説明

撹拌混合装置、及び撹拌混合物の製造方法

【課題】混合効率を向上でき且つ省スペース化できる撹拌混合装置、及び撹拌混合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】撹拌混合装置10Aは、内部に流路21を有するケーシング20と、このケーシング20内部に配置され振動モータ40に接続された振動軸31及びこの振動軸31の周囲に設けられた撹拌羽根33a〜33dを有する撹拌体30Aと、流路21の一部を閉塞する仕切り板50a、50bを備える。撹拌羽根33a〜33dは、互いに隣接し且つ角度をなす傾斜羽根331a〜331d,333a〜333dのセットを有し、傾斜羽根傾斜羽根331a〜331d,333a〜333dには流体を流通する複数の小流通孔332a〜332d,334a〜334dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌混合装置、及び撹拌混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を撹拌し混合するために、種々の撹拌混合装置が使用されている。従来の撹拌混合装置は一般に、内部に流路を有するケーシングを備え、このケーシング内部に撹拌体が配置されている(例えば、特許文献1)。この撹拌体は、振動源に接続された振動軸を有し、この振動軸の周囲には撹拌羽根が設けられている。これにより、撹拌体がケーシング内で往復し、撹拌羽根によって流体が撹拌されるため、流体を混合できる。
【特許文献1】特開平10−328547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前述した撹拌混合装置は、その混合効率が不充分であるため、不均質な混合物が生成されるおそれがある。かかる効率を向上するためには、撹拌を多段階で行う必要がある。すると、混合撹拌装置の大型化を免れ得ず、省スペース化の要請に反することになる。
【0004】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、混合効率を向上でき且つ省スペース化できる撹拌混合装置、及び撹拌混合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、流体が小流通孔を通過することで生じる激しい流れを閉塞板でせき止めることにより、流れが複雑化し、流体の撹拌及び混合の効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0006】
(1) 内部に流路を有するケーシングと、このケーシングの内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備える撹拌混合装置であって、 前記撹拌羽根は、互いに隣接し且つ角度をなす傾斜羽根のセットを有し、 前記セットを構成する傾斜羽根の少なくとも一つに、流体を流通する複数の小流通孔が形成されている撹拌混合装置。
【0007】
(1)の発明によれば、傾斜羽根の一方に形成された小流通孔を流体が流通することで生じる激しい流れが、角度をなす他方の傾斜羽根と激しく衝突し、流体の流れが複雑化する。しかも、振動軸の振動に伴って傾斜羽根が往復すると、流体の流れが更に不規則になる。これらの相乗作用によって、流体が極めて高度に撹拌されるため、流体の混合効率を向上できる。また、傾斜羽根のセットを設けるだけの簡素な構成のため、省スペース化を達成できる。
【0008】
(2) 前記ケーシングに固定されて内部空間を仕切る仕切り板を更に備え、 前記仕切り板で仕切られた撹拌室に前記傾斜羽根のセットが配置されている(1)記載の撹拌混合装置。
【0009】
(2)の発明によれば、傾斜羽根の往復に伴って流体が小流通孔を通過させられ、流体の流れが激化する。ここで、仕切り板はケーシングに固定されているため、振動軸の振動に伴って傾斜羽根及び仕切り板が接近離隔する。これにより、流体の激しい流れが仕切り板に繰り返し衝突し、流れが高度に複雑化するため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0010】
(3) 前記傾斜羽根のセットは、前記振動軸の周回りの一部に設けられた第1部分羽根と、他部に設けられて前記第1部分羽根に交差する第2部分羽根と、を有する(1)又は(2)記載の撹拌混合装置。
【0011】
(3)の発明によれば、第1部分羽根及び第2部分羽根を交差するように設けるだけの簡素な構成のため、撹拌体を容易に作製でき、製造コストを削減できる。また、流体が第1部分羽根及び第2部分羽根の間を通過する際に、流体のスムーズな流れが阻害され、流れがより複雑化する。このため、流体の混合効率をより向上できる。
【0012】
(4) 前記第1部分羽根及び前記第2部分羽根の間に介在する介在板を更に備え、 前記介在板には、流体を流通する複数の介在流通孔が形成されている(3)記載の撹拌混合装置。
