説明

撹拌冷却装置

【課題】包装袋体を破損することなく充填物を撹拌・混合しながら連続的に冷却することができる撹拌冷却装置を提供する。
【解決手段】包装袋体Hに充填された充填物を攪拌・冷却処理する撹拌冷却装置10であって、前記包装袋体Hを載置し冷却する冷却ローラ11と、前記冷却ローラ11間に配設され前記包装袋体Hを転送する補助ローラ14と、前記冷却ローラ11及び前記補助ローラ14のそれぞれのローラ面に巻き回して前記包装袋体Hを搬送方向に誘導するガイドベルト15と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋体に密封保持された充填物を撹拌や混合処理をしながら連続的に冷却するための撹拌冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模な調理場などにおいて、食材や調味料などはその調理後に偏平状の包装袋体に充填保持される。
このような包装袋体は、偏平袋状にシールされたプラスチック袋内に、加熱調理された食材や調味料などの流動物や固形物を充填した後、プラスチック袋の開口部を密封シールして形成される。
このような高温状態の流動物や固形物が充填された包装袋体を冷却するための冷却装置として、例えば、特許文献1には、多数のフィルム容器が連結された帯状体を、上下に隣り合うスチールベルトコンベヤの一方の下面部と他方の上面部との間に挟み込みながら、冷却雰囲気に維持された筐体内を上下方向に蛇行させて冷却させるようにした装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−104337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、スチールベルトコンベヤの一方の下面部と他方の上面部との間に偏平状容器を挟み込みながら上下方向に蛇行させるので、偏平状容器のプラスチックフィルムに無理な負荷がかかり易く、これによってフィルムが破断したり、流動物中の固形分が過度に潰れてしまい本来の食味が変わったりしてしまうという問題があった。
【0004】
また、プラスチックフィルム容器などの偏平状容器を上下2段のスチールベルトコンベアに挟み込みながら移動させるので、その駆動制御や機械的構成が複雑となってそのメンテナンスが難しいことに加えて、搬送中のプラスチックフィルム容器を安定的に保持しにくいという問題もあった。
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたもので、包装袋体に過度の負荷をかけることなく、充填された流動物などを撹拌・混合しながら連続的に冷却することができる撹拌冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の撹拌冷却装置は、包装袋体に充填された充填物を攪拌・冷却処理する撹拌冷却装置であって、前記包装袋体を載置し冷却する冷却ローラと、前記冷却ローラ間に配設され前記包装袋体を転送する補助ローラと、前記冷却ローラ及び前記補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回して前記包装袋体を搬送方向に誘導するガイドベルトと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の撹拌冷却装置は、請求項1において、前記冷却ローラ及び補助ローラからなるローラ列を上下方向に多段配列し、前記包装袋体を前記ローラ列の進行方向終端で上段側から下段側のローラ列に供給することによってジグザグ状に移動させながら降下させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の撹拌冷却装置は、請求項1において、前記冷却ローラを含む撹拌冷却装置本体の内部を、冷却装置を介して所定温度に保持することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の撹拌冷却装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記冷却ローラの側面に冷却媒体導入口を配設し、該冷却媒体導入口から冷却媒体を該冷却ローラ内部に供給するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却ローラ及び前記補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回されて包装袋体をその搬送方向に誘導するためのガイドベルトを有するので、プラスチックフィルムなどで形成された包装袋体をガイドベルトを介して誘導しながら冷却ローラに接触させることができ、包装袋体に過度の負荷をかけることなく、包装袋体に充填された流動物を撹拌・混合しながら連続的に冷却することができる。
これによって、高温状態で充填された流動物や固形物を連続的に冷却したり、具材などを調味料などと馴染ませたりする攪拌や混合などの処理を包装袋体に充填した後に連続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施の形態に係る撹拌冷却装置は、包装袋体を載置し冷却する冷却ローラと、冷却ローラ間に配設され包装袋体を転送する補助ローラと、冷却ローラ及び補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回して包装袋体を搬送方向に誘導するガイドベルトと、を有する、包装袋体に充填された充填物を攪拌・冷却処理するための撹拌冷却装置である。これによって、流動物や固形物を充填した包装袋体を、冷却ローラ及びガイドベルトに載置して波状に揺動させながら水平方向に搬送するとともに、冷却媒体で冷却した冷却ローラのローラ面と接触させ、高温の充填物を狭いスペース内で連続的に冷却することができる。
