説明

播種装置

【課題】装置の簡素化及び小型化を図りながら、播種作業を好適に行える播種装置を提供すること。
【解決手段】播種装置10は、コート種子を貯留する種子貯留パネル30と、先端部にコート種子を吸着させる吸着ノズル51が設けられた播種作業フレーム40と、養土充填部分を有する栽培パネル81を運搬する栽培パネル用台車70とを備えている。播種作業フレーム40は、連結アーム43によって移動可能に構成されている。播種作業フレーム40を移動して種子貯留パネル30に当接させると、吸着ノズル51はコート種子が貯留された部分に挿し込まれる。一方、栽培パネル用台車70を播種作業フレーム側に移動させた上で、播種作業フレーム40を移動して栽培パネル81に当接させると、吸着ノズル51は養土部分に挿し込まれる。播種後の覆土は、栽培パネル81の運搬や交換等によって加わる振動を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レタスやホウレン草などの植物の種子を土に播く播種装置の存在が知られている。この種の播種装置の中には、養土の表面に凹みを形成した上でその凹みに種子を播き、その後、覆土機を用いて種子に土を被せるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。かかる装置では、養土が充填されたポットがトレイに複数載せられ、そのトレイがコンベアによって搬送される途中、養土への凹み形成作業、播種作業及び覆土作業が順次行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−181605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記播種装置では、種子を播く播種作業用の播種装置だけでなく、コンベアを用いた搬送装置、養土への凹み形成装置及び覆土作業用の覆土機等の装置がさらに必要となり、播種装置全体が大袈裟なものになってしまう。この場合、播種装置の設置を可能とするスペースが限定されるという問題や、播種装置の設置に要するコスト負担が大きいという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、装置の簡素化及び小型化を図りながら、播種作業を好適に行える播種装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の播種装置では、吸引通路が内部に設けられたノズル軸を有し、前記吸引通路が前記ノズル軸の先端において開口して先端開口部が形成されており、前記吸引通路に作用する吸引力により前記先端開口部に種子を吸着する吸着ノズルと、前記吸引力の作用又は非作用を切替可能とする吸引手段と、板状に形成されるとともに上面に土が充填された土充填部が露出する栽培パネルを、前記吸着ノズルの下方にて支持する栽培パネル支持手段と、前記吸着ノズルを下方へ移動させて前記ノズル軸の先端部が前記栽培パネルの土充填部に挿し込まれる第1挿込位置と、前記吸着ノズルを上方へ移動させて前記栽培パネルの土充填部から離間した非挿込位置とに配置させるノズル昇降装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によると、種子を吸着させた吸着ノズルを第1挿込位置に配置させると、種子を吸着する先端開口部を含む先端部が土充填部に挿し込まれる。その後、吸引力非作用状態に切り替えた上で吸着ノズルを引き抜いて非挿込位置に移動させると、土充填部に種子が残されるため、それにより種子が土充填部に播かれる。この場合、吸着ノズルの挿込みによって土充填部には穴が開けられ、その穴の中に種子が残された状態となる。それでも、土充填部を有する栽培パネルの交換時やパネル運搬時に生じる振動、水撒き等により、種子が残された穴の壁面や周辺部が崩れ落ちて種子に土が被さる。このため、土に凹みを形成する装置や覆土機等の大袈裟な設備が不要であり、省スペース化やコスト低減を図ることができる。結果、装置の簡素化及び小型化を図りながら、播種作業を好適に行える。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、前記種子はコーティング種子であり、前記吸着ノズルのノズル軸は、前記コーティング種子の外径よりも細く形成されている。
【0009】
この第2の発明によれば、播種時において土充填部に形成される穴の大きさは、コーティング種子の大きさに依存することとなり、吸着ノズルによって必要以上に穴が拡張されない。この場合、穴周囲の土が崩れやすいため、崩れた土が穴内の種子の上に被さりやすくなっている。また、吸引力非作用状態とした吸着ノズルを引き抜いて非挿込位置に移動させる場合に、コーティング種子が土と広く接触する可能性が高まる。また、概ね球状をなすコーティング種子は球として高精度を有しておらず、表面精度も比較的粗いため、コーティング種子は吸着ノズルの先端開口部に密着されない。これらがあいまって、コーティング種子は吸着ノズルから離脱しやすい。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、前記吸着ノズルのノズル軸は、前記コーティング種子の表面色と異なる色を呈している。
【0011】
この第3の発明によれば、コーティング種子の表面色と吸着ノズルのノズル軸の色とが異なるため、吸着ノズルに種子が吸着されていか否かを容易に視認できる。
【0012】
第4の発明では、第1乃至3のいずれかの発明において、前記栽培パネル支持手段に支持されている前記栽培パネルを、その上方に前記吸着ノズルが存在しない位置へ、水平方向にスライド移動させる栽培パネル移動手段を備えた。
【0013】
この第4の発明によれば、栽培パネルを上方に吸着ノズルが存在しない位置へ移動させることにより、栽培パネルの交換作業を行う上での障害物を減らし、当該交換作業を行いやすい。
【0014】
第5の発明では、第4の発明において、板状に形成されるとともに上面に複数の種子を貯留する種子貯留部が露出する種子貯留パネルを備え、前記種子貯留パネルは、前記栽培パネル支持手段により支持される前記栽培パネルの下方に設置されており、かつ前記吸着ノズルが前記第1挿込位置よりも下方へ移動した場合にその先端部が前記種子貯留部に挿し込まれるように配置されており、前記吸着ノズルの先端部が前記種子貯留部に挿し込まれた場合における前記吸着ノズルの配置位置を第2挿込位置とし、前記栽培パネル移動手段は、前記吸着ノズルの前記第2挿込位置への移動と干渉しない位置まで前記栽培パネルを移動可能にする移動範囲が設定されている。
【0015】
この第5の発明によれば、播種作業を行う前提として、吸着ノズルに種子を吸着させることができる。すなわち、栽培パネルを移動させた上で、種子非吸着状態の吸着ノズルを第2挿込位置に配置させると、その先端部が種子貯留部に挿し込まれる。その状態で、吸引力作用状態に切り替えれば、吸着ノズルの先端開口部に種子を吸着できる。そこから吸引力作用状態を維持しながら吸着ノズルを引き抜いて非挿込位置に移動させ、栽培パネルを元の位置に戻せば、第1の発明において説明した播種作業を行える。
【0016】
そして、吸着ノズルが配置される第2挿込位置は第1挿込位置の動作延長線上に存在するため、播種作業を行う場合と種子吸着作業を行う場合とでノズル昇降装置の構成要素を共通化できる。これにより、ノズル昇降装置の構成を簡素化でき、ひいては播種装置の構成簡素化にもつながる。
【0017】
第6の発明では、第4の発明において、板状に形成されるとともに上面に複数の種子を貯留する種子貯留部が露出する種子貯留パネルを備え、前記種子貯留パネルは、前記栽培パネルと横並びに配置され、前記栽培パネル移動手段は、前記吸着ノズルが前記第1挿込位置に移動することで前記吸着ノズルの先端部が前記種子貯留部に挿し込まれる位置に、前記種子貯留パネルを前記栽培パネルとともに水平方向にスライド移動させる。
【0018】
第6の発明によれば、種子貯留パネル及び栽培パネルを一緒に移動させることができる。この場合、それらパネルを種子貯留パネルの方が吸着ノズルの第1挿込位置に合うように移動させることにより、吸着ノズルが種子貯留パネルの種子貯留部に挿し込まれ、吸着ノズルに種子を吸着させることができる。もちろん、各パネルを栽培パネルの方が吸着ノズルの第1挿込位置にあるように移動させることにより、第1の発明において説明した播種作業を行うことができる。
【0019】
特に、本構成によれば、吸着ノズルを第2挿込位置に移動させる必要がなく、吸着ノズルが第1挿込位置及び非挿込位置の2つの位置に移動可能な構成をノズル移動機構により実現すれば、吸着ノズルに種子を吸着させることができる。これにより、ノズル移動機構の構成をさらに簡素化でき、ひいては播種装置のより一層の構成簡素化にもつながる。