【0013】
(4)の発明によれば、第1部分羽根及び第2部分羽根の間に到達した流体が介在流通孔を通過するため、流体の流れがより激化する。これにより、流れの複雑化及び激化が同時に生じるため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0014】
(5) 前記傾斜羽根のセットは、螺旋状に設けられた螺旋羽根を有する(1)又は(2)記載の撹拌混合装置。
【0015】
(5)の発明によれば、螺旋羽根によって流体が螺旋状に回転し、渦流が発生する。これにより流体が回転させられるため、流体の混合効率をより向上できる。
【0016】
(6) 前記螺旋羽根には、前記振動軸の軸方向に略直交する平羽根が隣接する(5)記載の撹拌混合装置。
【0017】
(6)の発明によれば、振動軸の振動に伴って平羽根が往復する際、かかる平羽根は振動軸の軸方向つまり振動方向に略直交するため、流体の流れが高度に阻害される。更に、螺旋羽根によって流体が螺旋状に回転し、渦流が発生する。これらの事態が組み合わさることで、渦流が複雑化し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0018】
(7) 前記小流通孔は、前記平羽根に形成されている(6)記載の撹拌混合装置。
【0019】
(7)の発明によれば、流体の流れを高度に阻害する平羽根に小流通孔を形成したので、小流通孔を通過する流体が高度に高速化され、極めて激しい流れを生じる。かかる激しい流れが螺旋羽根によって回転するため、激しい渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0020】
(8) 前記螺旋羽根には、前記振動軸の周回りの一部に設けられた第1部分羽根と、他部に設けられて前記第1部分羽根に交差する第2部分羽根と、が隣接する(5)記載の撹拌混合装置。
【0021】
(8)の発明によれば、流体が第1部分羽根及び第2部分羽根の間を通過する際に、流体のスムーズな流れが阻害され、流れがより複雑化する。かかる複雑化した流れが螺旋羽根によって回転するため、複雑な渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0022】
(9) 前記小流通孔は、前記第1部分羽根及び前記第2部分羽根に形成されている(8)記載の撹拌混合装置。
【0023】
(9)の発明によれば、流体の流れを阻害する第1部分羽根及び第2部分羽根に小流通孔を形成したので、小流通孔を通過する流体が効果的に高速化され、激しい流れを生じる。かかる激しい流れは、第1部分羽根及び第2部分羽根の間を通過した流れと合流して、複雑化する。かかる激しく且つ複雑な流れが螺旋羽根によって回転するため、激しく且つ複雑な渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0024】
(10) 前記螺旋羽根は、前記ケーシングに設けられて前記流路を絞る絞り構造に包囲されている(1)から(9)いずれか記載の撹拌混合装置。
【0025】
(10)の発明によれば、螺旋羽根に隣接する撹拌羽根によって生じた流れが絞り構造に衝突して複雑化しつつ、絞り構造及び螺旋羽根の間に殺到する。これにより、複雑な流れが高度に激化されるため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0026】
(11) 内部に流路を有するケーシングと、このケーシングの内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備える撹拌混合装置であって、 前記ケーシングには、前記流路を制限する制限板が固定され、 前記撹拌羽根には、流体を流通する複数の小流通孔が形成され、 前記制限板及び前記撹拌羽根は、互いに隣接し且つ角度をなす撹拌混合装置。
【0027】
(11)の発明によれば、撹拌羽根に形成された小流通孔を流体が流通することで生じる激しい流れが、角度をなす制限板に衝突して複雑化する。これにより、流体が高度に撹拌されるため、流体の混合効率を向上できる。また、撹拌羽根及び制限板を設けるだけの簡素な構成のため、省スペース化を達成できる。
【0028】
(12) (1)から(11)いずれか記載の撹拌混合装置を用いる撹拌混合物の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、傾斜羽根の一方に形成された小流通孔を流体が流通することで生じる激しい流れが、角度をなす他方の傾斜羽根と激しく衝突し、流体の流れが複雑化する。しかも、振動軸の振動に伴って傾斜羽根が往復すると、流体の流れが更に不規則になる。これらの相乗作用によって、流体が極めて高度に撹拌されるため、流体の混合効率を向上できる。また、傾斜羽根のセットを設けるだけの簡素な構成のため、省スペース化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る撹拌混合装置10の要部を示す断面図である。図2は図1の撹拌体30を示す拡大斜視図である。撹拌混合装置10は、ケーシング20及び撹拌体30を備える。各構成要素を以下詳細に説明する。
