0022】
これにより、前記ボルト42b・42bを緩めて長孔40a・40aに沿って摺動させ、縦アーム部36b・36bを前後方向に傾倒した後、再びボルト42・42を締めることにより、ハンドルアーム34を所定の前後傾斜角に調節できるようにしている。
【0023】
前記上アーム部材35においては、パイプ状で上端が開口した前記縦アーム部36b・36b内に、上アーム部材35を構成する縦アーム部35b・35bが上から内挿されると共に、該縦アーム部35b・35bの上端間は、前記把持アーム部35aによって連結される。
【0024】
そして、下アーム部材36の縦アーム部36b・36bの上端前部には、ボルト43・43が前方から螺挿されており、該ボルト43・43の螺挿進行に伴って、ボルト43・43の後端を上アーム部材35の縦アーム部35b・35bの前面に押圧することにより、上アーム部材35が下アーム部材36に対して締結固定される。
【0025】
これにより、前記ボルト43を緩め、上アーム部材35を下アーム部材36に沿って摺動させて昇降させた後、再びボルト43を締めることにより、ハンドルアーム34の高さを所定の高さに調節するようにしている。
【0026】
以上のようにして、ハンドルアーム34の前後傾斜角と高さを無段階で変更し、播種作業中に、ハンドルアーム34を把持アーム部35aで把持して人力で前方に押し操作するのに適した状態に設定することができ、押し操作が小さな人力ですみ、播種作業の作業負荷が減少し、その作業性が向上する。
【0027】
また、図1、図3に示すように、このような調節構造を有するハンドルアーム34には、左右一対の補助ハンドル25・25をそれぞれ折りたたみ収納可能な左右一対のハンドル固定具44・44が設けられている。
【0028】
該ハンドル固定具44は、上アーム部材35の縦アーム部35bの上下途中部に外嵌される筒体44aと、該筒体44aの左右両側面から後方に延設される左右一対の側板44b・44cと、該側板44b・44cの後部上端間を連結する天板44dなどから構成される。
【0029】
前記筒体44aの前部には、ボルト52が前方から螺挿されており、該ボルト52の螺挿進行に伴って、ボルト52の後端を前記縦アーム部35bの前面に押圧することにより、ハンドル固定具44が縦アーム部35bに対して締結固定される。
【0030】
これにより、前記ボルト52を緩め、筒体44aを上アーム部材35に沿って摺動させ、ハンドル固定具44を昇降させた後、再びボルト52を締めることにより、ハンドル固定具44を所定の高さに調節するようにしている。
【0031】
前記左の側板44bには、側面視で前後中央上部と後下部に、それぞれ挿通孔44e・44fが穿孔され、同様に、右の側板44cにも、側面視で前後中央上部と後下部に、それぞれ挿通孔44g・44hが穿孔されている。そして、このうちの左右の挿通孔44e・44gを挿通して支点軸45が横架され、左右の挿通孔44f・44hを挿通して回転規制軸46が横架されている。
【0032】
更に、前記支点軸45は、内端に大径の頭部45aが形成される一方、外端には割ピン47が入れられて、該割ピン47と前記頭部45aにより抜け止めがなされ、同様に、前記回転規制軸46も、内端に大径の頭部46aが形成される一方、外端にはスナップピン48が入れられ、該スナップピン48と前記頭部46aにより抜け止めがなされている。そして、このうちの支点軸45を、前記補助ハンドル25を構成するパイプ状の本体部25aの前端部の孔に挿入することにより、補助ハンドル25が支点軸45によって前後回動可能に軸支されるようにしている。
【0033】
以上のような構成により、補助ハンドル25を位置49まで垂下させ、前記ハンドルアーム34の縦アーム部35bに近接配置した上で、補助ハンドル25の後方に前記回転規制軸46を横架させておくことができる。これにより、播種機1を格納する際に補助ハンドル25が邪魔になるような場合には、該補助ハンドル25を、前記筒体44aの後部と回転規制軸46の前部との間の空間に折りたたみ収納して、補助ハンドル25の動きを制限することができる。
【0034】
前記段差越え作業や方向転換作業の直前、あるいは播種作業中のハンドルアーム34の押し操作が前記補助ハンドル25により干渉される恐れが小さい場合は、前記スナップピン48を外してから頭部46aを持って回転規制軸46を脱着し、把持部25bを把持したまま、支点軸45を中心にして補助ハンドル25を位置49から位置50まで後方に引き上げた後、再び回転規制軸46を横架してスナップピン48で抜け止めする。
