説明

撮像装置、ノイズ処理方法及びプログラム

【課題】複雑な構成を必要とせずに、画素単位でランダム的に発生するノイズを処理して高画質の画像データを得る。
【解決手段】同一範囲を撮影する少なくとも2つのCCD21a,21bを備え、このCCD21a,21bをHドライバ25とVドライバ26で共通駆動することで、CCD21a,21bから出力される各画素の信号をアナログの状態で合成器29にて合成処理することにより、その合成信号をノイズ処理した信号として出力する。これにより、複雑な構成を必要とせずに、画素単位でランダム的に発生するノイズを処理して高画質の画像データを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタルカメラなどの撮像装置に係り、特に2つの撮像素子を備えた撮像装置と、この撮像装置に用いられる画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、デジタル・スチル・カメラまたは電子スチルカメラなどとも呼ばれ、CCD(charge coupled device)などの撮像素子を用いて、撮影レンズを通して入射された光を電気信号に変換し、これを画像データとしてメモリカードなどに記録するものである。
【0003】
図13は従来のデジタルカメラの回路構成を示すブロック図であり、撮像素子としてCCDを用いた場合の基本的な構成を示している。
【0004】
図中の11がCCDである。このCCD11の出力信号である各画素の信号は、AFE(analogue front−end)12を介してデジタルデータに変換された後、デジタル信号処理専用のマイクロプロセッサであるDSP(digital signal processor)13に与えられる。
【0005】
DSP13では、各画素のデジタルデータを画像処理してメインコンピュータであるCPU17に渡す。CPU17は、DSP13によって画像処理されたデータを画像データとして取得し、これを所定の方式で圧縮してメモリ18に記録する。
【0006】
また、タイミング発生器14は、DSP13からの指示に従ってAFE12にサンプルホールド信号を出力すると共に、Hドライバ15およびVドライバ16に対して、それぞれCCD駆動用のタイミングパルス信号を出力する。Hドライバ15はCCD11を構成する各画素の電荷を水平方向へ転送するためのドライバ、Vドライバ16は各画素の電荷を垂直方向へ転送するためのドライバである。CCD11に蓄積された各画素の電荷信号は、Hドライバ15およびVドライバ16から出力される駆動信号によって図示せぬ垂直レジスタと水平レジスタを介してライン単位で出力され、その出力先に設けられた図示せぬ検出部にて電気信号に変換されて出力される。
【0007】
このように、通常のデジタルカメラでは、1つのCCDを持ち、このCCDを一組のAFE、タイミング発生器、HドライバおよびVドライバで駆動している。
【0008】
ここで、CCDの駆動時において、様々なノイズが発生することが知られている。CCDに発生するノイズは、大きく分けると、ランダム・ノイズと固定パターン・ノイズに分類される。
【0009】
固定パターン・ノイズは、感度むらなどである。この固定パターン・ノイズは、CCDの固定箇所に発生するノイズであり、後の画像処理にて除去することが可能である。これに対し、ランダム・ノイズは、ランダムに発生するノイズであり、簡単には除去することができない。
【0010】
ランダム・ノイズとしては、例えば光ショットノイズ、暗電流ショットノイズ、ホワイトノイズなどがある。光ショットノイズは、CCDの各画素を構成するフォトダイオードに入射するフォトンの揺らぎによって発生するノイズである。暗電流ショットノイズは、光以外の原因で発生するノイズであり、光が入射しない状態でも発生することから暗電流と呼ばれる。ホワイトノイズは、主にCCDの出力部に設けられたMOSトランジスタで発生するノイズである。
【0011】
従来、このようなランダム・ノイズ(以下、単にノイズと称す)を除去する方法として、例えば特許文献1に開示されている方法が知られている。この特許文献1では、複数の撮像素子(CCD)を用いて、これらの撮像素子上の配列画素出力を相関のあるもの同志を平均化して合成することで、信号に含まれるノイズ成分を除去することを提案している。
【特許文献1】特開平6−326907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1では、表示画面を複数の領域に分割し、これらの分割領域毎に撮像素子を設けている。そして、これらの撮像素子の各出力信号に基づいて、隣り合うライン同志または隣り合う画素同志で相関を取り、相関があれば両信号の平均値を出力し、相関がなければ最初のラインまたは最初の画素の信号を出力する。相関ある/なしの判断は、両信号の差分によって決定し、閾値以上であれば相関なし、閾値以内であれば相関ありと判断する。
【0013】
このような方法によれば、相関の高いデータに対し、平均化処理によりノイズリダクションによる画質の改善を図ることができる。しかしながら、平均化する2つの信号はCCD上で別の画素の信号であるため、一方の信号に閾値以上のノイズが含まれていると、両者の信号に相関なしと判断されて、平均化処理が行われずにノイズが残ってしまう問題がある。
【0014】
本発明は前記のような点に鑑みなされたもので、画素単位でランダム的に発生するノイズを処理して高画質の画像データを得ることのできる撮像装置、ノイズ処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る撮像装置は、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子と、前記各撮像素子から出力される信号に基づいてノイズ処理を行うノイズ処理手段とを具備して構成される。