【0032】
〔ケーシング〕
ケーシング20は内部に流路21を有する。本実施形態では、ケーシング20に仕切り板50a〜50eが固定され、これら仕切り板50a〜50eによって内部空間が仕切られて撹拌室28a〜28dが形成されている。仕切り板50a〜50eはその中央に後述の振動軸31よりも僅かに大きい開口を有するため、この開口に挿通された振動軸31及び仕切り板50a、50bの間に隙間51a〜51eが形成される。本実施形態では、下方に位置する隙間51aを通って流体が撹拌室28aに導入される(図2中の矢印E)。
【0033】
本実施形態における仕切り板50a〜50eは、振動軸31の軸方向に直交して設けられ、これにより、後述の撹拌羽根33a〜33dが生じる複雑な流れの流体との衝突が激化し、流体の混合効率を向上できる。
【0034】
〔撹拌体〕
撹拌体30はケーシング20の内部に配置されている。かかる撹拌体30の振動軸31は、振動源としての振動モータ40に接続されるとともに、振動軸31の周囲には撹拌羽根33a〜33dが設けられている。これにより、撹拌体30はケーシング20内を軸方向に往復して、流体を撹拌混合できる。
【0035】
撹拌羽根33a〜33dの各々は、互いに隣接し且つ角度をなす傾斜羽根331a〜331d、333a〜333dのセットを有する。各セットは、上述の仕切り板50a〜50dで形成された撹拌室28a〜28dの各々に配置されている。ここで「角度をなす」とは、撹拌羽根の一方を延長してゆくと他方に交差することを指す。図2を参照して、撹拌羽根の構成を、撹拌羽根33aを例にとって説明する。
【0036】
撹拌羽根33aは、振動軸31の周回りの一部に設けられた第1部分羽根331aと、他部に設けられて第1部分羽根331aに交差する第2部分羽根333aとを有する。ここで「交差」とは、振動軸31の側方から第1部分羽根331aを投影した際に、第2部分羽根333aと交差することを指す。これにより、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの間の隙間を流体が流通させられる(図2中の矢印S)ため、スムーズな流れが阻害されて複雑化する。なお、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの交差角度は、撹拌すべき流体の種類に応じて適切な大きさの隙間が形成されるよう適宜設定されてよい。
【0037】
本実施形態では、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの各々に、小流通孔332a、334aが形成されている。これにより、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの往復に伴って流体が小流通孔332a、334aを通過させられ(図2中の矢印P)、流体の流れが激化する。
【0038】
このようにして激化された流れの流体は、上述の仕切り板50aの被衝突面53a及び仕切り板50bの被衝突面53bに衝突し(図2中の矢印C)、流れが高度に複雑化する。撹拌されて生成された混合物は、隙間51bを通じて撹拌室28aから撹拌室28bへと移動され、やがて外部へと導出される。
【0039】
本実施形態では、作製容易化の観点から小流通孔332a、334aを第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの上下面に対して直交するように形成したが、これに限られず任意の方向に形成してよい。
【0040】
本実施形態における第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aは、設置された姿勢においてケーシング20の内壁と略接触するように、歪んだ円柱状に設計されている。これにより、傾斜角度に応じた第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aの設計が必要となるものの、流体の迂回による撹拌混合効率の低下を抑制することができる。ただし、これに限られず、作製を容易化するべく部分正円柱状であってもよく、この場合、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aを傾斜して設置された姿勢において、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aとケーシング20の内壁との間に隙間が生じる。
