説明

撮像装置

【課題】撮像素子の撮像面の傾きを調整する機構の小型化を可能してレンズ鏡筒ひいては撮像装置の小型化を図ることができるとともに、撮像素子の撮像面の傾きを調整する際の作業性を向上させることができる仕組みを提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子を保持し、位置決め穴24a,24bが設けられた保持板21と、位置決め穴24a,24bが嵌合される軸部31,32が設けられた鏡筒本体22と、保持板21を鏡筒本体22から光軸方向に離間する方向に付勢する弾性筒部29と、光軸に対する保持板21の傾き角の調整が可能に保持板21を弾性筒部29の弾性力に抗して鏡筒本体22に固定するねじ28と、を備える。そして、鏡筒本体22の軸部31,32に、弾性筒部29が外挿される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置では、撮影光学系によって結像された被写体像をCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子によって電気信号に変換する。
【0003】
撮像素子は、ダイと呼ばれるシリコンウェハーチップと、ダイを保持するセラミックや樹脂からなるケースとによってパッケージ化されている。つまり、撮像素子の撮像面は、ダイに配置され、撮像素子のパッケージ外観を形成するケースとは異なる部品に配置されることになる。そのため、製造誤差により、撮像素子のパッケージ外観を基準にしたときの実際の撮像面の位置および傾きにずれが生じ、撮像素子の外観と撮像面との間には公差が与えられている。
【0004】
また、撮影光学系においては、レンズやレンズを保持する保持部材の製造誤差によって結像面が傾くことがある。この撮影光学系による結像面の傾きと前述した撮像素子の撮像面の傾きとの組み合わせによっては、撮像面の中心で焦点を合わせたとしても撮像面の周辺部では焦点がずれる状態が発生する。
【0005】
そこで、撮像素子の光軸に対するピッチおよびヨー方向の傾きを調整することで、撮影光学系の結像面の傾きと撮像素子の撮像面の傾きとを揃える技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−325555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、板金部品に、3つのねじ挿通穴、2つの位置決め穴、及び3か所の圧縮ばね受け部を設ける必要がある。このため、板金部品が大型化してレンズ鏡筒ひいては撮像装置の小型化を妨げる原因になる。たとえば、撮像素子としてCMOSセンサを用いる場合など、撮像素子の周辺に電気素子を配置すると、板金部品に対するねじ挿通穴、位置決め穴及び圧縮ばね受け部の配置位置が光軸から鏡筒の径方向外方に離れていく傾向にある。
【0008】
また、上記特許文献1では、板金部品の位置決め穴と圧縮ばね受け部とが離れて配置されているため、位置決め穴と鏡筒本体の位置決めダボとの嵌合部分と、圧縮ばねによる付勢力が加わる部分との位置が相違する。このため、ねじの締め込み時に位置決めダボと位置決め穴との嵌合部分にコジリが発生し、撮像素子の撮像面の傾きを調整する作業がやりにくいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、撮像素子の撮像面の傾きを調整する機構の小型化を可能してレンズ鏡筒ひいては撮像装置の小型化を図ることができるとともに、撮像素子の撮像面の傾きを調整する際の作業性を向上させることができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮像素子と、前記撮像素子を保持する保持部材と、前記保持部材が取り付けられる取付部材と、前記保持部材を前記取付部材から光軸の方向に離間する方向に付勢する筒状の弾性部材と、前記保持部材と前記取付部材との間に設けられ、軸部と位置決め穴との嵌合により前記取付部材に対して前記保持部材を位置決めする位置決め手段と、光軸に対する前記保持部材の傾き角の調整が可能に前記保持部材を前記弾性部材の弾性力に抗して前記取付部材に固定する調整手段と、を備え、前記位置決め手段の前記軸部に、前記筒状の弾性部材が外挿されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像素子の撮像面の傾きを調整する機構の小型化を可能してレンズ鏡筒ひいては撮像装置の小型化を図ることができるとともに、撮像素子の撮像面の傾きを調整する際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の一例である撮像装置に搭載されるレンズ鏡筒の沈胴位置での断面図である。
【図2】撮像素子を保持板に接着固定する前の状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は撮像素子に保持板を接着固定した後の状態を光軸方向から見た図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】撮像素子ユニットを鏡筒本体に取り付ける方法を説明するための分解斜視図である。