【0035】
これにより、補助ハンドル25を回転規制軸46の上部と天板44dの下部との間の空間に収納して、補助ハンドル25をハンドルアーム34から略水平に展開して保持することができる。
【0036】
また、このような取り付け構造を有する補助ハンドル25を使った作業手順について、方向転換作業を例に説明する。
図4(a)に示すように、補助ハンドル25を前記位置50から位置53まで引き上げることにより、駆動ローラ5を支点に鎮圧ローラ6を上昇させ、播種機1を水平状態から前方に傾ける。この際、ハンドルアーム34が略鉛直上方に立設されているのに対し、補助ハンドル25は略水平に展開されているため、その把持部25bを作業者が掴みやすく、鎮圧ローラ6の上昇操作にかかる人力が小さくてすむ。
【0037】
図4(b)に示すように、前記鎮圧ローラ6を圃場から浮かせた状態で、駆動ローラ5を支点にして、補助ハンドル25を前記位置53から位置54まで水平移動させることにより、播種機1を180度旋回させる。この際も、補助ハンドル25を作業者が掴みやすく、機体の旋回操作にかかる人力が小さくてすむ。
【0038】
図4(c)に示すように、180度旋回した播種機1は、補助ハンドル25を前記位置54から位置55まで下げることにより、駆動ローラ5を支点に鎮圧ローラ6を下降させて播種機1が水平に復帰し、方向転換作業が完了する。
【0039】
すなわち、播種装置14を備えた機体フレーム2・3の前後に前輪である駆動ローラ5と後輪である鎮圧ローラ6を配置し、前記駆動ローラ5側に、該駆動ローラ5を駆動する電動モータである走行モータ37と、該走行モータ37に電力を供給するバッテリ30を搭載すると共に、前記鎮圧ローラ6近傍の機体フレーム2・3よりハンドルアーム34を延設した播種機1において、前記ハンドルアーム34に、補助ハンドル25を略水平に設けることにより、前記駆動ローラ5を支点とした鎮圧ローラ6の上昇と機体の旋回を容易にしたので、重量の重い前重心・前輪駆動タイプの播種機1において、略水平に設けてあり把持し易い補助ハンドル25を使うことにより、駆動ローラ5側を支点に鎮圧ローラ6を上昇させ、続いて機体を前方に傾けた状態で自在に旋回させることができ、鎮圧ローラ6の上昇操作と機体の旋回操作が小さな人力ですみ、段差越え作業や方向転換作業の作業負荷が減少し、その作業性が向上する。更に、播種装置14の繰出軸24を鎮圧ローラ6の回転動力によって駆動している場合であっても、播種作業直後の方向転換作業中に、鎮圧ローラ6を圃場面から確実に浮かせておくことができ、鎮圧ローラ6が圃場面に誤って接触して回転し繰出軸24が駆動されて種子93が無駄に繰り出されるのを防止し、種子コストを削減することができる。
【0040】
更に、前記ハンドルアーム34にハンドル固定具44を設け、該ハンドル固定具44に、前記補助ハンドル25を回転可能に支持する支点軸45と、該補助ハンドル25を収納状態または展開状態に支持するストッパである回転規制軸46とを近接して設けることにより、前記補助ハンドル25を折りたたみ収納可能とするので、播種機1の格納時には、補助ハンドル25を収納して、格納性を向上させることができる。更に、折りたたみ収納に必要な構造を小さくすることができ、前記ハンドル固定具44のコンパクト化と部品コストの削減を図ることができる。
【0041】
次に、前記播種深さ調節機構64について、図1、図2、図5、図6により説明する。
図1,図2に示すように、該播種深さ調節機構64は、前述の如く、屈曲可能な前記機体フレーム2・3と深さ調節具26とにより構成される。
【0042】
ここで、前記左右の前フレーム2a・3aの後部で、前記ローラ軸7と連結軸4L・4Rとの間には、左右の曲がり部2a1・3a1が上方に凸状に屈曲形成され、該曲がり部2a1・3a1間に前支軸62が横架される一方、前記左右の後フレーム2b・3bの前端部間には、後支軸63が横架されている。そして、該後支軸63の左右略中央部と前記前支軸62の左右略中央部との間に、この深さ調節具26が介設されている。
【0043】
図5に示すように、該深さ調節具26は、前半部に穿孔された横孔57aに前記前支軸62が嵌入されるブロック状の第一連結部材57と、下端部に穿孔された横孔58aに前記後支軸63が嵌入されるパイプ状の第二連結部材58と、該第二連結部材58と前記第一連結部材57との間に介設された調節ハンドル56とから構成される。
