撮影装置および撮影方法
【課題】ガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保すること。
【解決手段】ピストン26と、ピストン26を収容するシリンダ27と、シリンダ27内に設けられる燃焼室25と、を少なくとも有する可視化エンジン2における燃焼室25内の状態を撮影する撮影装置1において、ピストン26の燃焼室25に対向する外壁に複数の窓部29a、29b、29cを有する可視化部29と、複数の窓部29a、29b、29cのそれぞれを透視して燃焼室25内を撮影する撮影部3と、複数の窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を生成する画像解析部4と、を有する撮影装置1とする。
【解決手段】ピストン26と、ピストン26を収容するシリンダ27と、シリンダ27内に設けられる燃焼室25と、を少なくとも有する可視化エンジン2における燃焼室25内の状態を撮影する撮影装置1において、ピストン26の燃焼室25に対向する外壁に複数の窓部29a、29b、29cを有する可視化部29と、複数の窓部29a、29b、29cのそれぞれを透視して燃焼室25内を撮影する撮影部3と、複数の窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を生成する画像解析部4と、を有する撮影装置1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置および撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、内燃機関の研究開発に際し、内燃機関の燃焼室内における燃料の燃焼状態を撮影することが行われている。特許文献1の燃焼室内観察装置は、燃焼室と対向するピストンの外壁を石英などのガラスで構成し、このガラスを透視して燃焼室内の様子を観察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−142106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、燃焼室と対向するピストンの外壁をガラスで構成する場合、燃料が燃焼(爆発)する際の燃焼室内の高い圧力を1枚のガラスで支えるため、ガラスの強度は相応に高いものとする必要がある。このとき、観察をし易くするために、ガラスの直径については、可能な限り大きくすることが好ましく、ガラスの厚みを増すことによって、強度を確保することになる。
【0005】
すなわち、直径がAφであるガラスと直径がB(<A)φであるガラスとを比べると、直径がAφであるガラスは、対向する外周部分間の距離が長くなる。これにより、同じ圧力を加えた場合、直径Aφのガラスの方が直径Bφのガラスよりも圧力を支える際の力のモーメントが大きくなり、撓み量が大きくなる。ここで、双方のガラスの撓み量を同じにしようとすれば、直径がAφであるガラスの厚みを、直径がBφであるガラスの厚みよりも増やす必要がある。このように、ガラスの直径が大きければ大きいほど、力のモーメントが大きくなるので、強度を増すためには、厚みを増す必要が生じる。
【0006】
しかしながら、ガラスの厚みを増すことによって、ガラスの重量も増すことになる。たとえば石英ガラスは、比重が2以上(たとえば2.19)もあり、ガラスの厚みが増えることによる重量増加は大きい。
【0007】
一方、内燃機関の研究開発のためには、実際に使用する状態に可能な限り近い状態で、内燃機関を動作させることが重要である。これに対し、ガラスの重量によって、実際の内燃機関が有するピストンよりも重量が大きくなる場合があり、好ましくない。
【0008】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、ガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる撮影装置および撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のひとつの観点は、撮影装置としての観点である。本発明の撮影装置は、ピストンと、ピストンを収容するシリンダと、シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における燃料室内の状態を撮影する撮影装置において、ピストンの燃焼室に対向する外壁に複数の窓部を有する可視化部と、複数の窓部のそれぞれを透視して燃焼室内を撮影する撮影部と、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析部と、を有するものである。
【0010】
たとえば画像解析部は、燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成することができる。
【0011】
あるいは、画像解析部は、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成することができる。
【0012】
もしくは、撮影部は、動画を撮影可能であり、画像解析部は、ある時刻の撮影では複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成することができる。
【0013】
本発明の他の観点は、撮影方法としての観点である。本発明の撮影方法は、ピストンと、ピストンを収容するシリンダと、シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における燃料室内の状態を撮影する撮影方法において、ピストンの燃焼室に対向する外壁に設けられた複数の窓部のそれぞれを透視して燃焼室内を撮影する撮影ステップと、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析ステップと、を有するものである。
【0014】
たとえば、画像解析ステップの処理は、燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成するステップを有することができる。
【0015】
あるいは、画像解析ステップの処理は、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成するステップを有することができる。
【0016】
もしくは、撮影ステップは、動画を撮影するステップを有し、画像解析ステップの処理は、ある時刻の撮影では複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成するステップを有することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮影装置の全体構成図である。
【図2】図1の反射鏡の支持方法を示す図である。
【図3】図1の撮影装置の可視化部の構成図である。
