説明

撮像装置の検査シート及び撮像装置の検査方法

【課題】 撮像装置の画質検査の効率化及び低コスト化を図ることのできる撮像装置の検査シート及び撮像装置の検査方法を提供すること。
【解決手段】 検査対象の撮像装置1によって撮像される解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31が同じベース部材11上に形成され、その検査シート10の解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31に検査対象の撮像装置1を対向させ、この撮像装置1によって解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31を撮像し、この撮像により得られた画像を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の解像度検査や色検査に用いられる撮像装置の検査シート及び撮像装置の検査方法に関し、詳しくは、解像度と色の検査とを1枚の検査シートで行えるようにした撮像装置の検査シート及び撮像装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、図3に示すように、撮像装置1の画質検査は、解像度検査用チャートが印刷された検査シート101と、人物の写真を含むポスター画が印刷された検査シート102、カラーチャートが印刷された検査シート103の3枚を用いて、それぞれの検査シート101、102、103を順に撮像装置1に向き合わせて、撮像装置1が撮像して得た画像を検査することで行っている。
【0003】
また、特許文献1には、解像度チャートとグレースケールとが1枚の検査シートに形成されたものが開示されている。
【特許文献1】特開平7−222206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示す従来例では、撮像装置1の検査にあたり3枚の検査シート101、102、103を用いているため、検査シート101を用いた検査の後に、その検査シート101から検査シート102への交換、さらに、検査シート102を用いた検査の後に、その検査シート102から検査シート103への交換を必要とし、検査に手間と時間を要し、検査効率が悪い。さらに、その交換を自動で行うために例えばエアシリンダを用いており、検査装置のコストアップをまねいている。もちろん、検査シートの枚数が多いことによるコストアップの問題もある。
【0005】
また、特許文献1に開示される検査シートには、カラーチャートが含まれておらず、モノクロ画像だけを撮影する機能の撮像装置ではそれで十分だが、カラー画像撮影機能を有する撮像装置において解像度と色の検査を行うには、特許文献1の検査シートの他に、色検査用のカラーチャートを形成した検査シートが別途必要である。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、その目的とするところは、撮像装置の画質検査の効率化及び低コスト化を図ることのできる撮像装置の検査シート及び撮像装置の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像装置の検査シートは、検査対象の撮像装置によって撮像される解像度検査用チャート及び色検査用チャートが、同じベース部材上に形成されていることを特徴としている。
【0008】
すなわち、解像度検査用チャート及び色検査用チャートが同じベース部材上に形成されて1枚の検査シートにまとめられているので、その検査シートだけで撮像装置の解像度検査と色検査を済ますことができ、手間と時間を軽減でき検査作業性を向上できる。また、検査シートの枚数を減らせるのでコストダウンを図れる。さらに、解像度検査を行うための検査シートと色検査を行うための検査シートとを交換するための機構が不要であり、検査装置のコストダウンも図れる。
【0009】
また、ベース部材及び色検査用チャートが光透過性を有する構成とすれば、撮像装置に検査シートの透過光の撮像を行わせることができ、検査シートに対する反射光を撮像させる場合に比べて、検査シートの面方向における明るさ分布を均一にでき、また鮮明な画像を得ることができる。このことにより、検査者の目視による検査精度を向上できる。
【0010】
また、解像度検査用チャートと色検査用チャートとは、互いに重ならない位置に配置された構成とすれば、それぞれのチャートの視認性を向上でき、このことによっても検査者の目視による検査精度を向上できる。
【0011】
また、本発明の撮像装置の検査方法は、同じベース部材上に解像度検査用チャート及び色検査用チャートが形成された検査シートの解像度検査用チャート及び色検査用チャートに検査対象の撮像装置を対向させ、この撮像装置によって解像度検査用チャート及び色検査用チャートを撮像し、この撮像により得られた画像を検査することを特徴としている。