【0044】
該調節ハンドル56の軸部56bは、前記第一連結部材57の後半部に穿孔された縦孔57bを上方から貫通し、該縦孔57b内に、軸部56bの上下略中央が昇降不能かつ回動可能に支持される。更に、軸部56bの下端は、前記第二連結部材58の上面に固定されたナット59から、同じ第二連結部材58の上半部の筒内に螺刻された縦ネジ孔58bにかけて、螺挿されている。
【0045】
このような構成により、前記調節ハンドル56の側面視L字状のハンドル部56aを把持して回転し、前記軸部56bの先端をナット59から縦ネジ孔58bにかけて上下方向に螺挿進行させ、第一連結部材57と第二連結部材58との間隔65を伸縮することにより、前記連結軸4L・4Rを中心にして支軸62・63を上下方向に開閉することができる。
【0046】
ここで、前記第一連結部材57の後面にはボルト61によってスケール60が締結されており、該スケール60の下半部に刻設した目盛り60aから、前記第二連結部材58の上部に設けた基準線58cの位置を読み取ることにより、播種深さの目安となるようにしている。なお、前記調節ハンドル56の軸部56bで第一連結部材57よりも上方の部位には、スプリングピン105が半径方向に突設されており、回転した該スプリングピン105がスケール60の上半部の板バネ部60bに当接することにより、調節ハンドル56の回り止めを可能としている。
【0047】
更に、該支軸62・63は前記連結軸4L・4Rから十分に離間して配設されており、腕の長さを長くして、前記連結軸4L・4Rを支点としたモーメントを大きくすることができ、ハンドル部56aの回転に必要な人力が小さくてすみ、播種深さ調節作業の作業負荷が減少するようにしている。
【0048】
続いて、このような伸縮構造を有する深さ調節具26を使った播種深さ調節手順について説明する。
図6(a)に示すように、深さ調節具26の調節ハンドル56を回転し、連結部材57・58間を間隔65に設定した状態では、連結軸4Lを中心にした前フレーム2a・3aと後フレーム2b・3bとの成す角度(以下、「屈曲角」とする。)が角度67となっている。この際、後フレーム2b・3bの前半部は略水平に保持されており、この水平姿勢にある全ての播種ユニット17において、播種深さに相当する、圃場面110から作条爪15の下端位置である位置71までの深さは、深さ69に設定されている。
【0049】
なお、本実施例では、側面視で、連結軸4L・4Rを中心とし、該連結軸4L・4Rから支軸62・63までを半径とした場合の中心角を屈曲角としているが、前フレームと後フレームとの屈曲の度合いを示す角度であればよく、その定義は特に限定されるものではない。
【0050】
図6(b)に示すように、調節ハンドル56を更に回転し、連結部材57・58間を前記間隔65から間隔66まで伸張させると、屈曲角は前記角度67から角度68まで拡大し、後フレーム2b・3bの前半部が前下方に傾斜される。これに伴い、全ての播種ユニット17において、作条爪15も前下方に傾斜し、その下端位置が前記位置71から位置72に変更され、播種深さは前記深さ69から深さ70まで深くなり、これによって、全播種ユニット17の播種深さ調節作業が完了する。
【0051】
従って、作業に伴う機体振動、圃場の状況変化、栽培条件などに応じて播種深さを変更する必要がある場合には、このような播種深さ調節機構64を使用することで、全ての播種ユニット17における播種深さを一括して適正な値に設定することができる。
【0052】
すなわち、機体フレーム2・3の前後に前輪である駆動ローラ5と後輪である鎮圧ローラ6を配置し、該駆動ローラ5と鎮圧ローラ6の間に、播種装置14と作溝具である作条爪15とを備える播種ユニット17を左右方向に列設し、複数条に一括して播種を行う播種機1において、前記機体フレーム2・3の少なくとも一部である前フレーム2a・3aに対して全ての播種ユニット17を同時に傾倒可能な播種深さ調節機構64を設けたので、全ての播種ユニット17に備えた作条爪15も同時に傾倒させ、播種深さである深さ69・70を一括して変更することができ、播種機1の対応条数が多くなっても、播種深さ調節作業に手間や時間がかからず、播種作業の作業性が悪化しない。
【0053】