【図4】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃料噴射が無い状態を示す図である。
【図5】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃料噴射が行われた状態を示す図である。
【図6】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃焼(爆発)が起こり火炎が発生した状態を示す図である。
【図7】図5の状態を図3の窓部の位置に対応させた図である。
【図8】図5の状態を図3の窓部から見た状態を示す図である。
【図9】図8において実際には見えない部分を破線で示す図である。
【図10】図8において撮影された画像を示す図である。
【図11】図10の画像を45度回転させた状態を示す図である。
【図12】図10の画像と図11の画像とを合成した画像を示す図である。
【図13】図12の画像から不必要な画像を除去した状態を示す図である。
【図14】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図である。
【図15】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図であり、図14よりも回転が進んだ状態を示す図である。
【図16】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図であり、図15よりも回転が進んだ状態を示す図である。
【図17】図14〜図16の撮影結果に基づいて生成された火炎の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔はじめに〕
以下の本発明の実施の形態の説明において、図1〜図3に示す矢示X1方向を「前」、矢示X2方向を「後(後ろ)」、矢示X1方向および矢示X2方向の両方向に対し直交する方向となる矢示Z1方向を「上」、矢示Z2方向を「下」、矢示Z1、Z2、X1、X2の方向からなる平面に対して垂直であり紙面の手前の方向となる矢示Y1方向を「右」、矢示Z1、Z2、X1、X2の方向からなる平面に対して垂直であり紙面の奥行き方向となる矢示Y2方向を「左」とそれぞれ規定する。
【0020】
(概要)
本発明の実施の形態の撮影装置1は、図1に示すように、燃焼室25の内部で発生する現象を、可視化部29を介して撮影部3によって撮影して観察するものである。ここで可視化部29は、図3に示すように、3つの窓部29a、29b、29cによって構成されることを特徴とする。このように窓部を複数設け、窓部29a、29b、29cとして直径の小さいガラスを用いることにより、窓部29a、29b、29cの厚みを厚くしなくても高圧に耐え得る可視化部29が構成できる。これにより、窓部29a、29b、29cの重さを軽量化でき、ピストン26の重量を実際のエンジンにおけるものと同等にすることを容易にできる。また、窓部29a、29b、29cの間にあって直接撮影不可となる観察箇所については、画像解析部4の画像解析によって補うことができる。
【0021】
(構成)
撮影装置1の構成を図1を参照しながら説明する。図1は、撮影装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、撮影装置1は、可視化エンジン2、カメラ部3、および画像解析部4(演算部40および表示部41)から主に構成される。なお、図1の可視化エンジン2の側断面図は、シリンダ27の中心軸線である一点鎖線Mを含み、矢示X1、X2、Z1、Z2の方向からなる平面で可視化エンジン2を切断した状態を示している。
【0022】
可視化エンジン2は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであって、後述するように内部の燃焼状態を撮影できる構成を有する。可視化エンジン2は、インジェクタ20、吸気マニホルド21、吸気弁22、排気マニホルド23、排気弁24、燃焼室25、ピストン26、シリンダ27、コンロッド28、および可視化部29から構成される。インジェクタ20、吸気マニホルド21、吸気弁22、排気マニホルド23、および排気弁24は、シリンダヘッドHを構成する。シリンダヘッドHは、シリンダ27にボルト(不図示)などによって組み付けられている。
【0023】
インジェクタ20は、燃焼室25内に高圧で燃料を噴射するものである。図1では、図示を省略してあるがインジェクタ20の上方(Z1方向)には、インジェクタ20に燃料を供給するための配管がなされている。さらに、その配管の先には、不図示の燃料噴射システムが配置される。
【0024】
吸気マニホルド21は、吸入、圧縮、膨張(爆発)、排気の各工程を有する4サイクルエンジンである可視化エンジン2の吸入行程において、燃焼室内に空気を供給するための孔道である。
【0025】
吸気弁22は、可視化エンジン2の吸入行程において開放される弁であり、吸気マニホルド21を介して燃焼室内に空気を供給するための弁である。
【0026】
排気マニホルド23は、可視化エンジン2の排気行程において、燃焼室内の排気ガスを排気するための孔道である。
【0027】
排気弁24は、可視化エンジン2の排気行程において開放される弁であり、吸気マニホルド21を介して燃焼室内の排気ガスを排気するための弁である。
【0028】
燃焼室25は、可視化エンジン2の圧縮工程において、ピストン26によって高圧高温に圧縮された空気が噴射された燃料と混合し、燃焼(爆発)する空間である。燃焼室25内の上方(Z1方向)の面には、インジェクタ20、吸気弁22、排気弁24が配置されている。
【0029】
ピストン26は、吸気工程でシリンダ17内を下方に移動し、圧縮工程でシリンダ17内の上方に移動し、さらに、膨張行程でシリンダ17内を下方に移動し、排気工程でシリンダ17内の上方に移動して往復運動する。また、ピストン26は、上方(Z1方向)に可視化部29を有し、下方(Z2方向)にコンロッド28を有する。コンロッド28は、不図示のクランクシャフトに連結されている。さらに、ピストン26は、一方(図1ではX1方向)の側壁の一部に切欠部26aが設けられ、内部に解析部3の反射鏡30が設置されている。
【0030】
シリンダ27は、その内部をピストン26が往復運動し、上方(Z1方向)には、シリンダヘッドHを有する。また、シリンダ27は、ピストン26と同様に、一方(図1ではX1方向)の側壁の一部に切欠部27aが設けられている。
【0031】
可視化部29は、ピストン26の上部(Z1方向)に備えられ、燃焼室25の内部の様子を、ピストン26の下部(Z2方向)から観察するためのものである。詳細は、図4を参照して後述する。
【0032】
撮影部3は、可視化エンジン2の燃焼室25内の燃焼状態の様子を撮影することができる。撮影部3は、反射鏡30、集光レンズ31、およびカメラ部32から構成される。