【0016】
このような構成によれば、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子から出力される信号を用いて画素単位でノイズ処理した信号を生成して、高画質の画像データを得ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2は、前記請求項1記載の撮像装置において、前記ノイズ処理手段は、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をアナログの状態で合成処理し、その合成信号をノイズ処理した信号として出力することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、各撮像素子から出力される各画素の信号をアナログの状態で合成処理することで、いずれかの画素信号にノイズが存在していた場合にこれを低減して出力することができる。
【0019】
また、本発明の請求項3は、前記請求項1記載の撮像装置において、前記ノイズ処理手段は、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換した後、各画素毎に同じ位置の画素データを平均化し、その平均化したデータをノイズ処理した画素データとして出力することを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換した後、各画素毎に同じ位置の画素データを平均化することで、いずれかの画素データにノイズが存在していた場合にこれを低減して出力することができる。
【0021】
本発明の請求項4に係る撮像装置は、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子と、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換する変換手段と、この変換手段によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定するノイズ判定手段と、このノイズ判定手段によってノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力するデータ選別手段とを具備して構成される。
【0022】
このような構成によれば、各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換した後、各撮像素子における同じ位置の画素データを用いてノイズの有無を判定し、ノイズが存在すると判定された場合にはノイズが存在する画素データを排除して出力する。これにより、ノイズをキャンセルして画素データを出力可能として、高画質の画像データを得ることができる。
【0023】
また、本発明の請求項5は、前記請求項4記載の撮像装置において、前記ノイズ判定手段は、前記各撮像素子における同じ位置の画素データ同志を比較し、所定値以上の差があった場合にノイズが存在するものと判定することを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、撮像素子における同じ位置の画素データ同志を比較することで、所定値以上の差があった場合に、いずれかの画素データにノイズが存在するもの判定して処理することができる。
【0025】
また、本発明の請求項6は、前記請求項4記載の撮像装置において、前記データ選別手段は、前記各撮像素子における同じ位置の画素データのそれぞれについて周囲画素のデータと比較し、前記周囲画素のデータとの差が少ないデータを採用することを特徴とする。
【0026】
このような構成によれば、各撮像素子における同じ位置の画素データのそれぞれについて周囲画素のデータと比較し、その周囲画素のデータとの差が少ないデータを採用することで、ノイズが存在しない画像データを選別して出力することができる。
【0027】
また、本発明の請求項7は、前記請求項1または4記載の撮像装置において、前記各撮像素子の水平方向および垂直方向を共通に駆動する駆動手段を具備したことを特徴とする。
【0028】
このような構成によれば、前記各撮像素子を1つの駆動手段にて共通駆動する構成により回路構成を簡素化できる。
【0029】
本発明の請求項8に係るノイズ処理方法は、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子を備えた撮像装置に用いられるノイズ処理方法であって、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換処理するステップと、この変換処理によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定するステップと、ノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力するステップとを具備したことを特徴とする。
【0030】
このようなノイズ処理方法によれば、前記各ステップに従った処理を実行することにより、前記請求項4記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【0031】
