説明

撮影タイミング適正化装置

【課題】造影剤の注入量を最小限に抑えた条件下で最適なCT撮影を可能とし、造影剤による副作用のリスクの低減と被曝量減少を実現する。
【解決手段】CT検査に用いる造影剤を注入する生体の部位より遅延して前記造影剤が到達する測定部位に貼着された電極11−3,11−4から電位を取り出す測定手段12と、前記電極の近傍において生体に電流を印加する電流印加手段11と、前記測定手段12により得られる電位と前記電流とに基づき測定部位におけるインピーダンスの経時変化を監視するインピーダンス監視手段21と、前記インピーダンス監視手段21による監視結果に基づき、撮影タイミング情報を報知する報知制御手段22とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、造影剤CT検査における撮影タイミングの適正化を図るために用いることができる、撮影タイミング適正化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT検査において、画像のコントラストを向上させたり、特定の組織を強調するために造影剤を投与してから撮影が行われる場合がある。この造影剤CT検査における撮影タイミングの適正化は、検査技師の経験に基づいて行われてきた。しかしながら、造影剤CT検査の適正な撮影タイミングは、心機能に起因する循環動態(心拍数、心拍出量など)をはじめ、体格、検査目的部位や目的時相、造影剤注入部位や注入速度などの様々な要因に左右される。そのため、従来の検査技師の経験に基づく手法を用いた場合には、撮影ミスを回避するために造影剤注入量を増加させて長時間にわたって撮影可能とすることがなされ易い。造影剤注入量の増加は、腎機能障害のリスクを大きくする。また、適切な撮影タイミングが把握しにくいことから、撮影回数を増加して適正タイミングを逃さないようすることもあり、これによるX線被曝が増加するという問題がある。
【0003】
さらに、近年主流のマルチスライスCTでは、スキャン時間の大幅な短縮化が可能となったが、一方で、適正なタイミングにおいて撮影することが一段と困難になってきた。
【0004】
上記に対して、予備検査を実施して心拍動の回数に基づき適正な撮影を行うものがある(特許文献1参照)。また、モニタリング用撮影領域と診断用撮影領域を設定し、モニタリング用撮影領域におけるX線撮影によって得られた画像データの画素値と予め設定された閾値の比較に基づき可動絞り部を移動して診断用画像データを生成するための広範な診断用撮影領域を形成する装置も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−167657号公報
【特許文献2】特開2006−136500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、造影剤の注入量を最小限に抑えた条件下で最適なCT撮影を可能とし、造影剤による副作用のリスクの低減と被曝量減少を実現することで被験者への負担を最低限にするとともに、誤撮影回数の低減などによる医療費削減の効果をもたらすことのできる撮影タイミング適正化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、CT検査に用いる造影剤を注入する生体の部位より遅延して前記造影剤が到達する測定部位に貼着された電極から電位を取り出す測定手段と、前記電極の近傍において生体に電流を印加する電流印加手段と、前記測定手段により得られる電位と前記電流とに基づき測定部位におけるインピーダンスの経時変化を監視するインピーダンス監視手段と、前記インピーダンス監視手段による監視結果に基づき、撮影タイミング情報を報知する報知制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、インピーダンス監視手段は、インピーダンスが所定閾値を超えたか否かを監視し、インピーダンスが所定閾値を超えた場合に、報知制御手段は、音、光、映像の少なくとも一つにより撮影タイミング情報を報知することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、報知制御手段は、インピーダンスが所定閾値を超えたと同時、又は所定閾値を超えてから所定時間を経過した後に、撮影タイミング情報を報知することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、撮影タイミング情報に基づき、X線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ送信する撮影タイミング送信手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、CT検査に用いる造影剤を注入する生体の部位より遅延して前記造影剤が到達する測定部位に貼着された電極から電位を取り出し、得られる電位と電流とに基づき測定部位におけるインピーダンスの経時変化を監視し、監視結果に基づき、撮影タイミング情報を報知するので、予備検査などの別途の余分な検査が不必要であり、しかも適切な撮影タイミングとなるように報知することができ、造影剤の注入量を最小限に抑えた条件下で最適なCT撮影を可能となり、造影剤による副作用のリスクの低減と被曝量減少を実現することができ、誤撮影回数の低減などによる医療費削減の効果をもたらすものである。
