説明

撹拌装置のミキシングシャフトの着脱カップリング

【課題】ミキシングシャフトを回転駆動部に係脱自在に係着する構造の撹拌装置において、ミキシングシャフトの回転駆動部への取付け取外しが容易で、ミキシングシャフトが回転駆動部から脱落する危険性がなく、ミキシングシャフトを頻繁に回転駆動部に着脱するのに適した着脱カップリングを提供する。
【解決手段】ミキシングシャフト1の根部1bに側方へ向けて係止突起1dを突設し、該ミキシングシャフト1が係合するカップリング受け部3aと、前記係止突起1dが挿通可能な軸方向スリット3bと、該軸方向スリット3bに直交する係止凹部3cとを設けると共に、該カップリング受け部3の外周部に摺動可能に設けたスライドカバー4の内周部に、前記軸方向スリット3b内を係合しながら移動可能な規制突起4bを突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体原料等の撹拌や混合を行なうための撹拌装置、特に可搬形撹拌機の如き小形の撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌装置は、回転軸の先端部に撹拌翼(インペラ)を固定したミキシングシャフトを撹拌液中に没入させ、該ミキシングシャフトを回転駆動して撹拌を行なっている。
【0003】
然して撹拌目的によっては、内容物に応じて日々ミキシングシャフトを交換する必要があり、このため、頻繁にミキシングシャフトを撹拌装置の回転駆動部に取り付けたり取り外したりする作業を行なう必要があった。
【0004】
従来、可搬形撹拌機の回転駆動部にミキシングシャフトを取り付ける場合は、図7に示す如く、ミキシングシャフトの回転軸aを回転駆動部の円筒状に形成されたカップリングbに嵌入し、これをボルトcにて固定していた。
【0005】
尚、工作機械にワークをチャックするための装置として、ワークをチャック本体に爪又はコレットで締め付けて固定する方法が知られている。
【0006】
例えば内径コレットチャックとして、径方向に拡大縮小可能に形成され、先端部に被保持物を保持するコレットと、コレットの外周に嵌合される規制体とを備えた例がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−25349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記ミキシングシャフトの回転軸aをカップリングbの穴に挿通してボルトcで固定する従来の方法は、ボルトの取付け不良によるミキシングシャフトの脱落事故が生じたり、ボルトやカップリングのねじ山が潰れることでミキシングシャフトの取付けが不可能になる等の問題があった。
【0009】
また、前記コレットチャックの方法は、構造が複雑となるため装置がコストアップとなる問題があった。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解消し、頻繁にミキシングシャフトの着脱を必要とする場合のために、ボルトを使わずに簡単に着脱が可能で、ミキシングシャフト脱落の危険性も無く、且つ安価に製造できるような撹拌装置のミキシングシャフトの着脱カップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成すべく、撹拌翼と回転軸とからなるミキシングシャフトを回転駆動部に係脱自在に係着する構造の撹拌装置において、前記ミキシングシャフトの根部に側方へ向けて突出する係止突起を突設し、前記回転駆動部に、前記ミキシングシャフトの根部が嵌入可能な軸穴と前記係止突起が挿通移動可能な軸方向スリットとを有するカップリング受け部を形成すると共に、該カップリング受け部の該軸方向のスリットの側方部に前記係止突起が移行係止可能な係止凹部を凹設し、該係止突起の前記係止凹部からの係脱を規制する係脱規制手段を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ミキシングシャフトを回転駆動部に係脱自在に係着する構造の撹拌装置において、ミキシングシャフトの回転駆動部への取付け取外しが容易で、ミキシングシャフトが回転駆動部から脱落する危険性がなく、ミキシングシャフトを頻繁に回転駆動部に着脱するのに適した着脱カップリングを安価に提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のミキシングシャフトの着脱カップリングを使用した撹拌装置の実施例1の外形図である。