本発明の請求項9に係るプログラムは、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子を備えた撮像装置を制御するコンピュータに用いられるプログラムであって、前記コンピュータに、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換処理する機能と、この変換処理によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定する機能と、ノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力する機能とを実現させることを特徴とする。
【0032】
したがって、コンピュータが前記各機能を実現するためのプログラムを実行することにより、前記請求項4記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子を備えることで、これらの撮像素子から出力される信号を用いて画素単位でノイズ処理した信号を生成して、高画質の画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、2つの撮像素子を用い、これらの出力信号をアナログ的に合成処理することでノイズ処理した信号を生成することを特徴としている。
【0036】
図1は本発明の第1の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図であり、撮像素子として2つのCCD21a,21bを備えた場合の構成が示されている。CCD21a,21bは、画素数などが同じものであるとする。また、このCCD21a,21bの画角も同じであり、被写体に対して同じ範囲を撮影するように構成されている。なお、撮影レンズは、CCD21a,21bのそれぞれに対応した2つ設けられた構成であっても良いし、1つの撮影レンズを通して入射された光をプリズム等でCCD21a,21bのそれぞれに分光するような構成であっても良い。
【0037】
このような同一構成のCCD21a,21bに対し、1組のAFE22、タイミング発生器(TG)24、Hドライバ25およびVドライバ26が備えられる。
【0038】
AFE22は、相関ダブル・サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン調整アンプ(AGC)、A/Dコンバータなどから構成され、タイミング発生器(TG)24から出力されるサンプルホールド信号に従ってアナログの画像データをデシタル化する。DSP23では、このデジタル化された画像データを画像処理してメインコンピュータであるCPU27に渡す。CPU27は、DSP23によって画像処理された画像データを撮影画像として取得し、これを所定の方式で圧縮してメモリ28に記録する。
【0039】
また、タイミング発生器24は、DSP23からの指示に従ってAFE22にサンプルホールド信号を出力すると共に、Hドライバ25およびVドライバ26に対して、それぞれCCD駆動用のタイミングパルス信号を出力する。Hドライバ25はCCD21a,21bを構成する各画素の電荷を水平方向へ転送するためのドライバ、Vドライバ26は各画素の電荷を垂直方向へ転送するためのドライバである。
【0040】
ここで、第1の実施形態では、CCD21a,21bとAFE22との間に合成器29が設けられており、CCD21aの出力信号(アナログ信号)SaとCCD22bの出力信号(アナログ信号)Sbをアナログ的に合成処理し、その合成信号ScをAFE22に出力する構成になっている。合成器29は、CCD21aの出力信号SaとCCD22bの出力信号Sbとを加算した後、これを平均化することで合成信号Scを生成する機能を有する。
【0041】
上述したように、CCD21a,21bは同一構成であり、画角を等しくして同じ範囲を撮影する。したがって、CCD21a,21b上で同じ位置の画素には、それぞれに同じ画像情報が蓄積され、その信号が出力されることになる。このため、一方の出力信号にノイズが存在していても、他方の出力信号と合成することで、これを低減することができる。
【0042】
図2および図3にその様子を示す。図2は通常のCCD出力信号の波形、図3は2つのCCD出力信号とこれを合成した合成信号の波形を示している。
【0043】
通常は、CCD21a,21bの出力波形は図2のようになる。ここで、図3に示すように、例えば一方のCCD21aの出力信号Saにノイズが存在していたとしても、前記合成器29において、同じ画像情報である他方のCCD21aの出力信号Sbと合成することで、AFE22に入力される合成信号Scのノイズ成分は元の1/2になる。なお、図中のVnはノイズレベルの絶対値、SHP,SHDはサンプリングポイントを示している。
【0044】
このように、それぞれに同じ範囲を撮影する2つのCCD21a,21bを備え、これらの出力信号Sa,Sbを合成器29にて合成処理することで、一方の信号に存在していたノイズを半分に減らすことができる。なお、両方にノイズが存在していた場合にはキャンセルできないが、数万画素からなる素子の中で同じ位置にノイズが乗ってしまう可能性は低いため、問題にならないと考えられる。
【0045】
逆に、例えば白い壁に1画素相当の黒い点があり、これを撮影したような場合には、2つのCCD21a,21bでこの黒い点を同時に捕らえるため、誤ってノイズとして除去してしまうようなことはなく、黒い点として撮影することが可能である。
【0046】
さらに、このような2つのCCD21a,21bを使用して同じ範囲を撮影する構成では、その駆動回路(図1に示すHドライバ25およびVドライバ26)を共通化できる。つまり、同じドライバ出力を使用してCCD21a,21bを駆動することができるので、回路を簡素化して省スペース化、低コスト化を図ることができる。
【0047】