【0033】
反射鏡30は、ピストン26の内側に設けられている。ここで反射鏡30の支持方法を図2を参照しながら説明する。図2は、反射鏡30の支持方法を示す図である。図2は、図1の可視化エンジン2の側断面図と同じものを示している。反射鏡30の支持方法は、たとえば図2に示すように、ピストン26の左方向(Y2方向)の壁面に開けられた縦長の溝部50を貫通する支持棒51の一端によって支持されている。支持棒51の他端は、溝部50の裏面(Y2方向)にあるシリンダ27に内壁に取り付けられていてもよいし、シリンダ27の壁面を貫通して外部の支持部材に取付けられていてもよい。溝部50の縦方向(Z1、Z2方向)の長さは、ピストン26の往復運動のストロークよりも長く、反射鏡30の支持棒51は、ピストン26の往復運動を妨げることなく、その位置が固定されるように設置されている。この支持棒51によって、反射鏡30もピストン26の往復運動を妨げることなく、その位置が固定されるように設置される。
【0034】
図1に戻り、集光レンズ31は、反射鏡30に写る画像をカメラ部32に入射させるために光線を屈折させるものである。なお、カメラ部32が集光レンズ31に相当するレンズを有する場合は、集光レンズ31は省略してよい。
【0035】
カメラ部32は、高速度で静止画または動画の撮影が可能なカメラ装置である。カメラ部32は、いわゆるデジタルカメラであり、不図示の受光素子が受光した画像の色および強度に基づいて画像の色情報および強度情報を表すデジタル信号を生成して出力するものである。
【0036】
画像解析部4は、演算部40および表示部41から構成される。演算部40は、カメラ部32から出力されるデジタル信号である画像情報を入力して後述する画像解析処理を実行する。表示部41は、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロ ルミネッセンス)表示パネルなどであり、演算部40による画像解析結果を表示画面上に表示させることができる。
【0037】
(可視化部29の構造)
次に、可視化部29の構造について、図3を参照しながら説明する。図3に示す可視化部29は、図1に示す可視化エンジン2のシリンダヘッドHを取り外し、ピストン26に取り付けられている可視化部29を上方(Z1方向)から見ている状態である。図3に示すように、可視化部29は、複数の窓部29a、29b、29cを有する。窓部29a、29b、29cは、たとえば石英ガラスによって形成される。また、可視化部29において、窓部29a、29b、29c以外の支持部材29dは、ピストン26を形成するアルミ合金などと同じ材質でよい。また、支持部材29dへの窓部29a、29b、29cの取付け方法は、たとえば支持部材29dを上下方向(Z1、Z2方向)に分割できる2つの部材により構成し、この2つの部材により窓部29a、29b、29cの部材の一部を挟み込むなどの方法が考えられる。なお、支持部材29dを構成する2つの部材同士は、溶接またはネジ留めなどで接合すればよい。
【0038】
図3において、窓部29a、29b、29cの周囲の破線の円は、窓部29a、29b、29cの部材の一部が支持部材29dによって挟み込まれている部分を示す。また、ピストン26への支持部材29dの取付け方法も、たとえばピストン26の上部を上下方向(Z1、Z2方向)に分割できる2つの部材により構成し、この2つの部材により支持部材29dの一部を挟み込むなどの方法が考えられる。なお、ピストン26を構成する2つの部材同士は、溶接などで接合すればよい。図3において、支持部材29dの周囲の破線の円は、支持部材29dの一部がピストン26によって挟み込まれている部分を示す。
【0039】
(画像処理手順について)
次に、撮影装置1の画像解析部4で行われる画像処理の手順について、図4〜図13を参照しながら説明する。図4は、燃焼室25を下方(Z2方向)から見た状態を示す図であり、燃料噴射が無い状態を示す図である。図4に示すように、燃焼室5の中心にはインジェクタ20のノズルが見える。さらに、図4に示すように、燃焼室25は、インジェクタ20のノズルの周囲に、吸気弁22および排気弁24が見えている。
【0040】
図5は、燃焼室25を下方から見た状態を示す図であり、インジェクタ20から燃料噴射が行われた状態を示す図である。インジェクタ20のノズルからは放射状に燃料70が霧状に噴射される。
【0041】
図6は、燃焼室25を下方から見た状態を示す図であり、燃料70の燃焼(爆発)が起こった状態を示す図である。図6に示すように、燃焼室25では、インジェクタ20のノズルから放射状に噴射された霧状の燃料70が燃焼することにより、インジェクタ20のノズルから放射状に火炎71が発生する。
【0042】
ここで、撮影装置1のユーザは、図5に示すインジェクタ20からの燃料70の噴射状況を観察したいものとして、以下の画像解析処理を説明する。
【0043】
図7は、図5の状態を図3の窓部29a、29b、29cの位置(破線の円)に対応させた図である。図8は、図5の状態を図3の窓部29a、29b、29cから見た状態を示す図である。図8に示すように、それぞれの窓部29a、29b、29cからはインジェクタ20から噴射された燃料70の一部だけが見える。図9は、図8において実際には見えない部分を破線により示している。
【0044】
図10は、図8において撮影された画像を示す図である。燃焼室25内を下方から見た状態は、インジェクタ20を中心としてほぼ点対称である。よって、図10において見えない部分については、図10の画像を45度回転させた画像とほぼ同じであると推定できる。図11は、図10の画像を45度回転させた状態を示す図である。
【0045】
図12は、図10の画像と図11の画像とを合成した画像を示す図である。図12に示すように、図10において見えない部分を、図11の画像にて補間した状態が図12に示す画像である。図13は、図12の画像から不必要な画像を除去した状態を示す図である。このように、演算部40の画像解析処理によれば、図13に示すように、図12の画像において、燃料70の画像を残して他の画像を除去することにより、燃料70の画像のみを抽出することができる。
【0046】
(効果について)
以上説明したように、ピストン26の燃焼室25に対向する外壁に窓部29a、29b、29cを有する可視化部29と、窓部29a、29b、29cのそれぞれを透視して燃焼室25内を撮影する撮影部3と、窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を生成する画像解析部4と、を有することにより、窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる。すなわち、前述したように、ガラスの直径が大きければ大きいほど、強度を増すためには、厚みを増す必要が生じる。よって、厚みを増すことなく高い圧力に耐え得るガラスを実現する場合、直径が小さいガラスの方が有利になる。