【0012】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、インピーダンスが所定閾値を超えたと同時、又は所定閾値を超えてから所定時間を経過した後に、撮影タイミング情報を報知するので、造影剤が実際の撮影部位に到るタイミングで撮影が可能となる。
【0013】
本発明に係る撮影タイミング適正化装置は、撮影タイミング情報に基づき、X線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ送信する撮影タイミング送信手段を備えるので、X線CT装置の撮影を自動化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る撮影タイミング適正化装置における実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る撮影タイミング適正化装置における実施形態を用いる場合の造影剤注入位置と、電極による測定位置を示す図。
【図3】本発明に係る撮影タイミング適正化装置における実施形態を用いる場合のインピーダンス変化の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照して、本発明に係る撮影タイミング適正化装置の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態に係る撮影タイミング適正化装置は、図1に示されるように、電極11−1〜11−4が接続された測定処理部10を備えている。また、キーボードなどの入力部31、LCDやCRTなどにより構成される表示部32、スピーカなどにより構成される音出力部33が接続された中央処理部20が備えられている。測定処理部10と中央処理部20とは、接続されている。
【0016】
上記電極11−1〜11−4の内の2電極、例えば、電極11−1、11−2は電流印加用であり、残りの2電極、例えば、電極11−3、11−4は、CT検査に用いる造影剤を注入する生体の部位より遅延して上記造影剤が到達する測定部位に貼着される電極であり、この電極11−3、11−4は電位を取り出すために用いられる。ここでは、4電極を用いたが、最低で2電極あれば良く、2電極を電流印加用と測定用に切り換えて用いることもできる。なお、CT検査部位は、例えば胸部や脳などとすることができる。
【0017】
次に、上記電極11−1〜11−4を生体に対し、どのように配置するかを説明する。一般的に、造影剤の注入は図2に示す例えば左肘正中皮静脈P1から行う。これに対し、電位を取り出す電極11−3、11−4は、左肘正中皮静脈P1より遅延して造影剤が到達する測定部位に貼着される。具体的には、左上腕部P2や、右下肢部P3に貼着される。一方、電流を印加する電極11−1、11−2は、上記電極11−3、11−4の近傍に配置貼着される。
【0018】
電極11−1〜11−4は、血管に沿って並べて貼着しても良いし、また、血管と交差するように腕や脚の周方向に沿って貼着しても良いが、配置に特別な限定はなく、測定が行い易いように貼着される。
【0019】
測定処理部10には、上記電極11−1、11−2を介して生体に電流を印加する電流印加手段11と、測定部位に貼着された電極11−3、11−4から電位を取り出す測定手段12とを備える。測定手段12により取り出された電位は、中央処理部20へ送られる。
【0020】
中央処理部20は、例えばコンピュータにより構成することができる。中央処理部20には、インピーダンス監視手段21、報知制御手段22、撮影タイミング送信手段23が備えられている。インピーダンス監視手段21は、測定手段12により得られる電位Vと上記電流Iとに基づき測定部位におけるインピーダンスZ(V/I)の経時変化を監視するものである。報知制御手段22は、インピーダンス監視手段21による監視結果に基づき、撮影タイミング情報を報知するものである。ここで、撮影タイミング情報とは、CT装置の検査技師が撮影可能であることを認識できる態様の情報である。
【0021】
具体的には、インピーダンス監視手段21は、インピーダンスが所定閾値を超えたか否かを監視し、インピーダンスが所定閾値を超えた場合に、報知制御手段22は、音、光、映像の少なくとも一つにより撮影タイミング情報を報知する。ここでは、表示部32、音出力部33が報知制御手段22により駆動され、文字を含む映像により、あるいは警報音などの単純な音や音声メッセージにより撮影タイミング情報が報知される。この例では、光による報知の手段が示されていないが、例えば、閃光を発するランプや単純に発光して撮影タイミング情報を報知するLEDなどを用いることができる。
【0022】
また、インピーダンスが所定閾値を超えたと同時、又は所定閾値を超えてから所定時間を経過した後に、撮影タイミング情報を報知するようにしても良い。この撮影タイミング情報の報知は、映像や音声により表示部32や音出力部33から報知することができる。
【0023】
このように構成された撮影タイミング適正化装置においては、電極11−1〜11−4をCT検査を行う被験者の生体における既述の通りの所定部位に貼着し、電源を投入してインピーダンス測定及び監視を行う。
【0024】
インピーダンスは、例えば、図3に示すように変化したものが得られる。造影剤の注入開始の時t1から測定部位に応じた時間の遅延時間T1遅れて、時刻t2から徐々にインピーダンスが増加し、所定時間の後に上限を迎える。インピーダンスの上限値の継続が、造影剤の注入時間に応じて生じ、時刻t3からインピーダンスが低下する。時刻t2から時刻t3までの時間T2は、造影剤の注入時間とほぼ同じであり、例えば15〜30秒である。