【図2】同上実施例1におけるミキシングシャフトの着脱カップリングの一部截断面図である。
【図3】同上着脱カップリングの一部カップリング受け部の側面図である。
【図4】同上着脱カップリングの一部スライドカバーの側面図である。
【図5】同上スライドカバーの図4におけるB−B線截断面図である。
【図6】同上着脱カップリングの図2におけるA−A線截断面図である。
【図7】従来のミキシングシャフトの着脱カップリングを使用した撹拌装置の外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明のミキシングシャフトの着脱カップリングを使用した撹拌装置の外形図であり、1がミキシングシャフト、2がミキシングシャフト1の着脱カップリングである。
【0016】
ミキシングシャフト1はその下端部に撹拌翼1aを固定して有している。
【0017】
前記着脱カップリング2は、前記ミキシングシャフト1の根部と係合する円筒状のカップリング受け部3と、該カップリング受け部3の外周部に設けた係脱規制手段4とを有している。
【0018】
尚、5は前記カップリング受け部3を回転駆動する回転駆動部である。
【0019】
前記着脱カップリング2の構造の詳細を図2及び図3により説明する。
【0020】
ミキシングシャフト1の根部1bは円柱状に形成され、該根部1bに貫通孔を形成して該貫通孔にコッタピン1cを嵌入固定し、該根部1bより突出した該コッタピン1cの両端部を係止突起1dに形成した。
【0021】
前記カップリング受け部3は前記根部1bが嵌入する軸穴3aを有する円筒状で、回転駆動部5に垂設されており、その下端部の周壁の両側方に上下方向即ち軸方向スリット3bが形成されており、更に該周壁において該軸方向スリット3bの途中で横方向に延びる横方向スリットの係止凹部3cが形成されている。
【0022】
前記軸方向スリット3bは、前記係止突起1dが移動可能な溝幅を有しており、又、前記係止凹部3cは前記軸方向スリット3bにT字状に交差していて前記係止突起1dが移行して係合可能に形成されている。
【0023】
前記カップリング受け部3は上方部の外径が下方部の外径より少し小の段違い部3dを有する2段構造に形成されており、該カップリング受け部3の外周部には円筒状のスライドカバー4aが該カップリング受け部3の外周部に沿って軸方向に摺動可能に嵌着されている。
【0024】
前記スライドカバー4aの側面図を図4に、又、同スライドカバー4aの図4におけるB−B線截断面図を図5に示した。
【0025】
4は係脱規制手段を示し、該係脱規制手段4は前記スライドカバー4aと、規制突起4bとからなる。
【0026】
該スライドカバー4aの内径部は前記カップリング受け部3の外径部に対応した2段構造となっており、この段違い部4cにおいて、前記カップリング受け部3の段違い部3dと当接して、スライドカバー4aがカップリング受け部3から抜け出すのを防止するストッパーとして作用している。
【0027】
又、スライドカバー4の内周部には、前記カップリング受け部3の軸方向スリット3b内を係合しながら移動可能な前記規制突起4bが突設されている。
【0028】
即ち該規制突起4bは四角形の立法体状で、ボルト4dによってスライドカバー4aに固定されている。
【0029】
前記スライドカバー4が前記カップリング受け部3の外周部に沿って上下に摺動するとき、前記規制突起4bも前記軸方向スリット3bに沿って上下に移動する。
【0030】
上記各部の相関関係を図6に示した。尚、図6は図2におけるA−A線截断面図である。
【0031】
次に本実施例のミキシングシャフトの着脱カップリング2の使用方法及びその効果等について説明する。
【0032】
ミキシングシャフト1の根部1bをカップリング受け部3に係合させるときは、該根部1bが軸穴3a内に嵌入していくのに連れて根部1bに貫設されているコッタピン1cの両端部の係止突起1dが前記カップリング受け部3の軸方向スリット3bに沿って進み、該軸方向スリット3b内に移動自在に嵌入している前記規制突起4bと当接して、該規制突起4bを前記スライドカバー4aと共に上方へ押し上げるように作動する。
【0033】