なお、ここでは2つのCCDを用いた構成を示したが、CCDの数を増やせば、当然の事ながらノイズ成分をさらに低減できる。この場合、N個のCCDを搭載すれば、理論上、ノイズレベルの絶対値は1/Nとなる。さらに、CCDの数を増やすことで、すべてのCCDの同じ位置にノイズが乗る可能性は極めて低くなることから、より確実にノイズ成分を除去して高画質の画像を得ることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0049】
前記第1の実施形態では、2つのCCD出力をアナログ的に合成処理したが、第2の実施形態では、これをデジタル的に合成処理する。
【0050】
図4は本発明の第2の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。なお、前記第1の実施形態における図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0051】
図1の構成と異なる点は、2つのCCD21a,21bに対して共通に設けられたHドライバ31からCCD21a,21bのそれぞれに対して水平駆動信号を個別に出力する構成になっていることである。また、CCD21a,21bとAFE22との間にスイッチ回路32が設けられており、CCD21aの出力信号SaとCCD21bの出力信号Sbを選択的にAFE22に出力する構成になっている。
【0052】
すなわち、前記第1の実施形態では、2つのCCD21a,21bに対し、図5に示すような水平駆動信号H1,H2を出力することで、CCD21a,21bから同じタイミングで出力信号Sa,Sbを得ていた。これに対し、第2の実施形態では、図6に示すように、CCD21aに対する水平駆動信号H1a,H2aと、CCD21bに対する水平駆動信号H1b,H2bに分け、その出力タイミングをずらしてCCD21a,21bに出力するものとする。
【0053】
これにより、図7に示すように、CCD21a,21bからは例えば1ライン毎に各画素の出力信号Sa,Sbが交互に読み出されて出力されることになる。AFE22では、これらの出力信号Sa,Sbをスイッチ回路32を介して入力し、それぞれにA/D変換してDSP23に出力する。ここで、DSP23において、CCD21a,21bにおける同じ位置の画素に対応した2つのデジタル値を平均化する処理を行う。
【0054】
このように、CCD21a,21bの各出力信号Sa,Sbをデジタル化して平均化する構成であっても、一方にノイズ成分が存在していた場合にこれを低減することが可能である。また、出力信号Saに対するサンプリングポイントSHPa,SHDaと、出力信号Sbに対するサンプリングポイントSHPb,SHDbをそれぞれ個別に設定すれば、さらにノイズレベルの低減化することができる。
【0055】
また、Hドライバ31やVドライバ26などの駆動回路はCCD21a,21bで共通であるため、前記第1の実施形態と同様に回路の簡素化による省スペース化、低コスト化を図れる。
【0056】
なお、ここではスイッチ回路32を設けてCCD21aの出力信号SaとCCD21bの出力信号Sbを切り換える構成としたが、両信号ともAFE22への入力が可能であれば、このAFE22内でスイッチ回路32のような動作をさせても良い。
【0057】
また、この第2の実施形態においても、CCDは2つに限らず、3個以上であっても良く、CCDの数を増やせば、その分、ノイズ低減効果が大きくなる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0059】
第3の実施形態では、前記第2の実施形態と同様に2つのCCD出力をデジタル処理するが、その際に平均化するのではなく、2つのCCDにおける同じ位置の画素データの中でノイズが存在するデータを選別し、そのデータを排除して出力するものである。
【0060】
図8は本発明の第3の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。なお、基本的な構成は、前記第2の実施形態における図4の構成と同様であり、同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0061】
図4と異なる点は、デジタル処理を行うDSP23に、本実施形態を実現する処理機能を持たせてあることと、2つのCCD21a,21bに対応させたバッファ(BF)33a,33bを追加し、それぞれに数ライン分のデータを保持できる構成としたことである。
【0062】
2つのCCD21a,21bが同じ画角で同一範囲を撮影した場合、互いに対応する位置にある画素から得られるデータ値(デジタル)は等しくなると考えられる。これに対し、両者のデータ値に大きな差がある場合には、どちらか一方にノイズが存在していると考えられる。そこで、両者のデータ間に一定値TH以上の差があった場合にはノイズが存在しているものと判断し、その際に画像データの連続性を利用して周辺画素のデータと比較することで、ノイズが存在する方のデータを選別して排除する。
【0063】
以下に、その処理動作について説明する。
【0064】
図9は第3の実施形態における処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、DSP23がメモリ28などに予め記憶されたプログラムを読み込むことにより実行される。
【0065】
2つのCCD21a,21bの出力信号Sa,Sbは、例えば1ライン毎にスイッチ回路32を介して交互にAFE22に与えられ、そこでA/D変換されてDSP23に入力される(ステップS11)。ここで、CCD21aの1画素分のA/D変換出力をデータA、CCD21bの1画素分のA/D変換出力をデータBとすると、DSP23では、データAをバッファ33aに順次保持し、データBをバッファ33bに順次保持する(ステップS12)。バッファ33a,33bには、それぞれに少なくとも1ライン分のデータを保持可能であるとする。