【0041】
図3は図2の撹拌体の平面図である。この図3に示されるように、本実施形態の第1部分羽根331a及び第2部分羽根333aは、振動軸31の軸方向の投影図において隙間がないように設けられている。これにより、流体のスムーズな流れが阻害されて複雑化する。なお、流体の流れをより複雑化するためには、第1部分羽根331a及び第2部分羽根333を、振動軸31の軸方向の投影図において互いに重畳するように設けることが好ましい。
【0042】
なお、本実施形態では、混合効率を向上するべく、撹拌羽根33a〜33dの各々を挟むように仕切り板50a〜50eを設けたが、これに限られず、撹拌羽根33a〜33dの複数を挟むように仕切り板を設けてもよい。同様に、本実施形態では撹拌羽根33a〜33dを複数設けたが、単数のみ設けてもよい。また本実施形態では、仕切り板50a〜50dに小流通孔を実質的に形成しなかったが、これに限られず、仕切り板50a〜50dに小流通孔を実質的に形成してもよい。
【0043】
[作用効果]
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0044】
撹拌羽根33a〜33dを構成する傾斜羽根331a〜331d、333a〜333dの一方に形成された小流通孔332a〜332d、334a〜334dを流体が流通することで生じる激しい流れが、角度をなす他方の傾斜羽根と激しく衝突し、流体の流れが複雑化する。しかも、振動軸31の振動に伴って傾斜羽根331a〜331d、333a〜333dが往復すると、流体の流れが更に不規則になる。これらの相乗作用によって、流体が極めて高度に撹拌されるため、流体の混合効率を向上できる。また、傾斜羽根331a〜331d、333a〜333dのセット33a〜33dを設けるだけの簡素な構成のため、省スペース化を達成できる。
【0045】
傾斜羽根331a〜331d、333a〜333dの往復に伴って流体が小流通孔332a〜332d、334a〜334dを通過させられ、流体の流れが激化する。ここで、仕切り板50a〜50eはケーシング20に固定されているため、振動軸31の振動に伴って傾斜羽根331a〜331d、333a〜333d及び仕切り板50a〜50eが接近離隔する。これにより、流体の激しい流れが仕切り板50a〜50eに繰り返し衝突し、流れが高度に複雑化するため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0046】
第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dを交差するように設けるだけの簡素な構成のため、撹拌体30を容易に作製でき、製造コストを削減できる。また、流体が第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの間を通過する際に、流体のスムーズな流れが阻害され、流れがより複雑化する。このため、流体の混合効率をより向上できる。
【0047】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る撹拌混合装置10Aの要部を示す断面図である。図5は図4の撹拌体30Aを示す拡大斜視図である。本実施形態では、撹拌体30Aの構成が第1実施形態と異なる。
【0048】
即ち、撹拌体30Aは、第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの各々の間に介在する遮断板35a〜35dを備える。これにより、第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの隙間の一部又は全部が遮断板35a〜35dによって閉塞されるため、流体の流れが遮断される。
【0049】
ここで、介在板としての遮断板35a、35dには、流体を流通する複数の介在流通孔としての迂回流通孔36a、36dがそれぞれ形成されている。これにより、遮断板35a、35dによって遮断された流体の流れが迂回流通孔36a、36dに集中するため、流体の流れが一気に激化する(図5中の矢印E)。なお、本実施形態では、介在板に該当しない遮断板35b、35cにも迂回流通孔36b、36cを形成して混合効率を向上したが、これに限られず、作製容易化の観点から迂回流通孔36b、36cを形成しなくてもよい。
【0050】
遮断板35a〜35dは、本実施形態では第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの隙間の略全部を閉塞する形状としたが、これに限られず、一部のみを閉塞する形状としてもよい。迂回流通孔36a〜36dの大きさ及び個数は、迂回流通孔36a〜36d経由、及び小流通孔332a〜332d、334a〜334d経由の流体の流れが拮抗して、流体の流れ全体が最大に複雑化するよう適宜設定されることが好ましい。
