説明

撮像装置および画像ファイル生成方法

【課題】プライバシー保護が必要な撮像情報を選択的に暗号化および隠匿し、また他の機器やソフトウェアの誤動作を防止することが可能な撮像装置および画像ファイル生成方法を提供する。
【解決手段】被写体を撮像して画像データを出力する撮像部106と、画像データの撮像情報を複数項目含む付加データを生成する情報生成部124と、所定の条件に基づいて選択した付加データの少なくとも一部の項目の撮像情報について暗号化する暗号化部132と、画像データに付加データを付加して画像ファイルを生成するファイル生成部128と、生成された画像ファイルを記録媒体に記録する記録部140とを備え、情報生成部124は、選択した項目と異なる項目に暗号化した撮像情報を格納すると共に、選択した項目またはその内容を無効化した付加データを生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに付加データを付加した画像ファイルを生成する撮像装置および画像ファイル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子カメラが急速に普及している。多くの電子カメラは実体のデータである画像データに加えて、電子カメラの機種名や撮影時の設定などの撮像情報を、付加データ(メタデータともいう)として付加している。付加データは共通規格が策定されており、様々な機器やソフトウェアで利用することができる。付加データは画像(写真)を閲覧するだけであれば必要ないが、撮像日時や撮影場所の情報によって画像ファイルを管理したり、また画像に証拠物件性を持たせるために利用されたりしている。
【0003】
付加データは云うまでもなく利用するために付加されているのであるが、意図しない場面で閲覧されるとプライバシーの漏洩にあたるおそれがある。そこで従来からもプライバシーを保護するための様々な提案がなされている。例えば特許文献1には、高精度の撮像情報を暗号文で記録し、低精度の撮像情報を平文で記録する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−068969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、撮像情報を暗号文で記録することは、他人から参照しにくいだけではなく、撮影者(制限を必要としない者)にとっても閲覧する機会を制限することとなる。すなわち、付加データが暗号化された画像ファイルは、これを復号化する機能を有する特定の機器またはソフトウェアでなければ、せっかくの付加データが利用できない。
【0006】
また、付加データを単に暗号化すると、撮像情報が容易には閲覧できなくなるとしても、暗号化された何らかのデータが存在することは知られてしまう。すると、場合によっては執拗に復号化を試されてしまうおそれもある。
【0007】
さらに、付加データを単に暗号化した場合には、暗号化した結果として、共通規格で定められたフォーマット(文字列形式)やデータ長に適合しなくなるおそれがある。その場合において、画像ファイルを読み込んだ機器やソフトウェアが誤動作を生じるおそれもある。
【0008】
そこで本発明は、プライバシー保護が必要な撮像情報を選択的に暗号化および隠匿し、また他の機器やソフトウェアの誤動作を防止することが可能な撮像装置および画像ファイル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる撮像装置の代表的な構成は、被写体を撮像して画像データを出力する撮像部と、画像データの撮像情報を複数項目含む付加データを生成する情報生成部と、所定の条件に基づいて選択した付加データの少なくとも一部の項目の撮像情報について暗号化する暗号化部と、画像データに付加データを付加して画像ファイルを生成するファイル生成部と、生成された画像ファイルを記録媒体に記録する記録部とを備え、情報生成部は、選択した項目と異なる項目に暗号化した撮像情報を格納すると共に、選択した項目またはその内容を無効化した付加データを生成することを特徴とする。
【0010】
上記の撮像装置であって、所定の条件は、撮像情報の項目を選択する項目条件と、項目の内容を規制または許容する内容条件とを含んでいてもよい。
【0011】
上記の撮像装置であって、暗号化部は、項目条件に基づいて選択した項目に対し、内容条件を判断して暗号化の要否を決定してもよい。
【0012】
上記の撮像装置であって、さらに、記録媒体に記録した画像ファイルを外部装置に転送するファイル転送部と、付加データ内の暗号化された撮像情報を復号化して本来の項目に格納する復号化部とを備え、暗号化部は、所定の条件に基づいて選択した項目に対し、内容条件を判断せずに暗号化し、復号化部は、ファイル転送部が画像ファイルを転送する際に内容条件を判断し、内容条件によって許容される撮像情報を復号化し、情報生成部は、復号化部により復号化された撮像情報を本来の項目に格納して付加データを再生成し、ファイル転送部は、付加データが再生成された画像ファイルを外部装置に転送してもよい。
【0013】
上記の撮像装置であって、さらに、所定の条件を入力可能な条件設定部と、暗号化部および情報生成部を既に記録媒体に記録された画像ファイルに対して作用させる再処理部とを備え、再処理部は、条件設定部において所定の条件が設定されたとき、または所定の条件が設定された後の任意のタイミングで再処理を行ってもよい。