【0020】
第7の発明では、第5又は6の発明において、前記種子貯留部の底部には緩衝材が設けられている。
【0021】
この第7の発明によれば、下方に移動した吸着ノズルの先端部が種子貯留部に挿し込まれた場合に、吸着ノズルによって種子が押圧されても、その押圧に伴って底部の緩衝材が変形するため、種子が潰されるなどの不都合を回避できる。また、底部の凹み変形によって種子が吸着ノズルの先端側へ集まりやすくなるため、種子の貯留量が少なくなっても種子を吸着しやすい。
【0022】
第8の発明では、第7の発明において、前記緩衝材は通気性を有するスポンジ又は繊維材料によって形成されている。
【0023】
この第8の発明によれば、緩衝材が通気性を有しているため、吸着ノズルの先端開口部が緩衝材に当接することがあっても、その先端開口部に吸引力が作用した場合に、緩衝材が吸着されてしまうことを抑制できる。
【0024】
第9の発明では、第8の発明において、前記吸着ノズルが複数備えられるとともに、各吸着ノズルがノズル設置体に設けられており、前記ノズル昇降装置は前記ノズル設置体を移動させるものであり、前記栽培パネルの土充填部及び前記種子貯留パネルの種子貯留部は、前記吸着ノズルと同じ数がそれぞれ独立して設けられている。
【0025】
この第9の発明によれば、ノズル設置体には複数の吸着ノズルが設けられているため、同時に複数の種子を土充填部に播くことができる。そして、土充填部や種子貯留部は吸着ノズルと同じ数がそれぞれ独立して設けられている。吸着ノズルの設置範囲に合わせて土充填部や種子貯留部が広がるのと異なり、土の充填部分や種子貯留部が限定されるため、土による栽培パネルの重量増加を抑制してその取り扱いが容易となり、種子貯留部に貯留させる種子の量を適切化できる。
【0026】
第10の発明では、第9の発明において、前記ノズル設置体は中空部を有するとともに、前記中空部を貫通して先端部が突出するように螺入されたボルトの突出部分によって前記吸着ノズルが構成され、前記ボルトのボルト軸部には、ボルト軸線方向に沿った前記吸引通路と、該吸引通路と前記ノズル設置体の中空部とを連通する連通孔とが形成されている。
【0027】
この第10の発明によれば、吸引通路や連通孔の形成加工が施されたボルトをノズル設置体に螺入することで吸着ノズルが構成されており、その構造を簡素化できる。また、メンテナンス等のために、吸着ノズルを容易に交換できる。その上、上記第3の発明のように、吸着ノズルの色を種子の色と異ならせる場合には、色の異なる種子の種類に合わせても吸着ノズルを容易に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】播種装置の全体像を示す側面図。
【図2】支持架台及び種子貯留パネルを示す平面図。
【図3】図2におけるA−A断面図。
【図4】播種作業フレーム側の播種装置を示す平面図。
【図5】図4(a)におけるB−B断面図とその一部拡大図。
【図6】栽培パネル用台車側の播種装置を示す平面図。
【図7】図6におけるC−C断面図。
【図8】栽培パネル用台車と播種作業フレームとの関係を示す正面図。
【図9】栽培パネル用台車と播種作業フレームとの関係を示す平面図。
【図10】コート種子の吸着作業を示す説明図。
【図11】コート種子の播種作業を示す説明図。
【図12】播種装置の全体像を示す側面図。
【図13】コート種子の吸着作業及び播種作業を示す説明図。
【図14】栽培パネルが大型台車に載せられた状態における土充填部周辺の断面図。
【図15】土圧縮装置の全体像を示す側面図。
【図16】土圧縮作業の手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した播種装置について図面を参照しながら説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
この第1の実施形態の播種装置において用いられる種子としては、レタス、白菜、ほうれん草等の植物種子そのもの(裸種子)を粘土、珪藻土、タルク等のコート材によって被覆処理されたコーティング種子(コート種子)を想定している。コート種子は概ね大きさが均一な球状をなし、また、植物の種類ごとに異なる色で色づけられることにより、種子の取扱いが裸種子に比べて容易になっている。例として、レタスのコート種子(白色球状)を用いる。
【0031】
図1は、播種装置の全体像を示す側面図である。この図1に示すように、播種装置10は、支持架台20と、この支持架台20によってそれぞれ支持された種子貯留パネル30、播種作業フレーム40及び栽培パネル用台車70とを備えている。これら各構成部分の詳しい構成は、次に説明する通りである。
【0032】
図2は、播種作業フレーム40や栽培パネル用台車70を省略した支持架台20を示す平面図である。この図2及び先の図1に示すように、支持架台20は、架台フレーム21と、その架台フレーム21を支える脚部22とを有している。架台フレーム21は平面視において横長の長方形状をなし、脚部22は架台フレーム21の四隅と長辺部21aの中央部分とにそれぞれ設けられている。これら架台フレーム21や各脚部22は、角型鋼管が用いて構成されている。横長の架台フレーム21には、その長辺方向の一方の側に種子貯留パネル30及び播種作業フレーム40が配置され、他方の側に栽培パネル用台車70が配置されている。
【0033】
次に、種子貯留パネル30は、レタスのコート種子Sが播種用に貯留されたパネルである。前記図1及び図2に示すように、種子貯留パネル30は、平面視において矩形状をなすパネル本体31を有している。パネル本体31は、発砲スチロール等の合成樹脂材料により板状に形成され、水平をなす状態で架台フレーム21の長辺方向の一方側に設置されている。
【0034】
そのパネル本体31の設置構造は次の通りである。図2に示すように、架台フレーム21の長辺部21a間には一対の横架材23が架け渡され、その両横架材23と架台フレーム21の長辺部21aとでパネル設置領域24が形成されている。パネル設置領域24は平面視において矩形状をなし、パネル本体31の平面寸法とほぼ同一の平面寸法を有している。
【0035】
図3は図2におけるA−A断面図である。この図3に一部を示すように、パネル設置領域24の全域には鋼製のパネル支持プレート25が設けられ、横架材23や架台フレーム21の長辺部21aに溶接等で取り付けられている。パネル支持プレート25は架台フレーム21の上面よりも下方に配置されており、そのため、パネル設置領域24は凹状に形成されている。この凹状部分を利用して、パネル設置領域24にパネル本体31が収容されている。
【0036】
続いて、パネル本体31そのものの構成を説明する。図2に示すように、パネル本体31の上面には複数の独立した種子貯留部32が設けられている。各種子貯留部32はいずれも、パネル本体31の上面が凹状に形成されてなり、そこにレタスのコート種子Sがパネル上面から溢れ出さない程度に多数貯留されている。各種子貯留部32は平面視において正方形状をなす開口部分を備え、それぞれが格子点となるように、縦横それぞれ一列で、かつ縦横に等間隔で並んだ状態に配置されている。なお、図2では、縦横それぞれに5つずつの種子貯留部32が設けられたものが図示されている。
【0037】
図3を用いて種子貯留部32の構成をより詳しく説明すると、パネル本体31には種子貯留部32となる部分に貫通孔33が形成されている。各貫通孔33はいずれも、孔の形成方向を通じて略正方形状をなす開口断面を有しており、その開口断面はパネル上面から下方に向かって徐々に小さくなっている。各貫通孔33にはその底部を塞ぐようにして緩衝材34が設けられ、それによってコート種子Sの貯留を可能とする凹状部分が形成されている。緩衝材34としては、柔軟性と多孔性との両方の性質を有する素材(例えば、スポンジ等)で形成されたものが用いられている。
【0038】
次に、播種作業フレーム40は、前記種子貯留パネル30に貯留されたコート種子Sを養土部分に播く作業を行うためのものである。図4は、この播種作業フレーム40が設けられた側の播種装置10を示す平面図である。播種作業フレーム40は、前記図1において実線と二点鎖線とで示すように、架台フレーム21の上方で移動するように構成されており、図4における(a)及び(b)は播種作業フレーム40が移動前後をそれぞれ示している。
【0039】