【0051】
なお、迂回流通孔は、流体が流通可能な限りにおいて特に限定されず、例えば、複数の遮断板を組み合わせて、遮断板同士の隙間として迂回流通孔を形成してもよい。
【0052】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態による作用効果に加えて、以下のような作用効果が得られる。
【0053】
第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの間に到達した流体が迂回流通孔36a〜36dを通過するため、流体の流れがより激化する。これにより、流れの複雑化及び激化が同時に生じるため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0054】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係る撹拌混合装置10Bの要部を示す断面図である。本実施形態では、撹拌体30Bの構成が第1実施形態と異なる。
【0055】
即ち、撹拌体30Bの振動軸31には、その軸方向に略直交する平羽根39a〜39dと、螺旋状に設けられた螺旋羽根33Ba、33Bbと、が設けられている。本実施形態では、平羽根39a〜39dの各々に複数の小流通孔38a〜38dが形成されている。振動軸31の振動に伴って平羽根39a〜39dが往復すると、流体が小流通孔38a〜38dを強制的に流通させられ、流体の流れが高度に激化する。
【0056】
平羽根39a〜39dは、螺旋羽根33Ba、33Bbの各々を囲むように配置されている。平羽根39a〜39dは、螺旋羽根33Ba、33Bbと角度をなしているため、平羽根39a、螺旋羽根33Ba、及び平羽根39bが撹拌羽根の一セットを構成するとともに、平羽根39c、螺旋羽根33Bb、及び平羽根39dが撹拌羽根の別のセットを構成する。
【0057】
螺旋羽根33Ba、33Bbには小流通孔は実質的に形成されていない。このため、小流通孔38a〜38dを通って流れが激化した流体は、螺旋羽根33Ba、33Bbの往復に伴って螺旋状に回転させられ複雑化する。
【0058】
本実施形態では、上述のように、平羽根39a〜39dが螺旋羽根33Ba、33Bbと交互に配置されているので、流れの激化及び螺旋状の回転が交互に行われ、流体の流れが極めて高度に複雑化する。
【0059】
なお、螺旋羽根33Ba、33Bbに限られず、例えば図7に示すように、振動軸31の周回りの一部に設けられた第1部分羽根331aと、他部に設けられて第1部分羽根331aに交差する第2部分羽根333aとを備える構成も本発明に包含される。また、螺旋羽根と、図7のような交差羽根とを併用してもよい。
【0060】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態による作用効果に加えて、以下のような作用効果が得られる。
【0061】
振動軸31の振動に伴って平羽根39a〜39dが往復する際、かかる平羽根39a〜39dは振動軸31の振動方向に略直交するため、流体の流れが高度に阻害される。更に、螺旋羽根33Ba、33Bbによって流体が螺旋状に回転し、渦流が発生する。これらの事態が組み合わさることで、渦流が複雑化し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0062】
流体の流れを高度に阻害する平羽根39a〜39dに小流通孔38a〜38dを形成したので、小流通孔38a〜38dを通過する流体が高度に高速化され、極めて激しい流れを生じる。かかる激しい流れが螺旋羽根33Ba、33Bbによって回転するため、激しい渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0063】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態に係る撹拌混合装置10Dの要部を示す断面図である。本実施形態は、絞り構造54a,54bを備える点で第3実施形態と異なる。
【0064】
即ち、ケーシング20には流路21を絞る絞り構造53a,53bが設けられており、これら絞り構造54a,54bは螺旋羽根33Da,33Dbを包囲する。これにより、平羽根39a〜39dの上下動に伴って小流通孔38a,38cを通過させられた流体が絞り構造54a,54bに衝突し、流れが複雑化する。
【0065】
本実施形態では、螺旋羽根33Da,33Dbの径が前記実施形態よりも小さく、例えば流路21の径の3分の1程度である。そして、螺旋羽根33Da,33Dbは僅かな隙間をあけて絞り構造54a,54bに包囲されており、この僅かな隙間に、流れが複雑化した流体が殺到する。かかる流体は、螺旋羽根33Da,33Dbの上下動に応じて激しく回転させられた後、平羽根39b,39dの小流通孔38b,38dを通過させられ、流れが更に激化する。