【0047】
これによれば、ピストン26の重量に対する窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量の割合を小さくできる。よって、ピストン26を設計製造する際に、窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量に対する配慮を省略できるので、所望の重量のピストン26を容易に設計製造することができる。
【0048】
〔その他の実施の形態について〕
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りにおいて、様々に変更可能である。たとえば画像解析部4における画像解析手法については、上述した手法に限定されるものではなく、様々な手法が適用可能である。たとえば上述の実施の形態では、図10に示した画像と、その画像を45度回転させた図11に示す画像とを合成したが、図10に示した画像を撮影した後に、可視化部29自体を45度回転させ、可視化エンジン2の同じ工程(燃料噴射工程)で、再度、画像を撮影する。この2つの画像を合成して図12および図13に示したような画像を得ることもできる。この場合には、合成する2つの画像は、共に、実際に撮影された画像を用いることができるので、推定で生成した画像を使用しないため、精度の高い観察を行うことができる。
【0049】
さらに、撮影部3のカメラ部32は、動画を撮影可能であり、画像解析部4は、ある時刻の撮影では窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成することができる。
【0050】
この画像解析手法について、図14〜図17を参照しながら説明する。図14〜図17は、インジェクタ20から噴射された燃料70が燃焼した際に、中心軸線を示す一点鎖線Mを中心に渦巻いて回転する火炎72が発生した状態を模式的に示す図である。図14〜図16の順番で時系列的に、カメラ部32によって、動画撮影されたものである。図14〜図16の上段に示す図は、火炎72の形状と窓部29a、29b、29c(破線の円)との位置関係を示しており、図14〜図16の下段に示す図は、窓部29a、29b、29cから見える火炎72の様子を示す図である。
【0051】
たとえば図14の上段の図において、矢示した部分の火炎72の窓部29aにおける見え方について着目する。矢示した火炎72は、図14の下段の図において、一点鎖線Mに近い側の一部しか見えていない。図15の上段の図において、矢示した火炎72は、図15の下段の図において、その中ほどの多くの部分が見えている。図16の上段の図において、矢示した火炎72は、図16の下段の図において、その先端に近い多くの部分が見えている。このように図14〜図16で窓部29aにおける矢示した火炎72は、時間の経過に伴って、その一部ずつが順次撮影される。そこで、演算部41は、図14〜図16の下段に示した各図の画像を時系列的に合成することによって、図17に示すように、火炎72の全体像を生成することができる。
【0052】
このように燃焼室25内を一点鎖線Mを中心に回転する観察対象であれば、動画撮影を利用することにより、短時間の撮影で得られた画像情報に基づいて所望する画像を生成することができる。
【0053】
上述の実施の形態では、3つの窓部29a、29b、29cを例示したが、窓部の数は、4つ以上としたり、あるいは2つとするなど、様々に変更してよい。たとえば、窓部の数は、観察対象となる燃焼室25内の最大圧力に応じて増減したり、あるいは、観察対象となる現象(燃料噴射状況、火炎発生状況など)の形状や形態に応じて増減するなど、様々に設定が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…撮影装置、2…可視化エンジン、3…撮影部、4…画像解析部、25…燃焼室、26…ピストン、27…シリンダ、29…可視化部、29a、29b、29c…窓部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置および撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、内燃機関の研究開発に際し、内燃機関の燃焼室内における燃料の燃焼状態を撮影することが行われている。特許文献1の燃焼室内観察装置は、燃焼室と対向するピストンの外壁を石英などのガラスで構成し、このガラスを透視して燃焼室内の様子を観察している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−142106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、燃焼室と対向するピストンの外壁をガラスで構成する場合、燃料が燃焼(爆発)する際の燃焼室内の高い圧力を1枚のガラスで支えるため、ガラスの強度は相応に高いものとする必要がある。このとき、観察をし易くするために、ガラスの直径については、可能な限り大きくすることが好ましく、ガラスの厚みを増すことによって、強度を確保することになる。
【0005】
すなわち、直径がAφであるガラスと直径がB(<A)φであるガラスとを比べると、直径がAφであるガラスは、対向する外周部分間の距離が長くなる。これにより、同じ圧力を加えた場合、直径Aφのガラスの方が直径Bφのガラスよりも圧力を支える際の力のモーメントが大きくなり、撓み量が大きくなる。ここで、双方のガラスの撓み量を同じにしようとすれば、直径がAφであるガラスの厚みを、直径がBφであるガラスの厚みよりも増やす必要がある。このように、ガラスの直径が大きければ大きいほど、力のモーメントが大きくなるので、強度を増すためには、厚みを増す必要が生じる。
【0006】
しかしながら、ガラスの厚みを増すことによって、ガラスの重量も増すことになる。たとえば石英ガラスは、比重が2以上(たとえば2.19)もあり、ガラスの厚みが増えることによる重量増加は大きい。
【0007】
一方、内燃機関の研究開発のためには、実際に使用する状態に可能な限り近い状態で、内燃機関を動作させることが重要である。これに対し、ガラスの重量によって、実際の内燃機関が有するピストンよりも重量が大きくなる場合があり、好ましくない。
【0008】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、ガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる撮影装置および撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のひとつの観点は、撮影装置としての観点である。本発明の撮影装置は、ピストンと、ピストンを収容するシリンダと、シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における燃料室内の状態を撮影する撮影装置において、ピストンの燃焼室に対向する外壁に複数の窓部を有する可視化部と、複数の窓部のそれぞれを透視して燃焼室内を撮影する撮影部と、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析部と、を有するものである。