更に、前記機体フレーム2・3は、前記駆動ローラ5を支承する前フレーム2a・3aと前記鎮圧ローラ6を支承する後フレーム2b・3bとに前後二分割し、該後フレーム2b・3bと前記前フレーム2a・3aとは、連結軸4L・4Rを中心にして上下に屈曲可能に連結すると共に、前記前フレーム2a・3aまたは後フレーム2b・3bの一方のみに、全ての播種ユニット17を支持することにより、前記前フレーム2a・3aと後フレーム2b・3bとの成す屈曲角である角度67・68を変更して、全ての播種ユニット17を同時に傾倒可能とするので、各作条爪15は、複数の部品から成る播種深さ調節機構を介することなく、機体フレーム2・3に対し、直接に、あるいは単一の部材である繰出ベース13を介して、強固に連結することができ、たとえ、土壌や作条爪15の状態などが悪くて、土壌から受ける抵抗の増大・不均一化などが起こっても、作条爪15が偏移したり振動することがなく、播種深さ精度の低下を防止できる。
【0054】
加えて、前記前フレーム2a・3aと後フレーム2b・3bのうちの一方のフレームの端部と他方のフレームの途中部との間に前記連結軸4L・4Rを介設すると共に、該連結軸4L・4Rから離間した位置で前フレーム2a・3aと後フレーム2b・3b間の間隔を変更可能な深さ調節具26を備えるので、一方のフレームの途中部と他方のフレームの端部との間に深さ調節具26を設けるだけの簡単な構成で、屈曲角である角度67・68を変更することができ、部品コストの削減と組立性の向上を図ることができる。しかも、支点である連結軸4L・4Rから離間して深さ調節具26を備えることにより、腕の長さを長くしてモーメントを大きくすることができ、小さな操作力で深さ調節具を伸縮させて、播種深さ調節作業の作業負荷の軽減を図ることができる。
【0055】
次に、前記播種装置着脱構造27について、図1、図7乃至図9により説明する。
該播種装置着脱構造27とは、前記作条爪15を固設した繰出ベース13に対し、播種装置14の繰出部14aの取り付けと動力接続、または取り外しと動力切断を、いずれも一操作で可能とするものである。まず、この播種装置着脱構造27を構成する各装置・部材について説明する。
【0056】
図8に示すように、前記播種装置14は、上下が開口した種子ケース73の下部開口に、後斜め下方から繰出ロール74を挿嵌し、その上から、下繰出ケース91を覆設して構成される。
【0057】
このうち、前記種子ケース73は、上面が蓋体92で覆われ種子を蓄えるホッパ部73aと、該ホッパ部73aよりも下方にある上繰出ケース部73bとから成り、該上繰出ケース部73bと前記下繰出ケース91とから、種子93を所定量だけ繰り出すための前記繰出部14aが形成される。そして、該繰出部14aの前下端部には、左右一対の第一係止突部14b・14bが左右外方に突設されると共に、繰出部14aの後下端部には、第二係止突部14cが後方に突設されている。
【0058】
前記繰出ロール74には、左右方向に軸孔74bが穿孔され、該軸孔74bは、前記種子ケース73の下部に穿孔した通し孔73cと略同一軸心上に配置されており、前記繰出軸24が、該通し孔73c内に回動可能に挿通されると共に、前記軸孔74b内に回動不能に嵌合されている。そして、該繰出軸24の一端は、前記種子ケース73から外部に突出され、その端部には、従動ギア75が外嵌固定されている。更に、前記繰出ロール74の外周面には、凹部74aが周方向に略等間隔で形成されており、該凹部74a内に前記種子93が入り込むようにしている。
【0059】
これにより、繰出ロール74が矢印94の方向に回転していくと、種子93は、前記ホッパ部73aから凹部74a内に転がり入り、該凹部74a内に保持された状態で搬送される。そして、途中で図示せぬブラシにより、凹部74aから溢れた種子93などが取り除かれた後、該種子93は、前記凹部74a内に保持された状態で所定の落下位置に搬送され、前記下繰出ケース91の下部に開口した繰出口91aより、前記繰出ベース13内に落下される。
【0060】
また、図7に示すように、前記繰出ベース13は、後方に開いた平面視U字状の切り欠き76aを後部に有する底板76と、該底板76の左右側縁から立設した左右一対の側板77・78と、左の側板77の左外側面に複数のボルト88によって締結固定されたギアケース79とを有する。
【0061】