【0066】
バッファ33a,33bに所定ライン数分のデータが保持されると、DSP23は、同じ位置のデータAとデータBとを比較し(ステップS13)、両者の差分|A−B|を求める(ステップS14)。その結果、|A−B|<THであれば、つまり、データAとデータBに大きな差がなければ(ステップS14のNo)、DSP23はデータA,Bにノイズは存在しないものと判断し、その平均値を取って当該画素のデータとする(ステップS15)。
【0067】
一方、|A−B|≧THであった場合、つまり、データAとデータBに閾値TH以上の大きな差があった場合には(ステップS14のYes)、データAとデータBのどちらか一方にノイズが存在しているものと考えられる。そこで、DSP23は、データAとデータBのそれぞれについて周辺画素のデータと比較することで、ノイズが存在するデータを選別する(ステップS16)。
【0068】
すなわち、画像データを構成する各画素のデータは、隣接する各画素同志で相関性が高い。そこで、データAとデータBのそれぞれについて周辺画素のデータと比較する。この場合、バッファ33a,33bが3ライン分のデータを保持可能な構成であれば、図10に示すように、少なくとも周囲4画素とのデータ比較が可能である。
【0069】
当然の事ながら、バッファの容量を増やせば、その分、比較対象とする画素数を多くすることができ、データ選別精度が上がる。ただし、あまり離れた画素との比較は相関性が低くなり、逆に精度を下げてしまう可能性があるため、例えば画素間の距離に応じた重み付けを行うことが好ましい。また、バッファ33a,33bの容量が1ライン分であれば、前後2つの周辺画素のデータとの比較によりデータ選別を行うことになる。
【0070】
データAとデータBのそれぞれについて周辺画素のデータと比較した結果、データAの方が周辺画素のデータとの差が少なかった場合には(ステップS17のYes)、DSP23は、データBにノイズが存在している可能性があると判断し、データAを当該画素のデータとして採用する(ステップS18)。一方、データBの方が周辺画素のデータとの差が少なかった場合には(ステップS17のNo)、DSP23は、データAにノイズが存在している可能性があると判断し、データBを当該画素のデータとして採用する(ステップS19)。
【0071】
なお、周辺画素のデータとの差がデータAとデータBで同じであった場合、どちらにもノイズが存在していないことであるため、どちらか一方(例えばデータA)を採用するものとする。
【0072】
このように、2つのCCD21a,21bを用いて同一範囲を撮影した場合に、周辺画素との比較により一方のデータを排除することで、ノイズ成分をキャンセルした画素データを出力して、高画質の画像データを最終的に得ることができるようになる。
【0073】
なお、前記実施形態では、周辺画素のデータと比較する場合に、図10に示したように、データAとデータBでそれぞれの周辺画素のデータと比較するものとして説明したが、例えば図11に示すように、データAの周辺画素のデータとデータBとを比較するようにしても良い。このように、データAとデータBで比較対象とする周辺画素のデータを統一することで、データ選別の基準が同じとなり、より正確にノイズを含んだ画素データを選別できるようになる。また、このような方法によれば、回路構成上もバッファ1つで対応することができる。
【0074】
また、別の方法として、図12に示すように、周辺画素のデータとして、ノイズ判定によって既に確定済みの画素データ(確定データ)を用いて、これと比較するような方法もある。この場合、各画素の確定データを別のメモリに保持しておく必要があるが、このような確定データとの比較により、より正確にデータ選別を行うことができる。ただし、着目画素より後の画素については、まだ未確定であるため、着目画素よりも前に存在する画素のデータと比較することになる。図12において、データAとデータBに対して四角マークで示した画素のデータが確定データであり、同じものである。この確定データは、図示せぬメモリに保持されているものとする。
【0075】
また、前記各実施形態において、撮像素子として2つのCCDを搭載したデジタルカメラを例にして説明したが、さらに多くのCCDを搭載して前記同様の手法にてノイズキャンセルすることもできる。また、例えばCCD以外の撮像素子を用いることでも良い。
【0076】
また、前記各実施形態では、2つのCCDの画素数や画角が同じで、同一範囲を撮影するものとして説明したが、必ずしも、そのような構成である必要はない。すなわち、2つのCCDの画素数や画角が違っていても、互いに共通の撮影範囲を有する構成であれば、その撮影範囲内のノイズを除去した画像を得ることができる。
【0077】
また、2つのCCDの各画素のデータを比較する場合に、互いに同じ位置の画素同士を比較する方法の他に、例えば一方のCCDの1画素のデータと、他方のCCDの複数画素のデータとを比較してノイズ処理するような構成であっても良い。
【0078】
さらに、本発明はデジタルカメラに限らず、例えばカメラ付きの携帯電話など、撮像機能を備えた電子機器であれば、そのすべてに適用可能である。
【0079】
要するに、本発明は前記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【図2】通常のCCD出力信号の波形を示す図。