【図5】軸部に外挿された弾性枠の弾性筒部が保持板に光軸方向に押されて弾性変形した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例である撮像装置に搭載されるレンズ鏡筒について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の一例である撮像装置に搭載されるレンズ鏡筒の沈胴位置での断面図である。
【0015】
図1に示すように、レンズ鏡筒は、1群ホルダ11に1群レンズ10が保持され、2群ホルダ13に2群レンズ12が保持され、3群ホルダ15に3群レンズ14が保持されている。
【0016】
1群カム環16は、内周部に1群ホルダ11を光軸方向へ変位させるカム溝を有する。1群ホルダ11には、1群カム環16のカム溝にカム係合するカムフォロワピンが植設されている。2群カム環17は、内周部に2群ホルダ13を光軸方向へ変位させるカム溝を有する。2群ホルダ13には、2群カム環17のカム溝のカム係合するカムフォロワピンが植設されている。
【0017】
移動カム環18は、内周部に1群カム環16、及び2群カム環17を光軸方向へ変位させるカム溝を有する。固定筒19は、内周部に移動カム環18を光軸方向へ変位させるカム溝を有する。移動カム環18は、外周部に固定筒19のカム溝にカム係合するカムフォロワピンが植設されており、不図示の駆動源によって駆動されることで、固定筒19のカム溝にならって回転しながら光軸方向へ移動する。
【0018】
そして、1群カム環16、及び2群カム環17は、移動カム環18の回転に伴って回転するように移動カム環18にキー結合されている。また、1群ホルダ11、及び2群ホルダ13は、回転しないように移動カム環18に案内され、これにより、移動カム環18の回転繰り出しに応じて1群ホルダ11、及び2群ホルダ13が光軸方向へ移動する。
【0019】
3群レンズ14は、本実施形態では、フォーカスレンズで構成され、カメラ本体のメイン基板からの指示に基づき制御される不図示のねじ送り機構によって光軸方向へ駆動される。1群レンズ10、2群レンズ12、及び3群レンズ14を透過した被写体光束は、撮像素子20に結像して電気信号に変換される。撮像素子20は、保持板21に接着固定され、保持板21は、後述するように、鏡筒本体22にねじ等により固定される。ここで、保持板21は、本発明の保持部材の一例に相当し、鏡筒本体22は、本発明の取付部材の一例に相当する。
【0020】
図2は撮像素子20を保持板21に接着固定する前の状態を示す斜視図、図3(a)は撮像素子20に保持板21を接着固定した後の状態を光軸方向から見た図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。
【0021】
図2に示すように、撮像素子20は、フレキシブルプリント基板等の基板23に実装されている。なお、本実施形態では、撮像素子としてCMOSセンサを採用し、基板23の撮像素子20の周囲に撮像素子20を駆動するための電気素子23aを実装している。また、撮像素子20の撮像面には、保護ガラス33が取り付けられている。一方、保持板21には、中央部に撮像素子20、及び基板23の電気素子23aを露出させるための開口部21aが形成されている。また、保持板21の開口部21aの周囲には、位置決め穴24a,24b、及び3つのねじ挿通穴34が形成されている。そして、基板23に保持板21を重ね合わせ、位置決め穴24a,24bを基準として撮像素子20の撮像面が光軸に直交する面上の所定の位置に配置されるように調整する。この状態で、図3に示すように、保持板21の開口部21aと撮像素子20との間に接着剤Sを充填して、撮像素子20を基板23とともに保持板21に固定し、これにより、撮像素子ユニット25を構成している。なお、本実施形態では、撮像素子20としてCMOSセンサを採用し、撮像素子20の周囲に電気素子23aを実装しているが、特にこれに限定されない。
【0022】
図4は、撮像素子ユニット25を鏡筒本体22に取り付ける方法を説明するための分解斜視図である。
【0023】
図4に示すように、鏡筒本体22には、フィルタ嵌合凹部22aが形成され、フィルタ嵌合凹部22aには、光学フィルタ26が嵌め込まれて位置決めされる。また、鏡筒本体22には、3本の軸部30,31,32が突設されている。3本の軸部30,31,32には、ゴム等の弾性枠27に設けられた3本の弾性筒部29が外挿され、これにより、鏡筒本体22に対して弾性枠27が位置決めされる。
【0024】
また、3本の軸部30,31,32のうち、2本の軸部31,32は、先端に小径部を有する段付軸部とされている。そして、2本の軸部31,32の小径部には、撮像素子ユニット25の保持板21の位置決め穴24a,24bが嵌合され、これにより、鏡筒本体22に対する撮像素子ユニット25の光軸に直交する面上での位置決めがなされる。
【0025】
その後、撮像素子ユニット25の保持板21のねじ挿通穴34に挿入したねじ28を弾性筒部29の弾性力に抗して鏡筒本体22のねじ穴22bに締め込んで締結することで、鏡筒本体22に撮像素子ユニット25が固定される。