かくて、前記係止突起1dの頭部が前記軸方向スリット3bの中間の側方部にT字状に連設されている係止凹部3cにまで達したとき、前記ミキシングシャフト1を少許右方へ回転させて、前記係止突起1dを前記係止凹部3c内に移行させる。
【0034】
このように係止突起1dが係止凹部3c内に移行した後、前記軸方向スリット3bの上方部に押し上げられている前記規制突起4bを前記スライドカバー4と共に降下させて、該規制突起4bが前記係止凹部3cへの開口部を塞ぐ位置で前記軸方向スリット3b内に留まるようにする。
【0035】
かくて、回転駆動部5によって着脱カップリング2を回転駆動したとき、前記ミキシングシャフト1は緩むことなく着脱カップリング2と共に回転して撹拌を行なうので、シャフト脱落等の危険性がなく安全である。
【0036】
又、ミキシングシャフト1を着脱カップリング2から取り外す時は、前記スライドカバー4aを持ち上げてからミキシングシャフト1を左方向に少許回転させて係止突起1dを軸方向スリット3b内に移し、然る後にミキシングシャフト1を引き抜けば、容易にミキシングシャフト1を着脱カップリング2から取り外すことができる。
【0037】
このように本発明の撹拌装置のミキシングシャフトの着脱カップリングはミキシングシャフトの着脱が容易であり、シャフト脱落等の危険性がなく、しかも構造が簡単なので製作コストが安くなる効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のミキシングシャフトの着脱カップリングは、特に可搬形撹拌機の如き小形の撹拌装置に利用される。
【符号の説明】
【0039】
1 ミキシングシャフト
1d 係止突起
2 着脱カップリング
3 カップリング受け部
3a 軸穴
3b 軸方向スリット
3c 係止凹部
4 係脱規制手段
4a スライドカバー
4b 規制突起
5 回転駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌翼と回転軸とからなるミキシングシャフトを回転駆動部に係脱自在に係着する構造の撹拌装置において、前記ミキシングシャフトの根部に側方へ向けて突出する係止突起を突設し、前記回転駆動部に、前記ミキシングシャフトの根部が嵌入可能な軸穴と前記係止突起が挿通移動可能な軸方向スリットとを有するカップリング受け部を形成すると共に、該カップリング受け部の該軸方向のスリットの側方部に前記係止突起が移行係止可能な係止凹部を凹設し、該係止突起の前記係止凹部からの係脱を規制する係脱規制手段を具備する撹拌装置のミキシングシャフトの着脱カップリング。
【請求項2】
前記係脱規制手段は、前記カップリング受け部の外周部に摺動可能に嵌挿するスライドカバーと、該スライドカバーの内周部に設けられ前記軸方向スリットに係合する移動可能な規制突起とからなる請求項1に記載のミキシングシャフトの着脱カップリング。
【請求項3】
前記係止凹部は前記軸方向スリットにT字状に交差する横方向スリットからなる請求項1に記載のミキシングシャフトの着脱カップリング。
【請求項4】
前記ミキシングシャフトを前記カップリング受け部に嵌入させるときは、前記係止突起が前記軸方向スリット内を上方向へ移動して、該軸方向スリット内にある前記規制突起を前記スライドカバーと共に上方へ押し上げるように作動し、該係止突起が前記軸方向スリットと直交する係止凹部に到って該係止突起が該係止凹部内に移行した後に前記規制突起が前記軸方向スリット内を降下して、前記係止突起が前記係止凹部から逸脱するのを阻止するように形成した請求項2又は請求項3に記載のミキシングシャフトの着脱カップリング。
【請求項5】
前記カップリング受け部の後方部の外径を該カップリング受け部の前端部の外径よりも細くして該カップリング受け部を段違い部を有する2段構造に形成すると共に、該カップリング受け部の外周部に摺動可能に設けた前記スライドカバー内径部を該カップリング受け部の外径に対応する段違い部を有する2段構造に形成して、前記カップリング受け部の段違い部と前記スライドカバーの段違い部とが当接して前記スライドカバーが前記カップリング受け部から抜け出すのを防止するストッパーとなるように形成した請求項2又は請求項4に記載のミキシングシャフトの着脱カップリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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