【0010】
たとえば画像解析部は、燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成することができる。
【0011】
あるいは、画像解析部は、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成することができる。
【0012】
もしくは、撮影部は、動画を撮影可能であり、画像解析部は、ある時刻の撮影では複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成することができる。
【0013】
本発明の他の観点は、撮影方法としての観点である。本発明の撮影方法は、ピストンと、ピストンを収容するシリンダと、シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における燃料室内の状態を撮影する撮影方法において、ピストンの燃焼室に対向する外壁に設けられた複数の窓部のそれぞれを透視して燃焼室内を撮影する撮影ステップと、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析ステップと、を有するものである。
【0014】
たとえば、画像解析ステップの処理は、燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成するステップを有することができる。
【0015】
あるいは、画像解析ステップの処理は、複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成するステップを有することができる。
【0016】
もしくは、撮影ステップは、動画を撮影するステップを有し、画像解析ステップの処理は、ある時刻の撮影では複数の窓部のいずれからも撮影不可能な燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成するステップを有することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮影装置の全体構成図である。
【図2】図1の反射鏡の支持方法を示す図である。
【図3】図1の撮影装置の可視化部の構成図である。
【図4】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃料噴射が無い状態を示す図である。
【図5】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃料噴射が行われた状態を示す図である。
【図6】燃焼室を下方から見た状態を示す図であり、燃焼(爆発)が起こり火炎が発生した状態を示す図である。
【図7】図5の状態を図3の窓部の位置に対応させた図である。
【図8】図5の状態を図3の窓部から見た状態を示す図である。
【図9】図8において実際には見えない部分を破線で示す図である。
【図10】図8において撮影された画像を示す図である。
【図11】図10の画像を45度回転させた状態を示す図である。
【図12】図10の画像と図11の画像とを合成した画像を示す図である。
【図13】図12の画像から不必要な画像を除去した状態を示す図である。
【図14】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図である。
【図15】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図であり、図14よりも回転が進んだ状態を示す図である。
【図16】燃料が燃焼した結果発生した回転する火炎を窓部の位置に対応させて模式的に示す図であり、図15よりも回転が進んだ状態を示す図である。
【図17】図14〜図16の撮影結果に基づいて生成された火炎の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔はじめに〕
以下の本発明の実施の形態の説明において、図1〜図3に示す矢示X1方向を「前」、矢示X2方向を「後(後ろ)」、矢示X1方向および矢示X2方向の両方向に対し直交する方向となる矢示Z1方向を「上」、矢示Z2方向を「下」、矢示Z1、Z2、X1、X2の方向からなる平面に対して垂直であり紙面の手前の方向となる矢示Y1方向を「右」、矢示Z1、Z2、X1、X2の方向からなる平面に対して垂直であり紙面の奥行き方向となる矢示Y2方向を「左」とそれぞれ規定する。
【0020】
(概要)
本発明の実施の形態の撮影装置1は、図1に示すように、燃焼室25の内部で発生する現象を、可視化部29を介して撮影部3によって撮影して観察するものである。ここで可視化部29は、図3に示すように、3つの窓部29a、29b、29cによって構成されることを特徴とする。このように窓部を複数設け、窓部29a、29b、29cとして直径の小さいガラスを用いることにより、窓部29a、29b、29cの厚みを厚くしなくても高圧に耐え得る可視化部29が構成できる。これにより、窓部29a、29b、29cの重さを軽量化でき、ピストン26の重量を実際のエンジンにおけるものと同等にすることを容易にできる。また、窓部29a、29b、29cの間にあって直接撮影不可となる観察箇所については、画像解析部4の画像解析によって補うことができる。
【0021】
(構成)
撮影装置1の構成を図1を参照しながら説明する。図1は、撮影装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、撮影装置1は、可視化エンジン2、カメラ部3、および画像解析部4(演算部40および表示部41)から主に構成される。なお、図1の可視化エンジン2の側断面図は、シリンダ27の中心軸線である一点鎖線Mを含み、矢示X1、X2、Z1、Z2の方向からなる平面で可視化エンジン2を切断した状態を示している。
【0022】
可視化エンジン2は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであって、後述するように内部の燃焼状態を撮影できる構成を有する。可視化エンジン2は、インジェクタ20、吸気マニホルド21、吸気弁22、排気マニホルド23、排気弁24、燃焼室25、ピストン26、シリンダ27、コンロッド28、および可視化部29から構成される。インジェクタ20、吸気マニホルド21、吸気弁22、排気マニホルド23、および排気弁24は、シリンダヘッドHを構成する。シリンダヘッドHは、シリンダ27にボルト(不図示)などによって組み付けられている。
【0023】