このうち、前記側板77・78の前部には、左右方向に軸心を有するパイプ状の取付けボス部87が固設されており、該取付けボス部87をノブネジ86によって前支持バー11に固定することにより、側板77・78の前部が前支持バー11に固設される。同様に、前記側板77・78の後端部には、後方に開いた凹部77a・78aが形成され、該凹部77a・78aが前記後支持バー12に嵌合固定されており、側板77・78の後部が後支持バー12に固設される。これにより、繰出ベース13が、前後の支持バー11・12を介して、前記後フレーム2b・3bに支持される。
【0062】
更に、前記側板77・78で前半部の内側面には、側面視で下に凸状の側方挟持板83・83が貼設固定されると共に、側板77・78で後半部の内側面には、平面視で後方に開いたU字状の固定部81aを介して上方挟持板81が貼設固定されている。
【0063】
前記底板76の前後略中央には、矩形状の連通孔76bが開口され、該連通孔76bより前方の底板76の上面76cと、前記側方挟持板83・83の前下部の外周傾斜面83a・83aとの間に、前挟持空間89が設けられている。
【0064】
更に、前記底板76の後端部には、平面視で後方に開いたY字状の下方挟持板80の後端が固設され、該下方挟持板80の前部は、前斜め上方に向かって延出された後、前記上方挟持板81で固定部81aよりも前方にある上水平部81bの直下に達すると、再び水平に戻されて下水平部80aとなる。そして、該下水平部80aと前記上水平部81bとの間に、後挟持空間90が設けられている。
【0065】
前記ギアケース79は、前記左の側板77の左側面から左方に膨出すると共に、該ギアケース79は、その後端部を除いて上部が開口されており、前記播種装置14の左方に設けた前記従動ギア75が、上方から上部開口79aを通ってギアケース79内に挿入されるようにしている。
【0066】
更に、ギアケース79で上部が閉口された後端部には、その内部空間に駆動ギア82が収納され、該駆動ギア82は、前記ギアケース79内で前記従動ギア75と噛合可能な位置において、前記入力軸23に外嵌固定されている。
【0067】
また、図7に示すように、前記作条爪15は、前部を閉塞した正面視V字状の作溝部15aと、該作溝部15aから二股状に後方に開いた左右一対の側板部15b・15cとから構成される。これにより、播種溝をV字状に形成することができ、該播種溝の底幅を繰出ロール74の長さと同程度にして溝の傾斜を急にし、種子93が播種溝内を左右に転動しにくいようにしている。
【0068】
更に、前記作条爪15の上面は、前記繰出ベース13の底板76の下面に固設され、該底板76の連通孔76bの直下方に、前記左右の側板部15b・15c間の空間が配置されており、前記播種装置14から繰り出された種子93が、連通孔76bから播種溝内にそのまま落下するようにしている。
【0069】
加えて、前記側板部15b・15cの後部には支持ピン85が横架され、該支持ピン85には、覆土アーム95の前端が前後揺動可能に連結され、該覆土アーム95の後端に、前記覆土板16が前後回動可能に支持されている。そして、前記側板部15b・15cと覆土アーム95との間には付勢バネ84が介設されており、該付勢バネ84の弾性力によって、覆土アーム95に支持された覆土板16を下方に常時付勢状態とし、覆土効果を高めるようにしている。
【0070】
続いて、以上のような構成において、繰出ベース13への播種装置14の着脱手順について説明する。
図8に示すように、播種装置14を矢印96の方向に移動して、左右の第一係止突部14b・14bを、前記繰出ベース13の左右の側板77・78間で、側方挟持板83・83よりも前方の空間に挿入する。
【0071】
そして、第一係止突部14b・14bをそのまま矢印97の方向に水平移動させることにより、繰出部14a側の第一係止突部14b・14bを、それぞれ繰出ベース13側の前挟持空間89・89内に嵌入させ、繰出部14a側の第二係止突部14cも、繰出ベース13側内の後挟持空間90内に嵌入させることができ、これにより、図9に示すように、播種装置14の繰出部14aが、その前後において繰出ベース13に支持固定される。この際、第二係止突部14cには、図示せぬ孔が上下方向に穿孔されており、該孔に、前記下方挟持板80の下水平部80aの上面に設けた図示せぬ凸部が、下方挟持板80の弾性力によって下方から係合されるようにしている。なお、播種装置14の取り外し作業を行う際には、下方挟持板80を押し下げることにより、凸部を孔から容易に脱着させることができる。