【0066】
本明細書で「包囲」とは、ある位置の螺旋羽根33Da,33Dbの周囲の少なくとも一部に絞り構造54a,54bが配置されることを指す。つまり、上下動の全時点において螺旋羽根33Da,33Dbの周囲に絞り構造54a,54bが存在しなくてもよいし、軸方向に関して螺旋羽根33Da,33Dbの全範囲が包囲されていなくてもよい。また、本実施形態では絞り構造54a,54bに包囲されるのを螺旋羽根33Da,33Dbとしたが、これに限られず、図8(b)に示すように、振動軸31の周回りの一部に設けられた第1部分羽根331aと、他部に設けられて第1部分羽根331D’aに交差する第2部分羽根333D’aとであってもよい。
【0067】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第3実施形態による作用効果に加えて、以下のような作用効果が得られる。
【0068】
39a〜39dによって生じた流れが絞り構造54a,54bに衝突して複雑化しつつ、絞り構造54a,54b及び螺旋羽根33Da,33Dbの間に殺到する。これにより、複雑な流れが高度に激化されるため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0069】
<第5実施形態>
図9は、本発明の第5実施形態に係る撹拌混合装置10Eの要部を示す断面図である。本実施形態では、撹拌体30Eの構成が第3実施形態と異なる。
【0070】
即ち、撹拌体30Eでは、螺旋羽根33Ea,33Ebに、第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dが隣接する。また、第1実施形態と同様に、第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dに、小流通孔332a〜332d、334a〜334dが形成されている。
【0071】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第3実施形態による作用効果に加えて、以下のような作用効果が得られる。
【0072】
流体が第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの間を通過する際に、流体のスムーズな流れが阻害され、流れがより複雑化する。かかる複雑化した流れが螺旋羽根33Ea,33Ebによって回転するため、複雑な渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0073】
流体の流れを阻害する第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dに小流通孔332a〜332d、334a〜334dを形成したので、小流通孔332a〜332d、334a〜334dを通過する流体が効果的に高速化され、激しい流れを生じる。かかる激しい流れは、第1部分羽根331a〜331d及び第2部分羽根333a〜333dの間を通過した流れと合流して、複雑化する。かかる激しく且つ複雑な流れが螺旋羽根33Ea,33Ebによって回転するため、激しく且つ複雑な渦流が発生し、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0074】
<第6実施形態>
図10は、本発明の第6実施形態に係る撹拌混合装置10Fの要部を示す断面図である。本実施形態は、制限板55a,55bが設けられている点で第3実施形態と異なる。
【0075】
即ち、ケーシング20には制限板55a,55Bbが固定され、流路21が制限されている。かかる制限板55a,55bは、中央に形成された孔に振動軸31が挿通され、隣接する平羽根39a〜39dに対して角度をなす。これにより、平羽根39a〜39dに形成された小流通孔38a〜38dを流体が流通することで生じる激しい流れが、角度をなす制限板55a,55bに衝突して複雑化する。なお、本実施形態では、振動軸31及び制限板55a,55bの間にはわずかな隙間が存在しているが、特に限定されるものではない。
【0076】
本実施形態の制限板55a,55bは、31の軸方向に沿って螺旋状に設けられている。これにより、小流通孔38a〜38dを通過した激しい流れが、制限板55a,55bで回転させられ、渦流になる。ただし、制限板の構造はこれに限られず、振動軸の周回りの一部を包囲する第1部分板と、他部を包囲して第1部分板に交差する第2部分板とからなってもよい。
【0077】
[作用効果]
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0078】