【0014】
上記の撮像装置であって、所定の条件とは、撮像日時、撮像位置、個人特定情報からなる群から選択される1または複数の項目を特定する条件であってもよい。
【0015】
本発明の他の代表的な構成は、画像データとこの画像データに関する付加データとを含む画像ファイルを生成する画像ファイル生成方法であって、付加データに含まれる画像データの撮像情報について、所定の条件に基づいて選択した項目の撮像情報を暗号化し、付加データ内の選択した項目と異なる項目に暗号化した撮像情報を格納すると共に、選択した項目またはその内容を無効化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プライバシー保護が必要な撮像情報を選択的に暗号化および隠匿し、また他の機器やソフトウェアの誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】デジタルカメラの概略構成を説明する図である。
【図2】付加データの記録状態および暗号化条件を模式的に示す図である。
【図3】撮影から記録までの暗号化に関する主な動作を説明するフローチャートである。
【図4】暗号化判断の例を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態にかかるデジタルカメラの概略構成を説明する図である。
【図6】第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図7】第3実施形態にかかるデジタルカメラの概略構成を説明する図である。
【図8】第3実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下に添付図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す装置や画像の種類、データフォーマット、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
本実施形態においては、撮像装置の例としてデジタルカメラ(電子カメラ)を用いて説明する。図1はデジタルカメラ10の概略構成を説明する図である。デジタルカメラ10は、メインバス100、撮影レンズ102、撮像素子104、撮像部106、画像処理部108、バッファメモリ110、モニタ112、操作部120、制御部122、暗号化部132、記録部140、外部インターフェース146、GPS処理部150、顔認証部154を備えている。また制御部122は、情報生成部124、条件設定部126、ファイル生成部128、ファイル転送部130を兼ねている。
【0020】
メインバス100は、他の各部を相互に接続し、制御信号やデータを伝達する。
【0021】
撮影レンズ102は、撮像素子104の撮像面に被写体の像を結像させる。撮像素子104は複数の光電変換素子を配列したCCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成され、光を電気信号に変換する。
【0022】
撮像部106はCDS(相関二重サンプリング)回路、AGC(オートゲインコントロール)回路およびADC(アナログ・デジタル変換回路)、タイミングジェネレータを含む。各回路には、タイミングジェネレータからのタイミング信号がそれぞれ供給される。CDS回路は画像信号の低周波ノイズ低減処理を行う。AGC回路はゲインを調整することにより撮像信号のレベル調整を行う。ADC回路はアナログ信号を離散化してデジタル信号に変換し、画像データとして出力する。
【0023】
画像処理部108は、撮像部106から出力された画像データを処理する回路であって、例えばASICとして構成される。画像処理部108は、入力された画像データに対してγ補正やホワイトバランス補正、コントラスト補正等の画像処理を行うとともに、RGBの画像データを輝度信号と色差信号とに対応するYCbCrの色空間に変換するYC変換処理を行う。さらに、画像処理部108は、YC変換処理された画像データを所定の圧縮形式、例えばJPEG形式に圧縮する圧縮処理を行う。
【0024】
バッファメモリ110は、撮像部106が出力した画像データを一時的に記憶し、また画像処理部108が補正処理や変換を行っている途中の画像データを保持する。バッファメモリ110は高速なRAMで構成することができる。また、バッファメモリ110は、制御部122のプログラム動作領域としてのRAMを兼用してもよい。
【0025】
モニタ112は画像や設定状態を表示するものであり、液晶や有機ELパネルなどで構成される。制御部122はモニタ112を用いて、画像を撮影する前にプレビュー画像を表示し、画像を撮影した直後にポストビュー画像を表示し、また操作部120からの操作によって記録媒体142等に保存された画像データを読み出して表示することができる。
【0026】
操作部120は不図示のボタンや十字キー、ダイヤル、タッチパネルなどから構成され、各種操作を行ったり、設定を入力したりすることができる。操作部120の出力は、次に述べる制御部122に入力される。
【0027】