【0072】
同時に、繰出部14a側の従動ギア75は、前記ギアケース79内に挿入され、該ギアケース79内で前記駆動ギア82に噛合され、これにより、図1に示す前記動力伝達経路18を介して入力軸23に伝達されてきた鎮圧ローラ6からの回転動力が、小径の駆動ギア82と大径の従動ギア75とから成る伝達経路を介して、前記繰出軸24に伝達される。
【0073】
この際、繰出部14aの下面は、繰出ベース13の底板76上に載置された状態にあり、繰出部14aの前記繰出口91aは、底板76に開口した連通孔76bの直上に、対向するようにして近接配置されている。これにより、繰出口91aから播種溝までの落下距離を、作条爪15の高さの分だけに抑えることができる。
【0074】
更に、繰出口91aから連通孔76bまでの空間の周囲は、図7に示す繰出ベース13の左右一対の側板77・78によって覆われている。これにより、種子が繰出口91aから連通孔76b内を通過する間に、外部から吹き込む横風や泥土などにより影響されるのを防ぐようにしている。
【0075】
このようにして、繰出ベース13への繰出部14aの取り付けと動力伝達経路18への繰出部14aの動力接続とを同時に行う第一操作が可能となる。前記繰出ベース13からの繰出部14aの取り外しと動力伝達経路18からの繰出部14aの動力切断とを同時に行う第二操作については、前述の手順を逆にすることにより実施することができる。
【0076】
なお、前記第二係止突部14cを下から押圧する下方挟持板80は、板バネなどの弾性部材から成るため、前記第二係止突部14cが後挟持空間90に嵌入し、下方挟持体80の下水平部80aの高さが位置98から位置99まで下降すると、該下降によって下方挟持板80には上方への付勢力が生じ、該付勢力によって前記第二係止突部14cを常時付勢状態で挟持することができ、第二係止突部14cの挟持効果を高めるようにしている。
【0077】
すなわち、前記播種装置14と、該播種装置14の繰出部14aを前記機体フレーム2・3に取り付ける繰出ベース13との間には、該繰出ベース13への繰出部14aの取り付けと動力伝達経路18への繰出部14aの動力接続とを同時に行う第一操作、または前記繰出ベース13からの繰出部14aの取り外しと動力伝達経路18からの繰出部14aの動力切断とを同時に行う第二操作を実施する播種装置着脱構造27を介設するので、該播種装置着脱構造27により、播種機1に備えた全ての播種装置14を短時間で着脱することができ、メンテナンス性が向上する。なお、この播種装置着脱構造27により、一条用の播種機においても、播種装置14を迅速に取り付けることができる。
【0078】
更に、前記播種装置着脱構造27において、前記繰出部14a側に、前記播種装置14を駆動する繰出軸24に嵌合する従動ギア75と、複数の係止部である第一係止突部14b・14b、第二係止突部14cとを備え、前記繰出ベース13側に、取り付け状態で前記従動ギア75と噛合する駆動ギア82と、前記第一係止突部14b・14b、第二係止突部14cを挟持する挟持体である側方挟持板83・83、下方挟持板80、上方挟持板81とを備えるので、播種装置着脱構造27を簡単な構成で設けることができ、部品コストの削減と組立性の向上を図ることができる。
【0079】
加えて、前記繰出ベース13には、該繰出ベース13の下面に固設した作溝具である作条爪15と連通する連通孔76bを開口し、該連通孔76bの直上に、ガイド部材を介することなく前記繰出部14aの繰出口91aを近接配置するので、該繰出口91aから作条爪15により形成した播種溝までの落下距離を最小限に短縮することができ、播種溝内での種子93の転動を少なくし、播種精度が向上する。
【0080】
更に、前記繰出ベース13には、前記繰出部14aの繰出口91aから繰出ベース13の連通孔76bにかけて、側面カバーである側板77・78を設けるので、前記繰出口91aから連通孔76bまで落下中の種子93が、外部から吹き込む横風や泥土などによって飛散するのを防止することができ、所定量の種子93を播種溝内に確実に導入し、播種精度が更に向上する。
【0081】
加えて、前記作溝具である作条爪15は、正面視V字状に構成して播種溝をV字状に形成し、播種溝の底部を狭幅に形成することができ、該播種溝内での種子93の左右方向への転動を確実に防止して、播種精度が更に向上する。
【0082】