図4(a)に示すように、播種作業フレーム40は外枠部41と、同一方向に延びる複数の内側桟部42とで構成された格子状(連子状)をなし、平面視四角形状をなす外形を有している。外枠部41及び内側桟部42は、いずれも横断面が同一寸法をなす角型鋼管を用いて構成され、その上面及び下面は同一平面となっている。架台フレーム21の短辺方向(以下、Y方向とする)において、外枠部41の幅は当該架台フレーム21と同一寸法に形成されている。架台フレーム21の長辺方向(以下、X方向とする)においては、同方向に沿って設けられた全ての前記種子貯留部32をカバーするのに十分な長さを有している(図4(b)参照)。
【0040】
この播種作業フレーム40は、前記図1にも示すように、架台フレーム21及び種子貯留パネル30の上方において、水平をなす状態で当該架台フレーム21に支持されている。その支持には、架台フレーム21と外枠部41とを連結する連結アーム43が用いられている。連結アーム43は、図4(a)に示すように、Y方向の両側方にそれぞれ一対ずつ設けられ、その一対の連結アーム43はX方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0041】
図1に戻って、各連結アーム43はそのアーム一端が架台フレーム21の長辺部21aに設けられた第1回動軸44に対して回動自在に連結され、アーム他端が外枠部41に設けられた第2回動軸45に対して回動自在に連結されている。このため、外枠部41は、第1回動軸44を回動中心として、水平状態を維持しながら架台フレーム21の上方で移動するようになっている。その移動範囲は、前記種子貯留パネル30から離間して連結アーム43が鉛直方向に延びる退避位置(図1において実線で示す位置)と、種子貯留パネル30に当接する当接位置(2点鎖線にて示す位置)との間となっている。この場合、当接位置は退避位置の斜め下方に存在している。外枠部41には、その移動を手動で行いやすくするための把手部46が設けられている。
【0042】
播種作業フレーム40は、前記当接位置において所定の作業、具体的には、後述するコート種子Sの吸着作業(作業(2))を行う。このため、その当接位置を種子吸着位置とする。種子吸着位置では、播種作業フレーム40(外枠部41及び内側桟部42)の下面と、種子貯留パネル30のパネル本体31上面とが当接することで、播種作業フレーム40のそれ以上の移動が規制されている。退避位置を越えて播種作業フレーム40が移動することを規制する規制部材を設けてもよい。
【0043】
ちなみに、前記図4(a)の平面図は、退避位置に配置された状態の播種作業フレーム40を示しており、他方、種子吸着位置に配置された状態の播種作業フレーム40を示す平面図が図4(b)である。
【0044】
続いて、播種作業フレーム40は、複数の吸着ノズル51を備え、各吸着ノズル51にコート種子Sが同時に吸着されるようになっている。このため、播種作業フレーム40はノズル設置体に相当し、ノズル昇降装置は連結アーム43、回動軸44,45等によって構成されている。
【0045】
図4に示すように、播種作業フレーム40を構成する内側桟部42は、X方向に沿って延びるように外枠部41間に架け渡され、そのX方向に沿って並ぶ種子貯留部32の列と同じ数だけ設けられている。そして、一の内側桟部42の配置位置と、それに対応する種子貯留部32の列の配置位置とが平面視において一致するように、等間隔で設けられている。
【0046】
図5は、図4(a)におけるB−B断面図である。この図5に示すように、各内側桟部42には、その延びる方向に沿って複数の吸着ノズル51が設けられている。図5では、吸着ノズル51部分を拡大図として示している。吸着ノズル51は、その先端に発生する吸引力を利用してコート種子Sを吸着するものである。コート種子Sが呈する白色との違いを明確化して、作業者によるコート種子Sの吸着状況(吸着しているか否か)の視認を容易にすべく、吸着ノズル51は濃色(この実施形態では黒色)を呈するように着色されている。
【0047】
吸着ノズル51は、吸引力発生用の加工(詳しくは後述する)が施され、かつ黒色に塗装されたボルト52を用いて構成されている。内側桟部42には吸着ノズル51の設置箇所に上下貫通孔42aが形成されており、この上下貫通孔42aに前記ボルト52が螺着されて吸着ノズル51が内側桟部42に設置されている。吸着ノズル51となるボルト52のボルト軸部53は、内側桟部42に螺着された状態でその先端部が内側桟部42の下面から突出する長さを有しており、その突出長は1cm程度である。このボルト軸部53の突出部分がノズル軸に相当する。また、ボルト軸部53の径L1は吸着対象物であるコート種子Sの径L2よりも小さい。
【0048】
次に、吸着ノズル51は、内側桟部42が延びる方向と同方向に沿って設けられた種子貯留部32の数と同じだけ設けられ、それぞれ等間隔で設置されている。そして、図4(b)に示すように、播種作業フレーム40を前述した種子吸着位置に配置させた場合には、各種子貯留部32に播種作業フレーム40の各吸着ノズル51がそれぞれ配置されるように、吸着ノズル51の設置箇所が設定されている。
【0049】
これにより、播種作業フレーム40を種子吸着位置へ移動させると、吸着ノズル51の先端部は種子貯留部32に挿し込まれる。その状態で吸着ノズル51の先端部に吸引力を発生させれば、種子貯留部32に存在するコート種子Sの一つをその先端部に吸着させることができる。したがって、種子吸着位置における吸着ノズル51の配置位置が、第2挿込位置に相当する。
【0050】
吸着ノズル51の先端部に吸引力を発生させる構成として、播種作業フレーム40及びボルト52はそれぞれ次のような構成を備えている。すなわち、図5に示すように、播種作業フレーム40では、外枠部41の全域と各内側桟部42の全域でそれぞれの中空部54が連通している。それら各中空部54に連通する配管接続部55が外枠部41の上面に設けられており、そこに吸引力を作用させるようになっている。
【0051】
他方、図5の拡大図に示すように、吸着ノズル51では、内側桟部42からの突出先端(ボルト軸部53の先端部)で開口する内部通路56がボルト軸部53に形成されている。内部通路56はその横断面が円形状をなし、その内径は吸着対象物であるコート種子Sの径L2よりも小さい。内部通路56は、内側桟部42の中空部54内に開口する通気孔57を通じて、その中空部54と連通している。このため、中空部54に発生した吸引力は、吸着ノズル51の先端開口部51aにも作用する。上記内部通路56は吸引通路に相当する。
【0052】
ここで、図1に戻って、播種作業フレーム40には吸引手段としての吸引力発生装置60が取り付けられており、この吸引力発生装置60の駆動により配管接続部55に吸引力を発生させるようになっている。吸引力発生装置60は、吸引配管61、手動開閉弁62及び真空ポンプ等の吸引機63により構成されている。吸引配管61はその一端部が前記配管接続部55に接続され、他端部は手動開閉弁62を介して吸引機63に接続されている。吸引機63の駆動中において、手動開閉弁62を開操作すれば吸引配管61を通じて播種作業フレーム40の配管接続部55に吸引力が作用し、閉操作すればその吸引力作用が停止する。
【0053】
このため、吸引機63を駆動するとともに手動開閉弁62を開操作すると、配管接続部55に作用した吸引力が播種作業フレーム40の中空部54に作用し、ひいては、図5の拡大図に示すように、吸着ノズル51の先端開口部51aに作用する。これにより、図示のように、白色球状をなすコート種子Sをノズル先端に吸着することが可能となる。一方、コート種子Sを吸着した場合に、手動開閉弁62を閉操作するか、手動開閉弁62を開操作した状態のままで吸引機63の駆動を停止させると、吸引力作用が停止し、コート種子Sはノズル先端から離脱する。
【0054】
次に、栽培パネル用台車70は、コート種子Sが播かれる養土部分を有する栽培パネル81を載せて運搬する台車である。前記図1に示すように、栽培パネル用台車70は、横長の架台フレーム21において、種子貯留パネル30や播種作業フレーム40とは反対側を第1台車位置とし、そこから架台フレーム21の長辺方向に沿って移動して栽培パネル81を運搬する。
【0055】
図6は、栽培パネル用台車70が第1台車位置に存在する場合に、栽培パネル用台車側の播種装置を示す平面図であり、図7は図6におけるC−C断面図である。栽培パネル用台車70について説明する前に、その栽培パネル用台車70に載せられて運搬される栽培パネル81について説明する。
【0056】
図6及び図7に示すように、栽培パネル81は、平面視において略正方形の板状をなす栽培パネル本体82を有している。栽培パネル本体82は発砲スチロール等の合成樹脂材料より形成され、その一辺は架台フレーム21の短辺方向(Y方向)の幅と略同一寸法を有している。栽培パネル本体82の板面部分には、その全域にわたって複数の貫通孔83が形成されている。各貫通孔83はいずれも、孔の形成方向を通じて略正方形状をなす開口断面を有しており、その開口断面はパネル上面から下面に向かって徐々に小さくなっている。また、各貫通孔83は、平面視においてそれぞれが格子点となるように、縦横それぞれ一列で、かつ縦横に等間隔で並んだ状態に配置されている。