このとき包装袋体は冷却ローラの上面側に載置されているが、その上部側には押圧力が作用しないので袋体の破損などのトラブルを回避することができる。
また、包装袋体の形成過程において、高温状態のままで流動物を充填封入する工程、包装処理工程、撹拌・混合工程、包装袋体の充填物の冷却工程などを一連化し、これらの処理を円滑かつ高速に行うこともできる。
【0011】
包装袋体としては、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの可撓性プラスチックフィルムを用い、この2枚のプラスチックフィルム間の周囲を熱圧着して形成される袋体の空間に充填機にて流動物を充填した密封袋体などが挙げられる。流動物としては、各種の液体、粘性流体、及び液体と固形物との混合物、粉末などが挙げられる。食品の分野においては、流動物として、ラーメンスープ、具材を含むスープ液、調味液、チーズ、羊羹、キムチ、漬け物などが挙げられる。
【0012】
なお、包装袋体は単体として撹拌冷却装置に供給するようにしてもよいが、複数の包装袋体の辺部どうしを帯状に連結した袋体集合体を供給するようにしてもよい。
【0013】
冷却ローラとしては、例えば、回転軸にロータリジョインなどを介して冷却水などの冷却媒体をローラ内部に供給する水冷式金属ローラなどが挙げらる。これらの冷却ローラが所定の間隔を有して配列されており、包装袋体にローラ面を接触させることで、包装袋体内の充填物から吸熱するように構成されている。冷却ローラは、ステンレススチールやスチール、銅などの導電性のよい材質を用いて、電動モータなどを介して回転させるようにしたものが好ましい。
【0014】
また、冷却ローラには、その側面に冷却媒体導入口を配設し、冷却媒体導入口に冷却水などの冷却媒体をローラジョイントなどを介して供給するようにしてもよい。これによって、回転駆動するドラム状の冷却ローラに冷却水を循環供給して、ローラ面を内側から効果的に冷却することができる。
なお、ロータリジョイントを用いた冷却方式としては、
(1)回転する冷却ローラの一方の側面から冷却媒体を供給し、反対側の側面から排出する方式
(2)回転する冷却ローラの中に冷却媒体の供給側と同じ側から排出させる複式内管固定式
(3)冷却媒体を供給、排出するときに内管も一緒に回転させる複式内管回転式、などがあり、状況に応じてこれらの中から適宜選択して適用することができる。
【0015】
冷却ローラは、包装袋体の進行方向に水平に複数本配設してローラ列としたものの他、前記ローラ列を上下方向に多段配設して、包装袋体をジグザグ状に移動させることにより、狭いスペース内において移動距離を長く設定し、撹拌・混合や冷却処理の時間を稼ぐことができる。
【0016】
補助ローラは、隣接する冷却ローラ間の上部に、冷却ローラとその軸方向を一致させてそれぞれ配設され、冷却ローラ間の隙間に包装袋体が巻き込まれるのを防止する。また、補助ローラには、冷却ローラとの間で複数本のガイドベルトの一方の端部が巻き回されており、冷却ローラからの回転がガイドベルトを介して伝達されるようにしている。
【0017】
ガイドベルトは、冷却ローラ及び補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回されて包装袋体をその搬送方向に誘導する機能を有している。ガイドベルトとしては、例えば、その幅が5〜50mm程度であるベルトやチェーン、ロープ、紐などが挙げられ、その素材としては、ゴム、合成樹脂や金属などを適用することができる。また、冷却ローラや補助ローラのローラ面には、ガイドベルトを走行させる凹状のガイド溝をローラ面に周状に複数本形成しておくこともできる。これによって、ローラ面においてガイドベルトの走行位置が確定して安定支持させることができ、ガイドベルトを介して冷却ローラから次の冷却ローラに受け渡される包装袋体を確実に移送することができる。
【0018】
また、本実施の形態の撹拌冷却装置は、水平方向に沿って配設した冷却ローラ及び補助ローラを対にしたローラ列を、上下方向に多段配列し、包装袋体をそのローラ列の進行方向終端で上段側から下段側のローラ列に供給することによってジグザグ状に移動しながら降下させることもできる。また、前記冷却ローラを含む撹拌冷却装置本体の内部を、冷却装置を介して所定温度に保持するようにすることもできる。
ここで、撹拌冷却装置本体の保持温度は、冷却装置によって自由に設定できるが、高温の充填物を効果的に冷却するためには、例えば、0℃〜10℃に保持することが望ましい。
【0019】
(実施例)
図1(a)、(b)は、それぞれ本実施例に係る撹拌冷却装置の平面図及び正面図であり、図2は、実施例の撹拌冷却装置の正面断面図であり、図3(a)、(b)は、それぞれ実施例の撹拌冷却装置における冷却ローラの拡大正面図及び平面図である。
図1〜図3において、10は実施例の撹拌冷却装置であり、撹拌冷却装置10のフレーム基台12には複数の冷却ローラ11の両端を支持して上中下3段となるローラ列を並行配置して、包装袋体Hを冷却ローラ11面に載置して搬送する。また、冷却ローラ11側面の回転軸部のロータリジョイント13に、冷却水を循環導入する冷却媒体導入口を設け、冷却ローラ11内部に冷却水を供給及び排出させるようにしている。
そして、隣接された冷却ローラ11間の上部に、冷却ローラ11よりも小径の補助ローラ14をそれぞれの軸方向が並行になるように配設し、ガイドベルト15を、冷却ローラ11及び補助ローラ14のそれぞれのローラ面に巻き回して包装袋体Hをその搬送方向に誘導する。また、撹拌冷却装置10の外部には、冷却ローラ11に冷却水を循環供給するためのポンプなどを備えた冷却水供給部16が具備されている。
【0020】