【0012】
この検査に用いられる解像度検査用チャート及び色検査用チャートは同じベース部材上に形成されて1枚の検査シートにまとめられているので、その検査シートだけで撮像装置の解像度検査と色検査を済ますことができ、手間と時間を軽減でき検査作業性を向上できる。
【0013】
また、ベース部材及び色検査用チャートは光透過性を有し、検査シートを挟んで撮像装置の反対側に配置された光源から検査シートに光を照射し、その検査シートを透過した透過光を撮像装置が撮像するようにすれば、撮像装置に検査シートの透過光の撮像を行わせることができ、検査シートに対する反射光を撮像させる場合に比べて、検査シートの面方向における明るさ分布を均一にでき、また鮮明な画像を得ることができる。このことにより、検査者の目視による検査精度を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撮像装置の検査シートによれば、検査対象の撮像装置によって撮像される解像度検査用チャート及び色検査用チャートが、同じベース部材上に形成されているので、撮像装置の解像度検査と色検査とを1枚の検査シートだけで済ますことができ、検査効率の向上が図れ、また、検査シートの枚数低減や検査シートの交換を行うための機構が不要となることから検査に要するコストの低減も図れる。この結果、撮像装置自体の生産性の向上やコストダウンを図れる。
【0015】
本発明の撮像装置の検査方法によれば、同じベース部材上に解像度検査用チャート及び色検査用チャートが形成された検査シートを用いるので、撮像装置の解像度検査と色検査とを1枚の検査シートだけで済ますことができ、検査効率の向上が図れ、結果として、撮像装置自体の生産性も向上でき、検査に要するコストのみならず撮像装置自体のコストダウンを図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に本発明の実施形態に係る検査シート10を示す。検査シート10は、ベース部材11上に、解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31が形成されてなる。
【0017】
ベース部材11は、光透過性を有し、例えば無色透明な樹脂フィルムからなる。あるいは、ガラス板を用いてもよい。樹脂フィルムの場合には、ガラス板より安価であり、また軽量であるので取り扱い性に優れる。ガラス板の場合には、樹脂フィルムに比べて熱変形しにくく、例えば明度を上げるため光源からの光量を多くして検査シートを照明した場合に解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31の安定した形状や寸法を維持でき、また撮像装置に対する解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31の位置精度を高精度に維持できる。
【0018】
ベース部材11は、撮像装置の撮像有効領域及び撮像した画像が表示される表示装置の画面に合わせて四角形(より具体的には矩形)にしているが、矩形に限らず、正方形や、円形、楕円形などであってもよい。
【0019】
解像度検査用チャート20a〜20eは、ベース部材11の短手方向に平行であり線幅やピッチが異なる複数の線と、これら線に垂直な方向であるベース部材11の長手方向に平行であり線幅やピッチが異なる複数の線との組み合わせからなる。それらの線は、黒色でベース部材11表面に印刷されている。
【0020】
解像度検査用チャート20aはベース部材11の中央に形成され、解像度検査用チャート20b、20c、20d、20eは、それぞれ、図1において、左上、右上、左下、右下というようにベース部材11の四隅に形成されている。
【0021】
また、多数の微小な四角い黒色の解像度検査用チャート21が、ベース部材11上全体に、等間隔ピッチで形成されている。解像度検査用チャート21は、解像度検査用チャート20a〜20e及び色検査用チャート30、31に重なっていない。
【0022】
色検査用チャート30は、白黒濃度パターン30a、カラーパターン30b、30cを有し、検査対象の撮像装置が色検査用チャート30を撮像して得た画像の色ずれの傾向を確認するなどして色バランスの調整等に利用される。
【0023】
白黒濃度パターン30aは、例えば、ベタ黒とスクリーン線数200線の網点のパターンからなる。カラーパターン30bは、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、黄を、網点により濃淡変化されたパターンである。カラーパターン30cは、肌色、橙色、若草色、琥珀色、葉の緑などの色パターンからなる。色検査用チャート30において、黒色以外の色は光透過性を有する。