制御部122は、デジタルカメラ10の各部を統括的に制御(シーケンス管理)する。制御部122は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、プログラム動作領域としてのRAM(Random Access Memory)、プログラムや設定などが記憶されるROM(Read Only Memory)などを有している。制御部122は所定のプログラムを実行することにより、後述する情報生成部124、条件設定部126、ファイル生成部128、ファイル転送部130を実現する。
【0028】
情報生成部124は、画像データの撮像情報を複数項目含む付加データを生成する。条件設定部126は、操作部120の操作によって、暗号化するための条件の入力を受け付ける。暗号化部132は、条件設定部126に入力された所定の条件に基づいて選択した付加データの少なくとも一部の項目の撮像情報について暗号化する。情報生成部124、条件設定部126、および暗号化部132の構成および動作については後述する。
【0029】
ファイル生成部128は、画像データに付加データを付加して画像ファイルを生成する。付加データ(メタデータ)は、実体データである画像データに関する事項を格納し、画像データと同一のファイルに保存するデータである。
【0030】
ファイル転送部130は、外部インターフェース146を介して、記録媒体142に記録した画像ファイルをコンピュータなどの外部装置148に転送する。なおファイル転送部130は、ファイル生成部128が生成した画像ファイルを直接転送したり、画像処理部108が出力した画像データを直接転送したり(PCカメラ機能)することができる。外部インターフェース146は、有線通信または無線通信を介してコンピュータなどの外部装置148に接続される。外部インターフェース146は、USB(Universal Serial Bus)やIEEE802.11x、IEEE1394、シリアル通信などの既存の通信規格を利用することができる。
【0031】
記録部140は、不図示のスロット(コネクタ)に着脱可能に装着された記録媒体142に接続される。そして記録部140は、生成された画像ファイルを記録媒体142に記録する。記録媒体142は、例えば不揮発性のフラッシュROMやハードディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等を用いることができる。
【0032】
GPS処理部150は、GPS衛星152からの信号を受信することにより、デジタルカメラ10の位置を測位し、経緯度(緯度および経度)情報として出力する。GPS処理部150は、同時に3以上(一般には5つ程度)のGPS衛星152からの信号を受信して測位を行う。付加データに撮像位置情報を格納しておくことにより、時期を問わず特定の場所で撮影した写真を探す際に極めて有効な付加データとすることができる。
【0033】
顔認証部154は、画像内から人物の顔を抽出し、目や鼻などの特定位置から特徴量を算出して、あらかじめ保存されたデータと照合して個人を特定する。したがって、撮影時に認識された人物を順次登録していくことにより、次にその人物を写した際に識別することが可能となる。そして付加データに人物名を格納しておけば、後になって特定の人物が写っている写真を探す際に極めて有効な付加データとすることができる。
【0034】
図2は付加データの記録状態および暗号化条件を模式的に示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態にかかるデジタルカメラ10では、画像データの形式やフォルダ構造などに、DCF(Design rule of Camera File System)規格に則ったデータ構造を用いている。DCF規格は、データ構造およびフォルダ構造(ディレクトリ構造)を包含した規格である。DCF規格は、画像ファイルの付加データ(メタデータ)規格であるExif(Exchangeable Image File)規格におけるデータの記述様式が定義されている。Exif規格では画像データの撮像情報がタグとして格納される。Exif規格の撮像情報には多くの種類が定められているが、例えば必須タグとして電子カメラのメーカー名(Make)やモデル名(Model)、撮像日時情報(DateTimeOriginal)など各種の撮影条件があり、オプションタグ(必須ではないタグ)として撮像位置情報(GPS info IFD群)、画像の説明(ImageDescription)、ユーザーコメント(userComment)、メーカーノート(MakerNote)などが定められている。必須タグは、実質的なデータが格納されない場合には、空白で埋めるよう定められている。
【0035】
ところで、撮影により生成された画像ファイルは、単にプリントして写真として鑑賞するだけでなく、いろいろな用途で利用されている。例えば、インターネット上に電子アルバムとして公開するような利用の仕方がある。ここで、上記のように画像ファイルには画像データだけでなく撮影条件、撮像日時情報、撮像位置などの付加情報が含まれている。このため、ユーザーの意図とは関係なくそれらの情報が公開されてしまうおそれがあり、プライバシー保護の点で問題となる。
【0036】