【0057】
なお、貫通孔83の数や配置は、栽培パネル用台車70に載せられた状態において、種子貯留パネル30における種子貯留部32や、播種作業フレーム40の吸着ノズル51と同じとなるように設定されている。このため、図6に示すように、縦横それぞれに5つずつの貫通孔83が設けられ、架台フレーム21の長辺方向(X方向)に延びる列の延長上(一点鎖線上)に、種子貯留部32の列が存在している。図には現れていないが、さらにその延長上には吸着ノズル51の列(内側桟部)が存在している。
【0058】
図7に示すように、各貫通孔83には養土Dを充填した栽培ポット84が入れられている。栽培ポット84は貫通孔83に合わせた形状を有し、貫通孔83のテーパ面83aに支持されることで貫通孔83に入れられた状態が保持される。これら各栽培ポット84が土充填部に相当する。
【0059】
栽培ポット84は、そこに播かれたコート種子Sが発芽して苗となった場合に、栽培ポット84をそのまま定植可能とする素材や構造を有することが好ましい。例えば、栽培ポット84の底部に根が通過する通過孔が設けられたものや、苗の根が貫通できる紙等の素材を用いたものが考えられる。栽培パネル81の用法としては、苗の段階まで成長させた上でその栽培ポット84を取り出す用い方でも、栽培ポット84を取り出さないで土の上に直に設置する用い方でもよい。後者の用法は、栽培ポット84が貫通孔83に入れられているために可能となる。
【0060】
続いて、栽培パネル用台車70について説明する。
【0061】
図6及び図7に示すように、栽培パネル用台車70は台車本体71と、その台車本体71を支える計4つの車輪72とを有している。台車本体71は、前述した栽培パネル81の平面寸法を一回り大きくした外形を有し、栽培パネル81を収容する収容凹部73が設けられている。
【0062】
収容凹部73は、栽培パネル81の平面寸法と略同一の平面寸法を有し、その深さは栽培パネル81の厚さ寸法よりも浅い。このため、台車本体71は全体として箱型形状をなしており、栽培パネル81は水平かつ上部が突出した状態で収容凹部73に収容される。収容凹部73に収容された栽培パネル81は、その収容凹部73から取り出し可能とされている。播種作業が終了するごとに栽培パネル81は収容凹部73から取り出され、未作業状態にある新たな栽培パネル81と交換されるようになっている。
【0063】
図6に示すように、栽培パネル用台車70の車輪72は、架台フレーム21の長辺部上を走行する位置に設けられている。架台フレーム21の長辺部上面には、その長辺方向全域にわたって延びる案内レール74が設けられており(前記図2も参照)、図7に示すように、車輪72にはその案内レール74に係合する係合溝72aが形成されている。このため、各車輪72は案内レール74に案内されながら走行し、それにより栽培パネル用台車70は架台フレーム21の長辺方向に沿って移動する。なお、案内レール74の長手方向両端には輪止め75が設けられており、案内レール74から車輪72が離脱することを防止している。
【0064】
この場合、栽培パネル用台車70は、種子貯留パネル30の上方において栽培パネル81を案内レール74に沿って移動させることになる。つまり、種子貯留パネル30は、栽培パネル用台車70に載せられた状態の栽培パネル81の下方に配置されている。また、栽培パネル用台車70が栽培パネル支持手段に相当し、栽培パネル用台車70、架台フレーム21の長辺部21a及び案内レール74等により栽培パネル移動手段が構成されている。
【0065】
播種作業フレーム40側の端部には、栽培パネル用台車70の台車本体71に当接してその移動を規制するストッパ部材76が設けられている。その位置が第2台車位置であり、栽培パネル用台車70は前記第1台車位置(図1及び図6に示す位置)と第2台車位置との間で移動可能となっている。ストッパ部材76は、架台フレーム21が有する一対の長辺部21aそれぞれに設けられている。
【0066】
次に、栽培パネル用台車70と前記播種作業フレーム40との関係について説明する。図8及び図9はその両者の関係を示しており、図8は正面図、図9は平面図である。図8において、(a)は栽培パネル用台車70の移動を示し、(b)はその移動後における播種作業フレーム40の移動を示している。一方、図9の(a)及び(b)は、栽培パネル用台車70を移動させた後に播種作業フレーム40の移動前後をそれぞれ示している。
【0067】
図8(a)及び図9(a)に示すように、播種作業フレーム40を退避位置に移動させた状態で、栽培パネル81を収容した栽培パネル用台車70を、第1台車位置から播種作業フレーム40の存在側へ架台フレーム21の長辺方向に沿って移動させる。この場合、栽培パネル用台車70は、種子貯留パネル30と播種作業フレーム40との間の空間に入り込みながら第2台車位置まで移動する。
【0068】
第1台車位置では、栽培パネル81の収容及び取出し作業が行われる。一方、第2台車位置では、図8(b)及び図9(b)に示すように、播種作業フレーム40を退避位置から種子吸着位置(種子貯留パネル30と当接する位置)に向かって移動させることで播種作業が行われる。つまり、播種作業フレーム40の吸着ノズル51に吸着させたコート種子Sを栽培パネル81の各栽培ポット84に播くという作業である。
【0069】
この場合、播種作業フレーム40は、種子吸着位置まで移動する前に、栽培パネル用台車70に収容された栽培パネル81と当接してそれ以上の移動が規制される。その位置ではコート種子Sの播種作業が行われるため、播種位置とする。播種位置では、図8(b)に示すように、播種作業フレーム40(外枠部41及び内側桟部42)の下面と、栽培パネル81の栽培パネル本体82上面とが当接している。また、図9(b)に示すように、播種作業フレーム40の各吸着ノズル51は、栽培ポット84を有する各貫通孔83に合致した位置にそれぞれ配置される。なお、第2台車位置を設定する前記ストッパ部材76は、このような位置関係となるようにその設置箇所が設定されている。
【0070】
これにより、播種作業フレーム40を播種位置へ移動させると、吸着ノズル51の先端部は栽培ポット84に充填された養土Dに挿し込まれる。このため、吸着ノズル51の先端部にコート種子Sを吸着させた状態で、播種作業フレーム40を播種位置へ移動させれば、栽培ポット84にコート種子Sを播くことができる。したがって、播種位置における吸着ノズル51の配置位置が、第1挿込位置に相当する。
【0071】
なお、非挿込位置となる位置は特定されず、前記退避位置(図1において実線で示す位置)を含め、播種作業フレーム40を移動させて吸着ノズル51を引き抜いた状態であれば、それが非挿込位置に相当する。
【0072】
次に、以上のような構成を有する播種装置10を用いて行われる播種作業について説明する。その播種作業では、(1)栽培パネル81の収容、(2)コート種子Sの吸着、(3)栽培パネル用台車70の移動、(4)コート種子Sの播種、(5)栽培パネル用台車70の復帰移動、(6)栽培パネル81の取り出し、という作業を順に行う。これら各作業は、すべて手動にて行われる。
【0073】
以下、一人の作業者が各作業を行う場合を想定して、それぞれの作業についてより詳しく説明する。なお、播種作業を複数人で行う場合等には、作業順序を適宜変更したり、複数の作業を同時に行ったりしてもよい。
【0074】
[事前作業]
播種作業を始める前に、養土Dが充填された栽培ポット84をすべての貫通孔83に入れた状態の栽培パネル81を所定数用意する。この場合、栽培パネル81を、播種装置10の付近に設けられたパネル置き場に積み上げておくとよい。また、吸引力発生装置60の吸引機63を駆動させるとともに、手動開閉弁62は閉状態としておく。
【0075】
[作業(1):栽培パネル81の収容]
栽培パネル用台車70を第1台車位置に配置させた上で、その栽培パネル用台車70の収容凹部73に一枚の栽培パネル81を収容する。この場合、栽培パネル81は発泡スチロール製であるために軽量化されており、その収容作業を容易に行える。
【0076】
[作業(2)コート種子Sの吸着]