【0024】
もう一方の色検査用チャート31は、人物の写真であり、検査対象の撮像装置が色検査用チャート31を撮像して得た画像の人物の肌の色を確認するために利用される。この色検査用チャート31も光透過性を有する。
【0025】
色検査用チャート30と、色検査用チャート31とは、ベース部材11の中央に配置された解像度検査用チャート20aを挟むように、その解像度検査用チャート20aの側方に配置されている。また、色検査用チャート30は、解像度検査用チャート20cと解像度検査用チャート20eとの間に位置する。色検査用チャート31は、解像度検査用チャート20bと解像度検査用チャート20dとの間に位置する。色検査用チャート30と色検査用チャート31には、解像度検査用チャート20a〜20e及び21が重なっていない。
【0026】
また、ベース部材11の縁部付近には、6個の正三角形の黒色のパターン60が形成されている。これらパターン60の内方の領域の各チャート20a〜20e、21、30、31の画像に基づいて撮像装置の良否を判別する。
【0027】
次に、以上の検査シート10を用いた撮像装置の検査方法について説明する。
【0028】
先ず、図2に示すように、ガラス材料からなる透明なステージ51上に検査シート10が位置決めされて固定される。検査シート10の位置決めは、ステージ51の下方側からレーザ光線を上方に向けて照射して、検査対象撮像装置1の配置位置に設けた鏡に反射させ、その反射光が検査シート10を垂直に貫くように調整して、撮像装置1の光軸(図2中1点鎖線で示す)をレーザ光線で仮想的に作り、その光軸が検査シート10の中心を通るように位置決めされる。
【0029】
検査シート10は、例えば接着テープによってステージ51上に貼り付けられて固定される。その接着テープは、パターン60よりも内方の領域にかからないように、検査シート10の縁部に貼り付けられる。あるいは、接着テープを用いずに、検査シート10の縁部をステージ51に対して押し付けるクランプ部材等によって検査シート10をステージ51上に固定してもよい。
【0030】
撮像装置1は、検査シート10における解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31が形成された面に対向して配置される。 撮像装置1は、主として、固体撮像素子4を備えた撮像素子モジュール2と、鏡筒5内に複数のレンズ6、7、8を備えたレンズモジュール3とからなる。レンズ8と検査シート10との間の距離は、撮像素子1の最小撮影可能距離(例えば30cm)にされる。
【0031】
ステージ51の下方、すなわち、検査シート10を挟んで、撮像素子1の反対側には、光源50が配置され、その光源50から検査シート10に向けて光を照射し、検査シート10を透過した透過光の光学像を撮像素子1は取り込んで電荷像に変換する。
【0032】
これによって得られた、解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31の画像は、撮像装置1の出力を受ける表示装置に表示される。そして、検査者は、その表示装置に表示された解像度検査用チャート20a〜20e、21及び色検査用チャート30、31の画像を視認して、撮像装置1の性能を検査する。あるいは目視によらず画像処理にて良否の判別を行ってもよい。
【0033】
撮像素子モジュール2とレンズモジュール3との、光軸に垂直な面方向における位置精度は、例えば2μmというように非常に高精度の組み付け精度が要求される。その精度にずれが生じていると、撮像した画像にピンぼけが生じたり、所望の色が得られないなどの画質不良が生じる。そこで、上記検査で不良が生じた場合には、撮像素子モジュール2とレンズモジュール3との位置合わせをやり直す。上記検査時には、撮像素子モジュール2とレンズモジュール3とは、エアチャックや治具などで保持された状態で、完全には相互に固定されていない。そして良好な解像度及び色が得られれば、熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂を硬化させて、撮像素子モジュール2とレンズモジュール3とを相互に固定させる。
【0034】
図3で説明した従来の検査では、撮像装置1の検査にあたり3枚の検査シート101、102、103を用いているため、検査シート101を用いた検査の後に、その検査シート101から検査シート102への交換、さらに、検査シート102を用いた検査の後に、その検査シート102から検査シート103への交換を必要とする。これに対して、本実施形態では、従来のように解像度検査用チャート20a〜20eと色検査用チャート30、31とを別々のベース部材上にそれぞれ形成して別々の検査シートとするのではなく、同じベース部材11上に形成して1枚の検査シート10としているので、その検査シート10だけで撮像装置1の画質検査を済ますことができ、手間と時間を軽減でき検査作業性を向上できる。この検査工程における効率化は、撮像装置1の生産性向上につながる。また、検査シートを撮像装置に対して位置決めする回数も本実施形態では1回で済む。このことも、撮像装置1の検査作業性及び生産性向上に寄与する。