インジェクタ20は、燃焼室25内に高圧で燃料を噴射するものである。図1では、図示を省略してあるがインジェクタ20の上方(Z1方向)には、インジェクタ20に燃料を供給するための配管がなされている。さらに、その配管の先には、不図示の燃料噴射システムが配置される。
【0024】
吸気マニホルド21は、吸入、圧縮、膨張(爆発)、排気の各工程を有する4サイクルエンジンである可視化エンジン2の吸入行程において、燃焼室内に空気を供給するための孔道である。
【0025】
吸気弁22は、可視化エンジン2の吸入行程において開放される弁であり、吸気マニホルド21を介して燃焼室内に空気を供給するための弁である。
【0026】
排気マニホルド23は、可視化エンジン2の排気行程において、燃焼室内の排気ガスを排気するための孔道である。
【0027】
排気弁24は、可視化エンジン2の排気行程において開放される弁であり、吸気マニホルド21を介して燃焼室内の排気ガスを排気するための弁である。
【0028】
燃焼室25は、可視化エンジン2の圧縮工程において、ピストン26によって高圧高温に圧縮された空気が噴射された燃料と混合し、燃焼(爆発)する空間である。燃焼室25内の上方(Z1方向)の面には、インジェクタ20、吸気弁22、排気弁24が配置されている。
【0029】
ピストン26は、吸気工程でシリンダ17内を下方に移動し、圧縮工程でシリンダ17内の上方に移動し、さらに、膨張行程でシリンダ17内を下方に移動し、排気工程でシリンダ17内の上方に移動して往復運動する。また、ピストン26は、上方(Z1方向)に可視化部29を有し、下方(Z2方向)にコンロッド28を有する。コンロッド28は、不図示のクランクシャフトに連結されている。さらに、ピストン26は、一方(図1ではX1方向)の側壁の一部に切欠部26aが設けられ、内部に解析部3の反射鏡30が設置されている。
【0030】
シリンダ27は、その内部をピストン26が往復運動し、上方(Z1方向)には、シリンダヘッドHを有する。また、シリンダ27は、ピストン26と同様に、一方(図1ではX1方向)の側壁の一部に切欠部27aが設けられている。
【0031】
可視化部29は、ピストン26の上部(Z1方向)に備えられ、燃焼室25の内部の様子を、ピストン26の下部(Z2方向)から観察するためのものである。詳細は、図4を参照して後述する。
【0032】
撮影部3は、可視化エンジン2の燃焼室25内の燃焼状態の様子を撮影することができる。撮影部3は、反射鏡30、集光レンズ31、およびカメラ部32から構成される。
【0033】
反射鏡30は、ピストン26の内側に設けられている。ここで反射鏡30の支持方法を図2を参照しながら説明する。図2は、反射鏡30の支持方法を示す図である。図2は、図1の可視化エンジン2の側断面図と同じものを示している。反射鏡30の支持方法は、たとえば図2に示すように、ピストン26の左方向(Y2方向)の壁面に開けられた縦長の溝部50を貫通する支持棒51の一端によって支持されている。支持棒51の他端は、溝部50の裏面(Y2方向)にあるシリンダ27に内壁に取り付けられていてもよいし、シリンダ27の壁面を貫通して外部の支持部材に取付けられていてもよい。溝部50の縦方向(Z1、Z2方向)の長さは、ピストン26の往復運動のストロークよりも長く、反射鏡30の支持棒51は、ピストン26の往復運動を妨げることなく、その位置が固定されるように設置されている。この支持棒51によって、反射鏡30もピストン26の往復運動を妨げることなく、その位置が固定されるように設置される。
【0034】
図1に戻り、集光レンズ31は、反射鏡30に写る画像をカメラ部32に入射させるために光線を屈折させるものである。なお、カメラ部32が集光レンズ31に相当するレンズを有する場合は、集光レンズ31は省略してよい。
【0035】
カメラ部32は、高速度で静止画または動画の撮影が可能なカメラ装置である。カメラ部32は、いわゆるデジタルカメラであり、不図示の受光素子が受光した画像の色および強度に基づいて画像の色情報および強度情報を表すデジタル信号を生成して出力するものである。
【0036】
画像解析部4は、演算部40および表示部41から構成される。演算部40は、カメラ部32から出力されるデジタル信号である画像情報を入力して後述する画像解析処理を実行する。表示部41は、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロ ルミネッセンス)表示パネルなどであり、演算部40による画像解析結果を表示画面上に表示させることができる。
【0037】
(可視化部29の構造)
次に、可視化部29の構造について、図3を参照しながら説明する。図3に示す可視化部29は、図1に示す可視化エンジン2のシリンダヘッドHを取り外し、ピストン26に取り付けられている可視化部29を上方(Z1方向)から見ている状態である。図3に示すように、可視化部29は、複数の窓部29a、29b、29cを有する。窓部29a、29b、29cは、たとえば石英ガラスによって形成される。また、可視化部29において、窓部29a、29b、29c以外の支持部材29dは、ピストン26を形成するアルミ合金などと同じ材質でよい。また、支持部材29dへの窓部29a、29b、29cの取付け方法は、たとえば支持部材29dを上下方向(Z1、Z2方向)に分割できる2つの部材により構成し、この2つの部材により窓部29a、29b、29cの部材の一部を挟み込むなどの方法が考えられる。なお、支持部材29dを構成する2つの部材同士は、溶接またはネジ留めなどで接合すればよい。
【0038】
図3において、窓部29a、29b、29cの周囲の破線の円は、窓部29a、29b、29cの部材の一部が支持部材29dによって挟み込まれている部分を示す。また、ピストン26への支持部材29dの取付け方法も、たとえばピストン26の上部を上下方向(Z1、Z2方向)に分割できる2つの部材により構成し、この2つの部材により支持部材29dの一部を挟み込むなどの方法が考えられる。なお、ピストン26を構成する2つの部材同士は、溶接などで接合すればよい。図3において、支持部材29dの周囲の破線の円は、支持部材29dの一部がピストン26によって挟み込まれている部分を示す。
【0039】
(画像処理手順について)
次に、撮影装置1の画像解析部4で行われる画像処理の手順について、図4〜図13を参照しながら説明する。図4は、燃焼室25を下方(Z2方向)から見た状態を示す図であり、燃料噴射が無い状態を示す図である。図4に示すように、燃焼室5の中心にはインジェクタ20のノズルが見える。さらに、図4に示すように、燃焼室25は、インジェクタ20のノズルの周囲に、吸気弁22および排気弁24が見えている。
【0040】
図5は、燃焼室25を下方から見た状態を示す図であり、インジェクタ20から燃料噴射が行われた状態を示す図である。インジェクタ20のノズルからは放射状に燃料70が霧状に噴射される。