図10は、コート種子Sの吸着作業を示す説明図である。図10(a)に示すように、上記作業(1)において、播種作業フレーム40を播種位置よりも下方に向けて移動させることで種子吸着位置に移動させる。この種子吸着位置では、各種子貯留部32に吸着ノズル51がそれぞれ配置される。この場合、吸着ノズル51の先端突起部分は、多数のコート種子Sをかき分けるようにして種子貯留部32内に挿し込まれる。この吸着ノズル51の挿し込みによってコート種子Sが押圧されても、種子貯留部32の底部に設けられた緩衝材34によってその押圧力が吸収される。これにより、コート種子Sが押圧力によってつぶされる等の不都合を回避できる。
【0077】
このように吸着ノズル51の先端突起部分が種子貯留部32に挿し込まれた状態で、手動開閉弁62を開操作する。すると、吸着ノズル51の先端部に吸引力が発生し、その吸引力によってコート種子Sがノズル先端部に吸着される。その後、手動開閉弁62の開状態を維持したまま、図10(b)に示すように、播種作業フレーム40を退避位置側へ退避させる。この場合、吸着ノズル51の先端部にはコート種子Sが吸着されている。
【0078】
ここで、コート種子Sは概ね球状をなしているが、球として高精度を有しているわけではなく、表面精度も比較的粗い。このため、前記図5の拡大図に示すように、吸着ノズル51にコート種子Sが吸着された場合において、吸着ノズル51の先端開口部51aとコート種子Sとが密着するわけではない。このため、吸着ノズル51にコート種子Sが吸着されない場合もあり得る。
【0079】
この点、吸着ノズル51が黒色を呈している一方、コート種子Sは白色を呈しているため、その両者の色のコントラストから、吸着ノズル51にコート種子Sが吸着されているか否かを、作業者が容易に判定することができる。そして、仮に非吸着の吸着ノズル51が存在する場合には、作業者がその手で吸着ノズル51の先端部にコート種子Sを吸着させる。
【0080】
[作業(3):栽培パネル用台車70の移動]
続いて、播種作業フレーム40を退避させた状態で、第1台車位置に存在する栽培パネル用台車70を第2台車位置まで移動させる。第2台車位置はストッパ部材76によって位置決めされるため、移動させるたびに位置調整する必要はなく、その作業を容易に行える。
【0081】
なお、この作業を行う上で、播種作業フレーム40を退避位置まで移動させておく必要はなく、栽培パネル用台車70を第2台車位置まで移動させ得るだけの空間が形成される程度に移動させれば足りる。
【0082】
[作業(4):コート種子Sの播種]
図11は、コート種子Sの播種作業を示す説明図である。図11(a)に示すように、吸着ノズル51の先端開口部51aにコート種子Sを吸着した状態で退避させていた播種作業フレーム40を播種位置へ移動させる。この播種位置では、各栽培ポット84に吸着ノズル51がそれぞれ配置される。この場合、吸着ノズル51の先端突起部分とそこに吸着されたコート種子Sは、養土Dに挿し込まれる。
【0083】
このように吸着ノズル51の先端突起部分とコート種子Sとが養土Dに挿し込まれた状態で、手動開閉弁62を閉操作し、ノズル先端部の吸引力作用を停止させる。その後、播種作業フレーム40を退避位置側へ退避させると、図11(b)に示すように、養土Dに形成された穴Hにコート種子Sが残される。
【0084】
ここで、前述したように、吸着ノズル51となるボルト軸部53の径L1はコート種子Sの径L2よりも小さい(図5の拡大図参照)。このため、図11(a)の拡大図に示されているように、その挿し込みによって養土Dの表面に開けられる穴Hはコート種子Sによって形成されるため、吸着ノズル51の先端部が養土Dに触れにくくなる一方、コート種子Sは養土Dと広く接触する可能性が高まる。それに加え、前述したように、コート種子Sは吸着ノズル51に密着していない。これらがあいまって、吸引力の作用を停止させることで、コート種子Sは吸着ノズルから離脱しやすくなっている。
【0085】
[作業(5):栽培パネル用台車70の復帰移動]
その後、図11(b)に示すように、第2台車位置に配置されている栽培パネル用台車70を元の第1台車位置まで復帰移動させる。その移動に伴って栽培パネル用台車70に生じる振動等により、養土Dに形成された穴の壁面や周辺部が崩れ落ち、コート種子Sに養土Dが覆い被さる。このため、改めて覆土作業を行う必要はない。
【0086】
[作業(6):栽培パネル81の取り出し]
続いて、第1台車位置に復帰した栽培パネル用台車70から、播種作業を終えた栽培パネル81を取り出す。その取り出した栽培パネル81は、播種後のものとして、前述の事前作業において積み重ねた栽培パネル81とは別の置き場に置く。その作業中においても、栽培パネル81には必然的に振動等が加えられるため、その振動等によっても養土Dが崩れてコート種子Sに覆い被さる。その後、播種作業前の新たな栽培パネル81をパネル置き場から取り出し、前述した作業(1)以下を繰り返す。
【0087】
なお、播種作業を終えた栽培パネル81については、それをそのまま屋外に設置して日光や雨等が降り注ぐ自然環境下で植物を成長させる。この場合において、その設置作業中に栽培パネル81に加わる振動や養土Dに降りかかる雨によっても、養土Dが崩れてコート種子Sに覆い被さる。
【0088】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0089】
・コート種子Sを吸着させた吸着ノズル51を移動させて、その先端部を養土Dに挿し込むことによりそのコート種子Sを播くようにした。また、播種後には、栽培パネル81加わる振動や水撒き等によってコート種子Sに養土Dを被せるようし、改めて覆土作業を行わない。このため、養土Dに凹みを形成する装置や覆土機等の大袈裟な設備が不要となり、省スペース化やコスト低減を図ることができる。その結果、装置の簡素化及び小型化を図りながら、播種作業を好適に行える播種装置10が得られる。
【0090】
・吸着ノズル51となるボルト軸部53の径L1を、コート種子Sの径L2よりも小さくした。このため、養土Dに形成される穴Hの大きさは、コート種子Sの大きさに依存し、吸着ノズル51によって必要以上に穴Hが拡張されない。また、コート種子Sが養土Dと広く接触する可能性が高まるため、コート種子Sが吸着ノズル51に密着されないこととあいまって、コート種子Sの離脱容易性が高められている。
【0091】
・吸着ノズル51となるボルト52を、コート種子Sの表面色と異なる色を呈するようにした。このため、吸着ノズル51にコート種子Sが吸着されていか否かを作業者が容易に視認できる。
【0092】
・栽培パネル81を栽培パネル用台車70に収容し、播種作業フレーム40が上方に存在しない第1台車位置と、播種作業が行われる第2台車位置との間を移動可能とし、第1台車位置で栽培パネル81の交換作業を行うようにした。これにより、栽培パネル81の交換作業を行う上での障害物が存在せず、当該交換作業を行いやすい。
【0093】
・栽培パネル用台車70を第1台車位置に配置した状態で、吸着ノズル51を移動させてその先端部を種子貯留部32に挿し込んでコート種子Sを吸着するようにした。これにより、播種作業の前提となるコート種子Sの吸着作業を行うことができる。この場合、播種作業を行う場合と種子吸着作業を行う場合とで、播種作業フレーム40の構成要素を共通化させることができ、播種装置10の簡素化できる。
【0094】
・種子貯留部32の底部に緩衝材34が設けられているため、吸着ノズル51が種子貯留部32に挿し込まれた際にコート種子Sが押圧されても、その押圧に伴って緩衝材34が変形し、コート種子Sが潰されるなどの不都合を回避できる。また、底部の凹み変形によってコート種子Sが吸着ノズル51の先端側へ集まりやすくなり、コート種子Sの貯留量が少なくなっても吸着しやすい。
【0095】
・その緩衝材34は多孔性を有するため、吸着ノズル51の先端開口部51aが緩衝材34に当接することがあっても、その先端開口部51aに吸引力が作用した場合に、緩衝材34が吸着されてしまうことを抑制できる。
【0096】
・播種作業フレーム40の外枠部41と内側桟部42とを同一寸法からなる角型鋼管により連子状に構成し、連結アーム43によって水平状態を維持しながら移動させるようにした。このため、種子吸着作業や播種作業を行う場合に、播種作業フレーム40が種子貯留パネル30や栽培パネル81と当接することで位置決めされてそれらの作業を行いやすい。また、枠組みとされていることで軽量化を実現し、播種作業フレーム40を移動させる作業者の負担を軽減できる。
【0097】
・播種作業フレーム40には複数の吸着ノズル51を設けられているため、同時に複数のコート種子Sを播くことができる。そして、栽培ポット84や種子貯留部32は、吸着ノズル51と同じ数だけそれぞれ独立して設けている。パネル全域に養土Dや種子貯留部32が広がるのと異なり、養土Dの存在部分や種子貯留部32が限定されるため、養土Dによる栽培パネル81の重量増加を抑制して取り扱いが容易となり、種子貯留部32に貯留させる種子の量も適切化できる。