【0035】
また、検査シート10の枚数を減らせるのでコストダウンを図れる。さらに、従来のように各検査シート101、102、103を交換するためのエアシリンダのような構成が不要であり、検査装置のコストダウンも図れる。さらに、そのような検査シート交換のための可動部を不要とすることによる検査装置のメンテナンス性の向上も図れる。
【0036】
また、検査シートの位置決めを行う回数を減らせることは、位置決め不良による検査シートと撮像装置との位置ずれ不良を起こす確率も減らせ、このことは検査不良の低減につながる。
【0037】
また、検査シート10において解像度検査用チャート20a〜20e、21などの黒色部分以外は透明であるので、撮像装置1に検査シート10の透過光の撮像を行わせることができ、検査シート10に対する反射光を撮像させる場合に比べて、検査シート10の面方向における明るさ分布を均一にでき、また鮮明な画像を得ることができる。このことにより、検査者の目視による検査精度を向上できる。
【0038】
また、解像度検査用チャート20a〜20e、21と、色検査用チャート30、31とは、互いに重なっていないので、それぞれのチャートの視認性を向上でき、このことによっても検査者の目視による検査精度を向上できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0040】
ベース部材11を透明ではなく例えば白色にして、さらに色検査用チャート30、31も非透明にして、検査シート10におけるそれらチャート形成面の反射光を撮像装置1が光学像として取り込むようにしてもよい。
【0041】
また、解像度検査用チャート20bと20cとの間、及び20dと20eとの間に、同様な解像度検査用チャートを配置してもよい。また、解像度検査用チャート21は四角形に限らず、三角形や星形であってもよい。さらに、その解像度検査用チャート21と、色検査用チャート30、31とが重なるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る検査シートの平面図である。
【図2】図1に示す検査シートと、検査対象の撮像装置と、光源との配置関係を示す図である。
【図3】従来の検査シートを用いた撮像装置の検査方法を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…撮像装置、2…撮像素子モジュール、3…レンズモジュール、4…撮像素子、5…鏡筒、6〜8…レンズ、10…検査シート、11…ベース部材、20a〜20e,21…解像度検査用チャート、30,31…色検査用チャート、50…光源、51…ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の撮像装置によって撮像される解像度検査用チャート及び色検査用チャートが、同じベース部材上に形成されている
ことを特徴とする撮像装置の検査シート。
【請求項2】
前記ベース部材及び前記色検査用チャートは光透過性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の検査シート。
【請求項3】
前記解像度検査用チャートと前記色検査用チャートとは、互いに重ならない位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の検査シート。
【請求項4】
同じベース部材上に解像度検査用チャート及び色検査用チャートが形成された検査シートの前記解像度検査用チャート及び前記色検査用チャートに検査対象の撮像装置を対向させ、前記撮像装置によって前記解像度検査用チャート及び前記色検査用チャートを撮像し、この撮像により得られた画像を検査する
ことを特徴とする撮像装置の検査方法。
【請求項5】
前記ベース部材及び前記色検査用チャートは光透過性を有し、前記検査シートを挟んで前記撮像装置の反対側に配置された光源から前記検査シートに光を照射し、前記検査シートを透過した透過光を前記撮像装置が撮像する
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−74556(P2006−74556A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256797(P2004−256797)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】