そのため、プライバシー保護の観点から問題がありそうな項目(タグ)については暗号化することが考えられる。しかし、付加データを単に暗号化した場合には、例えば電子アルバムで写真が公開された際に意味不明な暗号化文字列が併記されることになり、写真を鑑賞する者にとって好ましいものではない。また、暗号化された文字列が頻繁に人目に触れるようになると、場合によっては執拗に復号化を試されてしまうおそれもある。
【0037】
そこで本実施形態においては、情報生成部124が、プライバシー保護の観点から問題があるとして選択した項目の内容を暗号化し、選択した項目と異なる項目に暗号化した撮像情報を格納する。同時に、選択した項目を無効化し、または項目は残したままでその内容を無効化した付加データを生成する。
【0038】
図3は撮影から記録までの暗号化に関する主な動作を説明するフローチャート、図4は暗号化判断の例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、事前の準備として、操作部120から条件設定部126に、暗号化するための所定の条件の入力がなされて、制御部122のROMに記憶されているものとする。図2(b)に示すように、暗号化するための条件には、暗号化の対象となる項目を選択する項目条件と、さらに項目の内容を規制または許容する内容条件とを含んでいる。項目条件とは、該当項目を一律に対象とするための条件であって、例えば「撮像日時情報は常に暗号化」といった内容となる。内容条件とは、さらにデータ内容に従って暗号化の要否を判断するための条件であって、例えば「撮像日時情報がいつからいつまでのものは暗号化」といった内容となる。また所定の条件には、暗号化と復号化を行うためのパスフレーズも含まれている。なお所定の条件は複数のセット(プロファイル)を登録しておいてもよく、条件内容を保持したままで有効/無効を切り替えられるようにしてもよい。
【0040】
図3に示すように、S102において画像処理部108は撮像部106から出力された画像データに所定の処理を施して画像データを生成する。S104において情報生成部124は、まず隠匿されていない付加データを生成する。このときデジタルカメラ10自体が生成する撮像情報のほか、GPS処理部150が取得した撮像位置情報、顔認証部154が生成した個人特定情報も付加データに格納する。なお、撮像位置情報はExif規格の撮像位置情報タグ(GPS info IFD群)、個人特定情報はExif規格のメーカーノートタグ(MakerNote)にそれぞれ格納するようにすればよい。
【0041】
S106においてファイル生成部128は、画像処理部108が生成した画像データに情報生成部124が生成した付加データを付加して画像ファイルを生成する。この段階で生成した画像ファイルはバッファメモリ110に一時的に記録することが好ましいが、記録部140を介して記録媒体142に記録してもよい。
【0042】
次にS108において暗号化するか否かを判断する一連の処理を行う。暗号化判断については図4を用いて後述する。
【0043】
S110において暗号化部132は暗号化判断の結果に従って、trueだった場合には(S110のY)、S112において該当項目の暗号化を行う。暗号化したデータは、該当項目とは異なる項目に格納する。異なる項目としては、具体例としてはメーカーノートタグ(MakerNote)を好適に用いることができる。メーカーノートタグはデータ長が可変(Any)であり、また定められたフォーマットが存在しないためである。
【0044】
またS114において情報生成部124は、暗号化された該当項目(本来の項目)を無効化した付加データを生成(再生成)する。無効化とは、あたかもデータがないかのようにすることである。具体例としては、該当項目が必須タグでない場合には、項目自体を削除したり、タグ領域へのポインタ(例えば、GPS情報IFDへのポインタ:GPSInfoIFDPointer)を削除したりすることができる。また必須タグである場合には、項目を削除せずに、本来のデータに代えてヌル値または空白の羅列を格納しておくことができる。
【0045】
S116においてファイル生成部128は、先に作成した画像ファイルに含まれる画像データに、情報生成部124が再生成した付加データを付加して画像ファイルを再生成する。そしてS118において記録部140が生成された画像ファイルを記録媒体142に記録する。
【0046】
一方、S110において暗号化部132が暗号化の対象となる項目がないと判断した場合には(S110のN)、S118に進み、バッファメモリ110に記録されている画像ファイルを記録部140によって記録媒体142に記録する。なおS106において生成した画像ファイルを既に記録媒体142に記録していた場合には、S118を経ることなく終了する。
【0047】
次に図4を用いて暗号化判断の処理を説明する。本実施形態では、撮像位置情報と顔認証による個人特定情報を例に用いて説明するが、撮像日時情報若しくは他の情報も暗号化の対象としてよい。
【0048】