【0098】
・吸着ノズル51を、内部通路56や通気孔57の形成加工が施されたボルト52を角型鋼管よりなる内側桟部42に螺入することにより構成したため、その構造を簡素化できる。また、メンテナンスや色の異なる種子に合わせるための吸着ノズル51の交換が容易となる。
【0099】
・播種作業フレーム40は、連結アーム43を用いた簡素な構成で架台フレーム21に対して移動可能に支持されているため、この点でも播種装置10の構成を簡素化することができる。
【0100】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、種子貯留パネル30が栽培パネル81の下方に配置されているが、第2の実施形態では、それらパネル30,81が横並びに配置されている。ここでは、種子貯留パネル30と栽培パネル81とが横並びに配置された播種装置90について、図12、図13を参照しつつ説明する。図12は播種装置90の全体像を示す側面図、図13はコート種子の吸着作業及び播種作業を示す説明図である。なお、図12においては、吸引力発生装置60の図示を省略している。
【0101】
播種装置90は、第1の実施形態の播種装置10とほぼ同じ構成とされている。したがって、ここでは播種装置10と相違点を中心に説明する。
【0102】
図12に示すように、播種装置90には、栽培パネル用台車70に代えて、栽培パネル81に加えて種子貯留パネル30を載せた大型台車91が設けられている。大型台車91は、栽培パネル用台車70と同様に、架台フレーム21の長辺部21aに沿って水平方向にスライド移動する。大型台車91において、栽培パネル81及び種子貯留パネル30は、それぞれ上部を露出させた状態で大型台車91の移動方向に沿って横並びに配置されている。大型台車91には、横並びに配置された2つの収容凹部92が設けられており、一方の収容凹部92に栽培パネル81が収容され、他方の収容凹部92に種子貯留パネル30が収容されている。なお、大型台車91が栽培パネル支持手段に相当し、大型台車91、架台フレーム21等により栽培パネル移動手段が構成されている。
【0103】
播種作業フレーム40は、鉛直方向にスライド移動可能とされており、上昇することで退避位置に移動し、下降することで非退避位置に移動する。播種作業フレーム40は、非退避位置にある場合に、種子貯留パネル30及び栽培パネル81のうち一方の上に重なり、種子貯留パネル30と重なった状態ではコート種子Sの吸着作業を行い、栽培パネル81と重なった状態ではコート種子Sの播種作業を行う。したがって、第2の実施形態では、播種作業フレーム40が吸着作業及び播種作業の両方を1つの位置で行うことになり、その播種作業フレーム40の非退避位置が、第1の実施形態における播種作業フレーム40の種子吸着位置及び播種位置に相当する。つまり、種子吸着位置と播種位置とが同一位置とされることになり、さらに、吸着ノズル51の第1挿込位置と第2挿込位置とが同一位置とされることになる。
【0104】
大型台車91は、コート種子Sの吸着作業を行うための吸着台車位置と、コート種子Sの播種作業を行うための播種台車位置とにスライド移動可能とされている。大型台車91が吸着台車位置にある場合、播種作業フレーム40は非退避位置に移動することで種子貯留パネル30と重なる。一方、大型台車91が播種台車位置にある場合、播種作業フレーム40は非退避位置に移動することで栽培パネル81と重なる。なお、大型台車91が栽培パネル移動手段に相当し、大型台車91の播種台車位置が第1の実施形態における栽培パネル用台車70の第2台車位置に相当する。
【0105】
支持架台20において架台フレーム21の長辺部21aには、大型台車91が吸着台車位置よりも播種作業フレーム40から遠ざかる方向に移動することを規制するストッパ部材93aと、大型台車91が播種台車位置よりも播種作業フレーム40から遠ざかる移動することを規制するストッパ部材93bとが設けられている。ストッパ部材93a,93bは、それぞれ大型台車91と当接することで大型台車91の移動を規制する。
【0106】
第2の実施形態では、播種作業フレーム40と支持架台20とが連結アーム94により連結されており、連結アーム94が、播種作業フレーム40の鉛直方向へのスライド移動を可能としている。連結アーム94は、端部同士が連結された2つのアーム部94aを有しており、それらアーム部94aは互いに相対回転が可能とされている。2つのアーム部94aの各自由端のうち一方が支持架台20の第1回動軸44に対して回動自在に連結され、他方が播種作業フレーム40の第2回動軸45に対して回動自在に連結されている。この場合、各アーム部94aが互いに相対回転することで連結アーム94が折りたたみ状態と折りたたみ解除状態とに移行可能とされる。このため、播種作業フレーム40は、連結アーム94が折りたたまれることで下降し、折りたたみ状態が解除されることで上昇する。
【0107】
なお、播種作業フレーム40と支持架台104とは、連結アーム94に加えて、播種作業フレーム40の移動方向に伸縮可能な長尺状の伸縮柱(図示略)により連結されている。伸縮柱は、長手方向への相対的なスライド移動が可能な複数の柱部を有しており、伸縮柱の上端側の柱部が播種作業フレーム40に固定されており、下端側の柱部が支持架台20に固定されている。この場合、播種作業フレーム40の昇降方向が伸縮柱の伸縮方向と同一となるように規制されるため、播種作業フレーム40が退避位置や非退避位置から水平方向にずれることを回避できる。
【0108】
支持架台20の脚部22には、人に踏み込まれることで下方に移動するペダル部95が設けられており、連結アーム94は、ペダル部95が踏み込まれることで折りたたまれる。具体的には、ペダル部95と連結アーム94とはワイヤ等の線状部材を介して接続されており、ペダル部95の下方への移動に伴って線状部材が引っ張られることにより連結アーム94が折りたたまれる。この場合、ペダル部95が踏み込まれることにより、播種作業フレーム40が退避位置から非退避位置に移動する。また、播種作業フレーム40は、退避位置及び非退避位置のそれぞれにおいて位置保持される。
【0109】
播種作業フレーム40は、人が例えば把手部46を持って引き上げることにより非退避位置から退避位置に移動する。ここで、連結アーム94には、その連結アーム94が折りたたみ状態から折りたたみ解除状態になるように付勢するコイルバネ等の付勢部材96が取り付けられている。この場合、人が播種作業フレーム40を引っ張り上げる作業が付勢部材96の付勢力により補助される。なお、付勢部材96は、連結アーム94及び支持架台20のそれぞれに架け渡された状態で接続されており、支持架台20との接続部分を作用点として連結アーム94を付勢するものである。
【0110】
第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、播種装置90を用いて播種作業が行われる。ここでは、播種装置90による吸着作業及び播種作業について図12、図13を参照しつつ説明する。図13は播種作業フレーム40と大型台車91との関係を示す側面図であり、(a)にコート種子Sの吸着作業を行う場合の図を示し、(b)にコート種子Sの播種作業を行う場合の図を示す。
【0111】
まず、第1の実施形態と同様の事前作業を行うとともに、大型台車91に種子貯留パネル30及び栽培パネル81を載せる。種子貯留パネル30を載せる場合、図12に二点鎖線で示すように、播種作業フレーム40を退避位置に移動させた状態で大型台車91を播種台車位置に移動させ、大型台車91における播種作業フレーム40により上方が覆われていない方の収容凹部92に種子貯留パネル30を設置する。そして、種子貯留パネル30の種子貯留部32(図示略)にコート種子Sを貯留する。なお、種子貯留パネル30は、フック等の固定具により大型台車91に対して固定されるなどして播種装置90の構成部材とされていてもよい。
【0112】
また、図12に実線で示すように、播種作業フレーム40を退避位置としたまま大型台車91を吸着台車位置に移動させ、種子貯留パネル30が設置されていない方の収容凹部92に栽培パネル81を設置する。この場合、栽培パネル81の貫通孔83(図示略)には養土Dが充填されている。
【0113】
そして、図13(a)に示すように、大型台車91が吸着台車位置にある状態で播種作業フレーム40を退避位置から非退避位置に移動させ、播種作業フレーム40の吸着ノズル51にコート種子Sを吸着させる。その後、播種作業フレーム40を退避位置に移動させ、大型台車91を播種台車位置に移動させる。その状態で、図13(b)に示すように、播種作業フレーム40を非退避位置に移動させ、播種作業フレーム40の吸着ノズル51に吸着されているコート種子Sを栽培パネル81の養土Dに挿し入れる。そして、播種作業フレーム40を退避位置に移動させ、大型台車91を吸着台車位置に移動させた後、播種済みの栽培パネル81と播種前の栽培パネル81とを入れ替える。