【0041】
図6は、燃焼室25を下方から見た状態を示す図であり、燃料70の燃焼(爆発)が起こった状態を示す図である。図6に示すように、燃焼室25では、インジェクタ20のノズルから放射状に噴射された霧状の燃料70が燃焼することにより、インジェクタ20のノズルから放射状に火炎71が発生する。
【0042】
ここで、撮影装置1のユーザは、図5に示すインジェクタ20からの燃料70の噴射状況を観察したいものとして、以下の画像解析処理を説明する。
【0043】
図7は、図5の状態を図3の窓部29a、29b、29cの位置(破線の円)に対応させた図である。図8は、図5の状態を図3の窓部29a、29b、29cから見た状態を示す図である。図8に示すように、それぞれの窓部29a、29b、29cからはインジェクタ20から噴射された燃料70の一部だけが見える。図9は、図8において実際には見えない部分を破線により示している。
【0044】
図10は、図8において撮影された画像を示す図である。燃焼室25内を下方から見た状態は、インジェクタ20を中心としてほぼ点対称である。よって、図10において見えない部分については、図10の画像を45度回転させた画像とほぼ同じであると推定できる。図11は、図10の画像を45度回転させた状態を示す図である。
【0045】
図12は、図10の画像と図11の画像とを合成した画像を示す図である。図12に示すように、図10において見えない部分を、図11の画像にて補間した状態が図12に示す画像である。図13は、図12の画像から不必要な画像を除去した状態を示す図である。このように、演算部40の画像解析処理によれば、図13に示すように、図12の画像において、燃料70の画像を残して他の画像を除去することにより、燃料70の画像のみを抽出することができる。
【0046】
(効果について)
以上説明したように、ピストン26の燃焼室25に対向する外壁に窓部29a、29b、29cを有する可視化部29と、窓部29a、29b、29cのそれぞれを透視して燃焼室25内を撮影する撮影部3と、窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を生成する画像解析部4と、を有することにより、窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量を増すことなく、ガラスの強度を確保することができる。すなわち、前述したように、ガラスの直径が大きければ大きいほど、強度を増すためには、厚みを増す必要が生じる。よって、厚みを増すことなく高い圧力に耐え得るガラスを実現する場合、直径が小さいガラスの方が有利になる。
【0047】
これによれば、ピストン26の重量に対する窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量の割合を小さくできる。よって、ピストン26を設計製造する際に、窓部29a、29b、29cを構成するガラスの重量に対する配慮を省略できるので、所望の重量のピストン26を容易に設計製造することができる。
【0048】
〔その他の実施の形態について〕
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限りにおいて、様々に変更可能である。たとえば画像解析部4における画像解析手法については、上述した手法に限定されるものではなく、様々な手法が適用可能である。たとえば上述の実施の形態では、図10に示した画像と、その画像を45度回転させた図11に示す画像とを合成したが、図10に示した画像を撮影した後に、可視化部29自体を45度回転させ、可視化エンジン2の同じ工程(燃料噴射工程)で、再度、画像を撮影する。この2つの画像を合成して図12および図13に示したような画像を得ることもできる。この場合には、合成する2つの画像は、共に、実際に撮影された画像を用いることができるので、推定で生成した画像を使用しないため、精度の高い観察を行うことができる。
【0049】
さらに、撮影部3のカメラ部32は、動画を撮影可能であり、画像解析部4は、ある時刻の撮影では窓部29a、29b、29cのいずれからも撮影不可能な燃焼室25内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成することができる。
【0050】
この画像解析手法について、図14〜図17を参照しながら説明する。図14〜図17は、インジェクタ20から噴射された燃料70が燃焼した際に、中心軸線を示す一点鎖線Mを中心に渦巻いて回転する火炎72が発生した状態を模式的に示す図である。図14〜図16の順番で時系列的に、カメラ部32によって、動画撮影されたものである。図14〜図16の上段に示す図は、火炎72の形状と窓部29a、29b、29c(破線の円)との位置関係を示しており、図14〜図16の下段に示す図は、窓部29a、29b、29cから見える火炎72の様子を示す図である。
【0051】
たとえば図14の上段の図において、矢示した部分の火炎72の窓部29aにおける見え方について着目する。矢示した火炎72は、図14の下段の図において、一点鎖線Mに近い側の一部しか見えていない。図15の上段の図において、矢示した火炎72は、図15の下段の図において、その中ほどの多くの部分が見えている。図16の上段の図において、矢示した火炎72は、図16の下段の図において、その先端に近い多くの部分が見えている。このように図14〜図16で窓部29aにおける矢示した火炎72は、時間の経過に伴って、その一部ずつが順次撮影される。そこで、演算部41は、図14〜図16の下段に示した各図の画像を時系列的に合成することによって、図17に示すように、火炎72の全体像を生成することができる。
【0052】
このように燃焼室25内を一点鎖線Mを中心に回転する観察対象であれば、動画撮影を利用することにより、短時間の撮影で得られた画像情報に基づいて所望する画像を生成することができる。
【0053】
上述の実施の形態では、3つの窓部29a、29b、29cを例示したが、窓部の数は、4つ以上としたり、あるいは2つとするなど、様々に変更してよい。たとえば、窓部の数は、観察対象となる燃焼室25内の最大圧力に応じて増減したり、あるいは、観察対象となる現象(燃料噴射状況、火炎発生状況など)の形状や形態に応じて増減するなど、様々に設定が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…撮影装置、2…可視化エンジン、3…撮影部、4…画像解析部、25…燃焼室、26…ピストン、27…シリンダ、29…可視化部、29a、29b、29c…窓部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、前記シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における前記燃料室内の状態を撮影する撮影装置において、