まずS202において暗号化部132は項目条件により撮像位置情報が一律に暗号化対象とされているか否かを判断する。一律禁止として登録されていれば(S202のY)、S204において暗号化部132は撮像位置情報の項目の暗号化をtrueとする。項目全体が一律に禁止されていない場合には(S202のN)、S206において暗号化部132は、撮像位置が内容条件により暗号化対象地域として登録されているか否かを判断し、禁止範囲内であれば(S206のY)、S204にて暗号化をtrueとする。禁止範囲内でない場合には(S206のN)、S208にて暗号化をfalseとする。なお禁止範囲としては、領域で指定してもよく、またある指定した位置を中心とする所定距離内としてもよい。
【0049】
次にS212において暗号化部132は、項目条件により個人特定情報が一律に暗号化対象とされているか否かを判断する。一律禁止として登録されていれば(S212のY)、S214において暗号化部は個人特定情報の項目の暗号化をtrueとする。項目全体が一律に禁止されていない場合には(S212のN)、S216において暗号化部132は認識された人物が暗号化対象人物として登録されているか否かを判断し、禁止対象に含まれていれば(S216のY)、S214にて暗号化をtrueとする。禁止対象でない場合には(S216のN)、S218にて暗号化をfalseとする。
【0050】
なお、図4に示すフローチャートでは撮像位置情報に関する判断と個人特定情報に関する判断とを一連の処理として図示しているが、これらを個別に行ってもよく、またいずれを先に行ってもよい。また、全く同様にして撮像日時情報やその他の情報に対しても、暗号化判断を行うことができる。また、項目条件(一律な判断)を設けずに、常に内容条件に基づいて暗号化の要否を判断するようにしてもよい。ただし項目条件のみで判断することにより処理の高速化を図ることができる。
【0051】
上記構成によれば、プライバシー保護が必要な撮像情報を選択的に暗号化することができる。また選択した項目またはその内容を無効化することにより、暗号化された撮像情報が存在することすらも隠匿し、また他の機器やソフトウェアの誤動作を防止することができる。
【0052】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態にかかるデジタルカメラ12の概略構成を説明する図、図6は第2実施形態の動作を説明するフローチャートであって、上記第1実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
上記第1実施形態では撮像時に暗号化を行うように説明したが、すでに撮像をした画像ファイルに対して条件を設定したい場合がある。そこで本実施形態は、任意のタイミングで所定の条件を設定し、後から一括して再処理を行う例について説明する。
【0054】
図5に示すように、デジタルカメラ12は、さらに再処理部134を備えている。再処理部134は、暗号化部132および情報生成部124を、既に記録媒体142に記録された画像ファイルに対して作用させる。本実施形態において再処理部134は、条件設定部126において所定の条件が設定されたとき、または所定の条件が設定された後の任意のタイミングで再処理を実行する。
【0055】
図6のフローチャートに示すように、S302においてユーザーが任意のタイミングで操作部120を操作し、条件設定部126に暗号化するための所定の条件を入力する。するとS304において再処理部134は、ユーザーに対しモニタ112などの表示により、既存の画像に対して一括再処理を行うか否か問い合わせる。ユーザーがキャンセルした場合には(S304のN)、そのまま終了する。
【0056】
ユーザーが一括再処理の実行を承諾した場合には(S304のY)、S306に示すように、再処理部134は外部装置148からバッファメモリ110に画像ファイルを読み出す。そして読み出したファイルに対し、暗号化部132は、S108にて暗号化判断を行い、S110にて暗号化判断の結果を参照し、S112にて暗号化処理を行う。S114において情報生成部124が付加データを生成(再生成)し、S116にてファイル生成部128が新しい画像ファイルを生成して、S118にて記録部140が画像ファイルを記録媒体142に記録(更新ないし上書き)する。
【0057】
記録されている画像ファイルが大量である場合に、処理に時間がかかるおそれがある。そこで制御部122は一括再処理を行っている間は、ユーザーに対しキャンセル入力が可能なダイアログを表示しておき、S308において中断の入力があったか否かを参照する。中断されていたら(S308のY)、その時点で一連の処理を終了する。中断されていなかったら(S308のN)、S310において制御部122は、記録されている全ての画像ファイルに対して処理を行ったか否かを判断する。処理していない画像ファイルがあるなら(S310のN)、S306に戻る。全て完了していれば(S310のY)、一連の処理を終了する。
【0058】
なお、上記のフローチャートではS302の条件設定を行ったときにS304の再処理の問い合わせを行っているが、ユーザーの操作により、任意のタイミングでS304からそれ以降のシーケンスを呼び出し可能としてもよい。これにより、例えば記録媒体142を入れ替えたときに、条件設定の変更を伴うことなく、既存の画像ファイルに対して現在の条件で暗号化処理を施すことができる。
【0059】