【0114】
上記第1の実施形態では、栽培パネル81において土充填部としての栽培ポット84が貫通孔83に設けられているが、第2の実施形態では、貫通孔83自体を含んで土充填部98が形成されている。ここでは、土充填部98について図14を参照しつつ説明する。図14は、栽培パネル81が大型台車91に載せられた状態における土充填部98周辺の断面図である。
【0115】
図14に示すように、栽培パネル81において貫通孔83には、圧縮された養土Da(図16(a)参照)により形成された圧縮土層99が設けられ、それによって養土Dの充填を可能とする凹状部分が形成されており、その凹状部分が土充填部98に相当している。つまり、貫通孔83及び圧縮土層99により土充填部98が形成されている。圧縮土層99は、貫通孔83に合わせた形状を有し、貫通孔83のテーパ面83aに支持されることで貫通孔83に入った状態が保持される。圧縮土層99は、養土Daが圧縮されて固められたものであり、土充填部98に播かれたコート種子Sが発芽して苗となった場合に、圧縮土層99をそのまま定植可能とするものである。
【0116】
栽培パネル81の貫通孔83に圧縮土層99を設置する作業は、土圧縮装置100を用いて行われる。ここでは、土圧縮装置100について図15を参照しつつ説明する。図15は土圧縮装置100の全体像を示す側面図である。
【0117】
図15に示すように、土圧縮装置100は、栽培パネル81が載置される載置板部101と、載置板部101の上方に配置された昇降板部102と、昇降板部102を昇降させる圧縮昇降装置103と、それら載置板部101、昇降板部102、圧縮昇降装置103を支持する支持架台104とを有している。
【0118】
支持架台104は、水平方向に延びる架台フレーム106と、その架台フレーム106を支える脚部107とを有している。架台フレーム106は平面視において略正方形状をなし、脚部107は架台フレーム106の四隅にそれぞれ設けられている。これら架台フレーム106や各脚部107は、角型鋼管が用いて構成されている。
【0119】
載置板部101は、板面を上下方向に向けた状態で架台フレーム106の下方に配置され、脚部107に対して溶接等により連結されている。載置板部101は、上面に載置された栽培パネル81を下方から支持し、その状態において栽培パネル81は架台フレーム106から下方に離間している。載置板部101の上面には、下方に凹んだ凹み部分109(図16参照)が形成されており、栽培パネル81はその凹み部分109に収容された状態で載置板部101に載置される。栽培パネル81が凹み部分109に載置された場合、栽培パネル81の各貫通孔83は載置板部101の上面により下方から塞がれた状態となる。
【0120】
昇降板部102は、合成樹脂材料や金属、木材などの硬質の材料により平面視において矩形状に形成されており、栽培パネル81とほぼ同じ大きさ及び形状とされている。圧縮板部は、その一側面から突出した圧縮凸部112を有している。圧縮凸部112は、栽培パネル81の貫通孔83に嵌合する形状及び大きさとされており、その高さ寸法は、貫通孔83の長さ寸法(栽培パネル81の厚み寸法)より小さくされている。また、昇降板部102は、圧縮凸部112が下方に向けて突出した状態で圧縮昇降装置103により支持されている。
【0121】
圧縮昇降装置103は、架台フレーム106に固定されたシリンダ113と、一端側がシリンダ113内で摺動するロッド114とを有しており、油圧や空圧による圧力駆動の昇降装置とされている。ロッド114の他端側は昇降板部102の上面に取り付け固定されており、シリンダ113に対するロッド114の摺動に伴って、昇降板部102が水平をなす状態で上下方向に移動する。昇降板部102は、通常位置と、その通常位置より下方に設定された圧縮位置とに圧縮昇降装置103により移動可能とされている。
【0122】
載置板部101の載置位置に栽培パネル81が載置された状態において、昇降板部102は、通常位置にある場合に栽培パネル81から上方に離間しており、圧縮位置にある場合に栽培パネル81の上に重ねられる。ここで、圧縮凸部112は、栽培パネル81の各土充填部98に対応させて複数設けられている。具体的には、圧縮凸部112は、栽培パネル81の数と同じだけ設けられ、それぞれ等間隔で設置されている。そして、図15に二点鎖線で示すように昇降板部102が栽培パネル81に上から重ねられた場合に、各圧縮凸部112が栽培パネル81の土充填部98にそれぞれ入り込むように、圧縮凸部112の設置個所が設定されている。
【0123】
次に、土圧縮装置100を用いて行われる土圧縮作業について、図14、図16を参照しつつ説明する。図16は、土圧縮作業の手順を示す図である。
【0124】
まず、図16(a)に示すように、昇降板部102が通常位置にある状態で、貫通孔83に圧縮土層99が設けられていない状態の栽培パネル81を載置板部101の凹み部分109に載置し、栽培パネル81の各貫通孔83に養土Daをそれぞれ入れる。この場合、凹み部分109においては、各貫通孔83が載置板部101の上面により塞がれているため、各貫通孔83に養土Daが貯留されることになる。また、貫通孔83に入れる養土Daの量は貫通孔83から溢れない程度とし、水かけなどにより貫通孔83内の養土Daを湿らせておく。
【0125】
その後、図16(b)に示すように、昇降板部102を通常位置から圧縮位置に移動させる。この場合、昇降板部102は栽培パネル81の上方において下降し、その下降に伴って各圧縮凸部112が栽培パネル81の各貫通孔83に上から入り込む。ここで、圧縮昇降装置103の圧力駆動により、昇降板部102は貫通孔83内の養土Daに接触した後もその養土Daを圧縮しながら下降し、圧縮位置まで移動する。この結果、養土Daは貫通孔83内において載置板部101の上面と圧縮凸部112の下面との間で押し固められ、圧縮土層99が形成される。なお、あらかじめ養土Daを湿らせておくことにより、圧縮土層99の強度を高めることが可能となる。
【0126】
続いて、図16(c)に示すように、昇降板部102を圧縮位置から通常位置に移動させる。そして、図14に示すように、栽培パネル81を大型台車91の収容凹部92に移動させるとともに、貫通孔83において圧縮土層99の上に新規の養土Dを入れる。
【0127】
以上詳述した第2の実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0128】
・栽培パネル81に加えて種子貯留パネル30を大型台車91に収容し、コート種子Sの吸着作業が行われる吸着台車位置と、コート種子Sの播種作業が行われる播種台車位置との間を移動可能とした。そして、吸着台車位置で栽培パネル81の交換作業を行うようにしため、栽培パネル81の交換作業を行う上での障害物が存在せず、当該交換作業を行いやすい。さらに、播種台車位置で種子貯留パネル30へのコート種子Sの貯留作業を行うようにしたため、種子貯留作業を行う上での障害物が存在せず、当該種子貯留作業を行いやすい。
【0129】
・播種作業フレーム40を非退避位置に移動させた場合、大型台車91が吸着台車位置及び播種台車位置のどちらにあるかによって、コート種子Sの吸着作業と播種作業とを選択的に行うことになる。この場合、播種作業フレーム40を非退避位置及び退避位置の2つの位置に移動可能な構成とすれば、吸着作業及び播種作業の両方を行うことができる。したがって、播種作業フレーム40及び連結アーム94の構成要素を共通化させることができ、播種装置90をさらに簡素化できる。
【0130】
・連結アーム94の折りたたみ動作により播種作業フレーム40が鉛直方向に昇降するため、人が把手部46を持って引き上げることで播種作業フレーム40を非退避位置から退避位置に移動させる場合に、播種作業フレーム40を斜め上方に移動させる場合に比べて、引き上げ作業に際して力を入れやすい。また、付勢部材96により引き上げ作業が補助されるため、その作業に際しての身体的な負担を低減できる。
【0131】
・栽培パネル81の土充填部98においては貫通孔83の底部が圧縮土層99により形成されているため、栽培ポット84を使用しなくても、土充填部98に養土Dを充填することができる。したがって、土充填部98に播かれたコート種子Sの栽培が終わった後に、貫通孔83から栽培ポット84を抜き取る作業を行う必要がない。これにより、栽培ポット84を回収する手間を省くことができる。