次に、前記播種機1と別形態の播種機1Aについて、図10、図11により説明する。
なお、前記播種機1と同様な部品・構成については、同じ符号を用いると共に詳細な説明は省略する。
【0083】
該播種機1Aは、前記播種機1のように走行モータ37を駆動ローラ5内に組み込む内蔵モータ式から、走行モータ37Aをバッテリ台29上にバッテリ30と一緒に搭載する外部モータ式に変更したものである。
【0084】
前記バッテリ台29上には、左から順に、バッテリ30と走行モータ37Aが搭載される。そして、該走行モータ37Aからの出力軸100は右方に突出され、該出力軸100の右端は、右の機体フレーム3の前フレーム3aに設けられた伝動ケース101内の上部に貫入され、該右端にスプロケット102が外嵌固定される。一方、前記伝動ケース101内の下部には、前記駆動ローラ5Aのローラ軸7Aの右端が貫入され、該右端にスプロケット103が外嵌固定されており、該スプロケット103と前記スプロケット102との間に、チェーン104が巻回されている。
【0085】
更に、前記バッテリ30は、信号線31を介して、前記モータスイッチ33に接続されると共に、信号線32を介して、前記バッテリ台29上の走行モータ37Aに接続されている。
【0086】
これにより、ハンドルアーム34の把持アーム部35aを把持しながら前記モータスイッチ33を操作すると、該モータスイッチ33からの信号により、バッテリ30から走行モータ37Aに電力が供給され、該走行モータ37Aからの回転動力が、出力軸100、スプロケット102、チェーン104、スプロケット103からローラ軸7Aに伝達され、駆動ローラ5Aがモータ駆動されて、播種機1Aが走行されるようにしている。
【0087】
この場合も、前記走行モータ37Aとバッテリ30が駆動ローラ5A側に集中配置されていることから、前記播種機1と同様に、前重心・前輪駆動タイプの播種機1Aが構成されている。
【0088】
このような、外部モータ式の播種機1Aは、本実施例の如く、駆動ローラ5A側に走行モータ37Aを搭載可能な十分な設置空間がある場合に適したものであり、駆動ローラ5A側の構造の簡素化や、走行モータ37Aのメンテナンス性の向上を図るようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、播種装置を備えた機体フレームの前後に前輪と後輪を配置し、前記前輪側に、該前輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを搭載すると共に、前記後輪近傍の機体フレームよりハンドルアームを延設した、全ての播種機に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 播種機
2・3 機体フレーム
5 駆動ローラ(前輪)
6 鎮圧ローラ(後輪)
14 播種装置
25 補助ハンドル
30 バッテリ
34 ハンドルアーム
37 走行モータ(電動モータ)
44 ハンドル固定具
45 支点軸
46 回転規制軸(ストッパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種装置を備えた機体フレームの前後に前輪と後輪を配置し、前記前輪側に、該前輪を駆動する電動モータと、該電動モータに電力を供給するバッテリを搭載すると共に、前記後輪近傍の機体フレームよりハンドルアームを延設した播種機において、前記ハンドルアームに、補助ハンドルを略水平に設けることにより、前記前輪を支点とした後輪の上昇と機体の旋回を容易にしたことを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記ハンドルアームにハンドル固定具を設け、該ハンドル固定具に、前記補助ハンドルを回転可能に支持する支点軸と、該補助ハンドルを収納状態または展開状態に支持するストッパとを近接して設けることにより、前記補助ハンドルを折りたたみ収納可能とすることを特徴とする請求項1に記載の播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217358(P2012−217358A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84021(P2011−84021)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】