また、記録されている画像ファイルが大量である場合に処理に時間がかかるおそれがあり、かつ記録媒体142へのアクセス中に記録媒体142が取り出されると、ファイルが破損するおそれがある。そこでモニタ112に記録媒体142を取り出さないように警告を表示すると共に、操作部120の近傍にアクセスランプを設けて、記録媒体142に対して読み書きしている間には点灯させることが好ましい。
【0060】
上記構成とすることにより、暗号化の要否の条件を変更した場合に、既に生成された画像ファイルに対しても遡って処理を行うことができる。従って例えば、旅行の後などひとまとまりの撮像後に、今回の旅行の写真について撮像日時や撮像位置を設定し、暗号化を施すことができる。このとき、顔認識も再処理可能とすることにより、人物を登録するより前の画像ファイルにも個人特定情報を付加することができる。
【0061】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。図7は第3実施形態にかかるデジタルカメラ10の概略構成を説明する図、図8は第3実施形態の動作を説明するフローチャートであって、上記各実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
上記各実施形態においては、項目ごとに、または項目の内容に応じて暗号化の要否を判断し、暗号化の必要なものだけに暗号化を施していた。これに対し第3実施形態は、プライバシー保護の観点から問題がありそうな項目は全て暗号化しておき、デジタルカメラ10から外部に転送するときに暗号化が不必要なものだけを復号化する例である。
【0063】
図7に示すように、デジタルカメラ10は、さらに復号化部136を備えている。復号化部136は、付加データ内の暗号化された撮像情報を復号化して、本来の項目に格納する。詳しくは、本来の項目とは異なる項目(メーカーノートタグなど)に暗号化されて格納されている撮像情報を抽出し、復号化して平文テキストにする。復号化された撮像情報は、情報生成部124がこれを用いて付加データを再生成する。
【0064】
図8(a)は撮像時のフローチャートである。図8(a)に示すように、S102において画像処理部108が画像データを生成し、S104において情報生成部124が暗号構えの付加データを生成し、S106においてファイル生成部128が画像データに付加データを付加して画像ファイルを生成する。
【0065】
次にS402において、暗号化部132は所定の項目について一律に暗号化を行う。換言すれば、項目条件に従って暗号化し、内容条件を判断しない。所定の項目とは、プライバシー保護の観点から問題がありそうな項目である。数多くある付加データの中には、画像サイズや焦点距離など、隠匿する必要のないデータも多いためである。
【0066】
それから第1実施形態と同様に、S114にて情報生成部124が暗号化された本来の項目を無効化した付加データを再生成し、S116にてファイル生成部128が画像データに再生成した付加データを付加し、S118にて記録部140が画像ファイルを記録媒体142に記録する。
【0067】
図3に示した第1実施形態のフローチャートと比較すれば、暗号化する際に暗号化判断(S108〜S110)を行っていない点において異なっている。
【0068】
図8(b)は転送時のフローチャートである。まず操作部120からの操作により、または外部装置148からの操作によって、転送が開始される。S410において制御部122は、転送されるファイルを特定する。S412において復号化部136は、内容条件に基づいて復号化判断を行う。復号化判断はいったん全ての暗号化された撮像情報を復号化した上で、図4に示した暗号化判断と同じ条件(内容条件)を用いてtrue/falseを逆に判定することができる(暗号化に該当しないものを復号化すると判定する)。
【0069】
S414において復号化部136は復号化判断の結果に従って、trueだった場合には(S414のY)、S416において復号化したデータを該当項目(本来の項目)に格納する。S418において情報生成部124は、復号化した撮像情報を本来の項目に格納した付加データを生成(再生成)する。S420においてファイル生成部128は、画像ファイルに含まれていた画像データに、再生成した付加データを付加して、復号化された画像ファイルを生成する。
【0070】
S422においてファイル転送部130は、外部インターフェース146を介して外部装置148に画像ファイルを転送する。なお、S420において生成された画像ファイル(復号化された画像ファイル)は、記録媒体142に記録せず、バッファメモリ110に一時的に記憶させた上で、外部インターフェース146から外部装置148に転送することが好ましい。
【0071】
S414においてfalseだった場合には(S414のN)、付加データや画像ファイルの再生成を行わずにS422に進み、ファイル転送部130が暗号化されたままの画像ファイルを転送する。復号化判断のために一時的に復号化した撮像情報は破棄する。
【0072】
S424において制御部122は、記録されている全ての画像ファイルに対して処理を行ったか否かを判断する。処理していない画像ファイルがあるなら(S424のN)、S412に戻る。全て完了していれば(S424のY)、一連の処理を終了する。
【0073】