【0026】
この状態を図1で確認すると、光学フィルタ26と撮像素子20の保護ガラス33との間が弾性枠27で密閉されており、これにより、保護ガラス33への塵埃等の侵入が防止されている。また、弾性枠27は、光学フィルタ26と撮像素子20とで挟み込まれることで弾性反発力を発生させて、光学フィルタ26を光軸方向に押圧する。従って、本実施形態では、弾性枠27のみで光学フィルタ26を固定している。
【0027】
図5は、軸部31に外挿された弾性枠27の弾性筒部29が保持板21に光軸方向に押されて弾性変形した状態を示す要部断面図である。図5に示すように、弾性筒部29は、他の2本の弾性筒部29とともに保持板21によって光軸方向に押されて弾性変形する。そして、保持板21は、3本の弾性筒部29の弾性反発力により、鏡筒本体22から光軸方向に離間する方向に付勢されて、ねじ28の頭部に押し付けられる。
【0028】
次に、光軸に対する撮像素子ユニット25の傾き角の調整方法について説明する。なお、撮像素子ユニット25の傾き角の調整量を決定する際には、光軸に対する撮影レンズの結像面の傾き角、及び撮像素子20の撮像面の傾き角を把握する必要がある。
【0029】
光軸に対する撮影レンズの結像面の傾き角を測定する方法としては、例えば、一定距離離れた位置に置かれた被写体の像を結像させ、その結像面の周辺部と中心部とのピントの差を測定する方法が考えられる。また、光軸に対する撮像素子20の撮像面の傾き角の測定方法としては、レーザ測量器を用いて撮像素子20の撮像面の周辺部と中心部との高さの差を測定する方法が考えられる。
【0030】
そして、傾き角調整量が決まった後、鏡筒本体22に対する撮像素子ユニット25の傾き角の調整を行う。まず、3本のねじ28のうちの1本を締め込むことにより、そのねじ位置において保持板21が鏡筒本体22に接近し、また、緩めることで保持板21が鏡筒本体22から離間する。即ち、ねじ28の回転量に応じて保持板21と鏡筒本体22との間隔が調整される。
【0031】
従って、3本のねじ28を適切に締め込み、または緩めて3本のねじ28の位置での保持板21と鏡筒本体22との間隔を調整することにより、撮影レンズの結像面と撮像素子20の撮像面とを揃えることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では、保持板21の位置決め穴24a,24bと鏡筒本体22の軸部31,32との嵌合部分と、弾性筒部29による付勢力が加わる部分との位置が略同一となる。このため、ねじ28の締め込み時に軸部31,32と位置決め穴24a,24bとの嵌合部分にコジリが発生しにくくなり、撮像素子ユニット25の傾き角を調整する際の作業性が向上する。また、保持板21に形成される位置決め穴24a,24bと弾性筒部29の受け部も略同軸上に配置されるため、従来のように離して配置する場合に比べて撮像素子ユニット25の傾き角の調整する機構の小型化が可能となる。これにより、レンズ鏡筒ひいては撮像装置の小型化を図ることができる。
【0033】
なお、本発明の構成は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、筒状の弾性部材として弾性筒部29を例示したが、これに代えて、圧縮ばね等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
20 撮像素子
21 保持板
22 鏡筒本体
24a,24b 位置決め穴
28 ねじ
29 弾性筒部
31,32 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子を保持する保持部材と、
前記保持部材が取り付けられる取付部材と、
前記保持部材を前記取付部材から光軸の方向に離間する方向に付勢する筒状の弾性部材と、
前記保持部材と前記取付部材との間に設けられ、軸部と位置決め穴との嵌合により前記取付部材に対して前記保持部材を位置決めする位置決め手段と、
光軸に対する前記保持部材の傾き角の調整が可能に前記保持部材を前記弾性部材の弾性力に抗して前記取付部材に固定する調整手段と、を備え、
前記位置決め手段の前記軸部に、前記筒状の弾性部材が外挿されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記調整手段は、ねじであり、前記ねじの回転量に応じて前記保持部材と前記取付部材との間隔が調整されることを特徴する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記位置決め手段の前記軸部は、前記取付部材に設けられ、前記位置決め穴は、前記保持部材に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−138664(P2012−138664A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288049(P2010−288049)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】