小流通孔38a〜38dを流体が流通することで生じる激しい流れが、制限板55a,55bに衝突して複雑化する。これにより、流体が高度に撹拌されるため、流体の混合効率を向上できる。また、平羽根39a〜39d及び制限板55a,55bを設けるだけの簡素な構成のため、省スペース化を達成できる。
【0079】
小流通孔38a〜38dを通過した流体の激しい流れが、螺旋状の制限板55a,55bで回転させられる。これにより、激しい渦流が発生するため、流体の混合効率を格段に向上できる。
【0080】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図2】図1の撹拌体を示す拡大斜視図である。
【図3】図2の撹拌体の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図5】図4の撹拌体を示す拡大斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図7】前記実施形態の変形例に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る撹拌混合装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 撹拌混合装置
20 ケーシング
21 流路
28 撹拌室
30、30A、30B、30C、30D、30E、30F 撹拌体
31 振動軸
33、33B、33C、33D、33E 撹拌羽根(傾斜羽根のセット、螺旋羽根)
331 第1部分羽根
332 小流通孔
333 第2部分羽根
334 小流通孔
35 遮断板(介在板)
36 迂回流通孔(介在流通孔)
38 小流通孔
39 平羽根
40 振動モータ(振動源)
50 仕切り板
51 隙間
54 絞り構造
55 制限板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有するケーシングと、このケーシングの内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備える撹拌混合装置であって、
前記撹拌羽根は、互いに隣接し且つ角度をなす傾斜羽根のセットを有し、
前記セットを構成する傾斜羽根の少なくとも一つに、流体を流通する複数の小流通孔が形成されている撹拌混合装置。
【請求項2】
前記ケーシングに固定されて内部空間を仕切る仕切り板を更に備え、
前記仕切り板で仕切られた撹拌室に前記傾斜羽根のセットが配置されている請求項1記載の撹拌混合装置。
【請求項3】
前記傾斜羽根のセットは、前記振動軸の周回りの一部に設けられた第1部分羽根と、他部に設けられて前記第1部分羽根に交差する第2部分羽根と、を有する請求項1又は2記載の撹拌混合装置。
【請求項4】
前記第1部分羽根及び前記第2部分羽根の間に介在する介在板を更に備え、
前記介在板には、流体を流通する複数の介在流通孔が形成されている請求項3記載の撹拌混合装置。
【請求項5】
前記傾斜羽根のセットは、螺旋状に設けられた螺旋羽根を有する請求項1又は2記載の撹拌混合装置。
【請求項6】
前記螺旋羽根には、前記振動軸の軸方向に略直交する平羽根が隣接する請求項5記載の撹拌混合装置。
【請求項7】
前記小流通孔は、前記平羽根に形成されている請求項6記載の撹拌混合装置。
【請求項8】
前記螺旋羽根には、前記振動軸の周回りの一部に設けられた第1部分羽根と、他部に設けられて前記第1部分羽根に交差する第2部分羽根と、が隣接する請求項5記載の撹拌混合装置。
【請求項9】
前記小流通孔は、前記第1部分羽根及び前記第2部分羽根に形成されている請求項8記載の撹拌混合装置。
【請求項10】
前記螺旋羽根は、前記ケーシングに設けられて前記流路を絞る絞り構造に包囲されている請求項1から9いずれか記載の撹拌混合装置。
【請求項11】
内部に流路を有するケーシングと、このケーシングの内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備える撹拌混合装置であって、
前記ケーシングには、前記流路を制限する制限板が固定され、
前記撹拌羽根には、流体を流通する複数の小流通孔が形成され、
前記制限板及び前記撹拌羽根は、互いに隣接し且つ角度をなす撹拌混合装置。
【請求項12】
請求項1から11いずれか記載の撹拌混合装置を用いる撹拌混合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−262013(P2009−262013A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111798(P2008−111798)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000251211)冷化工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】