【0132】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示す形態によって実施することもできる。
【0133】
上記各実施の形態では、播種装置10,90に種子貯留パネル30が設けられているが、これを省略して、作業者が各吸着ノズル51にコート種子Sを吸着させるようにしてもよい。もっとも、コート種子Sの吸着作業効率化という点では、上記各実施形態のように種子貯留パネル30を備えた構成であることが好ましい。
【0134】
上記各実施の形態では、複数の吸着ノズル51が設けられているが、より多数であってもよいし、単独であってもよい。吸着ノズル51の数を変更する場合には、それに合わせて播種作業フレーム40の大きさも変更される。もっとも、一度に同時に播種できるコート種子の数や、播種作業フレーム40の操作しやすい適度な大きさ等を考慮した播種作業の効率化という観点からは、上記実施形態の如く構成することが好ましい。
【0135】
上記各実施の形態では、種子貯留パネル30に設けられた複数の種子貯留部32はそれぞれ独立しているが、パネル全域にわたって広がる一つの種子貯留部32が設けられた構成であってもよい。同様に、栽培パネル81に設けられた複数の栽培ポット84もそれぞれ独立しているが、パネル全域にわたって広がる土充填部分が設けられた構成を採用してもよい。もっとも、種子貯留部32に充填されるコート種子Sの量や、栽培パネル81の取扱いを考えた場合には、上記実施形態の如く構成することが好ましい。
【0136】
上記各実施の形態では、枠組みによって構成された播種作業フレーム40をノズル設置体の例としたが、一枚の平板形状をなし、その内部全域にわたって中空部が形成された播種作業体を播種作業フレーム40の代わりとしてもよい。これによっても、連結アーム43を用いた支持構造を変更することなく、播種作業フレーム40と同様の動作を行える。もっとも、軽量化による操作のし易さという観点からは、枠組みによる播種作業フレーム40を用いることが好ましい。
【0137】
上記各実施の形態では、吸着ノズル51は、内側桟部42に対してボルト52をその先端部が突出するように螺入させることにより構成され、そのボルト52が着脱自在に設けられているがそれを固定するようにしてもよい。また、ボルト52を用いることなく、例えば、内側桟部42の下面に中空軸部を溶接等によって取り付けて吸着ノズル51を構成してもよい。
【0138】
上記各実施の形態では、コート種子Sが用いられているが、これに代えて裸種子を用いるようにしてもよい。もっとも、裸種子の場合、大きさや形状にバラつきがあって扱いにくいという不都合があるため、大きさや形状が均一化されたコート種子Sを用いることが好ましい。しかも、種子の種類を色によって判別できるという点でも、コート種子Sにはメリットがある。
【0139】
上記各実施の形態では、栽培パネル用台車70や大型台車91などの栽培パネル移動手段により栽培パネル81が水平方向に移動可能な構成とされているが、栽培パネル81は所定位置で支持架台20に固定されていてもよい。例えば、栽培パネル81を支持する栽培パネル支持手段が、播種作業フレーム40による播種作業が可能な位置で支持架台20に固定されている構成とする。第1の実施形態においては、栽培パネル用台車70が第2台車位置で固定され、第2の実施形態においては、大型台車91が播種台車位置で固定される構成とする。この場合、栽培パネル用台車70及び大型台車91が栽培パネル支持手段に相当する。
【0140】
上記各実施の形態では、播種作業フレーム40が連結アーム43,93により下方から支持されているが、播種作業フレーム40が上方から吊り下げ支持されていてもよい。例えば、伸縮性を有する付勢部材により播種作業フレーム40が吊り下げ支持され、播種作業フレーム40は付勢部材の付勢力により退避位置に保持され、付勢力に抗して引き下げられることにより下降する構成としてもよい。要は、播種作業フレーム40が上下方向に移動する構成とされていればよい。
【0141】
上記第2の実施の形態では、種子貯留パネル30と栽培パネル81とが大型台車91に載せられているが、別の台車にそれぞれ載せられていてもよい。この場合、それら台車が互いに連結され、一体的に移動することが好ましい。
【0142】
上記第2の実施の形態では、土圧縮装置100において昇降板部102が昇降するが、昇降板部102及び載置板部101の少なくとも一方が昇降する構成とされていればよい。これにより、昇降板部102と載置板部101とが相対的に近づく方向に移動して重なることにより、圧縮凸部112が貫通孔83内で養土Daを圧縮して圧縮土層99を形成することができる。
【0143】
上記第2の実施の形態では、圧縮凸部112が貫通孔83に入り込むが、棒状の部材が貫通孔83に入り込んでもよい。要は、養土Daを貫通孔83内で圧縮する圧縮部材が貫通孔83に対して相対的に昇降する構成とされていればよい。
【符号の説明】
【0144】
10…播種装置、30…種子貯留パネル、32…種子貯留部、34…緩衝材、40…播種作業フレーム(ノズル設置体)、43…連結アーム(ノズル昇降装置)、51…吸着ノズル、52…ボルト、54…中空部、56…内部通路(吸引通路)、57…通気孔、60…吸引力発生装置(吸引手段)、70…栽培パネル用台車(栽培パネル支持手段、栽培パネル移動手段)、81…栽培パネル、84…栽培ポット(土充填部)、90…播種装置、91…大型台車(栽培パネル支持手段、栽培パネル移動手段)、98…土充填部、D…養土(土)、S…コート種子(種子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引通路が内部に設けられたノズル軸を有し、前記吸引通路が前記ノズル軸の先端において開口して先端開口部が形成されており、前記吸引通路に作用する吸引力により前記先端開口部に種子を吸着する吸着ノズルと、
前記吸引力の作用又は非作用を切替可能とする吸引手段と、
板状に形成されるとともに上面に土が充填された土充填部が露出する栽培パネルを、前記吸着ノズルの下方にて支持する栽培パネル支持手段と、
前記吸着ノズルを下方へ移動させて前記ノズル軸の先端部が前記栽培パネルの土充填部に挿し込まれる第1挿込位置と、前記吸着ノズルを上方へ移動させて前記栽培パネルの土充填部から離間した非挿込位置とに配置させるノズル昇降装置と、
を備えたことを特徴とする播種装置。
【請求項2】
前記種子はコーティング種子であり、
前記吸着ノズルのノズル軸は、前記コーティング種子の外径よりも細く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の播種装置。
【請求項3】
前記吸着ノズルのノズル軸は、前記コーティング種子の表面色と異なる色を呈していることを特徴とする請求項2に記載の播種装置。
【請求項4】
前記栽培パネル支持手段に支持されている前記栽培パネルを、その上方に前記吸着ノズルが存在しない位置へ、水平方向にスライド移動させる栽培パネル移動手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の播種装置。
【請求項5】
板状に形成されるとともに上面に複数の種子を貯留する種子貯留部が露出する種子貯留パネルを備え、
前記種子貯留パネルは、前記栽培パネル支持手段により支持される前記栽培パネルの下方に設置されており、かつ前記吸着ノズルが前記第1挿込位置よりも下方へ移動した場合にその先端部が前記種子貯留部に挿し込まれるように配置されており、
前記吸着ノズルの先端部が前記種子貯留部に挿し込まれた場合における前記吸着ノズルの配置位置を第2挿込位置とし、
前記栽培パネル移動手段は、前記吸着ノズルの前記第2挿込位置への移動と干渉しない位置まで前記栽培パネルを移動可能にする移動範囲が設定されていることを特徴とする請求項4に記載の播種装置。
【請求項6】
板状に形成されるとともに上面に複数の種子を貯留する種子貯留部が露出する種子貯留パネルを備え、
前記種子貯留パネルは、前記栽培パネルと横並びに配置され、
前記栽培パネル移動手段は、前記吸着ノズルが前記第1挿込位置に移動することで前記吸着ノズルの先端部が前記種子貯留部に挿し込まれる位置に、前記種子貯留パネルを前記栽培パネルとともに水平方向にスライド移動させることを特徴とする請求項4に記載の播種装置。
【請求項7】
前記種子貯留部の底部には緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の播種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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