【0025】
インピーダンス監視手段21は、閾値Zthをインピーダンスが超えたかを監視し、超えた場合に報知制御手段22により撮影タイミング情報を報知する。報知を受けた検査技師が、この報知がなされた時点から所要時間のときに、X線CT装置の撮影キーを操作することができる。
【0026】
上記において、所要時間は検査技師が、造影剤の注入開始から撮影タイミング情報の報知を受けるまでの時間と、被験者の年齢、性別、体重、身長などの身体情報に基づき決定することができる。例えば、図2の左上腕部P2に電極11−1〜11−4を貼着して測定を行った場合には、報知を受けた後にCT検査部位である胸部や脳などに造影剤が到達するので、報知がなされた時点から所要時間の後(例えば、数秒後)にX線CT装置の撮影キーを操作することができる。
【0027】
また、例えば、図2の右下肢部P3に電極11−1〜11−4を貼着して測定を行った場合には、報知を受けたときには、CT検査部位である胸部や脳などに造影剤が到達していることが予想されるので、報知を受けたとき以降にX線CT装置の撮影キーを操作することができる。
【0028】
図1における撮影タイミング送信手段23は、撮影タイミング情報に基づき、X線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ送信するものであり、この手段を備えていても良い。例えば、インピーダンス監視部位がP2の場合には、インピーダンスが所定閾値を超えた後、所用時間を経過した後(例えば、数秒後)にX線CT装置へ撮影タイミング情報を送信することができる。また、インピーダンス監視部位がP3の場合には、インピーダンスが所定閾値を超えたと同時に撮影タイミング情報を送信することができる。
【0029】
CT検査に際して、当該被験者の身体情報に基づき検査技師が決定した所要時間を入力部31から入力する。撮影タイミング送信手段23は、この所要時間を取り込んで保持しており、撮影タイミング情報の報知が報知制御手段22によりなされたときから、上記所要時間を用いてX線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ出力する。これにより、X線CT装置において自動的に撮影がなされることになる。撮影を何回行うかは、予め設定するかまたは撮影毎に入力部31から設定することができる。
【0030】
上記では、CT検査に際して、当該被験者の身体情報に基づき検査技師が決定した所要時間を入力部31から入力するものとしたが、多数の身体情報と、これに対応する所要時間とをテーブル化したデータベースを撮影タイミング送信手段23に備えさせ、入力部31から検査を行う被験者の身体情報を入力するようにしても良い。被験者の身体情報が入力されると、上記データベースを用いて撮影タイミング送信手段23が所要時間を求める。
【0031】
撮影タイミング送信手段23は、撮影タイミング情報の報知が報知制御手段22によりなされたときから、上記において求めた所要時間を用いてX線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ送信する。これにより、X線CT装置による適切なタイミングでの撮影を自動的に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10 測定処理部
11 電流印加手段
12 測定手段
20 中央処理部
21 インピーダンス監視手段
22 報知制御手段
23 撮影タイミング送信手段
31 入力部
32 表示部
33 音出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT検査に用いる造影剤を注入する生体の部位より遅延して前記造影剤が到達する測定部位に貼着された電極から電位を取り出す測定手段と、
前記電極の近傍において生体に電流を印加する電流印加手段と、
前記測定手段により得られる電位と前記電流とに基づき測定部位におけるインピーダンスの経時変化を監視するインピーダンス監視手段と、
前記インピーダンス監視手段による監視結果に基づき、撮影タイミング情報を報知する報知制御手段と
を具備する撮影タイミング適正化装置。
【請求項2】
インピーダンス監視手段は、インピーダンスが所定閾値を超えたか否かを監視し、
インピーダンスが所定閾値を超えた場合に、報知制御手段は、音、光、映像の少なくとも一つにより撮影タイミング情報を報知する請求項1に記載の撮影タイミング適正化装置。
【請求項3】
報知制御手段は、インピーダンスが所定閾値を超えたと同時、又は所定閾値を超えてから所定時間を経過した後に、撮影タイミング情報を報知する請求項1または2に記載の撮影タイミング適正化装置。
【請求項4】
撮影タイミング情報に基づき、X線CT装置において撮影を行うタイミング信号を作成し、X線CT装置へ送信する撮影タイミング送信手段を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮影タイミング適正化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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