冷却ローラ11としては、例えば、ステンレススチールなどの金属素材を、その直径が約400〜600mm、軸方向長さが約1000〜1500mmの空洞に形成した金属ローラが好適に挙げられる。本実施例では、図示するように、このような冷却ローラ11の複数本を水平方向に平行配設してローラ列とし、そのローラ列を上中下3段状に配設する。冷却ローラ11は、図示しない電動モータなどによって段毎に同一方向に回転駆動するようになっている。すなわち、上段の冷却ローラ11は図手前側からみて左回転に、中段の冷却ローラ11は右回転に、下段の冷却ローラ11は左回転するように設定されている。
なお、図3では、説明の都合上、冷却ローラー11として2本、補助ローラ14として冷却ローラーの間にある1本のみを記載している。
【0021】
フレーム基台12の供給口12aから上段の冷却ローラ11に載置された包装袋体Hは、これによって、例えば毎分2mから15mの範囲の搬送速度で、図2において進行方向左に移送される。なお、フレーム基台12はその外周がステンレススチールなどの板材により密封されており、図示しない温度制御部を介して撹拌冷却装置内部温度を調整できるようになっている。また、多数の冷却ローラ11を内蔵する撹拌冷却装置本体内における下方から上方に向けて冷却エアの流れを包装袋体Hの外面に吹きかけて、これに充填する流動物の冷却効率を向上させることもできる。
【0022】
図示するように、撹拌冷却装置10の供給口12aから供給された包装袋体Hは、冷却ローラ11に載置されて、ローラの回転方向に沿って搬送されるとともに、隣接する次の冷却ローラ11との間に設けられた補助ローラ14との間で駆動するガイドベルト15によりローラ面上に沿って搬送方向に誘導される。こうして、包装袋体Hは複数の冷却ローラ11のローラ面に密着して順次波打ちながら搬送される間に、包装袋体H内の充填物はその密封された空間内で撹拌・混合されるとともに冷却される。
また、上段のローラ列の終端側には、包装袋体Hを上段ローラ列からその下段のローラ列(中段ローラ列)に移行させるための湾曲形成されたガイド17が設けられているので、これによって、包装袋体Hは撹拌冷却装置10内をジグザグ状に順次下段のローラ列に降下して冷却され、排出口12bから排出されるようになっている。なお、中段ローラ列の端部にも同様のガイド17が設けられている。
【0023】
以上、実施例の撹拌冷却装置について説明したが、本発明は冷却ローラ及び補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回されて包装袋体をその搬送方向に誘導するためのガイドベルトを設けたことを要旨としたものであって、これに該当するものは本発明の権利範囲である。例えば、本実施例では、撹拌調整装置をプラスチックフィルムなどからなる包装袋体に充填された流動物などを冷却するのに適用したが、包装袋体中に固形分を含む流動物を撹拌・混合・冷却したり、加熱処理した具材などを調味液に馴染ませるとともに冷却するような調理処理を行うことも可能である。
また、冷却ローラからなるローラ列が上中下の3段構成となるものについて説明したが、これらの特定段数のものに限定されるものではない。
さらに本発明は、各包装袋体として単独のものだけではなく、帯状に連結された袋体の集合体に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は実施例に係る撹拌冷却装置の平面図であり、(b)は正面図である。
【図2】実施例に係る撹拌冷却装置の正面断面図である。
【図3】(a)は実施例の撹拌冷却装置における冷却ローラの拡大正面図であり、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 撹拌冷却装置
11 冷却ローラ
12 フレーム基台
12a 供給口
12b 排出口
13 ロータリジョイント
14 補助ローラ
15 ガイドベルト
16 冷却水供給部
17 ガイド
H 包装袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋体に充填された充填物を攪拌・冷却処理する撹拌冷却装置であって、
前記包装袋体を載置し冷却する冷却ローラと、
前記冷却ローラ間に配設され前記包装袋体を転送する補助ローラと、
前記冷却ローラ及び前記補助ローラのそれぞれのローラ面に巻き回して前記包装袋体を搬送方向に誘導するガイドベルトと、
を有することを特徴とする撹拌冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ローラ及び補助ローラからなるローラ列を上下方向に多段配列し、
前記包装袋体を前記ローラ列の進行方向終端で上段側から下段側のローラ列に供給することによってジグザグ状に移動させながら降下させることを特徴とする請求項1に記載の撹拌冷却装置。
【請求項3】
前記冷却ローラを含む撹拌冷却装置本体の内部を、冷却装置を介して所定温度に保持することを特徴とする請求項1に記載の撹拌冷却装置。
【請求項4】
前記冷却ローラの側面に冷却媒体導入口を配設し、該冷却媒体導入口から冷却媒体を該冷却ローラ内部に供給するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の撹拌冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−232292(P2007−232292A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55587(P2006−55587)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(505243940)有限会社豊浜技研 (4)
【Fターム(参考)】