【図3】同実施形態の手法に従った2つのCCD出力信号とこれを合成した合成信号の波形を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【図5】通常のHドライバから出力される水平駆動信号の波形を示す図。
【図6】同実施形態の手法に従ったHドライバから出力される水平駆動信号の波形を示す図。
【図7】同実施形態におけるHドライバから出力される水平駆動信号と2つのCCD出力信号との関係を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるデジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【図9】同実施形態における処理動作を示すフローチャート。
【図10】同実施形態におけるノイズ判定方法を説明するための図。
【図11】他のノイズ判定方法を説明するための図。
【図12】他のノイズ判定方法を説明するための図。
【図13】従来のデジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0081】
21a,21b…CCD、22…AFE(analogue front−end)、23…DSP(digital signal processor)、24…タイミング発生器(TG)、25…Hドライバ、26…Vドライバ、27…CPU、28…メモリ、29…合成器、31…Hドライバ、32…スイッチ回路、33a,33b…バッファ、Sa…CCD(A)の出力信号、Sb…CCD(B)の出力信号、Sc…合成信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子と、
前記各撮像素子から出力される信号に基づいてノイズ処理を行うノイズ処理手段と
を具備したことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ノイズ処理手段は、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をアナログの状態で合成処理し、その合成信号をノイズ処理した信号として出力することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ノイズ処理手段は、前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換した後、各画素毎に同じ位置の画素データを平均化し、その平均化したデータをノイズ処理した画素データとして出力することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子と、
前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換する変換手段と、
この変換手段によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定するノイズ判定手段と、
このノイズ判定手段によってノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力するデータ選別手段と
を具備したことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
前記ノイズ判定手段は、前記各撮像素子における同じ位置の画素データ同志を比較し、所定値以上の差があった場合にノイズが存在するものと判定することを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記データ選別手段は、前記各撮像素子における同じ位置の画素データのそれぞれについて周囲画素のデータと比較し、前記周囲画素のデータとの差が少ないデータを採用することを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項7】
前記各撮像素子の水平方向および垂直方向を共通に駆動する駆動手段を具備したことを特徴とする請求項1または4記載の撮像装置。
【請求項8】
共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子を備えた撮像装置に用いられるノイズ処理方法であって、
前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換処理するステップと、
この変換処理によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定するステップと、
ノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力するステップと
を具備したことを特徴とするノイズ処理方法。
【請求項9】
共通の撮影範囲を有する少なくとも2つの撮像素子を備えた撮像装置を制御するコンピュータに用いられるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記各撮像素子から出力される各画素の信号をデジタルデータに変換処理する機能と、
この変換処理によって得られた前記各撮像素子における同じ位置の画素データに基づいてノイズの有無を判定する機能と、
ノイズが存在するものと判定された場合に、ノイズが存在する画素データを選別し、その画素データを排除して出力する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−94201(P2006−94201A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277915(P2004−277915)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】