前記ピストンの前記燃焼室に対向する外壁に複数の窓部を有する可視化部と、
前記複数の窓部のそれぞれを透視して前記燃焼室内を撮影する撮影部と、
前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析部と、
を有する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記画像解析部は、前記燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記画像解析部は、前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、前記窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項4】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記撮影部は、動画を撮影可能であり、前記画像解析部は、ある時刻の撮影では前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項5】
ピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、前記シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における前記燃料室内の状態を撮影する撮影方法において、
前記ピストンの前記燃焼室に対向する外壁に設けられた複数の窓部のそれぞれを透視して前記燃焼室内を撮影する撮影ステップと、
前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析ステップと、
を有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項6】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記画像解析ステップの処理は、前記燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項7】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記画像解析ステップの処理は、前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、前記窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項8】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記撮影ステップは、動画を撮影するステップを有し、前記画像解析ステップの処理は、ある時刻の撮影では前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項1】
ピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、前記シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における前記燃料室内の状態を撮影する撮影装置において、
前記ピストンの前記燃焼室に対向する外壁に複数の窓部を有する可視化部と、
前記複数の窓部のそれぞれを透視して前記燃焼室内を撮影する撮影部と、
前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析部と、
を有する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記画像解析部は、前記燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記画像解析部は、前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、前記窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項4】
請求項1記載の撮影装置であって、
前記撮影部は、動画を撮影可能であり、前記画像解析部は、ある時刻の撮影では前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項5】
ピストンと、前記ピストンを収容するシリンダと、前記シリンダ内に設けられる燃焼室と、を少なくとも有する内燃機関における前記燃料室内の状態を撮影する撮影方法において、
前記ピストンの前記燃焼室に対向する外壁に設けられた複数の窓部のそれぞれを透視して前記燃焼室内を撮影する撮影ステップと、
前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を生成する画像解析ステップと、
を有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項6】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記画像解析ステップの処理は、前記燃焼状態の画像がインジェクタを中心とする点対称の画像であると仮定して前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を他の領域の画像から推測して生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項7】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記画像解析ステップの処理は、前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、前記窓部の位置が変更されて撮影された他の画像から生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項8】
請求項5記載の撮影方法であって、
前記撮影ステップは、動画を撮影するステップを有し、前記画像解析ステップの処理は、ある時刻の撮影では前記複数の窓部のいずれからも撮影不可能な前記燃焼室内の一部の領域の画像を、一連の動画の撮影において、異なる時刻に撮影された画像から生成するステップを有する、
ことを特徴とする撮影方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−61235(P2013−61235A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199785(P2011−199785)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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