上記構成によれば、撮像前に撮像情報を暗号化する条件を設定していなかったとしても、外部装置148に画像を転送するまでに条件を設定すればよい。これにより、撮影状況を予測して暗号化条件を設定するのではなく、実際に撮影した状況に応じて後から適切に暗号化条件を設定することが可能となる。
【0074】
また、デジタルカメラ10は可搬性のある装置であって、紛失するおそれもある。さらに記録媒体142は交換して使用されるものであり、人手に渡る可能性が高い。そのような場合に画像ファイルを閲覧されたとしても、プライバシー保護の観点から問題がありそうな項目(タグ)についてすべからく暗号化しておくことにより、撮像情報が漏洩するおそれを極めて低減することができる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、画像データに付加データを付加した画像ファイルを生成する撮像装置および画像ファイル生成方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…デジタルカメラ、100…メインバス、102…撮影レンズ、104…撮像素子、108…画像処理部、110…バッファメモリ、112…モニタ、120…操作部、122…制御部、124…情報生成部、126…条件設定部、128…ファイル生成部、130…ファイル転送部、132…暗号化部、134…再処理部、136…復号化部、140…記録部、142…記録媒体、146…外部インターフェース、148…外部装置、150…GPS処理部、152…GPS衛星、154…顔認証部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを出力する撮像部と、
前記画像データの撮像情報を複数項目含む付加データを生成する情報生成部と、
所定の条件に基づいて選択した前記付加データの少なくとも一部の項目の前記撮像情報について暗号化する暗号化部と、
前記画像データに前記付加データを付加して画像ファイルを生成するファイル生成部と、
生成された前記画像ファイルを記録媒体に記録する記録部とを備え、
前記情報生成部は、前記選択した項目と異なる項目に前記暗号化した撮像情報を格納すると共に、前記選択した項目またはその内容を無効化した前記付加データを生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記所定の条件は、前記撮像情報の項目を選択する項目条件と、前記項目の内容を規制または許容する内容条件とを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置であって、
前記暗号化部は、前記項目条件に基づいて選択した項目に対し、前記内容条件を判断して暗号化の要否を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2に記載の撮像装置であって、
さらに、前記記録媒体に記録した前記画像ファイルを外部装置に転送するファイル転送部と、
前記付加データ内の暗号化された撮像情報を復号化して本来の項目に格納する復号化部とを備え、
前記暗号化部は、前記所定の条件に基づいて選択した項目に対し、前記内容条件を判断せずに暗号化し、
前記復号化部は、前記ファイル転送部が前記画像ファイルを転送する際に前記内容条件を判断し、前記内容条件によって許容される撮像情報を復号化し、
前記情報生成部は、前記復号化部により復号化された撮像情報を本来の項目に格納して前記付加データを再生成し、
前記ファイル転送部は、前記付加データが再生成された前記画像ファイルを外部装置に転送することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置であって、
さらに、前記所定の条件を入力可能な条件設定部と、
前記暗号化部および前記情報生成部を既に前記記録媒体に記録された前記画像ファイルに対して作用させる再処理部とを備え、
前記再処理部は、前記条件設定部において所定の条件が設定されたとき、または前記所定の条件が設定された後の任意のタイミングで再処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記所定の条件とは、撮像日時、撮像位置、個人特定情報からなる群から選択される1または複数の項目を特定する条件であることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
画像データと該画像データに関する付加データとを含む画像ファイルを生成する画像ファイル生成方法であって、
前記付加データに含まれる前記画像データの撮像情報について、
所定の条件に基づいて選択した項目の撮像情報を暗号化し、前記付加データ内の前記選択した項目と異なる項目に前記暗号化した撮像情報を格納すると共に、前記選択した項目またはその内容を無効化することを特徴とする画像ファイル生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−223109(P2011−223109A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87350(P2010−87350)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】